銃は地球人類が生み出した最高の文明の利器である 作:ジャーマンポテトin納豆
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命令を受けて仲間達と共に偵察をしていた。
すると遠くに明かりが見えた。村かと思って近づいてみると、どうやらそれは村ではなく人間の陣の様な物だった。
丘の上に出来ている。ここからじゃよく分からなかったがこれ以上寄ると見つかりそうだ。
それよりも報告しなくては。
結局報告して、また朝に偵察を俺達がやることになった。
クソ、毎回こういう役割ばっかりだ。あいつが来てから何故か群れがどんどん大きくなっていって人間の町を襲うと言い出した。最初は何を言っているのか分からなかったが考えてみれば人間の食料や雌が手に入ると考えれば悪くないと思った。
この森にもエルフの村があるがあそこに行くのは無理だ。死ぬ。
それは知っていたのかあいつもエルフの村を襲おうなんて言わなかった。
まぁいい。取り敢えず朝からの偵察に向けて休んでおこう。
朝起きて仲間達と偵察に向かった。
そしてあの丘に向かったのだが昼間だから良く見えた。だからもっとよく見ようとして近づいたら丘が何箇所か光ったと思ったらぷっつりと意識が途切れた。
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クレイドルさん達が丘に到着したのは日が暮れてからだった。
それから総出で、大急ぎで天幕を張った。張った場所は銃座を設置した斜面の反対側。俺のハンヴィーが丘の頂点に陣取っているのと下手に適当に天幕を張られると射撃に不利になるから。射界が開けていればいい。その点ここは丘の上で周りは見渡す限り平原だから申し分ない。
一応クレイドルさんに後からだがその辺の許可を求めたらあっさり降りた。
結局その日はゴブリンと接触はせず陣地を構築して終わった。ついでに言うとレナードさんとノーマンさんの分隊が正式に俺の指揮下に入った。どうやらこの丘の陣地構築をしたのが俺とレナードさんノーマンさんの分隊で俺達だと知った時にならばそのまま組ませてしまおう、という事だった。
昼間に準備していた松明を溝、いやもう堀、と言った方が良いな。堀の周りに立てて明かりを確保した。松明と言ってもM2の弾薬を使い切った弾薬箱の中にガソリンを入れて火をつけた程度なんだが。
それでも十分明るい。そして騎兵を中心に歩哨を立たせて警戒をしていた。
歩兵の殆どは疲れていて休息が必要だったのでクレイドルさんの指示により歩兵は休息、騎兵は歩哨といった役割分担をした。
そして俺も歩哨としてハンヴィーの銃座から辺りを見渡す。と言っても暗闇だからそこまで見える範囲は無かったのだが。ただもし偵察が来ていた場合、向こうから俺達の事はさぞかし良く見えた事だろう。
しかし大部分の人間がその日はしっかりと休む事が出来たのは幸いだろう。
かなり無理のある行軍をして来たようだし休める事が出来て良かった。
俺はハンヴィーの座席で寝た。
そして朝になった。
日の出と共に弾薬箱松明を回収する。俺達はすぐさまに起きたが、やはり昨日の強行軍の疲れが残っていたのだろう、歩兵の多くはまだ寝入っていた。それでも起きて来る歩兵は多少居たが。
そして俺は双眼鏡を取り出して辺りを警戒していた時だった。恐らく偵察と思われるゴブリンたちが丘に接近した。
取り敢えず数なんかは置いておいて、クレイドルさんに報告すると偵察だから情報を持ち帰らせないように殺せと言われた。勿論そのつもりだったが。
それを各銃座に報告して射撃準備を取らせる。
全員が流れるように安全装置を解除してすぐに照準を付けていた。
早いな。まぁ俺も負けていないんだけど。
双眼鏡で覗いているとM2の最大射程に入った。しかもまだどんどん近づいてくる。馬にも乗っていない。数は17か。槍と剣が13に弓が4。
編成を見ていると有効射程範囲の2000mに入った。
その瞬間に俺は号令を出した。
「目標ゴブリン偵察部隊。撃て!」
ドドドドドドドドォォォォン!!!!
