銃は地球人類が生み出した最高の文明の利器である 作:ジャーマンポテトin納豆
朝、起きると悩みは消えていた。
悩みが消えたと言うよりは、こう、何て言うんだろうな……分からないが取り敢えず悩みが消えたとしておこう。
記憶はエリカさんに頭を抱き締められて泣いた辺りで途切れているがその後に今、俺のベットの隣に椅子に座って眠っているエリカさんが何かやってくれたんだろう。
どうやったのか分からないがどれだけ感謝しても足りないだろうな。
まぁなんで手を握っているのか全く分からないがその辺は置いておこう。
取り敢えず、エリカさんをこのままにしておくわけにも行かないからどうするかな……エリカさんの部屋のベットに運んでおこう。
そっと抱き上げると身体は少しばかり冷えてしまっていた。
多分、俺が今こうして起きるまでの間ずっと隣に居てくれたのだろう。
エリカさんの部屋に運んでベットに寝かせて布団を掛ける。
気持ち良さそうに寝ているエリカさんはもう暫く起きることは無いだろう。
さてと。
今の時間は8時か。
本当は今日すぐにでも裂け目に向かいたいのだがまずは破壊された壕や銃座、砲座を復旧させなければならない。
俺が調査に向かっている間に魔物や魔獣からの襲撃が無いとは限らないし、俺が居なくても俺が此処に帰って来るまでの間は最低限守り切って貰わないといけないからな。
そう言う訳でこの日から丸々2日使って壕や銃座の復旧を行った。
しかしこの際だから、と言う事でコンクリートを使用して大幅にアップグレードを施した。
8.8cm砲座はコンクリートそのもので高さを10m程確保した。
そして砲弾自体はそれの真下に空間を作り、コンクリート製で広さは縦10m横一辺が20~25mの長方形。入口は階段付き。
そこに8.8cm砲の榴弾、徹甲榴弾、硬芯徹甲弾をそれぞれ何発呼び出したか忘れたぐらい大量に呼び出した。
それぞれ弾種ごとに分けて置いた。
可能な限り沢山置いておくために通路は60cmしか無く、かなり狭くなってしまった。
そして砲座から銃座に向かい緩やかな斜面を付け、排水に関しての問題を改善する事に成功。壕は全てコンクリート製にして地面部分よりも20cm高くコンクリートで固め、雨が壕の中に流れ込まない様にした。
そして壕の天井は家の屋根の様に傾斜を付けて雨が外側に流れて行くようにし、しかしながら太陽光も取り入れられるよう、隙間を空けて浮かせた。本当は電気を使って灯りを確保しようとしたのだがそうすると発電機が必要になる。
発電機自体は良いのだが、発電機を動かす為の燃料が問題だった。
別にガソリンを呼び出して置けばいいのだが俺は裂け目の調査に丸々1カ月を予定しているのでそうなると夜間だけだとしてもとんでもない量になってしまうからやめた。
各区画に1か所ずつある弾薬補給所もさらに深く大きく掘り下げてコンクリートで上下左右を全て囲い扉の部分は鋼鉄製にし、置いておくことの出来る弾薬量は増えた。
コンクリート製の深さ8m、一辺の長さは15m~20mの長さの長方形になり、深さがかなりの物になってしまった為階段を設けた。
MG42とM2の弾薬だけでなく、万が一土竜が再び現れた時の為に110mm個人携帯用対戦車榴弾も呼び出した。
扱いに関してはしっかりと少数の人間になってしまったが教えた。
トーチカや壕、砲座の中では絶対に使用しない事。使用する場合は必ずトーチカ、壕、砲座の外に出る事、後ろに人がいる状態では絶対に撃ってはいけないと言う事を厳命した。
そして小型の魔物や魔獣の侵入を防ぐ為に有刺鉄線で村の周囲をしっかりと囲った。
屋根型鉄条網で、ただの柵型鉄条網よりも強度は高く、多少の重量物の衝突程度では越えられない。
ジャンプして越えようにも屋根の形をしているので向こう側にも有刺鉄線が張られているから自分から突っ込んでいく事になる。
