ニーベルンゲン・シックザール〜竜殺しの英雄譚〜   作:ソール

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ジークの狂った計画

 

 

 

 

 

 

ベル達が塔の制圧をしている最中、オリンピアの神殿外にして、オリンピアの住民街

 

 

塔の制圧に加勢をしなかった俺はと言うと

 

 

「ジーク!炎人の数が増したぞ!」

 

「こっちもよ!まだこんなに居たなんて!」

 

 

「全て俺がやる!今からアルテミスの眷属達は炎人を無視!指揮をヘクトルに移行!ヘクトルに指示を聞いて、ヘクトルの部下と連携して教団の兵士を打ち倒せ!炎人は全て俺が倒す!!」

 

「「「「「はい!!」」」」

 

「総員!炎人はアキレウスに任せよ!我らは引き続き教団の兵士を蹴散らす!左右の炎人はアキレウスが全て倒す!手出しはするな!」

 

「「「「「はい!姫様!」」」」」

 

 

こっちはこっちで大戦となっていた、もはや戦争レベルである

 

前方には教団の兵士団が数百人

 

その左右に炎人と

 

アフロディーテとアルテミスの眷属と共に応戦しているが、中々にこの戦いに苦戦している。教団はヘクトル達に任せても問題ない。そちらに団長副団長抜きではあるが、アルテミスの残りの眷属を加勢に加えた。彼女達はレベル2ばかり、教団の兵士くらい倒せるだろう

 

問題なのは炎人である

 

予想以上に数が多すぎる。今相手しているのはオリンピアの市民、つまりここは人口は多かったのだろう。そしてほとんどを大災害で燃やされ炎人となった。いくらこっちにレアが居たとしても、このままやり続けたら消耗戦になる

 

いくら俺もムーンライト・オリオンになって、オリオンの矢を使っても炎人は増えるばかり、このままこの戦いを続けるわけには

 

 

できれば・・・・もっと『加勢』があれば、俺やアフロディーテ達もヘスティアの所へ行って彼女を止めて、この戦いを止めることができるのだが

 

 

流石にこの数では。ここで抑えねばならない。踏ん張るのみだった

 

 

しかし

 

 

「くっ!俺たちを守る兵士達が、こんなところで何をやっているんだよ!?」

 

「そんなにもこのオリンピアを滅ぼしたいのか!?俺たちの街を!?」

 

 

「っ!オリンピアの難民達!?」

 

 

突然、兵士となったオリンピアの難民達が、今教団の兵士たちの暴挙に我慢ができなくなったのか、教団に文句を言い始めた

 

難民達からすれば、教団の兵士たちは希望だった。この街を守る戦士として、しかし、それが今ではくだらん事で、エピメテウスに騙されて、この街を救おうと戦っている者達の敵となっている。この街を守るどころか、滅ぼすような真似をしたことに難民達は教団に文句を言うも、教えて貰った剣の腕で教団の兵士たちにオリンピアの難民達が立ち向かっていく

 

 

「な!?お前達は・・・まさか!?」

 

 

「そうだ!忘れたのか!?俺たちを!」

 

「元はここの住民だ!」

 

「お前達兵士様達は何をやっているんだよ!英雄ヘラクレス様がオリンピアを救うために戦っているのに、なんで邪魔するんだよ!」

 

 

「な!?なぜオリンピアの市民達が武器を!?と言うか・・・・あの災害で生き延びていたのか!?」

 

「だが、なぜ市民達が武器を持って戦っている!?」

 

 

「決まっているだろう!ここまで頑張って生きて!俺たちの街を取り戻すために英雄ヘラクレス様と共に戦っているんだ!」

 

「俺たちの故郷を取り戻すためにな!」

 

「このオリンピアのために!」

 

 

「な・・・馬鹿な!?あの炎の力もない市民達が、武器を取るなど・・・・」

 

 

教団の兵士達は驚かずに入られない

 

戦う経験もなく、剣を振るのすらできそうにない、鍛えてもいないオリンピアの市民達が

 

