大英雄エピメテウス
それは
偶然英雄となった『ただの神官』だった
三千年前、モンスターに苦しめれる時代。そんな時代に偶然なことが起きた。モンスターによって壊された丘で、エピメテウスは一人でただ祈りを捧げていた。祈りを捧げていればいつしか、救いはあるはずだと、神々を信じた神官だった。そんな時に祈りが届いたのか、空から大きな炎と一つの剣が降ってきた。彼はその炎と剣を手にして、ある脳裏に一つの声が聞こえた
『その剣で、世を照らせ』
と
誰の言葉かは知らない。しかし、その言葉はもしや神が与える『神託』ではないのかと、その言葉が本当ならこれならオリンピアを救えると、その言葉を聞き必死に炎を操る剣を使って暗黒のモンスター『パンドラ』を倒そうと戦った
そしてオリンピアを滅ぼそうとした絶望を彼は見事倒し、オリンピアの人々は彼を英雄と呼ぶようになった。
それによりその功績により、彼には多くの仲間ができ、そして増え、炎の剣で仲間と共にオリンピアだけでなく、東や西へと生息する魔物を倒す日々を送る。村を救い街を救い。誰も倒すことのできない魔物達を、彼と彼の仲間が全て倒していく。まさしく救済の時来れり、英雄エピメテウスが世界を救う瞬間だった
しかし
そんな日々は続くことはできない
英雄も所詮は人間であり、絶対救済は限界があり。その限界がその数年後に起きた
エピメテウスは神託通りに、仲間と共に世界を救うために旅を続けて魔物を倒し続ける。しかし、戦い続ける先で出遅れが起きてしまう。戦いには怪物を完全に倒せた戦いもあった。しかし甚大な被害もあり、救済がいち早く遅く、市民は犠牲になったりと、いち早く救済ができなかったことを彼が人々を犠牲にしたわけでもないのに、被害を受けた人々は彼のせいにする。まさしく理不尽な人間の身勝手な悪意だった。彼はこれを学び。救済にも限界があるのだと、だからせめてできることを全力でやろうと、また仲間と共に次の戦場へ向かう
だが、戦う度に仲間が戦死していくのが、心の傷となる
神託の通りとはいえ、戦い続けると言っても無限に等しい戦いの旅だった。その度に仲間が犠牲になってゆく。だけど少しでも救済を怠ると、誰もが彼に暴言を吐かれると、彼の戦いは進めば進む程酷い扱いを受けた。まさしく英雄の仕事は誰よりも重い仕事だった
そして更に最悪な出来事へ向かってしまった
それはモンスターへの敗北である
敗北をしてしまった。三千年前なら『ベヒーモス』や『アンタレス』や『リヴァイアサン』。伝説のモンスターも居たと思われるが、エピメテウスはその怪物を、天の炎を用いても勝てなかった
そのため無力ながら撤退をし、逃げ帰ってきたのだが、そのモンスターを倒してくれと頼んだ王国の王が、身勝手ながら『また遠征に失敗したのか!?』と、彼にも限界があると言う気遣いもせずに、人の気持ちを考えずに、王だけでなく、他の民までもその偉業を成し遂げなかっただけで、彼に暴言を吐いた
エピメテウスは、それについて事実だからと、ただ認めて、下を向いて『すまない・・すまない』と言うしか、謝罪しか何もできなかった
これが英雄の地獄。英雄とはその偉業が成し遂げなければ、ただの愚者であると。
英雄の現実をエピメテウスは最悪なまでに陥った
そして最も残酷な地獄が最後に待っていた
それは
戦死した仲間の墓を建てられないこと
エピメテウスと共に戦った仲間の墓標を建てられないこと。これが彼の地獄だった。勇敢に戦い、怪物に負けもしたが、それでも必死に戦った仲間の墓を建てられぬと言う仕打ちを受ける。世界のために戦ったのにも関わらず、世界はそれをしてはならぬと禁じた
これが、彼が世界を憎んだ理由である
その後、新たな神託を授かる
