東の塔
東の塔へ向かうのは、命を中心に動いている。ウンディーネ、リュー、リッソスを率いたアポロン・ファミリアの眷属たち、今は塔の内部に潜入している
命も、ヘスティアの恩恵の流れを通じて正規ルートを目指している。もはやこの道筋はわかっているようだ。
それに気づくのは遅く、ベルとヴェルフとリリルカと春姫が戦っている最中に気づき少し遅れたタイミングで正規ルートへと進んでいた
少し遅れたタイミングで正規ルートへと進んでいた
「少し遅かったですが、なんとか道筋は見つけました」
「ですが・・・もう他の方達は戦闘に入っています」
「急いだほうがいいだろうな、どうやら我々は少し出遅れたようだ」
『ええ、その証拠に・・・・・』
「っ!?」
「これは・・・・」
その正規ルートに見つけるまでに時間を掛かりすぎたのか
進んでいる先から炎の灰のような跡が、壁や地面にも付いていた。おそらく先程まで誰かがここで戦っているのだろう。しかも、間違いなく炎人たちが倒された後、この先で教団の誰かが戦っているのだと、すぐにわかった
『どうやら・・・先程、教団の誰かがここで戦っていたに違いありません。そしてこの先から・・・』
「はい、誰か居るようですね・・・」
「・・・・・・・」
「どうしました?ヤマトさん?」
「いいえ・・・・・これは・・・まさか・・・・『誰かに斬られた』?」
命はその灰を見て、何か斬り傷があるのが見えた。間違いなく誰かが何かを斬った跡を確認した。今誰がこれをしたのかは知らないが、間違いなく
この先に大きな手練れが居ると、命は覚悟する
そして、その先にて
柱のある頂上へ
そこで、多くの戦いが繰り広げていた。
「守れ!死守だ!!!」
『ガアア!!!』
「ここをなんとしてでも突破させるな!」
「これは!?・・・」
「炎人と教団の兵士と巫女達が戦っている!?」
「なんて・・・・・凄まじい戦いだ」
『やはりここも戦闘をしているようですね」
兵士と巫女は柱を守り、それを炎人たちが突破しようとする。完全に攻守の戦いが繰り広げていた。
どうやら両方を押されている様子はない。完全に消耗戦となっている。炎人を消してもまだ増える。巫女と兵士達はもう体に残る炎の力は残りわずか・・・・今のところは巫女兵士が負けそうだ
しかし
「対象者を排除・・・・・『エラ・ガバルス』」
『『『『ガアアアアアアアアア!!!』』』』
「うおおおおお!ウェスタの巫女さま!」
柱の番人である、金髪の髪をしたヘスティアの姿をした巫女が
巫女と兵士たちの味方をしているため、仮に兵士と巫女が力尽きても、ウェスタの巫女と言うか番人がいる限り、ここは崩れることはない。だが、それでも炎人は増え続ける
しかし、これは好機
「あれが・・・・・巫女か、今は炎人に集中している。今なら狙えるはずだ」
「はい。あれを倒せば終わるはずです。それではヤマトさん。ここは下がってください。私たちが・・・・」
柱の番人であるウェスタの巫女を倒せば、この塔も機能を停止する
今ウェスタの眷属は炎人に集中していて無防備な状態。今なら一斉にかかれば倒せると、リッソスもリューも同意する。リューはステイタスが無い命には下がるように指示するが
しかし
「いいえ!私も戦います!」
「「「「「な!?」」」」」
「おい!?何を言っている!?」
「ヤマトさん!貴方はステイタスが封印されているんですよ!」
「だからキュロス殿に、武器の扱いを教わってきたんです!!!この時のために!!」
「「っ!?」」
命は、それでも武器を取って戦うのだった
なんのためにキュロスに武器の扱いを学んだか、それはステイタスの無い常人でも戦えるよう万全な状態で挑むためである
昔は神々が下界に降りてない時代は、人間は武器を扱いを学んでモンスターと戦った。つまりは人間もステイタスが無くても武器を使って戦うことができる
