そして、ベルの方は北の塔へと進入を成功した
中では神殿内とは思えない。見たことのない素材で作られた金属でも石でもない壁と天井のない一本線の道しかない。横にある壁には人間よりも大きい四角いレンガにピエログリフが書かれている。それで敷き詰められているが、いくつかレンガが均等に敷き詰められていない空いてる部分があり、その穴から人間が入れるくらい空いている。、塔に入れば上へと続く『階段がある』はずのなのに
ベル達が塔に入った中は、壁と地面しかない『一本線の道』しかない
こんな『塔の仕組み』すらなってない。建造物内でベル達は真っ直ぐの道にある『最上階』を目指すのだった。
「これが、神様が作った塔の中!?」
「なにこれ!?壁も地面も、金属でも石でもない!?と言うよりなんで階段が無いの!?一本の道しかないんだけど!?」
「これがヘスティアの神殿だ。ここはもはや塔の内部ではない。ダンジョンと同じ迷宮だ」
「っ!?嘘でしょう!?」
「アポロン様、このまま真っ直ぐ向かうしかないんですか?」
「いや、もちろんちゃんとした『正規ルート』がある。壁に幾つか私たちが入れそうな穴が空いているだろう?」
「はい。あります」
「この先にそれと同じ壁がいくつもある。少しでも通った道を間違えたら、引き返すことはできないまま、深淵を彷徨うか、同じ道を通ることになる。現に、見たまえ。あの壁を!」
「「っ!?」」
ガコン!ガコン!ガコン!!
と、アポロンが壁に指を刺すと、壁の四角いレンガが勝手に空いている部分に移動しようと、空いている穴へとレンガが移動していた。
まるで壁が生きているかのように、空いている穴へといくつも数分経っては移動し続けている。引き返すことができないと言うのは、おそらく入った穴はいつまでも空くわけではなく、壁が自動的に塞いでしまうと言うことだろう。
「壁のレンガが動いている!?」
「これじゃあ、どれが入り口なのかもわからない!」
もちろん今横にある壁が正規ルートとは限らない。確かにこれでは迷宮そのもの、ダンジョンよりも入り口は多く、本当に下手したら迷うレベルだ。どれに入ればいいのかも、真っ直ぐ進めばいいのかもわからない
しかし
「アポロン様は、この内部のルートをご存知で?」
「いや、私でもわからない。神であってもな」
「「っ!?」」
「それがわかるのはベル君たちヘスティアの眷属だけだ。ベル君が必ず塔の最上階へと導いてくれる。君に授けれた恩恵を信じるんだ。これは私でも突破できない。ヘスティアのイコルが必ずた正しい道を教えてくれる。ジーク君達が塔のそれぞれに向かわせたのは、それが理由だ」
「神様のイコルが・・・・」
神であるアポロンでも、この塔の正しい道はわからない。でもヘスティアの恩恵を持つ者だけがこの道を知ると、太陽の神は言う
ベルだけがこの塔内の鍵とも言える
無論、俺はこれを考慮した上で、戦えないリリルカと春姫も、塔の進行部隊へと編成した。最上階へと急いで向かうために
だが
『ガアアアアアアア!!!』
「「「っ!?」」」
「やはり、ヘスティアはそう簡単には通したくないようだ。それはそうだ。自分を犠牲にしてまで天の炎を浄化するのだ。そう、簡単に通してくれないさ」
「炎人に!?炎獣!?」
「この塔の中でも!?」
当然、この計画を阻止されたくないヘスティアは、塔の中でも怪物達を配置していた。前からも、壁の穴からも、まさかの教団だけかと思いきや、ヘスティアが用意した怪物達まで置かれるなど、予想できなかった
が
ベルは違う
「わかっていました」
「「「っ!」」」
「神様のことですから、こうでもすると思ってましたから、だから・・・・・突破します!!なんとしてでも!!うおおおお!!」
ベルはもう覚悟を決めている。だから恐れず、目の前にいる敵を斬り捨てる。迷っても仕方がないと、ヒュアキントスよりも先に前線に出た
「そうか、もう君は覚悟を決めているだね。ベル君。ヒュアキントス?君はどうするんだい?」
「当然です!私も行きます!あのジークにもウサギにも負けてたまるか!!」
