浦女探偵   作:梨蘭@仮面バンドライバー

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お久しぶりです。ストーリー構想を練っていたら遅くなってしまいました。
今回はルビィちゃん主役回前編となります。前回黒澤姉妹メイン回と一部の方には言いましたが、予想以上にルビィ成分が強くなってしまったのでルビィちゃん主役回という事にしました(遠い目)。
登場ドーパントはT2ガイアメモリにも選ばれた人形使いのアイツです。後編もちょこっと書いているので完成次第すぐに投稿します。


#18 Pは動き回る/ルビィ、奔走

「おはようございます!」

 

「おはよう、ルビィちゃん」

 

「あらルビィ、Good Morning!!」

 

8月最初の日。黒い袋を手に持ったルビィが部室に到着し、この日も黒澤探偵部の活動が始まろうとしていた。

 

「あれ、ダイヤは一緒じゃないの?」

 

「お姉ちゃんは生徒会室に書類を取りに行くから遅れてくるって言ってたよ。あと果南ちゃん宛にこんなのが届いてたんだけど…」

 

ルビィは手の中にあった黒い袋を果南に手渡す。果南は『私に?』と首を傾げ、袋をじっくりと見つめている。

 

「差出人の名前が書いてない…何だろうこれ?」

 

「開けてみたら?私も気になるわ」

 

鞠莉に促され、果南は袋の開け口をハサミで切り出す。中からは緑色のギジメモリとパーツ・ネジ等の部品が入った透明のビニール袋、そして白い冊子が入っていた。冊子はメモリガジェットの設計図であり、表紙には『FROG POD』と表記されている。

 

「これ、メモリガジェットよね?どんな機能を持ってるのかしら…」

 

「それは作ってみなきゃわからないよ。よし、早速作ってみようか!鞠莉もついて来て!」

 

「そうね!格納庫にLet's Go!!」

 

「えぇ!?鞠莉ちゃん、果南ちゃん待って…行っちゃった」

 

鞠莉は果南に連れられ、格納庫の方へと行ってしまった。ルビィは部室の中に1人で取り残される。

 

「お姉さん」

 

「ピギャァァァ!?びっくりしたぁ依頼人か…ゴメンね、大きな声出しちゃって!」

 

突然声をかけられ、ルビィは驚いて大声を出してしまう。後ろを振り向くと、金髪を三つ編みで2つに結わえた可愛らしい少女の人形を抱えた小学校低学年くらいの少女がドアの前に立っていた。いつの間に入って来たのだろうか。

 

「お姉さん、お願いがあるの」

 

「お願い?勿論だよ!依頼なら黒澤探偵部に何でも任せルビィ!」

 

「人形を追いかけて欲しいの」

 

「人形を追う…?その手に持ってる子じゃないの?」

 

「違う。人形を追いかけて欲しいの」

 

「えっと、じゃあその人形の特徴とか教えて欲しいな…あ、そうだ!その前にあなたの名前を…」

 

「ルビィ…?」

 

ルビィが少女の対応をしていると、背後のガラス戸から入って来たダイヤが、きょとんとした様子でルビィを見つめていた。

 

「あ、お姉ちゃん!この子、今依頼に来た子なんだけど…」

 

「…何を言ってますの?誰もいないじゃないですか」

 

「えっ…あれ!?」

 

ルビィが目を離した数秒のうちに、少女はその場からいなくなっていた。部室から出て体育館の出口の方を探すも、少女の姿は何処にも見当たらない。

 

「誰と話してましたの?私には誰もいない所に話しかけてるようにしか見えませんでしたが…」

 

「でもいたんだよ!ルビィ、ちゃんと話したもん!」

 

「ルビィ、疲れてるのですか?今日は帰った方が…」

 

「大丈夫!さっきの子がどうして急にいなくなっちゃったのかわからないけど、ここに依頼に来たのは間違いないよ!ルビィが何とかしなくちゃ…!」

 

「ちょっ、ルビィ!?」

 

ルビィは体育館を飛び出し、何処かへ行ってしまった。一体彼女が見た少女は何だったのだろうか。

 

「何だかよくわかりませんが…放っておけませんわ!」

 

ダイヤも必要な荷物を準備し、飛び出して行ったルビィの後を追うのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「先月のガイアメモリの売上げ数です」

 

その頃綺羅家では、聖良がツバサにガイアメモリの売上げ記録の報告をしていた。

 

