浦女探偵   作:梨蘭@仮面バンドライバー

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Saint Snow回後編です。理亞ちゃんに心境の変化が…?
この回はルビィちゃんの台詞等々かなり頑張って書いたので是非注目して下さい。


#9 Sプリンセス/本当の私

鞠莉とダイヤがテレビ局とラジオ局で調査をしている間、部室ではルビィと果南が雑誌やネットを確認しながらキーワードになりそうな材料を探していた。

 

「インタビュー記事に手がかりになりそうなものはなさそうだよ。ブレイクしたのも最近だし、高校生だから問題になっちゃうような事は言えないんじゃないかな?」

 

「だよねぇ。あのドーパントはBeautiful Freesiaよりも人気のあるA-RISEとSaint Snowが疎ましいんだろうね。つまりそれはSaint Snowが売れた事をよく思っていないって事だから、Saint Snowの評判を落として仕事を減らそうとしたのかも」

 

「確か、Beautiful FreesiaはSaint Snowが人気になる前って凄く人気だったよね」

 

「そうまでしてBeautiful Freesiaをプッシュしたいという事は、犯人はBeautiful Freesiaのファン…いや、仕事が少なくなった事も知ってそうだったから、もしかしたら芸能関係者かもしれないね」

 

「そっか。例えば芸能人Aさんがいるとして、ある時を境にテレビで見かけなくなったけど実は舞台で活躍してましたって事もあるし…そういう細かい事情まで知ってるのは関係者の人っぽいかも」

 

「そういう事。何となくキーワードが揃った気がするから、もう一度そこに重点を置いて検索してみるよ」

 

果南は検索をすべく格納庫へと向かい、部室にはルビィだけが残った。すると部室のドアが開き、誰かが急ぎ足で入って来た。

 

「こんにちは!黒澤たんて…って理亞ちゃん!?」

 

「ちょ、うるさい!生徒にバレたら困るんだけど!」

 

「あ、ご、ごめんなさい…」

 

「ん?アンタ、確か家にバイトに来てたよね?なんか見た事あると思ったら…」

 

「はい、黒澤ルビィと言います…えっと、あれ実は友達を探す為に潜入捜査してて…ほら、前に淡島で行方不明の女子高生がいるって話題になってたでしょ?」

 

「そういえばそんな事もあったっけ。そっか、そうなんだ。ふーん」

 

理亞はあまり興味がなかったのか、そう短く返すとすぐに黙り込んでしまった。しばらく沈黙が訪れ、ルビィはそれに耐えられなくなり話を切り出した。

 

「ね、ねぇ理亞ちゃん…?理亞ちゃんはどうしてここに来たの?探偵の事嫌いって鞠莉ちゃんから聞いたんだけど…」

 

「あの探偵はまた余計な事言って…別に嫌いって訳じゃないけどね。依頼解決の為に頑張ってるのも知ってるし。低予算で活動してるから期待してないだけ。警察みたいに鑑定とかできる訳じゃないし。この部に天才探偵がいるって小原って探偵が言ってたから、ダメ元で来てみた」

 

「天才探偵って果南ちゃんの事だよね?今果南ちゃんは事件に関して調べ物をしてるから、まだ戻って来ないと思うよ」

 

「はぁ?何それタイミング悪っ…まぁいいや、終わるまでここで待ってるから」

 

「あ!じゃあ飲み物淹れるよ。何がいい?」

 

「いらない。ここでその果南?って人の話聞いたらすぐ帰るし。わざわざ時間とってここまで来たんだからちゃんとした情報出してよ?」

 

「ぅゅ!!がんばルビィ!!」

 

「…何それ」

 

ルビィは勢いで頑張る時の台詞を言ってしまった事で、再び部室の中が静まり返った。

 

「ピギィ、いつもの癖で…ごめんなさい」

 

「ぷっ…ふふふ…別に怒ってない。アンタってなかなか面白いね」

 

理亞は縮こまるルビィの姿に笑いを堪えられなくなり、小さく笑みをこぼした。

 

「理亞ちゃんは…さ、Beautiful Freesiaの事はどう思ってるの?聖良さんがどう思ってるか、とかも知ってる?」

 

