ニーベルンゲン・シックザール〜竜殺しの英雄譚〜   作:ソール

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事件発生 疾風が冒険者を暗殺

 

 

 

 

リヴィラの酒場

 

もちろん酒代も高い、だが俺に払えない額ではないため、ヴェルフとアイシャの分も含めて、酒一人二本だけ出す

 

 

「悪いな、酒代出して貰って」

 

「私はもう二本増やして欲しいけどね」

 

「それくらいで十分だ。明日酔いが覚めてなかったら、俺が『酔い覚まし』するが?それでも増やして欲しいかアイシャ?」

 

「い、いや・・・あんたの一撃喰らいそうだから、これでやめておくよ」

 

「まあ、どうしても足りないならあと一本だけ追加しよう」

 

 

俺は二人の分まで酒を奢った。大した酒ではないと言うのに無駄に高い、それは仕入れが困難でもあるのだが、それでもこんな安酒でもここで飲めるだけマシだと思う冒険者は当然居る

 

仕入れが難しいダンジョン内にある街のリヴィラでは、当然の値段基準だった

 

俺とヴェルフには酒ビン二本と、アイシャにはどうしても足りないと愚痴を言い出したため、特別に彼女だけには三本の酒を用意した。

 

そして酒を飲みながら、これからや世間話などをして楽しむ

 

 

「にしてもお前、よく湖の中に引き摺り込まれて滝に落とされなかったな?」

 

「いや、27階層の滝に落とされた。それでも生きているのは、偶然にもその滝の底が深いから、湖の底まで激突する事なく落とされることはなかった。そのまま湖の流れに逆らい、無理に陸地にしがみ付いて地上に上がっただけだ」

 

「よくあの流れに逆らえるね、あんた」

 

「二年前、アンフィスバエナを確実に仕留めるために、怒り狂った俺は奴が滝登りしている最中を襲うために、俺も奴と同じく流れに逆らいながら滝登りをしたからな」

 

「は!?マジかよ!?お前のあのスキル、怒りに任せると、もうそれ以外は何も考えねえんだな」

 

「それが俺のスキルだからな」

 

 

初めの話は、俺が滝に落とされた時に、なぜ生きていたのかと、滝に落とされた命は終わり、確かに俺は言った。だが、俺は『何度も経験』してるから、だから死ぬ事はなかった

 

二年前からアンフィスバエナを倒すために、自ら湖に入って戦う自殺行為を何度もした。奴にしがみ付いて襲うために、アホなことをした。俺の怒りはティオネよりも洒落にならないからな、相手を殺すまで手段を選ばないからな

 

 

 

 

『強くなるために無茶はしろ』

 

 

 

なんて

 

 

命を失わずに無茶をしろなどと、よくおふくろに言われたが、言われずともしていたようだ。俺は

 

 

「スキル発動しなくても、関係無しにやっていたかもな、そんなことは、ベルだって『この前無茶』しただろ?ヴェルフ?」

 

「っ!・・・・・ああ、そうだったな。『アレ』でよくあいつ『生きていた』もんだ」

 

「『これで終わりじゃない』からだ。ベルも目指しているんだ。これからのために、『あいつ』に勝つために、強さを目指している」

 

「さっきからアタシの知らない話ばかりしているけど、あのベル・クラネルに前になんかあったのかい?」

 

「ああ、あったさ。エピメテウスになりたいために、本物の英雄に立ち向かい、そして自身の『好敵手』に挑んで無茶しただけの話さ」

 

「好敵手?」

 

 

無茶して強くなったのは何も俺だけではない。

 

 

ベルもだ

 

 

あのオリンピアの出来事が終わった二週間後に、俺たちに頼んで、ダンジョンのある階層まで連れてって欲しいと、そこにベルがどうしても挑みたい相手が居ると、そこへ俺たちはベルの頼みで、そこまで護衛し、その階層までベルを守り連れて行った

 

ベルのその頼みは、ベル自身の無茶でもある戦いでもあった

 

その戦いの果てで、まるで吹っ切れたかのように、更に強さを手にしようと前進を目指そうとする

 

 

二代目エピメテウスになりたいために、ベルも諦めきれない。これからを、強さを、無茶で生まれる限界を超えた力を手にしたいと

 