つまりは、ステイタス無くても、武器の扱いをわかっていれば戦える
ならと
ヘスティアを救うために、ここまで修行してきた。
今の成果を出す時
「うおおおおおおおおお!!」
「ヤマトさん!!」
『いいえ、任せましょう。リュー』
「っ!?しかしウンディーネさま。今の彼女では・・・」
『いいのです。彼女はもう主みたいに強くなりました』
「え?」
「っ!ウェスタの眷属が現れたぞ!」
「奴らを柱に近づかせるな!!」
命が、無謀ながらその戦いに突っ込んだ
ステイタスの無い状態だと言うのに、それでも真っ先にその戦いに乱入した。ステイタスの無い状態では戦えないとリューでもわかるが、それでもウンディーネがやらせるべきだと、命のすることを邪魔するなと、ウンディーネが彼女がやるべきことだと止めない。その最中でも命はキュロスの言葉をよく思い出す
『相手の動きをよく見て、そして相手が攻撃して来たら眼でしっかり見て避ける。それでも避け切れなかったら、その刀で斬るんじゃ。武器はお前さんの腕で決まる。その腕を生かして、相手を倒すのじゃ』
と、キュロスの言葉をしっかり思い出し、ちゃんと眼で前を見て、相手の動きを観察して先読みして動く。そして次に行動へと移す
「はあ!!!」
「ぐわあ!?」
「ああ!?」
「ぎあ!!?」
『ガア!?』 『ギイ!?』
『ギャア!?』
「な!?」
「教団の兵士だけでなく、炎人までも、刀で斬り裂いていく!?」
「うおおおおおおおおお!!!」
命は、完全とまではいかないと思うが、刀の振り方、そして居合いも含めて、本来での扱いを学んできた命
刀捌きを習得し、目の前にいる敵を次から次へと斬り裂いていく。今の彼女はこれしか今は戦う術はない。だからこの時のために、腕を昨日から上げて来た。今その力を発揮する時
これが本来の人間だけの力である
「はああああ!でやあああ!!」
「っ!?なんだあの小娘は!?」
「あの小娘を先に止めろ!これ以上は厄介だ!」
「「「「うおおおおおおお!!!」」」」
「ええ!どんな数でも構いません!自分が全て倒します!!うおおおおお!!!」
命が危険だと分かったのか、半分の教団の兵士が命だけを狙う。彼女の刀捌きが予想以上に強く。今ここで彼女を止めようと、教団が彼女を、炎人よりも先に彼女を叩こうとする
だが、命は一人ではない
「あの神ヘスティアの眷属だけに任せるな!行くぞ!!」
「「「「おう!!」」」」
「ヤマトさん・・・・そうですか、貴方もジークさんのように強くなったのですね」
『ええ、彼女も主に追いつこうとしているんです。さあ、私たちも行きますよ。リュー』
「はい・・・・・私も負けるわけにはいきません!!」
リッソスや他のアポロンの眷属、リューやウンディーネも命に続いて彼女の援護に回る。ステイタスの無い彼女が率先して戦うなど、ステイタスを持っている自分たちが戦わないなど、立場がないと、リューやウンディーネ達も彼女と共に戦う
「な、なんだこいつら!?」
「以前より、全然違う!」
あまりの命の猛攻に続いて
負けるまいとリューやウンディーネ達も参戦する。命だけに任せわけにもいかず、リュー達も教団と炎人の戦闘に乱入する。巫女だけを狙って儀式を破壊しようと思ったが、そんなことをするまでもなく、命が一人で猛攻を働いてくれたおかげで、敵は命に集中している。今ならリュー達が応戦すれば教団の守備は崩れる
あとは
『下がれ、お前達は炎人を処理せよ。あとは私がやる』
「っ!?ウェスタの巫女さま!?」
「っ!?ヘスティア様の・・・・写し身!」
教団ではもうここは守れないと、ヘスティアの写し身である『ウェスタの巫女』が柱の中心内から出て来た。
教団には炎人を任し、命率いるリュー達はウェスタの巫女が相手になろうと前に出た
『止まれ、冒険者並びに、我が血に繋がる眷属よ、これ以上は無意味。神の救済にてこの下界は救われる。何故このような暴挙に出る?』