勇気を出して、このオリンピアを取り戻すために戦っているのだ。これを驚かずには居られない

 

剣の振り方は未だにイマイチではあるが、それでも率先して戦場に出ている

 

 

そして

 

 

「そう言うお前達は何をやっているんだよ!俺たちを守らずに、この街をこんなにしやがって!」

 

「なんのための教団の兵士だよ!この街を守るんじゃなかったのかよ!」

 

 

「っ!?」

 

「しかし、それはエピメテウス様が・・・・」

 

 

 

「もうやめなさい!!」

 

 

 

「「「「「っ!?レア様!?」」」」」

 

 

「「「「「巫女長!?」」」」」

 

 

「レア・・・・・」

 

 

オリンピアの市民の文句に、エピメテウスならなんとかしてくれると、言い訳がましい事を教団の兵士たちを率いる兵士長が言うが

 

 

その前に

 

 

巫女長であるレアが、戦士達を止めた

 

 

これ以上戦ってもオリンピアのためにはならないと、彼女が戦士達の前に出て、この戦いを今すぐやめるべきだと、説得に入る

 

 

「もうやめなさい。こんな事をしてもこのオリンピアのためにはなりません。あの人を信用しても無駄です!」

 

 

「しかし!」

 

 

「まだわからないのですか?あの人はオリンピアを救うつもりがないんですよ?それでもですか?」

 

 

「「「「「「っ!?」」」」」」

 

「そんなはずは!」

 

 

「彼の過去を知っているならわかるでしょう?人を救ってきたのに、私たちは彼が戦えなくなった瞬間見捨ててしまった。それをされた彼は、今でも私たちオリンピアを恨んでいる。だから彼に助けを求めても、オリンピアは救われない。むしろ壊すことを望んでいるんですよ。それなのに助けてくれると思っているんですか?」

 

「オリンピアの戦士長。これだけは言っておく。お前達を利用しているだけだ。あの男は」

 

 

「そんなはずは!?」

 

 

 

「なら災害の時、市民を助けなかったのはなぜ?あの災害を起こした犯人が、『彼』だと言うのに?」

 

 

 

「「「「「「「え!?」」」」」」」

 

「な・・・・なんだと・・・・」

 

 

 

「やはりか、オリンピアが燃えた災害を起こした犯人はあいつだったのか」

 

「はい。その通りです」

 

 

レアが全ての真実を話した。

 

あの災害を起こした犯人はエピメテウスだった

 

その真実をレアは隠し続けていたようだ。彼女も目的はどうであれ、娘がその災害に殺されたことは変わりないと、彼の言う通りにしていた。

 

しかし

 

もう人を騙して娘を助けることは、娘のためにもならない。その深い愛情を示すために、母として間違った選択はもうしないと

 

彼らの前で全てを話した

 

彼らがまだ道を踏み外す前に

 

 

「私はこの事実を隠していました。ですが、本当にそんなことをした犯人の言うことを聞く必要があると思いますか?彼の目的は自分を裏切った世界への復讐。その中にここもあるんですよ?それでも・・・・彼の元に付きますか?」

 

 

「「「「「「・・・・」」」」」」

 

「それは・・・・・」

 

 

「そんな古い英雄の味方をしてオリンピアが救われるかもわからない。いいえ、救う気もない壊す事を望んでいる大英雄エピメテウスよりも、世界を滅ぼすかもしれない『隻眼の黒竜』を一人で討伐した。新しい大英雄ここに居るヘラクレス……大英雄ジーク・フリードが率いるヘスティア・ファミリアに助けを求めるべきです!彼らは自分の故郷でもないこの神域を救おうと必死に戦っているのですよ!?」

 

 

「「「「「「・・・・・・」」」」」」」

 

「エピメテウス様よりも・・・・大英雄ジーク・フリードに助けを・・・・」

 

 

「まあ、どうするかはお前達に任せる。俺は英雄呼ばわりされるのは好きではないが、ここを見捨てる理由はない。俺は友人となったレアのために、友のためにオリンピアの救済を実行する。これが今俺たちの行動だ。さあ、どうする?」

