クリスマス記念、特別章です
ですが、この奇跡の聖夜祭は『ゼノス編』終わった後、オリンピア編に入る前のお話です
少し、ややこしいですが、ご了承ください
謎の少女の親になる
これは起こるはずのなかった、俺とシルだけのとある真冬の話
俺とシルと・・・・・あの子の聖夜
そう、これが奇跡を表す物語
これは俺がファーブニルに変身した後の出来事
俺たちはロキ・ファミリアの全面戦争を仕掛け、勝利も無いまま、俺の人権はオラリオから捨てられることなく、今も俺はヘスティア・ファミリアの冒険者としてこここに居る。あの事件から二週間しか経ってない月日となった、その日は寒い季節となる冬、もうヘスティアの眷属となってからもうそんなに経ったのかと、やはり月日の流れは過ぎて見るとあっという間だと感じる
俺はと言うと
「シル!ステーキ出来上がった!持っててくれ!」
「うん!今行く!」
「リュー!三番テーブルの食器を下げろ!」
「はい!」
「アーニャ!接客は他に任せろ!一旦溜まった食器を全部洗え!」
「了解にゃ!」
「クロエ!新しい客だ!お出迎え!今三番テーブルが空く!そこへ案内!」
「はいにゃ!いらっしゃいませにゃ!」
「ルノア!五番テーブルが追加オーダーだ!」
「OK!今行く!」
俺は豊饒の女主人で厨房で働いている
フィン達の全面戦争の時、シル達を借りた貸しとして、俺はここでタダ働きしている。俺の料理の腕を知っているミアが、働いて返せと言われたが故の理由
どの道、俺にはこれかホームに居ることしかできない。前回の事件で俺の体は半分ファーブニル化した。左眼までも包帯で巻く始末。これ以上ファーブニルの侵食を悪化させないために、戦いを避けるためにダンジョン出入りをヘスティアに禁止された
そのため、ここで平和に酒場で働くことしかできない
まあ俺にとっては良い日常を送れていると思っている。こうして戦いを忘れて過ごせるんだ。十分な休みだと思っている。
「助かるよ、あんたがここで働いてくれて、こっちは大助かりだよ」
「接待はできないがな、こんな顔であるため、別に酒場で働くことに抵抗はない。俺もキッチンで料理をするのは好きだしな」
「それなら今度の『聖夜祭』も働いてくれるかい?」
「聖夜祭・・・・ああ、もうそんな時期か」
聖夜祭
この都市でも聖なる夜と呼ばれるめでたい日があり、それを祭るイベントがここオラリオで開催される
酒場である豊饒の女主人もそのイベントに合わせて営業する、そんなイベントでなら利用客も増えるだろうと利益も稼ぎも大きく手に入るだろう。しかし大忙しだとミアは店員不足でヘルプが欲しいと俺に頼まれる
今の俺はファーブニルの侵食により、ヘスティアからダンジョン出入り禁止を言い渡されている。どうせやる事もホームに帰っても書類仕事しかないため、暇になることは間違いなく
なら、暇つぶしにここを手伝おうと、その頼みを応じる。と言うより、ミアの取り引きでまだここでは働かないとならないため、拒否権も無いため、そのミアの提案を引き受ける
「構わんぞ、どうせ俺はこんな状態であるため、ダンジョンにも入れないしな」
「そう言ってくれると思ったよ。それじゃあ引き続き今度も頼む」
「了解した。ただ二日目の夜はホームに帰らせて欲しい。こちらも祝いがある為一度帰らなくてはならない」
「それなら、お仲間や主神も連れてウチに来な。ウチでアンタらだけの貸切にしてやるから、料理もこっちで用意してやるよ」
「それはすまないな。ヘスティアも喜ぶと思う」
「その分はしっかり働いて貰うけどね」
「無論、言われるまでもない」
こうして俺は聖夜祭もこの酒場で働くことになった
ただ二日目の夜はホームで祝い、する予定だったんだが、急遽ミアがこの店を使ってもいいと言われた。そうさせては貰うが、どういう風の吹き回しだろうな、あのミアが金も払わずにここを使わせてくれるのか、まさかとは思うが・・・・・姉上が関係しているのか?