『もう戦うな、剣を置き、炎を管理せよ』
と
戦い敗れた彼は、始まりの丘で神殿を築き、今度は天の炎を管理するために世界の旅を終えて、剣を置き、元の自分である神官へと戻った。彼は天の炎の力を体に帯び過ぎたため、彼は老いることなく、それから数千の時をオリンピアの神官として過ごした。
そしてその日々を過ごす彼は思う。嗚呼、あれは幻だったのではないのかと、共に戦った仲間を歴史に刻めなかったことの絶望を受け、彼には一生忘れることのない絶望として心に刻まれて生きてきた
そしてその二千七百年後、エピメテウスは英雄ではなく、愚者であったと、どこからかその報道を受けた
やっとあの絶望忘れる日常を送れたのに、どこからのその報道を聞かされ、それを書物にされて、尚彼は世界を更に憎むようになった。そうさせたのが世界であると言うのに、それを聞いて彼は更に憎しみを燃やした
我慢できなかった。あの世界のために戦ったあの旅が、あの戦いで必死に戦った戦士達が愚者として扱われるなど我慢できない
その怒りに
原初の炎が反応した
彼の怒りが原因で、原初の炎は彼の怒りに応えてしまい。オリンピアを焼き尽くした。これがレアの言う『大炎災』である。原初の炎がエピメテウスの憎しみを吸ってしまい。原初の炎は世界を壊す憎悪を振り撒き。レアの娘、ミヌキアの幼馴染、アエミリアの妹、オリンピアの市民を燃やした
その時も、彼は助ける範囲があった。全ては救えない。救える者しか救えないと言う限界であり、彼もまた過去と同じく半分しか救えなかった
その時人々に言われる『英雄なのに、どうして助けてくれなかったんだ!』
と、言われた
それを聞いた彼は
もう世界など捨てて、全て壊してやる!!!
と、それが彼が世界を壊そうと誓った日だった。もうこれ以上英雄として動かない。もう世界の言うことなんて聞かない。世界を壊して何もかも塗り替えて消してやると
もう彼は、全てを憎んで復讐を開始する
仲間のためにもならない。世界にも仕打ちができない。今まで通り平凡に暮らし、世界にされた憎しみを忘れろ。など
納得できないがために
誰も助けてくれなかった。誰も自分達を讃えてくれなかった世界など、もう要らない。この世界は壊すべき。こんな人間どもは見捨てた方がいい。だから誰も信用しない。信用しても助けてくれない
そのはずだった
なのに
「なぜだ・・・・なぜ・・・・なぜそうまでして!世界を守るのだああああ!」
こんな時に限って、オリンピアの者達は手を取り合って世界を守ろうと戦う。巫女、戦士、戦い不向きの市民も全員で、オリンピアを守ろうと暗黒なモンスターを抑えている
人類を疑った男が、世界の可能性を見てしまった
なぜ、こんな時だけ彼らはベル達の味方になるのか、今まで自分を助けることをしなかったのに、彼らはこんな時だけ、皆で力を合わせて手を取り合うなど
自分を助けてくれなかったのにと、ただ嫉妬をした
「ぐ!」
「はあ・・・・はあ・・・まだまだ」
「なぜだ。なぜそうまでしてお前は世界を守ろうとする?俺の全てを見ておいて!なぜお前は世界を守ろうとする!」
「それは・・・・・」
「わかるだろう!俺のしたことは無駄にされ!仲間も侮辱される!英雄のしたことも否定される!!それでもお前は英雄になりたいか!それでも俺を止めるのか!俺のしたことを否定した世界を守るのか!」
「それでもです!・・・・」
「俺が何もできなかったと言うのに、何も残せなかったと言うのに!俺のしたことが全部否定されて何も無いと言うのに!それでも世界を守るというのか!俺の全てを無駄にされた世界を!」
「・・・・・・・・・」
やっと彼が全てを、彼が憎んだ全てを話した
