ニーベルンゲン・シックザール〜竜殺しの英雄譚〜   作:ソール

115 / 201
絶望を照らす、希望の聖火

 

 

 

 

しかし、まだ終わりではない

 

 

 

『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

 

 

「っ!?」

 

「パンドラか!」

 

「まずい!もう原初の炎が憎しみを抱えきれなくなっている!!」

 

 

パンドラがもう限界を超えていた。エピメテウスは破れても、この事件の発端である原初の炎が限界を超えていた。元々エピメテウスの憎しみを吸って。黒いモンスターとなった存在

 

オリンピアを壊そうとした悪しき竜

 

 

パンドラが、原初の炎にて完全復活を遂げる

 

 

『ガアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

 

「く!きゃあ!」

「「お母さん!?」」

 

「「「「「うわああああああ!!」」」」」

 

「「「「「きゃああああああ!!」」」」」

 

「「「「「ぐわああああああ!!」」」」」

 

 

「パンドラが!?」

 

「いくらレア達でも、今のパンドラに結界で封じ込めることはできない」

 

「原初の炎が、エピメテウスくんの穢れた炎を全て吸ったことで、完全にパンドラの一体化を果たした!!」

 

 

原初の炎は完全に怪物となった。パンドラから黒い炎の衝撃波を放たれ

 

それにより流石のレア達でも、もう流石に結界を維持できず、そのまま後方に吹き飛ばされていく。グレイプニルに体全体を縛ったのにも関わらず、その衝撃波でヴェルフ達も、オリンピアの市民達も吹き飛ばされる

 

 

「まずい!パンドラは世界を破壊し尽くすために、全ての力を使って、今ここで『第三の大災害』を起こす気だ!」

 

「え!?」

 

「このまま一気に世界を焼き尽くす気か!」

 

 

パンドラの体から黒い発光を起こす

 

ヘスティアが言うにはもはやパンドラを抑えることは不可能であり。穢れた炎の全てを使って。世界を炎の波で覆い尽くすと警戒を口にした

 

奴の力で空間が消し飛び、噴火のように力が今にも爆発しそうだ。今ここで全てを滅ぼす大火が解き放たれようとしている

 

これがまさしくエピメテウスが倒した怪物、絶望の箱が開く

 

厄災の炎。パンドラである

 

 

「く!まだまだ!」

「「お母さん!」」

 

「やらせるわけには・・・・っ!?」

 

「レア様から炎が出ない!?」

 

「体の中にある炎を全部使ってしまった!?」

 

「しまった!?今ので使い切ってしまった!?」

 

「レア様!我々もです!もう使えません!」

 

「く!?あともう少しなのに!!」

 

 

レアが再び結界で抑えようとするが、もう彼女の手から炎は出ない。もちろん戦士団も巫女達も、全員今ので全ての炎を使い切ってしまい。もう今のレア達はただの人間。もうパンドラを抑える炎は出ない

 

ここまで来て、オリンピアが守られなくなる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし

 

 

「レア!もういい!あとは・・・・俺たちが戦う!!!」

 

「っ!?」

 

 

ここまでで十分。良いタイミングで時間稼ぎを完了させた。レア達はここまでよく抑えてくれた。ここまでは上手くやれた

 

あとは

 

俺たちがパンドラを倒せばいい

 

 

「立て!!ヘスティア・ファミリア!!!オリンピアを救うために立ち上がれ!!絶望を開くこのパンドラ!俺たちの希望の炎で祓うぞ!戦え!俺たちが最後の希望だ!!」

 

「ヴェルフ!リリ!命さん!春姫さん!ウンディーネさん!」

 

「みんな!力を貸してくれ!!」

 

 

団長である俺が、仲間を呼びせる

 

俺たちしかパンドラを倒せない。俺たちが希望となって、このオリンピアを救うと、ここで諦めずに戦えと、俺は皆に戦えと促す

 

その言葉に、ヴェルフ達は

 

 

「ああ!まだ負けられねえ!」

 

「リリもまだ戦えます!!」

 

「自分達はまだ終わっていません!」

 

「これで終わらせましょう!この悲しみを!」

 

『これが・・・・最後です!!』

 

 

その言葉にヴェルフたちがまだ立ち上がる

 