「何を言っているんです?」
「暴挙とはどう言う意味です?」
『そのままの意味だ。なぜこのような無駄をする?お前達のやることなど無駄に過ぎない』
「無駄とは?」
『聖火の女神が儀式が完成すれば全てが終わる、人間の悪意を救済する、これが下界の唯一救いをなぜ邪魔する?お前達人間は下界を滅ぼしたいのか?そこの太陽の男神の眷属達はこれにあまり賛成してないようだがな』
「・・・・・・確かに、自分たちのやっている事は下界を滅ぼす事でしょうね。当然ながら、自分たちのする事は虚勢でしかない。それは嘘ではありません」
『なら、尚更なぜ神の救いを邪魔する?今のお前達に正しさは無い。何故それで、なぜ救済の邪魔をする?』
「救済?ウェスタの巫女殿はこれを救済と言うのですか?」
『なに?』
「救済?下界が救われる?確かにその通りかもしれませんね。原初の炎を浄化すれば確かに終わるかもしれない。『この話は』」
『なんだと?』
命はウェスタの巫女が話す論争に答える
神の救済は間違いではないだろう。確かにヘスティアが犠牲になれば原初の炎は浄化され、オリンピアが滅ぶ事なく、原初の炎の影響もなく、下界は救われるだろう
だが、しかしだ
命だって馬鹿じゃない。最低限のこの先に起こることはもう考えている。
ヘスティアの犠牲があればこの下界は救われる。それは下界に生まれる者も神々においても正しいと思うだろう
でも
最悪なことを予想するなら
「本当に、自分たち人間が、いえ・・・『人間全員がこれを望んでいる』と思うのですか?」
『・・・・・・・・』
「やっぱり貴方はヘスティア様だ。だから自分たちを『エピメテウスから守ろう』とした。そういうことですよね?」
『っ!?』
「どういうことですか?ヤマトさん?」
命はここまでになると、流石にいろんな事はもう想像付いている
否
『もうヘスティア・ファミリアとして』、どんな冒険をして来たかわかるのだ。ここまでになると、その説明を命はする
「我々ヘスティア・ファミリアはまだ弱小ではありますが、それでも敵は現実の厳しさに等しい相手と戦って来ました。それは自分たちと同じ『人間』です」
『・・・・・』
「ジーク殿を騙したここに居る方達アポロン・ファミリア、次に春姫殿の力を奪おうとしたイシュタル・ファミリア、その次はヘスティア様を誘拐したアレス・ファミリア。その次にウィーネ殿を暴走させたイケロス・ファミリア。そして一ヶ月前ではジーク殿が黒竜に変身したことで誰も彼の事情も聞かずに勝手に化物扱いし、冒険者同士の決裂で今まで戦って来ました。つまりはこれからも自分たちの敵は『人間、もしくは神』ではないかと、ジーク殿の考えを真似するようですが、これからもそんな戦いがあるのではないのかと成長しました。そして・・・今回は『英雄エピメテウス』」
『・・・・なぜ?あの男だと?』
「あの英雄エピメテウスは、本当に下界を救うつもりなど無いのでしょう。だから今でも教団を騙してこのようなことをさせている。ジーク殿と同じ人間の悪意を知った男です。ジーク殿もそれらしい被害を受け、前回のようなことになりました。でも、あの人は自分たちが支えているから復讐なんてしませんでした。しかし、あの御仁は違いますよね?これで終わりにするつもりない事は、ヘスティア様も分かっているのでは?」
『だが、それも救済が終われば・・・その男も』
「それでもあの男は終わらせないって言っているんですよ!!」
『っ!』
命は、ヘスティアが犠牲になって下界が救われても、このお話は終わらないと言う
なぜならそれが終わっても、英雄エピメテウスがどんな手段を使っても、下界に復讐するからだ