何も無し得なかった。何も残せなかった。エピメテウスは仲間のためにあそこまでしてきた。英雄を名乗ってでも戦った。なのに、何も残らなかった
だから憎い
それをしたかったのに、世界に邪魔された。仲間の未練も、全部心にしまえなどと、こんなことをされて抑えられるわけがない。だから人間なんだ。彼も同じ人間だ。それが抑えられる人間なんて居ない。そんなふうに生きていない。憎しみを他人に振り回して恨みを晴らす。
これが人間だ。これが人間の世界だ。これが下界だ
でも
「無駄なんかじゃない!!!」
「っ!?」
ベルはそれだけは違うと強く応えた
エピメテウスのしたことは無駄なんかじゃない。彼のしたことは世界のためにはならなかったけど、けど『一つ』だけためになったことがある
それは
「貴方に憧れる僕が生まれた!!」
「・・・・・・・」
彼を止めるのは、ではなく、彼を救うのはベルだ。だってベルはいつも英雄であるエピメテウスを、世界では愚かと呼ぶが、ベルにとっては英雄だった。彼のしたことを否定せず、彼が世界のために戦った英雄だと、一人でも、ベルはエピメテウスを今でも讃えている
「僕はずっと貴方に憧れていた!オリンピアのために必死に戦った貴方を!無駄なんかじゃない!だって貴方に救われた人も居ますから!貴方のしたことは決して間違いなんかじゃない!」
「な!?・・・・・」
「そうだ。それでいい。それがお前だ。ベル」
やはりエピメテウスを救えるのはベルだけだ
確かにエピメテウスが世界にされたことは、誰でも同情したくなる憎しみだ。全てを無にされたことは、彼の憎しみは痛い程わかるだろう。しかし、それでも彼のしたことが無駄なんかじゃない。誰も讃えてくれないけど、ここにエピメテウスに憧れる少年が居る
英雄になったエピメテウスに憧れている
そして、憧れたベルは、彼に願いことがある
それは
「だから僕はなりたい!!英雄エピメテウスに『僕はなりたい』んだああああああ!!!」
「お、俺に・・・なりたいだと!?」
英雄エピメテウスになりたい。それが今ベルの夢であり、彼に叶えて貰いたい願い
ずっと憧れだった。確かに最後は酷い話だった。でも彼が今までしたことは間違いじゃない。英雄として正しき姿、小さい子供の時からずっと憧れてきた英雄。祖父にいつも読み聞かせを頼んだ英雄譚、ずっとなりたかった英雄。ずっとベルの中では英雄だった存在に
ベルはなりたかった
「アクロの丘、始まりの火!祈り続けていた男は炎剣を抜き、英雄を始めた!滅ぼした魔物は万軍では足りず、覇者はただ一人、エルピスをもたらす!絶望を忘れた都は、勇者の凱旋に換気を上げた!男は、丘の上で涙し、微笑みを湛えた!」
「その言葉は!?」
「英雄譚エピメテウスの朗読。やはりベルは一文字も忘れずに覚えていたか、あの爺さんが書いた本を!」
それは書籍にされたエピメテウスの英雄譚
その朗読を本人の前で語る。これは世界にも当然存在する英雄譚だ。しかし、末路が酷くてあまりに読む者はほとんど居ない。その作者も不明でありながら
だが
その英雄エピメテウスに憧れ続けるベルは、一文字全て覚えていた
「男は誇った。かけがえのない笑みを守ったことを!男はなお。誇っていい。汝が守り、残した種は未来に花を咲かすだろう!!エピメテウスは哀れな娘を救った!エピメテウスは魔物から亡国を取り戻した!嗚呼!エピメテウス!!汝こそ真の勇者なり!!!」
「やめろ・・・やめろ・・・・」
「そんな英雄に僕はずっとなりたかった!!!だからなりたい!敗北を続けても戦い続ける英雄に!貴方と言う英雄に!僕はなりたいんだああああああああああああああああああああああああ!!!」
「やめろおおおおおおおおおおおおお!!!」