救いたいもののために、現実でもなんでも押し付けられても、絶望の全てを受け入れて、俺たちは希望を灯そうと、その地を立つ

 

 

「ヘスティア!頼む!」

 

「うん!僕の原初の火を受け取れ!!」

 

「「「「『っ!?』」」」」

 

「これは!?」

 

「僕が今原初の火を作った。僕の炎だ。これならパンドラに対抗できる!だけど一撃だけだ!」

 

「十分だとも!」

 

 

ヘスティアは眷属全員に自分の炎の加護を受け流す。これでパンドラを倒すことができる

 

ただし一発だけだ。全員一発のみだけ。それしか今絶望を振りまくパンドラを倒す方法はない。

 

しかし

 

これで十分だ

 

 

「よし!春姫!全ての力を使って、俺とヴェルフと命にレベルブーストを!」

 

「はい!」

 

「その後ヴェルフと命は斬り裂け!全身全霊の斬撃を!!」

 

「おう!示すぜ俺の誇り!」

 

「守ります!この全てを!」

 

「次にリリルカとウンディーネ!リリルカは矢に全ての力を込めて放て!ウンディーネ!水精霊魔術を使え!!」

 

「はい!これで射抜きます!」

 

『その炎、私が癒す!!』

 

「そして最後!!俺とベルとヘスティア!」

 

「はい!」

 

「うん!」

 

「全てを救うぞ!この希望で!!」

 

「はい!」

「うん!」

 

「終わらせよう、全て受け入れよう、この炎は永遠に消えぬ心火!!俺たちの炎をあの絶望に灯せ!!!」

 

「「「「「「『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』」」」」」」

 

 

俺は、ヘスティア・ファミリアに指示を送った。これで全て終える。これでこの絶望を祓うことができる

 

それができるのは

 

 

俺たちの心火次第

 

 

「行くぞ!ヘスティア・ファミリア!!!希望を作れええええ!!!」

 

 

俺が先陣の合図を送り、その言葉にヘスティア・ファミリア全員がパンドラに向かって走る

 

まずは春姫から

 

 

「ウチデノコヅチ!!!」

 

 

「よっしゃあ力を貰った!斬り裂くぜ!命!」

 

「はい!参ります!」

 

 

春姫の更なる上乗せがヴェルフと命に届き、ヴェルフと命は迷うことなく、貰った力の全てを使って斬撃を放つ

 

 

「斬り裂けえええええええええ!!!」

 

「断ち切る!!!」

 

 

ザシュ!!!ザシュ!!!

 

 

『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?』

 

 

「パンドラの両腕が斬れた!?」

 

 

ヴェルフと命の斬撃がパンドラの両腕を斬り裂いた。これでパンドラの動きは更に止めれる

 

しかし

 

 

『ガアアアアアア!!!』

 

 

「あれは!?」

 

「ブレスか!」

 

 

このままやられるわけにはいかないと、パンドラは口からブレスを吐こうとする。反撃をする考えが一応やったようだ

 

だが

 

 

「リリルカ!!ウンディーネ!!」

 

 

「第二射!」

 

『我は水の大精霊!天水の全てを使い、この世を満たす栄光の雫を齎せ!我が名はウンディーネ!水よ!!』

 

 

『ガアア!』

 

 

パンドラは俺たちに向けてブレスを放った

 

しかし、その前にリリルカはバリスタに矢を装備し、ウンディーネは後方にある全ての海の海水を手に吸い寄せ。詠唱し終える。そのブレスに二人が立ち向かう

 

 

「クラウ・ソラス!!!」

 

『エーテル・ウンディーナ!!!』

 

 

リリルカの光る矢とウンディーネの最高魔術が交わり、水線に光る矢が生まれ

 

パンドラのブレスのぶつかる

 

 

ドカン!!!

