浦女探偵   作:梨蘭@仮面バンドライバー

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Wの誕生秘話が明らかになるビギンズナイト後編。ダイヤさんがお父さんからスカルを継承します。ディケイドと大ショッカーは出てきません。


#6 Wのはじまり/ビギンズナイト

2年前の春。剛と鞠莉は、組織に囚われてしまった果南を救出すべく組織の巨大なガイアメモリ流通工場へ潜入していた。

 

「いいか鞠莉。敵はこの工場の中で果南の力を使い、ガイアメモリの製造を効率的に進めようとしている。彼女を助け出すのは俺の知人の依頼でもあり、俺達にとっての義務だ」

 

「今の果南はEarthのmemoriesを頭脳に取り込んでしまったから、このままだとその力を悪用されてしまうという事?」

 

「その通りだ。見つかるのも時間の問題だ、警戒しろよ」

 

「Of course!私も力になるわ!」

 

原因は不明だが、果南は組織によって地球の記憶を取り込んでしまったのだという。ガイアメモリは地球の記憶を内包する為、強い記憶の力があるほど製造の効率が上がり複製の難しいメモリも容易に複製できるようになるのだ。

剛と鞠莉がしばらく進むと警報音が鳴り、工作員が声を上げながら慌ただしく走り回る音が響き渡った。

 

「大人しく出て来たらどうかしら?今なら命だけは助けてあげるわ」

 

同時に頭上からは落ち着いた女性の声がする。鞠莉が声のした方を見ると、タブー・ドーパントが空を浮遊しながら自分達を探していた。

 

「Wao…Monsterだわ」

 

「鞠莉、俺が奴らを退けるからここでじっとしていろ。絶対に動くなよ」

 

剛は少し強めの口調で忠告すると、近くの階段を登り敵陣へ踏み込んで行った。鞠莉も視界の開けた場所からその様子を観察する。

剛は向かってくる工作員を次々と返り討ちにしていった。階段の手すりを利用し腹にキックを食らわせ階段から落としたり、素早く懐に潜り込みパンチを入れるなど、剛の戦闘力はかなり高いものだった。上で待ち受けていた工作員も軽々と蹴散らし、攻撃を華麗に避けながら顔に強烈な飛び蹴りを叩き込んだ。

 

\マスカレイド!/

 

やがて工作員は勝ち目がないと思ったのか、マスカレイド・ドーパントに姿を変え剛を取り囲んだ。

 

「こそ泥にしてはやるじゃない。惚れちゃったわ♪でもこれで終わりと思うと…残念だわ」

 

タブーは言葉とは裏腹に残念そうな素振りも見せず、手から光弾を出した。

 

「こんな言葉を知ってるか、レディ。撃っていいのは撃たれる覚悟のあるヤツだけだ…ってな」

 

「なっ?」

 

彼女を前にしても動じない剛に、タブーは逆に動揺してしまう。

 

「ガイアメモリを探偵業に使いたくはなかったんだが、やむを得ないか…」

 

剛は呟くと、腰にロストドライバーを装着し被っていたソフト帽を外す。

 

「ロストドライバー!?何故貴方が!!」

 

「さぁな…」

 

\スカル!/

 

剛はタブーの質問に答えず、スカルメモリをドライバーに挿入し開いた。

 

\スカル!/

 

「変身…」

 

仮面ライダースカルに変身した剛は再びソフト帽を被り直す。彼の着用する白のソフト帽は彼の愛用している物であり、被ったままだと一緒に変身してしまう為一度外してから変身し被り直すようにしているのだ。

 

「さぁ、お前の罪を…数えろ」

 

スカルはタブーに右手を出し台詞を決める。台詞を言い終わったのと同じタイミングで、マスカレイドはスカルに襲いかかる。マスカレイドの急襲にスカルは怯む事なく攻撃を躱し、強烈な一撃を叩き込む。

2体のマスカレイドの動きを封じた事により隙ができてしまい、タブーの光弾を受けてしまいそうになった。光弾はギリギリでソフト帽を掠め、帽子に僅かに傷をつくった。タブーは手から光弾を次々繰り出し、スカルはそれをスカルマグナムの弾で撃ち返していく。その様子を鞠莉は下から目撃し、驚愕していた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ…」

