私たちは幽霊 作:カムパネルラ
「君は寺にいた子供か?」
カツン
「そうか・・・。守れなかった私を憎んでいるか」
カツンカツン
「夜に何があったか把握しているか?覚えているか」
・・・カツンカツン
「君は・・・弥生か?」
カツンッ!
私はあの夜の事をきちんと把握出来ていません。何度も言いますが私は一番最初に殺されたのです。村に降りて来るまで全員死んでしまったとすら思っていたのに。
私を弥生だと1発で分かったのは何故でしょう。きっとみんな混乱していた筈だし、きちんと把握出来ている子の方がいないと思うのだけれど・・・。
「音の反射で分かるが、小石を鳴らす時に少し削るように叩いているな。弥生の癖だ・・・弥生は小石で遊ぶ時、いつもそうしていた」
「行冥兄ちゃんには適わないなぁ」
小石を鳴らす時の癖なんて、私でも気づいていませんでした。行冥兄ちゃんはやっぱり凄い。ほんの少しの音の違いで私だとわかってくれるのだから。
行冥兄ちゃん、私ね、やっぱり納得出来ないよ。どうして行冥兄ちゃんが死刑にならなきゃいけないの?・・・なんて、声を届ける事が出来ないのに聞きたくなってしまいます。
「怨んでいないと言ってくれたな。ありがとう、少しだけ救われた・・・。守れなくて申し訳なかった。来世ではどうか幸せに暮らして欲しい」
そういう行冥兄ちゃんは少しだけ笑っていた。死刑を言い渡されているなんて思えないほど、穏やかで静かな笑みだった。
次の瞬間2人の看守が牢の前にやってきた。待って、やめて、行冥兄ちゃんを連れて行かないで!どう足掻いても看守には伝わらない。看守は行冥兄ちゃんの両脇を掴んで立たせて牢の外に連れ出した。私は動けなかった。
行冥兄ちゃんと一緒に居たい。でも殺される瞬間なんて見たくない。そんな葛藤をしていたら、日が暮れてしまい行冥兄ちゃんの行先が分からなくなってしまった。
あのまま刑が執行されたのか、逃げたのか・・・。無罪放免になってくれていたらいいと思い、私は監獄を抜け出しました。
そしてその夜、私は再び鬼と遭遇しました。頭から血を被ったような不思議な髪をした鬼です。瞳は虹色で、爪は長く。ニコニコと人畜無害そうな笑みを貼り付けていました。
「あれれ?女の子だ。ダメじゃないか、こんな夜遅くに出歩いていちゃ」
「え・・・?」
鬼は私の目を見つめて真っ直ぐこちらに歩いてきます。鬼と出会ってしまった衝撃よりも、別の衝撃を強く受けました。
鬼に、私の姿が見えている・・・?
「あれ?あれれ?可笑しいな、どうして触れないんだろう。キミ、人間?ではないよね?」
「わ、たし、は。もう死んでで・・・幽霊、です」
「幽霊!凄い、初めて見たよ!もしかして極楽って本当にあったりするのかな?いや、そうしたらもう行っているはずか。キミだけ留まっているのはどうしてだろうね?」
「さあ、どうしてでしょうね」
キミ面白いね、また話そうよ。あ、俺は童磨。名前はなんて言うんだい?
そんな鬼の言葉に答えることなく、私は地面に潜り込みました。行冥兄ちゃんに見つけてもらうことは永遠にないのに、どうして鬼なんかに見つかってしまうのか!