つまり彼の憎しみがある限り、例えヘスティアがこの下界を救うために原初の炎を浄化して消えても、エピメテウスが下界に生きる人間に恨みを持つ限り、その先も何かしらの悪行で下界を攻撃するはずだと、これで終わりにはならないはずだと予測する。でなければこんなことをするはずがないと、命も今までの戦いにおいて学んだ、人間の悪意を。下界に住む人間が全員正しいとは限らないと。それが原因で原初の炎も穢れたのだから、ヘスティアが炎でもあると言うのに
「あの御仁を止めない限り変わりませんよ。この事態も、原初の炎の力を無くしても、あの御仁の憎しみは消えない。また何かしてくるかもしれません。炎の力を無くしても」
『ぬ・・・変わらぬと言うのか?こうも人間は?』
「はい。それが人間なんですよ。ここに居るアポロン様の眷属だってそうです。主神の言うことが無かったら、ここまで協力してくれませんからね。そうですよね?」
「「「「っ!?」」」」
「むう、確かにな・・・・」
「ヤマトさん・・・貴方は・・・」
『人間の悪意を知った上で、この先も予測されていたのですね』
「今までがそうでしたから、もう自分もこのファミリアに馴染みができたんですよ。自分の故郷である極東もそんな感じでしたから」
『極東ですか・・・確かあちらでは・・』
「ええ、『同族同士の戦』がありますから。ジーク殿と一緒に戦っていると、段々と人間の底が見えるようになって来まして、あの御仁の方が今こんなことをしていると思うと、これで終わりにはならない気がするんです。あの御仁を止めない限りは・・」
命も想像付いたのだ。ここまでになると
ヘスティアの浄化は無駄に終わるはず、エピメテウスが次の段階を考えているはず、腹いせのつもりでヘスティアが居なくなった後で眷属だけでも殺しにかかるかなど、この先どうなるか、最悪な未来しか待ってないと予想は付いている
「どうして貴方は自分たちと協力して、先にあの御仁を止めなくてはならないと想像が付かないのですか?自分たちをあの五人から突き放すだけでは無理だと。どうしてあの御仁の憎悪がわからないのですか?ヘスティア様?」
『っ!』
「どういうことです?ヤマトさん?」
「ヘスティア様はあの御仁と会った時から知っていたんですよ。あの御仁が英雄エピメテウスだと言うことも、この下界を救うつもりはないと。最初から知っていた、だから最初、自分達とあの男と違う場所にオリンピアから出したんですよ。でも結局あの御仁から今も攻撃をされている。つまりは・・・この先なにがあっても自分たちの力で戦う他、あの御仁を止める方法はない。それでもあの御仁に手を出さないのはおそらく・・・あの英雄エピメテウスに無茶な仕事をさせてしまった、『神の責任』だからですよね?」
『・・・・・ああ、その通りだ。もうそんなところまで理解してしまったのか・・・・』
「ジーク殿に教わるまでは自分もわかりませんでした。少なくとも自分も・・いえ・・・ベル殿達もわかっています。あの英雄エピメテウスは『ジーク殿と同じ英雄』であることも」
「同じ英雄?」
「ヘスティア様はいつでもあの御仁を止める方法はあった。それこそ今手に持つ原初の炎で、ですが、それでも彼を止めない理由が『神の責任』。それは・・・・」
ヘスティアがエピメテウスを殺す事は可能だった
まあ善のある彼女がそんなことをするわけもないのだが、少なくとも彼は戦って止めない限り恨み尽くす程、限度を超えた暴虐人となった
だが
それでも彼のすることを、『神』である彼女が手を出してはならない。罪悪感と神の責任により、彼を止める立場はヘスティアでも、おそらくヘルメスでも、ヘファイストスでも無い
その最大の理由である『神の責任』は
「英雄エピメテウスが、元々は神々の命で英雄になっていて一度世界を救った彼が今の時代の人間に失望して暴れようと力を渡した神々に止める義務がないから……ですよね?」
「っ!?」
『ああ、あの男がああなったのは、間違いなく我々神々のせいである』
英雄エピメテウスは、元々神々に力を与えられ、それで世界を救えと、『理不尽な命令』で世界を守る英雄になっていたからだ