「私はあの子達の良さがあるからいいと思うけど…姉様はわかんない。まぁ、2人共人当たりはいいから好かれてるんじゃない?何でそんな事聞いたの?」

 

「疑ってるみたいな言い方だけど…もしかしたら聖良さんか理亞ちゃんがBeautiful Freesiaの2人とか関係者に何か言って、人気を落とさせたとかないかなぁって思って…」

 

「私はそんな事してないよ。多分姉様も。ファンが集まって来たのは私達の努力が実を結んだからだと思ってるし。ていうか、もし嫌いだったらちゃんと嫌いって言うし」

 

「ふふっ、だよね!だって理亞ちゃんが良い人だって信じてるから♪」

 

「そ、そんな事ない!急に変な事言わないで!」

 

理亞は頬を赤くさせ、ルビィから目を逸らす。それを見たルビィも、思わず嬉しそうだなぁと微笑んだ。

 

その頃、地球の本棚では果南が真相に迫りつつあった。

 

「1つ目に『Beautiful Freesia』次に『Saint Snow』『芸能関係者』最後が…『嫉妬』」

 

果南は次々とキーワードを入力していく。果南の目の前に『Jealousy』…日本語で嫉妬という意味の英単語が浮かび上がった瞬間、風により本棚が遠ざかって行く。手元には1冊の本が残り、果南はそれを読む。

 

「よし、全て繋がった。念の為フェイク映像も解析してもらわないとね」

 

果南は地球の本棚から出て、誰かに電話をかける。電話の相手は善子であった。

 

『もしもし、果南さん?どうかしたの?』

 

「善子ちゃん?ゴメンね急に。頼みたい事があるんだ。この前流れたSaint Snowの番組のフェイク映像なんだけど…」

 

果南が検索を進める中、ルビィと理亞は部室で互いに黙り込んでいた。ルビィから『良い人だって信じてる』と言われた理亞は恥ずかしくなり、しばらく話せなくなっていた。

 

「…私ね、昔から人と話すのが苦手なんだ」

 

やがて理亞は深呼吸をすると、ルビィに向き直り話し始めた。

 

「だからつい思ってない事言っちゃったり、仲良くしたいと思っている人にも結局話しかけられなくて…そのせいで結果的に嫌われる事もあるんだ。人付き合いが悪いってね。そんな中であのフェイク映像が全国に流れたから、私を悪い目で見てるアンチが誤解して騒ぎ立ててるんだと思う。私の事なんか何も知らないのに、とか思うんだけど…それは私の普段の態度が良くないからでもあるんだよね」

 

「そんな事…」

 

「いいよ気なんか遣わなくて。姉様は誰とでも分け隔てなく話せるし、明るくて言葉遣いもいいし笑顔も素敵だし…姉妹なのにどうしてこんなに違うんだろう。私は変わりたいと思っていても変われない。どうしたらいいんだろう。ねぇルビィ、ルビィは私の事どう思ってるの?教えて」

 

ルビィはその質問にどう答えていいのかわからず考え込んでしまう。理亞はそんなルビィをただ真剣な眼差しで見つめている。

やがて話す事が決まったルビィは、戸惑いながらも理亞の方へ向き直り自分の思いを打ち明ける。

 

「あの…えっと…いいんじゃないかな?無理に変わろうとしなくても」

 

予想外の答えが返って来たのか、理亞は目を見開く。

 

「だ、だから!包み隠さず言えって言ったじゃん!真面目に答…」

 

「これがルビィの本当の気持ちだよ!!ルビィは誰が何と言っても理亞ちゃんの事応援してるし、悪い子だとも思わない!!今の話を聞いて理亞ちゃんの気持ちが嘘だとか、理亞ちゃんの事嫌いになったなんて思えないもん!!」

 

ルビィは立ち上がり、普段よりも大きな声で自分の思いを理亞に伝える。その迫力に理亞も息を呑んだ。先程のふわふわした雰囲気との違いに驚いたからだ。

 