「ありがとう。なるほどね…このメモリ、非常に興味深いわ」

 

「へぇ…どんなメモリなんですか〜?」

 

ツバサがタブレットの画面を見ていると、横から客として訪れていたことりもそれを覗き込んだ。

 

「これは確かに魅力的な能力ですね〜、使用者の思うがままにできちゃうのがいいというか…」

 

「どうやら最近は能力重視のガイアメモリが注目を集めてるようね。上手く使いこなせれば、単純なパワー系のドーパントよりも恐ろしいドーパントになれそうね。理亞さんも見てみる?どんな能力か気になるでしょう?」

 

「…えっ?あ、あぁ…私は大丈夫です。それより今から仕事があるので、行って来ます!」

 

「そう?気をつけてね」

 

「理亞…」

 

理亞は血相を変えて仕事へと向かった。彼女は数ヶ月前にガイアメモリに関する犯罪に巻き込まれて以来、ガイアメモリについて話を振られると、わかりやすく動揺する事が多くなった。ある時には口実を作ったりし、途中で退室してしまう事も珍しくなかった。

聖良は理亞がガイアメモリに対し、恐ろしいという感情を抱いている事を知っている。自身も表には出さないようにしているが、理亞と同様にガイアメモリへの怒りや恐怖を胸に秘めている為、姉として彼女の事を心から心配する日々が続いているのだった。

一方、ずっと黙っていたあんじゅは理亞の出て行った扉を一点に見つめながらため息をつき、ことりは聖良とあんじゅを交互に眺めながら微笑むのだった。

 

 

 

「どうしよう…」

 

そして、先程探偵部を訪れて来た少女の手掛かりを探すべく部室を飛び出したルビィ。勢いで飛び出してしまった為、早速次に何をすればいいかわからず詰んでいた。まぁ当然なのだが。

 

「やっぱり鞠莉ちゃんと果南ちゃんに相談すべきだったかなぁ…でもガジェットを作ってるから邪魔になっちゃうし、お姉ちゃんはあの感じだと話しても納得してくれなそうだし…」

 

「嘘じゃないんだ!信じて下さい!」

 

「そんなのどう考えても有り得ないですよ…正直に話して下さい」

 

「僕は正直に話してますよ!!」

 

「まぁまぁ落ち着いて…」

 

ルビィが悩みながら住宅街を歩いていると、サイレンを鳴らしながら救急車が横を走り去って行く。その近くの一軒家には曜と海未、そして一人の男性が彼女達から事情聴取を受けていた。

 

「曜ちゃん、園田刑事さん!お疲れ様です!」

 

「ルビィちゃん、おはヨーソロー!1人で何してるの?鞠莉ちゃん達は?」

 

「えっと、探偵部に依頼が入ったんだ。鞠莉ちゃん達は今色々と忙しくてルビィが1人で調査してるの。曜ちゃん達は事件の事情聴取?」

 

「はい。信じられないと思いますが…こちらの男性、息子さんが変な人形に襲われて階段から転落したと供述してるんです。人形が勝手に動くなんて、そんな話ある訳ないですよね」

 

「変な人形に…ん?あっ!!」

 

もしかしたらあの少女の言う人形とこの事件は何か関係があるかもしれない。ルビィは情報が見つかったと確信するのだった。

 

「あの!実はルビィが調査してる依頼も人形についてなんです!人形を追いかけて欲しいって、小さな女の子から依頼が…」

 

「そうなのかい!?ほら刑事さん、やはり見間違いでも何でもないですよ!この子の元にもそれっぽい依頼が来てるって!」

 

「ルビィも人形についての調査を?驚きました、思わぬところで繋がっていたなんて…」

 

「つまり目的は同じって事だね!ルビィちゃん、パトカーに乗って!私達もその人形を一緒に探すよ♪」

 

「ちょ、曜!?いくら知り合いでもそれは上からの指示なしに…」

 

「大丈夫だって!ほらルビィちゃん、早く早く!」

 

「ピギィ!警察の皆さん、恐れ入ります!」

 

ルビィは海未と曜と共にパトカーに乗り込み、少年を襲った人形の捜索を始めるのだった。

 

 

 

一方、ダイヤは飛び出してしまったルビィを探すべく住宅街を歩き回っていた。ちなみに本人は気づいていないが、ルビィとは反対方向に向かっている。

 