 

「ベルもこれから強くなるために無茶でもするってことだ。限界だけでは強くなれない。お前もだぞ?ヴェルフ?」

 

「っ!?」

 

「お前の魔剣の威力は間違いなく強い、だが使用回数限られた中では、流石に限界がある。今回で前回使った『氷鷹』もあるだろうが、それだけの魔剣、しかも使用回数たった数回しか使えない物ばかりでこの先乗り越えられると思うか?」

 

「それは・・・そうだが・・・」

 

「以前のお前は、折れない魔剣を製作するって言っていたが、できたか?それは?」

 

「・・・・・・・」

 

「なるほどできてないか」

 

「折れない魔剣なんてできるのかい?魔剣と言うのは使用回数武器なはずだろ?」

 

「それを可能にできるのがヴェルフだ。アイシャ、お前もオリンピアに行って、見たはずだ。ヴェルフが新たな神器を超える、それも自身の力でもある魔剣の力も授かった『神器魔剣』を、神器でもあり魔剣でもある、神が作れなかった新たな剣をこいつは製作に成功した」

 

「まあ、私もあそこに行って、このクロッゾがまだ神が作ってない作品を作ったのには、アタシも驚いたよ」

 

「そんな二つの剣が作れるなら、それもできるはずだ。こいつの目標は神を超える作品を作ること、それがこの前で一つできて、そして後は折れない魔剣を製作するだけ、それができていないのなら、ヴェルフにはまだ限界を超えていないかだな」

 

「・・・・・すまねえ、何度も試していたが、それでも・・・・・できなかったんだ」

 

「そうか、何度も製作している努力はあったんだな」

 

 

ヴェルフは、以前アレス戦争にて、父とその祖父に、神を超える作品を製作し、まずは『使用回数関係のない折れない魔剣』を造って見せると宣言したが

 

未だに、その作品はできておらず、成長が止まっている

 

諦めてはいないものの、何度か試してはいるが、それでも完成はしないらしく、成長具合は今は悪いと、俺の眼で見てもわかる

 

一応なんの素材を使って製作しているか、聞いてみる

 

 

「ちなみにモンスターの素材ばかり使っているのか?いろんな鉱石とか使ったのか?」

 

「もちろんいろんな素材でもやったが・・・・上手くいかなかった」

 

「じゃあ貴重な鉱石はどうだい?クロッゾ?例えば『ミスリル』とか」

 

「バカ言うなアンティラネイラ。そんな貴重なアイテム、俺たちじゃあ手に入らねえ、いくらすると思ってやがる」

 

「まあ、そうだな、ヘスティアが変に借金を積んでしまったことで、貴重なアイテムを買えなくなったのは事実、あまり高価な物は買えない、買おうとすると、管理しているリリルカの目が厳しくて、それに手を付けるどころじゃないからな」

 

「あの小娘ならあり得そうだね、ま、そんな貴重な物売っている所も少ないしね」

 

 

高価な鉱石は流石に使っていなかった

 

ま、そもそも買えないのだからそれを取り扱うことすらもできなかった。高価な鉱石は数千万もするような値段だ。金に厳しい管理をしているリリルカがそんなことであろうとも金を使用する許可などしてくれる訳もないため、ヴェルフはダンジョンで手に入れる素材だけでなんとかしていたようだ

 

ならだ

 

 

「折れない魔剣を作るのには、それらの素材では無理だ。だからこれを使え」

 

「は!?お前それって!?」

 

「アダマンタイト!?これどうしたんだい!?」

 

「前にクノッソスに侵入して、イヴィル共から盗んできた。これなら作れると思うぞ?」

 

 

俺がヴェルフに貴重な物を渡した

 

 

それはアダマンタイトである

 

 

前回クノッソスに俺とウンディーネでタナトスの眷属達半分を殺し、鍵を盗んだだけでなく、奴らから貴重なアイテムもいくつか盗んだ。その内のアイテムの一つがアダマンタイトである、おそらくバルカ・クノッサスがクノッソスを建設するために必要だったアイテムに違いない。

 

俺はその盗んだ一つをヴェルフに渡した

 

 

「それで上手く新しい魔剣ができる。あとはお前の腕次第だ」

 