なんにしても、そういうことなら使わせてもらうと、ミアの提案を喜んで引き受けて使わせていただく
「シル!買い出しに行っといでくれ!食材はこのメモに書いてある物だ」
「うん!わかった!ミア母さん!」
「待てミア、いくらなんでもシル一人にそれだけの量を運ばせるのは難しい、俺も行く。今やっと客も空いてきた頃だ。俺が抜けても問題ないだろ?」
「そうだね、男のお前が荷物運びしてくれるなら、シルも楽だろうしね。ああ、行ってきな。二人で」
「シル。行くぞ」
「うん!お願いねジーク!」
食材が足りないと、ミアはシルに買い出しを頼む。しかし、そのメモに書かれた食材の量は流石に女一人では無理があると目に見えた。
だから俺も行くと共に店を出る。こんな姿ではあるが荷物持ちにはなる。今客は空いている。俺が抜けても問題ないと、ミアもそう判断し、俺は勝手に抜けて出店へと向かう
出店通り
「これと、これ。あとこれもお願いします」
「は、はい」
「袋に入れたら、俺に渡せ」
「ひ!ひい!わ、わかりました!」
「・・・・・・・・」
「シル。気にするな。さっさと済ますぞ」
出店通りに辿り着き、メモに書かれた食材だけでなく、予備も買うべきだと、俺の助言で予備の食材も買う。シル一人ではそこまで持てないが、それをも持たせるためにも俺は付いてきた
しかしだ
目の前の店員も含め、この出店通りに居る屋台を構えている店員全てが、俺を恐れる眼を向けてくる
今は、以前の俺がファーブニルになる事件の後だ。
俺を邪険にする者や人としてではなく、怪物として恐れる者も居る。だがそういうことになることは承知。しかもこんな半分包帯を巻いた見るに堪えない格好をしている今の俺なら、化け物扱いされてもおかしくない。なぜなら包帯に隠している部分は間違いなく黒竜の体部になっているのだからな。無理もない
それでもシルは不満だ
その事件は最終的にイヴィルスに送り込まれた突然の怪物の乱入により、俺の捕縛は中止して、冒険者はそのイヴィルスに送り込まれた怪物を倒そうと討伐に優先したが、倒しきれず、俺がファーブニルになって怪物を殺し、二度もオラリオを救った。
そんな怪物になっても人のために戦ったにも関わらず、それでもオラリオ市民に怪物扱いのままにされているのが、シルには不満だった
怪物になっても人のために戦った。それなのに感謝もせず、軽蔑を喰らう始末。こんな恩を仇で返されたかのような扱いをされるなど、シルとしては我慢できなかった
「あの店員さんも、本当に失礼だわ」
「許してやれ、あれが人であり、別に間違ってはいない事だ」
「だとしても酷いよ。ジークはファーブニルに変身してもみんなのために戦ったのに」
「今まで人類はモンスターを敵にしてきた。それに変身ができる人間が出てくれば差別もする。こればかりは受け入れるしか、今の俺には何もできない。弁明もしない上に、事情を言ってもわかろうとしないからな」
「このオラリオでも、平等なんて無いんだね?」
「ああ、外の世界に行っても、俺たちと言う下界の子供が居る限り、その本質は変わらない。神はこの下界で変わっても、俺たち人間はいつまでも過ちを繰り返して変わることのない愚かさを晒す。それが俺たちだ」
やはりどう抗っても、俺の差別は消えなかった
この人間社会において差別は永遠に解決できない、人間の悪そのもの。俺の差別が生まれ、その扱いになることは覚悟していた。ここに来る前から怪物になってここに戻ることを選んだ俺の選択
自身の正体を知られるのはいつか起こることだと、俺は何も否定しなかった
それに
「だが俺としてはそんなことはどうでもいい。俺を差別をしようがな、なぜなら君が俺の味方になってくれるから」
「ジーク・・・・」
「君が味方になってくれているから、この程度の差別は気にしない」
「そんなことを言ってくれるなんて、嬉しいわ」
「他の者が居たら言えないがな」
どんな時でもシルが俺の味方になってくれる。それだけで俺はそんなものなど気にしない
むしろ彼女だけは味方してくれると俺の中では思っていた。彼女が俺を裏切ったことは一度もない。俺のために命を差し出す程な、俺も彼女のために全てを捧げた。お互い愛し合っているとでも言わんばかりに
とにかく、別にオラリオ市民がどう思うかなど、俺にはどうでもいい。ここにいつまでも俺の味方になってくれるシル・フローヴァがいるのだからな
どんなことであろうと、俺は彼女のために今ここに居る。どう思うかなど好きにしろと俺は気にしない
まあ、こんなことはベル達はともかく、リヴェリアとアフロディーテとアルテミスには言えないがな、嫉妬しそうだしな
すると
ドス!!!