「ルビィは何処へ行ってしまったのでしょうか…ここの所忙しかったですし、無理してるのでは…」

 

「うわぁぁ!!誰か助けて!!」

 

すると、手前の家から少年らしき声が聞こえて来た。異変を感じたダイヤがそこへ近づくと、声を上げたであろう少年が2階の窓から真っ逆さまに落ちている途中だった。

 

「まずいですわ!!」

 

\スカル!/

 

ダイヤはスカルに変身し、少年を無事に救出する。

 

「大丈夫ですか?何がありましたの?」

 

「急に変な人形が家に入って来て…ほら、あれ!」

 

少年が2階の方を指差すと、窓からは不気味な茶髪の少女の人形がケタケタと笑いながら飛び降りて来た。口からは鋭利な歯が生えており、目は充血したかのように赤く染まっている。

 

「人形のドーパント!?あなたは何者ですの!?」

 

「ギシャァァァァ!!」

 

人形はこの世のものとは思えない声を上げ、スカルに襲いかかって来た。スカルは少年を安全な場所へ逃がし、スカルマグナムで人形へ銃撃する。銃弾は2発程命中し、人形は地面へ倒れ伏した。

 

「はぁ…やりましたか?」

 

「ギャァァァァァァッ!!」

 

しかし人形は再び起き上がり、こちらへ飛びかかって来る。損傷も特になく、攻撃も効いているとは思えなかった。

倒したと思って油断してしまったスカルは小さな身体に翻弄され、スカルマグナムを奪い取られてしまう。

 

「そんなのアリですのぉ!?」

 

「ギャァァァ!」

 

「あぁぁぁぁ!!どうしましょう困りましたわぁぁ!!」

 

人形はスカルマグナムを連射し、それを避けるスカルを嘲笑っていた。

そんな2人の戦闘の様子を、通りかかったパトカーの中に乗っていたルビィが発見した。

 

「曜ちゃん!!お姉ちゃんが!!」

 

「えっ、何!?」

 

「ダイヤがどうかしました?」

 

「あっ…いや、仮面ライダーさんがあそこで何かと戦ってるの!」

 

曜はパトカーを駐車させ、海未とルビィと共に急いで車内から飛び出す。

スカルは人形に飛びつかれており、それを身体から引き剥がそうともがいていた。

 

「もう!離れなさい!!燃やしますわよ!?」

 

「な、ななな何ですかあれは!人形が動いてますぅぅ!!」

 

「ヤバい…!行かなくちゃ!」

 

曜がアクセルドライバーを取り出そうとしたところ、ポケットの中のビートルフォンがブルブルと音を立てて震える。画面に表示されていたのはルビィからのメッセージであり、『園田刑事さんにバレちゃうよ!』と書いてあった。

 

「おっと危ない…あっ海未ちゃん!!あれ何!?」

 

「えっ?」

 

曜は空を指して海未の注意をそちらへ向かせると、うなじに向けて手刀を叩き込んだ。海未は『あっ!?』と声を出した後、その場で気を失う。

 

「海未ちゃんゴメンね、正体がバレちゃうから…ルビィちゃん、ダイヤさんは私が助けるからパトカーの中に隠れてて!」

 

「う、うん!」

 

ルビィは気絶した海未を引きずりながらパトカーへと戻って行った。曜は改めてアクセルドライバーを装着し、メモリを右手に構える。

 

\アクセル!/

 

「変…身っ!!」

 

\アクセル!/

 

「ダイヤさん、ちょっと失礼します!」

 

アクセルに変身した曜はスカルの仮面にしがみついている人形をエンジンブレードで一突きし、遠くへ吹き飛ばした。

 

「曜さん、助かりましたわ!」

 

「どういたしまして!あの人形何なんだろう?ドーパントなのかな…」

 

「わかりません。ですがあんな小型のドーパントは今まで見た事がありませんわ」

 

「ケケケ…」

 

スカルとアクセルが話している内に人形はゆっくりと起き上がり、逃亡を図ろうとする。

 

「あっ!曜ちゃん、お姉ちゃん、人形が逃げちゃう!!」

 

「わ、本当だ!ルビィちゃん、教えてくれてありがとう!」

 

「くおぉらぁ!!待ちなさいこの化け人形!!」

 

「よし!ルビィもパトカーで…はダメだよね、無免許運転になっちゃうし…」

 

