浦女探偵   作:梨蘭@仮面バンドライバー

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パペティアー編後編です。
ちょいネタバレになってしまいますが、今回は風都探偵で判明したハイドープの能力について言及する描写があったり、原作と比べると大分アレンジした部分が多いです。
また、ラストで黒澤探偵部に大きく関わる出来事が起こるので是非最後まで読んで頂けると幸いです。

そういえばかなまり、前回Wに変身してなかったな…()


#19 Pは動き回る/姉妹のカタチ

「ギャハハハハッ!!」

 

「あー!!あのドーパント、イライラするんだけど!!」

 

「同感ですわ!暴走しているとはいえ笑い方が下劣過ぎます!」

 

閑静な住宅地に不気味な笑い声が響き渡る。その声は昨日、2階のベランダから突き落とされそうになった少年が住む家の真正面の道で大きくこだまするのだった。

ダイヤと曜、ルビィは人形が少年を殺害すべく再びここに現れるだろうと予想し先回りしていた為、今回は未然にそれを防ぐ事ができたのだ。

 

「それにしてもこのドーパントの変身者の麻心さん、とんでもなく身体能力が高いのですね…」

 

「だとしたらメモリの能力で底上げされてるから厄介だよ!早くメモリブレイクして助けないと!」

 

この人形の狡賢さや素早さは今まで以上だ。どのように対処すればいいかを考えながら戦っているが、2人はスカルとアクセル、エンジンの他に対抗できるメモリを持っていない為、状況はあまり芳しくなかった。だがこのまま麻心の身体が限界を迎えるのを待つ訳にはいかない。

しかしそんな2人の元へ、ようやく動き始めた彼女が到着する。

 

「ダイヤ、曜、お待たせ!」

 

「鞠莉さん!遅いですわよ?」

 

「Sorry, ちょっと果南と話してたの!それじゃあ行くわよ!」

 

\トリガー!/

 

「変身!!」

 

\サイクロン!トリガー!/

 

鞠莉は転送されてきたサイクロンメモリとトリガーメモリをダブルドライバーへ挿し込み、勢いよく展開させる。

 

「あれ、いきなりサイクロントリガー?どうするの?」

 

「Capture strategyよ!」

 

「きゃぷ…何?」

 

『和訳すると捕獲作戦、という意味だよ』

 

\ルナ!/

\ルナ!トリガー!/

 

「次はこれよ!」

 

\スパイダー!/

 

Wはルナトリガーにチェンジ、起動させたスパイダーショックをトリガーマグナムにセットし、ホーミング弾を撃ち込む。トリガーマグナムから放たれた無数の弾は逃げ惑う人形を追尾・命中すると黄色のネットへと変化した。人形は塀に固定され、身動きがとれない。

 

「メモリを多く持ってるって便利ですわね…」

 

「そうでしょ〜?さて、仕上げにメモリブレイクよ!」

 

\サイクロン!トリガー!/

\バット!/

 

Wは再びサイクロントリガーへと戻り、トリガーマグナムへバットショットをセットする。

次にトリガーマグナムのスロットにトリガーメモリを装填し、人形へ照準を合わせながらトリガーを引いた。

 

\トリガー!マキシマムドライブ!/

 

「「トリガーバットシューティング!!」」

 

「ギャァァァァ!!」

 

人形は叫び声を上げ、その場で爆発した。煙が晴れると人形はゆっくりと地面に落ち、動かなくなった。

 

「麻心ちゃん!!」

 

それを見たルビィは人形へ駆け寄り、優しく両手で抱き上げた。特に目立った破損はなく、顔も元の綺麗な状態へと戻っていた…のだが、人形からメモリが排出されていないのに気づく。

 

「あら?メモリが出てきませんよ?」

 

『そうだよ。その人形はドーパントじゃないからね』

 

\ルナ!トリガー!/

 

果南はメモリをルナに変え、曲がり角に向けて銃撃する。ホーミング弾は塀を避けるように進んで行き、何かに命中する。塀の向こう側から転がって来たのは、白のスーツに身を包んだ悪魔のような顔をしたドーパントであった。ドーパントの身長は人形のような小さな身体ではなく、普通の人間と特に変わりなかった。

 

『アイツのメモリの名前はPUPPETEER(パペティアー)。人形使いの記憶を秘めたメモリで、その名の通り人形を使いながら相手を翻弄させる厄介な能力のドーパントだよ』

 

「じゃあ麻心ちゃんはドーパントじゃないんだ…よかった…」

 

その解説を聞きながら人形をよく見ると、パペティアーがそれを操っていた事を示すかのように手足が糸で拘束されている。果南はそのままトリガーマグナムを連射し、パペティアーへとダメージを与えていくが…

 

「待って!もうやめて!」

 

パペティアーは変身を解き、元の姿…本の中の写真に写っていた女子高生・日下部美帆の姿へ戻った。

 

「美帆…あなた、どうしてガイアメモリなんて使ったの?」

 

