耳をつんざくような音を立て、アームファングとナスカブレードが交ざり合う。Wが白い刃の生えた腕で切りかかると、ナスカはそれを避けブレードでWを切り裂く。
「やるねぇ…!ファングなら機動力と攻撃力もサイクロンジョーカーより優れてるし、それなりには有利だと思ったんだけどなぁ。2年前には別の幹部ドーパントを圧倒したくらいだし」
「私のナスカは適合率が高いほどレベルが上がっていくメモリなんだ。私の特訓の積み重ねが君と互角に渡り合える要因でもあるんだがな」
Wはナスカの懐に入り込み、格闘戦へと持ち込む。
\ショルダーファング!/
蹴りと拳を叩き込む隙にWは後ろへとショルダーファングを投げ、ナスカを後ろへ後退させる。ショルダーファングがこちらに戻って来るのを確認すると、自分に命中しないよう素早く横へと避けた。
ショルダーファングはナスカに命中し、ナスカはその場でよろよろとしながら立ち上がる。
「確かに、なかなかの攻撃力だ。ならば私も本気を出すとしよう!超高速!」
その言葉と同時に、ナスカの姿が見えなくなる。何処から攻撃が来るのかを見計らっているうちにも、Wは無慈悲に攻撃を受け続けてしまう。
「ぐっ!?何だ…?超高速の負担が身体にかかったのか!?」
突如としてナスカの身体に激痛が走り、超高速状態が解除される。
\アームファング!/
「今がチャンスだ…!はぁぁっ!!」
果南はファングの角を押し、腕からアームファングを出現させる。そのまま動けないナスカに腕を振り下ろそうとするのだが…
『果南!待って!!』
ナスカの首にアームファングが命中するギリギリのところで鞠莉が果南を止める。
「何故止めた…!?」
『さぁ…あれが目に映ってしまったから、と言えばいいのかしら』
鞠莉は掲示板に貼られたポスターを指差す。そこには『豊かな内浦市に!』の文字と共に、内浦のマスコットキャラであるセイウチのキャラクター・うちっちーが描かれていた。
『前にあなたと話した時、このTownを愛してるというのがよく伝わって来たの。私はその気持ちに嘘はないと思ってる』
「それがどうした。今は関係のない話だろう?」
『確かに関係ない。でも1つだけ聞かせて、あなたがガイアメモリを配って笑顔になった人はいる?』
「それは…」
『そうよね、答えられなくて当然。だっているはずがないもの。強いて言うならメモリを手に入れて目的を成した、遂行しようとした人間が笑顔になった。けどそれは一時的なもの。最終的に私が見たのは使った人間が崩壊していく様子、そして…かけがえのないものを失くした人々の悲しみや涙だったわ』
「知った話か!それは購入した者の自業自得だ!全て自分達が引き起こした事だ!私は何もしていないッ!!」
『ふざけないで!!それは他の人を棚に上げて自分の罪から逃げているのと同じよ!あなたが何故バイヤーになったのかはわからない。でもあなたがメモリを配った事実は変えられない。それで何もしていないだなんてよく言えたわね!あなたがメモリを配ってなければ…少しでも守られたものがあるかもしれないのよ…?』
鞠莉は過去を思い出し、言葉を詰まらせる。
友を助けようとメモリに手を出した一之瀬マリカ。友と共謀して祖母の喫茶店を再び栄えさせようとする為に他のカフェを破壊しようとし、最終的にはその友さえも殺害した永山みなみ。
クラスメイトを自らの手を汚さずに殺害しようとした支倉かさね。
ダイヤモンドの魅力に溺れ、私利私欲の為に数々の人を拉致した淡島のホテルの女。
演劇に真剣に向き合いたい気持ちからメモリに手を出し、死者や遺族の気持ちを弄んでしまった桜坂しずく。
再び売れたいという理由でメモリに手を出し、A-RISEやSaint Snowを解散へ追い込もうとしたBeautiful Freesiaの関係者…
ガイアメモリに手を出した者、そしてそれに関わった事で大切なものを失った、失いかけた人間を鞠莉達はこれまでに幾度となく見てきたのだ。
『あなたのやるべき事はガイアメモリのバイヤーじゃなかった。本当に街を愛してるのなら、悩んでいる人に声をかけてあげるのが正しい判断じゃなかったの?今のあなたがしている事は自分の愛してる場所を…自分にとって大切な場所を自分の手で汚してるのと同じじゃない』
「っ……」
『A-RISEだってそう。あなたはどうしてアイドルをやってるの?』
「それは…私の好きな事だからだ。ツバサとあんじゅと出会い、初めてやりたい事だと思えたから!」
『それだけ?私は違うと思うわ。少なからず、あなたには自分の音楽を聴いてくれる誰かを楽しませたい気持ちや笑顔にしたい気持ちがあったはずよ。それが伝わったからこそ、あなたが静岡を心から愛してると私は思った』
「………」
『でもね、本当にあなたのしている事が正しいのか一度考えてみて。自分や仲の良い人とだけ気持ちを共有してもわからない、だからこそもっと他の人について知り、考えるのよ。そして、みんながHappyになる為の方法がわかったらそれがSuccessするように努力する…まぁ、これは私の考えだから全員がそう思ってくれるかどうかはわからないけどね』
「君の考えにも一理ある…だが私は自分が何をしたらいいかわからない…!私がしてきた事は変えられない!!もう手遅れだ…!」