アクセルはバイクフォームに変化、スカルはスカルボイルダーを呼び出し逃げて行った人形の後を追いかけ、走り去った。ルビィもパトカーの中で眠っている海未を放置し、慌てて2人について行く。

ところが人形のスピードは想像を遥かに上回っており、2人が3回目の角を曲がった時には既に姿を消していた。

 

「はっや…人形のスピードとは思えないよね」

 

「参りましたわ…そもそもあのドーパントはどうやって倒せばいいのでしょうか…」

 

諦めて変身を解こうとしたその時、2人の真横にある廃車置き場から軽自動車がクラクションを鳴らしながら猛スピードでこちらへ向かって来た。アクセルは跳びながら車の天井で回転して躱し、スカルは後方へ避けながらタイヤへスカルマグナムの弾を発砲する。車は左へスリップし、横から電柱へ激突した後に停止した。

 

「ケケケケケ!」

 

「あの笑い方!腹立たしいですわ!!」

 

「ホント、舐められたもんだよね」

 

「ケケケ…ゲアッ!!」

 

「え、ちょ、なんか外してるんですが…」

 

「ち、力も強いんだなぁ…」

 

窓から飛び出して来た人形は、いつの間にか外していた車のドアとタイヤを2人へと投げつける。2人は後退し、連続で投げられる部品を次々と躱し、破壊していく。

 

「ケッケケケ〜」

 

「何が『ケッケケー』ですか!!頭外しますわよ!?」

 

「いやダイヤさん怖いから!!」

 

人形は自身を捕獲しようと向かって来たスカルの股を潜り抜け、右足首を掴んで転倒させるとそのまま走りながらスカルを勢いよく引き摺り回した。

 

「こ、こらぁお化け人形さん!お姉ちゃんを離して!」

 

それとほぼ同じタイミングで2人を追いかけて来たルビィが現れ、人形に止めるよう叫ぶ。それに反応した人形は手を止めてルビィの方へ振り返るのだが、その顔は怪物とは思えない程に整ったものへと変化していた。

 

「…えっ?」

 

「今だっ!」

 

\エンジン!/

\エレクトリック!/

 

アクセルは人形が動きを止めた隙にエンジンメモリを挿し込みながらブレードのトリガーを引き、攻撃する。電気を浴びた人形は何処かへと飛び去ってしまった。

 

「逃げたかぁ…」

 

「お姉ちゃん、大丈夫?」

 

「あいたたた…ルビィ、ありがとうございます」

 

スカルがルビィに起こされながら変身を解除すると、同じく元の姿に戻った曜がこちらへ走って来る。

 

「ダイヤさんも無事でよかったよ…」

 

「それよりもルビィ、あなたいきなり部室を飛び出すなんてどうしましたの?女の子がどうとか言っていましたが…」

 

「そうだよ、私も先走っちゃって聞くの忘れてた。ルビィちゃん、探偵部にどんな依頼が来たの?」

 

ルビィは今朝早くに探偵部に人形探しの依頼をしに現れた少女の事を2人に説明する。

 

「なるほど…信じ難い話ではありますが、嘘を言っている様子ではなさそうですね。現にあのおかしな人形もいる訳ですし」

 

「でも特徴を聞く前に何処かに行っちゃったから、さっきのお化け人形があの子の探してる人形なのかはわからないけど…」

 

「で、曜さんは人形に関する事件が起きたから調査していたと…」

 

「どうやら被害に遭った住人全員がさっきの人形を目撃しているみたいだよ」

 

「さっきの人の息子さんはなんで被害に遭っちゃったのかな?あの人形に何かして呪われちゃったとか」

 

「呪いなんて有り得ません。あの人形は間違いなくドーパントですわ!小さいのにあそこまで強いと違和感でしかないです!」

 

しかしルビィはどうも腑に落ちない様子だ。先程人形が見せた普通と何ら変わりないあの顔が、彼女の頭の中に強く残っているのだった。

 

 

 

夜が更け、沼津の街は飲み会を開く者や仕事帰りの者が闊歩する場所へと姿を変えていた。そんな中、ChunChunにある扉の奥ではタブー・ドーパントがことりと密かに密会を開いているのだった。

 

「今日のタブーの肉体もいい調子だね、あんじゅさん。底知れない美しさも秘めたそのメモリ、素晴らしい能力ですよね〜」

 

「そう言われるとありがたいわ、ことりさん」

 