一斉に響き渡る銃声。
そしてゴブリンの偵察部隊は一瞬にして吹き飛んだ。
取り敢えず仕事は終わり。それぞれの銃座では消費した弾薬の補充を行い更に銃身等に不具合が無いか確認と言った作業を行う。
するとそこにクレイドルさん達が慌てふためいて飛び込んできた。あ、エルフラントさんまで居る。昨日の爆破と射撃練習で慣れたと思ったんだが。
「い、今の音はなんだ!?攻撃か!?」
「あぁ、申し訳ありません。大丈夫です、ゴブリンの偵察は仕留めましたから」
「あぁそうかなら良かった……ではない!今の音はなんだ!?とんでもない音量だったぞ!?」
「あぁ今のは私が扱う武器の攻撃音ですよ」
「そ、そうか……我々からなら良いんだが」
そう言うと天幕に戻って行った。
まだ疲れているんだろう。
そしてレナードさんとノーマンさんの部隊は弾薬補充作業と確認作業が終り次第銃座に着く人間を残して再び寝始めてしまった。しかも銃座の土嚢の上で。そこでいいのかと思って聞いてみたが特に問題は無いらしい。本人達がそこで寝て問題が無いのならいいか。
そうして俺も一度丘を降りて手榴弾でトラップでも作るとするか。
安全ピンにワイヤーを括りつけて両方を固定すればいいだけだ。どうせこれが何なのか分からないから避けて進むなんてしないだろうし。まぁ通じるのは最初だけだろうけど。それでも少しでも削れればいい。手榴弾なんか丘の上からだと投げても届かないからな。手元にある分ありったけ使ってしまおう。
暫くして、即席のブービートラップが爆破せずに残っていた場所の正面にかなりの数が仕掛けられていた。うん、これで一回ぐらいなら攻勢の先頭を吹っ飛ばせそうだ。欲張ってしまえば迫撃砲とかもあれば良かったんだが照準の付け方とか難しそうだし何よりも複数人でないと扱えないものだし、よしんば複数人居たとしても扱えるようになるだけの訓練をする時間が無い。だから今回は見送られた。
そして今日も準備をして一息付いていると、前方から再び少数のゴブリンが接近してきていると報告が入った。
俺も双眼鏡で見てみると先程仕留めた偵察部隊と同じような感じだった。クレイドルさんに殺っていいと言われているから先程と同じ距離に近づいたら射撃をするように言った。
そしてその命令?通りに射撃が始まりゴブリンは挽肉になった。その様な偵察がその後も何度か一定間隔で繰り返された。
そう言えば今の俺には言った通りレナードさんとノーマンさんの部隊が正式に部下として付いている。
今はレナードさんの部隊は射手と弾薬運搬係を担当していて、ノーマンさんの部隊と交代で射手と弾薬運搬係を行う。射手と弾薬運搬係で無い時は休息。
そう言えば伝令が居なくてどうするかとなったがノーマンさんの提案により弾薬運搬係と兼務させることになった。まぁ確かにハンヴィーと銃座を往復するんだからそれが妥当か。
全員射手も弾薬運搬係も熟せる様になっているから心配は要らない。まぁやはり人手不足は否めないが俺一人よりかは遥かにいいだろう。
そして一定間隔の偵察が来ないと思って安心していた。その時偶々俺がハンヴィーの上で双眼鏡を覗いているとかなり遠くに黒い塊が動いていた。
それはゴブリンだった。
ゴブリンだと分かった瞬間に大声で言い放った。
「ゴブリンの大部隊が接近中!!」
瞬間にあちこちで寝ていた兵士達が飛び起きた。そして大急ぎで準備を行う。
クレイドルさん達は鎧を着込む。
俺とレナードさんとノーマンさんの部隊は銃座に付く。そして安全装置を解除して何時でも撃てるようにしておく。
そして俺は双眼鏡を覗いてどれほどの規模、数なのかを確認した。
ん?明らかに2万じゃないな。少ない……?何故だ?どう見ても1000ぐらいしか居ない。いや、1500は居るかもしれないな。でもそちらにしろ少ないな。まぁいい報告しよう。
一応他の方向も確認してみたが何もいない。
ハンヴィーの近くに来ているクレイドルさんにその旨を伝える。
「クレイドルさん、ゴブリンの数は1000~1500程。明らかに少ないです」
「どういう事だ?」
「分かりません。一応、他の方向も確認しましたが何も見えませんでした。陽動の可能性は低いかと」
「分かった。そっちの攻撃範囲に入ったら攻撃を開始して構わないぞ」
「了解です。念の為他方位を警戒していて貰えますか?」
「勿論だとも。集中してくれて構わない」
「ありがとうございます」