『英玲奈っ!!』
ナスカは翼を広げて飛び去ってしまった。彼女の姿は既に見えなくなっており、2人はその背中を追いかける事もできなかった。
「…私には、伝わったよ?」
『えっ?』
「鞠莉の気持ち。きっと英玲奈さんにも伝わっているんじゃないかな」
『ふふっ、そうね。だったらいいけど…』
鞠莉も果南の発言に思わず微笑む。同時に鞠莉は、英玲奈にかけた言葉はきっと伝わると信じるのであった。
その頃、Wとナスカの戦場から少し離れた場所では意識不明となった虎之助を三日、ダイヤ、ルビィの3人が見守っていた。
「虎之助くん起きて!死んじゃ嫌だよ…!」
「三日ちゃん、落ち着いて!もうすぐ救急車も来ると思うから…!」
「まだですの…?どうか間に合って下さい…」
ルビィはポロポロと涙を流す三日を落ち着かせようと肩をさすっていた。
ふとルビィが三日の左腕を見ると、そこに奇怪な模様があるのを発見する。三日の腕をよく目を凝らしながら見ると、そこにはドーパントのガイアメモリを挿入する為の生体コネクタが打ち込まれていた。
「お、お姉ちゃん!三日ちゃんの腕にコネクタが!!」
「えっ!?どういう事ですの!?」
「ダイヤ、ルビィ?どうかしたの?」
丁度同じタイミングで目を覚ました鞠莉は慌てた様子のダイヤとルビィに話を聞く。同時に果南も到着し、三日の腕に打ち込まれたコネクタを見て驚愕した。そう、三日こそがバードメモリの正式な使用者だったのだ。
「ごめんなさい…!もっと早く言ってたら…」
「いえ、気づけなかった私達も悪いわ。こちらこそごめんなさい」
「三日ちゃん、どうしてあなたの腕にコネクタが…?」
「ちょうど2週間前の事なんですけど…」
病院のフリースペース。三日は鞠莉達に自身がガイアメモリを手に入れた経緯を話していた。
三日の話曰く、彼女はサッカー部のマネージャーをしていたのだが、積極的に動けずに部員や顧問に迷惑をかけてしまっている自分にコンプレックスを抱いていた。そんな中、2週間前に謎の女からバードのメモリを渡され自分を変えたいと思っていた三日は言われるがままにメモリを受け取ってしまい、そのままコネクタを打ち込まれたのだという。
「メモリを手に入れてからは伸び悩んでいた成績も少し上がって、小テストでクラス10位以内に入ったり、苦手な運動も少し克服できるようになったんです。それからしばらくして、天くんと虎之助くん達1年生の部員の何人かに私がガイアメモリを持っている事を知られてしまって…遊び半分で天くんと虎之助くんが私のメモリを使い始めたんですけど、そこから2人があんな風に危ない事をするようになって、流されるままに私や他のマネージャーの子も家出してたんです」
「メモリは誰から渡されたの?」
「深く帽子を被ってたので顔はわかりませんでした。ただ、髪にウェーブがかかっている女の人だった事は覚えてます」
「メモリを渡したのは英玲奈ではなさそうね。メモリが改造された物だという事も知らなかったようだし」
「ごめんなさい…私の心が弱かったせいで天くんと虎之助くんがあんな事に…助からなかったらどうしよう…」
「大丈夫ですわ三日さん、ガイアメモリはもうあなたの手元にありません。だからあんな事はもう起きませんし、あとはお二人が回復するのを待ちましょう」
「じゃあ、帰ろっか。明日は海開きに向けての海水浴場の掃除もあって忙しいし、三日ちゃんも戻って来たから依頼はこれで解決だね」
「そういえば、明後日で海開きね。三日、明日から週末だしゆっくり休んで。あなたのParentsと六日も心配してたわ。小原家が責任を持って家まで送るから安心して」
鞠莉は車を呼び、三日を家へ送り届けた。果南とルビィ、ダイヤもそのまま帰宅する事になり、この日は解散となった。
一方ホテル『Saint A-RISE』の社長室では、英玲奈が回収したバードメモリをあんじゅへ届けていた。
「このガイアメモリなんだが、使い回しが可能になった欠陥品だった。おそらく違法改造か製造過程でのトラブルかもしれない」
「それはまずいわね。しかも第二次性徴期の子供が使えば精神汚染や過度の暴走が起こる可能性が高いもの。回収して正解ね」
「ガイアメモリは15歳未満の子供の使用を想定して造られていないからな。そういう訳だ、バードメモリの製造ラインに問題がなかったか調べておいてくれないか」
「えぇ、わかったわ。それよりも何だか疲れてる顔をしてるわね、大丈夫なの?」
「まだナスカの超高速に身体が慣れていないのかもしれない。ここの所訓練も根を詰め過ぎてしまったからな…」
「そう…とりあえずは休んだ方がいいわ。もうすぐライブも控えているし、体調は管理しておいて」
英玲奈は『あぁ』と短く返し、社長室から退出した。
どこかよろよろとした足取りの英玲奈を見たあんじゅは机に置かれたバードメモリを一瞥し、小さくため息をつくのであった。
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翌日の早朝。三津海水浴場では、海開きに向けた砂浜の清掃活動が浦の星女学院の全校生徒により行われていた。
「果南さん、そちらのゴミ袋にはまだ入りそうですか?」
