俺たちがデミ・スピリットと対決している間に、ベルはヴィトーに再戦を行う
先ほどは完全に腕前でやられた。だけどそれでもベルはまだ諦めきれない。もう一度立ち上がりヴィトーへと挑む。ノエルのおかげで完治はした。再度挑むだけの状態でもあるため、これでならまだ戦える
「本当にひつこい人ですね。あれだけやられてまだ戦うとは・・・・」
「諦めませんよ、貴方を止めるまで絶対に」
「度胸だけは認めましょう。ですが腕前は私の方が上です!」
「く!」
「クラネルさん!」
再度ヴィトーに挑むにしても。奴を倒す方法は未だに見つかっていないのは事実。なんとか殺さずに、再起不能程度で撃退するのが目的
しかしそんなことはヴィトーにおいてはどうでもいいこと。ヴィトーはただ計画を邪魔されないよう、敵を殺すのが目的
奴のすることはバベルを吹き飛ばして、モンスターを地上に進出させること、そんな世界の終わりを人間でもある奴がそんなことをするとなると、尚更止めるしかなくなる
デミ・スピリットは俺たちが相手にするから問題ないが、人の不幸になる指示をしようとするヴィトーは何がなんでも止めないとならない
だから何があろうと、ここで奴を止めないとならない
「ぐ!ぐうう!」
「どうしたのですか?またさっきと同じ状況ですよ?」
「く!ファイア・ボルト!!」
「っ!無詠唱で魔法を打てるのは素直に褒めましょう。しかし、私はもう貴方の動きは学習済み。無詠唱の魔法でも私には当たりません」
「これでも避けられるなんて・・・・」
予想以上に苦戦していた
まさか動きを読める洞察力持ちとは、伊達にイヴィルスの幹部をやっているわけじゃないようだ。実力もちゃんとそれなりにあるようだ
「さっきと何も変わりません。一体それで貴方に何が・・・・ぐ!?」
「私を忘れないことです!」
「く・・・そうでしたね、貴方が居るの忘れていましたよ。リュー・リオン!!」
だが、ヴィトーも油断をして追撃を受けてしまう
敵はベルだけではない。リューも居る。これは彼らなりの戦法でもある。ベルが囮になって先陣する。そうなればヴィトーはベルを相手にしなければならない。当然のベルの動きは読まれている。しかし、リューの追撃はベルが邪魔で避けることも困難だ
さっきはベル一人だけだったが、今度はそこにリューも加わるのだから、戦況としては大きく変わるはず
「小癪なことをしますね。それだけで何が変わるとでも?」
「少なくとも、貴方の体力を奪える!」
「観念することです。ヴィトー!!」
「く!まさかここでこの少年を利用するとは・・・・」
確かにベルの動きは未だにそこら辺の冒険者と変わりない単純な動きだ。同じレベルでも強さが低く感じる。だけどベルが率先して戦法をとって囮になることで、実質リューを狙われずに、リューもヴィトーの周囲を駆け回るように、ヴィトーの正面以外を精霊樹の棒で追撃する。
ヴィトーはベルが邪魔で、リューまで攻撃は防げない。変にベルが無理に突っ込んでくるためリューまでは対応できない
その分ベルも自身の身を危険に晒しているのだから、下手をしたら殺されておかしくはない戦法だ。だがそれでも本人としては自身の手でも届くようにも。かなりの無茶をしている
ヴィトーを止めると、俺にはっきり言って決めたことだ。だから絶対に何があっても俺に任せずに自分で倒そうと、ベルは率先して彼に挑む
だが
「小賢しいですね、失せなさい!!」
「ぐわ!?」
「何!?衝撃波!?魔剣!?く!」
ここまで追い込んだつもりが、まさかのヴィトーは魔剣を隠し持っていたようで、腰の後ろから魔剣を取り出して、地面に刺して衝撃波を放った
その衝撃波により、後方にベルもリューも吹き飛ばされた
残念ながらそこまでこの戦法は通用しなかった
「く・・・・まだまだ」
「いい加減諦めたらどうです?どうしてそこまでして立ち上がるのです?全くもって理解できませんね」
「絶対に貴方の好きにはさせません、僕はジークさんの約束も、ノエルちゃんも、全部僕は絶対に守ると決めたんです」
「たったそれだけのために、貴方もあの英雄ヘラクレスも本当に理解できない。何を頑張っても無駄だと、無意味だとなぜわからない」
ヴィトーは再び戦況を覆したにも関わらず、それでも立ち上がって戦おうとする。ベルの姿に理解ができない
どうしてそこまで必死に戦う。どうして何かのために立ちあがろうとする。そんな姿がヴィトーには理解できない。この世の全てにおいて無意味な全てなはずだ。勝てない敵を前にして誰もが命の保身を優先するが故に逃げ出すはず
なのに、この目の前に居るベルだけは、それをしない。もうこの状況を覆す程の手段も無いと言うのに、自分に立ち向かう愚かな姿を、ヴィトーは内心に苛立ちを表に出さないが表していた
もちろん英雄である、俺にもだ