 

両方の攻撃がぶつかり、どちらも押されることなく。その矢とブレスはぶつかり合う。

 

しかし

 

 

『く!まだまだです!!』

 

「行っけええええええええええええ!!!」

 

 

『ガアア!?』

 

 

「リリ様の矢とウンディーネ様の水が、パンドラの炎を押し返す!?」

 

「『押し返せえええええええええ!!』」

 

 

『ガアアアアア!?』

 

 

押し返した一撃が、パンドラの口を爆発させた

 

これでパンドラは怯んだ。もう奴に反撃する余地はない。だから今だけだと

 

誰もが叫んだ

 

 

「ベル!ヘスティア様!」

 

「ベル様!ヘスティア様!」

 

「ベル殿!ヘスティア様!」

 

「ベル様!ヘスティア様!」

 

『ベルさん!ヘスティア様!」

 

 

「俺はいつでもやれる。さあ、行け。ベル!!ヘスティア!!」

 

 

「うん!行こう!神様!」

 

「ああ、行こう!ベル君!」

 

 

最後はベルとヘスティアが一撃を放つ

 

もうパンドラは反撃できない今、今しか倒せない。その一撃を今、ここで全身全霊を持って二人は斬り裂く

 

アエデス・エルピスをヘスティアと一緒に持つ

 

 

「僕は英雄になりたい!」

 

「希望を灯そう!」

 

「「二人で一緒に!!」」

 

 

ゴン!ゴン!!ゴン!!!ゴン!!!!ゴン!!!!!

 

 

「グランドベルが鳴った。さあ希望を作れ。英雄になりたいなら!」

 

 

大鐘楼が鳴り響く中。ベルとヘスティアが一緒に走って。パンドラの前まで飛んだ。ベルの英雄願望は純粋な威力や魔力だけじゃなく、神に由来する神威や天の力さえも増幅する。もちろんヘスティアの力も

 

だから、今の二人は絶対に倒すことができる

 

そして放つ

 

白光剣が纏う白い炎の希望が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠久の聖火と言う・・・・希望を!!

 

 

 

 

 

 

「「アルゴ・ウェスタ(聖火の英斬)!!」」

 

 

 

 

その希望を放って、パンドラが直撃された白い炎は爆発を起こす。

 

 

『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

 

その一撃を込められた炎は、もはや原初の炎はパンドラの体を維持できず、ただの炎になって消え果てる

 

 

が、

 

 

しかし

 

 

ボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

 

 

「「っ!?」」

 

 

突然炎の中心からドス黒い炎が吹き溢れる。聖火の一撃を衝突させたベルとヘスティアは悟った

 

神々が予想する以上に、残酷なまでに人の負を追い過ぎたこの絶望の炎は、盤面を覆らない程、邪悪な炎として完全に穢れ切っていた

 

それはもはや無限に等しい闇。人間の悪意を吸ったことで誰も止めれない混沌となった。もうこうなっては抑えることも浄化することも不可能。この絶望は絶対に吹き溢れる。諦めるしかないと、ヘスティアは口にしてしまう

 

 

「ごめんベル君。こんなことになって・・・」

 

 

ヘスティアは今になって後悔する。もっと上手くやればこんなことになるはずなかった。自分が本当にゼウスの言う通りにしていれば、こんなことになってないと、こんな時に限って後悔した

 

だけど、ベルは

 

 

「そんなことは言わないでください!僕は諦めない!絶対に!」

 

「ベル君・・・・・うん!そうだ!まだ終わっていない!!まだだ!!!」

 

 

ベルの言葉に、ヘスティアも諦めるのをやめて、まだ終わってないとその黒い炎に立ち向かう

 

しかし

 

それでも、もう黒い炎は臨界点を突破している。このままでは、世界に爆発するのも時間の問題

 

 

「嘘だろ・・・」

 

「このままじゃあ・・・」

 

「ジーク殿!」

 

「ジーク様!早く撃ってください!」

 

 

「無理だ!今あの原初の炎の心臓がまだ見えていない。あれはまだ『上澄み』だ。今の状態で撃っても完全に消すことができない!」

 

 

『そんな!?ここまで来て!』

 

 

予想以上に原初の炎も対策を考えていたようだ。穢れた炎を盾にしている。しかもあれはもはやデミ・アルカナムではない。あれはもう人の悪意を吸い過ぎた未知の異物。人間の負を吸い過ぎたことで、俺たちの理解し難い炎へと。酷く汚染された

 

いくら神殺しの力でも、あれは跳ね除けない

 

 

 

 

しかし

 

 

 

「だが問題ない。なぜならここに・・・『英雄』が居るのだからな」

 

『え?』

 

 

 

俺は謎の言葉をウンディーネに発する。誰のことを言っているのだろうか、ここに英雄が居るとは、誰のことか

 

 

