その日、黒澤探偵部の部室は可愛らしく飾り付けが施され、盛り上がっていた。今日はルビィの入部記念パーティを実施する為、部員はもちろん浦の星女学院の生徒の一部と花陽が集まっていた。
「ルビィ、黒澤探偵部入部おめでとう。堕天使からは素敵だけど邪悪なグレープジュースを差し上げましょう」
「ありがとう、善子ちゃん!」
「それにしても、なんか仰々しい格好ね。それ…」
「この服装…いいえ、これが私の本来の姿なのですから」
善子はそう言いその場でポーズをとる。その姿を見た梨子は苦笑するしかなかった。
「それにしてもダイヤさん、私達もパーティに参加しちゃって大丈夫なんですか?部員でもないのに」
「私に至っては生徒ですらないのに…」
「全然構いませんわ。みかんやご飯もたくさん用意してありますよ」
「ご、ご飯!?パーティに白いご飯は欠かせないですよね!!ダイヤちゃんわかってる!!」
「本当ですか!?やったぁ!!」
「私のグレープジュースにオレンジはよく合うわよ。大人の味がするわ」
いつもとは違い楽しそうな雰囲気の黒澤探偵部。
そんな中、部室のドアを叩く者が。しかし探偵部の部員は誰も気づかず、ドアを何度ノックしても返事がない。ドアを開けると、そこには大声で雑談する千歌達がいた。
「あ!お客さんですわ!ルビィ!」
「お客さんだよ〜!!」
依頼人に最初に気づいたのは黒澤姉妹だった。ルビィは手に持っていたハンドベルを鳴らし、ざわついていた部室を静かにさせた。
「あ、すみません。間違えた…」
部室に入って来たのは、どこか眠そうな顔をしている女子高生だった。
一同は部室を間違えたと出て行こうとする少女を引き止め声を合わせながら、
「「「黒澤探偵部です♪」」」
と言うのであった。
「おぉ、それなら良かった〜」
「すみません。いつもはもっと静かですので…」
「Hello, 何の依頼かしら?」
「遥ちゃん…妹を探してくれませんか?」
「それならこのマリーにお任せを!私は人探しのプロだと自負しているわ!」
「実績も豊富なので安心ずら♪」
「あ、でも普通の人間じゃないんだけど…大丈夫かな?」
「普通の人間じゃない?どういう事?」
「遥ちゃん、もう亡くなってるんだよね…」
依頼人の名は近江彼方。彼女の妹の遥は今年の2月に交通事故で亡くなっているはずなのだが、彼方は昨日の放課後、学校の音楽室でサクソフォンを吹いている遥を目撃したのだという。
「すぐ消えちゃったから単に疲れていたのかもしれないけど…ハッキリさせたい。もしかしたら遥ちゃんのそっくりさんがいるかもしれないし…だから、学校まで来てもらえませんか?確か、吹奏楽部はもうすぐ合奏練習の時間だし…」
「…パーティどころじゃなさそうだね。今日は中止」
「「えぇ〜!?」」
ルビィの言葉に千歌達は残念そうな顔をする。
「そんな…ご飯が食べられないなんて…」
「せっかく果南ちゃんと仲良くなれるチャンスだったのに〜」
「千歌ちゃん、我儘はよくないよ?」
「死者が生き返る、か…そんなのありえないよ!!これはなかなか怪事件になりそうだね、鞠莉!」
「私はこのTownを知り尽くしているつもりよ。ちゃんと妹さんの正体を掴んでみせるわ!」
「マルのお家はお寺だから怪奇現象は得意分野ずら!じいちゃんに聞いてみるね♪」
急遽入った依頼。鞠莉と黒澤姉妹は彼方の学校に向かい、果南はリボルギャリーの格納庫で地球の本棚に入り検索、千歌と梨子、花陽と善子は街と浦女で聞き込み、花丸は帰宅しそれぞれが怪現象について調べる事となった。
彼方の学校に到着した鞠莉達は吹奏楽部の顧問から許可を取り、練習風景を見学していた。
「それじゃあまず、基礎練習から。1、2、3…」
顧問のカウントに合わせ、部員が楽器の音を鳴らし始める。
鞠莉は後ろから遥の所属していたサクソフォンパートの様子を見ていたが、遥のように髪を2つに結わえた女子生徒や、似たような顔の生徒はいなかった。
「ここにはいなさそうね。もしかしたらこの学校の似たような生徒と勘違いしたのかしら?」
