私たちは幽霊 作:カムパネルラ
「君は弥生ちゃんっていうんだね!妓夫太郎君に教えて貰ったんだ!堕姫ちゃんは教えてくれなくてね、まったく、酷いと思わないかい?ただ仲良くしたいだけだと言うのに!」
「あっ待って待ってどこにいくんだい?俺も連れて行っておくれよ、暇なのにみんなつれないんだ」
「猗窩座殿の顔を見に行ったら顔を潰されてしまうし、玉壺殿は壺作りに夢中で俺の話を聞いてくれないし、半天狗殿にはあしらわれてしまった!黒死牟殿に至っては無視されたんだ」
「弥生ちゃんは何をしているんだい、俺にも教えておくれ」
・・・妓夫太郎君に売られました、弥生です。しばらく前に遭遇したこの鬼・・・えっと、童磨さんでしたっけ・・・?にしつこく付き纏われているんですが私はどうしたらいいのでしょう。反応にとても困ります。え、本当にどうしましょう。
「・・・あの、童磨、さん?暇なんですか・・・?」
「んー?そうだね、暇だ。だから暇つぶしに付き合っておくれよ」
「お断りします」
「つれないなあ。お互いに毒にも薬にもならないんだから仲良くしようぜ。いやはや、弥生ちゃんを救ってあげられればよかったんだが」
「貴方の言う救うは食い殺すことだと堕姫ちゃんに教えて貰ったので救われなくて良かったです」
「随分と辛辣じゃないか、流石の俺も傷つくぜ?」
童磨さん、かなり長い時間私の後ろを着いてきています。正直地面に潜ってしまってもいいんですけど地面に潜るのはあまり好きじゃないんですよね・・・人と話せること自体は安心するので好きなんですけど・・・いや人じゃなかった、鬼でした。
「あの、童磨さ・・・ん?」
「ん?ああごめんよ弥生ちゃん。客人みたいだ」
足音も立てずに着いてきている童磨さんを振り返ると、童磨さんは首を曲げて後ろを向いていました。童磨さんの体の影になっていて一瞬分かりませんでしたが、少し離れたところに人がいるみたいです。
「花の呼吸、壱ノ型・・・」
そこに居たのは蝶の髪飾りを2つつけた長髪の女の人でした。女の人はなにか呟くと刀を抜いて童磨さんに斬りかかります。童磨さんが死ぬところも女の人が死ぬところも見たくなかった私は路地裏に隠れました。それからしばらくの間金属音や話し声、叫び声が聞こえて・・・日が昇る少し前に静かになりました。
「弥生ちゃん、放置してしまってごめんね。申し訳ないんだが日が昇ってしまうから俺は帰るよ。また今度話そうぜ」
「あの、女の人は・・・?」
「んー?ああ、救ってあげたかったんだけど時間が足りないんだ。いやあ、本当に惜しい事をした。それじゃあまた今度」
「え、ああ、はい」
それを言うためだけに路地裏に来たのか、満足したようで一瞬で姿を消してしまいました。きっと信者がいる所に帰ったんでしょう。特に興味もありませんでしたが1人で延々と話していたので覚えてしまいました・・・。
童磨さんのことは一旦置いておいて気がかりなのはさっきの女の人です。童磨さんが食べていないということはもしかしたらすんでのところで生きているかも、と思い倒れ伏している女の人の所まで行きました。
「もしもし、生きていますか?大丈夫ですか?」
「・・・ぅ、に、げて・・・日が・・・まだ、登りきって・・・いないから・・・」
「え・・・?私の事見えてるんですか・・・?それじゃあ、もう間に合わないのかな・・・」
「姉さんっ!!!」
私の声に反応し、私の姿を認識した女の人。きっとこの人はあと少して死んでしまうということが分かりました。あの世に半分くらい突っ込んでいるから私の姿が見えてしまったのでしょう。そう考えると鬼が私の姿を認識できる理由も何となく分かります。鬼は人として死んだ後の存在ですから・・・。死んだ者にしか死んだ者は見えないという事なのでしょう。
姉さんと呼ばれた彼女が「あの女の子を安全な場所に」と呟きながら私を指差しましたが、後から来た女の人は訝しげな顔をしていました。まあ、そうですよね。