37階層 コロシアム
これは第三と第四のどちらかに存在する建造物。そこでは日々モンスター達は殺し合う。一体なぜそのような場所でそんなことをするのかわからない。でもかつてゼウスとヘラの眷属がそのようなことをギルドに報告したらしい
何かの実験場だと
しかし、その実験場に入ることになったベルとリリルカ
そのために
「うう・・・すごい匂いだね?」
「我慢してください。少しでもモンスターになり着るんです」
「そうだね。周囲にはまた・・ペルーダがいっぱいだ。これを乗り越えるにはこうするしかないよね」
「ジーク様が言うには、あのロキ・ファミリアでも近づかないようにしているみたいです」
「え!?アイズさん達でも!?」
「し!大きな声を出さないでください!気づかれます!」
「ああ、ごめん。アイズさんでもここは突破できないのか」
ベルとリリルカはこのコロシアムに入るのに、もちろん自身の姿を隠して入る。入ったら確実に死ぬ場所。周囲にはモンスターだらけ、そんな場所に入るために、少し工夫して橋を渡っていた
まずは全身を、さっき手に入れたスカルシープの皮で隠す。次に匂い。もしかしたら匂いに敏感なモンスターも居るかもしれない。そのための対策として、先ほどあの怪物がバーバリアンを倒してくれたおかげで、心臓を手に入れた。その心臓を握り潰して、握り潰した心臓から血が垂れる。二人は頭に血を浴びて。バーバリアンの血の匂いなら誤魔化せると思い、酷い匂いだが耐え切る
少しでも冒険者だとバレないために
走るのは良くないため、静かに歩く。なんとかそれで、橋に居るペルーダに気づかれることはなかった。その横を渡り、コロシアムの入り口に入る
「リリ、もう少しで中に入るよ」
「中に入ったら、絶対に戦闘は控えてください」
「バレたら?」
「バレたら必死に走って、あの前にある橋を渡ってください。横の端はダメです。次の大円壁に辿り着けなくなります」
「遠回りだね。分かった。じゃあ・・行くよ!」
「はい!」
橋を渡り切って、コロシアム中に入る
そこかから先は何があっても戦闘は控える。無限に出てくるモンスターなんて、装備も万全ではないこの状態でも敵うわけがない。だからここは戦闘はせずにさっさと、真っ直ぐある橋を目指すと
コロシアム内に入った
が
「あれ?・・・・・・・」
「・・・・・え?何も居ないけど?」
コロシアムの中に入った。しかし、無限に出るはずだとコロシアムでは常にモンスター同士の殺し合いが絶えないはずの地獄の闘技場
そのはずが
一匹も居ない
スパルトイも、バーバリアンも、リザードマンも、スカルシープも、ルー・ガルーも、何も居ない。
俺からしっかりとここでの事を教わっていた。だから学んだ。このコロシアムのことを。なのに何も居ない。
「どういうこと?ここでは無限に湧くんだよね?」
「そのはずです。ここではずっとモンスターが出てくるはずだと。でも・・・・なんで居ないんですか?しかも・・・・なんでこんなに静かなんですか?」
コロシアム内に入ってから信じられないほど、静かだ。橋はペルーダが居て騒がしかったのに、ここではなぜか静かだ。一体なぜモンスターも何も居ないのだろうか
教えられたことと違い過ぎて、あまりに不自然なことだと、思い
さっさとここを出るべきだと、嫌な予感をしたのか、リリルカは急いでベルにここを出るよう言う
「ベル様、急いでください!モンスターが居ないなら今の内です!こんなに静かだと、何かあるに違いありません!急いでまっすぐの橋を目指しましょう!」
「う、うん!分かった!」
ベルはリリルカに言われて、急いでコロシアムの最上階の通路を走っていく。こんなに静かなんてあり得ないと、リリルカは絶対に何か嫌なことが起こると、ベルに早く次の橋を行くよう頼んだ
モンスターが無限に出てくる場所で、逆にモンスターが居ないなんて、何かあるとしか思えず、ここが不気味だと思って、さっさとここを出て、次の橋を目指す