ベルに先を取られたが、ヒュアキントスもベルと同じ前線へ向かう。俺にもやられて、ベルにもやられたじゃあ悔しくてアポロンにも顔向けできない
だからこそ、ベルと同じ隣へ向かう
でも
「下がれウサギ!ここは私がやる!」
「あなたこそ下がってください!ここは僕の戦いです!勝手に手を出さないでください!」
「ほう!貴様見ないうちに更に鬱陶しくなったな!生意気にも程がある!貴様に下がれと言われて下がるわけあるか!貴様よりも私が先陣する!」
「それは僕です!うおおおおおお!!」
「貴様に負けてたまるか!うおおおおおおおお!!」
もちろん共闘とまでとは言わないが、二人はそれでも目的のため、強さを得た証から、共に戦おうではなく、まるで競い合うかのように敵を容赦無く斬り続ける。
隣に居る、いつかなるライバルよりも負けたくない理由も含めて、共闘とは言い難い、二人の自然に合っている戦法が敵を容赦無く殲滅する
その光景にアポロンとイリアは
「素晴らしい!ベル君も良いと思ったが、ここまでだなんて!ここにジーク君も追加したらもっと良いだろうな!ああ見てみたい!見てみたいいいいいいいいいいい!!!」
「キモ!?マジでキモいんだけど!この神!?」
美男同士の戦いを見て、嬉しいのか、よだれを垂らしてまで大興奮していた
こんなことでも興奮するなんて、本当に気持ち悪い神だと、イリアは流石に巫女の立場でも、人間として悍ましさを感じた
でも、いつまでも戦えるわけではない。目的地である最上階を目指さなくては
「アポロン様!僕の恩恵が鍵と言っていましたが、どうすれば?」
「神威を感じ取るんだ!最上階の柱にはヘスティアの力がある。そこにもヘスティアの神の力があるのなら、ヘスティアの恩恵を引いた君なら感じ取れるはずだ!」
「神様の力を!感じとる!?」
「ベル!目を閉じて!神の恩恵は、決して人間の力を発揮させるだけではないの!与えた神の繋がりをも感じとることができるの!」
「よ、よし!」
ベルはアポロンとイリアに言われた通り
ベルは目を閉じて、恩恵の力の源を体で感じる。柱にはヘスティアの力を溜め込んだ神力がある。つまりはそれを感じ取れば、最上階へ向かうことができる。その神の力を、その神の恩恵を受けた者にしか感じ取れない。
体に集中を重ねベルは感じる
すると
ボ!!!
「っ!?見つけた!!!」
突然、脳裏に何か火が付いたかのような感じをし、ベルはこの先に感じる力のある正規なルートを見つけた
もう眼を見ただけで、どこを進めばいいのか脳裏に焼き付けた
「こっちです!急いでください!」
「よし!ベル君の言う通りに行くぞ!」
そうして、ベルが先導し、とある壁の穴を通った。なんの迷いもなく、しばらくはまた同じ空間が続く、それでもベルは次から次へと、いろんな壁の穴を通る
すると
「見つけました!階段!」
「さっきまで道しかなかったのに、やっと階段を見つけた!」
「よし!このまま行くぞ!」
今まで一本道しかない空間から、やっと最上階に続く一本の階段を見つけた。本当にベルの言う通りの道に、確かな道を見つけた
その階段に急いで、ベル達は登る
そして、
「着いた!!・・・・・けど!?」
「なにここ!?」
「広間?・・・・・いや・・・・壁も天井も見えない!?」
ベル達は見事なまでに、最上階へと辿り着いた。
だが、そこは壁も天井も無い大広間だった
こんな空間は初めて見るだろう、あれだけ大きな塔ではあるが、壁や天井はあるはず、それが見えない。そんな建造物があるのだろうか、否、これは神の塔。神の建造物であるが故に人間の常識では測れない
だが
「目の前に見えるだろう?あれがヘスティアの力を溜め込んだ『柱』だ」
「「っ!?」」
「四本の柱の中心に、大きな炎が!?」
目の前に鎮座している。それぞれ四つの柱の真上にある『大きな炎』
これがヘスティアの力を溜め込んだ『柱』
これを破壊すれば、ヘスティアの計画を早めに抑えることはできる。
しかし
『警告、止まれ。それ以上柱へ近づくことを禁ずる』
「「っ!?」」
「え!?・・・嘘・・神様!?」