「一応入るけどそろそろ枚数が足りなくなってきたかも。鞠莉、ゴミ袋取ってきてくれない?5枚ほどあれば充分だと思う」
「OK!ちょっと待ってて!」
鞠莉は十千万旅館へゴミ袋を貰いに行こうとしていた。そんな時、1人の女性が少し離れた場所から海を眺めているのが見えた。
「英玲奈じゃない。何しに来たの?」
「別に君と戦いに来た訳ではない。少し考え事をしていたんだ」
「昨日の事かしら?」
「私は自分が何をしたいのかわからなくなってしまったんだ。ガイアメモリの力でこの街を変える、なんて最初の頃は言っていたが、君達を含めた静岡県民はそれを望んでいないのではないかと思うようにもなってね」
「私の嫌いなものってわかる?私はこの街を…というより静岡を泣かせる悪が本当に嫌いなの。人はみんなHappyにならなければいけない義務があると思っているから尚更ね」
「なら、私は既にこの街を泣かせる悪だな。人を唆し、ガイアメモリを売る…今まではそれを当たり前のようにしてきたが、間違っているのかもしれない…」
「それに気づけただけでも素晴らしい事よ。私ね、昨日言った事が少なからずあなたには伝わってるんじゃないかって思っていたから」
「だが今さら気づいたところで失ったものは戻らない。前にバイオレンス・ドーパントが出現した事があっただろう?あれは私がメモリを売ってしまった事が原因なんだ。そのせいで理亞が友達と遊ぶ時間を奪ってしまったし、沼津市内にも被害が出た。それだけではなく春に起きた喫茶店の襲撃事件も…」
「それよ、英玲奈!」
「えっ?」
「何をするべきかわからないなら、まずはあなたの罪を数えなさい。そのようにしてあなたが奪ってしまったものを少しずつ思い出せばいいのよ。それを糧にして、人間は成長できる。次は間違えてしまわないように、1つ1つ心に刻み込むのよ。間違えたのなら何度だってやり直せばいい。生きている限り、未来はずっと続いているんだから!」
「私の罪を…数える…」
「剛が…私の亡きTeacherが言ってたの。『罪と向き合った瞬間から新たな未来は始まっている』って」
その言葉は、鞠莉が探偵として駆け出しの頃、剛が『Crimeを犯した人は絶対に許されてはいけない』と発言した鞠莉にかけた言葉であった。
どんなに償いきれない事をしたとしても、生きている限り新たな未来は開く事ができる。やり直せるチャンスがある。そのような意味の込められた、鞠莉にとっての大切な言葉だ。
「あなたにはこの場所が好きだという気持ちがあるんだからきっと大丈夫。壊してしまった、汚してしまった分だけ今度はあなたが大切なものを守れるようになればいい。あなたは私と立場が違うけど、罪と向き合って誰かの笑顔を守りたいと願う事ができれば、誰だって正義の味方…仮面ライダーになれるわ!」
「仮面ライダー…か。君ってハーフボイルドだな。私のイメージする探偵とは違うけれど、嫌いではないよ」
「Oh,また言われたわ…私のどこがハーフボイルドなのかしら?でもそう言ってくれるのは嬉しいわ!」
「ふっ、そうか」
「じゃあ、私はそろそろ清掃活動に戻るわね!『理事長がサボるなんて生徒の模範として正しくありませんわ!』って硬度10に怒られるから♪」
英玲奈は硬度10という謎の単語に首を傾げたが、鞠莉が走り去ってしまったのでそれが何なのかは聞けなかった。砂浜を見ると、鞠莉が千歌と梨子に話しかけられており、楽しそうに笑顔を浮かべていた。
「私の守るべきものは、あのような眩しい笑顔なのかもな…」
英玲奈は鞠莉達を見つめながら僅かな微笑を浮かべるのだった。
「みんなお疲れ様~!お茶淹れました~」
「ありがとう、ルビィ。それにしても千歌さんの思いつきにはビックリしますわね」
「本当だよね。海開きでミニライブなんて聞いた事ないよ」
明日の早朝の海開きの時間にAqoursが三津海水浴場でライブをし、同時にスカイランタンを空へ飛ばすという企画を千歌が発案したらしく、夜にはステージ作りの準備が急遽入る事になった。ちなみにこのライブは、内浦の住民への感謝を伝える事とMVの撮影が目的となっているらしい。
「でもAqoursのLiveが見られるなんて凄く嬉しいわ!花陽も誘っておかないと♪」
「そうだね!天気も良いみたいだし、楽しみだなぁ…」
遠足前のようなワクワクとした雰囲気に包まれた部室。そんな中、鞠莉のスタッグフォンがけたたましい音を鳴らしながら着信を告げる。六日からだ。
「もしもし?ゴメンね六日!Reportは海開きが忙しくてまだ書けていないの!もう少しだけ待ってもらえる?」
『それどころじゃないのよ!三日のヤツ、また家出しちゃってさ…』
「えっ?何があったの?」
『しかもなんか様子が普通じゃなかったの!目の焦点が明らかに合ってなくて遠くを見てるみたいで…運動もそんな得意じゃない方だったのに慌てて止めようとしたパパを軽々と蹴り飛ばして、その時にパパも軽く怪我しちゃったの…』
鞠莉はまずい状況である事を察した。完全に身体が成長していない人間がガイアメモリを使う事は危険な事であり、メモリの力により急激な運動能力の上昇や理性のコントロールが難しくなるというリスクを伴っていた。
『今アタシも三日を探してる!鞠莉ちゃんももし良ければ手伝ってくれない?』
「Of Course!!見つけたら連絡するわ!」
