ニーベルンゲン・シックザール〜竜殺しの英雄譚〜   作:ソール

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これがオリンピアの真の力

 

ベルとエピメテウスが激突する中

 

イリアは別の場所に移動して、その戦いを遠くで見ていた。それは空中祭園の外縁部。眼下で戦うベル達だけでなく、オリンピアの全体をも一望できるこの場所なら誰にも邪魔されずに、彼らの戦いを見届ける

 

 

「まだ戦い続けている、これだけの現実を知っても、狂おしい戦乱。この戦い。本当にどうなるの。どんな結末になるの」

 

 

ベルとエピメテウスの戦いを見て、どんな結末になるのか、彼女の眼においてもどんなものになるかわからない

 

ベルも彼に敵うだけの力を手にした。エピメテウスは今でも力を増している。それでもどちらも崩れない。お互い攻めは受け止め、攻めは受け止め、どちらも引くことなく刃を混じり合う

 

お互い譲れないものがある

 

ベルは仲間や友人のためにオリンピアを守る。エピメテウスは過去に共に戦ってくれた仲間の名を残せず、仲間の報いを晴らすためにオリンピアだけでなく世界をも壊して復讐する

 

こんな激闘はおそらく彼女でも見たことがない

 

なぜこうも、二人は戦うのだろうと思う。これをしてなにが意味あるのか、今の彼女には思えない

 

なぜそう思うのか

 

 

 

 

 

それは

 

 

 

 

 

 

「やっぱり君が・・・・・『プロメテウス』だったか」

 

 

 

 

 

「っ!?・・・・ヘルメス様!?」

 

 

「様呼ばわりする必要はないよ、同じ『神』だ。人間の振りをするのはそろそろやめようか」

 

 

突然後ろからヘルメスが現れた。そして彼の言葉からハッキリと言った

 

 

イリアのことを『プロメテウス』と呼んだ

 

 

商業神が躊躇う事なくハッキリとその言葉を告げる。何を根拠にヘルメスはその名前を出すのか知らないが、これは間違いのない言葉だった

 

「な、何を言っているのですか?ヘルメス様?」

 

「もう隠す必要はないだろうプロメテウス。君が神であることは、この時点で明白なんだから」

 

「何を理由に言っているのですか?私はプロメテウスの眷属で・・・・」

 

「神であることを隠すために、ステイタスを自分で刻んでいるんだろ?ルールとしては神が自分に恩恵を掛けるのはルール違反じゃない。バレないためにワザと自分でやった」

 

「っ!?」

 

「アポロンもどうせ気づいている。いや・・・へファイストスやアフロディーテやアルテミスも気づいている。言っておくけどキュロスがプロメテウスだと言うなら、それは違う。あの神はオリンピアを心配していたただの老神に過ぎない」

 

「何を・・・そこまで・・・」

 

「エピメテウスは英雄の憎悪に縛られてしまった。しかし君は彼の味方になろうとはしなかった。ベル君の味方を取った。あの時の貴方はまるで・・・・・『子供を心配する神』だった。君は人間らしくなかったよ。ベル君に恋をした君は『人間』らしくないよ」

 

「・・・・・・・」

 

 

「だから言うよ。もう姿を現せプロメテウス。それが君の名前だ。何を隠しても俺はもう見抜いている」

 

 

ヘルメスは彼女の全ての行動を明白の推理した

 

確かに、他の人間であるなら、絶対にそんなことはないだろうと。誰一人想像が付かないだろう。しかし、ヘルメスの推理からすれば明白な証拠にもなる話。イリアがここまでの行動は流石に巫女としての働きではない。そしてベルに恋をする彼女の姿が、人間が人間に恋をする姿・・・・ではなく、女神が人間にする姿だった。この千年ヘルメスは何度も女神が人間に恋をする光景を何度も見た。だからわかった。彼女が人間ではなく『女神』だと

 

それでもイリアはいろんな理由で、正体を隠すか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、もう私は明かさねばならいと言うのだな」

 

 

 

 

 

 

彼女は前髪を上に上げて、正体を明かした。彼女はイリアと言う名前ではない

 

 

先見の神『プロメテウス』

 

 