突然柱の下から、一人の女が現れた。その女は白いドレスを着た。赤い髪の女
それは
『ヘスティア』だった
なぜ神殿に居るはずのヘスティアが今目の前に居るのか、それもベルの前に立ち塞がるのはなぜか
しかし
彼女はヘスティアではない。
「ベル君。あれはヘスティアじゃない。あれはウェスタの神殿の番人であり、天の炎で自分の写しを作ったタダの『ウェスタの巫女』だ。言うなれば彼女のコピー体だ」
「まさか!天の炎で意志のある分身を作るとは!」
「じゃあ、あれが本来のオリンピアに伝わる巫女!?」
「あれが神様の・・・・分身!?」
これは俺の母『雷神のトール』に聞かされた『天界』での話
天界では、神々の神殿にはそのような番人達も居る、元来なら従属神や精霊がその任を負っていると聞かされた
つまりはあれが本来の神殿の番人であり、オリンピアに伝わる、神殿と聖火を守護する巫女
それがウェスタの巫女である
だが
今回はヘスティアが自分の写し身を用意していた。ベル達に邪魔されないようにと、自分の分身体がベル達に立ち塞がる
「つまりはあれを落とせばいいのですね?アポロン様?」
「ああ、あの巫女は炎の枢機と繋がっている、柱の機能は停止し、柱に溜まったヘスティアの力も消えるだろう。今はあの巫女を倒すしかない」
「承知しました。聞いたかウサギ?あの女を殺せば、柱を落とせる。やるぞ!」
「だけど、ヒュアキントスさん・・・でも・・・」
「なんだ?お前の主神と同じ顔だからと斬ることができないのか?さっきの威勢はどうした!?あのジーク・フリードなら簡単にやっているぞ!それにあれは本物ではない!貴様の優先順位を履き違えるな!」
「っ・・・・・わかりました」
アポロンの言う話では、あの赤い髪をしたヘスティアの姿をしている巫女を斬れば終わると言う
だが、本物ではないとわかっていても、姿が自分の家族の容姿な姿をしているせいで、ベルは覚悟を決めたはずなのに、こんなところで躊躇った
無理もないのも当然、自分の家族の姿をした敵が現れるなど躊躇うに決まっている。特に人に優し過ぎるベルでは、だが、これを斬らなくてはヘスティアの計画は阻止できない。
今はヒュアキントスの言う通りに、偽物であると、自分に言い聞かせて、改めて彼女に向けてナイフを向けるベル。
しかし
『警告の無視を確認、これより敵を退ける』
「これは!?まさか!・・・まずい!全員避けろ!!!」
「「「っ!?」」」
アポロンは、巫女から変な力を感じたのか、全員に退避の声を掛けた
それもそのはず、なぜならこの巫女は、聖火の守護者であり番人
つまりは
『エラ・ガバルス!!!』
「これは!?神様のアルカナム!?イリア!」
「え?きゃあ!!」
「アポロン様!」
「ぬ!」
そう、ウェスタの巫女は
アルカナムで攻撃ができる
その炎は、一度ベルが経験している。ヘスティアがウェスタとなった二日前に、神殿を追い出された炎の波と変わらない技を、ウェスタの巫女の手から放ったのだ
その一撃を経験しているベルにおいては、回避方法がもう身についたのか、イリアを持ち上げて、彼女との距離を大きく取るように横に避けた。そのベルが避けた先まで、ヒュアキントスも追いかけるようにアポロンを持ち上げて横に退避する
ベルが先に直撃範囲を覚えていたことから、ヒュアキントスもベルと同じ範囲まで避けたが、先ほど自分達が立っていた地面は、炎の波に飲まれて溶岩の湖となった。ただ彼女が炎の波を出しただけだと言うのに
「なんて威力なの!?あたり一面が火の海に!?」
「やはり、巫女もヘスティアの力を少し持っていたか」
「火力に任せた波如きにここまで押されるとは、舐められたものだ。その勢いで私を倒せると思うなよ!偽物が!!」
「ヒュアキントスさん!?魔法を!?」
「『来れ、西方の風』!『アロ・ゼフュロス』!!!」
ヒュアキントスは、あまりに本物ではないコピー如きに負けるなどプライドが許さないのか、押されたままでいられないと、奴は巫女に魔法を放つ。ヒュアキントスから黄色い炎の輪が巫女を襲う