「全部家族の…いえ、妹の為よ」

 

「妹の為…?」

 

俯きながら話し始めようとする美帆。しかし、ルビィはそれに割り込むように小声で呟いた。

 

「どうして自分の大切な家族を言い訳にするの…?ルビィには何があったのかわからないけど、家族を言い訳にガイアメモリを使って沢山の子供達を怪我させて!そんなの最低だよ!!」

 

「何よ。あなたに何がわかるのよ…」

 

「こんな酷い事、麻心ちゃんを悲しませてまでやるべき事なの!?誰よりも妹の気持ちを考えて、お父さんやお母さんにも負けないくらい寄り添って、正しい事は正しい、間違ってる事は間違ってるって教えてあげる…お姉さんってそういう存在じゃないの!?」

 

「ルビィ…」

 

立場上ルビィが妹で美帆が姉なので違いはあるものの、それでも互いに姉妹を持つ者同士だ。特にルビィには自分にとっての姉を体現した存在…ダイヤがいる為、美帆がそうでない事に激しい憤りを覚えたのだ。ここまで彼女が強気な姿はスカルはおろか鞠莉達もこれまでに見た事はない。

だが、美帆はそれを聞いても大人しく引き下がろうとはしない。

 

「何の話よ!」

 

「麻心ちゃん、ルビィに人形を探してって頼んで来たんだよ?あなたを止めて欲しいからきっと…」

 

「そんな嘘が通じるとでも思ってるの!?」

 

「嘘じゃないもん!人形だって持っていたし、少しだけど話もした!あなたは麻心ちゃんの気持ちを何もわかってない…麻心ちゃんの事、本当に愛してるの!?」

 

「さっきから聞いていれば知ったような口を…!いい加減にしなさいッ!!」

 

\パペティアー!/

 

美帆は顎にメモリを挿し、パペティアー・ドーパントへと姿を変えた。こちらへ迫ってくる不気味なその姿にルビィも思わず足がすくんでしまう。

 

「意気地なさそうな女の癖に…ッ!」

 

パペティアーはどこか躊躇うような素振りを見せつつも、ルビィに襲いかかろうとする。その手があと少しで彼女に伸びようとした瞬間、パペティアーに銃弾が放たれる。Wとスカルの銃撃を受けたのだ。

 

「変身できない人に攻撃とは見過ごせないわね!」

 

「しかも私の妹に手を出すなんて…そんな事は絶対にさせません!」

 

スカルはロストドライバーからスカルメモリを抜き、スカルマグナムへと挿し込もうとしたその時、突如太陽が闇に包まれ空が暗くなった。同時に5人の目の前に霧が出現し、パペティアーをゆっくりと包み込んでいく。

 

「何これ…!見えない!」

 

「っ!美帆がいないわ…」

 

やがて霧が晴れると、パペティアーはその場から完全に姿を消していた。

 

「ルビィ、怪我はない?」

 

「うん…麻心ちゃん、ルビィ達が助けてあげるから待っててね」

 

その場に残された茶髪の少女の人形を抱きしめ、ルビィは一層決意を固めるのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…はっ!ここって…」

 

「あっ、どうやらお目覚めみたいだね〜」

 

パペティアーが目を覚ますと、見知らぬ天井が視界へと飛び込んでくる。周囲を見回していると、別の扉からモップを持ったことりが入室してきたのだった。

 

「誰なんですか?あなた…」

 

「副業でガイアメモリの研究をやってるただの17歳だよ。ちなみに本業はChunChunというメイド喫茶の店長なのです♪」

 

「もしかして…あなたが私を?」

 

「そう!パペティアーメモリの能力は非常に優秀なの。だから助けたんだよ」

 

「それはありがとう。でもこんな所にいる暇はないの。どうしても許せない女がいるから…」

 

パペティアーはそのまま店の外へと出ようとするが、ことりがモップで進路を阻みながら手を掴む。

 

「何ですか。邪魔しないで下さい」

 

「落ち着いて?そんなに復讐したい人がいるなら私も協力してあげるよ。ちょっと研究したい事があるんだよね〜」

 

そうパペティアーを引き止めたことりはモニターを操作し、喫茶店内の監視カメラの映像を拡大する。そこにはいかにも落ち着かないといった様子で席に座る理亞の姿が映されていた。

 

「閉店時間が楽しみだなぁ…♪」

 

 

 

「麻心ちゃん、聞こえるかな?」

 

その頃、鞠莉達は浦女へと戻って来ていた。鞠莉と果南は格納庫の方へ行っている為、部室ではルビィが先程から回収した人形に話しかけているが、反応はない。

 

「ダメですわ。やはり麻心さんが人形なんて有り得ないのでは?」

 

「そっか…だって麻心ちゃんはこの人形を探してるもんね。答えてくれる訳な…」

 

『ルビィちゃん、聞こえるよ!』

 

「ピギャァァァ!?しゃ、喋ったよお姉ちゃん!?」

 