「っ!」
「ん?ジーク?」
「あ、ごめんなさい」
「すまない。怪我はしていないか?前を見ずに余所見をしてしまった」
「だ、大丈夫です」
突然、俺がシルの会話に集中していたせいか、前方不注意で、俺の足に女の子がぶつかった
怪我は無いようだが、何やら格好がおかしい
「君、大丈夫?どうしてそんなにボロボロなの?」
「それは・・・・・」
「っ!君は・・・・」
「ジーク?」
「シル。彼女は・・・・??」
「え!?本当に!?」
「ああ、間違いない。それも・・・・『珍しいタイプ』だ」
目の前に居る小さな少女は髪もボサボサで、服も汚れている謎の女の子
近くに親も居る様子はなく、ここで一人でなぜか彷徨いているようだが
俺の眼には、『普通の少女』ではない事がわかった
もちろん正体をシルに伝えたが、なぜこの『少女』がここに居るのか、中身を知っているからではあるが、この少女が『ここに居る』のがおかしい。なぜここに居るのか色々質問をしようと思う
しかし
グウウウウウウウゥゥゥゥゥ
「あ・・・・」
「まあ、お腹が空いているのね」
「中身はあれでも空腹はするからな」
「ジーク。お願いがあるのだけど・・・」
「わかっている。だがまずは名前だ、君は名前はあったりするのか?」
「えっと・・・・・・」
「やはり無いか。仕方がないから、ウチの店に来るんだ。何か食べさせてやる」
「本当!?」
「ごめんね、ジーク」
「問題ない。ミアやリュー達は俺が説明する。それにこの少女がここに居ると言うことは。『訳が』あるに違いない」
「そうかもね。とりあえず、この子を連れて行こう?」
「ああ。その前に自己紹介だ。俺の名前はジーク・フリード。ジークと呼ぶんだ」
「私はシル・フローヴァ。シルって呼んでね?」
「う、うん」
「それと名前は無いんだったな、シル。彼女に名前を付けよう。名無しだと呼ぶ時困る」
「そうだね、じゃあ・・・・・」
こうして俺とシルは謎の少女を酒場へと連れて行く事にした。
放っても可愛そうでもあり、この少女をここに野放しにするにはあまりにも『危険過ぎる』ため、止むを得ず俺とシルで酒場へ連れて行くことにした
だが、名前が無いのは困る
呼ぶ時なんと呼べばいいのか、呼び名がなければと思い、無いのであれば、俺とシルが付けるしかないと、親代わりになるしかなかった
そして付けられる名前は
「ノエル・・・です。よろしく・・・お願いします」
「シル、ジークさん、この少女は?」
「この子どうしたの?」
「ボロい服着ているにゃ」
「どこかのスラムにでも連れてきたのかにゃ?」
「まあ、そんなところ、腹を空かしていたから連れてきたの」
「放っておくわけにもいかなくてな。しばらく俺とシルで面倒を見るから、そのつもりで頼む」
とりあえずノエルと、シルが名前を付けて、酒場まで連れてきた
当然リュー達に説明するも、突然のこと過ぎて困惑している。まあ普通の反応である。いきなり汚れの激しい服を着ている少女を連れてくるなど、誰もが驚きで当然だ
「えっと、ご両親と逸れたのですか?」
「いや、近くに親と言う者は居なかった。町裏に一人で居て、身なりが汚れていると言うことは、おそらく・・」
「貧困民ですか・・・・」
「多分ね、ご両親はダンジョンに行って帰ってこなかったのかも」
「とにかく、この少女は俺とシルでしばらく面倒を見るから、皆、今だけはノエルをよろしく頼む。ミア。店に居る時だけでいいから、ノエルをここに置かせてやってくれ」
「それはいいけど、ジーク。この娘は・・・」
「やはりお前ならわかるか、まあ、『そういう』ことだ」
「この子をあんたとシルで面倒を見る気かい?」
「ああ、夜も俺のホームで面倒を見る。その前に飯を頼む。代金は俺の給料分から差し引け」
「この子を匿うと、あんたもシルも苦労するよ?」
「だとしても、俺もシルも見過ごすことはできない。俺もシルもお人好しでな」
ノエルをひとまず今はこの酒場に置いておくことを、ミアの許可が降りる
突然のこともあるため戸惑いもするが、ノエルをここで置いておく事が決まった。とは言っても夕方まで、夜は俺のホームに連れて帰るしかない。
