営業を終えて、ホームに帰宅した。ホームにはウンディーネとノームしか居ない。他はしばらく聖夜祭の最終日まで帰ってこない。リリルカは今まで世話になったポムの爺さんの所でお手伝い、人手が欲しいと言うことで今まで世話になった時があったようで、恩があるため、泊まり込みで手伝いに行っている。ヴェルフも同様、ヴェルフはへファイストスの手伝いで泊まりかけ、聖夜祭でもへファイストスの店は繁盛になるため、最終日の午前までヴェルフはへファイストスの武器制作、命と春姫はタケミカヅチのヘスティアとは別のバイト先で手伝い。そっちも泊まり掛けで不在
つまり今ホームに居るのは俺と、ノエル、シル、ベル、ヘスティア、ノームとウンディーネのみである
「わあ!ここがジークの家?」
「ああ、好きなようにゆっくりとくつろいでくれ」
「わーい!このソファー!フカフカ!」
「あんまり大はしゃぎしちゃダメだよ?」
「シルも一緒に座ろう」
「はいはい」
「と言うわけなんだ。ノーム君、ウンディーネ君」
「しばらくシルさんもお邪魔しますので、ここで面倒を見る形を取らせてください」
『わかりました』
『それは構わないのですが、あの少女は・・』
「やっぱり二人はわかるんだね?」
『はい。ヘスティア様もわかってはいると思いますが・・・』
『あんな子がまだこの世界に居たなんて・・・』
「ノームさん?ウンディーネさん?どうかしたんですか?」
『いいえ、貧困民が珍しいと思いまして・・』
『あんな小さい子供までも、この街に居るんですね』
「僕も実際に見たことないですけど、ジークさんに聞いたのですが、出稼ぎで家計を作るために冒険者になる人も居るみたいです。それでダンジョンで上手くいかずに亡くなってしまい、子供だけが残されて貧困に居る人も居るそうなんです」
『そうなんですね・・・確かに冒険者になった方がお金も安心するかもしれませんけど・・』
『まさか・・・あんな子まで・・・』
一応ノエルは貧困民の子供だと説明する
しかし、ウンディーネとノームはノエルを見て普通の子ではない事がわかった。ベルにはまだ説明してないらしく、貧困民であることを誤魔化す。ノエルのことについてもう説明しても良いと思うが、ウンディーネとノームに俺が予め話さないように言った
でないと、多分ノエルの『結末』を受け入れられなくなると思い、俺はベルの優しさを考えて、ノエルの正体と『全て』を教えたら悲しくなると思い、これから受け入れることのできない結末を知って悲しむのではないのかと、ウンディーネとノームには、ベルには話さないよう言った
ベルはなんでも悲しみを避けようとするからな、ノエルが『そういう子』だと、これからどうなるかも、知ったら避けるようなことをするかもしれない、それが一番ノエルのためにならないと、そんなことをさせないためにも。俺はベルにはあえて話さないよう、ヘスティアにも口止めした
「ジーク!ジークも座って!隣に!」
「ああ、わかった」
「なんか私がママで、ジークがパパだね?」
「言うと思った。シル」
「じゃあパパって呼んでもいい?」
「ノエルに任せる。しばらくは俺とシルで親代わりするのだから、そう呼ばれても構わない。シルは?」
「私は全然OKだよ。将来のためにもね?」
「将来はともかく、ノエルがそうしたいなら、俺も反対はない」
「わーい!じゃあパパ!ママ!」
「ああ」
「はーい」
『シルさん。主様と夫婦ごっこでもする気ですか?』
『流石に好き勝手が過ぎるのでは?』
「ノームさんとウンディーネん!ノエルちゃんのことを思ってですから!変な意味はないですよ!」
「いや〜〜。シル君のことだから怪しいな〜」
「神様!?」
親代わりをするくらいなら、そのついでに父と母と呼びたいと言われたため、俺は別に気にすることなく、平然と受け入れる。当然ではあるがシルが夫婦な真似がしたいだろうから、そんなことをしたいと言い出したのは、俺は理解している
別に夫婦な真似をするくらいは別に構わない
ウンディーネとノームは何を不満にしているのか知らないが、俺たちの夫婦な真似事に睨んでいる。何を睨んでいるのか知らないが、ヘスティアは何かを理解しているようだ。ちなみにベルも、まあ別に夫婦のふりをするのは良いが
「ねえパパ?一緒にお風呂入らない?」
「パパもお風呂〜」
「それは却下。流石に君たちだけで行ってくれ」
「コラシル君!それは流石にダメだ!不純異性交遊は僕は認めないぞ!」
「ノエルが居る時点で交遊でもないけどな」
家族であることを良い事にシルは俺とも一緒に風呂も入ろうと言うが、そればかりは却下。他も居るのだ。入るわけにはいかない。まあ、俺は女体に興味はない。シルだけは特別で男として見たい気持ちはあるが、今の彼女は別であるため、そのような気持ちにはなれなかった
だから寝る時以外は別となった
すると、そんな話をしていると、ベルが
「ジークさん、さっきの話の続きをさせてくれませんか?」
「ヴィトーの話か?」
「はい、営業終わりにリューさんやアーニャさん達にも言いましたけど、本当なんですか?あんな優しそうな人が・・・」
「そうだ。奴は『イヴィルス』だ」
「信じられないです。あんな人が堂々と人前に出てくるなんて・・・」
「このオラリオの地下である。ダイダロスには、お前もわかっていると思うが、まだテロリストは居る。ギルドでも全員指名手配できていない。その内の一人が奴だ」
ヴィトー、今日酒場にやってきた客、間違いなく奴はイヴィルスだ。