「何かあったの?もしかして三日ちゃん?」
「えぇ、メモリの副作用で暴走症状が出たみたい!探しに行って来るわ!」
鞠莉はハードボイルダーを走らせ、三日の捜索に向かった。
一方、綺羅家の屋敷へ戻った英玲奈は自身のガイアメモリの販売記録を見ながら、先程の鞠莉の言葉について考えていた。
「私の罪…最早数え切れない程だな。こんな私でも正義の味方とやらになれるんだろうか…」
英玲奈は外の空気を吸おうと部屋から出る。すると、自分の見知らぬ扉から出て来たあんじゅが帽子を深く被りながら何処かへ去って行くのが見えた。あんじゅが出て来たのはツバサの部屋の横にあるグレーの重たそうな扉であり、英玲奈は未だにその扉の先に入った事がなかった。
英玲奈はそっと扉を開き、中へと足を進めた。扉の奥には長い螺旋階段があり、地下へと続いているようだった。
階段を下り終えると、巨大なクリーム色の扉が現れた。それを開け中へ進んで行くと、広い洞窟のような場所に辿り着いた。洞窟の中央には1箇所だけ強い光の出ている穴がある。
「あら、英玲奈もここに来たのね」
英玲奈が穴の中を覗き込むと、いつの間にかツバサが横に立っていた。
「ここは地球の記憶と繋がる場所なの。考古学の博士だった父がこの場所を見つけ、研究をする為にこの真上に屋敷を立てたの」
「地球の記憶…ガイアメモリのパワーはここから来ているのか」
「えぇ、そうよ。ちなみに…私が今興味を持っているのがバードのメモリ。有益なデータを取得できそうなのよね」
「だが、あのバードメモリは欠陥品だった。既に私が回収しているから、もう使われる事はない」
「あぁ、そういえば英玲奈には言っていなかったわね。あのメモリは欠陥品ではないわ。私が直々に改造したの」
「なっ…!?何故そんな事を…?」
「メモリのリミッターを解除する事により、複数人での使い回しが可能となる。その上身体の成熟が不完全な第二次性徴期の子供に使用させる事で、メモリはその生命力を奪い取って急速に進化し、上手くいけば友人や知人もそれを使用してくれる…だから通常の倍以上のデータを取得する事ができるようになるのよ」
「その後は…使用した人間が死ぬという事か?」
「メモリの力に耐え切れず、いずれ身体も限界を迎えるでしょうね。まぁ無理もないわ、身体が完全となった人間が使うのとは話が違うのだから。けど無駄な死にはならないわ。新世界を創る為に必要なものが手に入る訳だし、より強力なガイアメモリを製造する事も可能…彼らは私達UTXに大いに貢献する事になるのよ」
「それで…世界を変えられると思っているのか…?」
「えっ?」
「君はこの街を…静岡を壊そうとしているだけだ!大切な命や時間、場所は1度失ってしまったら元には戻らないんだぞ!?」
「それはメモリを手にした者、そのきっかけを作った愚かな人間によるものよ。私達はメモリを売っているだけじゃない。今更何を言ってるの?」
「私達がそれを造り、売る事が悲しみの根源となっているというのに気づかないのか!?君にも大切なものがあるんじゃないのか!?もしガイアメモリに君の大切なものを奪われたらどうする!?」
「大切なものなんてある訳ないでしょう?この世には価値の無いものばかり。だから私は地球の記憶を秘めた神の子箱…ガイアメモリを使ってこの世界を変えようとしているのよ」
「君とは分かり合えないみたいだな…なら君と戦う事になっても、私は君を止める!!」
\ナスカ!/
英玲奈はガイアドライバーにナスカメモリを挿し、ナスカ・ドーパントに姿を変える。ナスカは一瞬躊躇うもそれを振り払い、ツバサの首にナスカブレードを向けた。
「メモリは何処…?あれがないと私は…」
「これを探しているのかしら?」
バードメモリを求め、彷徨う三日。彼女はメモリの力に完全に支配されていた。そんな彼女の元へ、帽子を深く被った女が現れた。
「早く!私にそれを返して下さい!!」
「いい子ね。少し愚かでもあるけれど…」
\バード!/
帽子を被った女…あんじゅは三日の腕のコネクタにメモリを挿した。三日はバード・ドーパントになり、高笑いをしながら飛び去って行った。
「あら、どういうつもりかしら?仲間に剣を向けるなんて」
ツバサはナスカブレードを前にしても、余裕の表情を崩していなかった。
ナスカは声を荒げながらツバサを問い詰める。
「バードメモリは何処にある!?」
「あんじゅが既に持ち主に返した頃でしょうね。いくらコネクタを持つ人間だとしても所詮、メモリの力に耐え切れる事はできない。持ち主は死ぬわ」
「どうすれば彼女を助けられる!?答えろ!!」
「身体にダメージを与えないよう、体内のメモリのみを正確に破壊するしか方法はないわ。でもそれを聞いてどうするつもりなの?メモリのみを破壊するなんて不可能よ?」
「決まっている!私が…ッ!?がっ…」
ナスカの身体に謎の激痛が走る。その痛みは昨日、Wとの戦闘で感じたそれと同じだった。しかし、今起きている激痛はその時と比になるような痛みではなかった。
「どうしたの英玲奈?何だか体調が優れないみたいね」
「まただ…何だ?これは…うっ!」
「ナスカメモリの急激なレベルアップに身体が追いついていないんじゃないかしら?どうやらあなたは超高速の力、レベル2が限界だったようね」