「き、ききき聞きましたわ…やはりこれは呪いの人形なのでは!?」

 

なんと突然、これまでうんともすんとも喋らなかった人形が突然少女の声で話し始めたのだ。

 

「違うよ。今のは人形じゃない」

 

ルビィとダイヤが驚いていると、部室からカエルのようなメモリガジェットを手にした果南が鞠莉と共に入って来た。

 

「こんにちは、ルビィちゃん」

 

『こんにちは、ルビィちゃん』

 

ギジメモリに声を吹き込んだ果南がカエルのメカにそれを挿し込み眉間のボタンを押すと、彼女とは別人の声でカエルのメカが喋り出した。

 

「これは『フロッグポッド』っていうガジェットだよ。ギジメモリに声を録音して本体に挿し込めば、さっきみたいに違う人の声でそれを再生したり、敵の撹乱に使ったりする事ができるみたい。どう?かなり優れものでしょ?」

 

「つまり〜、こういう事もできるのよ♪」

 

『はいっ!!アルトじゃ〜ないとッ!!』

 

『はいっ!!アルトじゃ〜ないとッ!!』

 

鞠莉は先日の騒動で知り合った飛電の社長・或人のギャグ動画の音声をギジメモリに録音する。そして果南がその音声を入れたギジメモリを挿し込みながらフロッグポッドのボタンを押すと、或人の決め台詞がダイヤの声で再生された。

 

「堕天使ヨハネ、降臨!」

 

『堕天使ヨハネ、降臨!』

 

「くぉらぁ!!私の声で遊ばないで下さい!!」

 

「はい鞠莉、おふざけはそこまで」

 

果南からフロッグポッドを取り上げられ、舌をペロリと出してウインクをする鞠莉。一方、ルビィはフロッグポッドには見向きもせず何かを考えており、やがて何かを思いついたのかゆっくりと立ち上がった。

 

「ルビィ、どうしたの?」

 

「麻心ちゃんに会いに行って来るよ。ちゃんと人形を返さないと」

 

「待ってルビィちゃん、その事なんだけど…実は麻心ちゃん、今年の3月に亡くなってるんだ」

 

「えっ…」

 

「か、果南さん?それはどういう事ですの?」

 

昨日、鞠莉がダイヤ達と合流する直前に果南は麻心について地球の本棚で検索していたのだった。更にそこから検索を進めていくと、被害者と麻心の関係や美帆が犯行に至った経緯が少しだけ見えてきたらしい。

果南曰く、麻心は誕生日プレゼントには毎回人形を買って貰っている程人形が好きな少女だったが、それが原因でいじめを受けるようになり、やがて精神的に限界に達してしまったのか3月頃に駅のホームで飛び降り自殺を図ってしまったとの事だ。

 

「つまり美帆さんによる人形を使った襲撃事件の被害者、そしてダイヤが助けた男の子の4人は麻心ちゃんをいじめていた中心メンバーだったって事」

 

「加害者だった彼らは麻心の死後に母親が訴訟を起こした事をきっかけにちゃんと反省していたそうよ。部屋から発見された麻心の日記が証拠になったみたい」

 

「でも元から身体の弱かった母親は麻心ちゃんが自殺したショックで体調を崩して6月末頃に心不全で亡くなった。美帆さんがガイアメモリに手を出したのはおそらく麻心ちゃんをいじめていた子達に復讐する為だと思うよ。父親は美帆さんが産まれてすぐに事故死してるから親は母親しかいない。酷な言い方をすると麻心ちゃんも母親も殺されたようなものだし、そりゃ許せないよ」

 

「そんな…辛すぎるよ、そんなの…あれ…?」

 

ふと、ルビィは先日部室で麻心に会った事を思い出した。

 

「でも、それならルビィが会った麻心ちゃんって一体何なんだろう?」

 

「それは…でも死人還りが関係してるとは思えないしなぁ…」

 

「ルビィが見たのって…まさかGhost!?」

 

この時期によくテレビ番組でも取り上げられる霊的な類なのか、はたまたガイアメモリの能力によるものなのだろうか。

 

「何なのかはわからないけど、麻心ちゃんが美帆さんの心を助けてあげたいと思ってるのは確かだと思う…だからルビィも麻心ちゃんのその気持ちに応えてあげたい!」

 

「あらルビィ、その想いはマリーも同じよ♪それに麻心だけじゃない。美帆を止める義務も私達探偵部にはあると思うの」

 

「そうと決まれば早速行動開始ですわ!鞠莉さん、ルビィ、行きましょう!」

 

「じゃあ3人共、何かあったら連絡して。私はパペティアーの攻略法を調べておくから」

 

依頼の解決、ガイアメモリに呑まれてしまった者を止める事。

それらは彼女達にとってはいつも通りにすべき事ではあるが、逆に考えれば普段から忘れてはいけない事でもある。ダイヤとルビィ、鞠莉は二手に分かれて学校を飛び出し、果南は地球の本棚で検索を行うべく格納庫へとそれぞれ向かって行った。