ミアはノエルの存在に気づいた。もちろんこれ以上口出さない為に俺が口止めする。だがこのままノエルと言う子を匿うのは危険だと言ってくる
無論、そんなことは俺もシルも承知。それでもこの子を近くに置くのは、俺とシルのある意味悪い所だろうな
とにかく、俺とミアで適当な料理をご馳走する。あっという間に料理を食べ残すことなく、全部食い尽くす。体は人間と変わりなく、暴食程ではないが、人並みに食事はするようだ
「ごちそう・・・さま・・・美味しかった・・です」
「そうかい、それはよかった」
「口に合うようで何よりだ。シル。しばらくは客はまだ来ない。君がしばらく自室で世話を頼んでも構わないか?」
「うん、任せて、お風呂使って髪も洗って、服も新しくしなきゃね」
「ああ、頼む。衣服はこの金で、何か買ってきてやってくれ」
「うん、ありがとう」
「フニャ!?ジーク!シル無しでこれから営業をする気にゃ!?」
「できるだろう?アーニャ。こっちにはリューも居る、今日も混むだろうが、お前達だけでも問題ないだろう?」
「私も居るのに、無理だと言いますか?アーニャ?」
「無理にゃ!シル無しで営業だなんて!」
「これから聖夜祭前なのよ!絶対いつもより混むって!ジーク!せめてヘルプが欲しいわよ!」
「やれやれ、たかが一人抜けるだけだと言うのに、仕方ない。ミア。二人分の給料を追加できるか?」
「できるけど、当てがあるのかい?」
「ああ、ちょうど『ホーム』に当てがな」
シルにノエルの面倒を頼むが、そうなると彼女は今日は営業ができなくなる
一人接客が消えることに、アーニャ達に抗議をされる。確かに今日は聖夜祭前、いつもより混むかもしれない。当日ではないと言うのに、前祝いで祝う団体も居るかもしれない。それだと流石に四人では回れないと。アーニャ達に抗議される
やむを得ないと、ミアに今日だけで構わないと、二人分の給料を頼むと、承諾し。俺のホームから二人程助っ人を頼むことにした
その助っ人の二人とは
「ええ、ジークさんのヘルプで来ました。ベル・クラネルです。お願いします」
「ヘスティアだよ。今日だけ店員としてよろしく」
「ベルとヘスティアを呼んで来た。これで問題ないな?」
「にゃ!白髪頭にゃ!」
「神ヘスティア様も居るなんて、ラッキーにゃ!」
「これなら苦戦も免れるかも!」
「すいません。私たちのワガママでお二人を働かせることになりまして」
「まあ、僕らも今日だけは暇だったからね」
「僕たちホームに居てもやることが無くて、今リリやヴェルフや命さんや春姫さんは、聖夜祭で皆集まれるように、当日やる仕事を今日で無理に終わらせる為に。今ホームではウンディーネさんとノームさんしか居なくて、やることがあんまり無くて、時間が空いてましたから」
「なんにしても助かるよ。ジークから聞いていると思うけど、今日だけの分出してやるから、キッチリ働いて貰うよ」
「はい、任せてください」
「うん、しっかりやるよ。僕にとってはバイトと変わりないからね」
助っ人としてベルとヘスティアを呼んだ
ベル達はダンジョンに行っている訳でもなく、普通にホームに居ることを知っていた俺は、暇だろうと、あまり多くはないが金を手に入れるための臨時のバイトを頼んで引き受けてくれた
無論、ヘスティアとベルにも事情を説明してある。事情を説明した上で、酒場の営業を終えたらホームに連れ帰ることも話してある
そして、ヘスティアだけはノルンのことをわかっている
「あの子がそうかい?」
「ああ、ヘスティア。君はあの子の事をどう思う?」
「どう思うも何も・・・・『あの子がここに居る』なんておかしい」
「だろうな、あの事件の後だと言うのに、今何か起こっているのかもしれない。ノエルが居るなら、近くに『あいつ』も居るだろうしな」
「やっぱりジーク君はわかるんだね?」
「あれくらいはわかる。が、『実際に見る』のは初めてだ」
「僕もだよ。あの子がここに居るなんてあり得ない。このオラリオでまた何か起こるに違いない。少し警戒が必要だね」
「あの子の側を離れたら大変なことになる。どうせしばらくは、聖夜祭の最終日まではリリルカ達はホームに戻らない。俺とシルで面倒を見させて欲しい」
「え!?あのシル君もホームに連れて行くのかい!?」