声のトーンを戻し、人間らしい顔から女神らしい顔を晒した。性格も喋り方も変えて、今ヘルメスが目の前に居た少女ではなく、女神プロメテウスである

 

 

「まさか・・・こうも簡単に見抜かれるとはな、お前で二人目だぞ。天の同胞」

 

「最初はジーク君か、どうだった?彼は僕たちにとって恐ろしいだろう?」

 

「脅威だ。あのクソガキは私を『出会った時』から見抜いていた。あれが半神だと、私も一度は耳を疑ったぞ。あのガキの英雄譚を読んだ時は・・・」

 

「ジーク君は俺たちを唯一退ける子供だよ。彼の能力は神を見抜く。俺はジーク君に君のことについては教えてくれなかったけど、プロメテウスがどこに居るかは多分とっくに見抜いてたんだろうなとは思った。だけど、それより後に、ベル君が君の正体を気付けるやり取りをしてくれたことで、君の正体を見抜くことができた。それが俺が君の正体を見抜いた方法だよ」

 

「そうか、用心深く行動をしていたつもりが、まさかの私の本性を露わにする行動にしかならなかったのか」

 

「生娘のように演じても、流石にベル君に想いを告げる姿は、流石に『女神』らしかったよ。だから今でも君はベル君の側に居る。違うかい?」

 

「そうだな、私は・・・・女神らしかった。そんな立場はないと言うのに、こうなったのは全て私の責任だ。私はヘスティアの炎を落とすべきではなかった。あの時、私は山頂に磔にされて、鷲に腸を食われた方がマシだったかもしれない。それをあの好々爺のせいで、私はこのようなことをすることになったよ」

 

「トールはその時見ていたみたいだけど、やっぱりゼウスは君を一眼見て見逃したようだね。女の子に暴力なんてできないからね、彼は。でも、ゼウスの『英雄主義』からすれば、君はとても殺意を覚えることだろうけど、今では彼のしたことは正しいとハッキリ言えるだろうね」

 

「ああ、あの時の奴の行動は正しかった。私は先を見据え過ぎたんだ。そして強硬手段に出たはいいが、未来に禍根を残し過ぎてしまい、今を救うことができなかった」

 

「だから止める人間と神を探していた。あれから三千年も。そして見つけた。あの原初の炎の所有者であるヘスティアと、ジーク君とベル君だ。でも・・・・・『こうなる』とは思わなかっただろう。特にジーク君とベル君は」

 

「あの二人の子供は、私の予想遥かに超えることを言うばかりで、しかもここまでの命を張ってまで戦う覚悟。ここまで盤面を覆すようなことをする子供は長年見てきたが、おそらくここまでできる子供は今までにおいても誰もいない。まったく、私の計画を簡単に潰す上に言うことを聞かないクソガキだよ」

 

「でも君はジーク君はともかく、ベル君の味方を取ったんだろう。だから今も邪魔をせずに見守っている。違うかい?」

 

「・・・・・・・」

 

「だんまりかい。まあその方が良いだろうけど、ただこれだけは聞かせてくれないか?」

 

「なんだ?」

 

「計画はもう崩壊した。だけど、戦いはまだ続いている。もうやめることもできない。その上で、君はベル君の味方を取った。彼に何を望む?」

 

 

 

「・・・・・・・エピメテウスを止めてくれ。ベル」

 

 

 

プロメテウスの経緯はこんなものだった

 

俺もヘスティアも流石にここまでは聞いてはいない。今この女神の全てを知ったのはヘルメスのみ、改めて聞くと、後悔ばかりの話だった。もっと上手く計画を練ればこうなったりはしないと言う。しかし、そうもいかないのが人生であり、この世界だ。

 

原初の炎を落とすのは間違い。それで救われもした。間違いだとは今は難しいだろう。原初の炎を扱う人間の精神で盤面は変わる。言うなら扱う人間の心に問題があった。だからゼウスは原初の炎を落とすべきではないと言う。しかし、今その炎を良きことに使う者も居る。決して希望は消えていないのだと。今プロメテウスはその可能性が見えた

 

それがベルだと。そんな良き心を持つベルの味方を取った。彼に願うこともあるから

 