ベルの語り続ける言葉に、エピメテウスは耐えきれずに彼を斬ろうとする
その言葉を目の前で口にされるなど耐えきれない。自分を否定し切った英雄神話を。今ここで思い出せなど、それでは今まで恨んだ意味がなくなると、彼は怒り狂った
「ふざけるな・・・ふざけるな!!俺もお前のように愚物ではなく、ただの愚か者であった!喜劇と知っておきながら、道化であれたなら!なれたと思うのか!!」
自分のしたことをそれでも否定するエピメテウス
確かに最後は絶望だったかもしれない。報われなかったかもしれない。誰も自分を助けてくれなったかもしれない。英雄など世界の使い捨てだった。何も間違いではない。その通りだ。嘘ではない
だが
「なぜそうまでして否定をする?お前のした事は間違いではないだろう!お前が戦い続けてくれたからオリンピアは今も存在する!お前はオリンピアの守護者!大英雄エピメテウスだ!己のしたことを否定する意味はない!お前が救ってきことは間違いではない!!」
「っ!?」
俺が炎人二人を抑えた状態で、戦うエピメテウスにその言葉を放った
その言葉は、エピメテウスにとっては二度目だった。だからその言葉を聞いて、彼はベルを襲わずに立ち止まり、俺の方を向いた
そう、言われたのだ。この言葉を
己のした偉業を否定するなと、英雄である自覚を持たせるために、過去にも言われたのだ。この言葉を
『なぜ否定する?エピメテウスよ。其方のした事は間違いではないであろう。其方が戦い続けてくれたからオリンピアは今も存在する。其方はオリンピアの守護者。大英雄エピメテウス。己のしたことを否定する意味はない。其方が救ってきことは間違いではないのだ』
と
誰かがこの言葉を過去に口にした、そして偶然とは思えないにも関わらず、俺の口からこの言葉を出される。しかし、エピメテウスは俺がこの言葉を出すのは確信していた
なぜなら、この言葉を一度口にした男の名は
「それは・・・・『リーブ・フリード』の言葉・・・・」
「やはり俺の先祖の言葉だったか、だったら他の英雄達も自分のしたことを否定しなかっただろう。それは全て英雄であった証だ。英雄は自分のした行いを否定したりしない!」
「ぐ!?その言葉・・・・古代の英雄達の!?」
この言葉を一度口にした者は俺の先祖だった
もちろん今も同じだ。彼が道を踏み外そうとするから、彼に導きを出した。常に俺たち一族はつくづく英雄の働きをしていたらしい。それが運命だと言うのか、しかし、それは嘘ではない。俺の先祖はあの英雄アルゴノゥトすらも導いたものだ。俺の先祖は英雄になっただけでなく、それになろうとする者たちも助言して導いた
なら
「その一族として言わせて貰う!お前が英雄だから!ベル・クラネルはお前になりたいと願う!お前が英雄だから希望を諦めぬ!お前が英雄だからベル・クラネルは憧れ続ける!憎しみで英雄を呪っても無駄だ!!」
そう、ニーベルング族としてこれだけは言おう。何がなんでも否定はできぬ。この成し遂げた偉業は
絶対に
「お前が英雄として生きた過去は!絶対に否定はできない!!お前が英雄になったから!今お前になりたいとお前を止め!お前の希望となる!二代目エピメテウス!!ベル・クラネルがここに居るのだから!!!」
「っ!?」
エピメテウスが英雄だからベルがお前を助けようとする。そんなに英雄がやりたくないのなら、自分にさせてくれと頼んでいる
なぜならエピメテウスになりたいと、現実を知って尚、夢を幻にしたくないために、その夢を本気で願っている。
誰かの笑みを信じることができる。英雄に
それを聞いたエピメテウスは
「俺を英雄として憧れるだと・・・俺は英雄じゃない!・・・俺は・・・・・・・・・・・・なりたかった・・・」
「っ!」