「今の話を聞いて、ルビィは理亞ちゃんがどんな風に考えてるのかとか、ちゃんとわかったよ?伝わったよ?でも人ってすぐに変わる事はできない。だから少しずつ変わる為の方法を見つけていけばいいんだよ。それが理亞ちゃんらしくていいんじゃないかな。ルビィ、今はそのままでもいいと思う!周りと自分が少しずつ理解できてからでも問題ないよ!理亞ちゃんは聖良さんと同じになろうとしなくていい、理亞ちゃんは胸を張って理亞ちゃんらしくいればいいんだよ!」

 

「私…らしい?姉様と比べちゃダメって事?」

 

「うん!ルビィにもお姉ちゃんがいるけど、お姉ちゃんはルビィみたいに人見知りじゃなくて、言いたい事もはっきり言える。厳しいけど人一倍周りを見ていて優しくて…ルビィもそんなお姉ちゃんみたいになりたいって思っていたけど、自分にどうしてもできない事はできるようにならなくてもいいってわかったの。その分自分にしかできない事を見つけてできるようにしていけばいいんだって。ルビィは探偵を通してそうなりたいって思ったんだ。今の話聞いてからだけど…」

 

伝えたい事は全て伝えたが、理亞は目を伏せたままだ。まずい事を言ってしまっただろうか。そう思ったルビィはつい俯いてしまう。

 

「あの〜…お取り込み中申し訳ないんだけど、入ってもいいかな?」

 

「わっ!?果南ちゃんいつの間に!?」

 

「ルビィちゃんが『本当の気持ちだよ』みたいな事を言った辺りからいたよ。まさか理亞ちゃんが来てるとは思わなかったけど」

 

「もしかして、その人が果南って探偵?」

 

「そうだよ。誰から聞いたの?」

 

「小原って探偵。友達に天才がいるから行くだけ行ってみろって言われてここに来た」

 

「ふふ〜ん、鞠莉も嬉しい事言ってくれるじゃん♪それに、犯人もわかっちゃったし」

 

「え、それ本当?誰なの?」

 

果南は理亞とルビィに地球の本棚で調べた事や犯人の名前、動機などを全て話した。2人はその名前を聞いて驚いていた。特に理亞は犯人が身近で親しい人間だった為、未だ信じられずにいた。

 

「凄い…全く穴がないほど調べられてる。でも…何だか複雑でもあるかな」

 

「あとは犯人を捕まえれば理亞ちゃん達も安心して芸能活動を再開できるけど、気持ちの整理に時間がかかりそうだね。でも犯罪なのには変わりないから、そこだけはわかって欲しい」

 

「うん、わかってる。ちゃんと罪を償って欲しいって思った。ありがとう」

 

理亞は部室を去って行った。果南は理亞が帰ったのを確認し、リボルギャリーに乗るべく格納庫へ向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ブロードキャストメモリの購入者は…」

 

綺羅家の屋敷。そこでは英玲奈が聖良からの頼みでメモリの購入者を調べていた。

 

「すみません、この後ラジオもあるのに…」

 

「いいんだ。このままでは状況も変わらないしな、屋敷にも連日人が押し寄せて困るんだよ」

 

\ブロードキャスト!/

 

英玲奈は購入者履歴のページを開き、画面を下にスクロールしていく。

 

「ん?同日の同時刻に同じバイヤーからもう1本別のメモリが購入されている…ブロードキャストと併用する為に2本購入したという事か」

 

英玲奈が購入明細画面を見ると、そこには驚くべき人物の名前が表記されていた。

 

「何という事だ…購入者と使用者は別の人間、しかも…」

 

「誰だったんですか?」

 

聖良はパソコンの画面を横から覗く。そこに書かれていた名前に、彼女も驚いた。

 

「そんな…こんな事って」

 

「私も驚いたよ。だがこれは許される事ではないな」

 

「残念ですが…やるしかないようですね」

 

聖良はスミロドンメモリを握り、外へと出て行った。

 

 

その頃、鞠莉は果南に呼び出されラジオ局へ向かった。合流した2人は中へと入って行き、空スタジオの扉を開ける。そこには今回の騒動の"もう1人"の犯人が。

 