それはただ一つ

 

 

 

 

 

穢れた炎で悪に落ちたエピメテウスを

 

 

ベルの希望の炎で止めてくれ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおおおおお!!」

 

 

「ぐううううう!?」

 

 

ベルは、引き続き立ち上がってエピメテウスを止めようと激戦を繰り広げる。

 

ベルもかなりの傷を負っていると言うのに、ベルはそれでもエピメテウスを止めるまで未だに諦めていない。だがまだベルがエピメテウスを倒しきれないのも事実。奴は穢れた炎のほとんどを体に宿している。そのおかげで三千年も老化せずに生きている。しかし、もうそこまで長くは続かない。その証拠に

 

 

「ファイア・ボルト!」

 

 

「ぐ!小僧の中に火の加護、徐々に俺の中にある炎を奪っていく!?あの神器の能力か!?それだけではない!?なぜその吸った炎を更に発揮する!?あれは神器ではないのか!?」

 

 

「うおおおおおお!」

 

 

エピメテウスの炎を全てベルは受けて、その受けた炎を自分の力へと譲渡している。これは神器としての機能、そしてその吸った炎を増加して放つことができる。これはヴェルフの血が含まれたクロッゾの魔剣であるからこその力、この戦いはもはや炎の力の奪い合い

 

エピメテウスは誰よりも天の炎を使役し、強大な加護をその身に順応した。今彼は祭壇とベルの持つ『アエデス・エルピス』神器魔剣。彼を止める手段はもうベルは手にしている

 

あとは

 

 

どちらかが意思が超えるかで決まる

 

 

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」

 

 

「ぐは!・・・なぜだ・・・なぜ・・俺は・・あの小僧よりも・・・なぜ・・・」

 

 

エピメテウスに余裕がなくなってきた

 

まさかここまで追い込まれるとは思いもしなかった。俺たちがここまで来てから、穢れた炎を超える力など、この世には無いと彼は思っていた。しかし、まさか自分に対抗できる武器を手にして、あまりの追い込まれように、今起きていることが幻と思得てしまう程、古代英雄であるながらあり得ないと現実逃避し始める

 

なぜ穢れた炎を持つ自分がここまで敗北するのか、理解できない

 

 

 

その答えを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺とヘスティアが教える

 

 

「それはお前の意思よりも、ベルの意思の方が遥かに上だからだ」

 

「もう君は気持ちで負けているんだ。エピメテウスくん」

 

 

「っ!?ジーク・フリード!?神ウェスタ!?」

 

 

「ジークさん!?神様!?」

 

『主!ヘスティア様!』

 

「ベル。よくここまで追い込んだ。そしてヘスティアを無事に助けたぞ」

 

「ごめん心配かけて、ベル君」

 

 

「よかった・・・やっぱり上手くやれていたんだ」

 

 

ここで俺とヘスティアたちが地下の祭壇から、ここ神殿前まで戻ってきた。ベルもヘスティアが儀式をやめて、自分達のところに戻ってくるのを歓喜する

 

もちろん俺もヘスティアもこの光景には驚かない。やはりベルがエピメテウスをなんとか頑張って攻めているとわかっていたため、むしろエピメテウスがベルにやられて、今膝を地面に付けて疲労していく姿をしている光景になっていることが、もう俺とヘスティアには予想はできていた

 

ここまで何度も殺され掛けても、絶対に止め切るまでは絶対に諦めないと、ベルの根性を信じている俺とヘスティアは、こうなるとわかっていた

 

 

「まさか・・神ウェスタが儀式をやめるとは・・・そして・・・レア・・貴様・・・」

 

 

「エピメテウス様・・・いいえ・・・オリンピアの敵エピメテウス。私はもう道を誤るわけにはいかないのです。ここで貴方の野望は終わりにしてもらいます」

 

「あとは・・・あんただけよ。観念することね。あんたの穢れた炎もヘスティアが自由に浄化できる。だってそれは元々ヘスティアの炎だしね」

 

「これ以上は何をしても無駄だ。古代英雄エピメテウス。ヘスティアが戻った今、お前にもう勝ち目はない。その野望は諦めてもらう。原初の火を操るヘスティアの前では無力だぞ」

