私たちは幽霊 作:カムパネルラ
突然ですが、幽霊になりました。
私、弥生です。10歳です。身寄りのない子供たちと一緒にお寺で暮らしていました。育ててくれたのは悲鳴嶼行冥という人で、私は行冥兄ちゃんと呼んでいました。ええ、過去形です。過去形ですとも。だって私殺されたんですから。
夜にみんなとお話してたら、鬼みたいな異形が現れて一瞬で首を掻き切られました。気づいた時には日が昇っていて、お寺には誰も居なくて血溜まりだけが残っていたんです。しかも私の姿は透けていて壁をすり抜けることが出来ました。疑いようもなく幽霊です。絶望しました。
私は頭が良いとよく褒められていましたが、今考えるとそんな頭の良さは要らなかったと思ってしまいます。自分が幽霊だと気づき、それを直ぐに受け入れてしまったんですから。
「みんな死んじゃったのかな・・・」
恐らく誰にも聞こえないであろう声で呟き、お寺を出ました。村に降りれば何か分かるかもしれないと思ったのです。歩くことも無く、スーッと森を抜けて村へ行きました。足を動かさなくても移動できるのは便利ですが、自分がもう死んでいることを認識してしまいつらいものがあります。
村に入ると、普段と雰囲気が違うように感じました。重苦しいような、悲しくなるような、そんな嫌な空気。路上では数人の大人がコソコソと立ち話をしていたので近づいて聞き耳をたてました。何かわかるかと思って。そしたら。
「いやあね、育ててた子供たちを全員殺したんでしょう?」
「怖いわねえ・・・行冥君、気のいい面倒見のいい子だと思っていたのに」
「殺された子たち全員首を掻き切られていたんですって」
「残った沙代ちゃんも可哀想に・・・まともに話せなくなっているんでしょう?」
「「「「死刑になって当然ね」」」」
やはり、頭の良さなんて要りませんでした。信じたくなくても分かってしまったんです。あの夜、沙代と行冥兄ちゃんを除いてみんな死んでしまったこと。みんなを殺したのが行冥兄ちゃんだと思われていること。そして行冥兄ちゃんが死刑になってしまうこと。
「違う、違うよ、行冥兄ちゃんじゃないよ!みんなを殺したのは鬼だよ!」
「私は真っ先に死んじゃったけど、見てないけど!行冥兄ちゃんはみんなを守ろうとしてくれたんだよ!絶対に!」
「行冥兄ちゃんがみんなを殺すわけない!沙代を守ったのだって、沙代が生き残ったのは、行冥兄ちゃんが守ったに決まってる!」
「行冥兄ちゃんのこと何も知らないのに勝手なこと言わないで!」
やっぱり、私の声は誰の耳にも届かない。