しかし
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
「な、何!?」
「地震!?やっぱり何かあるんじゃ!?」
突然地面から地震が起きる。やはり何か起ころうとしているのだと、またもイレギュラーが発生する
ここでは無限にモンスターが出現する。なのにここでは何も居ない
が
もっと最悪なものが出てくる
それは
『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』
「な!?」
「『ウダイオス』!?なんで!?ここは玉座の間じゃないのに!?」
そこへ現れたのは、37階層の中心側の玉座の間と言う大円壁にしか出てこない。モンスターレックス
第三階層主・ウダイオス
巨大な漆黒の骸骨のモンスター。体格は10Mもある。この階層主はレベル6でなければ倒せない敵
それが今この場に、闘技場の左壁から割れるように出現した
「どうして!?リリ!?あれ本物!?」
「間違いありません!左半分だけなぜか無いですけど。ウダイオスです!!」
「あれがなんで・・・・っ!」
『ガア・・・ガア・・・』
「なんだろう?気のせいかな?何か疲れているような?いくつか・・・傷も・・・」
そのウダイオスは間違いなく本物。嘘では無い
なぜか左半分の腕だけ、なぜか壊れている。ベルが見る限り何か疲れているようにも見える。息遣いをしている。それとウダイオスの体にはいくつかの『傷』があった
さっきまで何かと戦っていたのだと、ベルは推測した。完全な状態を見たことはないが、少なくとも何か半壊された跡がある。間違いなくさっきまで『何かと戦って』ここに逃げてきたのだと。ベルは思った
そんなことを思っている内に
『ガアアアアアアアアアアアア!!!』
「ベル様!?」
「右腕がこっちに!?」
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!
「「うわあああああああああああ!?!?」」
ウダイオスはいきなり暴れ出し、ベルとリリルカが居た最上階を、腕を回して破壊した
そのため、二人は闘技場の中心へと落下した
当然ながら、下にクッションも無いため、そのまま硬い地面に叩き付けられる。でもスカルシープの皮で多少体に傷を付けることなく地面に着地した
「リリ?大丈夫!?」
「え、ええ、なんとか・・・」
闘技場の最上階から落とされたことで、リリルカを離してしまい、それぞれ別の場所で落下してしまう。急いで合流して、ウダイオスを見上げる
『ガア!・・・・』
「なんだろう。あのウダイオス。何か苦しんでいるようだけど・・・・」
「っ!ベル様!橋が!!」
「あ!?橋が・・・通路も・・・全部!?」
先程、ウダイオスが右腕だけで闘技場を好き放題壊し暴れたせいで
橋が崩壊した
それだけでなく通路まで、ほとんど闘技場をの通路や壁を壊されたせいで、ここはもう出れる場所は無くなった
これでもう逃げ場はない。ここは闘技場ではなく、もはやウダイオスのせいで鳥籠になった
そして目の前にはレベル6にしか倒せないウダイオス。もう終わったとしか言いようがないほど、ベルは絶望した
「そんな・・・ここまで来て・・・・」
珍しくベルが絶望したんだ。やっとここまで二人で攻略したのに、もう少しで出れると思ったのに、最後の最後にこんなものが出てくるなど
もはや絶望でしかないと、ベルは隣にリリルカもいると言うのに、膝を地に付けて絶望をした
『ガアアアアア!!』
「ベル様!」
「っ!?リリ!?」
ウダイオスは容赦はなく、そのままベルにも攻撃をしてきた。もうウダイオスは何か正気な顔をしておらず、何か八つ当たりするような動きをして右腕を振り回して暴れている。何かを狙ってここに来たわけじゃないようだ
だがその腕払いの巻き添いに、ベルが受けてしまう
しかし、それをリリルカが庇い
「があ!?」
ブシャア!!!!!