 

 

「お、おのれえええ!!!神々までも俺の邪魔をするかあああ!!」

 

 

俺とヘスティアの後ろから、レアとアフロディーテとアルテミスが現れる

 

エピメテウスはレアを裏切り者のような眼で睨むは、それはもはやお互い様であり、レアももう過ちを繰り返さないためにも、もう娘に恥じない母親に戻るために、エピメテウスを完全に敵として認識している

 

そしてアフロディーテとアルテミスの説明によれば、エピメテウスの体の中に穢れた炎はもちろん元はヘスティアの炎。ヘスティアが自由に浄化できるため、もはやエピメテウスはこれ以上炎を使えなくなる

 

これで古代英雄もこれまでとなる

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし

 

 

 

 

「これで終われるかああああああああ!!!」

 

 

 

 

「っ!?」

 

「っ!」

 

「「・・・・・・」」

 

「そうか・・・君は・・・」

 

「そうまで世界が憎いんだな・・・エピメテウス」

 

 

突然エピメテウスの体から、黒い炎のようなオーラがその場一帯に広がる

 

納得できなかった。これで終わりだなんて彼は絶対に認めなかった。この日までたくさんの計画を練ってきた。それが今ここで無駄に終わるなど、エピメテウスからすれば納得できない

 

今まで生きてきた功績が全て泥のように消えるなど、今までこの復讐のためにいろんな奴からも利用して、世界に自分と同じ痛みを与えるためにここまでしてきた。それが今この場で終わるなど、彼には受け入れたくないことだった。

 

 

「俺のこの憎しみをいつまでも心の奥底で沈めておけと言うのか!ここで終われるわけないだろう!お前達は裏切られたことがないのか!多くの者に軽蔑されたことがないのか!そんなことしかしない世界をなぜ守ろうとする!!」

 

 

「等々本性を出したか、エピメテウス」

 

「穢れた炎が、あのエピメテウス君の魂に反応をしている」

 

「・・・・・・・・・」

 

 

ベルに追い詰められたことで、もう正気を無くしたのか、やっと彼の心にある憎しみが露わになった

 

でも。俺としては別に驚く話ではない。今の彼の言うことは。なぜなら俺もかつてはこの憎しみを通った者だ。世界か誰かに晴らさねば憎しみも消えぬもの。かつての俺と同じ。英雄は見返りはないが、憎しみを齎すと誰よりも止められぬ恨みを持つ

 

今エピメテウスが本性を剥き出したことで、穢れた炎が、彼の負の感情に反応している

 

それによって

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!

 

 

 

「っ!?なに?地震!?」

 

「これは!・・・ヘスティア!」

 

「まずい!?あのエピメテウス君の憎悪が反応して・・・・」

 

 

突然、大きな地震は大地に鳴り響く

 

地震が起きる理由を、俺とヘスティアがすぐに

気づいた。エピメテウスが起こしているわけではなく、『何か』がエピメテウスに反応している。それはここ祭壇前の地下から、その地下から何かがコチラまでやってくる

 

その地震が段々と大きくなり、神殿の門から

 

 

 

ボオオオオオオオオ!!!

 

 

「っ!?」

 

「ち!」

 

「やっぱり!?」

 

 

「なに!?原初の炎がなぜ!?」

 

 

ヘスティアが抑えていた『原初の炎』が黒い炎になって地上に、中央祭壇の屋根を壊してまで膨れ現れる

 

しかも、俺が見るよりもドス黒い色になって現れた。なぜ祭壇の地下にあった原初の炎が勝手に地上に出てきたのか

 

 

「神様!どうなっているんですか!?」

 

「ヘスティア。原初の炎がここまで勝手に地上に出てくるとなると」

 

「ああ!!エピメテウス君の憎しみに反応して!原初の炎が穢れた炎を吸収しようと勝手にここまでやってきたみたいだ!エピメテウス君の憎しみを全て吸収している!?」

 

「奴の憎しみを吸収しているってことは・・・・まさか!!」

 

 

ヘスティアの説明が本当なら、原初の炎は人間の負を吸ってそれを力に変える能力がある。今エピメテウスの負の感情とその感情でできた穢れた炎を勝手に吸収している

 