 

 

「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」

 

 

古い英雄エピメテウスの味方になるか、俺と言う新しい英雄の味方になるか

 

二つの選択を、オリンピア戦士団は迫られる

 

その戦士長もなかなかに選択できない。本当に何が正しいのか、これがあの男の目的だったのだろうか、救済など目的ではなく、破壊することが目的だった

 

だから、今自分が立つ。オリンピアがこんなにも荒れている。本当にこのオリンピアを救うつもりはない。野望のためにあの災害を引き起こした犯人

 

彼女の言う通りが本当なら、自分達のやっていることは故郷壊し、戦士団のやることではない

 

 

なら

 

 

今新しき英雄である俺に助けを求めた方が、オリンピアのためになると、レアは戦士団を説得する

 

 

もちろん、どうするかは任せている

 

 

その返事を待つ時間はないからだ

 

 

『オオオオオオオオ!!』

 

 

「まずい!また炎人だ!」

 

「炎獣も多数居るぞ!怪鳥類系も!」

 

「戦士団は戦意喪失した!戦士団は無視!炎人に敵を変えよ!」

 

 

「「「「「・・・・・・・」」」」」

 

 

炎人や炎獣もまだ居る

 

炎のモンスターはまだ消えたわけではない。ヘクトルがもう戦士団に戦う気力はないと判断して、炎人へと指揮を変える

 

炎人を前にしても、戦士団は迷っている。戦場の真ん中に居ると言うのに

 

自分の立場を見失っていた

 

しかし、その中でもオリンピアの市民は

 

 

「俺は戦うぞ!!」

 

 

「「「「「「っ!?」」」」」」

 

「オリンピアの市民達!?」

 

 

「俺たちは戦うぞ!オリンピアを取り戻すためにな!」

 

「お前達はどうすんだ!?俺たちは英雄ジーク様だろうと!」

 

「子供に任せてばかりで諦めるかよ!俺たち大人の底力を見せてやるぜ!なあみんな!!」

 

「「「「「「おう!!!」」」」」

 

 

「「「「「「・・・・・・・・」」」」」」

 

「戦士長!どうします?」

 

「・・・・・・・」

 

 

オリンピアの市民は、子供にだけ任せる気はない

 

ヘスティア・ファミリアは俺を含めて成人満たない子供ばかり、そんな者達ばかりに任せてはならないと、市民達大人達は恩恵があろうとも、自分の故郷は自分の力で取り戻すと、戦士団が迷っている最中、もはや市民達に迷っている場合じゃない

 

倒す敵が居るなら倒す。と、敵はもう見えていると、ヘクトル達と共に武器を持って前衛に出る

 

このまま市民達は街を守るために炎人と戦っていると言うのに、自分達はこのままにしていいのかと、戦士団は迷う

 

そんな返事を聞く暇もないまま、俺たちは戦いを続ける

 

 

『『『『『オオオオオオオ!!』』』』』

 

 

「ジーク!更に増援が!!」

 

「こっちだ!数はおそらく300!!」

 

 

「アキレウス!魔法を使うしかないぞ!」

 

「これは予想以上だな、出し惜しみは無しだ!幹部達は水と風の魔剣を使え!もう本気を出せ!」

 

「「「「「は!!」」」」

 

 

炎人のあまりの数の多さに、俺たちは倒しきれず、もう魔法と魔剣を使うしか手段はない

 

炎人の数は個々の住処にしてた市民達、ここには何千人と言う数が居たんだろう。だが仕方ないことだ。ここを抑えるにはもうこれしかないからと

 

ここからは本気を出す

 

 

しかし

 

 

「待ってくれ!!」

 

 

「「「「「「「っ!」」」」」」」

 

「オリンピアの戦士長!」

 

「決まったか?」

 

 

「ああ!ヘラクレス!いいや、英雄ジーク・フリード!!巫女長!!これより我ら戦士団は市民を守るため、貴殿らに加勢する!!全軍!!密集陣形!!」

 