「何っ…?」
「あなたはもうすぐ死ぬ。ナスカを使いこなせない人間にもう用はないわね…すぐ楽にしてあげるわ」
\テラー!/
ツバサは黒いオーラを纏い、テラー・ドーパントに姿を変えた。周囲には悪意に満ちた波動が広がり、ナスカに少しずつダメージを与えていく。
「ありがとう、今まで私に協力してくれて。仲間がいなくなるのは残念だわ…」
「くっ…超高速っ…!」
ナスカは力を振り絞り、超高速でその場から逃げ出した。そこへ聖良が扉の向こうから現れ、目の前で起きた事に驚きを隠せずにいた。
「これ以上生きていても無意味だというのに…」
「ツバサさん、一体何が…」
「聖良さん、英玲奈を始末してきなさい」
「えっ…?」
「彼女は私と志が違ったみたい。さぁ、早く」
「ですが…」
「早くしなさい。あなたが何かをしたところで私の考えは変わらないわ」
「!!…わかりました」
英玲奈は自分にアイドルとしての心構えを教えたり、迷っている時には助言してくれた。フェイク映像で炎上してしまった時、理亞がバイオレンスに襲われた時も、彼女は自分がどんな立場に立っていても助けてくれた。そんな大切な人を裏切れる訳がない。そうツバサに言おうとしたが、彼女の威圧に負けた聖良は、やむを得ず従うしかなかった。
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三日を探す鞠莉。沼津市内をくまなく探したが、彼女は見つからなかった。鞠莉が焦燥に駆られていると、何処からともなく爆発音が聞こえ、真上を鳥のような影が飛び去ったのが見えた。
その後を追うと、沼津港の立体駐車場でバード・ドーパントが火球を飛ばしながら人々を襲っていた。
「遅かったようね…」
鞠莉は周囲の人が遠ざかったのを確認し、ダブルドライバーを装着する。浦女にいた果南の腰にもドライバーが出現し、果南は鞠莉がバードを発見した事を察した。
『鞠莉、三日ちゃんが見つかったんだね?』
「えぇ、早く止めないと!」
\ジョーカー!/
\サイクロン!/
「「変身!!」」
\サイクロン!ジョーカー!/
『空の敵にはこれだね』
果南はスタッグフォンを操作し、リボルギャリーを呼び出す。リボルギャリーが開くと、Wはハードボイルダーのユニットをタービュラーユニットに付け替え、ハードタービュラーへと変化させた。
『メモリはこれにして…』
\トリガー!/
\サイクロン!トリガー!/
続いて果南はボディサイドのメモリをトリガーに変えた。
「あはははは!!私と遊んでくれるの?鞠莉さん!!凄く嬉しい!!」
「Characterもおかしくなってるわ…メモリの副作用によるものね」
『鞠莉、よく見て。さっきと姿が違う』
三日の変身したバードは天と虎之助のものと違い、頭部が金属質になっていた。更に腕の鉤爪も巨大化しており、三日とバードメモリの適合率が高い事を示していた。
バードは挑発するように飛び去り、Wもその後を追いながらトリガーマグナムで銃撃する。バードのスピードの速さと風圧もあってか、その攻撃はなかなか当たらない。
「当たらないわね…ルナに変えましょう!」
『ダメ!それはバードメモリの支配率が高過ぎるからできない!下手に攻撃したら三日ちゃんも死ぬかもしれない!』
「そんな!何か方法はないの!?」
『わからない…一旦退いて地球の本棚で検索するしかないよ』
「でもそうしている内に被害が大きくなってしまうわ!三日の身体も持つかどうか…」
「あれ~?もう終わり?じゃあ今度は私が行くよ~!!」
バードは鉤爪でWを切り裂く。為す術もない2人はその攻撃を受け続けるだけだった。
一方、淡島にある海軍の桟橋。テラーの攻撃から辛うじて逃げられたナスカは、今度は聖良の変身したスミロドン・ドーパントから攻撃を受けていた。
「やめてくれ聖良!君とは戦いたくない!」
「それは私もです…でも命令だから仕方ありません!!」
反撃できないナスカは、スミロドンを説得するしか方法がなかったが、スミロドンは聞く耳を持たない。
先程テラーから受けたダメージも残っており、猛攻を受け続けたナスカの変身も解かれてしまう。スミロドンはそこで一瞬腕を止めるが、その迷いも捨てて再び英玲奈に向かって行った。
「姉様やめて!」
「理亞…!これは私のやるべき事なの!あなたには関係ない!」
理亞が異変に気づき2人の元へ駆けつけ、スミロドンに攻撃を止めるよう懇願する。しかしツバサへの恐怖心を抑えられないスミロドンに、言葉は届かない。
「どうしてもやめないなら…使うしか!」
\クレイドール!/
理亞はクレイドール・ドーパントに姿を変え、スミロドンに向けて光弾を放った。クレイドールの光弾はスミロドンに命中し、そこでようやく聖良も変身を解く。
「ごめんなさい、姉様。私には姉様がやりたくてやってるように見えなかったから…命令とかそんなのどうだっていい。自分がやりたくないと思うなら無理にやらなくていい。自分の気持ちに素直になって、姉様?」
「理亞…私は…」
いつの間に妹はこんなに成長していたのだろう。そう思った聖良は自分が情けなくなり、何も言わずにその場から立ち去った。
「…英玲奈さん、いつもの冷静さが見る影もないね」