原初の炎は人の記憶を探り、かつてその人物が相手にした敵に、記憶を通じてその敵に姿を変える能力がある

 

今、エピメテウスから吸収しているのなら、奴の記憶から

 

 

 

 

 

 

 

奴が大昔に倒した『暗黒のモンスター』に原初の炎が変貌する

 

 

 

『グオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

 

 

 

「な!?なに!?」

 

 

「黒いドラゴン!?」

 

「原初の炎が奴が昔倒した怪物に変わったか・・・・」

 

「まずい!エピメテウス君の負の感情を吸ったことで、原初の炎も世界を壊すべきだと!認識 を変えた!?」

 

「そんな!?」

 

「原初の炎も世界を壊すことが正しいと判断したのか」

 

「あのモンスターは!?」

 

「知っているのかレア?」

 

「あれは・・・大昔このオリンピアを滅ぼそうとした暗黒のモンスター・・・『パンドラ』です!」

 

「エピメテウスが英雄になったきっかけのモンスターか」

 

 

パンドラ

 

三千年前このオリンピアを滅ぼそうとして、エピメテウスがこいつを倒して英雄となったきっかけの竜、エピメテウスが初めて倒したモンスター

 

原初の炎はエピメテウスの憎しみが露わにしたことで穢れた炎が増加する。その増加した穢れた炎の力を吸い。更にエピメテウスが世界を憎む憎しみを吸ったことで、原初の炎も世界を壊そうと憎しみの化身となって怪物になった

 

 

「ふははは!!ここで原初の炎が俺の味方をしてくれるとは!そうだ!そのまま世界を壊せ!!」

 

 

エピメテウスは、予想外の出来事の味方介入に、高笑いをしてパンドラが暴れる姿を見上げる。まさかここでモンスター級の味方が入るなど、原初の炎ももはや人間に味方する気がないと、完全に人間を敵だと認識した

 

このままでは、まだエピメテウスにやられた味方が避難し切っていない上に、ここで大きく暴れては甚大な被害が世界に広がる。ここで止めねばならんと、俺が出ようとする

 

 

 

「っ!!」

 

「っ!レア!」

 

「私が止めます!ここは任せてください!」

 

 

「は!一人の巫女如きに何ができる!」

 

 

「それでも!絶対にここは私が抑えます!娘たちが暮らしたオリンピアを壊させるわけにはいきません!」

 

 

レアが先に初陣した

 

レアは母として娘が暮らしたオリンピアをこれ以上を壊されるわけにはいかないと、自身の炎でパンドラを抑えようと、両手をパンドラに向けて、両手から彼女の炎が放出し、パンドラの前に炎の壁が生まれる

 

エピメテウスがそんなことを一人ではできまいと、無駄だと笑う

 

しかし、それが正しく、その炎の壁が破れそうになる

 

 

『ガアアアアアアアアアア!!!』

 

 

「く!」

 

「まずい!レア君の力じゃあ足りない!」

 

「レア!俺がやる!お前は下がって・・・」

 

「やめてください!ここは私にお願いします!」

 

「っ!レアお前一人じゃあ・・・・」

 

 

「わかっています!それでも私にやらせてください!娘が育ったこの街を!例えもう街は滅んでいても、ここオリンピアを私が守りたいんです!」

 

 

「レア・・・・・・巫女・・いや・・母としてか」

 

 

俺がレアの加勢を入ろうとするが、レアが一人でやりたいと

 

ここオリンピアの住人として、自分の娘たちが育ったこの街を、母として守りたいのか、意地を見せて一人で守ろうとする

 

彼女も守りたいもののために、自分の力を使い、必死にパンドラを炎の壁で抑えようとする

 

意地で止めようにも流石に無理があると、俺の眼でもわかる。でも本人のやりたいようにさせたいため加勢はできない。けどこのままだと突破する。何か方法がないかと頭で考えるが

 

その時

 

 

『アア・・・』

『アア・・・』

 

 

「っ!あれは・・・・小さい炎人・・・まさか!レアの娘の・・・シアテとシオンか」

 

 