高さは通常よりも高くし、2mの高さになっていて、奥行きは6mにもなる。
奥行きはジャンプして越えようとしても越えられないようにする為に広く取った。
有刺鉄線は砲撃や航空機からの爆撃でも爆風などは隙間が空いている為に排除をすることが難しく、重機や戦車で踏み越えるか人力で切って進むかという手段を取るしかない。
あとは有刺鉄線の上に板など刺の部分が貫通しないものを置きその上を通ると言う方法があるが魔物や魔獣にそんな知恵は回らないだろうからその点の心配は要らない。
あるとすれば魔物や魔獣の死体が積み重なってそれを足掛かりに越えて来る事なのだが大丈夫だろう。
砲座から眺めてみたのだが……
もうほぼほぼ完璧な状態に近い防御陣地になってしまったが必要な物だと考えればしょうがない。
……よし、これで全ての備えが終わったので明日には出発する事にしよう。
「エリカさん、明日裂け目に向かって出発することに」
「そうですか……分かりました」
「出来れば朝の内に出発したいと思ってる」
「……私も付いて行きましょうか?」
エリカさんは付いて来ようかと聞いてきた。
冗談だと思うが何となく目が本気な気がするのは多分間違いじゃない。
「いやいや、村の事もあるでしょ」
「それもそうですね……ついて行きたいのは山々ですがこればかりは仕方が無いですね」
「それに移動方法が1人で移動する為の物なので他に誰かを連れて行くことが出来ないから」
結構簡単にあきらめてくれたのだが一人で行くと言った事が問題だった。
「まさか1人で行く気ですか?」
「そうだけど……」
「何かあった時にどうするんですか?」
と、2時間ほど問答を繰り返して何とか納得してもらった。
いや、1人の方が色々と好都合なんだよ。身を守るにしてもなんにしても。
2人で行動するとバイクは使えなくなるしそうなると四輪車なのだがハンヴィーでは小回りが利きずらい。
森の中じゃぁ致命的だ。
何かに襲われた時に逃げられなくなってしまう。
そう言う訳で翌朝。
俺はバイクを呼び出す。勿論軍用だが元は民間用のオフロードを軍用に改造したりしてあるのであくまでもベースは民間用のオフロードバイクだ。
車種はKLX250。
説明欄には陸上自衛隊が使用していると書いてあったな。最高速度は約100km/hも出るので十分に速いがそれはあくまでも整地、舗装された道路であったりする場合だ。
今回走るのは不整地でしかも森の中という訳だから安全を最優先に考えると速度は30km/h出せればいいかもしれない。
まぁそれでも予定している2日よりは随分と速く到着出来るだろうな。
そう言う訳で出発だ。
M4にスリングを取り付け背負い、M9は何時もの様にレッグホルスターに入れる。
しっかりとベストも着こみ、マガジンもしっかりと入れておく。
あとは関節部分にプロテクターと頭にはヘルメットを被る。
これで事故っても多少ならば大丈夫だろう。
「それじゃぁ行って来ます」
「イチロー様、どうか気を付けて。本当に何があるか分からないのですから」
態々村人総出で見送りに来てくれた。
そしてペコペコと頭を何度も下げながらの出発となった。
村を出発して1時間。
予想通り地面は凸凹で走るたびに、と言うか今現在も上下にガタガタと揺れまくっている。しかも悪路だからそこまで速度を出す事が出来ない。
人間の平均的な歩く速さは5~6km/hだがあくまでもこれは舗装された道を一般人が歩いた速度だ。
軍人がそれらを行う場合、1km進むのに休憩の時間を入れて凡そ15分を基準としている。
アップダウンは無いとは言っても木の根などが邪魔をして徒歩とは言っても20分で1km進めれば良い方かもしれない。
俺は今現在15km/hでバイクを走らせているが歩くよりもマシという感じだな。