もうデミ・スピリットも目覚めた。食人花の魔力を吸って力は増大になっている。それでも倒そうと、あのフレイヤ・ファミリアと協力して戦っている。なぜ戦うことを諦めないのか、ヴィトーには理解ができなかった
だから
「何を頑張っても無駄であると、なぜあの男も、貴方もわからないのです!私にこんなにやられてなぜそれを理解できないのです!」
「そんなことは・・・僕でもわかってます。貴方は強い。同じレベルでも、ヴィトーさんは僕より強いとすぐに理解できます」
「なら・・・・なぜ?そこまでわかって・・」
「貴方が強いのはわかります。嫌って程、それでも僕は守りたいものがあるから、貴方に立ち向かうんです!」
「何を・・・そんなことのために」
「僕には守りたいものがあるからここまで頑張れる。守りたいものを守るために諦めずに強くなる。それが・・・・・ジークさんに教わった!英雄ヘラクレスに教わった!英雄になる目標の一つです!!!」
「っ!?」
ヴィトーはこのベルから『英雄になる目標』だと告げる
その姿は
かつての自分だった
ヴィトーも何かのためになろうとした。何かを守りたいためになろうとした。夢や理想を本気で馬鹿になって信じて
いつかなれると信じる英雄の道を、かつて自分がなりたかった存在を目指す子供が
今自分の前に現れた。ベルと言う子供に
自分も子供の頃はそれを信じていた。現実を知ったことでそれを諦めた。今ベルはその現実を突きつけられているのにも関わらず、かつて諦めた自分になることなく、
本気の眼をして、再び自分の前に立った
「僕は絶対に貴方を止める。命を賭けてでも!」
「貴方って人は・・・・どこまでも・・・」
「リューさん、これ貸してください」
「クラネルさん!」
ベルはヘスティア・ナイフだけでなく、今度はリューが普段所持している武器、精霊樹の木刀を借りる
今のベルは一人ではヴィトーに勝てない。腕もあるなら、武器を増やせばいいと、今度はリューの武器を借りた
そして、たった武器が一つ増えた程度で、魔剣を持つヴィトーに勝てるとは思えないが、それでもベルは挑んだ
「うおおおおおおおおお!」
「く!ふ!そのリュー・リオンの武器を使ったくらいで・・・・・この私を・・・ぐ!?貴方!?私の左腕を!?まさか貴方の狙いは・・」
「そうです。貴方の『腕』です!僕は貴方みたいに武器の扱いは上手くないですから、真っ直ぐにしか戦えませんけど!貴方の腕を正面から砕くことはできます!うおおおお!!」
「ぐ!?こんなめちゃくちゃな戦い方をしてくるとは!」
「貴方に勝てないのは承知です!ですから反撃されないよう、手段を断ちます!」
ベルは上手い戦い方をしてヴィトーに勝つ方法など見つからなかった。ならばと、戦うことができないように、腕を折る方法を選んだ。確かにそうすれば相手はまともに反撃にできなくなる。ベルは最初はナイフでヴィトーの魔剣を攻撃を続けていた、咄嗟にリューの木刀で左腕の関節を折る
ベルらしい戦い方である。ヴィトーに勝てる戦い方を見つけることができないのなら、反撃できないよう手段を潰そうとヴィトーの左腕を折った。その選択は上手く。ヴィトーの左腕を失ったため、しっかりとした動きができなくなり、左腕の痛みで体に蹌踉めきを見せる
ベルから一撃を喰らった、ヴィトーは今度こそ怒りを露わにする
「なぜ・・・・なぜ・・・・ここまでして・・・・・理解できない。なぜそんなにも諦めきれない。現実を知ってなお・・・なぜ・・・・・ここまで!!」
「ヴィトー・・・それがクラネルさんだからだ」
「何を言っているのです?リュー・リオン」
「貴方が諦めろと言っても、諦めきれない頑固な人なんです。貴方が何を言おうと、クラネルさんは命を賭けて貴方を止めるでしょう。それが敵うまで、英雄になると言う目標を目指すまで止まらない程、貴方と違って決めたことはしっかりやる頑固な人なんですよ」
「あり得ない・・・・あり得ない・・・あり得ない!!こんなことがあるなど・・・・・私は信じない!!!」
「っ!これは!?クラネルさん!ヴィトーは魔剣の全力を出しています!」
「そうですか、なら・・・・僕も!!」
ヴィトーはあまりにも理想を追いかけた人が強いと、現実主義者だった男が今起きている現実を受け入れ難いのか、ベルを今度こそ消そうと、右腕一本で、今持つ魔剣の全力を放とうと魔剣の総力を上げた
つまり、次で一撃で倒せる切り札と言う技を繰り出してくると言うことだ
ならばと、ベルもと本気を出す。二度と立ち上がれない一撃をチャージする。ベルは自身のヘスティア・ナイフをしまい。リューの木刀で、自身のレアスキルである。『英雄願望』を使う
リューの木刀を握り締める腕から白い光が発光し、その光がリューの木刀を包み
ゴン!ゴン!!ゴン!!!