 

 

 

そして一方、ChunChunも閉店の時間となった。静まり返った店内には理亞のみが残っており、奥の部屋からは店員や客が全員帰った事を確認したことりが現れた。

 

「今度は何?疲れてるからさっさと済ませて帰らせて欲しいんだけど」

 

「はい理亞ちゃん。これ返すね」

 

ことりの手には先程預けたクレイドールのメモリが握られていた。預かると言っていた筈だが、たった数時間で返すとはどういうつもりなのだろうか。

 

「本当はずっと預かっているつもりだったんだけど、もしツバサさんに見つかったら面倒でしょ?だからせめてメモリぐらいは持っていた方がいいかなぁと思って」

 

以前理亞がメモリを捨てた時、ツバサは『ガイアメモリは私達の絆だから大事に持っていてね』と言った。ことりはそれも知った上で自分を気遣ってくれているのだろう。そう思った理亞はことりの手にあるクレイドールメモリをそっと受け取った。

 

「じゃあ、あとはよろしくね」

 

「えっ?」

 

『よろしくね』とはどういう意味なのか。それを尋ねようとした瞬間、突如として理亞の意識が遠のく。その原因は彼女に巻きつく操り糸である。

ことりの言葉は理亞の背後にいたパペティアーに向けて告げられたものだったのだ。

 

「あなたはもう私の操り人形よ」

 

「流石だよ…!これでパワーアップしたクレイドールの力を見る事ができる!ふふっ♪」

 

ことりは立ちながら眠っている理亞の腰にガイアドライバーを装着させながらほくそ笑んだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「今この道を通ったから…もうすぐだね」

 

「曜さんから聞いた住所だと、ここを曲がった先にある住宅みたいです」

 

「あ、2人共こっちこっち!」

 

曜から提供された住所を辿りながら美帆の家を探すダイヤとルビィ。ようやく目的の場所が近づいたところで先に来ていた曜が曲がり角からひょっこりと顔を出し、2人を家へと案内する。美帆の家は既に警察による家宅捜査が始まっており、周囲にはそれを一目見ようと群がる近隣住民が集まっていた。ルビィ達は野次馬をかき分けて家の中へと入って行く。

 

「曜!それにダイヤとルビィも、お疲れ様です」

 

「園田刑事、ごきげんよう。美帆さんはいらっしゃいますか?」

 

「家にはいないので完全に黒ですね。インターホンを押しても出なかったので強制捜査に踏み込みました」

 

ダイヤは念の為に美帆の安否を海未に聞くが、海未が家を訪ねた頃にはもぬけの殻となっていたらしい。

その上、テーブルの上とその周りには酒が入っていたであろう無数の空き缶、灰皿には喫煙の形跡が残されている。ストレスで飲酒や喫煙を繰り返していたのか、家族を亡くしてからの生活が乱れていたのは明らかだ。

 

「法律で禁止されている未成年の飲酒・喫煙までしていたぐらいだし、心身共に限界だったのかも。ただ逮捕するだけじゃなくて心のケアも十分にしてあげないといけないね」

 

「そうですね、いくら犯人とはいえ同情ができない訳ではありませんし…ルビィ、この後はどうしますか?」

 

「ここに置いておくだけじゃダメだと思う。この人形は美帆さんに直接渡さないと」

 

「…あなたならそう言うと思いました。私も付き合いますわ」

 

ダイヤとルビィはその場を後にし、引き続き美帆の行方を探し始めた。

 

 

 

「よし、検索終了。あとは鞠莉かダイヤ達からの連絡を待つだけだね。暇潰しにフロッグポッドのテストでもやってみようかな〜」

 

『ビョ、病院から?ビョイーンと帰ろう!』

 

『はいっ!!アルトじゃ〜ないとッ!!』

 

「ブフッ!ヤバいこれ…梨子ちゃんとか善子ちゃんが言ってると思うとめっちゃ面白いんだけど…ぷくく」

 

一方、パペティアーの検索を終えた果南はフロッグポッドに録音していた音声を梨子や善子の声で再生しながらゲラゲラと笑っていた。部室に戻る為格納庫の扉を開けながら次の音声を再生しようとした瞬間、目前に巨大な何かの姿が現れた。

 

「!?なんで組織のドーパントが…!」

 

果南の見たそれの正体はクレイドール・ドーパントだった。鞠莉が不在で変身ができない彼女を気に留める様子もなく、クレイドールは腕から光弾を放ちながらこちらへ攻撃を加えてくる。逃げながらスタッグフォンを取り出し鞠莉へと連絡を入れようとするが、スタッグフォンは光弾が放たれた衝撃で数メートル先へと吹き飛んでしまった。

 

「とうとう私の事を捕まえに来たんだね」

 

「捕まえる?別にあなたに用はないわ。私が探してるのは黒澤ルビィよ」

 

「美帆さんか…あなたの狙いはルビィちゃんなんだね。てっきりダイヤか曜だと思ってたよ」

 