しかしながらこれは思ったよりも時間が掛かるな……
座って運転すると振動で尻が痛いし、立って運転すると足が疲れるし、振動を弱めるために足をサスペンションの様にしているがそれも疲れる。
どちらにしろ安全を最優先に考えている為に1時間進んだら1時間の休息を挟むことにしている。
単純計算で1日12時間進むとしても180kmだが睡眠時間を7時間引くと5時間だが75kmしか進めないという事になる。
裂け目まで約300kmあるからこのままだと4日掛かってしまう事になる。
これは予定日数の倍になってしまう。
もっと距離を稼ぐには速度を上げるか、休憩時間を減らすかの二択になる訳だが……
速度を上げるのは無しだ。これ以上速度を出すとバランスを崩した時に体勢を立て直せなくなる。休憩時間を減らすとしても疲労が溜まれば後々に響いて来るのは間違い無い。先を見据えるならば今のままで進むしかないな。
日数を無駄にしてしまうのは仕方が無い、このままで進もう。
2日後、大体半分の距離まで来た。
地図作成で印刷した地図を見ると大体150km進んでいる。
その道中、特に変わった事は無かった。
強いて言えば休憩中に何度か魔物か魔獣が接近して来たぐらいだが問題は無かった。
夜間寝ている時はこの森のデカい木の上に登って寝ている。高さは35m程の位置だ。ロープで吊って、良さそうな枝の上に寝転ぶ。落ちないように他の枝にしっかりとロープを縛って寝がえりで落ちたとしても宙吊りになるようにしている。
まぁ今の所はそんな事にはなっていないが。しかしながら少なくとも地面で寝ているよりは襲われる可能性は低く、安全だ。
だが空からの、翼竜や飛竜だと少々危険だ。
まぁ今の所確認していないから大丈夫だろう。
3日目の今日も今日とてバイクに跨って進む。
しかし裂け目に近付くにつれてどんどん生物の気配と言うか、そう言う物が感じられなくなった。
やはり裂け目に何かあるのは確かなようだな。
4日目、漸く裂け目に到着した。
いやぁ……なんつー光景だ……
幅は凡そ40kmにも及び、底の深さはレーザー距離計を使った所、約3900mにもなる事が分かった。これだけ広いと裂け目と言うよりは盆地と言った方がしっくりくる感じがするな。
正直この値を見た時に俺の正気を疑った。
だって深さが4000mに近いとか頭おかしいだろ。
崖は切り立っており、殆ど垂直だ。
これを降りるのは一苦労するな……
これ、重力とかどうなっているんだろうか?
まぁそこら辺は追々確かめる事にしよう。今は何も確かめる手段が無いからな。
それとは全く別の話だが、この裂け目、何かいる気がする。
確かに周辺に翼竜や飛竜と言った存在は双眼鏡などで覗いても一匹も見えないが、それとは別に何かデカい、それらよりもずっと強い何かが居る気がする。
が、取り敢えずの所今日は休憩だ。
翌朝、日の出と共に起きて、先ず行ったのはロープ同士を繋げて長さを確保する事だった。
一番長いロープでも300メートルしかなく、一番底に降りるとしても最低13本の連結をしなければならない。
呼び出したロープの束は15本。
一応念の為に2つ多めに呼び出して置いたのだ。まぁ重りという意味合いもあるし、木に固定するための長さも必要だからだ。
ロープ同士の結び方は「二重テグス結び」という結び方だ。
これはロッククライミングなどで良く使用される結び方らしく、強固なものだ。
同じ太さや材質同士の結び方であれば強く結べるのだが太さが違っていたりすると解けやすい。その点俺は材質も太さも同じなので問題無いだろう。
それら全てを繋げ終えたのは1時間が経ってからだった。
そしてそのロープの端を木に巻き付け結び固定する。
その後、ロープに付ける降下用の器具を取り付けた。