しかし
『拒絶』
「なに!?」
「炎の防壁!?」
ウェスタの巫女はヒュアキントスの魔法を、前方の地面から炎が吹き出し、外壁となって身を守った
まさか魔法までも防ぐ程の防壁だと。ヒュアキントスでも突破できない。これがウェスタの巫女の力、ヘスティアの力を貰っていると言えど、ここまでの力とは、流石の神の力にあのヒュアキントスでも引き下がる他無くなる
しかし
「ヒュアキントスさん。ここでイリアとアポロン様を守ってください」
「な!?何をする気だ白兎!?死ぬ気か貴様!?」
「いや、良い。これを突破できるのはベル君だけだ。彼に行かせなさい」
「え!?でも!」
「大丈夫。イリアはそこで待ってて!」
「あ!?ベル!!」
そうして無謀ながら、ベルが一人であのウェスタの巫女へ突っ込む
流石の無謀もヒュアキントスやイリアもベルを止めようとするが、そうしてはならないとベルを一人でいかせろとアポロンはベルで一人で行くべきだと、ヒュアキントスを行かせない
『一人で突っ込むとは、無謀!』
「ふ!ふ!は!」
『っ!?』
「なんだ!?白兎がウェスタの巫女の炎を上手く避けている!?」
「それは避けられるさ。だって彼はヘスティアの眷属だからな」
「え!?どういうことなんですか!?」
「恩恵を通して、ウェスタの巫女の攻撃パターンが明確に眼で見えるんだ。だから彼にウェスタの巫女の攻撃は効かない。全て避けられる」
「だけど、炎の壁が!?」
「それはどうかな・・・」
「え?」
ベルはヘスティアの恩恵を取り戻した
つまりは今の彼はヘスティアの力を身につけている。そして目の前に居るのは彼女の分霊。であるなら、彼女の恩恵を持っているベルなら、巫女の力も無効化できるとアポロンは見破る
「はあ!!」
ブウン!!
『なあ!?』
「炎の防壁をナイフで壊した!?」
「ヘスティアの恩恵を受けた者だけが、同じ力に対抗できる。これでベル君の勝ちだ!」
「っ・・・・」
『な!?』
ベルは防壁もヘスティアナイフで貫通させ、巫女の防壁を突破し、あとは巫女を斬るだけだった
しかし
「ふ!」
『・・・・・・・』
「な!?」
「何をしている白兎!?なぜトドメを刺さない!?」
なんと、ベルは巫女を前にして、あとは首元にナイフを刺すだけだと言うのに。その直前でナイフを向けるだけで、斬ろうとはしない
なぜここまで来て、ベルはトドメを刺さないのか、それにもちゃんと理由がある。
それは
「僕たちを遠ざけるつもりで、攻撃したんですよね?やっぱり貴方はヘスティア様だ」
『っ!?何を!?』
「ヘスティア様は決して人を殺めたりなんてしない。例え貴方が神様の分霊でも、僕は貴方のことをよくわかりますから・・・だから僕は貴方を斬らない。貴方もヘスティア様だ」
『っ!?何を言うかと思えば、そんな世迷言を言うのか、そんなくだらないことを言いにここまで来たのか?所詮は人間か』
「そうですか、じゃあこれでも同じことが言えますか?」
『おい、何をして・・・・・っ!?』
「え!?ベル!?」
「何をしている白兎!死ぬ気か!?」
ベルは巫女の考えていることがわかる。少なくとも今目の前に居る巫女は敵ではない。そう信じてベルは彼女を殺そうとしない
でも巫女はそれはあり得ないと、ベルの言うことを否定する。目的の為なら彼女はベルを殺しているはず、でも今は殺せるチャンスなのに、手を掛けない。否定な言葉を出すならもう殺しているはず
それができないなら
ベルは彼女に自分が持っていたナイフを持たせて、そのまま自分の首元に向けさせる
いかにも自分を殺して欲しい。などと。自殺行為をするなんて、自殺願望者じゃなければやらないだろう。少なくとも今彼を殺す絶好のチャンス。彼女の手を掴んだまま、自分の首元へと段々と近づける
『何をしている。死にたいのか?』
「神様が死のうとしているのに、僕が命を賭けないなんておかしいです。だから僕も命を賭けます。さあ、これで僕を殺せますよ!どうして僕を殺さないのですか!?」
『やめろ、やめろ、やめてくれえええええ!!』