「そこまでだよ。メモリをこっちに渡して、高山麗音さん」

 

「What?私達の戦ったドーパントはMenじゃなかったの?」

 

「彼女が持ってるメモリはまた別のメモリだよ。私達の戦ったドーパントのメモリはBROADCAST(ブロードキャスト)、そっちの正体はBeautiful Freesiaのマネージャーで、麗音さんが持っているメモリがCOMPUTER(コンピュータ)。機材がバグを起こしたって園田刑事が言ってたでしょ?でもブロードキャストの能力は電波を乗っ取り、放送機器や携帯端末やPC、タブレットに映像を流す能力であり機材を乗っ取る能力までは持ち合わせていないんだ」

 

「あぁ!そういう事ね!ブロードキャストがフェイク映像を流している間、コンピュータがカメラやマイクなどの機材を操って後々正しい映像を放送できないようにしたって事でしょ?」

 

「そうそう。ちなみにこの映像なんだけど、善子ちゃんに解析してもらったら過去に放送された別番組だったよ」

 

そう言い、果南はスタッグフォンの画面を鞠莉に見せる。果南がボタンを操作すると、映像に映る聖良と理亞の姿が2人組の女性レポーターに、店員の顔が困り顔から笑顔に変わった。

 

「まずブロードキャストの能力でこのレポーター2人をSaint Snowの姿に、店員を困り顔に挿し替えコンピュータの能力で音声も加工。それであの映像が完成したという訳」

 

「あなた…そうまでしてSaint Snowを貶めようとするなんて何が目的なの?」

 

「わかるでしょ?何となく。芸能界じゃよくある理由だよ」

 

麗音は幼少期から活動をしており、昔から注目を浴びていた。さらにBeautiful Freesiaとして曲をリリースしたりテレビやラジオに出演するなど快挙を成し、その人気は一時爆発的なものとなった。

 

「でもA-RISEが現れてあっという間にブレイクし、前よりも仕事は減った。その上Saint Snowまで私達よりブレイクして…持ち番組の数やゲスト出演はさらに少なくなった。私達のグループ名『Beautiful Freesia』は『美しき高嶺の花』という意味を持つの。私達はアイドルとして頂点を目指したい。だからマネージャーにも協力してもらって人気のある2つのユニットを潰そうとした。そうすればまた私達に振り向いてくれると思ったから」

 

「…気持ちはよくわかる。でもあなたを応援してくれた人がそれを知ったらきっと悲しむはずよ!あなたはファンの事をもっと考えるべきだった。ファンを大切にできないあなた達はアイドル失格よ!」

 

「うるさいっ!!一般人として生きてきたあなた達に私の気持ちなんてわからないよ!!」\コンピュータ!/

 

麗音は左手の甲にメモリを挿した。彼女は上半身がパソコンのキーボードやCDプレイヤー、顔がモニターのような形をしたドーパント、コンピュータ・ドーパントに姿を変えた。

 

「SNSでツイートして精神的に追い詰めさえすればあの2人は…!ついでにA-RISEも解散に追い込んでやる!!」

 

コンピュータはスタジオに備え付けられたモニターの中へ入り込んだ。

 

「中へ入っちゃったわ!果南、どうするの?」

 

「簡単だよ。ファング来て!」

 

果南がファングを呼ぶと、何処からともなくファングが現れ果南の左手に乗る。

 

「私をボディサイドとして変身するファングジョーカーなら鞠莉の精神ごとこの中に入る事ができる。こういう時、地球の記憶を持っている事が役に立つんだよね」

 

「確かに!サイクロンジョーカーだと果南の精神しか入れないから戦う事もできないわね!逃げられる前に変身しましょ!」

 

「もちろん。あっ、誰か来たらまずいからスタジオの鍵閉めて使用中にしといてね」

 

\ファング!/

\ジョーカー!/

 

「「変身!!」」

 

\ファング!ジョーカー!/

 

果南の身体は白い風に包まれ、Wに姿を変えた。果南はモニターに手をかざすと、コンピュータの創った電脳空間へと入り込んだ。

 

一方、浦の星女学院屋上。Beautiful Freesiaのマネージャーである男が佇みメモリを挿そうとしていた。

 