流石にと言うか、普通に4000mもの高さを腕と足だけで支えて降りて行くのは無理だ。途中で間違い無く力尽きるだろう。
そしてそれら全ての準備を終えて、ロープを裂け目向かって落とした。長さ4500mのロープは簡単に落ちて行った。
念の為にロープと地面の間に厚めのタオルを置いて固定しておいた。
これでロープが切れる可能性が低くなったと思う。
身に着けている装具は何時も通りで背中にはM4を背負い、レッグホルスターにM9。
それにベストとM4用マガジン6本を収納し、M9用マガジンを2本入れてある。
頭には意味は無いと思うが落ちた時用にヘルメットを被り、膝や肘にはプロテクターを身に着けている。
正直な所を言えば、建物の屋上からの降下ならばまだしも、4000mの崖を降下するのにこれほどの重装備を身に着けて降りるのはただの馬鹿だと思う。
ただ歩くだけなら何てことは無い重量だが崖の一番上からの降下じゃぁただ足枷にしかならない。
だが万が一、この裂け目に生息していた翼竜や飛竜が逃げ出すほどのナニカが居るとしたらそれに襲われた時に何も武器を携行していないのとしているのじゃ訳が違う。
即座に反撃は出来なくなるし、何より『武器を持っていて反撃が出来る』という心理的安心を得られるのが大きい。
確かに重いが致し方ない。
そしてついに降下を始めた。
降下を始めて200mくらいは土だったり土が固まっているような地層が続いたがそれ以降は岩で、最初の200mは足場が崩れたりして梃子摺ったが岩になれば崩れることも無く安定して降りて行く事が出来た。
ただ気になるのがあちらこちらに直径が10mにもなる穴が幾つも空いていたのは気になる。これも何かの魔物か魔獣が関係しているのだろうか?
これも時間があれば調べてみよう。
見た感じかなり深い所まで続いているな。一旦入って懐中電灯を呼び出して幾らか進んでみたが全くと言っていい程に先が見えない。
その時点で諦めて引き返し降下に戻った。
あとは気になる事と言えば本当に生物の気配が全く無い事だ。
翼竜や飛竜は聞いているから分かってはいたが、それ以外の、魔獣や魔物では無く普通の野鳥なんかも全くと言っていい程に居ない。
動物だけでは無く虫も何もいない。
普通なら蟻や、羽虫なんかが飛んでいたりしていても良いものなのだが……
取り敢えず周りを見渡したが本当に何もいない。何も無い。
崖には所々に草が生えていたりするぐらいか。
それもかなりまばらなのだが、底は本当に何も無い。荒涼とした光景が向こうの崖まで続いている事だろう。
しかし植物体系を抜いて考えて見てもこの辺り一帯の雰囲気がおかしい。やはり全く普通じゃない事が起きているんだろう。
4時間後、漸く2000m程降下した。
この分ならあと4時間で降り切る事が出来るだろうが、その前に250mくらい下にある穴で遅めだが昼食を摂ろう。
ついでに休憩もするか。
4時間もぶっ続けで降りていたからかなり疲れた。昼食を摂ったら暫く休憩するか。軽く昼寝でもしよう。結構姿勢の保持の為に足、それとロープを握っている手とそれを支えていた腕も結構限界だ。
「ふぅ……」
思わず一息吐いてしまった。
いやいや、2000mもロープ降下するなんて前代未聞だと思うんだが。だがこうでもしないと降りれないからな……諦めよう。
そして昼飯を呼び出す。
何が良いかな……この前、エルフラントさんが食事を作ってくれたおかげで食べなかったスパイシーチキンと豚の角煮を呼び出そう。
そして白米のパックも呼び出す。
これら全ては温めればすぐに食べられる。なんだっけか、水を入れると沸騰するやつを呼び出して全部1つづつ放り込んで温める。
「痛ェ……」
腕だけでなく手の平にも痛みが走っていた。グローブを外して見てみると手の平の皮が剥けてしまっている。