その光から鐘が鳴る音が響く
「なんですか!?その力は!?」
「貴方を止める光です!!」
「くっ!!・・・・・小賢しいことを!魔剣!!雷衝波!!!」
ヴィトーは、ベルのレアスキルに驚きはしたが、それでも躊躇いなく魔剣の総力を砕ける覚悟で放った。ベルに紅い雷の波がベルに迫ってくる
それに続いてベルも放つ
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
ベルもリューの木刀を大きく振り翳し、そこから白い斬撃はが放たれる
白い斬撃波と紅雷の衝撃波が
激突する
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!
と、二つの力が衝突し、爆発が起こる程の衝撃が起こる
そして激突した二つののどちらかが、強ければ勝ってそのまま前へと通過する
二つの内、勝ったのはどっちだ
ぶつかった相手の技を相殺したのは
「なに!?」
ベルの斬撃波だった
「ぐ!?ぐわああああああああああああああああああああああああああ!?」
見事に、ベルの白い斬撃波がヴィトーの衝撃波を相殺し、そのままベルの白い斬撃波は残っており、そのままヴィトーへと直撃する
白い斬撃波はヴィトーの胸を切り裂いた。そしてヴィトーは後方に吹き飛ばされ初めて倒れた
「ば・・・馬鹿な・・・あの少年に負けるとは・・・」
ヴィトーはまさかの敗北に驚いた。あれだけ追い込んでひつこい程立ち上がる。往生際の悪い少年に負けた。本当に諦めないと言う心を持つだけで全部を覆すことができるのだと
現実主義者のヴィトーには考えられないことだった
それでもベルが勝ったのは現実であって事実
その一撃を受けたヴィトーはもう立ち上がることができず、この勝負はベルの勝ちと確信した
「はあ・・・はあ・・はあ」
「やりましたね。クラネルさん」
「はい。僕は絶対にジークさんの約束を守りたかったんです。あの人に殺しはさせない。僕があの人を止めるって決めたんですから」
「それだけの根性があれば、十分です」
「これは返します。ありがとうございました」
リューは勝ちを確信して、ベルの近くに寄り、彼の治療を回復魔法で行う
まさか本当に彼がイヴィルスのそれも幹部と思われる人物を倒すなど、俺の仲間としてあり得ないことをするのだと、リューはベルも特別な強さを持つと思った
そしてベルはリューから借りた武器を返すと、ヴィトーの容体を聞く
「あの人は?」
「大丈夫です。死んでいませんよ。もちろんもう立ち上がることはできません」
「やったんですね。僕は・・・」
「ええ、貴方の勝ちです」
こうしてベルは見事、ヴィトーを倒すことができた。
俺が手を掛ける事なく、これも彼の新しい強さと言って良い程だろう。イヴィルスの幹部を倒せたのは実績として大きい
ベルも今英雄となった俺から、新しいことを学んで強くなった結果を示した
「あとは・・・・ジークさん達に」
「はい・・・ジークさん、店員の皆さん、どうか無事で」
一度ここでベルとリューは休憩する。まだ戦いは終わっていないが、残念ながら加勢できる程の力は残っていなかった
そして後は
デミ・スピリットを倒すだけだった