「はい!…でも、なんか今日はいつもと比べると完璧じゃないなぁ。何かあったんですか?」

 

「ことりさん、あなたエスパーかしら?その通りよ」

 

タブーはあんじゅの姿へと戻り、自身の考えている事を見透かすことりへと話し始める。

 

「理亞さんがね…英玲奈の事があったのかしら。ここの所ガイアメモリの話題には触れようともしないし、芸能活動にばかり没頭しているのよ」

 

「あぁ、確かに私もそれは思ってました。理亞ちゃんって初めて会った時から、なんか私に冷たいんですよ〜」

 

「あの子と聖良さんには私の為にドーパントとして働いてもらわないと困るのよねぇ… ねぇことりさん、理亞さんを完全なドーパントにしてくれない?」

 

「あんじゅさんの頼みなら…お易い御用ですよ♪」

 

今の理亞はドーパントになる事を拒否している。あんじゅとことりは彼女をどうするつもりなのだろうか。それは誰にもわからない。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「さて、続きに取り掛かろうかなん」

 

そして翌日。格納庫では、果南が年季の入った机の上に置かれた未完成のメモリガジェットの作成を始めていた。それから数分し、曜を連れたダイヤが格納庫へと入って来る。

 

「果南ちゃん、お取り込み中申し訳ないんだけど検索をお願いできるかな?調べて欲しい事があって…」

 

「ゴメン曜、見ての通り今忙しいんだよね。昨日新しいガジェットの部品と設計図が届いたんだ、完成までもうちょっとかかるから後にして欲しいなぁ」

 

「それはそれ、これはこれですわ。最近起きている人形による事件の解決が優先です」

 

「人形?ダイヤ、Figureによる事件って何があったの?」

 

果南がそれに反応するより先に格納庫に鞠莉とルビィが入って来る。

どうやら昨日、果南はガジェット造りに夢中で鞠莉は彼女にずっと付き添っていたらしく、2人共事件や依頼の事は知らないそうだ。ルビィと曜は事情を知らない鞠莉へと昨日の出来事を説明し始めた。

 

「Oh…それは確かにMysteriousねぇ」

 

「事件は3件も起きてるんだよ。今のところ被害にあった子達全員、命に別状がないのは幸いなんだけどね…また誰かが狙われるかもしれないから調べて欲しいんだ」

 

「という訳ですから果南さん、作業は後にして下さい」

 

「ちょちょちょダイヤ!部品がどっか行っちゃうから!わかったわかった、じゃあ始めよう」

 

ダイヤに作業を中断させられた果南は渋々と立ち上がり、地球の本棚へと入る。

 

「じゃあ、検索始めるよ。キーワードは?」

 

「とりあえず、まずは被害者の名前から言うね。『室井裕翔』くん、『周七海』ちゃん、『真鍋宇月』ちゃん。全員小学生だよ」

 

果南は曜から提示された3人の名前を入力する。手元には一冊の本が残り、それを読み進めていく。

 

「『日下部美帆(くさかべみほ)』という高校1年の子の本だったよ。どうやら小学生の妹がいるらしいね」

 

本には人形を大切そうに抱えた小柄な少女と柔らかな笑みを浮かべたショートヘアの女子高生の写真が載っていた。それを見たルビィは人形を抱いた少女を見て、思わず反応を示す。

 

「あっ、この子!この子だよ!探偵部に依頼に来た女の子!」

 

極めつけは妹らしき子が抱えている人形だ。金髪で三つ編みを2つに結わえた可愛らしい少女の人形。依頼に現れた少女が持っていた物と全く同じである。

 

「ドーパントの正体はこの子…妹の麻心(まこ)ちゃんだと考えられるよ」

 

「そんな…何故小学生の方がドーパントになってしまったんでしょうか…」

 

「いや、麻心ちゃん本人の意志とは関係ないんじゃないかな。きっと姉である美帆ちゃんが麻心ちゃんをドーパント…昨日私達と戦った人形に変えちゃったんだよ」

 

「それまずいんじゃ…!?三日ちゃんの時みたいになっちゃう!!」

 

「ガイアメモリは身体の成長が不完全な人が使用すると暴走症状を引き起こす。だからこのまま放っておくと麻心ちゃんは…」

 

「大変…!ダイヤさん、ルビィちゃん、行こう!」

 

「うん!」

 

「麻心さん、待っていて下さい!」

 

