中層 24階層
まだ半日であると言うのに、そこまで降りることができた。今までは18階層で一度休んでからその下の階層に向かうのだが、もう皆よく成長したのか、なんだかんだで俺たちはダンジョンを攻略する際、この階層下りを何度も繰り返していて、もう24階層先移行までは、もう慣れていて、モンスターの数が多いには変わりないが、ヴェルフ達はオリンピアの件以来でも、率先するような強さを得た。こっちに関しては人間を相手に戦ってきた、その慣れもあって、それがモンスターに変わっても、怯むことのない戦略を皆、桜花達も含めて身につけていた
そして
今はまずは休憩を取るために、まずはしばらく拠点作りを開始する。皆、それぞれの作業に入る、まずはテント作り、俺とヴェルフと桜花でテントを設置。そして昼食を命と春姫で調理、アイシャとダフネでここの警備、そしてベルと千草とカサンドラとリリルカで、この階層ルームの壁にへばり付く苔を削る作業をして貰っている
ベル達の作業は、意味あるのかと思うが、この理由を千草に言う
「ベルさん。これはなんの意味が?」
「ダンジョンの性質を利用しているんです。僕も最近ジークさんに教わったんですけど、なるべく壁や地面を壊したりや、そこにある木を燃やしたりなどをして、モンスターの出現を少なくさせるためだそうです。こうすればダンジョンは地形を修復することを優先して、なるべくモンスターの出現率が下がるみたいなんです」
「へえ・・そうなんですね!」
「流石は元はロキ・ファミリアですね。あのお方はすごいです。本当に英雄と呼ばれる理由があります」
「ジークさんは、僕たちとは次元が違い過ぎますから、いろんな悪意を受け止めて知っている。僕らとは全然違うくらい、全部知り尽くしているんです。英雄になるのも・・・僕でもわかるんです」
「ベル様・・・・だからと言って、こう詰めるのはこの遠征を攻略する上で迷いになるんです。それをジーク様に言われているんですから、英雄だからとか変なことで気の迷いはしないでくださいね」
「う、うん!もちろんだよリリ!あ!なるべく深くまでは壊さないくださいね!ジークさんからそれだけ絶対にするなと言われているんです!」
「どうしてですか?」
「理由は・・・・かなり強化種なモンスターが出てくる場合があると言われているんです。そのモンスターはこのダンジョンの地形を壊す者を容赦なく殺す怪物、その怪物が突然壁から出てくるからだそうです」
「う!それは恐ろしいですね」
ベル達の行いは、拠点を作る材料を収穫する上で、このルームにある屋根になりそうな苔や、鍋を吊らすことのできそうな木の枝を確保するのも、そうだが
一番は、モンスターの出現率を下げること
モンスターは壁や地面から出てくる。それはおそらくダンジョンの性質で間違いないだろう、それをなるべく下げるために、地形をなるべく壊すこと、そうすればダンジョンは地形の修復を優先し、モンスターの出現率を下げることができる。ここはセーフティルームでもない。そんな中で拠点を設置するのは、戦場地で拠点を作るのと変わりない。だがそれを頼りにするまでにはいかずに、警備も付ける
ダンジョン攻略とは、モンスターを倒せればそれでいいと言うわけではない。旅をする者ならこれは常識である。人間は環境には勝てないのだからな
「ロキ・ファミリアに居た時も、こんなことをしていたのか?ジーク?」
「フィン達と遠征してからこういう知識も覚える、あいつらはもう十年くらいは長く冒険者をやっていたんだ。ダンジョンの性質を理解している、そこから俺も学び、あとは・・・エイナから情報をたくさん入手した。未知の環境に対応できなければ死ぬだけ、これくらいは当然だ」
「やっぱり経験者が居ると、こうも簡単になるんだな、おかげでここまで来るのに半日で着けるなんて、やはりお前が居てくれてよかった」