\ブロードキャスト!/

 

「これでA-RISEとSaint Snowを終わらせる。君達の人気もここまでだ…」

 

「そう簡単にはいきませんよ」

 

そこへ、階段を登りながらダイヤが姿を現した。腰にはロストドライバーが装着されている。

 

「残念でしたね。私には頼れる仲間達がいるのであなたの居場所くらい簡単にわかるのですよ?」

 

ラジオ局にいたダイヤは果南から騒動の真相を聞かされ、男を探す最中にルビィから学校に怪しい人間がいる事を知らされて屋上へ来たのだ。

 

「おまけに私の学校で好き勝手されては困ります。生徒会長として許す訳にはいきません!変身、ですわ!」\スカル!/

 

「そうか!僕を止められるなら止めてみるがいい!」

 

ダイヤと男はスカルとブロードキャスト・ドーパントに変身した。

Wもコンピュータを発見し、アームファングで切りかかる。場所は違うが、3人の決め台詞がシンクロした瞬間だった。

 

 

「「さぁ、」」

 

「あなたの罪を…」

 

「「「数えなさい!」」」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「お疲れ様でした〜」

 

「お疲れ様です。今日は呼んで頂きありがとうございました♪」

 

仮面ライダーとドーパント達の戦いの火蓋が切って落とされる中、テレビ局では収録を終えた華蓮が楽屋で怪しい笑みを浮かべていた。

 

「そろそろA-RISEのラジオが始まるはずだけど…あの2人は上手くやってるかしら?」

 

「無理だと思うけど。もう犯人が誰かなんてとっくにバレてるよ」

 

「あ、理亞ちゃん。お疲れ様♪犯人って、何の話?」

 

「だからとぼけても無駄。今の独り言も全部聞いてた。あんたが全部この騒動を仕組んでたんでしょ、華蓮?」

 

「…っ。ふふふふっ!」

 

楽屋に入って来た理亞が華蓮を問い詰めると、彼女は観念したとでも言うように笑い出した。

そう、この騒動は華蓮が計画したものであり、彼女こそが騒動の発端でガイアメモリの購入者だったのだ。

 

「何よ!!全部あんた達が悪いんでしょ!?私達よりあとからデビューした癖に私達より人気になって!!どんどん仕事奪ってったじゃない!!」

 

華蓮は理亞の胸ぐらを掴みながら吐き捨てるように怒りの矛先を向ける。言うまでもなく、それは彼女の本性である事を示していた。

 

「私達はアイドルとして1番になるの!それを邪魔する奴はどんな手を使ってでも叩き潰す!!もうあんた達の時代は終わった!さっさと引退したらどう?私達が味わった屈辱をあんた達も味わったら?なんとか言いなさいよ!!」

 

「…私を怒らせないで」

 

\クレイドール!/

 

理亞はドライバーにメモリを挿し、胸ぐらを掴んでいた華蓮を突き飛ばす。椅子にぶつかった華蓮が理亞を睨みつけた時には、理亞の姿は人形の怪物に変わっていた。

 

「嘘…!?」

 

「消えろ…!」

 

「何なのよッ!!この化け物ッ!!」

 

クレイドールは左腕に蓄積したエネルギーを放出しようとする。

その時…

 

『ルビィは誰が何と言っても理亞ちゃんの事応援してるし、悪い子だとも思わない!!今の話を聞いて理亞ちゃんの気持ちが嘘だとか、理亞ちゃんの事嫌いになったなんて思えないもん!!』

 

「っ!!」

 

ふと頭をよぎったのは、先程ルビィにかけられた言葉。

…そうだ。自分は変わりたいと思ってるんだ。

それを思い出したクレイドールはドライバーからメモリを抜き、理亞の姿に戻る。

 

『だから少しずつ変わる為の方法を見つけていけばいいんだよ。それが理亞ちゃんらしくていいんじゃないかな』

 

華蓮をいたぶりたい気持ちを抑えながら、理亞は彼女を睨みつける。それから数拍置き、理亞は楽屋から去って行った。

 