ヘスティアもわかっていて見張っていたが、今日のところは何もせずに客として大人しくしていた。だが、俺にはお見通しだ。
「奴はノエルを探しに来た。ノエルを使ってダンジョンで『アレ』を召喚するに違いない」
「アレって・・・なんです?」
「彼女には怪物を引き寄せる力を持っている。人目見ただけで、それがわかった。どの道彼女は狙われる。守るのを手伝ってくれるか?」
「もちろんです!リューさんもそれについてはやる気があるようですし」
「奴は七年前に関わりがある。リューもな、ある意味因縁の相手だ。リューはイヴィルスを見逃す事ができない程苦しい過去を持っている。奴を野放しにはしないだろう。俺としては助かるが、彼女に殺しはさせない。俺がやる」
「ジークさん、また!」
「ベル。お前はここオラリオの七年前を知らないからそんなことを言えるのかもしれないが、俺もここに居た訳ではないが、世の中人間全てが善と言うわけじゃない。神も同じだ。でなければ・・・・モリガンやアポロンがあんなことをしてくると思うか?」
「それは・・・・」
「理解したくないのはわかる。しかしそうでもしなければ、守る者を守れない。悪意を持った人間は相手から全てを奪うまで止まらない。それが英雄の敵である『悪党』と言う者だ。悪いが殺しは悪だと認識しているお前からすれば許されないかもしれないが、聞き入れる気はない」
「英雄の敵・・・・・」
残念ながら、ヴィトーを殺す方針は変えない
ベルは未だに、いや、何があっても殺しは悪だと、殺しを否定する子供だった。言うことは正しい。その通りだ殺しは悪だ。だが、そうでもしなければ、油断を見せたら殺しにかかるのが、悪党だ。英雄の敵だ。理解してくれと思いたいが、残念ながらそれを受け入れて貰えないだろう。
そういう子供なのだからな、多分次の答えはこうだろう
「じゃあ・・・・・」
「ん?」
「僕が・・・・・」
俺がヴィトーを殺すと言ったら、ある頼みをしてきた
それは
「僕がヴィトーさんを止めます!!」
「・・・・・そう言うだろうと思った」
だろうな、ベルの次の答えが俺はわかるようになってきた。
俺に殺しをさせないために、彼が殺しができない程打ち倒すと頼んできた。やはりベルならそうすると思った。そういう所は頑固だからな、こいつは
「もう僕はジークさんにそんな汚れ仕事をさせたなくない。ジークさんがそんなことをする前に僕が彼を止めます」
「そうか、別に俺は気にしてないけどな」
汚れ仕事か、そんなことを言われると思わなかった。今までも散々なことをしている。今更に過ぎないと思う
だが、それでも自分達のために殺しをして貰いたくないためにも、ベル自身で動くと決めたようだ
なら
「わかった。ヴィトーはお前に任せる。俺はあの子を連れてダンジョンに行く。その時は任せるぞ?」
「はい!!!」
こうして、ヴィトーはベルに任せる事にした
彼がそこまですると言うのなら俺に反対はない。少しでも力になりたいが故なのか、奴は何がなんでもベルが止めると決まった
あの事件以来、本当に強さを求め続けているベルに、任せても良いと俺は彼に全てを託した
「さて・・・今ダンジョンでは何が起こっているんだろうな」
彼女がここに居るなら、今頃ダンジョンは酷いことが起きていると想像する
ここからじゃあダンジョンの奥地まで気配は感じ取れない。『奴の魔力』も、だが、どの道この聖夜祭も平和にはいかない
結局また俺たちは面倒ごとを持ち込むのだった
でも
「パパ!こっちに来て!」
「ほらパパ!」
「ああ、今行く」
俺はノエルを放っておくことはできなかった
本当に父親にでもなった気分だ。なぜノエルを放っておく事ができなかった理由は、おそらく母に似たのかもしれない。雷神の癖に人間想いの神でもあった。その血縁が故なのか、俺はなぜか、ノエルのことを本当の娘かのように可愛がるのだった
「ノエル。髪を手癖ですくのはやめろ。俺が櫛ですくから、顔を動かすな」
「はーい!」
「わあ!ノエル羨ましい!」
「この後はシルな」
「やった!ありがとうジーク!」
今は、家族としての味わいを過ごすのだった
父が居なかったからこんなものなのかわからないが、もしも冒険者になっていないで、普通な職に就いて、シルと結婚して娘ができたら、こんな平和な家族な空間になっていたのだろうか
そんな感じをしながら、俺はホームでノエル達とあまり離れずに過ごす
すると
「っ!」
「ジーク?どうかした?」
「シル?君は護衛でも呼んだのか?」
「え?そんなことしてないけど?」
「そうか、だがホームの外で、『俺の知っている男二人』が監視しているような気配をするのだが?」
「・・・・・まさか・・・あの人たち?勝手に来たのかな?」
「かもな、君が心配なようで」
「もう、私はジークが居るから大丈夫なのに」
「だからだと思うぞ?あの二人の考えなら」
突然ホーム外から、近くでかなり気配の強い男二人を感知した。これは間違いなくシルの関係者で間違いない。シルは流石にここまでしてくるなど知らず、どうやら勝手に俺たちの後を追い、このホームを監視しているようだ。別に俺は何もしないと言うのに
その男二人は、俺が嫌でも知っている男二人、まさかその二人がそんなことをするとは思いもしなかった
まあ、ここまでしてくるなら、最後まで付き合ってもらうと、この事件に巻き込もうと、俺は企んだ。文句を言うのは見えているが、それでもやらなくては困るような状況にもなるはずだと、絶対に引き受けて貰う状況を作ろうとあいつらを利用するつもりだった