「そうだね。部活に入らなくても楽器を持っている人はいると思うし、部活が終わった後に音楽室を借りて吹いてたのかもしれないね」
「他の部活動風景も見た方がよさそうですね。おそらくハードな部は可能性が低いと思うので、活動の少ない部から優先的に調べましょう」
鞠莉達が音楽室を出た瞬間、ルビィのスマートフォンに着信が入る。花丸だ。
『もしもしルビィちゃん?じいちゃんに聞いたらこんな事がわかったずら』
花丸が祖父から聞いた話によると、1週間前、学生時代に虐められていた同級生の霊が現れるのでお祓いをして欲しいと頼んで来た女性がいたらしく、花丸の祖父はお祓いをしたらしいのだが、女性が今朝その霊を目撃し再び寺を訪れて来たらしい。また、似たような依頼は女性に限らず他の人からもたくさん寄せられているという。花丸の祖父曰く、何度祓っても祓えず身近な人間の周りに還って来るという事から、この現象は『
鞠莉は花丸から聞いた情報を果南に報告しようと電話をかけた。
『死人還り?なるほどねぇ。そんな噂があるんだ』
「えぇ、一流の霊媒師も霊力や気配を感じる事ができなくて、除霊がほぼ不可能と言われているらしいの」
『でもバカな事を言っちゃ困るよ。当時の事故や遥ちゃんについて検索してみたけど、本にはしっかり死亡した事が書かれていたし葬儀も済んでいる。彼方さんや遺族が他人の事故死と勘違いしている可能性はゼロだよ。考えられるのは見間違えや他人の空似、気のせいだと思うんだよね』
他人の空似という言葉に鞠莉は眉をひそめ、以前千歌がオレンジメモリを所持していた時の事を思い出す。千歌にオレンジメモリを渡した支倉かさねが千歌の親族でないのに瓜二つの見た目をしていた事から、他人と見間違えた可能性もあるからだ。実際、かさねは浦女の生徒でありながら理事長である鞠莉が千歌と見間違えてしまうくらい似た容姿をしていた。
「とりあえず、花丸に遥のお墓を調べてもらっているわ。私達はまだ彼方の学校にいるから似たような生徒がいないか探してみるわ」
鞠莉は電話を切り、遥が生前所属していたクラスへ向かう。窓側にある左端の席には、遥の写真が置かれている。
「どなたですか?」
ふと、教室の扉の方から誰かの声がする。声のした方を振り返ると、台本を持った髪の長い生徒が立っていた。
「あなた、もしかして遥さんのお友達ですか?」
「いえ、私はこのクラスではないんです。遥さんの事は全く知らなくて…演劇部の練習にいつもここを使っているだけなんです」
彼女は演劇部の桜坂しずく。遥の隣のクラスの生徒であり、彼女とはあまり話した事がないらしい。
「一応中学は一緒だったんですけど、遥さんは私と違って友達も多かったので殆ど話した事はないんですよね」
「そうなのね。実は私達、亡くなったはずの遥を彼女の姉が目撃したらしくて探しているの。まぁ、他人の可能性が高いけどね」
「もしかしてそれって死人還りですか?1週間前から沼津で起きてるって噂の…」
「知ってるの?」
「クラスメイトの知り合いが亡くなったおばあさんを目撃したと耳に挟んで…一体何なんでしょうね?」
これだけ目撃例がある事から、鞠莉達は他人の空似にしては怪しいと思い始めていた。
その時、ルビィのスマートフォンが再び鳴り、花丸からの着信が入る。
その内容は、万が一に備えてお祓いをするので花丸の家に来て欲しいとの事。鞠莉達は花丸の家の寺に向かい、そこで彼方と共に除霊を受けた。
「さっきお墓の中を確認したところ、遥さんのお骨はちゃんと中に入っていたずら。生き返ってしまった訳ではないと思うずら」
「これで解決しなければ、他人の空似の可能性が高いかもしれませんね。この後はどうしましょうか」
「彼方の学校はある程度調べ終えたから、浦女に戻りま…」
「どうしたの?鞠莉ちゃん」
鞠莉が寺を出ようと外を見た瞬間、遥がこちらを見ながら去って行くのが見えた。
「あれって…まさか幽霊!?」
「追ってみましょう!!」
「花丸さん、万が一に備えてお祖父様を呼んで下さい!私達は遥さんを追いかけますわ!」
「了解しましたずら!」
鞠莉とルビィ、ダイヤは遥のあとを追い少し広めの通りへ出る。