「…はぁ。アハハハッ!あ〜あ、私の事殺してればバレずに済んだのに、バカな子!鹿角理亞は怪物だと公表すれば、Saint Snowは…!」

 

「そこまでするなんて…本当に裏切られた気分です、華蓮さん」

 

華蓮は何処かに電話をかけようとするが、理亞と入れ替わるように入って来た聖良に止められてしまう。聖良は顔こそ笑っているが、その目には怒りの炎がふつふつと燃え上がっている。聖良の迫力に、華蓮は思わずたじろいでしまう。

 

「あなたはSaint Snowを貶めようとした挙句、理亞の正体を知ってしまった。綺羅家にとって不穏分子は生かしておく訳にはいきません。処分します」

 

\スミロドン!/

 

華蓮は近づいてくる聖良に置いてあった花瓶を投げるが、恐怖のあまり外してしまう。華蓮が壁に追い詰められると、聖良はドライバーにメモリを挿し、スミロドン・ドーパントに姿を変えた。

 

「キャアアアアアアッ!!」

 

その空間には、華蓮の断末魔の叫びのみが響き渡った。

 

 

一方、電脳空間ではWがコンピュータ・ドーパントを追い詰めていた。Wはアームファングでコンピュータを切り裂こうとするが、コンピュータは身体を粒子化させて逃げ回る。

 

『もう!逃げてばかりじゃ勝負になりませんよ!』

 

「大丈夫だよ。こんな時の為にこれがあるじゃん』\ショルダーファング!/

 

果南はファングの角を2回押し、肩に白い刃を出現させそれを頭上に投げた。

 

「どこに投げてるの?それじゃあ当たらないよ!」

 

「さぁ、どうかなん?」

 

ショルダーファングは空中からコンピュータ目掛けて落下し、それに気づくのが遅れたコンピュータは身体を大きく切り裂かれてしまった。そのままWは後ろへ回り込み、動けないコンピュータを空間の出入口に殴り飛ばす。

 

『Wao!!今のはかなり聞いたんじゃない?』

 

「位置エネルギーは『物体の質量×地球の重力×物体の高さ』運動エネルギーは『1/2×物体の質量×(物体の速度)²』って学校で習ったでしょ?物体の速度が増えると位置エネルギーが運動エネルギーに変わる、つまり空高くから落ちる程威力は高くなるからね。さ、決めよっか」

 

果南は位置エネルギーについて鞠莉に丁寧に解説をし、ファングの角を3回押した。

 

\ファング!マキシマムドライブ!/

 

「「ファングストライザー!!」」

 

Wは水色のオーラを纏い、回転しながらコンピュータを切り裂く。コンピュータはその衝撃で外へ叩き出された。

電脳空間が消滅し、Wも外に出るとそこには元の姿に戻った麗音と砕けたコンピュータメモリが落ちていた。

 

「理亞ちゃん…ごめんなさい…」

 

麗音はそれだけ言い、そのまま意識を失った。変身を解いた果南は警察に連絡を入れ、鞠莉と共にスタジオをあとにした。

 

その頃、浦女の屋上でもスカルとブロードキャストの決着が着こうとしていた。

 

「もう諦めなさい。コンピュータメモリも既に果南さん達がブレイクしたはずです」

 

「何ッ!?よくも…お前らッ!!」

 

ブロードキャストは右手のカメラから空間を作り出し逃走しようとするが、その動きは想定内であった。スカルはスカルマグナムでカメラに銃撃し、カメラを破壊した。

 

「能力さえ無効化してしまえばそのメモリを恐れる必要はありません。これで終わりです」

 

「それなら…!」

 

ブロードキャストは左手からクレイドールを粉砕した電気の光線を放つが、スカルは胸部から髑髏のエネルギーを出現させてそれを打ち消し、ブロードキャストごと吹き飛ばした。

そのままスカルはマキシマムスロットにメモリを挿し、髑髏のエネルギーと共に高く飛んだ。

 

\スカル!マキシマムドライブ!/

 

「とおっ!」

 

スカルはマキシマムスロットのボタンを押し、髑髏をブロードキャストに向けて蹴り飛ばした。ブロードキャストは爆散し、男の姿に戻ったのと同時にメモリが排出され、そのまま空中で砕け散った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