 

すると、後ろから何者かが走り去る音がした。工作員と思い警戒すると、その走っていた人影は果南である事がわかった。手には少し大きめのアタッシュケースが抱えられている。

 

「果南!待って、果南!」

 

鞠莉は果南のあとを追ってしまった。それは同時に、剛の言いつけを破る事でもあった。

 

「果南!見つけたわ!」

 

「鞠莉!?会いたかった!」

 

ようやく2人は再会できた。再会を喜び合い、2人はその場で涙を流しながら抱き合う。

 

「師匠は一緒じゃないの?」

 

「敵を退けようとBattleしているの。ビックリしたわ。剛、ガイアメモリとドライバーを使って変身したんだもの」

 

「そっか、急に警報音がしたのは鞠莉達が侵入したからなんだね。私は工作員が出て行った隙に逃げて来たんだよ。あ、そうそう!ドライバーで思い出したんだけど凄い物を盗んで来たよ!」

 

そう得意気に果南はアタッシュケースを開け、鞠莉に中身を見せる。アタッシュケースの中には先程剛が持っていた物と同じドライバーが2つと、そのドライバーにもう1つスロットを付けたようなドライバーが1つ、そして緑、赤、黄、黒、透明、青の色をした6本のガイアメモリが入っていた。そのガイアメモリはドーパントに変身する為の化石のような形状のメモリとは正反対で、クリスタルのようなデザインをしていた。

 

「凄いんだよこれ!なんか私の為のドライバーらしくて、これの装着者は私と一体化できて同時に2本のメモリが使える。私の知識を超越した究極の超人が生まれるんだよ!!」

 

「そ、そうなのね。なんかDevilみたいだったわ、果南」

 

「地球の記憶を取り込んだからかなぁ。こういうの見るとゾクゾクしちゃって」

 

「鞠莉!何処にいる!」

 

そこへ、戦いを終えた剛が走って来る。

 

「剛!果南を助ける事が…」

 

剛は鞠莉の言葉を遮り、頬にビンタをした。鞠莉の頬は赤く腫れ、乾いた音が響いた。

 

「師匠!?急に何を…!」

 

「バカかお前は。何故言われた通りにしなかった…!」

 

「言われた通り?何のこ…」

 

鞠莉はその言葉にハッとし、剛の言葉を思い出す。自分が彼からの言いつけを破ってしまった事にようやく気づいたのだ。

 

「で、でも果南は助けられたじゃ…」

 

「そういう問題ではない。お前はまだ探偵として未熟な人間なんだぞ。このような危険な場でこそ任務云々関係なく俺に従うべきだ。勝手な行動をするな」

 

その後、鞠莉達は結局工作員に見つかってしまった。

剛は身を挺して鞠莉と果南を守ろうとしたが…背後からの凶弾に倒れて致命傷を負ってしまった。

 

「剛ッ!!」

 

「がはっ…鞠莉、俺の事は置いて果南と逃げろ。黒澤探偵部を頼んだぞ」

 

「嫌だよ!師匠、そんな事言わないでよ!」

 

「果南、お前は地球の記憶を脳に秘めているんだろう?その頭脳を活かして鞠莉をサポートしろ」

 

「師匠…うぅっ…」

 

果南にはロストドライバーとスカルメモリを。

 

「鞠莉、お前の町を愛する気持ちは本物だろう?俺の分まで町を守れ。そして、町を泣かす奴らを許すな…」

 

「やめて…まだ私は未熟な人間なのよ?私にはまだ無理よッ!!」

 

「2人の力さえ合わせりゃ何とかなるさ…あとは頼んだぞ…」

 

鞠莉には自身の愛用の帽子を渡す。剛は微笑むと、そのまま息を引き取った。

 

「剛…剛ぃぃぃっ!!」

 

鞠莉は大粒の涙を流し剛の名を呼び叫んだ。その時床に大きな穴が開き、タブー・ドーパントが現れた。

そこで鞠莉と果南は初めてWに変身した。強い風が周りに吹き荒れ、ヘリが激突する。それにより、工場は一瞬で火の海と化した。

 