「いいのかよ、こんな貴重な物を俺が貰って・・・」

 

「厳しいことを言うが、お前だけだぞ?ヘスティア・ファミリアで成長していないのは」

 

「っ!?」

 

「団長の癖に容赦ないことを言うね、ジーク・フリード」

 

「団長だからだ、ベルはレベル4として力を発揮した、リリルカは自分に出来ることで指揮力を学んで物にした、春姫は殺生石に無しにレベルブーストを複数人掛けることができた、命は技以外でも体術なりも身につけて周囲の敵に対応できる戦闘スタイルを得た。そして未だに成長していないのはお前だけだ。ヴェルフ」

 

「・・・・・・そうだよな、そんな気はしていたんだ。大男や他の奴らに装備は揃えても、俺の目標である『折れない魔剣』は未だに作れない。正直・・・悔しい限りだ」

 

「だからそれを使え、アダマンタイトならそれらしいのを作れるはずだ、普段オリハルコンと言う最高級の鉱石を扱う椿ですら、まだ最高の魔剣は作れない、それが可能なのは、お前の精霊の血を引く者だけだ」

 

「これで・・・・俺が今までにない最高傑作を作れってことか」

 

「いつ製作するかは任せる。お前次第だと、絶対に次のミッションに必要になると、思うけどな」

 

 

ヴェルフにアダマンタイトを渡して、折れない魔剣を製作できるか、任せておく

 

オリハルコンの次に良い鉱石だ、これなら上手くできると思うが、もちろんそれはヴェルフの腕次第、ヘスティア・ファミリア内だけでまだ成長していないのはあいつだけ、これからどう成長見せるか、ヴェルフに賭けられた話だ

 

 

「アイシャ、次のミッションも頼む。次が本番になるからな」

 

「遂に階層主か、腕が鳴るってもんさ」

 

「無理して、周りを見過ごすなよ。お前は戦力はあっても、周囲を守れる行動は取れてないと見る」

 

「あんたの分析だと、私は特攻過ぎると言いたいのかい?」

 

「俺の眼だとな、少なくとも春姫を大事にしている、その時点では、俺の眼にはそう見える。ま、俺に言われなくてもお前ならそうできると願っている」

 

「ふん、あんたの忠告聞いておくよ」

 

 

アイシャにも念の為、助言を置いていく

 

彼女が俺の話なんて聞くとは思えないが、それでも春姫を守りたいなら、少しは周囲にも気を配れと伝えておく、本人は一応承知したと聞くだけ聞いていた

 

今こんな話をしたが、それと同時にアイシャに聞きたいことを聞いておこうと、感謝をしつつ聞く

 

 

「とにかく春姫のためにしてもお前が協力してくれて感謝する、お前はヘルメスファミリアだ、今回は関係ないとは言え、春姫を守るためにミッション参加をしてすまない」

 

「いいってさ、それに良いものも見れたし、私としては良い収穫にはなったさ、それにあんた達に付いて来たおかげで強敵を相手にもできるしね」

 

「アンフィスバエナを相手にする時は気をつけるようにな、俺たちのミッションを手伝ってくれるのは嬉しいが、そっちはいいのか?今アスフィ達は・・・」

 

「ああ、クノッソスに行っているよ、あのブレイバーの手を貸してね」

 

 

アイシャは本来ヘルメスファミリアの眷属、今クノッソスの攻略を手伝っていると言うのに、彼女だけ、こちら側に回ってくれるのは有り難い。ま、ヘルメスが手を回した故だろうがな

 

 

「俺はもう飲み終わった、先に戻らせて貰う。あんまり飲みし過ぎるなよ?」

 

「おう」

 

「もう終わりかい?飲むの早いね」

 

「これくらい、もう『飲み慣れている』。どんな酒でも『酔えない』からな、俺は」

 

 

俺はもう日本も飲み終えたため、先に拠点であるテントに戻る

 

母の遺伝だからなのか、母はドワーフ以上に酒を飲む女神で、酔えない体質を持ってしまったからなのか、どんなに飲んでも美味しいと感じられないのか、ここまでにして俺だけ先に、金だけヴェルフとアイシャに渡して店を退出する