「助かった、理亞。君には嫌われていると思ったから意外だったよ」
「正直に言えば嫌いだったかな。私より歳上の癖に仮面ライダーには負けてばかりだったし。でも…今は不思議とそんな事どうでもいいと思える。それより何かあったの?」
「まぁ、目指す方向の違いでツバサと色々あってな…詳しくは知らない方がいい」
「そっか…じゃあ深く詮索はしない」
「そうしてもらえるとありがたいよ。…理亞、君に聞きたい事があるんだ」
「何?」
「これまで数え切れない程の大切なものを踏み躙ってきた私に静岡を愛する資格があるんだろうか?静岡を守るなんて虫のいい事を言ってもいいんだろうか?君はどう思う?」
「私はいいと思う。やりたいようにやればいいんじゃない?一度でもそうしたいと願ったのなら、それが本当の気持ちだと思う」
元の姿に戻った理亞は迷いなくそう答えた。彼女の心に生えていた棘は、もう存在していなかった。
「英玲奈さんのしようとしてる事が正しいかどうかはわからない。でも間違えたと思うならいつやり直したって、やりたいと思った事はいつから始めたって構わないと思う。それは他でもない、あなただけが決めた道なんだから」
「ふっ、そうか…」
「ちょっと、その笑いは何?私をバカにしてるの?」
「そんな事はない。ただ、私が最近知り合った子にも同じような事を言われたと思ってな」
「そうなんだ。私も自分らしくいる事はこの前出掛けた友達から教えてもらった事でさ、もしかしたら私の友達と英玲奈さんの知り合った人は同じ考えの持ち主なのかもしれないね」
2人は軽く笑い合った。英玲奈はそこで自分のやるべき事を思い出し、立ち上がった。
「何処行くの?」
「街を守る為にやらなければならない事があるんだ」
「そっか。行くんだね…」
「あぁ、もしかしたら君と会うのはこれが最後になるかもしれない。じゃあ…元気でな、理亞。Saint Snowの活動、頑張ってくれ」
英玲奈は振り返らず、そこから去って行った。理亞はその背中を見つめ、彼女と分かり合えた嬉しさと別れの寂しさを感じるのであった。
「あはははっ!!鞠莉さぁん、私ばっかり一方的にやっててつまらないよ~、もっと本気出してよ~!!」
Wとバードの戦闘は依然としてバードが優勢だった。迂闊にダメージを与えられない。しかし三日が力尽きるのを待つ訳にもいかない。どうすればいいのか、答えは未だ出ない。いや、考える隙さえそこにはなかった。
「キャアアアッ!!」
Wはハードタービュラーから三津海水浴場の砂浜へ落とされる。気づけばバードは攻撃態勢に入っており、こちらへ火球を放っていた。
もう三日は助けられないのか…そう諦めかけた時、何処からともなく青い光弾が火球を相殺しWの危機を救った。
「諦めるな!大切なものを守る事、君が私に気づかせてくれたじゃないか!」
光弾の放たれた先にはナスカ・ドーパントが立っていた。ナスカの身体はメモリの強大なパワーに蝕まれている上にテラーとスミロドンから受けたダメージも残っている為、満身創痍であった。しかし、自分にとって…皆にとって大切な場所を守りたい。その使命感だけがひたすらに彼女を突き動かしていた。
「体内のメモリを正確に撃ち抜く。それが彼女を救う唯一の方法だ」
「三日を助けられるの?」
「あぁ、その通りだ」
『けどそれにはメモリの位置を特定する必要がある。どうやるの?』
「私のドライバーとバードメモリを共鳴させる。そこを正確に撃つんだ!」
「英玲奈…!ありがとう!」
「君に言われた通り、私は自分の罪を数えた。私は…もう間違えない!」
ナスカは翼を広げ、バードへと向かって行く。バードは火球を放つが、ナスカはブレードでそれを全て切り裂いた直後に超高速を発動させ、バードの後ろに回り込んだ。バードを捕獲したナスカはドライバーに意識を集中させる。すると、ドライバーと共振したバードの胸が光り、バードメモリが浮かび上がった。
「これがメモリの位置だ!撃て!!」
「OK!!」
『1発で決めてみせるよ』
果南はバットショットとトリガーメモリをトリガーマグナムにセットし、バードメモリに照準を合わせる。
\バット!/
\トリガー!マキシマムドライブ!/
バットショットのスコープがバードメモリを捕捉したのを確認し、Wはトリガーを引く。
「「トリガーバットシューティング!!」」
「ああああああっ!!」
バードは悲鳴を上げながら爆発を起こす。爆煙が晴れると、そこからナスカと彼女に介抱された三日が現れた。同時にバードメモリが三日の腕から排出され、パリンと音を立てながら砕け散った。
「やるじゃないか」
「私達だけじゃ無理だったわ。ありがとう♪」
「…あれ?私、どうしてここに?」
「彼女も無事みたいだな」
「三日…良かったわ。彼女があなたを助ける為に私を手伝ってくれたの」
「…怪人、ですよね?その人」
『見た目はそうかもしれないけど、彼女は街を守る正義の味方だよ』
「正義の味方…ありがとう、ございます」
三日はナスカを見ながら笑顔で感謝の気持ちを口にする。
ナスカもそれに応えようと何かを言おうとするが、突如彼女に赤い光弾が命中し遮られてしまった。
「見つけたわ、英玲奈」
「あんじゅ…!」
三日を助けたのも束の間、今度はタブー・ドーパントが現れた。タブーは手から光弾を作り出し、W達へ飛ばしてくる。