するとそこで遥の姿は消え、突然空が暗くなる。そして、死神のような何かが姿を現した。
「フフフフ…私の名はデス。死の世界を司る神」
「そうよね、こういうのは大体ドーパントの仕業よね。行くわよ、果南」
「OK!行くよ」
\サイクロン!/
\ジョーカー!/
「「変身!!」」
鞠莉がサイクロンメモリとジョーカーメモリをダブルドライバーに挿し、展開すると仮面ライダーWに姿を変えた。その際に巻き起こった風にデスは地面に落とされる。
「仮面ライダーだったのですね」
「町を騒がせていたのはあなたね!許さないわよ!」
\ルナ!/
\ルナ!ジョーカー!/
Wは腕や足をゴムのように変形させ、デスに攻撃を叩き込む。
「その調子ですわ!」
「鞠莉ちゃん、頑張って!」
Wに追い詰められたデスは形勢不利と見たのか、空を浮遊し再び姿を消してしまった。
「あら?消えてしまいましたわ!」
「はぁ、このまま放っておいたらまずいわね…」
『鞠莉…あれって』
鞠莉が変身を解除しようとすると、果南が何かに気づく。果南が見つめる方を見ると、黒いスーツを着た白いソフト帽の男がこちらに近づいていた。
やがてその男は歩くのをやめ、ソフト帽を外し顔を見せた。その正体は…
「そんな…どうして…」
「あれって、お父さんだよね…?」
なんと、2年前に死んだ筈のダイヤとルビィの父、剛が鞠莉達の前に現れたのだ。
「剛!?」
『鞠莉落ち着いて!そんな事ありえないよ!』
「そうよね、ありえないわ!」
剛はポケットから黒のガイアメモリを出す。そのガイアメモリは、以前ダイヤが部室で見た物と同じメモリだった。
\スカル!/
「なっ…?」
剛がスカルメモリを起動させると、彼の腰にはダブルドライバーの左側のスロットを外したようなベルト、ロストドライバーが出現した。
「変身…」
\スカル!/
剛がロストドライバーを展開すると彼は骸骨のような仮面ライダー、スカルに姿を変えた。
鞠莉が動揺するのを他所に、スカルはこちらへ襲い掛かって来た。
「フッ!ハッ!」
Wはスカルに攻撃をする事ができず、もろに攻撃を食らってしまう。無理もない。攻撃してくるのは、彼女達にとって大切な人だからだ。
「やめて…お願いやめて剛!」
「お父様が仮面ライダーだなんて…」
「ルビィ、聞いてないよ…」
鞠莉の言葉も無視し、スカルは攻撃を続ける。スカルはトリガーマグナムを黒くペイントしたような武器、スカルマグナムを出しWに銃撃する。
\トリガー!/
\ルナ!トリガー!/
果南はメモリをトリガーに変え、スカルマグナムから放たれる弾を撃ち返しスカルに攻撃を試みるが、鞠莉に止められてしまう。
「やめて果南!!剛に攻撃しないで!!」
『冷静になりなよ。あの師匠は本物じゃない』
「スカルになったのよ!?本物よ!!」
『そんな訳ない!!だってあの時師匠は…』
「ダメ!!言わないで!!」
『師匠はあの時死んだんだよ!?』
その言葉にルビィは目を見開き、ダイヤは俯く。ルビィに至っては剛の死を知らなかった為、その場で涙を一筋流す。
\スカル!マキシマムドライブ!/
鞠莉達が揉めている間にスカルはメモリをマグナムに装填し、Wに放った。
「キャァッ!!」
マキシマムドライブの衝撃でWは遠くへ吹き飛ばされ、変身を解除されてしまった。
「あっ!!」
「鞠莉さん!!」
スカルは鞠莉を介抱したダイヤとルビィの前に立ち、変身を解除した。
「未熟な人間が勝手な行動をするなと教えたよな鞠莉?お前は進歩がない。探偵失格だ。さっさとやめちまいな」
「剛…」
「お父様!何故こんな酷い事をするんですか!」
「そうだよ!急に攻撃するなんて…」
「お前達には関係ない。ルビィ、ダイヤ、同じ目に遭いたくなければお前達も探偵をやめろ。わかったな」
「剛!待っ…!うぅっ…」
「鞠莉さん!しっかりして下さい!」
鞠莉は意識を失い、剛も何処かへ去ってしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
