ソードアート・オルフェンズ   作:みっつー

6 / 6
忘れてた(オイ)

もう自分の中ではかなり進んでいたと思ったソードアート・オルフェンズですが気付けば三日月脱退までしか進んでませんでした(オイ)

そして短いです。(オイ)


出会い

第一層はじまりの街。

あれからもう1ヶ月たった。しかしまだ本当の居場所に連れていってくれる人は見つかっていない。

無理だったんだろうか。そもそも不可能な事でそれをオルガが言って自分を利用していただけではないかとあらぬ疑惑を抱いてしまう。

しかし自分がそこに行きたいということは何一つ間違っていない。自分が産まれたあの日からその気持ちは一瞬たりとも揺らいでいない。

手を伸ばしても届かないという訳では無い。それ以前の問題だ。どこに手を伸ばせばいいのかが分からないのだ。

オルガと一緒にいた頃から考えて、強くなればいいのかもしれないと当たりを付けて動くことしか出来ない。それも裏切られたオルガの言っていたことをするしかないのだ。

だからなのだろうか。オルガの言うことの逆をしようとしたのか何故か分からないが最近よく一層に足を運ぶ。何かをする訳でもない。アイテムは上より品揃えは悪いし、まともな宿は無いし、フィールドに出ても一層ではまともなお金も経験値も得られない。このゲームでは走っても、懸垂しても体力はつかない。つまり、することと言えば探検という名目の散歩だ。

 

「...」

 

隣には誰もいない。前にも、後ろにもいない。少し前まではそこに元気がある仲間がいた。自分が強くなかったから救えなかった。全てを消してしまった月夜の黒猫団という仲間たちが。

──三日月、こっちこっち

ふいに頭に彼女、月夜の黒猫団のうちの一人であるサチの声が響く。声が聞こえた方向、後ろを向いても誰もいない。当たり前だ。本当に全てなくなってしまったのだから。髪の毛一本残さずにポリゴン片となり、消えていった。自分はその様を見ることしか出来なかった。その後悔から来る幻聴なのだろう。でもその声が何故か心地よかった。普通なら呪われているとか考えるその声が何故か嬉しかったのだ。

オルガなら死んだ奴には死んだ後に会えると言うだろうが、そのオルガの言うことは正しくない。だから精一杯後悔してもう会えないことを悲しむことしか出来ない。

 

その少し前はキリトとアスナ、たったの四人という小数ギルドとしての鉄華団がいた。三層から始まったエルフキャンペーンの時の二人は特に仲がよかった。とあるエルフを姉のように慕うアスナとキリトはとてもいいコンビだ。エルフキャンペーンが終わった後も、出会った当初あったアスナの棘も無くなり、自分とオルガにも優しくなった。自分が月夜の黒猫団に行く前は料理スキルを鍛えていた。もし完全習得(コンプリート)したらなんでも作ってあげる。そう言っていた。

キリトもそのゲームセンスと気楽さには色んなものを見させてもらった。本気で前世では自分と同じように戦っていたのではないかと思ってしまったほどだ。キリトと自分の強さは変わらずほんの少しだけ自分の方が勝っていた。今は、もうキリトの方が強いだろうが。

 

そしてそれより前には鉄華団があった。SAOでのギルドとは違う、少年兵の集団。そこで自分達はオルガの命令に従って、目の前の敵を殺し、道を切り開いてきた。戦場に出て、仲間を失ってしまうことなどよくあった。それでもみんな、オルガと一緒に本当の居場所を目指していたのだ。命を捧げる覚悟、ではなく本当に命を差し出して。全てをかけて、犠牲にして。そして敗北した。ダンジがギャラルホルンのモビルスーツに蹴り飛ばされて、ビスケットはモビルスーツに吹き飛ばされて、アストンが敵に深入りしたせいで潰されて、シノが集中砲火を浴びて、そして記憶はそこで消えている。恐らく自分もオルガのくれたと思っていた意味を抱いて戦っていたのだろう。あの世界にはまだアトラやクーデリアも居るはずだ。確か子供が何か言っていた気がする。その子供は産まれたのだろうか。男の子だろうか、女の子だろうか。元気なのだろうか。何一つ分からない。

 

あの頃抱いてた物は何処へ行ってしまったのだろう。本当の居場所という希望、そして同じ方向を見ていた仲間。阿頼耶識で繋がっていたバルバトスも、全て失いこうして路頭を迷っている。

 

オルガに裏切られたと分かった時、オルガの事をまるで抜け殻だと思ったが今の自分も抜け殻のようだ。何処へ歩けばいいのか分からないから保を進めることが出来ない。一歩足を出しても進んでいるのか戻っているのか、全く別の方向へと行ってしまっているのか分からない。

 

不意に頭を上げるとそこには見たことの無い景色が広がっていた。今までの事を考えている間に知らない場所に迷ってきてしまったらしい。来てきた道を戻ろうにもどうやってここまで来たかが分からない。マップを出せばいいのだがその考えは自然と浮かんでこなかった。