「私達の目的を邪魔して…あなたはもう必要ない!ここで死になさい!」
「英玲奈、三日を連れて逃げて!私達が戦うわ!」
「あぁ、すまない」
「待ちなさい!」
\ヒート!トリガー!/
「Stop!!あなたの相手は私達と言ったはずよ!」
「邪魔よ!ハッ!!」
『今度こそ決着をつけようか。熱いのをお見舞いしてあげるよ』
\トリガー!マキシマムドライブ!/
「「トリガーエクスプロージョン!!」」
トリガーマグナムからは強力な火炎が放射された。タブーは右手にエネルギーを溜め、光弾で相殺を試みる。しかしWはバードとの戦闘で体力を使い果たしており、変身が解かれてしまう。その為トリガーエクスプロージョンは不完全な状態で途切れてしまい、タブーのメモリブレイクは失敗に終わった。
「まずはあなたから…これで終わりよ、仮面ライダーW…!」
タブーは右手に溜めた光弾を鞠莉に向けて放とうとする。
「っ!このままでは危ない…君は先に逃げるんだ、超高速!!」
ナスカは三日の背中を押して逃がした後、超高速を使いながらタブーを切り裂いた。光弾は鞠莉に放たれる事はなく、ナスカによって無事に止められた。
しかし。身体に負担がかかった状態で超高速を多用した彼女の体力は、限界を迎えていた。激しい痛みと共に身体に電撃が走り、ナスカは英玲奈の姿に戻ってしまった。
「無事だったか…がはっ!!はぁ…はぁ…」
「英玲奈!しっかりして!」
「よくもやったわね…!でもこれで終わりよ!」
タブーはまだ変身を解かれておらず、彼女は力を振り絞り英玲奈に向けて光弾を放った。
光弾を浴びた英玲奈は…無惨にも数メートル先に吹き飛んだ。
「英玲奈ッ!!」
ガイアドライバーの制限装置が働いた事により元の姿に戻ったあんじゅは致命傷を負った英玲奈の元へと歩いて行き、懐からナスカメモリを奪い取った。
「これは返して貰うわ。UTXの…いえ、私の目的の為に必要なの…さようなら、英玲奈」
「優木あんじゅ…あなたも組織の幹部だったのね…!!」
「えぇ。次こそは容赦しないわよ、W」
あんじゅは踵を返し、海水浴場から去って行った。鞠莉は英玲奈の元へと走り、その身体をゆっくりと抱き起こした。
「やっと…やっと仲間になれたと思ったのに…!」
「ははっ…まったくだ、私も残念だよ…」
「私はあなたと、やりたい事がたくさんあった!!授業を一緒に受けたり、ランチを食べたり、探偵部で果南とダイヤ、ルビィと依頼を解決したり…花陽と海未と善子と花丸、千歌っちと梨子を誘ってあなたの歓迎のパーティがしたかった!!明日の朝、ここでAqoursのライブも一緒に見たかった!!これからだったのに、全部やってないじゃない…!だから死なないで!!死ぬなら私と…私達と最高の思い出を作ってからにしてよ!!」
「楽しそうだな…だが、遅かれ早かれいずれはこうなっていたさ…そういえば、君との約束もまだ守ってなかったな…受け取ってくれ…」
英玲奈はポケットから何かを取り出し、鞠莉の手に握らせる。鞠莉が手の中の物を見ると、そこには彼女のデザインしたキャラである初代うちっちーと、2代目うちっちーのストラップがあった。
「これが前に言っていた非売品のストラップだ。私の分まで大切に持っていてくれ…それと、UTXには気をつけるんだ…あの組織には…君達がまだ知らないメモリや底知れぬ野望が渦巻いている…この街を、頼んだぞ…」
「英玲奈っ…」
「最期に街を守る正義の味方になれて…君みたいな素敵な友に出会えて、私は幸せだ…ありがとう、鞠莉…」
鞠莉の頬には大粒の涙が流れる。英玲奈は笑顔を見せ、最期にこう告げた。
「内浦の海に…静岡に吹く風は、本当にいい潮風だな…」
英玲奈は鞠莉の膝の上で息を引き取った。そのまま彼女の身体は青い粒子となり、潮風に吹かれながらゆっくりと消滅していった。
少し前に膝の上にあった英玲奈の体温は、もう何処にも残っていない。鞠莉はストラップを握りしめ、声を上げて泣いた。
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Report(報告書)
The place where Mika ran is protected safely, Takato and Toranosuke regained consciousness, too.
The request was able to be settled safely, I was not able to save the life of the friend. I have assumed a crime again. However, as for the time when I am depressed, there is not it. I seem to be able to protect an important thing this time, We must follow this town which she loved. We want to fight against evil to let this town cry from now on not to waste her thought.