「困るのか?彼女はノエルの面倒を見る母親そのものだ。彼女もホームに連れてこなくては、それとも・・・・今の『彼女は苦手』か?」
「え?・・・・ジーク君もしかして・・・シル君の事気づいている?」
「まあ、それなりにな。話を戻すが、今あれだけ仲良くしている二人を引き裂く勇気が君にできるか?」
「え、ああ・・・・・もうあそこまで仲良くなったんだ」
「それで許可して貰えるか?部屋は俺と同じでいい。俺の側なら問題ないだろ?彼女も下手なことはしないさ」
「う〜〜〜〜ん、じゃあジーク君が一緒に居るなら、って部屋も同じ!?」
「その方が良い、何が起こるかわからないからな」
営業を始める前に、ノエルを保護するためにホームに連れて帰る許可をヘスティアから得た
ヘスティアもノエルがただの少女ではないと神の眼なら当然の見切り、しかし、尚更このまま放っておくわけにもいかず、何かこれから嫌な予感が起こるかもしれないと、ノエルをホームで連れ帰ることも許可してくれた
ただ、ヘスティア個人においてはシルまでもホームに連れて行くのはあまり納得していなかった。シルの『中身』を知るヘスティアにおいては、あまりにも彼女が苦手らしく、俺が側に居るから問題ないと、結構を悩んでいたが、なんとか了承してくれた
「シル。ノエル。俺たちが営業を終えたら、ウチのホームに住んでくれ。ここしばらくはな」
「いいの?」
「彼女を放っておくことはできない。だからと言ってここに置くのも、面倒を見る人間もいないからな、アーニャ達もいきなりなこともある上に、子供を急に保護するなんて、あいつらからすれば警戒もするだろう。幸いノエルは君や俺にしかあまり話しかけない、なら、俺と君がなんとかするしかないだろう。だからホームに来てくれ、君もな」
「ありがとうジーク。面倒を掛けるね」
「ノエルが俺や君にしか懐かない、仕方ないことだ」
ノエルは謎の存在だ、あれこれとここに置いていいと思えない
だから少なくとも、彼女を知る俺やシルが共に居た方が安全だと思っている。もう時期聖夜祭だと言うのに波乱なことが起こるなど、やはり俺たちはまた何かに巻き込まれる体質なのだと思っている
「あの・・・ジーク・・・」
「なんだノエル?」
「わ・・・わ・・・私もここでお手伝いしたい!」
「なに?君がか?」
「うん、だ・・・・ダメ?」
「さっき美味しい料理を食べさせて貰ったから、どうしてもお礼がしたいんだって、何か出来ることで手伝いたいをしたいみたい」
「自立の強い子なんだな、そこまで言うなら、シル。君の教えで掃除をさせてやってくれ。まずはそれからだ」
「うん!任せて、行こうノエル。やり方を教えるね!」
ノエルが何か手伝いたいと、まだ幼い子供でありながら、先程の食事のお礼に何か手伝えることはないかと言われる
まだ常識や周囲についてもあまり理解できていないのに、何かのために働きたいと自立を見せる。それは素晴らしいが子供であることは変わりないため、あまり無茶をさせないために、まずは酒場の掃除をさせる。道具を使った掃除なら子供でもできると、簡単にできることからさせる
シルの教えでできるはずだと、一旦酒場の更衣室で、ノエルにも店員服を着させて働きやすい格好をさせる。ひとまず酒場のテーブルルーム以外の部屋を掃除して貰う
「さて、ノエルはシルに任せて、俺たちは今客が少なくなったから、夜の準備を進めるぞ、ヘスティアとベルは接待を頼む」
「OK!」
「わかりました!』
ノエルに集中するだけでなく、俺たちはこの酒場の店員として、本来の仕事を始める
ベルはトークもコミニュケーションが強いため、接待を頼んでおく。ヘスティアもバイトでも接待もしているから彼女も接待を任せる。今は夕方、客はあまり入ってこない。今の内に夜の準備を始める
ノエルの面倒込みではあるが、なんとか聖野祭に向けて頑張るのみだった
そして、夜を迎える。
夜の酒場は相変わらず大繁盛をしている。冒険者の町だ。冒険者が酒場で酒を飲みにここへ来るのは一時の楽しみである。だから忙しく、俺たちの営業はベルとヘスティアが居ても荒だらしい
そんな中でノエルが、頼み事をされる