「俺も英雄になりたかった!!!」
「そうか・・・・それがお前の願いか」
エピメテウスは涙を流しながら答えた
英雄を呪っていたんじゃない。少しでも希望を信じられなかっただけの、ベルと同じく英雄になりたかっただけの男。今本気で願う気持ちに答え、絶望に全て塗られた男は
全てを吐き出す
「ここに願い奉る!そして、どうか赦し給え!我は神言に背くも者!この手は災禍を開く罰!」
「詠唱!?違う・・・・祝詞!?」
「ベル!エピメテウスは全てを賭けて、お前に己の絶望をぶつけるつもりだ。それも『全て』だ!」
エピメテウスの体から黒い炎のオーラが溢れ出た。間違いなく本気の技。体の中にある全ての穢れた炎の力を使い出した
それも神器の解放まで、おそらく今のエピメテウスの状態は
『あの女』も危険だと思っているだろう
「限界解除をした!神器である炎の鷹の最大開放!逃げて!!ベル!!!」
空中祭園の外縁部で見ている。プロメテウスも、今のエピメテウスは本気だと眼で気づき。プロメテウスでありながら、ベルの危機に関しては、神としての発言ではなく、本心の言葉を口にした
それでも、今のエピメテウスのこれから放つ一撃は、確実にベルを殺す
しかし
「僕は逃げない!!だって大英雄エピメテウスになりたいから!!!」
ベルは避けない。受け止める
英雄エピメテウスになりたいから、彼の憎しみや悲しみの絶望を受け止めて、彼の継承者になりたいから、彼の英雄願望があるから
だからベルも
剣を構えて、憧憬から生まれた『希望』のトリガーが弾かれる!!
ゴン!ゴン!!ゴン!!!ゴン!!!!!ゴン!!!!!
「これは・・・鐘の音!?」
「魔物の万軍を討ち続け!己も傷付き果てながらも、人々のために剣と盾であり続けた聖域の炎!暗黒の前に零落しても、全てを失ってもなお戦い続けた憧憬の姿に、己の全てを重ね合わせながら、かつてない咆哮を上げよ!!!」
「その!?祝詞は!?」
「貴方の英雄譚が好きだった。悲しくても苦しくても、誰かのために戦い続ける貴方の物語を!!」
「っっ!!目覚めよ花嫁!!呪われし泥の巫女!!愚者の婚姻、絶望の約定、背神の業火!希望はなく、祝福は去る!!されど、汝の罪は我らの罪!葬られし贖罪に代われ、炎の鷲!!共に捧ぐ、常春の地獄!!!」
「目覚めよ希望!!救済を望まれし世界!!愚者の憧憬、希望の願望、不屈の業火!希望を作り、祝福を讃え!!されど、汝の罪は我らが救う!救われる悲願に変われ、浄化の聖火!!共に捧ぐ、これが常春の始まり!!!」
「これは!?エピメテウス君の逆祝詞!?」
「ヘスティア!見ろ!君が塔に溜めていたアルカナムが!」
「ベル君の中に集まっていく!?僕の力がベル君に力を!!」
ベルは、エピメテウスの祝詞を変え言葉を唱えた
それだけでなく、ヘスティアが三つの塔に溜めていたアルカナムの白い光の粒が、一斉にベルの体に取り込まれ、ベルの体から白い炎のオーラを纏う。ベルの意思にヘスティアの力たちが答えた
「っ!!うおおおおおおおおおおおお!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
お互い、全ての力を振り絞って走り出す
勝つのはベルか、それともエピメテウスか、白い炎と黒い炎が衝突する。オリンピアの中心で、意思と意思のぶつかり合いが果たす
その一撃を
先にエピメテウスが放つ
「エルグス・パンドラ!!!」
エピメテウスの炎の鷲から、黒い炎の斬撃が放たれる。もちろんもう避けることなど不可能。襲いかかる絶望は、怯むことのない衝撃を放つ。ベルはその黒い炎の斬撃に立ち向かい
そしてベルも、
特大の希望を放つ
「デュカリオン・エルピス!!!」