「何よこれ…私どうなってしまったの?」

 

『まだ仕組みがわかってないみたいだね、鞠莉』

 

「わからないわ。一体何が…キャアッ!!」

 

工場が崩壊し出し、Wは足の踏みどころがなく落ちてしまった。抜け殻となった果南と剛の身体もそこから落下する。そこへどこからともなく恐竜のロボットが現れ、果南と剛の身体を支える。

やがて完全に床が抜け、Wは風の力で着地する。その近くでは恐竜のロボット、ファングメモリが鳴き声を上げWを見上げていた。果南はなるほどと呟き、ファングに近づくとサイクロンメモリをドライバーから抜き変身を解除した。何故か挙がっている右手に、鞠莉は困惑の色を隠せない。

 

「えっ?本当に何なの?」

 

「変わるよ鞠莉、2人でここから逃げよう」

 

果南が手を出すと、ファングは果南の手に乗る。果南はそれをメモリに変形させ、起動スイッチを押した。

 

\ファング!/

 

「変身!」

 

すると、鞠莉のドライバーに残っていたジョーカーメモリが果南のドライバーの左スロットに転送され、鞠莉は意識を失い倒れた。果南は転送されて来たジョーカーメモリとファングメモリを挿し、ドライバーを展開した。

 

\ファング!ジョーカー!/

 

果南の身体は白と黒の風に包まれ、Wに姿を変えた。その身体はところどころ鋭くなっている。

仮面ライダーW ファングジョーカー。

その姿は果南の身体をボディサイドとして変身し、W基本形態のサイクロンジョーカーよりも攻撃やスピードが格段に上がった形態だ。

 

「ガァァァァァァァ!!」

 

Wはその場で大きな咆哮を上げ、暴れ狂った。Wは咆哮に気づき近づいて来たマスカレイドを獣の如く蹴散らして行く。

 

\アームファング!/

 

Wがファングメモリの角を1回押すと、右腕からは白い刃が生えた。Wはその刃でマスカレイドを次々と切り裂いて行く。

 

「何?あの力…」

 

「ガァァァァッ!!」

 

タブーはWの力に驚愕し、その場から撤退を試みる。しかし既に手遅れだった。Wの目は既にタブーの姿を捉えている。

 

\ショルダーファング!/

 

ファングメモリの角を2回押すと、今度は肩に白い刃が出現した。Wはそれをブーメランのように投げ、マスカレイドの大軍を全て切り裂いた。

 

「キャアッ!ぐっ…」

 

刃はタブーの右肩にも命中し、大きなダメージを与えた。タブーが撤退したのを確認したWは鞠莉と剛の身体を抱え、工場から脱出した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「鞠莉も私にも罪がある。私の罪は流されるがままにガイアメモリを作り町を泣かせた事。鞠莉の罪は勝手な行動をした事。罪は消える事はないから抱えて生きて行くしかないんだよ」

 

「もしかしてあなた、私にそれを思い出させる為に?」

 

「鞠莉、1つ質問をするよ。これからも罪を数えて共に歩いてくれる?」

 

「そうよね、すっかり忘れていたわ。依頼人の為に依頼はしっかりと解決する事、これ以上誰かを泣かせない事…思い出させてくれてありがとう、果南。こちらこそ、これからもよろしくね!」

 

鞠莉は果南の手を握り、頷いた。2人は人目のつかない場所へ移動し、地球の本棚で検索を始めた。

 

「さぁ、検索を始めるよ。キーワードは?」

 

「まずは『死人還り』『近江遥』」

 

「そこまではもう終わってるよ。でもこれ以上本が減らないんだよね」

 

「海未の持って来た捜査資料に何か手掛かりがないかしら?」

 

鞠莉は昨日海未が置いて行った資料に目を通す。死人の出現場所や目撃者に特に共通している点は見られなかった。しかし、目撃時間をよく見るとどれも時間が18時頃になっているのに気づいた。

 

「果南、キーワード追加よ。キーワードは『18:00』」

 

果南がその時間をキーワードに追加すると、本棚が一気に減っていった。果南の目の前には一冊の本が残っている。

 