許可を貰ったので各銃座に大声で伝える。今はそこまで混乱していないから俺から大声を出すだけで大丈夫だ。
そして各銃座は既に射撃が出来る状態で待機している。
どうやらゴブリン達も偵察をしに行った連中が戻ってこない事を不審に思っているのか足取りはゆっくりとしたもので辺りを警戒しながら進んでいる。
まだ撃たない。偵察ゴブリン達の肉片に差し掛かるまで。あそこが大体2000mなのであのあたりから射撃が可能になる。恐らくそれよりも遠くても十分に威力は発揮できるだろうがやはり銃座の数が6箇所と少なく尚且つ2000mも離れている所に撃ち込むのだから数が少なければ問題は無いが多くなると不味い。流石に抑えきれなくなる。
ただ2000mもあればどれだけ全速力で走ったとしても普通の成人男性でも数分は余裕で掛かる。下手をすると10分必要かもしれない。ましてやゴブリン共はお粗末とは言え装備も身に着けてその分重くなっているから足が遅くなるのは必然。
此処に辿り着く前に片付けれれば良し。出来なくても侵入するには一か所しかないしその一か所も手榴弾製のブービートラップだらけ。
それも突破したとしても待っているのはM2による一点集中射撃だ。
俺だったら絶対に突撃なんてしたくない。御免だ。
そして遂に肉片に差し掛かった。
その瞬間、俺は覗いていた双眼鏡から目を離して大声で言った。
「撃てェ!!」
号令と共に放たれる12。7ミリ弾。
の俺の号令を皮切りに一斉に12.7ミリ弾が撃ち放たれた。俺も遅れて撃ち出す。
最大で毎分635発。それが×6で3810発。
確実に一発一発が別目標に当たるとすれば半分程度の時間で殲滅できる数だ。それを2km先からバラ撒かれるのだからゴブリン達に同情しなくもない。
通常弾しか使っていないのにこの有様だ。これで徹甲弾や焼夷弾を使ったら大変なことになるだろうな。
それでもこちらに向かって進んでくるのだ。
その意気はいいが1500mを切る前に全てのゴブリンが片付けられた。
一応ハンヴィーに乗って俺が確認に向かったが生き残りは一匹として居なかった。
そのついでにガソリンを撒いて火を点ける。偵察ゴブリンの時もやったがこうすることで伝染病や不死者化を防ぐのだ。今回は数が多いから手間だった。
結局その日はこれ以上ゴブリン共が来る事は無かった。
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偵察しに行った連中が戻ってこない。それも一度や2度のみならず何度も何度も。
しびれを切らしたのかアイツは数を送り込むことにしたようだ。どのくらいかは詳しく知らないが1500ぐらいだと聞いた。
まぁ俺達は何万も居るからこれぐらい問題は無いのだろう。
流石にこれだけ送り込めば問題無いだろうと皆が思っていた。
だけど誰も戻ってこなかった。
夕方になっても戻って来ないから夜暗くなってから少ない数で偵察することになった。
それに俺が選ばれてしまった。
嫌だったが行かないとアイツに殺される。だったら行くしかない。だから行った。そこで見たのは殺されて焼かれた仲間だった。
どれもこれも五体満足なのは一つも無かった。足や手、頭が千切れていたり身体の半分が無いのも沢山あった。
そして向こうの方に明かりが見える。多分あれがやったんだろう。今が夜でよかったと思った。そして帰って報告した。
そうしたら朝になったら全員で攻撃することになった。
そこから地獄の始まりだとは誰も知らなかった。
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昨日、合計で1600程のゴブリンを殺した。と言うのも1500程が来てそれを殲滅してからピタリと来なくなったのだ。
変だ、とは誰もが思ったが誰もが休息を取った。まぁ俺達しか戦ってないんだがそれでもだ。休める時に休んでおかないとイザという時に疲労で動けなくては困る。
流石に2万なんて大軍が押し寄せてきたら抑えられなくなるだろうし。
そうしている時、町に応援を要請しに行った伝令が此処に辿り着いた。
返答は応援を送ることは出来ない、という物だった。
誰もがしょうがないと思いながらも何故だと心のどこかで思っていた。
そして今日、再びゴブリン共が現れた。
2万どころかその数倍の数で。
目を疑った。何故?どうして?2万じゃないのか?