曜達は麻心を救出すべく、早足で格納庫を飛び出した。鞠莉も向かおうとするが、ふと先程の曜と果南の推測に違和感を感じ、足を止めた。

 

「ん?鞠莉は行かないの?」

 

「…ねぇ果南、何かおかしくない?」

 

「何が?」

 

「『美帆が麻心をドーパントに変えた』って、果南は言ってたでしょ?でもその動機がよくわからないのよ」

 

鞠莉が着目したのは犯人と考えられる少女・美帆の動機だ。曜と果南の推測だと、妹をドーパントにしてまで事件を起こした理由が明確に説明されていない。

 

「3人の被害者が憎いからじゃないの?でも自分は手を汚したくなくて妹を利用した。そういう事じゃない?」

 

「でも被害に遭ったのは全員小学生よ?高校1年はHalf adultだし、年の離れた子達にムキになるような事なんてないと思うけど…仮にムカッとする事があったとしても殺そうとまではしないんじゃない?」

 

「あぁ、確かにそうかも。でもキーワードが足りないから調べようがないよ。動機は曜達が聞き出してくれると思う」

 

「もう!ガジェット造りがBusyなのはわかるけど、丸投げはNGよ!メモリ名も調べ忘れてるからどう戦えばいいかわからなくて曜とダイヤも困るんじゃない?動機だって、今揃ってるキーワードから手掛かりが少しでも見えるかもしれないし…」

 

「…そうだよね。ごめん、つい夢中になって探偵部としての活動を忘れてたよ。調べてみるから鞠莉は曜達の応援に向かって。あの2人は戦闘経験も少ないし、私達みたいに状況に応じたメモリチェンジができないから」

 

「果南…!Thanks!!」

 

鞠莉は果南に促され、格納庫から飛び出して行った。出だしは遅れたが、ようやく2人で1人の探偵が動き出した瞬間だ。

 

 

 

「理亞ちゃん、来てくれてありがとう♪」

 

「何ですか。私に話って」

 

一方ChunChunにある一室では、理亞がことりに呼び出されていた。

 

「理亞ちゃんってさ…『ガイアメモリを使いたくない!』って思ってるでしょ?芸能界の友達だった子達から貶められたり、ストーカーに襲われたりして」

 

「なんでアンタがそんな事知ってんの」

 

何故自分の心情を知ってるのだろうか。途端にことりへ対する不信感が募り、理亞は思わず口調が強くなる。ことりは歳上であるが、そんな事は彼女にとって今はどうでもよかった。しかし当のことりは理亞の態度を特に咎めようとはせず、淡々と言葉を続ける。

 

「ただの勘だよ〜、もしかして図星?」

 

「はぁ…そうですけど、だったら何なんですか?」

 

「安心して!ツバサさんにチクッちゃおうとか、そんな事は考えてないよ?私もそんな怖い経験しちゃったらそうなってもおかしくないから、少し気持ちはわかるんだ」

 

『出会ってそんなに経ってないのにお前に何がわかるんだ』と内心で毒づいたが、彼女には何を言っても無駄だ。理亞は大人しく彼女の話を聞く事にした。

 

「ガイアメモリの事を考えたくないなら無理に考えなくてもいいと思うよ。正直手元にあるのも嫌だよね?」

 

「まぁ…」

 

「だったらさ、私が理亞ちゃんのドライバーとメモリを代わりに持っていてあげる。そうすれば理亞ちゃんは何も苦しむ必要なんてないよ。ねっ?」

 

「分かりました…」

 

そう説得された理亞はクレイドールメモリとガイアドライバーを取り出し、ことりへと手渡した。

 

「…じゃあ、仕事があるから。姉様も待ってるし」

 

「ありがとう。確かに受け取ったよ…?」

 

ことりは口元を妖しく緩ませながら出ていく理亞の後ろ姿を見送るのだった。




<次回予告>

ルビィ「麻心ちゃんの事、本当に愛してるの!?」

ダイヤ「あなたには本当に感謝していますわ」

クレイドール「絶対に許さない!!」

果南「全部わかっちゃったんだよね」

次回 Pは動き回る/姉妹のカタチ





鞠莉「実は…」

果南・ダイヤ・ルビィ・曜「「「「えぇぇぇぇぇっ!?」」」」


そして、黒澤探偵部をも巻き込む最大の危機が訪れる…
次回を見逃すな!
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