「っ!?リリィィィィィイイイイイイ!?」
その腕の払いをリリルカが庇い、リリルカの頭から血が流れた
腕払いを受けたリリルカは壁に叩きつけられ、その場で倒れてしまう
それをベルが起こしに行く
「リリ!リリ!?しっかりして!!」
「べ・・ベル様・・・無事ですか?」
「僕は良いから!リリが!頭から血が!?」
物凄い量の血がリリルカの頭から流れる。ベルが強大な敵を目前に呆然したせいで、仲間がやられた。ベルは自分のせいだと言って、悲しくて涙を流しながら、リリルカの頭を、バックパックから包帯を出して無理に血を止める
あまりの出血が酷く、全然止まらず、血はまるで花の絵柄を表すように、リリルカの血は地面に広がる程流血していた
「ベル様・・・が無事なら・・・それで・・」
「リリ・・・僕のせいだ・・・僕のせいでこんな・・・・・」
「ベル様・・・自分のしたことを・・悔やまないでください・・・・自分も今絶望をしていますから・・・」
「でも・・・これは僕の・・・」
「リリがしたかった・・・ことです・・・リリはベル様が助かって・・・よかったです」
「っ!!??ぬう・・・!!」
リリルカのやられようを見て、自分は何をやっていたのだと、今日まで鍛錬したのが無意味だと感じた。この日のためにここまで頑張ってきたのに
最後の最後で、自分のしくじりでリリルカを傷つけた
その愚かな自分が情けないと、自分が悔しくなる
あともう少しだ
このウダイオスを倒せば、ここを突破できる。もう少しで上へ登れる。
となれば、やることは一つだったと、ベルはリリルカのバックパックに手を出して、残りのポーションを全部リリルカに使う
「リリ。口を開けて」
「だ、ダメです!それはベル様の!」
「お願いだから飲んで!!僕は絶対にリリも一緒にここへ出るんだ!!!」
「ベル様・・・・」
「僕はもう何も要らない。ここからは僕の戦いだ!!」
「ベル様・・・わかりました。申し訳ありませんが、こちらはいただきます」
「うん!ここで隠れて休んでて。残っている物は全部使って良いから」
「待ってください!ベル様!せめてこれを!」
「それは火炎石!?」
「あのジュラって人の物でしたけど、使えるはずです。これをあのウダイオスに」
「うん、ありがとう・・・」
こうしてリリルカを、闘技場を壊したことで、隠れる場所ができたため、そこが安全だろうと壁の後ろにリリルカを隠す。残っていたポーションを全部渡してしまう。リリルカの頭の傷を少しでも治すためだ。もちろんそんなことをすればもうベルは回復を行えない
リリルカはベルがこれから何をしようとしているのか、分かったのか、せめて役に立てる物があると、それをベルに渡す。それはジュラ・ハルマーが使っていた火炎石だった。奴が道端に置いていた物を回収していたようだ。それを三つ受け取る
ベルのすることはただ一つ
「ウダイオス!!!!!」
『ガア?・・・・・』
「僕が相手だ!!!」
『ガアアアアアアアアアアアア!!!』
「うおおおおおおおおおお!!」
ベル一人でウダイオスを倒すことだった
ちょうどウダイオスは左半分なぜか消えている。右腕一本だけなら、レベル4の自分でも倒せるだろうと一人で挑む
いや、もう戦うしかない
退路もないなら戦うしかない。ここで絶対に勝たなければ死ぬだけ。ここで勝つしかない。ここで勝って絶対に生きて帰ると、リリルカを守るために、ウダイオスを少しでも自身に向けさせると、ベル自身が囮になる
ベルは絶対に勝てない戦いを、ナイフを抜いて一人で始めた
ドカン!ドカン!!ドカン!!!
「ぬ!ふ!は!!」
『ガア!ガア!!ガアアアアアアアアア!!!』
この闘技場の中心でベルは巨大な骸骨と激戦を繰り広げる
地面から奴の体の一部の杭である。骨の刺が無数に放出される。その攻撃をうまく予想をして避ける。なんとか全てを避けて攻撃に入る
ウダイオスは相手が一人でも、その一人を倒し切るまで集中し続ける。でも、ベルはそんなことは関係なしに、ただ倒すことに集中するために、胸にある魔石の狙いを定めている
レベル4でウダイオスを倒すのは普通なら不可能だ。しかもウダイオスは過去にパーティを全滅させたと言う経緯がある。それ程強い敵なのだ。右腕しないにしても
でもやるしかない。ここで倒すしか
「うおおおおおお!!」
『ガアアアアア!!?』
「ぬん!は!!」
『ガアア!?』
ベルは使える物はなんでも使う。アイテム以外はあの死体の冒険者の武器を全て使おうとして、背中に背負い
剣や刀を全部使って、ウダイオスの右腕を振り払う