 

話すことはもう無い上に、少し様子を伺いたい

『二人』が気になるため、その二人の元へ、俺は向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

酒場を出て、その伺いたい二人と言うのは、すぐ近くに居た。それはリヴィラの最上階にある。天井にある太陽光にもなる結晶石を見上げることのできる、展望台、その二人がその場所に居た。本来そこはリヴィラの冒険者を集めて会議する場所だが、そこに二人だけ居た

 

その二人は

 

 

「ここに居たか、ベル、リリルカ」

 

 

「あ!ジークさん!」

 

「どうしたんですか?こんな所にわざわざ」

 

 

「なに、二人と少し話をしたいなと思ってな」

 

 

それはベルとリリルカだった

 

前半のミッションの感想を聞きたいがために、わざわざ探して来てまで、そんな意味はあるのかと思うが、それでも聞いておきたい。

 

後半のミッションに続いても、これからしっかり受け止められるか聞きたいからだ。次の試練で打ちのめされるような事態が発生するかもしれない。それをハッキリ言わなくてもわかると思うが

 

それでも俺は聞いてみたかった。それが聞くまでもない答えなら、成長している証拠になる

 

 

「明日、アンフィス・バエナを討伐を行う。そろそろ出てくる頃だろうからな、覚悟はできたか?これから予想のつかない何かが起こるだろうと思うが」

 

「それでもですよ、もっと強くなりたいんです。どんな敵にも勝てるように」

 

「ベル様は本当に頑固になりましたね。でもリリもこれからも諦めるつもりはありませんから」

 

「聞くまでもないか、だが、ここまで来た感想を聞きたい。どうだ?」

 

「・・・・・これがアイズさんの見ていた景色なんですね」

 

「ああ、だが、満足はしていないだろう?」

 

「はい、僕はまだこれからです。僕はもっと強くなりたい」

 

「それを聞ければ十分だ」

 

「もしかして、リリ達のこと心配していたんですか?」

 

「ああ、だが、あのオリンピアでお前達二人はよく成長した、昨日も諦めずにリリルカは俺とベルが来るのを信じて、絶望な状況の中でも諦めなかった。素晴らしい覚悟だ。これでは余計なお世話だな」

 

「でも心配してくれたのは、僕は嬉しいです」

 

「それはリリもですね」

 

「なぜ?」

 

 

「ジークさんが本当に僕らを仲間と認識して、心配してくれるからです」

 

「リリ達のことを心配してくれているなら、ジーク様はまだ心があるんですねと思いまして、カオス・ヘルツで取られつつあるのかと思いまして・・・・」

 

 

「・・・・・・そうか、お前達も心配していたんだな、カオス・ヘルツはあくまで俺のことについての気持ちだけが消えるだけだ。仲間の気持ちはいつでもわかっている。それを理解し合える気持ちは、俺でもまだ流石にある」

 

 

俺がベルとリリルカを心配していたが、どうやらそれはベルもリリルカも、俺のことを心配していたらしい

 

仲間想いであることは両方あるのだろう、しかし、俺はそんな仲間想いも当たり前のことだと思っていたのだから、特に気持ちが無い有る関係なしに言ったのだが、それでもベルもリリルカはまだ俺が心がある事に喜び、どうやら俺がカオス・ヘルツで心が消え欠けている事が心配だったらしい。

 

カオス・ヘルツは自分に対しての感情が無いだけで、仲間は違う。仲間への気持ちは確かにある。仲間をも心配する。少なくとも俺はまだ心はある

 

でもベルもリリルカも、あのステイタスの書かれた文字を読む限りでは、俺の心の全てが無くなると思っていたのだろう。しかもファフニールの侵食も考えてそうなると思っているのだろう

 

だからそんなことはないと、自らの俺の言葉で伝える

 

 

「問題ない。だから俺の配慮は必要ない」

 

「そうやって、また自分を犠牲にしたりしませんよね?」

 

「次やったら、俺が死んだ事知ったら、『彼女』も共死にする結果になる。それだけでは避けねばな」

 

「彼女?」

 

「シル様ですね。あのシル様なら、ジーク様のためなら自分の命を問いませんからね、そういうところはジーク様の想い人として流石です」

 