頭の中でその様な事がグルグルと駆け回る。
見えるだけでも6、7万は居るだろうか?
その全てがこの丘の陣地を目指して向かって来ていた。
「総員戦闘準備!!!ゴブリンの大軍が来たぞォォ!!!」
考えながらも大声で言い放った。そして寝ている人間も、話していた人間も一斉に立ち上がり戦う準備をし始めた。
そして準備が終わってゴブリンの大軍を見て全員が言葉を失った。
「なんなんだよあの数……」
誰かが小さな声でそう言った。本当に小さな声だったにも関わらず、誰もが聞こえた。それぐらい俺達は黙りこくっていた。
「有り得ねぇ……」
そう、有り得ないのだ。そもそも2万という数でゴブリン集まっているのがまずおかしいのだ。それが数倍にも膨れ上がって現れたのだから誰だって言葉を失うのはしょうがないとも言えた。誰もが呆然としていて立ち尽くす事しか出来なかった。でもそれを許される状況では無いのは明白だった。
「お前達!!今自分のやるべきことを思い出せ!!そしてそれをやれ!!いいか!?」
クレイドルさんが大きな声でそう言って皆が漸く身体を動かし始めた。大急ぎで態勢を整えて迎え撃つ準備をする。
少ない時間だが作戦会議をすることになった。そしてそこには俺も出席することになった。
今までの戦いで全てのゴブリンを倒してきていた俺達。だから参加することになった。
「さて、正直今の状況は絶望的だ。当初2万と予想されていたゴブリンの数が数倍に膨れ上がっている。これは確認できているだけでだ。恐らくもっと増える可能性がある。しかし退く訳には行かない。だからここで奴らを食い止める。何かいい案があるものはいるか?」
その言葉を皮切りに色々と意見は出て来るがどれも意味のない物ばかりであった。
そこで俺は手を挙げる。
「はい」
「イチロー」
「当初私が想定していた方法で戦いましょう」
「それはどんなものだ?」
「まずこの丘に陣取っているので高低差の有利はこちらにあります。そして丘の周りに一部分を残して掘を作ってあります。なのでそこからしか侵入は出来ないのはご存知ですね?」
「あぁ。それで?」
「ゴブリンが向かって来る方向に向けて私の武器をいくつか配置してあります。威力や射程はご存知の通りですのでそれを生かして攻撃します。可能な限りこちらで倒しますがすり抜けてきたゴブリンをあの
残した場所で迎え撃って欲しいのです。というか残したところだと言いずらいですね……テルモピュライとしましょう。我々も攻撃しますがそれでも距離の関係上、困難な事ですから」
正直な所かなり無茶であるとは思うがそれでもやるしかないのならばやるしかない。
この当初想定していた戦い方もどれほど持つか……
でもこれ以外にあの大軍を相手をする事が出来る方法は無い。
クレイドルさんもエルフラントさんもそれしかないと分かっているから頷いてくれた。
「ふむ……まぁそれしかないだろうな。よし、それでいこう」
「あ、それともう一つ。テルモピュライの向こう側には絶対に行かないで下さい。もし向こうに行った場合、私が仕掛けた罠に引っかかる可能性があります。それに向こうに出て行っても数で磨り潰されてしまいますから」
「了解した。徹底させよう」
「ありがとうございます」
「よし、それでは諸君!行動に掛かってくれ!」