(三日は走っていたところを無事に保護され、天と虎之助も意識を取り戻した。
依頼は無事に解決できたのだが、友の命を救う事ができなかった。私はまた、罪を背負ってしまったのだ。しかし、落ち込んでいる暇はない。彼女の愛したこの街を私達が守らなければならないのだ。彼女の想いを無駄にしないよう、私達はこれからもこの街を泣かせる悪と戦っていきたい)
鞠莉は報告書を書き終え、机の中央に置かれた新聞を自分の方へ引き寄せる。そこには英玲奈が死亡した事、ツバサが彼女の死に伴いA-RISE解散を発表した事が特集されていた。
その記事を読んでいると部室の扉が開き、果南達が中へ入って来る。
「鞠莉ちゃん、ステージの設営終わったよ」
「そう、お疲れ様」
「ところで鞠莉さん、ずっと気になっていたのですが、何故いつも報告書を書いているのですか?依頼人に渡す物は私が作っているので書かなくてもいいのでは?」
「そういう訳にはいかないわ。依頼を通して気づく事があるから、私はそれを忘れないよう自分のReportとして残しているの。それに…」
そこで鞠莉は鞄に付けられた2匹のうちっちーのストラップを見る。
「英玲奈との約束、守らなくちゃいけないから…」
「確かに。凄く大切なもの、託されちゃったからね」
「そうなんですね…すみません、事情を知らないとはいえ失礼な事を言ってしまいましたわ」
「いいのよ。それより、早く行きましょ?」
鞠莉達は三津海水浴場へと向かう。既に海岸には人が集まっており、今まさにライブが始まろうとしていた。
「皆さん、朝早くから来てくれてありがとうございます!私達は、浦の星女学院スクールアイドル・Aqoursです!」
「1曲だけですが、精一杯歌うので最後まで見て下さい!」
そこで観客から小さく歓声と拍手が上がった。歓声が収まったのを確認し、千歌は『それから…』と言葉を発しながらランタンの説明をする。
「今回はサビ前で皆さんの持っているランタンを空へ飛ばすという企画をやる事にしました!皆さん、是非協力お願いします♪合図はむっちゃんがやってくれるので見逃さないで下さいね?」
そこでステージの右下にいる少女がプラカードを上げ、『お願いしまーす!』と元気そうに告げた。
「では、早速曲に移りたいと思います。千歌ちゃん」
「街の皆さんへの感謝を込めて歌います!聴いて下さい、『夢で夜空を照らしたい』」
その言葉と同時に、煌びやかなストリングスの音色がスピーカーから流れる。ギターがメロディを奏で終わるのと同時に梨子と千歌が交互に歌う。
「それは階段 それとも扉 夢のかたちは色々あるんだろう」
「そして繋がれ」
「みんな繋がれ 夜空を照らしに行こう」
千歌の歌に合わせ、むつがプラカードを上げて合図をする。鞠莉達と観客はランタンから手を話し、それを空へと解き放った。
「それは階段なのか」
「それとも扉か」
「「確かめたい夢に出会えて」」
「よかったねって呟いたよ」
曲が終盤へと差し掛かったその時、後ろから静かに潮風が吹き抜けた。その風に乗り、ランタンは空の彼方へと消えていく。
まるで英玲奈が街の平和を願っているみたいだ…鞠莉は風を感じながらそう思った。
(英玲奈、私達はあなたの分までこの静岡の平和な風景を守ってみせる。だからずっと見守っていてね…)
鞠莉はスタッグフォンを取り出し、空を撮影する。写真の中には、夜明けの空を進む無数のランタンの光が収まっていた。
「見て、カブトさん。凄くキレイな景色だよ…」
「あ、そのカブトムシ連れて来たんだ」
「というか…それメモリガジェットではないのですか?」
「えっ?」
ルビィが扉を開けてカブトムシの正体を確認しようとすると、カブトムシ型のガジェットはケージの中から飛び去ってしまった。
カブトムシのガジェット…ビートルフォンは沼津警察署の前へと到着し、ある人物の手に収まる。
「…嫌な風だなぁ。いつからこうなっちゃったんだろ、この街って」
グレーの髪の少女はそう呟き、ビートルフォンからギジメモリを抜き携帯電話へと戻す。
「でも、私がこの風を元に戻すんだ…!私だって『仮面ライダー』なんだから!」
仮面ライダーと名乗った少女はビートルフォンをポケットにしまい、代わりに赤い色のガイアメモリを取り出す。そのガイアメモリは、UTXの作ったドーパント用のガイアメモリではなく、鞠莉達の持つ物と同じクリスタルの形をしたガイアメモリであった。少女はガイアメモリを空高く投げ、宙を舞ったそれが再び手に収まったのと同時に起動スイッチを押した。
\アクセル!/
ガイアメモリには、タコメーターで描かれたAのイニシャルが刻まれていた。
<次回予告>
鞠莉「沼津警察署…渡辺曜、でいいのかしら?」
???「第一発見者は隣に住む50代の夫婦の方々です」
曜「あなたなんだね、ディライト!!」
果南『厄介だなぁ。ヒートまで凍結させるなんて』
曜「この時を待ってたよ…この力を使って、あなたを倒す時を!」
\アクセル!/
次回 走り続けるY/アクセル爆誕