「彼女も俺と同じく覚悟のある女だからな」

 

 

自分に対しての気持ちはない。だから何かのために犠牲になると、ベルはまだ俺を心配するが

 

そんなことをしたら、シルも俺の跡を追って自殺するかもしれない。俺を想う気持ちは遥かに強いシルなら、俺の死んだ知らせを聞いたら、俺の跡を追うと自殺かもしれない

 

前にも俺の怒りの暴走を止めるために、俺のために死のうとした女性だ。彼女のためにも、俺はこれからも生き残らねばならない

 

 

「まだ生きてやることがある。俺もここで終わるつもりはない。だから、必ず全員で生き残って帰るぞ?いいな?」

 

「はい!」

 

「もちろんです!」

 

 

次のミッションは更なる上位任務だ。生き残れる保証は更に減る

 

しかし

 

それでも生き残る

 

これが一番にして最善の目的である。それを果たすために、前半のミッションのように、お互いを助け合って信頼し合って、戦う他ない。

 

次もそれができるかは、俺たち次第

 

必ず生き残ってみせると、死に抗うような戦果を起こす以外ない

 

 

「もう伝えることはない。ではな。明日は早いんだ。早く寝ろよ?」

 

「はい」

 

「また後で」

 

 

そう言って。俺はもう用は済んだと、ベルとリリルカの元を一度去る

 

もう明日の準備はできている。次の戦いの覚悟はもうできていた。俺に言われるまでもないのなら、もう成長している証拠だ

 

これ以上の口出しは不要

 

もう二人はこの中で一番歳の下の子供ではあるが。もういろんな現実を知って強くなった。もう俺が心配する必要もない

 

もうそれだけ聞けば十分と、俺はベルとリリルカの元を一度去った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は18階層の泉にて黄昏ていた。たまに一人になりたい時間も俺にはある。そして

 

今日だけで全員分の言葉を聞いた

 

皆、それぞれこれからに必要な事を得ようと頑張っている。まだレベルが低いにも関わらず、良い向上心を得ていると、このミッションはやる価値はあるのだと、ゼノスの移住先を探す以外にも良い結果を出している

 

そして俺への結果なのだが

 

 

 

 

また

 

 

 

ファフニールの侵食が半分も進んだ

 

 

 

顔や頭までは侵食はされてはおらず、眼も変わらず人の眼をしているが、実は上半身の胴体はかなり皮膚が黒くなり、今にも奴の姿へ変わりゆくある。

 

もうサーナの薬でもどうにもできない。やはり人間が怪物のドロップアイテムを食べるのは自殺行為。それもあの黒竜ファフニールの心臓だ。ただではすまないことは理解している。そしていずれ奴の姿になるのも

 

しかしそれでももう兄上の力無しでなんとかするしかない

 

止めることのない侵食をこれからどうすべきか、それが今回の俺の試練、無論方法は一つだけ

 

それは

 

 

 

 

 

 

「ジーク自身の力で、『完全制御』をするってわけね?」

 

「勝手にまた俺の魂の中から出てくるな、ヘル」

 

「あらいいじゃない。少しはお話ししましょうよ。それに貴方今一人だし、それくらいいいじゃない?」

 

 

また俺の胸から、亡霊の女神であるヘルが霊体化して出てきた。

 

俺と話がしたいだけの理由で出てくるとは、本当に気に食わない女。しかもここはダンジョン。女神が勝手に出てきたら、またダンジョンが以前のようなイレギュラーを起こすかもしれないが、ヘルの霊体化を感知する辺り、奴からアルカナムは感じない。とりあえずダンジョンには気づかれないだろう

 

話がしたいと言って出てきたが、なら奴から怪物の侵食を止められる方法を知っているか聞いてみる

 

 

「さっきは俺自身で完全制御を果たすしかないと言った?それはどうやって?方法を神であるお前が知っているとでも?」

 

「いいえ、神々においても化物のドロップアイテムを喰らって、人間のままで生きているなんて貴方だけだから流石の私たちでも知らないわ、ただ、本来のヒューマンは体を取られて魂も自我も持ってかれて怪物になっていたでしょうね」

 

「つまりは半分神でもある俺なら、『自身のアルカナム』で制御しろと、『半神』としての力を出せと言うことか?」

 