「なに?ノエルが接客をやりたい?」
「うん、どうしてもみんなのお手伝いをしたいみたい、ノエルってそういう子だったりする?」
「そんなはずはないが、おそらく『そういう子』なのだろう。だから誰かのためになろうとする優しい子なのかもしれない」
「ジーク・・・私もお店手伝いたい・・・」
「皿洗いまでしてくれたのに、今度は接客までもか、君は予想以上に恩を重んじる子なんだな」
ノエルが次に俺に頼んできたこと
それは豊饒の女主人の店員の手伝いである
つまりはまだ幼い彼女が接客業をやると言うことだ。皿洗いしてくれただけでも十分だと言うのに、接客までやらせて欲しいだの、本当に良い子としてできているのだと理解した
しかし
ここは酒場、柄の悪い客も出てくるような店、そんな店にまだ小さいノエルにさせるのは、何かトラブルを起こるかもしれない。やらせるにしては危険だと俺は思うが、まあ俺たちのために働いてくれるのは嬉しい、それだけ彼女は人のために動ける子なのだろう、仕方あるまいと、シルと共にやらせる
「わかった。その代わりシルと共にやってくれ、柄の悪い客も居るかもしれないからな、シル。頼む」
「うん、任せて。やろうノエル」
「うん!ジークとシルのお手伝いになる!」
ノエルには、シルと共に接客業をすることにした
まだ一人でやらせるわけには、まだ初めてでもあるため、シルと共にやらせれば何かトラブルが起きても、シルが対応するから問題ないはず
何かあった場合は、その時はその時だと。とりあえずシルに任せる。始める前にノエル用の小さい店員服を用意した。小さい子供用の店員服があったとは意外だ。ミアが言うには金に困ったパルゥムがバイトで来る時もあるため、そのパルゥムの店員服を着させた。客のもてなしの言葉はシルに教わりながら口にする。まあ、一緒に営業をするから問題ないと思うが、ここは全てシルに任せる他なかった
「いらっしゃいませ!」
「い、いらっしゃいませ!」
「あれ?シルちゃん、その子供は誰だい?」
「この子は新人のノエル。ほら、教えられたとおり、自己紹介して?」
「う、うん、ノエルです。い、至らぬこともありますが、よろしくお願いします」
「へえ、礼儀正しいな。パルゥムでもない感じだし、ま、まさかだと思うけど、まさかシルちゃんの・・・・」
「あ、わかります?実はこの子は・・・・」
「シルさん!?多分言いたいことは僕でもわかりますので言わせて貰いますけど、それはジークさんも困ることですので、やめてください!」
「コラ!シルくん!勝手に僕の眷属を夫呼ばわりは僕でも許さないぞ!!」
「え、えっと・・・・こちらのテーブルをご利用ください」
「お、おう」
初めての接客ではあるが、それでもノエルは客のもてなしをしっかりと行う
客は突然の子供の店員がお出迎えされたことに驚く、そこは無理もないのだが、客はノエルをシルの子だと勘違いし、シルがそれらしい事を言おうとしたら、なぜかベルとヘスティアが止めた。シルが何を言おうとしたかは知らないが、そんなやり取りしている三人を置いて、ノエルは店員として仕事を真っ当すべく、客をテーブルに案内する。
「メニューはこちらです。えっと・・・今日のおすすめは・・レ・・レアステーキです。ご注文が決まりましたら、お申し付けください」
「おう、本当に礼儀が良いな」
「小さい子供の店員も良いな!」
「そ、それでは失礼します」
「なんとかやれそうじゃないか」
「ああ、まだしばらくはシルと共にやらせるつもりだが、学習能力は高いな、すぐにでも一人でできそうだ」
「と言うより、今一人でやっているけどね」
「シル!何を言っているか知らないが、とにかくノエルと一緒にやってくれ!」
「あ、ごめんなさい!」
「今のシルの話聞こえないのかい?」
「ああ、彼女何か言ったのか?」
「聞こえないなら、それでいいよ」
何を言い争っているのかは知らないが、そんな事をしてないで、ノエルの手伝いをしてくれと言い争いを止めて、ノエルと接客に当たらせる
ちなみにシルがなんの言い争いをしていたかは知らない、そこまでは厨房に居る俺には聞こえなかった、ミアは聴こえていたらしいが、それでも俺は深くは聞かなかった。俺には関係のない話だと思って、若干ヘスティアとベルの声が大きく聞こえ、俺に関しての話をしているようだが、今は夜、客は多い時間で多忙であり、深く聞くのはやめた