そう言って巫女は彼の手を振り払って、ナイフをその場で捨てた
やはり彼に嘘は通用しない。でもアポロンはそうするべきだと。巫女の心をへし折るには十分だと思っている。命で張り合わねば
「やっぱり貴方はヘスティア様だ。僕を殺せないって分かってましたよ」
『・・・・・君は・・・やっぱりずるいな。ジーク君と同じで・・』
「お互い様ですよ。神様だって自分の命を消してまで僕たちを助けようとしているんじゃないですか、だからおあいこです」
『本当に君までずるい』
「絶対に僕たちは・・・諦めませんからね」
『ああ、こればかりは避けられないか』
「っ!?これは!柱の機能が停止した!?巫女がヘスティアの力を補充するのをやめたのか!?」
巫女はベルの言葉を聞いて、柱の機能を停止した。倒せば切れるはずなのに、そんなことをしなくても機能を停止できたようだ
おそらく、彼女の意志でも機能を停止できるのだろう。しかしそれを屈服させる程、命を賭けてまで彼女の信頼を得た。彼は優しいとは思うが、それと同時に恐ろしい子供だと、アポロンは俺以外にも凄い子供を見た瞬間だった
しかし
「ほう、ご苦労であった。これ以上聖火の女神の計画を実行をされては困るからな」
『は!?離れて!!』
「あ!?神様!!」
『ぐうう!!!』
突然、巫女の背後から聞いたことのある声が聞こえた。
そしてそれを聞いた巫女が、ベルを突き倒して、彼を背後から飛んでくる剣から身代わりになった
そして巫女の背中に刺された、その剣は『炎鷹の嘴』。つまりは・・・・
「この剣は・・・・・エピメテウス!?」
「小僧。お前が巫女の防御を消してくれたおかげで、巫女を排除できた。感謝する」
巫女を殺したのは、このオリンピアの大英雄のエピメテウス
やはり塔内で待ち伏せをしていたようだ。巫女を殺して少しでも柱を再起動できないように、計画を阻止する為だろう
しかしだ
なぜここまで来れるかだ。恩恵の導きが無ければ絶対にここに来られないと言うのに、ヘスティアの恩恵を持たないエピメテウスがなぜここまで来れたのか
その理由は
「どうして!貴方がここまで来れる!?」
「この神殿は、オリンピアに無数に設置された『トーチ』を媒介されたことで顕現している。決してあの女神だけの力ではない。プロメテウスの恩恵を得ている者、そしてこの神器を持つ私ならば、ウェスタの眷属と同じように、炎の枢機を感じ取れる」
「ここまで来れたのは、それが理由なのね」
「ああ、そうだともイリア。だが、貴様はプロメテウスの眷属でもあると言うのに、その程度もできんとは、流石は巫女の落ちこぼれだけのことはある」
「く!」
どうやらエピメテウスはこの神殿に宿るヘスティアの力ではなく、この神殿を顕現している精霊の炎のトーチ、それを辿って来たようだ。一応この神殿を作るのに、彼女だけの力ではどうにもできないようだ。
しかし
まさかエピメテウスがプロメテウスの恩恵とその神器の力でここまで来たのは、やはり伊達に三千年を生きていただけではなく、ここまでの計画を練るためにいろんな歴史で知恵を得て実行して来たに違いない
そして、彼にやられたウェスタの巫女は
『ベル・・・君・・・・・』
「あ!神様!」
『逃げ・・・・るんだ・・・・今の彼は普通じゃないんだ・・・彼はもう・・・』
「彼がなんです?」
「ああ、あの男はおかしいな」
「何がですか?アポロン様?」
「あの男の力だ。もう他の巫女や戦士団も、もう原初の炎の力はそこまで貰っていないはず、あの男も含めて、穢れていない上澄みだけの炎の力だけなはず、なのに未だにあの男はその力を最大限に引き出している」
そう、言われて見ればエピメテウスの力は本来、プロメテウスが与えた『原初の炎の半分』と『神器』の力しか持っていない
一応プロメテウスの眷属ではある。だが、だとしても三千年生きれる力を貰っているにしても、奴の力が今までも使っておいて、その力の炎はもう使い果たすまでほとんど残ってないはず
なのに、未だに原初の炎の力が尽きることなく、使い続けている