「「「「「「「密集陣形!!!」」」」」

 

「全軍!!突撃!!!」

 

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」

 

 

「戦士長!」

 

「覚悟を決めたな!」

 

 

戦士団は本当の正しさを見つけた

 

彼らが本当に守りたかったのはオリンピア。そしてその市民達、市民達はオリンピアのために戦っている。市民達が戦っていると言うのに、自分達はこの街のために戦っていない

 

そんな愚かな行為はしたくない。街のために今までずっと戦ってきた。今あのエピメテウスがオリンピアのために戦わないのなら、自分達でもうここを守るしかないと

 

今ここで一緒に戦っている者だけを信用して戦うことはないと、もう自分達の立場を見失うことはなく、今何をすべきなのか、やっと彼らは見つけた

 

 

「「「「うおおお!!」」」」

 

「市民を守れ!我らはオリンピア戦士団!!オリンピアのために!!」

 

「「「「「オリンピアのために!!うおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」

 

 

「すごい!」

 

「これがオリンピア戦士団の力か」

 

 

オリンピア戦士団の力は強大だった

 

彼らはプロメテウスの恩恵は無いが、原初の火を少し貰っているため、その力で炎人達を聖なる炎で焼き払う

 

これなら奴らを抑えられる

 

 

「行ってくれ!!英雄ジーク・フリード!!巫女長も!!」

 

「アフロディーテ様!これなら私たちで抑えられます!」

 

「わかったわ!ジーク!」

 

「行こう!ジーク!!」

 

「行きましょう!ジークさん!!」

 

 

「ああ!!行くぞ!ヘスティアの所へ!!」

 

 

戦士団が加わってくれたおかげで、神殿に入られることなく、これで街に残る炎人は抑えられる

 

今の内に

 

ヘスティアが居ると思われる。中央のある神殿へとアフロディーテとアルテミスとレアと共に、ヘスティアの所へ向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして俺たちはヘスティアが結界を貼った中央神殿に着く

 

三枚の結界を多く貼られており、誰も入れないようにヘスティアは用心にも中央神殿にも炎の結界を貼ったようだ

 

 

「着いたはいいですが、やはり結界を貼っていましたね」

 

「ヘスティアの癖に、案外用心深くしたようね」

 

「これは魔法でもなんとも効かない。だけど・・・・・・ジークなら」

 

 

「ああ、この結界を破壊する」

 

 

俺は中央の神殿に貼られた結界を、レアスキルで破壊する。俺のゴット・シェアシュテールングでならこの結界は簡単に破壊できる

 

今目の前にある神殿を守る結界は、間違いなくヘスティアのアルカナム。魔法でも俺たち人間には絶対に砕けない

 

しかし

 

神の力をも破壊する俺のスキルなら、この程度の結界など簡単だ

 

だから、俺はひとまずグラムとオリオンの弓を床に刺して置き。右の拳から黒い雷が放出する

 

そして

 

 

「ゴット・シェアシュテールング!!!」

 

 

そう言い放って、俺は目の前にある炎の壁に黒い雷を纏った拳を叩き込む

 

その衝撃で、ガラスが割れるように、

 

 

ボワアアアアアアアアアアアアアアアン!!!

 

 

と、炎の壁が一斉に消えた。三枚もあったのにあっという間に消えた

 

 

「よし、壁は壊れた!中に入って地下に降りるぞ!ヘスティアはそこに居る!行くぞ!!」

 

「ええ!」

 

「行きましょう!」

 

「一気に走るわよ!」

 

 

結界が壊れたことで、神殿の中に入れる。

 

一刻も早くヘスティアの所に行き、儀式をなんとしても阻止する。当然中も塔と同じく、迷路となっていた

 

もちろん、俺が居るためヘスティアの通路は完全に見抜いている。ヘスティアが作った迷路でも、俺の眼なら見抜ける

 

しかし

 

 

『ガアアアアアアアア!!!』

 

 

「炎獣!?まさか神殿内まで!?」

 

「余計なことをしてくれるわね!あの子!」

 

 