 

「ここ...は?」

 

いままで声を出していなかったからなのか掠れた声が響きもせずにその場に残る。

まさかここが本当の居場所...とは思わない。歩いているだけで辿り着ける居場所では無い。単にアインクラッドの中で最も広い一層の街の一つであるはじまりの街で迷子になっただけだ。モンスターもいないのでフィールドに出てきたわけでない。どちらにしろ、一層のレベルのモンスターなら囲まれても寝ることが出来るが。まさか一層に自分とまともに戦えるモンスターがいるとは思えないのでこの辺りで1回休憩しよう。そう思った時に気配に気がついて後ろを向くとそこには大きな建物があった。青灰色の屋根のてっぺんには十字と円を組み合わせた金属製の何かが輝いている。

確か協会という建物だった筈だ。各街に幾つかある建物でモンスターの特別攻撃、呪い(カース)の解除や対アンデットモンスターの為に武器の祝福が行える場所だ。しかしあまり入ったことがない。必要がないと言えばそれまでだが何か胡散臭い宗教勧誘を想像させて入ろうとはしなかったのだ。

しかし今は、何故かこの中に入ってみたいと思っている。何か不思議な力に押されるように協会の扉を開けた。

 

「行けー!」

「うおおおお!!」

 

その瞬間、自分より小さな人影が沢山集まり、津波のように押しかけてきた。咄嗟の事だったのでメイスを展開してしまったがこいつはプレイヤーだと言い聞かせてそれを中断させる。

人影が自分に触れる。圏内なのでいくらやり合ってもダメージは入らないが脳裏に死という文字が掠めた。指が震える。そしてそこを上手く通るようにメイスが手から落ちた。

そのメイスに目が動いたと思った瞬間、視界が真っ暗になった。

痛みは感じなかった。その不自然さからここはゲームなんだと言うことを思い出す。その為か殺意という感情は欠片も出てこなかった。目を恐る恐る開けるとそこには自分より小さい子供たちが砂糖に群がる蟻のように群がっていた。わらわら集まってくるものだから気味悪くも感じてきたがここで力を出してしまうとこの子供たちを吹き飛ばしかねない。圏内なのでダメージは入らないが自分の中に残ったかすかな道徳心がそれを止めた。

 

その時だった。

 

「あなた達!止めなさい!」

 

声が聞こえた。若い女性の声だ。その声にびびったのか、小さいプレイヤー達はそそくさと協会の中へと入っていった。

 

「すみません...子供達が...」

 

そう言って駆け寄って来る女性プレイヤーを凝視する。黒縁の眼鏡をかけて、その眼鏡の奥には深緑色の大きな瞳がある。修道女のような青いドレスを着ている大体20代くらいの女性だ。その女性がこちらに歩きよって来た。そして手を差し伸べてきた。その情景が記憶に引っかかった。

─俺はこれを知っている

俺が生まれた、記憶。少し暗い道でオルガに差し伸べられた手。そしてオルガが示してくれた本当の居場所。そうだ。俺はオルガに助けられて、そしてその本当の居場所を共に求めたんだ。

俺の命はオルガに貰った。だから俺の命はオルガの為に使わなくちゃいけない。

でもそれは違う。オルガは求めてない。じゃあなんでオルガはそこにいた。俺に与えてくれたのはなんの為。

オルガってなんだ。オルガとは誰だ。オルガというのはどんな存在だ。なんのために存在している。

 

鋭い頭痛がする。オルガは本当の居場所は。結局何でなんの為に。そう答えのない自問自答を繰り返していたから脳が限界にいかないようにしたのだろう。バルバトスに繋がる前までどうせ使わないと思った頭をこれ程使うとは思わなかった。

そう思った時には自分はその女性の手を掴んでいた。温かい。同じ布団に入っていたサチを一瞬だけ思い出させる温かさだ。生きているものにのみある温かさ。それを感じる。女性は自分を立てさせる。

 

「すみません、普段お客様なんて来ないものですから」

「う、うん」

 

自分より少しだけ大きなその女性が普通に喋っているだけなのに何故か余裕が無くなってしまっている。

この人はオルガと同じように見えて全然違う。この温かさはオルガには無かった。

そうか。俺はオルガの元を離れた瞬間に死んだんだ。そしてこの人に...

と考えたところで思考が止まる。

 

「私、サーシャって言います」

「三日月...オーガス。よろしく」

 

何故かこの事は一生忘れないだろう。自分はそう思った。

 




三日月のキャラ崩壊が激しい。
ここからまだ激しくなるので鉄血好き、それも三日月とオルガのコンビが好きな人は辛い展開が待つかと...いや脱退の時点でかなりか。

一応言っておきます。アインクラッド編で恋愛をするのはキリアスのみです。

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