そんな者は一人のみ

 

 

ここはオリンピア。そこに英雄は居る

 

 

その名は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「小僧!!使え!!!」

 

 

 

「っ!炎鷲の剣!?」

 

「っ!君は!?」

 

 

「はあ・・・はあ・・・はあ」

 

 

突然、俺たちの後ろで剣が投げられた。その剣をベルが受け取る

 

その剣は『炎鷲の剣』

 

それを投げたのは

 

 

 

 

 

 

 

大英雄エピメテウス

 

 

「俺になりたいのだろう!なら戦え!その剣で!!救って見せろ!!このオリンピアを!絶望に負けるな!!俺になりたいのなら『諦めるな』あああああああああ!!!」

 

 

「っっ・・・・・・・はい!!!」

 

 

エピメテウスが託してくれた。二代目エピメテウスになりたいのなら、その程度の絶望を諦めるなと、否、その絶望をも受け入れろと、英雄になりたいなら果たせと

 

大英雄が、託してくれた

 

 

その喜びを、ベルとヘスティアが放つ

 

 

「神様!」

 

「うん!」

 

 

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」

 

 

「エピメテウスの炎とヘスティアの炎が交わった。これなら!」

 

 

ベルとヘスティアはその両方の大剣に力を込めて放つ。大英雄が託してくれたから。この炎が更にベルに力を上乗せされ、希望の炎が『永遠の希望の炎』となる。

 

絶望の炎に対抗できる希望が、今全て揃った

 

その一撃を

 

 

 

放つ

 

 

 

「「行っけえええええええええええええええええええええええええええ!!!」」

 

 

 

ボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

 

 

白い炎とエピメテウスの青い炎が黒い炎を討ち祓う

 

原初の炎に包まれた黒い炎はベルとヘスティアの一撃に消え去る。穢れた炎の全てが消え去る。あれだけ無限に等しい負を負っていながら、ベルとヘスティアと・・・・エピメテウスの小さな希望が

 

無限の絶望を祓った

 

それにより

 

 

 

「ジークさん!!!」

 

「ジーク君!!!」

 

 

 

「ああ、終わらせよう。この絶望はこれで最後だ」

 

 

二人のおかげで・・・・いや・・・エピメテウスのおかげでもあり、原初の炎の黒い壁が消えた。そして見えた。俺の眼に確かな原初の炎の本体である心臓が

 

その心臓に向けて

 

 

「ゴット・シェアシュテールング接続。今こそ全てを射抜け。我は月の英雄オリオン。大英雄エピメテウスの意志を繋ぎ。この無限の絶望を今こそ打ち砕け。明日と言う希望を手にするために!ルーン・ブレイク発動!!」

 

 

この希望を討ち果たそう

 

大英雄がここまで託してくれた希望は、絶対に何があろうとも永遠に消えぬ。この物語は永遠に語り続けられる。絶望は確かにこの世界にある。しかし、希望も絶対にある。

 

だから紡ぐ。示す。俺とエピメテウスの跡を追ってくれる

 

 

ベルと言う。『新しい英雄の卵』のために

 

 

 

「フォルモーント・シュラーク」

 

 

 

と、言い放ち、俺はグラムを矢にした光線が一直線に原初の炎の中心を貫く

 

 

 

ガン!!!!!!

 

 

 

「これで・・・この絶望は終わりだ」

 

 

 

と、小さく言い終えた後で

 

 

大きな黒い爆発の衝撃を放った

 

 

 

ドカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!

 

 

 

原初の炎が爆発した。

 

その爆発はオリンピアだけでは止まらない。おそらくは世界中。オラリオにも届いている。もちろんどこかで戦っているアイズ達も、どこかでその衝撃を受けているはず

 

しかし、これが希望の始まりである

 

 

 

 

 

 

 

その爆発が数分で過ぎると、原初の炎は消え果てた

 

 

「・・・・・・・ああ」

 

「炎が・・・・・・・」

 

「消えた・・・・・・」

 

「完全に・・・・・・」

 

「絶望が消えた・・・」

 

『やったのですか?』

 

 

「ふう・・・・・ヘスティア?原初の炎の反応は?」

 

「いや、無い。完全に消えた!!僕たちの勝利だあああああああ!!!」

 

 

「「「「「『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』」」」」」

 

 