「彼女達は私を妨害しただけ。でも黒澤ルビィは許せない…!アイツは私だけでなく麻心の事まで侮辱した!!」

 

パペティアーによって操られたクレイドールの攻撃は校舎外へ出ても止まる事はない。このままではやられると果南が確信したその時、後方から2つの何かが飛び出しクレイドールを破壊した。1つは果南を助けようとしたファング、もう1つは果南の後ろに停車したアクセルガンナーの放った光弾だ。

 

「ファングにアクセルのユニット!助かったよ」

 

ほっと息をつくが、そうも言っていられない。ルビィが美帆に狙われているのだ。果南はスタッグフォンを開き、鞠莉へと連絡を入れるのだった。

 

「…ここは?」

 

粉々になったクレイドールも再生能力で元の形に戻り、パペティアーの操り糸の能力から解放される。最後の記憶を辿ると、自身が操られる前に見たのが笑みを浮かべたことりの姿である事を思い出した。

 

「あの女、私を騙すなんて…!絶対に許さない!!」

 

ことりに利用された事を悟ったクレイドールは変身を解くのも忘れ、ChunChunへと引き返して行った。

 

「…まぁいいわ。黒澤ルビィは見つけたら絶対に…キャッ!!」

 

クレイドールの操り糸が外れた為、パペティアーは諦めてルビィを探そうと踵を返そうとした瞬間、横から飛び出して来た影からの攻撃を受ける。前方には自身を攻撃したであろう影…スミロドン・ドーパントが立っていた。

 

「理亞の様子がおかしいと思って来てみたら…あなた、理亞を操って何をしたんですか!?」

 

スミロドンは獲物を狩る野獣のような勢いでパペティアーへ襲いかかろうとする。妹が何者かわからないドーパントに操られていたのだ。怒りを抱くのも無理はない。

 

「待って!違う!私はメイドカフェの店長と名乗る女にあなたの妹を操るよう唆されたの。引き受けたら報酬を出すと言われて…」

 

「メイドカフェの店長…南ことりですか…!」

 

それを聞いたスミロドンはことりを問いただすべく、ChunChunへと向かって行く。パペティアーもスミロドンの姿が見えなくなったのを確認した後、ルビィを探すべくその場から去った。

 

 

 

「見つからない…何処にいるんだろう」

 

「焦っても意味がありませんわ。長い時間歩き回りましたし、ここで一旦休みましょう」

 

そして同じく、ルビィもダイヤと共にパペティアーを探す。公園に設置されたベンチに座った瞬間、先程までの疲れが一気に押し寄せてくる。背もたれに寄りかかると、少しずつ太陽が落ち始めているのが見えた。

 

「オレンジジュースで良かったですか?」

 

「あ、ありがとう…」

 

眠気で瞼が閉じかけた瞬間、隣にダイヤが座りオレンジジュースの缶を渡してくる。まさか自分の為に買ってくれたのだろうか。ルビィは少し申し訳なさそうにそれを受け取った。

 

「あら?口に合いませんでしたか?」

 

「ううん、そんな事ないよ。でもなんか申し訳なくて…」

 

「気にしないで下さい。私が勝手にしている事ですから。それに今回はルビィの方が動いていますし」

 

ダイヤはルビィに優しそうに笑いかける。この笑顔を見るのは何度目になるのだろうか。そんな事を考えながら自身も笑顔を返す。

 

「…ルビィ、あなたは本当に大きくなりましたね」

 

「えっ?」

 

「もう覚えていないかもしれませんが、昔のあなたはどんな時もただ私の後ろをついて来るだけだったんです。でも今日のあなたは私よりも積極的に依頼解決の為に動いていたように見えます。妹の成長をここまで実感する日が来るなんて想像もしていませんでしたわ」

 

「そんな事ないよ…ルビィは依頼人の為に行動したいって思ったから動いてただけだし…」

 

「でも、それって本当はとても勇気のいる事なんですよ?特に私達は普通の探偵業務の他にガイアメモリが絡んだ命懸けな依頼が来る事もあります。そのような状況になった時、依頼人の為にと思っていたとしてもつい自分を優先してしまいがちです」

 

「お姉ちゃん…」

 

「ルビィが関わる事によって変わった事…きっとあるのではないかと思います。それはあなた自身が一番知っているのではありませんか?」

 

「そ、そうなのかなぁ…?あまり考えた事ないかも…」

 

とはいえ実際、ルビィが動いた事によって変わった事はいくつもある。善子がダイヤモンドの女によって行方不明になった時は自ら潜入捜査を行う事で早急な発見に貢献し、言動に棘のあった理亞は彼女との出会いで考え方が丸くなったのだ。当の本人はまだ実感が湧かないようだが。

 

「とにかく、あなたはもっと自分に自信を持ってもいいと思います!たとえ自分の行動が突発的なものだとしても、周りに良い影響を与えているのならそれで十分です。以前の依頼や事件だってそう。少なくとも私は、私や鞠莉さん達にできなかった事をルビィが成し遂げてくれたように思います。だからあなたには本当に感謝していますわ」

