それは数分前
ベル達が塔に入っている最中、エピメテウスの神剣に対抗できる神創神器を制作するために、オリンピアの鍛冶屋へ向かうヴェルフたち
そこに向かうのはヴェルフだけではなく、ノームとへファイストスとアルテミスの眷属であるアクタとカリス。この四人だけで鍛治工房に向かう
「前に来た時と同じ、道は変わってないんですね?」
「ええ、祭壇の発現でオリンピアは上書きされているけど、全ての地形や建物が塗りつぶされているわけじゃないの」
『変わったのはあの神殿のみだけです。ヘスティア様は儀式の完成を急がせるために、神殿以外の場所には神力で変えなかったようですね』
「では、ヴェルフさんとへファイストス様だけが、鍛冶場の場所がわかるのですね?」
「護衛の身で申し訳ありませんが、私もアクタも、オリンピアの中まではまだ入ったことがありませんので、案内よろしくお願いします」
「おう、任せろ」
ヘスティアがこの場所を自分の神の住み屋に変えたとは言え、全ての地形を変えているわけではない。有ってもあの神殿と塔のみ、それ以外でのオリンピアの市民街は変わらないままであるため、一々場所を探す事なく、一度ここに観光しているヴェルフとへファイストスが場所を認識しているため、迷う事なくオリンピアの鍛冶場に行くことができる
アクタとカリスは、前々からアルテミスがこの街の事情を知っているため、この街を抑え込もうと眷属を率いて、主神の嫌いなアフロディーテの眷属と共にオリンピアの軍に攻防戦を何度もしていたが、中までは入っていないため、オリンピアの街の構造は把握していない。だから実質なところ、この街の鍛冶屋がある場所を認識しているのはへファイストスとヴェルフである
「有った!あそこだ!」
「ん?何か音がしませんか?」
「何か鉄のぶつかるような音が?」
『これは!・・・・まさか』
「中に入ればわかるわ。行きましょ」
そして目的地へと到着した
見た目は少しボロくなっているが、それでも鍛冶屋の炉も消えることなく、機能はしていていつでも武器は作れそうだ
しかし
その鍛冶場から音が聞こえた
もう人が居るはずがない。だからと言ってここにエピメテウスの兵士も居ない。と言うのに、誰かが作業をしている音が聞こえた。
へファイストスが中に入ればわかると言い。中に入る
すると
「あれは!?なんですか!?」
「装備を纏った炎人が鉄を打っている!?」
「まさか・・・・ここの職人か!?」
「ええ、でも堕ちているの。武器を打ち続けているのは、彼らに魂に根付く衝動があって、それを燃やしながら神器に対抗できる武器を作るために」
『私も生まれて初めて見ました。死霊でもないあの怪物が、執念だけで生きるだなんて」
中に入ると、装備を纏った炎人の姿をしたかつてのここの職人三人が今も尚、神器に対抗できる武器を製作していた
他の炎人とは違い、彼らは果たされなかった目的のために、体は怪物であっても目的のために武器を作り続けている。へファイストスが堕ちていると言うのは、もはやそれにしか生きることなく、この三百年間、ずっと至高の武器を作るために、怪物になってでもその執念の意志を持ったまま、目的のためだけに生きていると言う、物質主義な生き方をしていた
ただ、エピメテウスの剣を越えるためだけに
「鍛治師の執念ですか?」
「神器を越えるために。彼らはここで・・・」
『コエル・・・ノダ』
「「「っ!?」」」
『エピメテウス・・・ノ剣ヲ・・・・コエル・・・・武器・・・・ヲ・・・・』
「ずっとエピメテウスに対抗できる武器を、ここの職人は作りたかったんだろうな、それが執念になってこんな姿になってまで、こんなことをするなんて」
『ですが、彼らは原初の炎で穢れた、時を彷徨う者。そんな人たちでは』
「ええ、彼らはもうこの先を作ることはできない。記憶をもとに経験を繰り返して成長できない存在、今の魂の灰となったあなた達では」
執念があって製作しようが、彼らはもう死んでいる存在。同じ日と時を生きることしかできない成長ができない生き物。そんな彼らがエピメテウスを越える武器を作ることなどできない。残念ながらもう終わっている存在
だから