「ええ、貴方の体は間違いなく人間ね。でも中身は全然違うわ、姉さんと同じ細い腕でありながら腕力がある、そのように、ファフニールの完全制御は貴方のアルカナムでなきゃ不可能だわ。貴方のアルカナムは心から来ているもの、何事も受け入れることが大切よ」

 

「受け入れるか、それを言うことは、まずはファフニールの『完全侵食』をされた上で、その力を身に付けと言うのか?」

 

「私はそう考えているわ。まずは侵食を完全に果たした後で、その力をどう扱うか、慣れればその力だってどのように扱えるか覚えるかもしれないしね、それに体がファフニールになっても、どうせ貴方の意志は固いから、その程度では貴方は自我を無くすことはないでしょうしね」

 

「俺の意志で制御するために、自身のアルカナムを使えと?そういうことか?」

 

「開花し始めているのは間違いないのよ。姉さんのハンマーを使えるようになったのだから、できると私は思うわ」

 

 

ファフニールの心臓を喰らって、俺が第二の黒竜ファーブニルとして、奴の侵食は何があろうと避けされない

 

ならと

 

 

ヘルが『半神のアルカナム』を使って制御するしかないと提案される

 

 

もう侵食が止められないなら物にするしかない。あのファフニールの力を手に入れるかなんてわからないが、俺がファーブニルとして、第二の黒竜として怪物の力を物にするしか、侵食を止められる方法はない

 

ヘルの言うことを聞くのは癪だが、確かにもうそれしかないだろう。サーナの薬は新作を出しても効かない、ならもうこの方法しかないだろう

 

だが、今までにおいても、神威は出せてもアルカナムは使ったことは一度も無い。何回かそれに近いアルカナムを出しただけで、俺はまだ母上のアルカナムはまだ扱えない。出すことすら自身で意識してもできなかった

 

そんな俺ができるのだろうか、できなければただ化け物になる時間を過ごすことになるだろうと思うが

 

それにここでファフニールの力を解放をしなくては

 

 

「それに、『あの子』を召喚するために、ファフニールの力を出して、少しでもあの子をファフニールの呪いから解放すること、そうでなきゃあの『レアスキル』だって使えないわ。それが貴方だってわかることでしょ?」

 

「知ってはいるが、シルとエイナの約束を破ることになりそうだ。だとしても、この先使わなくてはならないことが起きるかもしれない。上手くやれることを祈るしかないな」

 

「ベル・クラネル達は頑張りによることで成長するけど、やっぱりジークは、『何かを犠牲』にしなくては成長できないようね」

 

「この中で俺の試練だけが一番キツいからな。もうそろそろ戻れ。もうこれ以上の会話は不要だ。それができるかも俺次第。俺はまだ怪物になっても、まだ生きてやらなかればならないことがある。だからまだ終われないんだ」

 

「ふふ、この先が楽しみね。姉さんがここに居たら笑っていたでしょうね」

 

「送還させたお前がそんな言葉を吐くな」

 

 

それだけの会話をして、ヘルは再び俺の胸の中に入った

 

ヘルの言葉は、俺としては聞きたくないが、それでも女神の言うことは嘘ではない。全知な存在であるが故に。ヘルの言うことは確かである

 

だからこの先、俺はシルとエイナとウンディーネたちの約束を破る時が来るかもしれない。少しでもファフニールの力を使って、俺のアルカナムで調整し、それを物にしなくては侵食を止められない。

 

これが俺の試練であるなら、俺はまだこれからも成長するために、その道を選ぶだろう

 

そう思いながら、自身のテントに戻って明日に備えようとする

 

 

しかし

 

 

 

「っ!・・・この魔力は・・」

 

 

拠点のテントに戻る前に

 

リヴィラの街から、知っている者の魔力を感知した、間違いなく『エルフの女』の魔力。まさかエイナの言う通り、『あいつ』がここに居るのか?と、俺は確認を取るためにテントには戻らず、一度またリヴィラの街へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

その後

 

 

 

 

 

木の影に隠れて、その魔力を感知しながらその場所へ向かうと

 

 

『あいつ』は確かに居た

 

 