完全に原初の炎は消えた。厄災は消え果て、もう絶望の繰り返しは存在せず、オリンピアはあの災害からやっと救われた

 

その喜びに、ここに居る全員が歓喜を踊る

 

あの苦しみがやっとの思いで終わったのだ。これを喜ばずに居られる者など、誰一人居るはずもない。そう、これでオリンピアの絶望は終わりだ。完全に

 

 

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・あ!剣が!」

 

「ヴェルフ君が作ってくれた剣とエピメテウス君の剣が砕け散る!」

 

「あ!でもナイフは無事だ!」

 

 

ベルとヘスティアの一撃が原因で、アエデス・エルピスと炎鷲も完全に砕け散った。アエデス・エルピスは砕けたが、ヘスティア・ナイフは無事だった。壊れたのはその先端とエピメテウスの剣のみ、流石にあれだけの力を貯めた一撃に耐え切れなかったのだろう。神器だとしても

 

だけど、もう不要だろう。なぜならもう救えるものは救えたのだから

 

 

「あ・・・すみません・・その・・剣を砕いてしまって・・・・」

 

「・・・・・構わん。もしかしなくてもこうなるのが運命なのだろう」

 

「君はそう言うんだね。エピメテウス君」

 

「俺は疲れただけです。神ウェスタ」

 

 

エピメテウスの所へ、ベルとヘスティアは駆け寄った。剣を砕いたことを謝るが、仕方ないと済ます。エピメテウスもなんだかんだでこうなるとわかっていたのだろう

 

だから

 

 

「俺の先祖の言うことは正しかっただろう。エピメテウス」

 

「そうだな、ジーク・フリード。貴様の一族は本当に英雄を導く」

 

「戦う者たちを支援したいだけだ。所詮俺たちは戦士の一族であるが故だ。何かベルに言うことはないか?せめて何か言え。お前が託したのだからな」

 

 

「・・・・・・小僧。言いたいことがある」

 

 

「はい」

 

 

「お前は馬鹿だな。こうまでして抗うなど、本当に小賢しく、憎わしい小僧だ」

 

 

「はい」

 

 

「おそらく、ここまで馬鹿なのはどこを行っても、あのアルゴノゥトに並ぶ者だろう。いや、それ以上だ。やはりお前は馬鹿だ」

 

 

「はい」

 

 

「だが・・・・・・」

 

 

「ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前程、私に優しい者は居なかったぞ」

 

 

「っ・・・・・・・・はい!!!」

 

 

エピメテウスは、あまりハッキリしないお礼を言った

 

今彼が完全に救われた。今まで復讐に身を囚われていた男が、小さな子供に感謝を込めた。その時の彼は間違いなく、神官でもあり英雄の姿だった

 

やはり彼を救えるのは彼だけだった

 

 

「エピメテウス、もうお前の時間はない。死に場所に急いだらどうだ」

 

「ああ、俺も逝かせてもらう」

 

「っ!?エピメテウスさんの体が!?」

 

「原初の炎で体を保っていたから、それを破壊したことで、もう彼の体は保たないんだ」

 

 

エピメテウスの体が若干燃え出した

 

エピメテウスは原初の炎でこの三千年老いることなく生きていた。しかし、それを消したことで、もう体は限界を越え、他より原初の炎を吸った彼は、そのおかげでこの三千年長く生きた。しかしもうその原初の炎も消えた。命を長くさせた物がこの世から消えた以上。彼もこの世に去る

 

でも、後悔はしているようには見えない

 

少なくとも、この世の小さな希望を見出したと、こんな先に希望があったのなら、もう復讐することなく、ここを去る

 

 

「ではな・・・・さらばだ。ジーク・フリード。そして・・・神ヘスティア。ベル・クラネル」

 

 

「ああ、安らかに眠れ」

 

「うん、今までありがとうエピメテウス君」

 

「はい。ありがとうございました。僕の英雄」

 

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

 

最後は俺たちに別れを言われた。ベルのことを小僧と呼んだあいつが、最後はしっかり名前で呼んだ。もちろんヘスティアのことも

 

その後に俺たちは感謝を伝えたが、その返事はなかった。いや、返事するまでもなかったのだろう

 

とにかく彼は、フラフラになりながらも、どこかへ歩いて行った。一人でどこかに

 