それから数時間が経つ
数時間を得て、ノエルがシルの教えを学び、ほぼ一人でもできるようになった。
飲み込みが早いのだろうか、シルの教えが良いのもしれない、一つ一つ丁寧に教えている。でも一日で全部覚えるなど、普通の子供の割にはあり得ない。元々そういう子だったのかもしれない。シルが一時間だけ個人の判断でできるかどうか、シルは一度遠くで見守る。すると、本当にノエルは個人の判断で接客を見事やっていく、初めての接客とは思えない。オススメや日替わりもしっかりと覚えて客に伝えている。ノエルは優秀な少女のようだ
「ノエル!すごいにゃ!」
「あんな簡単に、皿運びや皿洗いまで凄いわね!」
「初めて入ったリューと段違いにゃ」
「クロエ、それは私がまともに仕事できなかったって言いたいんですか?」
「初めは凄かったにゃ、皿をいくつか普通に割ったにゃ」
「じゃがいもの皮も全然剥けなかったしね。ナイフの扱いわかっている癖に」
「リューはポンコツだからにゃ」
「あなた達、後で覚えておく事です」
「なにノエルばかりに任せて!あんたらは働かないんだい!あんたらもさっさと動きな!!」
「「「「はい(にゃ)!!!!」」」」
「リューは初めはそんなに酷かったのか?ミア?」
「まあね、教育が大変な程にね」
「不器用な所あるからな、あいつは」
「ジークさん!?ジークさんも私がポンコツだと思っていたのですか!?」
「そうとは言っていない。だが不器用な所があるのは残念ながら事実だ」
ノエルの接客対応に、リュー達店員も見事だと好評だった。しかし、ノエルがまだ幼い少女でありながら、初めてとは思えない対応をしっかりしていて、自分達よりも上手いのではないのかと、本当にノエルが普通な女の子なのか疑問に思うも皆が驚く
その驚きの働き具合に、初めてリューがこの酒場で働いた時の不器用なところと比較にならない程、リューよりもノエルの方が優秀だとアーニャ達は少し馬鹿にしている
リューは若干それについては否定しているが、ポンコツと言う悪い言い方をする気はないが、俺は少なくともリューが器用な女ではないと、残念ながらエルフだからとかではなく、彼女の欠点であることは明確に俺は知っている
とにかく、ノエルは立派に店員として働いている。何年もここで店員しているアーニャ達もノエルに負けないよう、接客を続ける。
すると
「すまない、席はあるだろうか?」
「はい。こちらの席にどうぞ」
「おや?子供?」
「職業体験をしている子供なんです。至らぬ所あるかもしれませんがよろしくお願いします」
「ノエルです。よろしくお願いします」
「礼儀の正しいお嬢さんですね。それでは君におもてなしをお願いできますか?」
「はい。お任せください」
「ジーク!お一人客来店です!」
「ああ、また一人入ったか、あの赤い髪・・・・・・・っ!」
「ジーク?」
「あの『男』は・・・・・シル。ノエルから側を離れるな?」
「え?」
「君ならわかるだろ?あの男が接客している時は絶対にノエルと一緒に居てくれ」
「・・・・・・やっぱり、そんな険しい顔をしてそんなことを言うってことは、あの人のことを何か知っているの?」
「ああ、ヘスティアにも、なるべくノエルと一緒に働くように言ってくれ」
「うん、わかった!」
夜の酒場は賑いが激しい。一人だけの客でも酒を飲みに来る客は居る、しかし、俺は今入ってきた黒いトレンチコートを着た赤い髪をし狐眼をした男に見覚えがある
あの男は間違いなく、あの『組織』のヒューマン
もしかしたら、利用できる『ノエル』を探しにここまできたのだろうかと、あの男が酒場に居る間は何がなんでもノエルの側を離れないようにシルに言った
あの男を知っているからこその、俺の警戒通告だった
「ジークさん?どうかしたんですか?」
「あの赤い髪をしている人をご存知で?」
「ベル、リュー、懐にナイフを隠し持っていろ」
「え?」
「ジークさん、何を?」