「俺がレベル6だからと言うのもあるかもしれないが、ここまで来るのに簡単にモンスターを倒せたのは、なにも『俺だけ』の力じゃない」
「っ!ジーク!?お前・・・今髪の毛から黒い電流が流れたぞ!?」
「桜花、お前ももうわかっていると思うが、俺は黒竜ファーブニルでもあるんだ。俺を人間として扱うのはやめたほうがいい」
「さっきから動きが前よりすごいことになっていると思ったが、ステイタスを取り戻して以来、お前の中に居るファーブニルが、お前の力になっているわけだな?」
「それだけじゃないぞ。ヴェルフ。もう抑えきれない所まで来ている。姿は人間の維持を保ってはいるが、それでも俺の体から奴の力が自動に引き出されるようになっている。俺でも抑えたつもりが、無意識であると言うのに、まるで俺の性質のように勝手に、奴の闇が含んだ電流が俺の体に流れるようになっている」
「もう限界まで来ているんだな、そういえばお前の幼馴染の薬は?あれで少しは効いてないのか?」
「効いてこれだ。サーナも俺のために全力でそれに対抗できる薬を送っては貰っている。それでここまでの抑えでしかならない。この遠征が終わったら、俺も前と同じ姿に戻るだろうな」
「モンスターになるって、やっぱり体としては痛いものなのか?」
「まず俺の意思がファーブニルに取られるのが先だ。そして俺は奴そのものの姿になり、また黒竜ファフニールの復活になる。しかし、俺は違う。奴に魂を取られることなく俺の意思が勝ち、俺が逆にファフニールを物にする。奴の姿に自由に変身できる。だが、俺は奴の力を自由に使えるわけではない。使い過ぎるとヴィーブルみたいに人の形をした竜になってしまう。だからドロップアイテムを食おうとするなんて、真似はするなよ。意識は持ってかれモンスターになるだけだからな」
「お、おう」
ここまでに来るのに、モンスターを最も簡単に斬り殺すことができたのは、俺がレベル6で率先した結果もある。それでもベル達も働いたからでもあるが、
俺がファーブニルとして、その力を引き出し始めている
奴の力を使っているつもりはない。しかし無意識に奴の力が俺の力へと流れてしまう。だからウンディーネ達に使うなと言われても無理があった。
「だから、夜の警備は俺がする。皆はしっかり就寝するように」
「は?なんで!?」
「忘れたのか?ファーブニルの力を得ている俺は、睡眠が取れない。もう一週間も眠れていない。この期間は俺がする。いいな?」
「ジークさん。またそうやって無茶をして・・・」
「仕方ないだろ。ベル。眠れないものは眠れないんだ。無理して寝ても時間の無駄だ。こう言う時はこれを利用しないと、それよりも戻ってきたと言うことは、物資は手に入ったか?」
「はい。言われたものを用意しました」
「よし、命と春姫に渡して来い」
「わかりました」
ベルが戻ってきて、物資を手に入って戻ってきたと同時に、俺のこの会話を聞いて、それは無茶だと警備は皆で交代でやるべきだと言う
しかし、俺の体は徐々にファーブニルになっている。睡眠が取れない体になり、ここ一週間、眠れていないのだ。一睡も、だがこういう時は利用できる。眠れないなら皆が就寝している間は俺が警備交代することなくできる
それを利用して、俺一人でこのミッションでの就寝際の警備は俺がすることになる
そして
夕飯の食事を始める。ベル達がこの階層で食材になりそうな物を調達したおかげで手持ちを使わずに夕飯の食事を用意できた。そして水も申し分ない程、この階層に無限にある。ここはグレートウォールの近く、まだそこに辿り着いてはいないが、それでもその近くでもあるのか、この階層にも水路がいくつもあり、水の支給をいちいち18階層に戻らなくても飲み水は確保できるため問題ない
つまりは、ここで食事に困ることはない
食事をしながら、リリルカが今回のミッションの目的について説明をする