 

「エピメテウス君・・・どこで眠る気なんだろう」

 

「決まっている。そうだろう?ベル?」

 

「はい、おそらくアクロの丘です。それがあの人の始まりですから・・・」

 

 

エピメテウスが向かった先は、アクロの丘、かつて彼が英雄を始めた場所。始まった場所へと帰る。そこが彼が眠る場所。仲間が先に逝った場所

 

 

「あ、イリアは!」

 

「気配からしてエピメテウスの後を追ったようだ。しばらく二人だけにさせよう」

 

「イリア君も、なんだかんだで心配していたと思うしね」

 

 

ベルは別のところで避難していたイリアを心配するが

 

イリアは無事であり

 

エピメテウスの後を追う気配を感知する。まあ『あの女』のことだ。今までずっと気にかけていたんだ。こればかりは邪魔するべきではないと、イリアの好きにさせる

 

すると

 

 

「っ!?これって!」

 

「ああ、原初の炎の消滅の光だ」

 

「これで炎人も・・・浄化される」

 

「あ!神様の祭壇が!」

 

「あれも原初の炎で作った物だから、すぐに消えちゃうんだ」

 

 

突然、光の粒が空から降ってきた。これは悠久の聖火の光。これは原初の炎の消滅の光だった

 

それと同時に原初の炎で作られた建物も、炎人も全て消える。何もかも

 

 

「あ!シオン!シアテ!」

 

「お母さん。これでお別れだね」

「お母さん。私たちが居なくても元気でね」

 

「・・・・・ヘル。少しだけ維持できるか?」

『ええ、5分が限界だけどね』

「少しでもいい。今は時間を作ってくれ。あの二人だけでなく、今周囲に居る炎人達も」

『わかったわ。私の義弟のお願い。聞いてあげる』

 

 

「ヘル・・・・・・ありがとう」

 

 

『礼は要らないわ。ヘスティア。私は義弟のお願いを聞いてあげているだけよ』

 

 

もちろん炎人も全て浄化されて消えてゆく。その前に霊体化させて、最後のお別れをさせる

 

もちろん、レアの娘だけでなく、アエミリアの妹、ミヌキアの幼馴染、炎人に焼かれた人間たちを魂だけ霊体化させる。ヘルは死霊の女神である。例え浄化されて体は無くなっても、魂だけ亡霊化させて、少しだけここに居させることはできる。ただし5分まで。これだけの数だ。いくらヘルのアルカナムでも、長くは保たない

 

今だけ、ヘルに頼んで、焼かれた者たちのお別れだけを、せめてさせた

 

 

「お姉ちゃん!」

 

「アエロア!」

 

「お姉ちゃん。私が居なくても元気でね。私が居なくても泣いちゃダメだよ?だってお姉ちゃんはオリンピアの巫女なんだから!」

 

「うん!見ててね。お姉ちゃんはアエロアのためにも。これから頑張るから!」

 

 

 

「ミヌキア!」

「ガルシア!」

 

「アルテア!リア!」

「二人とも!」

 

「ありがとう!私たちを助けてくれて!私たちが居なくても幸せでやっていくのよ!」

「ガルシア!ミヌキアのために良い夫になるのよ!わかった?」

 

 

「っ・・・ええ!二人が居なくても幸せに彼と過ごすから!」

「ああ、もちろんだ!彼女といつまでも幸せにやるさ!」

 

 

ミヌキアやアエミリア。それぞれ焼かれた家族や友人と仲間の別れをそれぞれしている。

 

やっと悲しみが消え、言いたかったことをしっかりと言えた。もう皆は後悔はない。ちゃんと別れをして。これからもちゃんと生きると、亡くなる者たちのために。誓いを建てる

 

そして

 

 

「お母さん。もう私たちは大丈夫。そしていつまでも一緒だよ」

「ずっと幸せだった。この幸せをいつまでも忘れないで、私とお姉ちゃんはいつもお母さんの心の中で生きているよ」

 

「ええ!ありがとう!私の元へ生まれて、天で見ていて、私のこれからを!二人とも愛している!」

 

「うん!私たちも愛している!」

「お兄ちゃんもありがとう!お母さんや私たちを助けてくれて!」

 

 

「礼は要らない。友人であるレアを助けたかっただけだ。礼を言われる筋合いはない」

 