「あとは私たちが受け継ぐから、そこを譲って」
へファイストスは彼らにおいては許されないことは承知。でも自分達がやればエピメテウスを越える剣は作れると、その炉を渡せと言った
しかし
『オオオ、オオオオオオオオ!!!』
「やっぱり譲ってくれないわね」
『それが執念ですからね!』
「下がってください!一斉にこちらに来ます!オリンピアの武器です!」
「ヴェルフさん!ここは私たちに!オリンピアの武器は炎そのもの!ヴェルフさんでは太刀打ちできません!」
当然ながら彼らは譲る気はなく
邪魔するなら容赦しないと、近くにあった武器を手に取り、一斉にヴェルフ達の元へと迫っていく。しかも武器を持って、オリンピアの武器は天の炎を原料として製作する武器。エンチャントとは別に、炎を熱する武器であり、無限に使える魔剣のような物で、上級に近い武器を彼らが持って邪魔者を排除しようとする
その中でステイタスを封印されたヴェルフは戦えない。だからアクタとカリスが前に出る
だが
「いや!俺もやる!」
「な!?何を考えているんですか!?」
「ヴェルフさん!貴方はステイタスを封印されて戦えないんですよ!」
「そんなもの!言われなくてもわかっている!」
「「っ!?」」
「力も誇りも全然あいつらには勝てねえ!だけどな!だからって諦めることなんてできねえんだよ!!うおおおおおおおおお!!」
「「ヴェルフさん!」」
『ヴェルフさん・・・貴方はもう・・・・』
「ヴェルフ・・・・・・」
ヴェルフは死に物狂いで、アフロディーテの基地で作った魔剣を振る
そんなことはもう彼にはわかっている。自分がどれだけ足りないか、どれだけ自分が弱すぎるのかわかっている
でも
だからと言って、その誇りを前にしてでも、その意志を譲って貰ってでも、自分の命を懸けてでも
助けたい家族が居る
その家族のために一人で先走る
「うおおおおおおおおお!!!」
『ウオオオ!!』
「ぐわ!!」
「ヴェルフさん!」
「ダメです!ここは私たちがやりますから下がってください!でないと死んでしまいます!」
「死んでもやる!!!うおおおおおお!!」
「「ヴェルフさん!?」」
それでもヴェルフは先走って一人で立ち向かう
アクタとカリスの言う通り、死に行くようなもの。自殺行為。それでも諦めきれない。何がなんでも、倒されても、服がボロボロになってでも、諦めきれない
『ウオオオ!!』
「ぐわあああ!!」
「ヴェルフさん!ダメです!今の貴方じゃあ!」
「あの炎人達は普通ではありません!先ほどから私たちの弓も通じません!ここは一度下がる他・・・」
「諦めたくねえんだ!!」
「「っ!!」」
「死に物狂いなってでも、俺は諦めたくない!!!今でも俺の仲間が必死になって戦っているんだ!!また・・・・また・・・・何もできなかったじゃ。俺が鍛治師として生きている意味がない!!」
「ですが・・・・」
「しかし・・・・」
『ここはヴェルフさんに任せましょう』
「っ!?ノーム様!?」
「しかし!」
『いいのです。ヴェルフさんにだって意地があるんです。その意地が彼を強くするんです。鍛治師ってそういうものなんですよ。それに・・・その熱い意地に・・・あの炎人達は』
「「っ!」」
ノームはヴェルフ一人にやらせろと、彼女は止めたりしなかった。やはり彼らを屈服させるには、鍛治師同士の意志が一番だと、鍛治師に関わってきたノームからすれば、わかりやすい表現だった
そしてその意地の見せた根性に
『『『っ!?』』』
執念の炎人達が、一斉にヴェルフに驚く
「なんだよ?驚いたのか?お前ら以外にも誇りを持つ奴が今ここに居るんだよ!!寄越せとは言わねえ。俺に貸してくれ!その誇りを!!!」
『『『オオオオオ!!!』』』
「これは!?彼らの武器から発する炎が!?」
「ヴェルフさんの体に吸い寄せられています!?」
『やっと辿り着きましたね。ヴェルフさん』
「ヴェルフ。貴方の意志に免じて、天の炎が力を貸しているのよ」
鍛治師の執念達が持つ剣から放たれる炎が、一斉にヴェルフの体に吸い寄せられる。その吸い寄せられた炎が、やがてヴェルフの体から放つオーラとなる
天の炎が彼を認めた