「下がれ!俺がやる!!」

 

「私も戦います!!」

 

 

ヘスティアは神殿内まで炎獣を用意していた

 

そうまでして儀式を邪魔されたくはなかったのか、これは自分のしでかしたことだから邪魔されるわけにはいかないと放った

 

そんな責任、俺はどうでもいいと炎獣すら斬る。レアも共に戦うと、まだ体に残っている炎を放つ

 

 

「無理に倒す必要はないレア!俺たちがヘスティアの所に着けばいい!そこまで行けば炎獣はそこまで来れない!」

 

「どうしてですか!?」

 

「今ここを走って気づいたんだが、予想以上にヘスティアが力を溜めている!急いで祭壇まで行けばその力の絶大差に炎獣は近づくことはできない!」

 

「っ!?まさか!?」

 

「ええ!あの子!もう一時間もない程儀式が完成に近づいているわ!」

 

「もう30分くらいしかない!塔の制圧で力は溜まってないはずだが!もうそれを十分に仕上げている!」

 

「炎獣はヘスティアの力に怯えて奥までは入れない!だから退けるだけでいい!行くぞレア!」

 

「はい!」

 

 

塔に力を溜めていたはずだが、予想よりも早く、その補給がもう街中で戦っている間に済んでいたようで、気配に敏感な俺でも気づけなかった

 

おそらく悟らせないためにも、あの結界を貼った日がいないと、何があっても俺たちに邪魔されないようしたいのがわかった

 

炎獣は無理に倒し切る必要はない。奥に進めば炎獣は追ってこれない、むしろ引き返している。間違いなく奥に進むのを怖がっている。確かに奥に進めば進むほど、彼女の力がより感じやすくなる

 

おかげで場所もハッキリできて

 

 

「あそこだ!!あの入り口の先に居るぞ!!」

 

 

「間違いありません!門が少し変わっていますが、間違いなく祭壇の入り口です!!」

 

「ヘスティア!」

 

「今行くぞ!」

 

 

やっと彼女が居るところまで辿り着いた

 

もう目の前にある古い門を潜れば彼女の姿が見える。なぜか少し彼女と離れただけで、こうもやっと彼女の所にたどり着けた時はなぜか今までが彼女の存在が遠い感じをした

 

そんな遠い存在の彼女をやっと出会えると思うと、この三日間は、長い道のりだったとも思えた

 

 

 

そして

 

 

今度こそ、彼女の計画を壊してやると

 

 

門を潜った先は

 

 

「これは・・・・」

 

「前と全然違う!?」

 

「これって・・・・祭壇って言うより」

 

 

「ああ・・・・・まるで『地獄』だな」

 

 

門を潜った先は

 

 

地割れした地面に、中央の大きな穴が一つ。その穴の底には、入ったら骨も残さず焼け散る溶岩。その溶岩から大きな炎をが吹き荒れている

 

祭壇の面影はない。これでは地の底から炎が溢れ欠けている

 

 

『地獄そのもの』

 

 

レアが前とは違うと言った。なら、もはや原初の炎は止められない状態になっているのだろう。そうでなければ、こんな地獄のような光景は見ない。今こうなっているのなら、ヘスティアももう抑え込むのは限界に近い

 

でも、彼女の姿が見えない

 

おそらくは

 

 

「アルテミス、アフロディーテ。ヘスティアの姿が見えないが・・・・・・・まさか」

 

 

「ええ、そのまさかよ」

 

 

「ヘスティアは・・・・・あの『炎の中』だ」

 

 

「ああ、やっぱりあの中か」

 

「あそこに・・・ヘスティア様が・・てことはこの吹き出す炎は・・・」

 

「ああ、原初の炎の『本体』だ。だが、この大きさ。もう限界だろうな」

 

 

目の前の地の底から吹き溢れた大きな炎が、原初の炎の本体

 

ヘスティアはその大きな炎の中に居る。あまりに炎が吹き溢れているため、炎しか見えず未だ彼女の姿は見えない。しかし、俺もアフロディーテもアルテミスも、ヘスティアが神の力を剥き出しているのを感じ取れているため、彼女が目の前の大炎の中に居るのは気づいていた