選択権があったかは知らないが、やりたくないもない仕事を神々に押し付けられ、そして最終的に力及ばずで世界に見捨てられ、神々の理不尽な命令で人生を無駄にされ、その腹いせも含めて世界に復讐を誓い暴れても、神々は無理難題な命令をした自分たちに、文句を言う資格がないと。こんな時に限って立場を無くしたなどと、こうなってしまった原因である自分たちの責任を感じて神々は立場を無くして手を出せないからだ
特にヘスティアはエピメテウスに絶対に手を出せない
なぜなら、彼は『そのヘスティアの一部でもある原初の炎』でこの世界を守ってきた
そんな一度世界を救い、今人生を狂わされて世界に復讐する英雄を止める権利など、ヘスティアの一部を使って義務を果たしてきた彼に、そんな罪悪感を押し付ける事は、大人である神々は立場の問題で手が出せなかった
「英雄エピメテウスの英雄譚が確かなら、天に授けれた剣と炎で世界を守ったと伝えれています。その時から彼はプロメテウスに無理なお願いを頼まれて、渋々英雄になった。しかし、その後敵の強大さが激しく、彼はそれに太刀打ちできず、そればかりを続ける人の信頼をいくつも無くした。神々の命令でやり遂げてきたはずなのに、今まで命を賭けてまで戦った行いを侮辱された彼は世界に復讐しようとしている。神々の理不尽な命令が始まり、それをさせてしまった神々に責任を感じて手が出せない。今の彼が暴挙に出ても。だからヘスティア様でも、彼の過去を知っている故で手が出せなかったんですよ」
『主も英雄になったのも、そんな理由でしたね。神々が余計なことをしたことが始まり、あんなことになりました。つまりは・・・・神々の理不尽なことで起きてしまった『悲劇』と言うことでしょう』
「なるほど、確かにジークさんも同じ神々を憎む理由を、英雄であろうとも持っています。ジークさんと同じと言う意味が、それだったとは」
『その通りだ。だから『神の決着たる物語』だと言っている』
「「『っ!?』」」
『元々は私たち神々とプロメテウスが始めたこと、大昔は下界を救う気など。私たちにはなかった。それでも気に掛けていたのがプロメテウスだった。私が神殿で寝ている最中に私が暖炉代わりに燃やしていた炎から一部を取り出し、プロメテウスはゼウスに見つかるも下界に落とし、あの男の元へと送った。そしてプロメテウスはその行いの罰により、下界に降りるて原初の炎を守る役割と、それを守る番人を作った』
「それが英雄エピメテウス」
『いかにも、そして原初の炎で下界を救うようにと、プロメテウスや我々も神託をした。しかし、その後は過酷という名の現実が待っていた。そしていつの日か、あの男は世界や我々を憎むようになった』
「そしてもはや自分にそれを止める資格はないと?」
『ああ、元々私たちが原因だ。なら、私たちの手でこれをせねば意味がない。例えその後私が・・・・いや・・・『僕』が消えても成し遂げなければ、あの子供の苦しみは永遠に消えないまままだ」
「・・・・・・・」
全ては神々が原因
ならそれを止めるのも神の責任である。あの男がああなったのも神々のせい。だから今復讐のようなことをしても、こうなった原因を出した発端である神々にあの男を止める権利はない。だが、それを実現させてはならないと、せめて炎を浄化させて、二度とその力を扱わせないこと、それを目的にヘスティアも独断で動いていた
原因を辿るなら、その方が正しいと、大人は言うだろう
しかし
「そんなの。自分たちに任せればよかったじゃないですか?」
『っ!』
「神々の責任?罪悪感?立場?自分たち下界の子供からすればどうでもいいですよ。そんなこと。だって彼に恨みを作った自分たち人間がそもそもの原因なんですから!」
『原因は神々でもなく・・・人間!?』
「そうではありませんか、彼は必死に今まで戦ってきた。にも関わらず、その後『少し強敵に及ばなかった』程度で、人の信頼を折るような真似をした『自分たち』が原因では?」