鍛治師の執念に同情し、その執念ではなく想いと熱意を、自分に託してくれと。奪うのではなく果たさせてくれと、誇りを受け継ぐ
その熱意が、ヴェルフの魔剣から放たれる
「お前達の誇りもすげえ。だけど!俺も負けたくない!!俺の誇り受けてみやがれえええ!!天翔!!!!!」
『『『グオオオオオオオオオオ!!!』』』
「吹き飛ばした!?」
「私の弓でも効かない彼らが!?」
『ヴェルフさんのクロッゾの魔剣と原初の炎が重なった一撃!』
「やったわね。ヴェルフ」
ヴェルフの魔剣の炎が
鍛治師の執念となった炎人たちを吹き飛ばした。もちろんまだステイタスは封印されている。でも彼の熱意の方が上。家族を救いたい気持ちが、彼らを打ち負かしたのだ
『マサカ・・・・ココマデノ・・・炎ヲ』
「なあ?お前達の熱意と誇り、俺に貸してくれ」
『『『っ!?』』』
「絶対に神の剣を越える剣を作ってみせる。だから頼む。俺にその炉を託してくれ!!!」
『『『・・・・・』』』
ヴェルフは無謀ながら、炎人の手を取り、その手を自分の胸に突き付けて、託してくれと頼んだ。炎人の炎の手を掴んで、手に火傷を負ってでも
決して嘘ではない。絶対に果たして見せると、この命に賭けてでもやってみせると、彼は鍛治師達に意志を見せる
そして
『・・・イイダロウ』
「「「っ!?」」」
『ダガ、簡単デハナイゾ。ソレデモ打ツカ?』
「ああ、絶対に諦めねえ。俺は今日でお前らの執念・・・・いや・・・・お前ら熱意を俺が作る!!」
『・・・・・ソウカ、ナラ、コレヲツカエ』
「これはお前らの装備!?」
『天ノ炎ヲツカウ鍛錬ニハ、コレガ必須。ツカウンダ』
「よし、わかった」
『オマエニ・・・全てヲ・・託ス。叶エテクレ。我ラノ誇りヲ・・・・』
「ああ、任せてくれ!!」
鍛治師の炎人はヴェルフに自分の着ていた装備を渡した。これが無くては天の炎を使った武器を製作できないらしい。
そして彼らはヴェルフの肩に手を置いて、意志を託すと言って、燃え尽きて消えた
その意志を叶えるためにも、ヴェルフは今着ている服を破り捨て、その装備を着る
「よし、ノーム!へファイストス様!やりましょう!」
「ええ、神創武器を、原初の炎を使った武器を今から作るわ」
『必ずエピメテウスに対抗できる剣を作りましょう!』
「原初の炎を原料にした武器なら、炎の鷲にも勝てるんですよね?」
「疑似的なではあるけれど、あれもヘスティアの炎の一部なら、届くはず、その点ではあの子の力を信じましょ」
『ヘスティア様の想いを、これから剣に宿すんです!』
「はい。すまんがアクタとカリスは、ここに炎人が来ないように頼む!」
「はい!」
「お任せを!時間が無いので急いでください!」
そうしてヴェルフとノームとへファイストスが早速制作に取り掛かる。その邪魔しないようにカリスとアクタが周囲を見張る
一応作戦通りになった。だが、どんな武器を製作するかだが
「ヘスティア様のナイフを強化するしかないのか?」
『はい。エピメテウスは主なら勝てるのですが、今それがベルさんに託されています。ですが、ランクアップしたばかりの彼でも、まだ足りないです。そのためにはナイフではなく、あれと同じ『剣』で対抗するしか、ベルさんに勝ち目はありません』
「神の刃のその『外装』を作るの。私が打ったベル・クラネルのナイフにとりゆけた装甲・・・いいえ、鎧と思ってくれていいわ。ナイフじゃあエピメテウスの持つ剣、『神の腸を啄む鷲』には届かない。炉にはすでにあの子の炎である原初の火が灯っている。素材はココに残っている『インゴット』を使わせてもらうとして。貴方は相槌を頼みたいわ」
「任せてください。やってみせます。遠慮なしに俺を使ってください!」
「わかったわ。それじゃあ・・・・始めましょ!!!」
『堪えてくださいね!これは普通の炎じゃないですから!』
「はい!!!」
へファイストスとノームとヴェルフが神創武器の製作を開始した。
もちろんアクタの言う通り、ヘスティアの計画の達成まで時間はあと少しのみ。それだけの時間までなんとか完成させると
ヴェルフは焦りながらも、儀式が完成するまでに製作を完了させる