「あの男が変なことをしたら取り押さえろ。あの男が客として大人しくしている場合は何もしなくてもいい、とにかくあの男を警戒していろ?いいな?後で説明するから、今は言う通りにしろ」
「は、はい」
「わ、わかりました」
俺の険しい顔をしていることに気になって、ベルとリューが気になって聞いてくる。俺は二人にも念の為服の下にナイフを隠し持つよう指示する。もちろんそれを言われた二人においては俺が突然のこと過ぎてあまりに理解できないが、言われた通り、ナイフだけ二人とも腰の後ろに隠し持つ
リューはあの男を見て、七年前を味わっているならわかると思ったが、どうやら実際に見るのは初めてのようだ
とにかく、あの男が来店したからには、俺も警戒体制を取りつつ、キッチンの仕事をする。奴の正体を知っている俺は、まさかとは思うがノエルを狙っているのではないのかと、奴はノエルを見つけにここへ来たのかもしれない。奴なら絶対にノエルを使うと思うからな
警戒した方が良いはずだと、俺はあの男を危険視した
「オススメなのがあるのか、ではそれを貰えるかい?ノエルちゃん?」
「はい、お任せください」
「すいません、まだ幼い子供ですけど、ちゃんとできる子ですので、何卒よろしくお願いします」
「いいや、構いませんよ。子供でも必死に働く姿は素晴らしいですからね。私はこの子でも問題ありません」
「ありがとうございます。ちなみにお名前はなんと言いますか?」
「私は『ヴィトー』と言います。しがない冒険者ではありますが、よろしくお願いします」
「はい、ごゆっくりどうぞ」
シルが奴の名前を確認した。
名前はヴィトー
俺は知ってはいたが、まさかまだこの街のどこかに潜んでいたとは、いや、『奴ら』がこの街の地下に居る時点で、奴がここに居てもおかしくはないのだが、まさかこのタイミングで出てくるとなると
やはり今『ダンジョン』で、『奴』が居るのかと
俺は推測した
「お待たせしました。このお店のオススメです」
「これは美味しそうですね、是非とも美味しくいただきますね、ノエルちゃん」
「はい、ごゆっくりどうぞ」
「・・・・・・・・・・」
シルが近くでノエルを見守っていた。奴がこの酒場で居る間は本当に何もせずに、酒場の料理と一本のワインを口にして、長いせずに普通に店を出た
だが
俺の眼は誤魔化せない
奴がノエルを見ていた眼は
完全に狙いの眼をしていた
ノエルに関する何かの狙い、ただ酒場で酒を飲むためじゃない。明らかに観察をしていた。アーニャ達やベル達も居たのに、明らかにノエルとしか関わっていない。あの狐眼であろうとも、俺の眼にごまかしは通用しない
もちろん俺だけでなく
「ジーク君、さっきの店員だけど・・・」
「やはり君も気づいたか、ヘスティア」
「うん、ノエル君を確かに僕らで守った方が良いみたい」
「わかってくれて助かる」
ヘスティアもだ
女神なのだから、どのようなヒューマンでも嘘は見抜く。だから彼がどんな人間なのかすぐにわかったようだ
今回もまた、よからぬ事が起きると彼女も警戒した。
しかし
「でも、珍しいな」
「何がだ?」
「あの『シル君』がここまで警戒するなんてね、『いつもは嘘を付く』癖に」
「嘘ではないのだろう」
「え?」
「嘘じゃないから必死になる。『彼女も女』だ。そういう想いがあるってことさ」
「本当にわかるんだね。ジーク君は」
「まあな、そういうところは『あいつ』とそっくりだから、俺はすぐにわかった」
シルがここまであのノエルに執着しているのが珍しいと言う。ライたちと言うオラリオの孤児院の子供達の面倒を見ているのだから、珍しくは俺も無いと答えた
だけでなく
今日の彼女はそういう女なんだと、俺は不思議に思うことなくわかっていた。
本当にあいつにそっくりだ。あいつもそうだけど、こういう愛らしいのができたから素直になる。そういうところは『一緒』なんだなと思った
シルを知っているヘスティアにとっては不思議なのだろう。だから本当に彼女なのかと疑うからこのまま彼女もホームに連れて行くべきなのかと悩んだ
問題ないと俺が最後までヘスティアを説得し、ノエルがシルと共にホームに行きたいと言うため、小さな子供のお願いを聞くしかヘスティアに選択はなく、俺はシルと共にノエルをホームに連れて帰った