突然俺とレアの後ろに小さい二体の炎人を見つけた

 

敵かと思って一度グラムを握るが、敵意を感じず、そしてよく見れば他の炎人よりも小さい。まるで子供の炎人だった。それを見ただけで俺はわかった

 

 

間違いなくレアの娘、シアテとシオンだった

 

 

なぜか俺も炎人を見ただけで誰だか認識ができるようになった。おそらくはヘスティアの恩恵のおかげで認識できると思うのだが、なぜこんなところに居るかは知らないが、少なくともシオンとシアテはまだ炎人になっても、母が心配でここまで来たようだ

 

そして

 

俺はあの二人を見て、少しでもレアに力になれるかもしれないと、ここは『義姉』の力を頼る

 

 

「おい、聞こえるかヘル?」

 

『あら、まさかジークが私を頼る時が来るとはね、何かしら?』

 

「ヘル!?ジーク君一体何を!?」

 

「ヘル!?本当にジークの中から出てきた!?」

 

「本当にジークが殺したということか」

 

 

俺はここでヘルの力に頼る

 

俺の呼び声に待つ事なくヘルは俺の胸から霊体になって出てきた。いきなりヘルが出てきたことに、ヘスティアたちは驚き、アルテミスとアフロディーテが、ヘルメスが前に言い伝えており、まさか本当に俺がヘルを殺して霊体になって取りついていると言うことに驚くが、説明もすることなく、俺はヘルに要件を言う

 

 

「ヘル!あの炎人はもう死人だ!体から魂を取り出して霊体にして体を元に戻せないか?」

 

『あの燃えた人間?霊体にして人間の姿に戻すことくらいなら可能よ』

 

「あの炎は俺が吸い取る!やってくれ!」

 

『いいわ。義弟の頼みを聞いてあげる』

 

 

「ジーク君!?何をするつもり!?」

 

 

ヘルに頼んで、炎人の姿になっているシオンとシアテを霊体にして、一度だけ人の姿に戻す。

 

俺がレアにしてあげることはこのくらい。一度だけもう一度娘たちに会わせる、こんなタイミングではあるが、ヘルがアルカナムで霊体にするとは言っても、彼女たち二人に付いている炎が邪魔なため、そこは俺が吸い取る。俺が少しの間彼女たち二人の炎を吸い取れば、彼女たち二人の体から魂を取り出し、霊体化できるため、その間は俺が二人の体を炎を吸い取って抑える

 

俺は二人に近づいて、両手で二人を掴む

 

 

「よし!今だ!」

 

『グニパヘリル!!』

 

 

俺が二人の首を掴んで、地面に叩きつける。

 

その間にヘルが二人に指で触れてアルカナムを唱えた。そして炎人の胸から二人の人間の姿の霊体が出てくる

 

 

「シオン!シアテ!」

 

 

「あ・・・あれ?私たち?」

 

「人間の姿に戻っている?」

 

 

『成功よ!ジーク!』

 

「よし、シオン!シアテ!母の所へ行け!今なら自由に動ける!行け!」

 

 

「なんかよくわかんないけど、うん!行こう!シアテ!」

 

「うん!」

 

 

「まさか!ヘルのアルカナムで体から魂だけを抜いて霊体化させたの!?」

 

 

俺がレアにできることは、少しでも娘との時間を作ってあげる事

 

今だけなら、二人を霊体化させれば、炎で焼かれた体にとらわれる事なく自由に動ける。俺が二人の体を抑えていれば二人は自由に動ける。自由に動ける二人は、やっと燃える体から解放されて、母の元へ行く

 

そして

 

 

「「お母さん!!」」

 

「っ!?シオン!シアテ!どうして!?」

 

「二人を霊体化させた!今なら自由に動けるようにした!これが俺が君にできることだ!」

 

 

シオンとシアテは、炎の壁を作っている母親の背中を抱きしめる

 

霊体化されても多少の感触もヘルが作らせたため、問題なく触れることはできる。今しかないが、娘のために戦う母のために、今だけ娘の温もりを感じさせる。娘の愛を今だけ俺とヘルが作った

 

そして二人に抱かれるレアは

 

 

「ごめんね!シオン!シアテ!お母さんがもっとしっかりしていれば、こんなことには!」

 