今はヘスティアもそれをコントロールされないためにも、原初の炎を抑えている。だから炎が補給されることもなければ、もう原初の炎は借りれない。
だと言うのに奴はまだ使える
だが
その理由は一つ
巫女が答える
『だって・・・エピメテウスの力は・・・・原初の炎・・・じゃなくて・・・・・その『穢れた方』・・・』
「「「っ!?」」」
「な!?穢れた炎!?」
「そうとも!貴様らは勘違いしている!私は原初の炎の上澄みの力ではない!この力は私と同じく穢れたのだ!私は穢れた炎の力を使っているのだ!」
「やはりか!通りで力は衰えるどころか、増す一方であるわけだ」
ヘスティアの分霊が答えてくれた。エピメテウスは原初の炎の上澄みではなく
その『穢れた炎そのもの』だった
まさか得ている力の穢れの全てを使っているとは、まさかの大英雄が、ここまで堕ちて自分の目的のために外道を走るとは、多くの神々なら驚くのが普通だろう
だが、三千年も生きた世界に復讐を望み、世界を恨む男であるなら、やり遂げるだろうと、アポロンは驚かない
でも強大である事は間違いない。おそらく・・・・・今までのモンスターと比べるよりもデカい
しかしだ
そんな大きな事実を耳にしても
「神様・・・・大丈夫ですか?」
「ベル?」
『・・・ベル・・・君・・・』
「ん?そんな偽物を・・自分の女神のように呼ぶか?」
ベルは動じなかった
それよりも、ベルはエピメテウスの言葉を流して、倒れたヘスティアの分霊を起こす。少しでも助けようとする。
エピメテウスの言う通り、これはヘスティアではない。だけど、神様の偽物であろうと助けようとする。今大きな強敵が目の前に居るとしても
「神様。大丈夫です。みんなと一緒に戦って彼を止めますから、あとは任せてください」
「「「っ!?」」」
『でも・・・逃げ・・・』
「それは言わないでください。大丈夫です。僕は一人で戦っているわけじゃないですから、もう休んでください」
『っ!?』
「何をふざけたことを・・・・」
ベルは怖気ない
エピメテウスの真の力を告げられようが関係ない。ヘスティアの分霊を救えない気持ちで苦しいこともあるけど、
それでも今戦うと決めている
もう引き下げれない。そして彼を止めると決めている。みんなで約束したことでもあるから
だからベルは引き下がらない。怖気つかない。立って、食い縛って戦う
ただ、それだけ
『そうか・・・分かったよ・・・・君に・・・いや・・・・みんなに任せるよ・・』
「はい。必ず助けに行きますからね」
『うん・・・・・わかった・・・よ・・・』
そう言って、ヘスティアの分霊は光となって、空へと散りとなって消えた。
これで第一門の力はヘスティアの力は消えて無くなる。そしてまずは作戦通りに一つ潰せた。少し予定は狂ってはいるけど
でも、ここから先は『思惑通り』だ
と思って、ベルは彼女の消えた炎を天まで見上げた後で、ナイフを拾って
エピメテウスの前に立つ
「っ!なんの真似だ!」
「何がですか?剣を構えてください。ここで貴方を倒します。さあ、構えてください!」
「ほう、あの巫女がやられたことで怒り狂ったか?」
「ええ、悔しさもありますよ。本当に神様が殺されたと思うような光景でした。でも、それでも貴方を止めるって決めているんです!僕と勝負して貰います!」
「は!小僧如きに、この俺を倒そうと言うのか!」
「そうですよ。何度何をなんだろうと言われても、僕は戦う。戦って貴方を止める!!!」
「いいだろう!貴様がなぜそこまで生きがれるのかは知らないが、そこまで死にたいのなら、さっさと殺してやる!!」
「僕は勝つ!勝つまで諦めない!!何度でも這い上がって、立ち向かって見せる!!!」
「この小僧があああああああああ!!!」
ベルはヘスティアナイフだけで、エピメテウスに勝負を挑んだ。
力量としては明らかにエピメテウスが上、だと言うのに、心を折れずに戦い続けている。どうしてこれだけの真実を聞いても折れないのか、ただの人間である自分が英雄に挑むなど、無謀としか言いようがない
だが
それがなんだ?
だからヘスティアを助けるのをあきらめろと?