もう回復薬は全部リリルカに渡した。もう戦いに必要な物しかない。一回でも攻撃が入ったら死ぬ。その中でどうしてもこれで倒すしかもう生き残れる手段が限られている。普通の武器だからなのか、ウダイオスの棘で頂いた武器は簡単に壊れてしまうが、今は少しでもダメージを入れるために、使えなくなった武器は捨て、次の武器へと変えるなど、戦法手段を変えながら戦う
『ガア!!』
「ぐぬう!!」
「ベル様!?」
「ぬう!おおおおおお!!」
かなりの捨て身の戦法で、いくつかウダイオスの弾丸で体がどんどん切り傷や風穴も開けられるが、それでも諦めずに、無理矢理抜いたりなどをして、傷を置いながらも特攻を掛ける
もっと上手い戦法はあると思うが。もうそんな体力もあまり無い、ここまで来てから疲労してからここまで来ている。戦闘の連続ばかりで、いくらレベル4でもあまりに耐え切れるレベルでは無い
リリルカも心配になって、動けないことには変わりはないが、せめてその戦いを見届ける
ここは少しでも、奴を倒せることを優先して、ウダイオスをベルは追い込み続ける
しかし
ここで、とんでもないことをウダイオスはする
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
『ガアア!!』
「なんだ!?あれ!?」
「地面から黒い剣!?ウダイオスは剣を出すんですか!?っ!?そういえば剣姫がウダイオスがそのようなことをすると、ギルドに報告が・・」
突然ウダイオスの手前の地面から、黒い骨の剣が出現する。その剣を右手で受け取り、黒い剣から赤いオーラが纏う
ウダイオスが剣を使うことは聞いたことはない
実はウダイオスは単独で戦うと、剣を出してくると、以前ウダイオスに単独で挑んだアイズ・ヴァレンシュタインがギルドに報告した
ベルも今ウダイオスに単独で挑んでいる。そのため奴はさっさとベルを排除しようと、出し惜しみもせずに出してきたようだ
この黒剣を、一回でも当たれば
ベルは確実に死ぬ
『ガアアアアアアアアアアアア!!!』
「ベル様!避けてください!!」
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!
「っ!?があああああああ!?」
「ベル様ああああああああ!!??」
ベルは避けることはできなかった
ウダイオスの黒剣の赤い斬撃破が振り張らされた。しかしベルは避けることができずに、その一撃を主に直撃する
そのまま後方にある。闘技場の壁に叩きつけられる
「はあ・・・ああああ・・・・」
「ベル様!」
リリルカはそのベルの傷を見て、もう限界だと思った。胸にかなり奥まで切り刻まれた斬撃の傷があった
もう死んでもおかしくない
だからベルは
「はあ・・・・はあ・・・・はあ」
限界を迎えていた。ここまでやれれば十分だった。本来ならレベル4が戦って生き残れるなど、早々にない。それなのにここまで戦い続ける彼を、他の冒険者が見たら、敬意を示したくなるだろう
一人で、ここまで戦うなど、誰もできることではないから
だが
「まだ・・・やれる・・・動ける・・・戦える!!!」
無理してまだ立ち上がる
ここで終わりだなんて諦めたくない。まだ英雄にもなってない。リリルカとここを出れていないなど。これだけのダメージを受けておいて、ベルはまだ立ち上がる
「ベル様・・もう・・やめてください。このままじゃあ・・・」
「僕は諦めない・・・・絶対に」
「でも・・・その体じゃあ・・・」
もうリリルカが見ていられなくなった
ここまで一人で頑張って報われない姿が見ていられなくなった。大分追い込んでも届かない。そんな無理して、命を削る姿にリリルカは耐えきれずに、どこかで逃げることを勧める
でも、ベルはそれでも倒すことを諦めない
「僕は・・・もっと強くなりたい!マスターや!・・・おじいちゃんや!・・・・あの人や・・・アイズさんみたいに!」
「ベル様・・・・」
「お爺ちゃんが言ってた!男だったら女の子一人でも守って見せろって!僕はリリを絶対に守る!」
「キュロス様が・・・・そんなこと・・・」
強敵を前にしてもベルは揺るがない
倒すと言ったら倒す
ウダイオスが黒剣出したからなんだ。それでリリルカがやられたら意味もない。男だったら女の子と言うリリルカを守って見せろと、祖父の言葉を思い出す
『ベル。英雄になりたいなら、女の子一人でも守って見せろ。それが男だぞ』と
今になって、死にかけたからなのか。祖父の言葉を今思い返す。そして絶対にリリルカを守ってここを出る