「ううん。お母さん。私とシアテはいつもお母さんが心配だった。笑ってほしいの!」

「私たちはいつもお母さんと一緒だよ!いつまでもずっと!」

「だから泣かないで!私とシアテはずっと幸せだよ!」

「だから笑って!私たちのためなら!」

 

 

「っ・・・・・・・・・・」

 

 

「っ!?レア君の体から炎が更に噴き出した!!」

 

 

レアは、娘たち二人から最高の愛を受け取る

 

それを聞いたレアが、更に自分の中にある炎を強くする。やっと娘たちが母に愛を伝えた。その言葉を聞いた途端、愛がやっと届いたのか、レアがもう臆することのない炎を灯す

 

 

「ジークさん。貴方は言いましたね?母親として恥じない生き方をするべきだと?」

 

「ああ、言ったとも。その答えを聞かせてくれ!」

 

「はい!私は・・・」

 

 

レアは俺に母として恥ずかしくない生き方をするべきだと助言をしたことに。今やっとその答えがやってくる

 

そして彼女が決めた、これからの生き方は

 

 

 

 

「娘に応援されて!!頑張らない母親は居ない!私は娘のために命を賭ける!!!」

 

 

 

 

そう言って、更にレアは炎を強くして、壁だけでなく結界を作ってパンドラを閉じ込める。今自分の体にある炎全てを使い出す

 

 

『グオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

 

 

「すごい!パンドラを炎の結界で閉じ込めた!でも!」

 

「レア!それ以上使えばお前の中にある天の炎が無くなる!その覚悟でか?」

 

 

「はい!!私は何がなんでも絶対にこの炎の竜を抑えます!絶対にこの街は壊させない!!」

 

「「お母さん頑張れ!!」」

 

「うおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

「すごいわこの娘!」

 

「本当にあの子たちのために、炎を全部使い切る気だ」

 

 

レアは娘たちに応援されて、自分の中にある炎を全て使い切ってまでパンドラを炎の結界に閉じ込める。

 

パンドラをこれ以上オリンピアで暴れさせないと、結界で閉じ込める。本当に娘のために全てを捧げる

 

 

「おのれレア!余計な真似を・・・っ!?」

 

 

「レアさんの邪魔はさせない!」

 

「レアの邪魔をさせるな!ベル!エピメテウスを止めろ!」

 

「はい!」

 

 

「おのれええええ!小僧!!!」

 

 

エピメテウスがパンドラを閉じ込める結界を壊そうと、レアを殺そうとするが、そうはさせないとベルがエピメテウスを襲う

 

これでなんとかパンドラはレアが抑えてくれる。だが

 

 

『ガア!!ガア!』

 

 

「く!」

「「お母さん!!」」

 

「ち!レアの結界を暴れて壊す気か!」

 

「まずい!いくらレア君の炎でも結界を維持できない!」

 

 

パンドラも抗うことを覚えているらしく

 

体当たりして暴れたりして、レアの結界を壊そうとする。そこまでされると、流石に一人で作る結界を維持できなくなる。

 

誰かもう二人くらい結界を維持して欲しいと思っていると

 

その時

 

 

 

「「レア様!!私たちも加勢します!!」」

 

「「「「「「巫女長!!」」」」」

 

「巫女長!我々もまだ終わっていません!戦います!!」

 

「「「「「オリンピアのために!!」」」」」

 

 

「っ!ミヌキア!アエミリア!皆さんも!」

 

「他の巫女たちか!戦士団も!」

 

 

なんと、ここで塔の敵だった巫女達や戦士団が味方となって加勢にやってくる。

 

巫女長であるレア達に任せず、皆オリンピアのために何をすべきかを気付いたらしく、自分達が本来守らなくてはならないもののために、そして先ほどエピメテウスにやられた戦士団も再び立ち上がって、巫女、戦士のオリンピアの勢力達が一斉にレアの加勢に入る

 

 

「ガルシア!アルテアとリアのために守りましょう!このオリンピアを!」

 

「ああ!俺の炎を全部使ってでもこの怪物を抑える!」

 