「ビンゴだよ。絞れた」

 

その本の表紙には『Act』と書かれている。

 

「『演じる』という本だったよ。今から1週間後の日曜日に彼方さんの学校で演劇部の舞台があって、その公演のテーマの1つに『死者』というワードがあるらしいよ」

 

「まさか…」

 

鞠莉は学校で演劇部の少女・桜坂しずくに会った事を思い出した。しずくこそが死人還りの元凶であり、ドーパントの正体だったのだ。

 

「さぁ、行きましょう果南」

 

「…うん、そうだね」

 

果南は一瞬違和感を感じるも、鞠莉とハードボイルダーに乗り走り出す。

走行中、果南のスタッグフォンにルビィからの着信が入る。

 

『演劇部のしずくちゃんが彼方さんと一緒にいるよ!』

 

『場所は彼方さんの学校の体育館ですわ!』

 

「了解!鞠莉、急ごう!」

 

「スピードUPするわ!しっかり掴まってて、果南♪」

 

 

 

「準備があるのでここで待っていて下さい」

 

一方、体育館ではしずくに連れられた彼方がアリーナに入ろうとしていた。しずくがアリーナに入ると、彼方の後ろの扉が開く。ルビィとダイヤが中に入って来たのだ。

 

「あっ、ダイヤちゃんにルビィちゃん…」

 

「彼方さん…どうして連絡くれなかったの?」

 

「逃げましょう、あの人はドーパントですよ?」

 

「それでもいい。しずくちゃんが普通の人間じゃないのは分かるけど、このまま遥ちゃんと静かに暮らせるなら彼方ちゃんは…」

 

「何を言ってるんですか!死んでしまった人は帰って来ないんですよ?」

 

「なんか騒がしいと思ったら…私の正体、知ってしまったんですね」

 

ダイヤの言葉に彼方が戸惑ったような表情を見せた瞬間、アリーナの扉が開きしずくが姿を現した。しずくは3人を半ば強制的にアリーナの中に入れ、怪しげな笑みを浮かべながら話す。

 

「今からここで素敵な舞台が幕を開けます。最愛の人と再会し、永遠にその人の夢を見続ける…素晴らしいと思いませんか?それに、皆さんには今は亡き大切な人がいる…妹さんとお父さんの夢を、ずーっと見続けてください」

 

そう言い、しずくは橙色のガイアメモリを構える。その時、2体のスタッグフォンが飛び出ししずくにぶつかった。

 

「そこまでよ、桜坂しずくさん…いえ、デス・ドーパント!」

 

「仮面ライダーですか。邪魔をするのなら…まずはあなた達から片付けます」

 

しずくは笑いながらメモリを右腕のコネクタに挿す。その瞬間しずくの姿は消え、ステージ袖から剛が姿を現す。

 

「今度は加減しないぞ、鞠莉」

 

\スカル!/

 

「変身…」

 

\スカル!/

 

剛はスカルに変身し、彼方に近づく。鞠莉は彼方を守る為にスカルの目の前に立った。

 

「鞠莉、そこをどけ」

 

「剛!この子は私の依頼人よ」

 

「それがどうした。またお前は俺の命令に背くのか。また俺を殺したいのか」

 

鞠莉はその言葉に反応し、スカルから目を逸らす。

 

「ダメだよ鞠莉ちゃん!聞いちゃダメ!」

 

「鞠莉…」

 

鞠莉は黙ったまま目を閉じている。やがて覚悟を決めたようにゆっくりと目を開け、スカルに近づく。

 

「はぁぁぁっ!!」

 

「ぐっ…?」

 

突然の事に、果南達は驚き目を見開く。鞠莉がスカルを殴ったのだ。

鞠莉は鋭い眼光でスカルを睨みつける。

 

「私はあなたを殺してしまった事、絶対に忘れるつもりはないわ。未熟でもいい、罪を抱えて生き続ける。あなたの教えを守る。それを邪魔するのがあなただとしても、私は絶対に探偵を辞めない!本当のあなたが教えてくれた言葉があるから!」

 

『そんなっ!?何なんですか、あなたは!?』

 