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

「やはりここまで来たか」

 

 

 

「「「っ!」」」

 

「来ないとでも思ったか?ヘスティア。それともまだウェスタを名乗るか?俺たちのことをよく知る君が俺たちが何をしてくるかわからないとでも?・・・・」

 

 

 

「いや、わかるとも。こうなることも、お前の言う・・・・・『運命』」

 

 

「炎が!?・・・・・割れた!?」

 

「ようやく姿を現したわね」

 

「本来の自分の力を使って、姿が変貌をしているな」

 

 

「アルテミス、アフロディーテも来たのか。なぜ邪魔をする?これはお前たちに関係のないことだ」

 

 

「そうかもね。でも無関係でもないじゃない。私たち」

 

「ああ、私はお前の親友だ。あの時私を救ってくれたように、今度は私がお前を助ける番だ」

 

 

ヘスティアの声が聞こえ、ここを飛ばされた三日前と同じ、変な口調をしていた

 

そしてその声がした途端、炎が二つに割れ、彼女の姿が露わになった

 

三日前と同じで、服装も髪色も変わったまま、聖火の女神ではなく、祭壇の女神として

 

 

ウェスタとして降臨した

 

 

しかし

 

 

「ジーク。なぜお前は人間の姿に戻っている?」

 

 

「なに、俺の家族が助けてくれただけだ。だから人間に戻っただけだ」

 

 

「私の恩恵じゃないものが混じっている。一体何者だ?誰の恩恵を受けているんだ?」

 

 

「なんだわからないのか?それくらいもわからないとは、あともう少しで半年くらいになるのに、君のことだから簡単にわかると思ったが、こうなると、ますます君らしさがないな。そう考えるなら。君はウェスタである事は確信できるな」

 

 

ヘスティアが俺の顔を見て、少しだけ驚いている。

 

それは俺の左半分の顔がファフニールの皮膚に変わっていないからだ。あれだけ奴に体を侵食されたと言うのに、今では左腕も含めて元に戻っている

 

なぜ人間に戻っているのか、そして今の俺の背中にヘスティアだけでなく別の主神の恩恵を受けているのも気づいている。しかし、それが誰なのかわからない

 

俺の家族が助けてくれたと言えば、彼女ならすぐにわかると言うのに、それがわかっていないのなら、今の彼女はヘスティアではなく、ウェスタであることは明確にわかる

 

 

「ヘスティア。こんな無意味なことを続けるのか?無駄になるのがまだわからないのか?」

 

 

「無意味?何を言う?これは神においても正しき事。そう思うだろう?アルテミス?アフロディーテ?」

 

 

「そうかしら?私もジークの言う通り無駄だと思うけど?アルテミスは?」

 

「お前の言うことを認めるのは癪だが、同感だ。ヘスティア。お前のやることは無駄だ」

 

 

「何を・・・・なぜお前たちまでも私の邪魔を」

 

 

「お二人だけではありません!私もです!!」

 

 

「オリンピアの巫女・・・何故。お前まで、オリンピアを救うためだと、なぜわからない」

 

 

「ヘスティア様。私もジークさんの話を聞くまではわかってませんでした。これが無駄なことだと。私たちのしたことは苦しみを更に増やすことだった。でも今ならやり直せます!どうか!私と同じ過ちを歩まないでください!」

 

 

「不要・・・・そんなものが過ちであるはずがない。これは下界を救うためだ。これは英雄も神も関係のない。私が決着たる物語だ」

 

 

「そうか・・・・・それがお前の望みか」

 

 

アフロディーテ。アルテミス。そしてレアまでも、ヘスティアを止めようと説得を試みる

 

しかし

 

 

それでも彼女は折れない

 

 

何がなんでも原初の炎を浄化するために、自分の命を使うと曲げないらしい、何がそこまで彼女が頑固になるのか全くもって彼女のすることは意味不明だ。出会った頃からおかしな女なのは理解している。