「アエロア。見ててね。お姉ちゃんはオリンピアを守るために、今全力を出すから!」

 

「戦士団は剣に炎を灯せ!壁に刺して結界を維持せよ!」

 

「「「「「「おう!!」」」」」」

 

「私たちはレア様と同じ結界を張ります!全部の炎を使ってでもこの怪物を抑えましょう!!」

 

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

「行くぞ!!」

 

「みんなで囲め!!」

 

 

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」

 

 

「すごい!戦士団と巫女達が手を取り合っている!」

 

「これならの炎の竜も抑えられる!!」

 

 

オリンピアの戦士と巫女達が力を合わせて、レアに続いてパンドラを炎の結界の強度を上げて抑える

 

これならレア一人に任せることなく、皆で力を合わせてオリンピアを守れる

 

そして、守りたいのはこの者達ではない

 

 

「くそ、俺たちも何かできることは・・」

「ここでなんて終われねえよ」

「俺たちオリンピアのために何かしてえ」

 

 

「ほう、お前達市民も何かオリンピアのために何かしたいわけか」

 

 

それはオリンピアの難民達

 

巫女や戦士団だけで任せるわけにはいかず、オリンピア人として、この街のために戦いたいと、先ほどエピメテウスの攻撃で負傷したにも関わらずまだ戦おうと立ち上がる

 

俺はその戦意を讃えて、力を貸す

 

 

「ならこれを引っ張れ!グレイプニル!!」

 

 

俺は一度炎人から手を放し、パンドラボックスからグレイプニルを出して、地面にグレイプニルを投げると、地面を通してグレイプニルはパンドラの体を縛り付ける

 

 

『ガアアアア!!』

 

 

「パンドラが鎖に縛られている!?」

 

「この二つを引っ張れ!少しでもあの炎の竜の動きを封じるんだ!」

 

 

「これだな!!よし!!みんなで引っ張れ!俺たちオリンピア市民の底力を見せる時だ!!」

 

「「「「「「うおおおおお!!!」」」」」」

 

 

「これならパンドラの動きを止められる!」

 

 

オリンピアの市民達が、俺が出したパンドラを縛るグレイプニルの二つを引っ張って、少しでもパンドラの身動きを拘束する

 

これでしばらくは奴の動きを止められる

 

 

「くそ!ここで終われねえ!俺たちも行くぞ!リリスケ!」

 

「はい!」

 

「春姫殿!自分達も!」

 

「はい!あのパンドラを止めましょう!」

 

『みんなで止めましょう!』

 

 

「ヴェルフ!リリルカ!」

 

「命君!春姫君!ウンディーネさん!」

 

 

ヴェルフ達も市民達に負けられないと、彼らが引っ張る俺のグレイプニルを一緒に引っ張ってパンドラを抑える

 

これだけ抑えれば、しばらくはパンドラも身動きが取れることなく時間稼ぎができる。いつまでも抑えられるわけではない。こいつを倒すには俺とベルが必要だが、今のベルは

 

 

「うおおおお!!」

 

 

「く!今になってあの愚民どもは、オリンピアのために戦おうと言うのか!?」

 

 

エピメテウスを止めようと必死にも彼を追い込んでいる。今のエピメテウスはあまりに戦いに集中しきれていない

 

ベルに追い込まれている今、オリンピアの巫女や戦士団、市民までも全員で力を合わせてパンドラを抑える姿に、あり得ないと現実を受け入れない

 

自分が英雄になって失敗した時は誰もが非難をしてきた。軽蔑も暴言もたくさんあった。そんなことをしてきた連中が、オリンピアのために命を賭けてまで戦う姿が信じられないと、今の彼は人の可能性を信じられずに居る

 

今現実で皆が力を合わせて、守りたいもののために必死に戦っていると言うのに

 

 

「はあ!!せああ!!」

 

 

「っ!く!なぜだ・・・なぜ・・・」

 

 

ベルに追い込まれる内に、エピメテウスはどんどん周囲にも過去にも、何もかもが信じられない疑いを覚えた

 

 

 

いつ自分は周囲を疑うようになったのかと、いつ英雄と言う言葉を嫌うようになったのかと、過去を振り返った。

 

 

 

 

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