「食事をしながらで構いません、ミッションの目的を言います。今回は必須アイテムを確保することです。一つ目は『ブルークラブの鋼殻』10個、二つ目は『アクアサーペントのヒレ』3枚か、三つ目『レイダーフィッシュの牙』30本、四つ目はレアモンスター『カーバンクルの秘晶』なら一つで言いそうです。資源の場合は『アジュールストーン』を千グラッド。そして探索範囲についてですが、到達階層は30階層です。これが今回のミッション内容になります」
「素材や資源はなんとかなりそうだけど、本当に30階層も目指すのかい?ジーク・フリード?」
「ああ、それが今回のミッション内容だ。確かに今言ったモンスター達は30階層までも潜る必要のない、25階層で十分なモンスターだ。だが、それでもそこまで潜って調査しないとならない理由がある」
「それはなんですか?」
今回のミッションは確かにモンスターの素材を集めるだけのクエストだ
しかし
それだけでなく30階層までも目指すことを目的にされている。中級ファミリアが30階層まで目指せなど、完全に無茶ではあるが、それはおそらく俺と言う第一級冒険者が居るからだろう。上級冒険者が一人居るから問題ないと言う理由も含まれている
本当は桜花達とダフネ達には言えないが、ゼノスの新しい居住地を探すのが目的だが、それだけではない
その理由は
「ここ最近、『下層に行った冒険者』が行方不明になっていると、ギルドの通達が来ている」
「「「「「下層で冒険者が行方不明!?」」」」」」
「そんな通達が来ているんですか?」
「ああ、最近下層での行方不明者が続出し、それの捜索クエストが。俺たち以外のパーティや派閥にも参加するよう派遣されている。行方不明の原因を、俺たちが探るようにと、だからミッションを送りつけられた」
今回の目的は素材もそうだが
下層に挑んだ冒険者の行方不明の原因を捜索すること
ここ最近、下層に挑んだ中級の冒険者が行方不明になると言う事件が続出している。その原因を探るべく、俺たちが派遣された。モンスターの素材確保はあくまでおまけ、このミッションの本題は『行方不明になる原因』を探ること、もしくはその原因を解決すること、それが今回の主なミッションでもある
「行方不明になった理由ははっきりしていないが、ギルドの推測には、強化種に襲われたか、もしくは、俺たちが絶対に倒すよう言われている怪物。27階層の階層主。『アンフィス・バエナ』にやられたかだ」
「アンフィス・バエナか、本当に俺たちが倒さないとダメなのか?」
「奴が行方不明とされている者たちを殺しているかは不明だが、奴がここ最近で復活しているのは間違いない、時期としてもほぼ同じ、有り得ない話ではない。ミッションで奴を速やかに殺せとも記載されている。幸い奴のドロップアイテムは俺たちが貰っていいと言うことになっている。それにもう俺たちはゴライアスだって何度も倒しているんだ。次の階層主を超えるようにならなければ強くなれない。当然と思えないか?」
「ま、まあ、そうだけどよ」
「本当に恐れることを知らないわよね。ジーク・フリード」
「散々、人や怪物などを相手にしてきたんだ。慣れと言うものもあるが、それでもいずれ強くなるために必要な敵だ。一々恐れては強くなれない。恐れるなら冒険者なんてしない。だろ?」
「ま、そうね」
「どの道もうここまで来たからに引き下がるわけにはいかない。例え強いモンスターとこれから戦うことになろうと」
「ミッションですからね、断ることなんてできませんし」
「覚悟決める他ないわね」
「ちなみにジーク・フリードは倒したことある?当時はレベル1だと聞いたけど」
「ああ、レアスキルで奴の頭を両方同時に斬り落とした」
「流石ね。もう驚きもしないわ」
「死にかけたけた上に、物凄くリヴェリアに当時無茶しすぎだと叱られたがな」
「ジーク様なら、やりそうなやり方ですね」
「命があるだけマシだからな」