流石にこの状態で色々と作業を進めて行くのはキツイから自身に治癒魔法を掛ける。すると手の平の剝けてしまっていた皮がみるみると治り始めた。
誰かに掛けていてそれを見ていたことはあるが自分に掛けてたのは初めてだ……
何というかこう、俺は基本的に怪我をすることが無い。そりゃ銃を使って弓よりも遥か遠くから狙撃をして相手が俺に気が付く前に殺す事が出来る。一方的にやれるのだから怪我をする訳が無い。まぁ偶に腕を出していて気か何かに擦れて切傷が出来る事があるがあれぐらいならば治癒魔法を掛ける必要すら無い。だから自分に掛けるのは実は初めてだったりする。
感想は簡単に言えば、何というか不思議な感覚だな。
こう、手の平に向かって別の部分に体力が移動しているような感じだ。何と言えばいいんだろう?本当に変な感じだな、不思議だ、としか言えない。
まぁそんな事をしている間にあっさりと手の平の皮は治っていた。
温めている飯はまだ出来ておらず、なんだか手持ち無沙汰になった気分だな。
双眼鏡を呼び出して覗いてみると生物の影すら存在しない。見ると延々と荒涼とした景色が続くばかりで本当に何も無い。多少小高い丘の様になっていてそれが、ガレ場となって在ったりするが本当に何も無い。
しかしながらこういう場所でも緑のあるエリアという物は存在する様でかなり遠間隔にだがオアシスの様なものがあるな。
もしかするとあの辺には生物がいるかもしれない。
今の所は崖を降り切ってそこを目指そう。あと気になると言えばあの一際所じゃなくデカい小山だな。いやもうあれは小山じゃなくて山だな。それも結構デカい山だ。
今扱っている望遠鏡じゃ詳しく見る事が出来ないが、他の小山の様にガレ場の様な斜面では無くゴツゴツしては居るが何処か岩とは違う様な感じがするのは気のせいだろうか?
目下はオアシス付近とあのデカい山を調べるか。
と、昼飯が出来たみたいだな。そうしたら腹ごしらえだな。
温めていた白米とスパイシーチキン、それと豚の角煮を温め袋の中から取り出し袋を開けて食べ始める。
うん、何というか美味いがエルフラントさんの作ってくれる食事程ではないとしか言えないな。
そのまま当然俺1人しかいない訳だから話す相手も居なく、黙々と食べ進める。
1人で食べているから当然食べ終わるのは早い。
15分程で食べ終わり、30分程食休みしながら双眼鏡を覗き続ける。
そしたら昼寝だ。周りどころかこの裂け目一帯には生物はいないから昼寝をしても問題は無いだろう。
一旦腕時計を見てみると既に3時47分になっていた。
……よし、今日はこの穴をキャンプにしよう。
このまま昼寝をしてから降下するにしても、昼寝をしないで降下を続けるにしても降りている途中に太陽が完全に落ちてしまう。
あと2時間半もすれば暗くなり、3時間もすれば真っ暗闇だろう。
という事はその真っ暗闇の中の足元が覚束無い崖を降りて行くのは勘弁願いたい。
そう言う訳で崖を降りるのはここまでにしておこう。
なのでこの穴で今日はゆっくり休もう。だから穴の中に夜に備えてランプを呼び出しておいて、あとは寝袋を呼び出しておく。
そして日が暮れるまでは双眼鏡を覗いて出来る限り情報を集めていた。そこでふと思ったのだ。
もし生物が居るのであれば赤外線望遠鏡、所謂サーモグラフィーと言うやつで捉えられるんじゃないか?と。
そう言う訳で夜になるまでは双眼鏡を覗いて夜になってから赤外線望遠鏡を呼び出し覗いてみる。ランプを手元に置いて電気を消す。
先ずはそれぞれのオアシス付近を覗いてみた。
うーん……どうにも動物や魔物、魔獣は居そうにないな……
最大倍率で覗いてみるが熱源は何処にもない。本当に何も無いのだ。