エピメテウスは確かに初めは英雄になって世界を救うと言う重い責任を課せられた
しかし
それでも人のために魔物を倒して守ってきた。しかし、その後どんどん敵が増す度に太刀打ちできなくなった。今まで散々戦ってきたのに、人のために尽くしてきたのに、少しは慰めてもいい程に
なのにも関わらず、理不尽で身勝手な文句を他の人間は彼に言い放った
必死で人を守ってきた、英雄であろうと全部は守れない。限界はあるにも関わらず、それが成し遂げられないと分かった瞬間に、弱い人間は戦ってきた戦士に罵倒するばかり。これはどう考えても神々ではなく、人間こそ悪である。
その大元の発端を、命は告げる
だが
「貴様!こうなったのも我々が原因だとでも言いたいのか!!」
「異国の人間の癖に、私たちが悪いと言うの!?」
ウェスタの巫女に下がれと言われた、教団の兵士と巫女が、今の言葉を聞いて、聞き捨てならないのか、命に文句を言い始めた。
今まで炎を守る都市の教団として働いてきた自分たちが、こうなった原因を作った発端だと言われて、責任を押し付けれたのが不服のようだ
今日まで彼らも必死で頑張ってきたと言うのに
それでも
命は自分たちの行いが悪いと言い付ける
「なら、なぜあの英雄エピメテウスを助けなかったのですか!!!」
「「「「「っ!?」」」」」
「英雄と呼んで勝手な肩書きを作られてでも、必死にあの御仁はこのオリンピアのために戦ってきた!勝手な責任を押し付けてでもやってきたのに、いざそれが果たされなかったと分かった瞬間、誰も彼を信用しなくなった。そんな勝手な民意な理由で罵られた彼を、なぜ貴方達は助けなかったのですか!!」
「・・・・・ヤマトさん」
『命さん。貴方もそこまで理解してしまったのですね。この現実を』
命は教団の兵士や巫女に文句を言われるが、それでも文句を言い返した
必死に戦ってきた人間を、なぜ最後の最後まで助けなかったのか、もしも今でも仲間が居て助けてくれていたら、今こんなことにはなっていないはず
しかし
まるで物のような扱いをするような仕打ちをした。こんな理不尽があるのか?結局人間は他人事でいつも責任を押し付ける。こんなのが現実だと。
命は納得できない
それでも文句を言い返す理由は
「こっちにも居るんですよ!?人のために戦い続けてきたのに化物の姿になっても今も人のために戦ってきた、『化物呼ばわりされる英雄』が!!」
「「「「「っ!?」」」」」
「ヤマトさん!?それは・・・」
『主のことですね・・・』
こっちも身勝手で傲慢で理不尽な事を言われながらも、英雄として呼ばれる男が命の方にも居た
それが俺、ジーク・フリードである
別に気にしていない。民衆も弱い人間も弱い立場であることを良いことに、偉そうな身勝手なことばかりを言ってくる。それでも俺はそういう存在達だと2年前から学習していた。英雄なんて所詮『世界の使い捨て』、責任を押し付けるのが結末だと俺は理解していたからとりあえず自分から名乗る事をやめている
しかし
それでも俺が世界や他の人間に復讐しないのは
まだ仲間が居たから
まあごく僅かではあるが、それでも俺を信じる者達に報いるために今も戦い続ける。それが唯一俺がエピメテウスと同じであるが故に、彼と同じ道を歩まなかった、同じであって同じではない。俺と彼の比較
彼にだって部下と信頼があれば、今こんな事をしていなかった
苦しんでいる人が居るなら、英雄であろうと助ければいいのに、それをしなかった彼らに命は文句を言う
「彼だって必死に戦ってきた!どうして貴方達はそれでもあの御仁に慰めの一つも言わないのです!!自分だって!救いたい人が居るのに!!」
『っ!?』