ふざけるな、それだけは絶対に受け入れない。何がなんでも、倒れてもまた立ち上がって、這い上がってでも
ヘスティアを助ける
ただ、それだけ
だから大英雄でも諦めない
「うおおおおおおおおお!!!」
「なんなんだ!!!お前と言い!あのジーク・フリードも!!お前達はあああああああ!!」
エピメテウスはよりベルが危険だと、本機を出さざるを得なくなり、自分の力を最大限に上げてベルを襲う
ここまで屈するような事を言われても心を折れないベルに、少し恐怖を覚えたのだ。今まで自分の力で屈しない者はいなかった。でも、今現れた。自分の過去を否定してここまで来た敗残者が
何度も自分に屈しかけたこの小僧が、まさか俺に続いて自分に立ち向かって勝とうとして這い上がってくるなど、認めるわけにはいかない
少なくとも、ここまで這い上がって諦めない心を持ったこの小僧を見逃すわけにはいかない。ここで排除しなければ、近い未来で自分はやられると、ここでエピメテウスは全力をかけた
「す、すごい・・・・・」
「エピメテウスには攻撃は通っていないが、何度もやられても、立ち上がろうとする」
イリアもアポロンも、彼の無謀ながらの戦いに驚愕した
奴の力は穢れそのもので、神器も持っている。そして何度も彼にやられては倒れる。それでも、まだ諦めないでベルは何度もやられて倒れては立ち上がる。何度も、何度も
その這い上がりにエピメテウスは恐れている。今完璧な力を持っている彼に、何度も諦めないで立って戦っているのだ
そんなベル。イリアもアポロンも凄いと、彼を評価していた
そして、そんな戦いを見たヒュアキントスは
「ふざけるな。あの男と言い、お前も・・・」
「ヒュアキントス?」
「本当に英雄になったつもりかあああああああああああああああ!!!」
ヒュアキントスはベルの這い上がりが気に食わない
あのウォーゲームに敗北した時から嫌いだったが、それでも俺のように英雄になろうとして、自分よりも出しぬこうとする姿を見たベルに嫌気を刺したヒュアキントス
もうレベル4にもなった。ベルと同じく、なのにこの戦いを見て負けていると感じる
ここでただ戦いを見ているなど、悔しくてたまらない。俺に負けてベルにも負けるなど、誰よりも敬愛しているアポロンが、今、大きな闘いを見せているベルに好感をもたれている。それが気に食わない
だから
「どけえ!白兎!私がやる!」
「っ!ヒュアキントスさん!」
「なんだ貴様は!」
「図に乗るなよ。貴様だけでこの男に勝てるなど、思い上がるなよ!」
「思ってませんよ!でも、この人に絶対に勝つんです!!!」
「貴様に言われたくても、貴様が倒す前に、私が倒す!」
「「うおおおおおおおおおおおおおお!!」」
「この小僧共が、二人揃った所で、力の差が無いだけ無駄なことだ!!」
ヒュアキントスも乱入するように、ベルの先を行ってエピメテウスを倒そうとする
ベルに力で負けたく無い負け惜しみが走ってしまったのか、冷静で戦う彼が、取り乱しなら大英雄に挑む
ベルもヒュアキントスよりも先に、エピメテウスを倒そうと、もはや共闘ではなく競争である。
そんなくだらない理由で、もう一人増えようが、エピメテウスは関係なく、二人まとめて倒そうと更に力を上げようとする
そんな大きな力を前にしても、二人は下がらない。お互い譲れない想いがあるからこそである。だがまだヴェルフが作る神器がないため、まだ二人がかりで挑んでも彼に太刀打ちできない
今は長期戦になりそうだ
「二人でエピメテウスに挑んでいますけど、勝てると思いますか?」
「いや、それでも力が足りない。やはりあの男が神器を持っているのがデカイ。あれをなんとかできればいいのだが、やはりあれに対抗できるのは、今ジーク君の仲間の鍛治師が作る神器でなければ対抗できない。残念ながら、その神器が届くまで、この戦いはその時間稼ぎでしかない」
「ベル。お願いだからなんとか耐えて」
意気投合ではないが、ベルとヒュアキントスが挑んでも、やはりエピメテウスの力の方がまだ上
この戦いは挑むにしても、ヴェルフが今制作しようとしている神器が届くまで、この戦いを耐えるしかないと、アポロンはこの戦いは、あの眷属達に任せる他なかった
どこまでこの戦いが耐えれるか、イリアはベルを心配するのみしかできなかった