スカルは何も言わず、代わりに動揺したデスの声が響く。鞠莉は笑みを浮かべ、それに答える。

 

「私…いえ、私達は黒澤剛の忘れ形見。そして、2人で1人の仮面ライダーよ!行くわよ、果南!」

 

\ジョーカー!/

 

「鞠莉…うん!」

 

\サイクロン!/

 

過去を乗り越えた鞠莉には、もう何も恐れるものはなかった。果南もその思いに答えるよう、メモリを起動する。それを見たダイヤとルビィも目を合わせながら微笑み合う。

 

「「変身!!」」

 

\サイクロン!ジョーカー!/

 

Wはスカルにキックをお見舞し、外へと戦いの場を移す。鞠莉は剛に対する迷いを捨て去る事ができた為、いつもより強いパワーを発揮している。

 

「ルビィ、行きましょう!」

 

「彼方さんは安全な場所に隠れててね!よいしょっ!」

 

ダイヤは果南の身体を背負ったルビィと共にWの元へ向かう。

外へ出ると、既にWはスカルを追い詰めていた。

 

「鞠莉…俺がどうなってもいいのか?」

 

\ヒート!ジョーカー!/

 

鞠莉はスカルの言葉に耳を傾けず、メモリをヒートに変え炎を纏った拳でスカルを殴る。スカルは吹き飛び、変身を解除される。

しかし、本来ならば変身を解除されると剛が姿を現すはずが、何故かそこにいたのはしずくであった。

 

「えっ?剛じゃない?」

 

『まさか…』

 

しずくは電撃の走ったメモリを手にし、再び右腕にメモリを挿しデス・ドーパントに変身した。しかし、メモリが発した音声は『デス』ではなかった。

 

\ダミー!/

 

「ダミー?どういう事?」

 

『やっぱりね。どうもメモリ名が本と一致しないと思ったよ。DはDEATH(デス)のDじゃなくてDUMMY(ダミー)のDだったんだ』

 

果南が先程覚えた違和感は、本の内容とメモリ名の相違だった。しずくは死者"を生き返らせた"のではなく、死者"に変身"していたのだ。

 

\トリガー!/

\ヒート!トリガー!/

 

Wはメモリをトリガーに変え、トリガーマグナムから炎の弾を撃つ。弾はダミーに全て命中し、デス・ドーパントの変身も解かれる。中から出てきたのは、グレーの人型のドーパントだった。あまりにも特徴のない姿だった為、ルビィとダイヤも思わず驚いてしまう。

 

「ピギ!?あれが正体!?」

 

「ハッキリ言って弱そう、ですわ…」

 

「確かにそう見えるかもしれません。でもこのメモリは他人の記憶を読み取る事ができ、どんな姿にもなれるんです!」

 

ダミーは一拍置き、話を続ける。

 

「私は1週間前、舞台で死者の役を演じる事が決まりました。でも中々イメージが掴めなくて…そんな時にこのメモリを手に入れて、死者に変身してみたら不思議と気持ちが落ち着いて…」

 

「あなたはそれでいいかもしれません。ですが、私はあなたに父を汚されてとても腹立たしいと思っていますわ!」

 

ダミーメモリを手に入れた口実を聞いたダイヤは痺れを切らし、胸の内に秘めた怒りを吐き出した。

 

「これをあなたに化かされた人達が知ったら誰もが同じ事を思うはずです!鞠莉さんと果南さんの思いも踏み躙って…あなただけは絶対に許しませんわ!」

 

ダイヤは腰に何かを装着する。ダイヤの腰に巻かれた物を見て、果南と鞠莉は驚いた。

 

『ダイヤ、それって…!』

 

「剛のロストドライバー…」

 

「すみません。お父様とお二人の戦いを見た時に部室に同じ物があったのを思い出して…こっそり持ち出してしまいました」

 

ダイヤは少し照れくさそうに左手に持っていた帽子を見る。剛の白いソフト帽だ。

 

「お父様みたいに上手く戦えないかもしれませんが…私も手伝いますわ!」

 

「ダイヤ…ありがとう!」

 

ダイヤは右手に黒のガイアメモリを構え、スイッチを押す。

 