「何度自分の力が及ばずでジーク殿を助けきれなかったか!!あれだけ文句を言われて、それでもジーク殿は文句を言わずに、自分たちのために戦った!!信頼できる仲間が居たから彼はまだ英雄で居られる!!自分たちが彼を支えているから、自分たちの英雄で居てくれるんです!!なのに貴方達は・・・なんであの御仁を助けなかったのですか!?」
「「「「「・・・・」」」」」
英雄だからではない
英雄も人間
助け合いが必要だった。だから命は俺を人して扱ってくれた。命と言う仲間が居たから、俺はまだ英雄として生きているのだろう。永遠ではない。しかし。仲間がそう望むなら英雄を名乗ってもいいかもしれないと、前に少しだけ俺は仲間に言った
でもだ
命はそれでも『自分は情けない』と言う。それは英雄になった俺に力添えができていないからだ
二度、仲間や世界のために死んだ。そんな過ちを二度も見ていながら、何もできない自分は情けないと命は自分に罵倒する。どれだけ力及ばずだったのか、それはつまり仲間を救えなかった事
屈辱だった
俺一人に任せきりの自分が憎いと命は自分に怒りを向けた。今この現実を目の前にしている自分は、この試練を前にして、苦しみから逃げる事なく、立ち向かおうとしている。
救えなかった人のために、そして
今救うべき女神のために
それでも、教団の者達に、エピメテウスを助けないのかの答えに、誰も答えず黙りである
その理由を
「もう此奴らも分かっているからじゃ」
「っ!キュロス殿!」
「キュロス様!」
『ベルのお爺様。やはりどこかで隠れていたのですね』
「っ!お前は!?」
柱の隅で隠れていたキュロスが答えた。
どうやらタイミングを狙って今まで隠れていたのだと、ウンディーネが推測していた。でなければx全員でここに突入した時、突然居なくなるわけもないだろうと、こんな事をするだろうと、『正体を知る』ウンディーネは知っていた
そしてキュロスが教団の者達に、全て知っているかのようなことの発言に、命が質問する
「もう分かっていると言うのは?」
「そのままの意味じゃあ、此奴らはもう手段はないと、あの炎人になった人たちを救う術を知るエピメテウスに頼る他ないからじゃ。だから助けることなんてしないで、結局自分たちの保身のために彼奴の力を頼りにしているだけ、そうじゃろう?」
「「「「「・・・・・・」」」」」」
『なんですって!?』
「そうまで貴方達は誰かの頼りが無ければ生きてはいけないのですか!?」
「く・・・仕方ねえだろ!!」
「『っ!』」
「俺たちは弱いんだよ!!エピメテウス様を助けなかったじゃなくて、助けることなんて弱い俺たちにはできねえんだよ!」
「私だって・・・もっと力があれば・・・お父さんや・・・お母さんだって・・・・」
「俺たちは強くねえんだよ!誰かを助ける程、強くねえんだよ!あの方しか炎人を救う方法を知らないんだよ!俺たちじゃあ何もできねえんだよ!」
教団の者たちも無力だった
ただエピメテウスの言う事を聞けば、炎人となった仲間やオリンピアの市民を救う方法はそれしかない。だからあの男を頼るしかないと、弱い奴は弱いままで嘆くことしかできなかった
だから、命は答える
「なんで強くなろうとしないんですか?」
「「「「「っ!」」」」」」
「自分たち人間は弱いですよ。だから毎日修行をして強くなって、その力でいろんな人を救うんですよ!!それが英雄と言うものです!!」
命も分かっている
自分は弱い。だから強くなって守るべき者を守るために、救いたい人を救うために、ここまで腕を上げてきた。守れなかったで後悔はしたくないだから、どんなことにでも抗って、戦い続けると
刀を握り締める
「ではお前さんはどうするのじゃ?命よ?」
「もちろん!!自分は戦います!命を賭けて!!救いたい人を救うために!!」
命の意志は揺るがない
ヘスティアを救うために、どんどん強くなって、救える命を救う。もう守れなかったで後悔しないために、今ここでその強くなった力を発揮しようと
刀を教団に向けた