 

レアは、最愛の娘たちが天に行く前に優しく抱きしめる

 

最後の別れをして、いつまでも娘を忘れることなく、みんなの母親としてこれからを生きてゆくと、最愛の娘たちに誓う

 

その娘たちに、俺はレアにここまでしてくれたことを感謝されるが、友人のためなら当然の行為であるため、感謝されるような者ではなかった

 

まあ、それでも皆それぞれ最後の別れを告げる

 

そして

 

 

「バイバイ!お母さん!!」

「私とお姉ちゃんはいつまでもお母さんの心の中に!」

 

 

「うん!見てて!シオン!シアテ!私は永遠に貴方たちを愛している!!」

 

「シオン。シアテ。いつまでも天でレアの姿を見届けてくれ」

 

 

もうヘルのアルカナムは耐えきれなくなり

 

シオンとシアテ、それ以外の炎人となった人間たちも、この世を去るように光となって消えた

 

もう悔いはない。涙も流さない。これは悲しみではない。これから明日を迎えるための誓いであり。これは良き別れ。娘たちが天にゆく姿を、レアは涙を流さずに天を見上げた

 

 

「大丈夫か?レア?」

 

「はい。もう私は一人ではありません。夫やシオンやシアテが心の中で見ていますから」

 

「それでいい。俺も常にそうして生きてきた。家族を想うのなら、家族が居なくても立派に生きて行かねば」

 

 

もうレアが道を踏み外すことはない。

 

もちろん他の巫女や戦士たちも、これ以上の嘆きはもう無い。オリンピアの市民たちも、これから明日に向けて、オリンピア復興のために、この過去を全て受け入れ。全ての絶望を抱いて、希望の明日を作り上げる心火を、彼女たちの胸から秘められた

 

 

「ヘスティア。念のため祭壇の地下に行って、原初の炎が完全に消えているか、今から一人で見に行ってくる。それまでに・・・謝罪はしておけよ?」

 

「っ!わかった。ごめんねジーク君」

 

「構わない。俺はもう君に謝罪を貰っている。あとはみんなだ」

 

「うん」

 

『主!私も!』

 

「お前はここに残れ。負傷した仲間達を助けてやってくれ。命令だ。わかったな?」

 

『あ・・・畏まりました』

 

 

俺は今から一人で祭壇の地下に行く

 

原初の炎が今まで置かれていた場所だ。地上まで炎が勝手に移動してきたとはいえ、本当にその残りがないか、一人で確認して行く

 

その間に、ヘスティアにはベル達に謝罪を済ませるよう、言っておく。ウンディーネが俺と一緒に付いて行くと言うが、ウンディーネは負傷した市民や仲間達を、回復魔法で助ける指示を送り、本当に俺一人で地下に降りて行く

 

そして、俺が祭壇の地下に入った後で、ヘスティアはベル達の元へ

 

 

「ごめんね、みんな。僕の勝手でこんなことになって」

 

 

「そうですよ。そんな事情があったなら僕らに相談してください」

 

「まったく。リリ達は家族なんですよ!一人で抱え込まないでください!」

 

「そういうことです。俺たちはの絆はもうここまで深まっているんですよ」

 

「ヘスティア様は一人じゃあありません。自分達が居ます」

 

「これからも一緒ですよ。ヘスティア様」

 

『だそうですよ。ヘスティア様。これが貴方の眷属達です』

 

 

「そうか・・・・じゃあ改めて礼を言わせてくれ!」

 

 

ヘスティアの謝罪に、ベル達は簡単に受け入れる

 

もうヘスティア・ファミリアの絆と言う炎は、誰も消せない灯火となり、誰も断つことのできない絆となった。

 

そして最後にヘスティアは告げた

 

 

 

 

「僕を助けてくれてありがとう!君たちがボクの眷属でいてくれてよかった!!愛してるぜ!みんな!!」

 

 

 

 

と、大きな感謝をヘスティアに貰った

 

これがヘスティア・ファミリアの絆の物語。このオリンピアの戦いは、主神と俺たちの絆の試練。これをみんなで乗り越えたのだ。この偉業と試練は一生消えない思い出となった

 

 

 

そしてオリンピアに、夜明けが明ける

 

 

 

これがオリンピアが明日を迎えた瞬間である

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。