(高山麗音とBeautiful Freesiaのマネージャーは逮捕された。騒動が解決した事でSaint Snowに対する炎上も完全に収束し、『Saintプリンセス』も放送が再開された。しかし今回の騒動がきっかけとなったのかA-RISEとSaint Snowの番組の全国展開は白紙となってしまった。それに対し色々思う人はいるだろうが、これからも彼女達が活躍してくれる事を私は期待している)

 

<さて、あっという間に終わりの時間となってしまいました。本日もご視聴ありがとうございました♪またお会いしましょう!>

 

「ん〜、今日も面白かったねぇ。にしてもここのところ依頼がなさすぎて活動費がなくなりかけてるよ…」

 

「今回は理亞さん達からお金を頂いてもよろしいのでは?部室にも来てくださりましたし」

 

「けど剛は依頼でない限りMoneyは受け取らなかったから、剛のPolicyは裏切れないわ。でも活動費もカツカツだものね〜、どうしようかしら?」

 

「お父様の信条に基づくのは構いませんが、今回はやむを得ないので頂きましょう」

 

「けどそもそも向こうは払ってくれるかだよ。そこが問題だと思う…」

 

3年生3人はどうすべきか考える。が、いい案は思いつかず一斉にルビィの方を向き、目で『どうすればいい!?』と言うかのように訴える。

 

「ピギ!?えーっと…」

 

ルビィがその視線に困惑していると、スマートフォンに着信が入る。理亞からだ。

実は理亞は部室から去る前、ルビィと連絡先を交換していたのだ。

 

「あ、理亞ちゃんからだ。ちょっとゴメンね!」

 

「いつの間に連絡先を?まぁいいですわ。お金の件聞いて下さいね!?」

 

「ぅゅ!」

 

ルビィは『応答』のアイコンをタップし、電話に出る。

 

『もしもし、ルビィ。今仕事終わったんだけど…』

 

「もしもし理亞ちゃん?ルビィ丁度聞きたい事があったんだ!今活動費が足りなくて困ってるんだけど、依頼金って払えるかな…?あぁでも依頼じゃなくて鞠莉ちゃんが自分から動いたから、嫌なら全然大丈夫だよ!?」

 

『ちょ、落ち着いてよ。お礼はするつもりだから姉様と相談してみる。依頼金かどうかはわかんないけど…あっそれよりさ、今度2人で遊びに行かない?それが言いたくて電話したんだけど…』

 

「いいよ!でも予定合うかな…?探偵部は依頼に備えておかないといけないから休みがないんだよね…」

 

『そっか、じゃあ相談しといて。私もいつが休みの日かまた連絡するから、無理そうだったらいつでも報告して』

 

「うん!わかったよ!じゃあね理亞ちゃん!」

 

『あ、待ってルビィ!最後にもう1つだけ…』

 

「なぁに?」

 

『えっと…その…ありがとう』

 

「ルビィは何もしてないよ…えへへ」

 

『謙遜しなくていいのに…』

 

「ん?何か言った?」

 

『な、何でもない!じゃあ切るよ!』

 

理亞は照れを隠すように電話を切った。同時に綺羅家に到着し、理亞はゴミ捨て場へと歩みを進める。

そこで理亞はクレイドールメモリを取り出した。

 

(もうこれは…私には必要ない)

 

理亞は周りに誰もいないのを確認し、箱の中にメモリを捨てる。自分が自分らしくいる事を誓った理亞の中には、メモリを使うという選択肢はなかった。清々しい表情になった理亞はそのまま自室へと向かった。

 

その様子を陰から目撃していたツバサは捨てられたクレイドールメモリをゴミ箱から拾い、意味ありげに怪しい笑みを浮かべるのであった。




<次回予告>

ルビィ「お待たせ、理亞ちゃん」

ダイヤ「心配なのです、ルビィが」

聖良「陰から様子を見守っていただけです!」

鞠莉「多くの人を巻き込んでしまった事、しっかり反省するのよ!」

次回 R達の休日/ドタバタデート

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