しかも見たことのある冒険者を襲っていた。足を斬って身動きを取り、その冒険者から情報を引き出そうとしていた。それを引き出すことに成功し、そのままその冒険者は殺さずに、あいつはどこかへ去った

 

これで確信した

 

エイナの情報は正しかった。今の光景を見て、やはり俺はこの先何か起こると思って、明日はミッションどころじゃなくなると、やはりイレギュラーが起こると予感する

 

それだけを予想をして、俺は『少し処理』をしておいて、その場を去る

 

 

明日は、ミッションの続きはできそうにない。今の光景をしまうとな

 

 

と思って、その日は終えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

 

朝食を済まし、これからのミッションをとりあえず準備を始めるように、皆に呼びかける。予定としては変わらない

 

 

「命と春姫達が湖で食器を洗い終えたら、準備しろ。いいな?皆?」

 

「はい」

 

「遂に今日か・・・」

 

「階層主の討伐日」

 

「出てくれればいいですけど・・・」

 

 

ミッションの後半である。アンフィス・バエナの討伐

 

一応その準備を皆に指示を出す。これが俺たちのやるべきことでもあるのだから

 

だが

 

昨日の『あの夜』を目撃したから、今日はその予定は実行できそうにない。もうそろそろ知らせが来るはずだと、誰かが知らせを持ってくるだろうと思うが

 

 

「ジーク殿!」

 

「ジーク様!」

 

「ん?どうした?命、春姫、食器は洗い終わったのに、何を慌てている?」

 

「先ほど、リヴィラのボールス殿に会ったのですが、今すぐリヴィラに来て欲しいとのことです!」

 

「え?どうしてあのボールス様がジーク様を呼ぶんですか?」

 

「さあな、とりあえず向かう。俺だけでなく、他も同行して欲しい。ベル、リリルカ、お前達でいい。一緒に来い」

 

「は、はい!」

 

「わかりました!」

 

 

命が春姫が突然走って戻ってきた

 

食器は洗い終えたと思えば、いきなりリヴィラをまとめる冒険者であるボールスに、今すぐ来てくれと伝言をされる

 

まあ、何があったのかはもう知っているが

 

それでも向かうべく、俺だけでなくベルとリリルカを同行にして貰い、リヴィラへと向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてリヴィラに向かい、リヴィラの外れになりそうな小さな小屋の前で、人が大勢集まっている。無論そこは俺も見覚えのある場所

 

そこに集まっている中心でボールスが立っていた

 

呼んだボールスの元へ訪ねる

 

 

「ボールス」

 

 

「お!ヘラクレス!やっぱりこの階層に居たのか!?こっちに来てくれ!」

 

 

「なんの騒ぎだ?」

 

 

「これを見てくれ」

 

 

「なんだ?」

 

 

ボールスの元へ訪ね、そして見て欲しいものがあると案内され、集まっている人を退かして、集まっていた者たちが見ていたものを。俺たちにも見せる

 

 

「え!?」

 

「これって!」

 

「ほう・・・・ボールス?こいつは『殺された』のか?」

 

 

「ああ、同業者がやられた。間違いなく殺しだ」

 

 

そうして見せられたのは

 

 

 

冒険者の死体だった

 

 

 

首筋が切られている。間違いなく刃物で切られた以外ない。モンスターにやられた後ではないのは確実。ベルもリリルカも、まさかのこのタイミングで殺人事件が起こるなど、驚くと同時に青ざめている。おそらく死体を見るのは二人も初めてだろう。人間の死体を見るのは

 

顔は・・・・・・あの『リスト』に書いてあったヒューマン。こいつは間違いなくあいつで間違いないと思うが、この中で知っているはず

 

 

「派手にやられているな、ジャンの奴で間違いねえ」

 

「ボールス!俺は見たんだ!ジャンを殺した奴を!」

 

 

「っ!」

 

 

まさかの死体の人物を知っているだけでなく、殺害した人物を見たと、犬人の男が知らせる。確かこの男の名前は『ターク・スレッド』。リヴィラの冒険者のはずだ

 

だが

 

 

まさかこの男を殺した人物を見たのか?