 

「自分の与えた影響とか、まだよくわからないけど…でも、ルビィもきっと変わってるんだよね。それならルビィ、これからも黒澤探偵部の一員として頑張りたいと思う!」

 

「その意気ですわ!…まぁ、あまり突発的過ぎるのもぶっぶーですよ?常に良い方向に進んだり、思った通りになるとは限りませんから」

 

「ピギィ…それは本当にごめんなさい…」

 

「ふふっ。さて、日も暮れてしまいますしそろそろ再開しましょう」

 

「何を再開するつもり?」

 

2人がベンチから立ち上がったその時、目の前に同じくルビィを探していたパペティアー・ドーパントが現れた。ダイヤはルビィの前に立ち、彼女を守ろうとする。

 

「ようやく見つけたわ。黒澤ルビィ…!」

 

「まさかそちらから来て下さるとは。ですが、ルビィには手を出させないと言った筈です」

 

「退きなさい。あなたに用はないの」

 

「何故ルビィに危害を加えようとするのですか?麻心さんをいじめていた加害者の方々が標的ではないのですか?」

 

「松浦果南も同じ事を言っていたわ。そいつらもあなたの妹も、私と麻心を侮辱したからよ!!」

 

「侮辱…?」

 

「私は麻心と母さんが死んでからずっと麻心をいじめた奴等を憎んでいた。でも私の気持ちなんて知りもせずに『麻心を愛していない』と口にした…!あなたの事よ、黒澤ルビィ!!」

 

「だからルビィといじめていた子達に復讐しようとしてるの…?そんなの麻心ちゃんが悲しむよ…!」

 

「麻心って…その人形が?ふざけないで!そんな物はただの人形よッ!!」

 

パペティアーは左手の糸でダイヤを縛りつけ、後ろにいたルビィを右手の糸で拘束し持ち上げる。彼女の怒りが遂に頂点へと達した瞬間だった。

 

「やめて美帆さん!麻心さんの気持ちも考えてあげて下さい!」

 

「うるさいッ!!こいつの顔なんて見たくないのよ!!…丁度いいわ。あなたの目の前で妹を殺してあげる。そうすればあなたも妹を失った私の気持ちがわかるでしょう!?」

 

そう言いながらナイフを取り出し、右手の糸を切断するパペティアー。ダイヤが何もできない状況の中、ルビィは無常にも地へと落下していく。

 

「お姉ちゃん!!」

 

「ルビィ!!」

 

「大丈夫、任せて!」

 

もうどうにもならない。2人がそう思いかけた瞬間、ダイヤの真上からWが飛び出し間一髪ルビィを受け止めたのだった。

 

「遅れてゴメン、ダイヤちゃん!」

 

そこへアクセルに変身した曜も駆けつけ、ダイヤを縛りつけていた糸をエンジンブレードで切断する。ルビィも救われ、ダイヤは思わず息を1つ吐いてしまった。

 

「鞠莉ちゃん、ありがとう!」

 

「当たり前デース!気持ちは同じだって言ったでしょう?」

 

しかし、救出を喜んでいる時間もない。パペティアーはクラリネットのような物を取り出すと音で鞠莉達を怯ませながら糸を出し、ルビィを時計の柱に張りつける。

 

「あぁ!また…」

 

「余所見してる場合!?」

 

アクセルが再びルビィを助けに向かうが、パペティアーは操り糸でアクセルを拘束してしまう。パペティアーに操られたアクセルはダイヤを突き飛ばし、Wへと攻撃する。

 

「鞠莉さん、果南さん!」

 

\スカル!/

 

ダイヤもスカルへと姿を変え、Wに攻撃し続けるアクセルと交戦する。

 

「果南!どうすれば曜を元に戻せるの?」

 

『パペティアーの本体に攻撃するか曜を変身解除させるかの二択だよ。ルビィちゃんもまとめて助けるには前者の方がいいよ!』

 

「OK…あ、なら例のアレを使ってみましょう!」

 

『アレ?…あぁ、あれね!』

 

\スチーム!/

\ジェット!/

 

\ヒート!メタル!/

 

\エレクトリック!/

 

Wはヒートメタルにチェンジしながらアクセルの攻撃を防ぎつつ、フロッグポッドをパペティアーの足下へ向かわせる。

 

『かんかんみかん!かんかんみかん!』

 

「えっ?」

 

フロッグポッドは千歌の台詞をルビィの声で再生する。それに反応したパペティアーはルビィが挑発したのかと思い彼女の方を見るが、ルビィは人形を抱きしめながら目を瞑っており喋った気配はない。

 

「うりゃ!」

 

「ッ!?」

 

その隙に鞠莉はメタルシャフトを投げつけ、パペティアーを吹き飛ばした。それと同時にルビィを縛りつけていた糸は外れ、アクセルも意識を取り戻した。

 