 

でも、今のヘスティアがそれを選択するなら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わからせるしかないな。『俺たち人間』を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘスティア。君は何があってもこの愚行を実行すると言うのだな?」

 

 

「諄い。何度言われても私はこの不祥の炎を私が調律する」

 

 

「そうか、じゃあどうなってもいいな?」

 

 

「何をだ?」

 

 

「君がそれを行うと言うのなら、この先何をしても構わんな?」

 

 

「だから何を言っている?」

 

 

「言ったはずだぞ。君がもしも約束を破ったら何をしても俺たちは自由にやらせて貰うと言ったずだ。それともそんな言葉も忘れたか?」

 

 

「っ!?」

 

 

そう、三日前彼女に約束した

 

もしもヘスティアがよからぬことをした場合、その場合俺たちが単独行動をさせて貰うと、この神殿に入る前に言った。三日前ベルと共にここに・・・・祭壇に入る前に

 

 

『もしヘスティアが自己犠牲な真似をした場合、俺たちは無理矢理でも君のする事に邪魔をする。無論その時の主神命令は聞かない。例え俺たちに無力化しようとも』

 

 

と、確かに彼女に言った。その約束を。その言葉を言われて思い出したようだ

 

だから

 

この先はどうなるか、予想も着かないだろうな

 

 

「君は俺たちを騙した。覚悟はできているんだろうな?」

 

 

「だから・・・何をすると言っている!?」

 

 

「もしも君が約束を破ったら、俺たちはとんでもないことをすると決めていた」

 

 

「とんでもない事だと?」

 

 

そう言って、俺はオリオンの弓をまず地面に刺して置く。そして次に

 

グラムを天へと掲げる

 

 

「その魔剣で・・・・何を?私の力を壊すのか?」

 

 

「いいや。それよりも恐ろしい事だ」

 

 

「それよりも?・・・・・一体何を?」

 

 

これは絶対に誰も予想を着かない

 

こんな馬鹿げたことをする奴は絶対に狂った人間にしかできない行為。しかし、これが人間の覚悟。神にも絶対に想像のつかない事

 

それは

 

 

魔剣グラムをいきなり上に上げたかと思いきや、それを地面の方へと持ち替えた

 

その下に向けられた

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グシャ!!!!!!

 

 

 

 

「・・・・・・は?」

 

 

 

「え!?」

 

「ジーク!?」

 

「何をしているの!?」

 

 

「ぐふ!?・・・・がはあ!?」

 

 

俺のやった行動に、ヘスティアだけでなく、俺の隣に居たアフロディーテやアルテミスだけでなく、レアも驚いた

 

誰もが驚くだろう。こんな事を

 

 

俺がやったことは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔剣グラムを自分の腹に刺した

 

 

所謂『切腹』である

 

 

 

 

 

そんな事をしたから、腹から大量の出血が流れ、口は血反吐を垂らした

 

 

「お前・・・・ジーク・・・何をしている?」

 

 

「見て・・わかるだろう?・・・切腹だ・・・・主神が死ぬものなら・・・俺たちも・・・一緒に死ぬ・・・それが俺の覚悟だ」

 

 

「一緒に・・死ぬだと!?」

 

 

 

 

俺がヘスティアに覚悟をしろと言ったのは

 

『自殺』である

 

主神ただ一人が死ぬのなら、その家族をも心中をする。家族想いとしては当然だ。こんなふざけた事をする人間なんてしないが、生憎俺たちはまともじゃない。少なくとも家族のためになんでもする

 

それが俺たちだと

 

ヘスティアはわかっていたはずなのに、理解できてなかったようだ

 

 

「そ、そんなことをしても無駄だぞ。そんな事をしても、我はこれを止めるつもりはないぞ?」

 

 

「動揺が・・・口に出ているぞ。こんなことをするはずがないとでも思ったか?君が一番わかっているのに、人間の覚悟を侮ったな」

 

「ジーク!?いくらなんでも!」

 

「そんな事をしてでも止める気!?」

 