淡島のホテル『Saint A-RISE』のレストランでは、パーティが行われておりたくさんの宿泊客が食事を楽しんでいた。ツバサ達も飲み物を飲みつつ、死人還りについて会話をしていた。
「沼津を震撼させる死人還り…私のプレゼントしたメモリのせいで大変な事になっているわね」
「えぇ、まさかここまで騒ぎになっているとは思いもしませんでした。今度様子を見に行こうと思っています」
「仕事じゃなければ私も行きたかった。姉様、帰ったらどんなメモリか教えて」
「えぇ、わかったわ」
「聖良さんが行くなら私も行こうかしら?退屈しなさそうだわ♪」
「話を聞く限りでは面白そうなメモリだな。私も行くよ」
「いいじゃない。みんなで行ってらっしゃい?皆さん、今日は来てくれてありがとう!是非楽しんで下さいね!」
ツバサの声に合わせ、宿泊客は歓声を上げた。
一方、黒澤探偵部の部室。捜査資料を持った海未が訪ねて来ていた。
「こんばんは。参考になりそうな資料を持って来ました…って、何処へ行くんですか?鞠莉」
「理事長室よ。仕事があるの。今は1人にさせて」
鞠莉はそれ以上は何も言わず、部室から出て行った。
「鞠莉、何かあったんですか?」
海未が質問するも、ダイヤとルビィは何も答えず黙ったままだ。
「…捜査資料、持って来たのでここに置いておきますね」
海未は状況を察したのか2人を追及しようとはせず、資料をテーブルの上に置き部室から出て行った。
「ねぇ、お姉ちゃんは知っていたの?お父さんの事…」
「亡くなった事だけは。ルビィを悲しませたくなくてお母様と黙っていました。ですが何故亡くなったのか詳しくはわからないです」
「そっか…」
2人の間に再び沈黙が訪れる。すると部室のドアが開き、海未と入れ違いに果南が部室に入って来た。
「鞠莉、園田刑事にも情報を頼んでいたんだね」
果南が捜査資料を手に取ろうとすると、ルビィが先に捜査資料を持ち立ち上がった。
「…調査、再開しない?明日から」
「そうね。このまま落ち込んでいても意味がありませんわ。彼方さんが解決を待っていますし」
「でも師匠の事は…」
「待って!言わなくていいよ果南ちゃん。大切な事は鞠莉ちゃんに直接聞くから」
「私の知らない事もしっかり話してもらわないとスッキリしませんわ。でもその前に依頼を解決しないとなりません」
ルビィ達の言葉に果南も頷き、その日は解散となった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌日、鞠莉はある場所に向かった。そこは自分の師匠が眠る墓地だ。
黒澤家之墓と彫られたその墓石に水をかけて洗い流し、フラワーショップで買っておいた花を供える。線香に火を着けると、独特な匂いが辺りに広がった。
「やっぱりここにいたんだ」
鞠莉が横を向くと、果南がそこに立っていた。
「果南…どうしてここがわかったの?」
「幼馴染の勘ってやつかな」
そう言い果南は駐車場の方を指差す。その先には、停められているハードボイルダーがあった。
「まだできてないの?ダイヤとルビィちゃんに話す覚悟とか」
「まぁ、少し怖いわ。こんな事思ってしまうぐらいだから、やっぱり私に探偵なんて無理なのかもしれないわ。剛の言う通りよ」
鞠莉は自嘲するように苦笑いする。そんな鞠莉に果南は近づき、そのままハグをする。
「考え過ぎだよ。思い出しなよ、あの日師匠が私達に託した言葉を。そういえばさ、私達が再会した時もこんな風に抱き合ったっけ」
「そうだったわね。私達が勝手な行動さえしていなければ、剛は死ななかったかもしれないわね」
果南と鞠莉が思い出すのは、Wのはじまりの2年前のあの日…ビギンズナイトの事だ。
<次回予告>
剛「撃っていいのは撃たれる覚悟のあるヤツだけだ…ってな」
果南「これからも罪を数えて共に歩いてくれる?」
鞠莉「私達は黒澤剛の忘れ形見。そして、2人で1人の仮面ライダーよ!」
ダイヤ「変身…ですわ!」
\スカル!/
次回 Wのはじまり/ビギンズナイト
黒澤探偵部メンバーで好きなキャラは?
-
小原鞠莉
-
松浦果南
-
黒澤ダイヤ
-
黒澤ルビィ