もちろん俺はここに二年前は何度もフィン達と潜っているから、当然アンフィス・バエナとも対面している上に、一度だけ倒している。
あの時の俺は完全に無邪気なガキそのものだった。強かろうがなんだろうが、俺は故郷に居ても怪物を餌としか考えないクソガキで、死にかけることをお構いなしに誰であろうと挑もうとする。そして追い込まれるとカオス・ヘルツが発動し、怒り狂って相手を完全に殺し終えるまで止まらないと言う、ティオネのバーサーカーよりも厄介な力だと、当時フィンに言われた
とにかく、階層主二体目も俺は経験しているため、ベル達からすれば少し安心する話だった
「明日、25階層へ向かう。そこからは気をつけろ。水路には近づかないことだ」
「確か水の中にレイダーフィッシュが無限に居るんだったな?」
「無限に近い、25階層から27階層は水路が繋がっているからな、下層から上に流れ着くことがある」
「この階層の水路もそうですけど、最終的にどこに流れ着くのですか?」
「オラリオの近郊の港町メレン、そのロログ湖に通じている」
「え!?それじゃあその海にまで、水棲系のモンスターが流れ出されるのでは!?」
「だから昔ゼウスとヘラのファミリアが、あるドロップアイテムを使ってその通ずる穴を塞いだ」
「ドロップアイテム?」
「あの伝説のゼウスとヘラのファミリアがですか?」
「それ知っています。リヴァイサンのドロップアイテムですよね?確かギルドには『リヴァイアサン・シール』って呼んでいるんですよね?」
「その通りだベル。もちろんそれ以外の素材を調合して、穴を塞いでいる。そのロログ湖にモンスターが出てくるのは、この水路を辿ってきたからだ」
「そうなんですね。野外でモンスターなんてあまり居ないはずなのに、あそこだけやけに出現率が高く、出てくる理由がそれなんですね」
オラリオ付近にある、港町メレン
その地域にある湖の海域に出てくるモンスター全て、この階層から水路を通じて出てきている。昔はその水路に通じる穴がメレンにあった
それを塞ぐために、ゼウスとヘラのファミリアがあるドロップアイテムを使って塞いだ
それがリヴァイアサンシールである
あの三大クエストの二体目のモンスターのドロップアイテム。リヴァイアサンの骨は完全に水を塞ぐことのできる硬い骨でできている。他にもいろんな素材を調合してその穴を塞ぐ門を作って、うまく塞ぎ
それ以来は完全ではないが、あまりモンスターが出てくる回数がかなり少なくなり、今に至る
「だから、入ろうとするなよ。中にはレイダーフィッシュも多く居るのと。それだけでなく、流れが早く、入ったら出てこれない上に、最悪な水路を辿ることになり、この下の階層にある滝に叩き落とされ、溺れて死ぬ奴がたくさんだからな」
「こ、怖いですね!」
「だから水に入るのも、なるべく近づくのも、やめて行動するように言っておく」
「き、気をつけましょう」
だが、ここは大滝のあるグレートウォール
水の中に入ればレイダーウィッシュの餌になるか、変な水路に流れて滝に落とされるかなど、どれを選んでも流れが強くなくても、水に不用意に近づくのは得策ではない
明日からかなり慎重に行動しないとならない、攻略することになった
「よし、明日の打ち合わせはこんなものでいいだろう。食事を速やかに終えて、早く就寝しろ。明日も早いんだ。いいな?」
今日はここまで、24階層で拠点を設置して夜を過ごす
モンスターが出てくることも考え、ここで俺が一人で警備をする。
ここはセーフティルームではない、モンスターは出てくる可能性が高いと一人で警備をする。交代をするべきだと、ベル達に言われるが、それは拒否。せっかく睡眠が取れない体になったのだから問題なく一人で警備できると、ベル達の要求を拒否した
それに今ここで睡眠して貰わないと困る。その理由は
この先は『絶対に逃れることのできない』モンスターが無限に等しい数の居る。絶対に安息の無い場所だからだ