「「「「了解!!」」」」
「あぁそれとイチロー、あの武器の攻撃のタイミングや指示は全て君に一任する」
「分かりました」
そして準備、と言ってもそれぞれの持ち場に着くぐらいだがそれも終わり、あとは攻撃するだけとなった。
しかし俺達銃座は予備の弾薬を運んだりと意外と忙しかった。それと今まで簡単な戦闘ばかりで忘れていたのだがM2は銃身の交換が出来るようになっている。長期戦が予想されるために急遽用意した。
それと付け焼刃ではあるが取り換えの練習も行いなんとか態勢を整える事が出来た。
クソ、こんなことならしっかりと確認するなりしておけばよかった。
そしてあの2000mラインに差し掛かった時、号令を待たずにそれぞれのM2が射撃を開始した。
最初から2000mラインにゴブリン共が入ったら号令を待たずに撃っていいと言っておいたのだ。
その射撃音を皮切りに先頭が開始された。
「伝令!!2、4、6番銃座は2000mラインを突破したのを狙えと伝えろ!!」
「了解!!」
射撃音もあって声を張り上げる。
弾薬を取りに来た弾薬運搬係兼伝令にそう伝えて送り出す。今はノーマンさんの分隊が射手とかを担当してレナードさんの分隊は休息を取って貰っている。
しかし伝令に言った通り2000mラインをどんどん突破され始めていた。
途中、加熱した銃身を交換したりするが、それもかなり速いペースだ。
既に戦闘が始まってから10分程。
たったこの10分でどんどん2000mラインを突破されている。
数に任せて突撃してくるゴブリン共は勢いが全く衰えずそれどころか増しているようにさえ見えた。気のせいだと思いたいが気のせいではないのだろう。休む暇なく射撃をしているのに一向に減らない。
それから一時間後。
既にテルモピュライの約200m程の地点まで押し寄せてきていた。
もう2000mラインへの射撃はせずにゴブリンの最前線への射撃に切り替えている。しかしそれでも勢いを留める事は出来ず徐々に押されていく。
そして俺が仕掛けた無数のブービートラップにまで到達された。
ドォン!ドドォン!!
仕掛けておいた場所で爆発が連続して起きる。纏めて何匹も吹き飛ばすがそれでもゴブリンへの損害は小さい。
それでも射撃を続けてる。俺も皆も。
遂に丘を包囲された。だが堀があるお陰で損害は無く、テルモピュライへの攻撃しかない。
矢を放ってきたりもするが飛距離の関係上こちらが丘を下るか、もしくは堀とテルモピュライを突破されない限りは届くことはまずありえない。
それを分かったのかテルモピュライへの攻撃へ全力を注ぎ込んでくるゴブリン共。
唯一の救いだ。そこに持てる火力を全てぶつけているが状況は悪い。
今、テルモピュライのすぐ前まで前進された。
俺がいる場所からゴブリンの最前列まで距離は凡そ200m。堀を丘の頂点から200mで作ったからだ。道幅がたった15m程しかないテルモピュライに殺到するゴブリン共。しかしそれはM2の一斉射撃によって未だに突破はされていない。
狭い範囲に多くの火力を集中すればするほど効果は上がる。
今がそれだ。しかも遮蔽物は無く、殺されたゴブリンの死体は生きている仲間のゴブリンの進む足を遅らせる。
そんな動きが鈍ったところに弾をばら撒いていく。通常弾とは言えゴブリンの身体を貫通してその後ろにいるゴブリンまでも巻き込んで進んでいく弾。