ベルのアエデス・エルピスから、白い炎の斬撃から放たれる。白い希望の炎と黒い絶望の炎はお互いぶつかり合い
衝突する
ドカアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
「うおおおおおおおおお!!」
「うおおおおおおおおお!!」
ベルもエピメテウスもどちらも引きはしない。お互いその炎をぶつけて押し込む。ぶつけ合う炎の衝突はこの中央祭壇から大きな爆発を起こす
その中で
二人の声が、ベルを応援する
その二人は
「勝つんだ!!ベルくううううううううううううううううううん!!!」
「彼を止めて!!ベルウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!」
「っ!」
ベルの後ろから、ヘスティアとイリアの声が聞こえる。その声を聞いたベルは、余計負けられなくなる。それだけではない。自分の背中に
ヘスティアとイリアが優しく押してくれる感じがした
その温かい二人の手を背中から感じ、今自分は一人で戦っているわけではないと思い、全てを大英雄にぶつけるように、全てを出し切る
「でやああああああああ!!」
「なに!・・・っ!?」
ベルがぶつかり合う炎を切り裂いて、エピメテウスの前に出た。そして今彼のボロボロの姿を見て、彼はある光景が見えた
それは
このオリンピアを救おうした、過去の自分の姿を、ベルの姿と重なりあった
そして、ベルはエピメテウスに放つ。白い炎を
「はあああああああああああ!!!」
「ぐ!?ぐわあああああああああああああああああああああああああああ!!」
エピメテウスは、二度ベルが放つ白い炎を直撃し、その白い炎を直撃して後ろに吹き飛ばされる
「はあ・・・・はあ・・・はあ」
「勝っ・・・た?」
「ああ、ベルの勝ちだ」
「やった・・・やった・・・ベル君が勝った!!」
そして最後に立ったのはベル
見事エピメテウスを止め切った。彼なら必ず彼を止めてくれると、昔日の大英雄を必死ながらもなんとか止めてくれた
彼を止められるのは彼を憧れた者のみ、英雄と言う絶望を染まった者を救うのは、いつまでも彼に憧憬し続けるベルのみ。だから俺が戦っても勝てず、ベルにしか倒せない敵だった
「・・・・・・・」
「ん?ベル君?」
「待て、ヘスティア。ベルに行かせてやれ」
ベルは戦い終えて、そのまま倒れたエピメテウスの所へ行く。そして倒れたエピメテウスにある言葉を送る
「・・・・・小僧・・・・」
「エピメテウスさん。アルゴノゥトと言う英雄も、ずっと道化とか、愚か者って呼ばれてました。でも、そんな道化もエピメテウスがいてくれたおかげで、喜劇を踊ることができたと思うんです。だから僕はアルゴノゥトに勇気を与えたエピメテウスが好きだった。だから僕は貴方やジークさんにもなりたいんです。どんな苦しいことも受け止めて、みんなを救う英雄に・・」
「・・・・・・っ・・この後に及んでまだそんなことを言うとはな・・・本当に憎たらしい小僧だ・・・」
「はい。僕は貴方の希望にもなりたいから・・・」
「・・・・・・ふん・・・勝手にしろ・・・・お前がそうしたいのならな・・・」
「はい。僕は貴方になりたいです・・・」
「・・・・・・・」
これ以上は何も言わなかった
もう言ってもわからない馬鹿だと、やっとエピメテウスも、ベルの夢見小僧であると。本気で英雄を目指そうとする若僧であると。ベルのことを少しだけ理解した。これ以上言っても自分になることを諦めない。本気で愚者にもなろうとしている
だが
なぜか、エピメテウスはこいつなら仕方ないかと、もう復讐を忘れてしまった
これで最後の敵であるエピメテウスを止めることができた。