「出血が酷い!ジークさん!それ以上続けると本当に・・・・」

 

 

「死ぬ覚悟がなくては、あいつは止まらんだろう。死を覚悟をする者を止めるには、死を共にする方が良い。救いたい家族が逆に死ぬ羽目になるのだからな、止めるには十分だ」

 

 

俺は無謀ながら自殺を謀った

 

やっていることは人間の中ではまともではない。しかし、犠牲をしてでも俺たちを守ろうとしてこのようなことを続けるのであれば、逆に俺たちは死んでやると 彼女のすることを無駄にしようとする

 

自己犠牲を止めるなら十分な止め方だ

 

もちろん、俺の背中までグラムは貫いている。まだ俺の中では彼女の恩恵は繋がっている。

 

嘘ではないと言うことは、ハッキリしているはずだと、ヘスティアは気づいている

 

 

「ヘスティア・・・俺は本気だ・・・お前がこれを続けるなら俺はこのまま死を選ぶ・・・お前の自己犠牲は何がなんでも・・・・認めない・・・さあ・・・どうする?・・・俺のやる事が冗談だと思うなら・・・・それを続けて見せろ」

 

「ヘスティア!いい加減やめなさい!これを見ればわかるでしょ!?ジークは本気よ!!」

 

「本当にお前が死んで下界を救ったとしても!ジークも心中をする気だぞ!」

 

「ヘスティア様!私たちがこんな事をさせた立場はありませんが、彼は本当にあなたのために死ぬつもりです!今すぐおやめください!」

 

 

「っ・・・・・一人の犠牲如きで、我の計画を・・・・・やめるとでも思うか?」

 

 

俺のやることが冗談じゃないとわかっていても、ヘスティアは頑固にもやめたりしない。口には動揺がある迷いの言葉だが、どう聞いてもヘスティアは自分の責任を果たすために

 

自分の眷属一人が自殺をしても、親でありながら止めなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし

 

 

『そんなことは、想定済み』

 

 

だから、更にとんでもないことを俺は話す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、じゃあ『ベル達』も一緒に死ぬが、構わんな?」

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

 

 

 

 

俺は末恐ろしい事を話す

 

このまま俺が自殺を続ければ、ベル達も死ぬと、ヘスティア・ファミリアの眷属全員が死ぬと、俺は彼女に脅しを掛けた

 

流石にベル達も死ぬと言う言葉を聞いて、神らしい振る舞いをしていたヘスティアが、とうとう動揺した顔を見せた。顔を見開いたまま、俺に説明を求める

 

 

「ど、どういうことだ?」

 

 

「俺の右腕に付いているこの赤い腕輪・・・実は俺の特製のマジックアイテムだ・・・・名前は『ハート・リング』・・・今俺が身に付けているこの赤い腕輪と・・・もう五つの青い腕輪がある・・・その青い腕輪を身につけた者は、俺の受けたダメージを共に味わう事になる危険なマジックアイテムだ」

 

 

「受けたダメージを共に味わう・・・・・・・まさか!?」

 

 

 

「ああ・・その通りだ・・・・ベル達も・・今・・・この腕輪の青いのを身に付けている・・・・俺と同じ『腹に大きな傷穴』がある」

 

 

俺の作ったマジックアイテム。ハート・リングは全て六つある

 

その内の一つは赤い腕輪。その使用者が受けたダメージは、残りの青い腕輪を身に付けた者にも同じダメージが入る。つまりは俺が腕を斬り落とせば、他の青い腕輪をした者も腕は何もしなくても勝手に腕が斬れるなど、心中をするためのマジックアイテムである

 

先ほど、ベル達も死ぬと伝えた

 

つまり

 

 

 

「恩恵を確かめてみろ。まだ繋がっているなら、わかるはずだ」

 

 

「っ・・・・く!?」

 

 

 

ヘスティアは儀式を進行を一度やめ、自分の頭に力を入れて、今自分の恩恵に繋がる俺以外の眷属が今どうなっているのか

 

確かめるために、感知へと集中する

 

 

 

 

 

 

 

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