足元に転がっている仲間の死体が邪魔だと分かったのか奴らは死体を引きずって後ろに下げ始めた。その瞬間に攻勢の手が休んだ。
しかし俺達は引き金を引く手を休める事は無い。
既に銃身は赤くなっている。銃身交換が間に合わ無くなってきていたのだ。何とかして交互に銃身交換をしているがそんな事よりも撃たなければ突破されてしまうので今じゃ本当に必要最低限でしか交換していない。
今この時も弾薬運搬係の人達がハンヴィーと各銃座を必死になって往復している。
「いくら往復しても直ぐに撃ち切っちまう!!」
「もうそろそろ俺達も限界だぞ!?」
「イチローさん!!もう弾薬補給が追い付かないです!人数を増やしてください!」
度重なる弾薬補給の往復で既に疲れ切って足取りも重い。それでも必死になって運んでいるが効率が悪いのだ。あれから何度も交代で休息を取っているがそれでも疲労はたまる一方。
俺はハンヴィーに居るから弾薬を運んだりなんて必要は無いからそこまで疲労は無いから問題は無い。でもレナードさんもノーマンさん達はそうはいかない。伝令と弾薬運搬の兼務、そこに射手まで入って来るのだから疲労は計り知れない。
しょうがない。休息をとっているノーマンさんの分隊も総動員でやるしかないか。
「ノーマンさんの分隊も今すぐに参加させてください!!」
「了解!!」
この際休息だなんだ言っていられない。
15人が必死になって弾薬を運んでいく。それでも消費の方が多い。まだハンヴィーに積んでいた分と追加で呼び出した弾薬で事足りている。
俺もちょくちょく弾薬を呼び出してハンヴィーの車内に補充している。まだ金に関しては余裕があるし問題は無くは無いが大丈夫だ。あくまでも現時点では、という事でしか無い。それも長くは持たないだろうと予想出来る。
そしてそれから戦闘開始から4時間後、ゴブリン共は撤退を開始。ゴブリン側の損害は凡そ3万。当初予想されていた総数を軽く超える数であった。
しかし何故今このタイミングで撤退した?このまま攻め続けていればその内に、物量に耐えきれなくなった俺達を磨り潰せただろうに。何故今になって撤退を?訳が分からなさすぎる。それでも考えている暇は無い。
怪我人が居るのならばそれの治療を、そして俺達は弾薬の補充、M2を一度格納する。どういう原理だか知らないが一度格納すると元の完璧な状態に戻るのだ。まぁその辺は良く知らんがまぁ有難いぐらいにしか考えてないのだが。だってどうやって確かめろと言うのだ?少なくとも確かめる手段が思い付かない。
格納して暫くしてからもう一度銃座に置く。今回は交換用の銃身を多めに用意しておいた。まぁそれでも意味が無くなるんだろうが無いよりはマシって事だ。
銃座には交換用の銃身、弾薬を先程よりも多く置いてある。
これで何時攻められても攻勢の初めの方ならば押しとどめる事が出来るだろう。
そして今の内に食事を済ませて少しばかりの休息を取った。そして再び始まるであろう大規模攻勢を待ち構えたのだが何も来なかった。
おかしいにも程がある。普通これだけ攻撃したのだから撤退したとしても間髪入れずに再攻勢を仕掛けてくる筈なのだが。何がしたいのだ?もしこの丘を迂回するのならば不味いな。一応偵察した方が良いのか?