「よくも私を操ってくれたね!」

 

「うっ!!」

 

アクセルに斬りつけられた事により再び地面を転がるパペティアー。鞠莉はドライバーからヒートメモリを抜き、スカルへと手渡す。

 

「ダイヤ!あなたのVery hotな想いと本当の姉の姿を美帆に届けてあげて!」

 

「わかりましたわ!…美帆さん!」

 

\ヒート!マキシマムドライブ!/

 

スカルはヒートメモリをドライバー横のマキシマムスロットに装填し、パペティアーにいつもの決め台詞を放つ。

 

「さぁ、あなたの罪を数えなさい…!」

 

スカルはマキシマムスロットのボタンを押しながらパペティアーの元へと走り、胸部に赤紫の炎を纏った拳を叩きつける。スカルのヒートメモリを使ったマキシマムドライブ・ヒートソウルフィストを喰らったパペティアーは遠くへと吹き飛ばされ、元の姿へと戻る。

 

「うっ…あなた達に私の悲しみなんて…分かる訳がない…」

 

美帆は膝から崩れ落ちながら写真を取り出す。写真には笑顔の麻心と美帆が写っており、それは握りしめられた事により僅かな皺をつくった。

 

「もう私には何も残ってない…生きる意味さえも、愛されてる人も…」

 

「それは違うよ、美帆さん」

 

そう零す美帆へ、ルビィは優しく声を掛けながら近づきながら持っていた茶髪の少女の人形を返す。

同時に曜が美帆から排出されたパペティアーメモリを回収しようと腕を伸ばすと、突如それは白く光りだし金髪の少女の人形を持った幼女…麻心へと姿を変えた。

 

「お姉ちゃん、泣かないで。お姉ちゃんが悪い事しちゃったとしても、マコはずーっとお姉ちゃんの事、大好きだから…」

 

「麻心…ありがとう。こんな私でも愛してくれて…ごめんなさい…」

 

「いいの。ルビィお姉さんもありがとう。私の為に一生懸命になってくれて」

 

「良かったね、麻心ちゃん」

 

麻心は笑いながら頷いた後、金髪の少女の人形を遺しその場から消える。光が収まり、曜が再び麻心のいた場所を見るとそこには砕けたパペティアーメモリが人形と共に静かに落ちていた。美帆は何故か驚いたようにその人形をゆっくりと拾い上げる。

 

「これ、私が去年の誕生日に買ってあげた人形…?どうしてここに?」

 

「もしかして…」

 

「えっと…どういうSituationなの?果南、何か知ってるという事?」

 

「うん。全部わかっちゃったんだよね、これが」

 

なんと、果南はルビィの見た麻心の正体が何者なのか知っているらしい。

 

「ど、どういう事ですの?あの麻心さんは幽霊なのですか?ルビィの元へ依頼に来た麻心さんと何か関係が…」

 

「はいはい今から説明するから。ねぇ美帆さん、あなたってもしかして…黒澤探偵部の事知ってるでしょ?」

 

「えぇ…といっても街の掲示板に貼られたチラシで見た程度だけど…」

 

「やっぱりね、だったら説明もつく。ルビィちゃんの元へ依頼に来た麻心ちゃんは幽霊じゃないかって予想もあったけど、勿論その類のものではないよ」

 

「つまり、どういう事ですの?」

 

「ルビィちゃんが見た麻心ちゃんは、ガイアメモリの能力がその人形を通じた事によって現れた美帆さんのイメージだったんだよ。メモリとの適合率が高いと、使ってるうちにドーパントにならなくても能力を発動する事ができるようになるって、組織に捕まってた時に見た資料に書いてあったんだ」

 

「私のイメージ…?でも私はその人形を操った記憶なんてないわよ?そもそも何の目的で…」

 

一見説明が成されているようにも聞こえるが、果南の話には何故麻心の姿になった人形が美帆の意思と関係なくルビィの元へ現れたのか、という疑問が残る。しかし果南は特に迷う事なく説明を続ける。

 

「多分、美帆さんは内心で自分が間違ってる事に気づいてたんじゃないかな。その想いにメモリが反応して、自分の行動と関係なく人形を操ってたんだよ。つまり、美帆さんは無意識に自分の復讐を止めてくれる人を探していたって事」

 

「あれ?今現れた麻心ちゃんに関しては説明がないけど…それはどういう事?」

 

「そっちに関しては…正直私にもわからない。だって自分の事を好きだなんて思ってても口には出さないでしょ?美帆さんのイメージなのか麻心ちゃん本人なのか…果たして一体何だろうね?」

 

「ピギィ!」

 

どこか身震いをしている様子の果南を見たルビィも思わず声を上げてしまう。

一方、美帆は目からゆっくりと涙を流していたが、どこか霧が晴れたようにすっきりとした顔をしていた。

 

「どっちも、って事にしとく。きっと麻心も私を愛してくれているって…信じたいと思う」

 