 

 

この男を始末した『者』を俺は知っている。もしもそんなことをこの場で言われたら、この状況においても面倒なことになるのだが、まあその時はその時でいいと、

 

 

この犬人が人殺しをした人物の名をそのまま告げる

 

 

その人物は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「疾風だ!!あのアストレア・ファミリアの『疾風』だ!!!」

 

 

「「「「「「っ!?」」」」」」

 

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

ターク・スレッドが告げた殺人犯は、俺のよく知る友人であり、ベル達でも知っている人物

 

 

そう

 

 

 

 

 

元アストレア・ファミリアの疾風。リュー・リオンである

 

 

 

 

なぜ彼女がここに居るのか知らないが、彼女がこの男を殺したと、ターク・スレッドは今この場に居る者に告げた

 

その知らせにベルやリリルカでも

 

 

「どうしてリューさんが!?」

 

「あのリュー様が人殺しを!?」

 

「ジークさん!何か知りませんか?」

 

「・・・・・・・」

 

「ジークさん?」

 

 

「後で話す。まずはあのタークと言う男に確認を取り、ボールスにこれからどうするかを聞く」

 

 

リューがなぜこのようなことをしたのか、もちろん俺は知っているが、それをベルとリリルカに話すのは後にした方がいいと、このタークと言う男がリューが人を殺したと言う発言を確認するためにも、今は俺が持っている情報をこの場で話すことなく、確認を取る

 

 

「確か、お前はターク・スレッドとか言う男だな?本当か?この男を殺したのはあの疾風だと?」

 

 

「な!?ヘラクレス!?お、おう!そうだ!俺だけしゃねえ!他の仲間も見たんだ!あの疾風が殺したところを!」

 

「俺も見たぞ!緑のマントで身を隠していたのを!」

 

「俺もだ!下の階層に潜って行ったぞ!」

 

 

「そうか・・・・ボールス。お前は一応俺を呼んだが、呼んだ理由はこれを見せるためだけか?それともこの男を殺した疾風の討伐の協力を頼みたいのか?」

 

 

「まあな、相手はレベル4だ。お前さんがここに居るなら是非とも協力を頼みたい。もちろん報酬は分ける」

 

 

「なるほど、一応ギルドでは賞金首になっていたな、賞金が目当てか、だがいいのか?その女は以前、ここに現れた『黒いゴライアス』を共に討伐してくれた者でもあるんだぞ?それでもか?」

 

 

「う!それは・・・・」

 

 

「だとしてもヘラクレス!人殺しをした奴だぞ!生かしておくわけにはいかねえだろ!」

 

 

「随分と殺しを要求するな?ギルドからの賞金首は殺さずとも良いと言うのに、この男の仲間か?ターク・スレッド?」

 

 

「い、いや・・・・そういうわけじゃあねえが・・・・だとしても冒険者として同業者を殺されるのが許せねえんだよ!」

 

 

「そうか・・・・・ボールス。俺は突然のことのため、討伐隊の協力は今答えられない。今はミッション中。他の仲間と相談してから返事をする」

 

 

「わ、わかった・・・・」

 

 

ターク・スレッドから聞きたいことは聞いた。もう聞くことはないと、これ以上は聞かない。

 

そしてボールスの討伐要請の協力は今は返事できないと伝える、まだ俺たちはミッション中、それに他の仲間はこの事を知らない。だからまずはこの殺人事件が起きたことをヴェルフ達に伝えるために、一度テントに戻る

 

 

「戻るぞ。ベル、リリルカ」

 

「は、はい!」

 

「ジークさん、本当にリュー様の討伐に?」

 

「テントに戻ってから説明する。リリルカ、戻ったら全員をテントに呼び戻せ」

 

「はい!」

 

 

一度俺たちはこれからについて、テントに戻って皆に打ち合わせをする

 

こんなことになるとは思いもしないだろうが、俺はこうなることは予想をしていた、そして

 

 

『リューがここに居る』事も

 

 

全ては大体予想通りだった。リューがここに居るなら、『奴』もこの下の階層に居るに違いない。だとしたらまた過去のような事をするのではないのかと企みを予想する。

 

まあ、なぜそんなことが思えるのかと言うと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あのターク・スレッドとか言う男

 

 

嘘を吐いているからだ

 

 

 

 

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