\スカル!/

 

「変身…ですわ!」

 

\スカル!/

 

ダイヤの姿はスカルになり、帽子を被った。Wの隣に並ぶスカル。鞠莉と果南はその姿を横から見て、剛の面影を感じていた。

 

「行きましょう。鞠莉さん、果南さん…お父様」

 

『じゃ、一緒に決め台詞言ってよ♪』

 

「「「さぁ、あなたの罪を数えなさい!!」」」

 

2人はトリガーマグナムとスカルマグナムを取り出し、ダミーに射撃した。

 

 

 

\タブー!/

\ナスカ!/

\スミロドン!/

 

一方、4人の戦場へあんじゅ、英玲奈、聖良の3人が近づいていた。3人はメモリを構え、ドーパントに変身した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

Wとスカル、ダミーの戦いはWとスカルが優勢だった。2対1というのもあったが、3人の精神状態も極めて良好だったからだ。

 

「このままメモリブレイクしましょう!やり方はわかる?」

 

「バッチリと覚えていますわ!2人で決めま…キャアッ!」

 

「ダイヤッ!?」

 

スカルがメモリをマグナムに挿そうとした瞬間、スカルに青と赤の光弾が命中し、Wは金色の何かに切り裂かれた。

 

「もしかして、あなた方は…!」

 

ダミーの周りにはタブー、ナスカ、スミロドンの3体のドーパントが立っていた。

 

「ダミーメモリの能力は素晴らしい能力なので、助けてあげましょう」

 

「感謝するんだな」

 

「あら…Wだけでなくスカルもいるなんて。私が戦った方ではなさそうだけど…とにかく決着をつけましょう、仮面ライダー」

 

『幹部も来るなんて面倒だなぁ…ダイヤはダミーをお願い!幹部は私達の方が戦えるから!』

 

「わかりましたわ!そちらは頼みます!」

 

スカルはダミーを追いかけ、Wは幹部達と対峙する。

 

\ルナ!/

\ルナ!トリガー!/

 

Wはメモリをルナに変え、トリガーマグナムからホーミング弾を放つ。弾はタブーの光弾を相殺する。ナスカはブレードでそれを切り、躱しながらWの方へ向かい、スミロドンは弾を全て避けWの体を爪で切り裂いた。

 

『こいつ、ルナトリガーの追尾弾も躱しちゃうなんて。相当なスピードだなぁ』

 

「ネコ科の動物の身体能力が高いのはご存知でしょう?このメモリは身体能力を大幅に強化してくれるんですよ」

 

『なるほどねぇ。近距離と遠距離、こっちの方が対応しやすいかなん?』

 

\メタル!/

\ルナ!メタル!/

 

Wは黄色と銀の姿・ルナメタルにチェンジし、メタルシャフトを伸ばし攻撃する。メタルシャフトは遠くにいるタブーの方まで伸び、光弾を出す隙をつくらない。かつ接近戦の得意なナスカとスミロドンも近づけさせなかった。ナスカもスミロドンも、シャフトの攻撃を防ぐのに精一杯だった。

Wはメタルシャフトを大きく振り、ナスカとスミロドンを弾き飛ばす。

 

「さぁて、Cleaning Timeよ!」

 

\メタル!マキシマムドライブ!/

 

Wがメタルメモリをシャフトに挿し、それを振り回しながら金色の輪を描く。

 

「「メタルイリュージョン!!」」

 

Wは輪を飛ばすが、タブー達はそれを避けた。メタルイリュージョンはダミーに命中しそうになるが、あと少しというところで当たらなかった。

 

『まとめてメモリブレイクしたかったけど、そこまでヤワじゃないか』

 

「このままじゃ…あれに!」

 

ダミーは走っていたトラックのタイヤを見て、それに化け逃げ去る。

 

「逃げ出すなんて…恩というものを知らないんですね」

 

「まずいですわ!逃げられてしまいます!」

 

「追いましょう!ダイヤのバイクもあるわよ♪」

 

鞠莉はスカルボイルダーを呼び出し、ダミーを追いかけた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

Wとスカルはタイヤに化けたダミーに追いつく。ダミーはそれに気づきスピードを上げるも、横からのリボルギャリーの突進により元の姿に戻ってしまう。

 