オアシスの周りに生えているのは随分と背丈が低い木ばかり。森に生えていた巨木が60mと言う大きさだが恐らくあの木々は精々が10m程しか無く、あれじゃぁ飛竜や翼竜、ましてや土竜なんかじゃ絶対に姿を隠せるような物ではない。
他のオアシスも覗いてみたがやはり何もいない。だからこの裂け目には本当に何の生物も居ないのだろう。
全体的に見渡してみたが何も無かった。
ただ、1つ分かったのが細い、本当に細い小川が1本流れている事だった。
他に何か大きな手掛かりがあるかもしれないと期待していたのだが……これ以上は何も得られそうもないな。
小川が流れているという事実が分かっただけ良しとしよう。
諦めて赤外線望遠鏡から顔を離して格納する。
ランプを点けて腕時計を見ると既に9時を過ぎていた。という事は5時間以上ずっと双眼鏡や赤外線望遠鏡を見て居た事になる。
その事実に驚きながらも、地図を取り出して昼間に調査をしようと決めたオアシスと山に印をつける。
魔力を流せば立体的にホログラムの様に浮かび上がる。流石に道案内機能は付いていないが、その印の方角を知らせる機能は付いていた。なので印をつけたオアシスや山の道中で迷子になるなんてヘマをやらかさなくて済みそうだ。
距離は……一番近いオアシスが29km、か。
この裂け目全体はギリギリマッピングされていた。向こう側の崖の一番上から森に向かって2km地点までの、本当にギリギリのラインだ。
裂け目のマッピングがなされてなかったら本当に調査に梃子摺るところだった。
それらの作業を終え、ルートを確認し、身体を拭いて寝袋に入った。
するとかなり疲れていたのか簡単に眠る事が出来た。
朝、穴に差し込む光で目が覚める。
直ぐに起き上がり、顔を呼び出した水で洗い流し完全に目を覚ます。
そしてすぐに朝食の準備に取り掛かった。と言っても水を入れて温まるのを待つだけなのだが。昨日の内にやって置いたルート確認をもう一度行い、温まるのを待つ。
そして出来た朝食を食べる。
因みにメニューは中華丼。美味かった。
朝食を食べ終え、装備を身に着けて昨日同様崖を下って行く。
4時間後、一番底に到着した。
このロープはそのままにしておこう。
帰る時に崖を上る必要があるから、回収してしまうと登れなくなってしまうからな。
そしてこのロープの位置を地図に書き込んでおく。
後々どこだか分からなくなり探し回らなくても良い様に。
降りて切って周りを見ると、地面は岩のような感じでその上に砂が多少かかっていると言う感じだった。木々は1本も無く、こういう場所に生えていそうなサボテンや樹高の低い木もこの付近には見当たらない。
そう言う訳でハンヴィーを呼び出して跨り一番近いオアシスに向かって走り出す。
森の中とは違い、木なんて無いし普通に走り回れるからな。
30km/hのスピードでオアシスに向かって進む。
途中、樹高の低い葉が無く枝ばかりの様な木はポツリポツリと見たがそれ以外は何も無かった。
ハンヴィーを走らせる事約1時間。
オアシスに到着した。そこには本当にオアシスというような感じの光景が広がっていた。生えている木はヤシの木とかでは無いが。
ハンヴィーを降りて歩いて探索する。特に何かあるという訳では無かった。本当に生物が俺以外居ないのだ。
それから2時間程調べたが此処には何か森の異変が分かる様な事に繋がる物は何も無かった。見落としが無い様に結構念入りに調べた筈なのだが……
何かが通った後も無く、獣道の様な物はあったがここ暫くの間一切使われた様子が無い。恐らく異変が起きた時から一切使われなくなったのだろう。雑草が生えてきているから見つけるのも一苦労だった。
切り上げて他のオアシスにも行ってみたが何処も同じような感じだった。
と言ってもレイの山を中心に60km程の範囲にあった5つだけしか見ていないが他も同じような感じだろう。しかしながら2つ、見つけた物がある。