そう言いながら美帆は曜と共に立ち上がり、ゆっくりと連行されて行く。

少し不気味な謎を残したまま、人形に関する一連の出来事は幕を下ろしたのだった。

 

 

 

「南ことりッ!!」

 

人形による事件・依頼が解決された時間から遡ること数分前。閉店したChunChunには怒りに肩を震わせたクレイドール・ドーパントが現れていた。

 

「あっ理亞ちゃんおかえりなさい!凄いでしょ?パペティアーの能力!」

 

「私を利用しておいて…!ふざけるな…ッ!?」

 

「よしなさい、理亞さん」

 

クレイドールはことりに攻撃しようとするが、彼女のいる部屋からタブー・ドーパントが飛び出し制止しようとする。

 

「あんじゅさん、退いて!」

 

「ぐっ!?」

 

クレイドールはタブーに光弾を放つが、何故かいつもより威力が高くパワーを制御できない。慌てて攻撃を止めるが、そこには既に変身を解かれたあんじゅが蹲っていた。

 

「理亞!…あれって!」

 

そこへことりに事情を聞き出そうとスミロドン・ドーパントも現れたが、クレイドールの側でふらふらと立ち上がるあんじゅを見て自身も変身を解いた。

 

「あんじゅさん!大丈夫ですか!?」

 

「あんじゅさん、ごめんなさい…!私が加減を誤ったから…」

 

「いいのよ、気にしないで!いいから先にツバサの家に戻ってなさい」

 

あんじゅに諭された聖良と理亞は、部屋からこちらを見て笑うことりを一瞬睨みつけ、ChunChunから出て行った。

 

「2人共怖〜い。理亞ちゃんはドライバーの出力を上げ過ぎちゃったし、下手したら殺されちゃうかも〜」

 

「ことりさん、『ドライバーの出力を上げ過ぎた』ってどういう事?理亞さんのドライバーに何をしたの?」

 

あんじゅはことりの発言が引っかかった為、それについて彼女に尋ねる。

 

「言葉通りの意味ですよ〜。理亞ちゃんのドライバーを直挿しに近くなるよう改造したんです!」

 

「直挿しって…あなた、随分と危険な事をしたのね」

 

直挿しとは、生体コネクタを通じて直接ガイアメモリを身体に挿入する事を意味する。これはバイヤーによってメモリを購入した一般人が主にドーパントに変身する為の方法であり、最もメモリの力を引き出す為の方法だが、代償として使い続けるうちにメモリの毒素が身体を蝕んでしまうというデメリットがある。ツバサをはじめとした綺羅家の幹部が持つゴールドメモリは一般に販売されている物よりも毒素が高く、直挿しをすると精神汚染や暴走のリスクが起こりやすい。彼女達が変身する際にガイアドライバーを用いるのは、それらを防ぐ事が目的であるからだ。

しかしことりは理亞のドライバーにあったその機能をほぼ全て外してしまった為、クレイドールメモリの力が通常時よりも引き出されあんじゅに多大なダメージを与えたのだ。

 

「強いドーパントになるにはドライバーなんて生易しい物から脱却しないとダメなんですよ?あんじゅさん」

 

ことりはそう笑いながら店の掃除をし始める。

あんじゅはその姿を見て、改めて彼女の恐ろしさを理解するのであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「すみません、遅れてしまいました!」

 

「ダイヤちゃん、おはヨーソロー!」

 

「大丈夫だよ。ルビィちゃんから話は聞いてたし」

 

人形の事件が解決してから2日後。この日も部室には果南とダイヤ、ルビィ、曜が集まっていた。

 

「あとは鞠莉ちゃんだけだね」

 

「それにしても、鞠莉ったら何処行っちゃったんだろう。トイレ行った隙にいなくなっちゃったんだよね」

 

「私も生徒会の会議で外からは出ていないので見ていませんわ」

 

「待ってればすぐに来るよ!…ほら、噂をすれば」

 

曜が外を見た瞬間、鞠莉が部室の中へと駆け込んで来る。しかし、その様子は何故かおかしい。

 

「ちょっと、何処行ってたのさ鞠莉」

 

「物凄い全速力でしたが、何かあったのですか?」

 

「はぁ…はぁ…実は…この学校が…」

 

「学校が…何?」

 

 

 

「この学校が…来年で統廃合になるって…」

 

 

 

「…えっ?」

 

「「「「えぇぇぇぇぇっ!?」」」」

 

 

 

8月が始まって僅か数日。

鞠莉達の元に届いたのは自分達の通うこの学校・浦の星女学院統廃合の知らせだった。

 

それは同時に黒澤探偵部の存亡が危ういという事を意味する1つのメッセージでもあった…




<次回予告>

ダイヤ「何としても学校を存続させましょう!」

???「メモリが抜けなくなっちゃって…」

ことり「あなたはもしかして…月ちゃんの従姉妹かな?」

アクセル「倒すべき奴が目の前にいるのに…ッ!!」

次回 Dが映すもの/ハイスピード少女だにゃ

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