「くっ…あなた達にはわからないでしょう!?重要な役を任されたプレッシャーなんて!!私がどんな思いで頑張っているかわかるんですか!?」

 

『確かにわからないよ。私達はあなたじゃないもん』

 

「でも、亡くなった方との大切な思い出を汚していい理由にはなりません!メモリで手に入れた力はあなたが自ら手に入れた力ではありませんわ!」

 

「本当に好きな事なら、自分の手で掴むのよ!」

 

\サイクロン!ジョーカー!/

 

Wとスカルは、マキシマムスロットにメモリを挿す。

 

\ジョーカー!マキシマムドライブ!/

\スカル!マキシマムドライブ!/

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「「ジョーカーエクストリーム!!」」

 

「はぁぁっ!!」

 

冷静さを失ったダミーはWとスカルに向かって行く。しかし、Wのジョーカーエクストリームとスカルのライダーキックを食らったダミーは、変身を解除される。しずくの右腕からはダミーメモリが排出され、地面に落ちたメモリはパリンと音を立て壊れた。スカルは崩れ落ちるしずくの身体を支え、優しく言葉をかける。

 

「メモリを手にしてでも、あなたは演劇と向き合いたかったのでしょう?それなら大丈夫です。罪を数え、一度立ち止まってみて下さい。そして罪を償ったら、前に進んで下さい」

 

しずくはその言葉に笑みを浮かべながら涙を流し、意識を失った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

Report(報告書)

 

After a case, Kanata said.

"Thank you everybody. Kanata-chan wanted to value a memory with genuine Haruka-chan like everybody."

I wanted to value the words that he who was genuine gave. Because Takeshi lives among us.

(事件の後、彼方は言った。

 

「みんな、ありがとう。彼方ちゃんはみんなのように、本物の遥ちゃんとの思い出を大切にしたいと思います」

 

私も本物の彼がくれた言葉を大切にしたいと思う。剛は私達の中で生きているのだから)

 

鞠莉はダイヤとルビィの方を見る。戦いの後、果南と鞠莉はビギンズナイトでの出来事を話した。ダイヤとルビィは果南と鞠莉を許し、結果的に関係を深める事ができたのだ。

ダイヤとルビィは花陽、善子、花丸と仲良さげに談笑していた。鞠莉はその様子を見て微笑んだ。

 

「善子ちゃん、衣装にこれ付けてみたらどうかな?優しい堕天使さん♪」

 

「ちょっとやめなさいよ!私はクールでダークな堕天使なの…って、ずら丸も私のお団子にキャンディを刺すな!キュートにするな!」

 

「キュートは正義ずらよ、善子ちゃん♪」

 

「それより千歌ちゃんと梨子ちゃんはまだかなぁ…私は白いご飯を食べたくてウズウズしています…!」

 

「皆さ〜ん!今からAqoursのスペシャルライブをやるので、ステージ前に集合っ♪」

 

「ルビィちゃん、私達にも入部をお祝いさせて欲しいな♪」

 

部室のドアが開き、千歌と梨子が顔を出す。2人はスクールアイドルの可愛らしい衣装に身を包んでいた。

 

「鞠莉さん、私ライブなんて聞いて…いえ、今日はやめておきましょうか。鞠莉さん、ライブをやるそうなので果南さんを呼んで来て下さい」

 

「OK!かな〜ん♪」

 

鞠莉は興味深そうに花壇を見る果南に声をかける為、外に出た。




<次回予告>

ルビィ「恐竜のロボットが…」

果南「ファングが私の元に戻って来たんだよ…!」

海未「仮面ライダーと名乗る怪人が銀行を襲撃するという事件が起きたそうなんです!!」

ツバサ「ねぇあんじゅ、私達は何かしら?」

果南「地獄の底まで私と相乗りして、鞠莉!」

\ファング!ジョーカー!/

次回 覚醒するK/失われた光

黒澤探偵部メンバーで好きなキャラは?

  • 小原鞠莉
  • 松浦果南
  • 黒澤ダイヤ
  • 黒澤ルビィ

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