それがあったのは例の山の近くにあったオアシスだが、何かの巨大な足跡のような物があった。正確には足跡と何かを引きずったような跡だ。驚いた事にその足跡の大きさは半端者くらいデカく、直径が10mにもなろうかという大きさだった。そしてその足跡の間隔から見るに2足歩行だと思われるのだが詳しい事は分からない。
その引きずった跡と言うのもかなり太かった。もしこの2つを有する生物がいるとしたら全長や体高と言った物がどれほどの大きさになるのかは分からないがかなりの大きさになる。それこそ土竜なんて目じゃないぐらいに。最低でも土竜の倍の大きさだ。
しかも獣道の様に使われたあとが暫く無い、という訳では無く定期的にここを往来しているようなのだ。
一度だけしか通っていないのなら足跡や尻尾の跡が綺麗すぎるし、何よりも足跡が余りにも不規則に散らばっている事だ。
一度通っただけなら行きと帰りの分だけしか残っていない筈なのに、全く同じ場所に足跡が点在するのは何度もここを往復していると言う事の何よりの証拠だ。
しかもこの足跡や尻尾の跡の主は全く同じ場所しか通っていないのだ。とするとこの足跡の主は複数個体では無く1個体だけの可能性が高い。足跡の大きさを計っても全て同じ大きさだった。ランダムに選んで計ったのにも関わらず、だ。
そして反対側のオアシスを調べてみたらそこには足跡も尻尾の跡も何も無い。他と変わらず荒れ果てた獣道があるだけ。これを考えると足跡の主は1つのオアシス以外は利用していない事になる。
その利用していると思われるオアシスは他と比べるとオアシス全体の大きさは他と大して変わらないのだが池の大きさが他のよりもずっと大きいのだ。普通ならばそれに比例してオアシス全体も大きくなっていいと思うのだがそれは何故なのか分からない。
取り敢えず分かった事を纏めると次のようになる。
「この裂け目に生物はいない」
「居るのは俺とまだ見ぬ巨大生物?だけ」
「巨大生物は複数個体では無く1個体のみだと思われる」
「巨大生物は1つのオアシスしか利用していない」
「そしてその巨大生物はまだ近辺に居る」
このぐらいだろうか
そして不安事項というか、懸念すべきなのは俺が調べようとしている山の方向に向かってこの足跡と尻尾の跡は続いている事だ。
ただ山の方向、と言うだけなら問題は無いのだが(いや、あるにはあるがレベルが違うのだ)、その伸びている方向がピッタリ、寸分違わず山に向かっているとなれば話は別だ。
これが何を意味していてどう関係しているのか分からないがあの山か、もしくはその方角に何かがあるとみて間違いない。そうなればやることは決まっている。
明日はあの山の調査をする。
本当は今すぐにでも向かいたいのだが今日残された時間では足り無さそうだから明日にするのだ。だから残りの時間は他に何か無いか調べる事にする。
夜、俺は足跡や尻尾の跡があったオアシスとは別のオアシスにテントを張っていた。
あのオアシスだと想定される巨大生物がやってきた時に敵だと認識されてしまえば俺に勝ち目は無い。だから離れた場所にテントを張ったのだ。
食事も摂ったし、池で身体を洗う事も出来た。
さぁ、明日の山の調査に備えてもう今日は寝よう。
そしてテントの中で寝袋に包まり、俺は眠った。
ロープの長さって実際の所、どれぐらいなんでしょうか?
調べて見ても30mとか40mの物ばかりで分かりませんでした。
分かる人が居たら教えてくれると有難いです。
あ、漁業用とかは無しの方向でお願いします。
純粋にロッククライミング用とかそういうのだけで。
今回作中に登場したものは作者が勝手にこれぐらいの長さならありそう、と言うだけです。
あと、毎度のことながらエンターキーの連続プッシュで安定の誤投下してしまいました。本当に申し訳ありませんでした。