するとそこにエルフラントさんがこちらに来た。
「おい、団長が呼んでいる。来い」
「あ、分かりました」
どうやらクレイドルさんに呼び出されたらしい。相変わらずエルフラントさんは態度キツイな。物凄く睨んで来てるし相変わらず嫌われているのか。
「クレイドルさん、一郎です」
「おぉ、来てくれたか。そこに座ってくれ」
クレイドルさんの天幕に向かい、声を掛けると指示を出していたクレイドルさんが中に案内してくれた。
言われた通りに椅子に座る。
「さて、急に呼び出して申し訳ない。幾つか聞きたいことがあってな」
「聞きたい事?」
「ゴブリンの行動がな。あそこまで攻めてきておいて撤退したのが気になるのだ。一応他の面々に聞いてみたのだが「我々に臆して撤退した」、とかそんなものばかりでな。そもそも戦ったのは君達だけなのだがな」
「そうですか。それと私を呼んだのと何の関係が?」
「君の意見も一応聞いてみようかと思ってな」
「まぁ確かにあそこで撤退と言うのはおかしいです。何を企んでいるのか分かりませんが何かあるのは間違い無いですね」
「迂回して町を目指すか、それとも夜襲を仕掛けて来るのか。他に何か目的があるのか。どちらにせよ何かあるのは間違いない」
「どうしますか?偵察をした方がいいと思いますが」
「偵察をした方が良いと言うのは賛成だ。しかしそれを行うとなると当然危険度が比じゃなくなる。イチローや私の部下の騎兵ならば足の速さで偵察を行うことは出来るだろう。しかしギルドの人間は馬を持っていない。流石に徒歩で偵察をさせるわけにもいくまい。それにそんな場所に部下も君も送り込むわけには行かない」
「いえ、私ならば問題無いです」
「しかし君は既に今までの戦闘で指揮を執りながら自身も戦い続けていただろう?」
「私は他の皆さんと違って運んだりするのに駆け回っていないですから体力的にはまだ十分です」
「しかし君は今後も予想される戦闘で指揮を執って貰わなければならない。今此処で君の体力を消耗させるわけには行かない。それに今は一人の損失でも避けたいのだ。この通り我々の戦力は限られているし君の方も限界はあるのだろう?」
「それはそうですが、私は直接動いたりしていたわけでは無いですし、偵察すると言っても馬に乗ったりするわけでは無いですから。どうか私にやらせて頂けませんか?」
「しかし…………分かった。だが条件がある」
「条件?」
「君一人で送り込むわけには行かない。2人必ず連れて行く事だ」
「……断るという事は出来ませんか?」
「駄目だ。先程も言ったが君を今ここで失うわけには行かない。本来ならば偵察に行かせることも却下したいぐらいだが、確実に偵察を成功させる事が出来て尚且つゴブリンに見つかっても逃げ切れるとなると君しかいないからな。しょうがなくだ」
「分かりました。付いてくる人はこちらで指名しても?」
「1人はこちらで指名させてもらおう。もう1人は好きにすると良い」
少しばかり手間取ったが何とか俺が偵察する事が出来るようになった。問題は誰を連れていくかだが、レナードさんでいいか。この人にはM2の射手をやって貰おう。
もう1人は助手席に座ってもらうしかないな。
というか誰が来るんだろうか?
「レナードさん、偵察に行く事に成ったのですが一緒についてきてもらう事は出来ますか?」
「偵察ですか?えぇ、いいですよ」
「ありがとうございます。準備をするので少し待っていてください」
「いえ、私もお手伝いさせていただきます」
「ありがとうございます」
レナードさんに関しては二つ返事で了承してくれた。
そしてノーマンさんにはもしゴブリンが攻めてきた場合は代理で指揮を執ってもらう事にした。
そして準備していると声を掛けられた。
「おい、偵察に行くのなら早くしろ」
「エルフラントさん?どうして此処に?」
「団長の命令でお前の偵察に付いて行く事になったんだ。全く、なんで私が……」
まさかのエルフラントさんが同行者の一人だった。まぁ別に良いんだが大丈夫だろうか?
取り敢えずエルフラントさんには助手席に座っていて貰い、俺とレナードさんは準備を進める。万が一俺が帰ってくる前に攻勢が再開された時の為に弾薬を可能な限り多く呼び出しておく。
後はハンヴィーのガソリンを満タンにしておく。
準備で大体30分程使ってしまったがまだ時間的には昼頃だ。多分1時ぐらいだろうか?
再度、問題が無いか確認をして運転席に座る。
「レナードさん、射手をお願いします」
「お任せください!」
「エルフラントさん、気を付けますが大きく揺れたりするかもしれないのでお気を付け下さい」
「ふんッ」
相変わらずエルフラントさんは俺の事が嫌いらしい。レナードさんは既に初弾を装填して何時でも撃てる状態で銃座に付いている。
それじゃ、出発しよう。楽しい楽しい偵察行動の始まりだ。