マスターと言うヘディンならこのモンスターに負けない。エピメテウスなら諦めない。アステリオスなら挑む。アイズなら戦う
そして俺なら。勝つ
いろんな強者たちはこんな強大な敵を前にしても揺るがないと、闘志を燃やし続けるだろう、強者達の背中を見たベルの熱き闘志。それにもう負けない理由がある
それは
「それに僕は・・アステリオスに勝ちたい!だからこいつには負けない!!」
「ベル様・・・やっぱり気にしていたんですね」
そう、アステリオスにいつか勝つために
実は、あのオリンピアの後で、時間を設けて、アステリオスと決闘をした。もちろん俺たちとゼノスの間で計画した決闘だ。アステリオスは以前俺たちと共にロキ・ファミリアと戦ってくれた。そのお礼として、ベルと決闘させて欲しいと、再戦を頼まれた
そのお礼を叶えるために、フェルズとリドと計画して、ダンジョン20階層でアステリオスとベルの決闘をさせた。ゼノスと俺たちヘスティア・ファミリアが見守る中で
結果
ベルが負けた
初めてだったかもしれない。戦った相手に負けたのは。いつもなら必死に諦めずに勝つまで立ち上がるが、今回ばかりは負けてしまい。アステリオスの勝利となった
だが。これで終わりではないと、アステリオスから『これで一勝一敗』だと、次の再戦を待っていると、次強くなってくれることを彼はベルを信じた
その後のベルは大泣きだった
今回も勝てると思った。でも負けた。諦めなければ勝てると、エピメテウスに教わったことを使って勝てなかった。その悔しさで、次は勝つと決めている
だからここで終われない
まだ再戦もしていない。またアステリオスが再戦してくれるのを待っている。まだこれからやることはたくさんある。こんな骨に負けたら明日テリオスには勝てない。
いつか彼に勝つために
「僕はお前に勝つ!!」
『ガアアアアアアアアア!!!』
「ベル様・・・・・」
ここでウダイオスに勝たなきゃ、彼にも勝てない。ここでウダイオスに勝てば強くなれる。敗北から強くなる。男ってのはいつもそういうもの。弱いから強くなれる。レベル6でしか勝てない敵でも勝ってみせると
ベルは『祖父の技』を見様見真似で使う
「お爺ちゃん。使わせてもらうよ。この技を!」
「ん?何を?」
突然ベルは左手で火炎石を持つ。そしてその火炎石を
「ファイア・ボルト」
ドカアアアアアアアアアアン!!!」
「ベル様!?」
突然火炎石を爆破させた。『左手に持ったまま』
それでは自爆も変わりない左手に持ったままの火炎石を、右手で魔法を発動させて爆破させた。そのせいで自身もその爆破の火炎に巻き込まれる
なぜそのような自殺行為をしたのかと言うと
これは『チャージ』である
ゴン!ゴン!!ゴン!!!ゴン!!!!ゴン!!!!!
「っ!?これはベル様の!?」
ベルのレアスキルが発動する鐘の音が響く
全身を燃え出す炎が白くなり、白炎として自身の体に燃え出す。そしてその炎が
『左腕に纏う』
「ぬううう!!!」
「白い炎が・・・ベル様の左腕に!?それに右はナイフに『アルゴ・ウェスタ』!?」
左腕全身に巻かれたゴライアスのマフラーに白い炎が纏った。そして右にはナイフに白い炎を纏わせている。右はアルゴ・ウェスタであるのが間違いない。だが左はリリルカでも知らない。もしかして新しい技を使うのだと思うが見たことがない
あの白い炎が左腕に纏う?
流石の仲間であるリリルカでも見たことがない。あんな左手に白炎を纏うなど、一体何をするのだろうか
ベルに考えがあるのか、その状態でベルはウダイオスに目掛けて、走り出す
「うおオオオオオオオオオオ!!!」
『ガアアアアアアア!!?』
その状態で何をするのだろうか。ウダイオスは危険を感じたのか、急いで黒剣をベルに振りかざした
そして
ベルはそのウダイオスの黒剣に
『祖父の技』を使う
それは
「『アルゴ・ラリアット』オオオオオ!!!」
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!
『ガアアアアア!?』
「ラ、ラリアット!?」
左腕全身に白炎を纏わせたのはこのため。まずはウダイオスの黒剣を壊そうと、ラリアットでウダイオスの黒剣の一撃を弾き返そうと、左腕をまっすぐ伸ばして、黒剣の刃にぶつけて押し返す打撃技
そんな格闘技なんて、ベルは覚えていない
でもその技を教えてくれた祖父がいた
それはキュロス
キュロスが遊び半分で小さい時のベルにそんな技を教えた。それを今使った。このウダイオスの黒剣の刃を壊すために、これを試そうなんて、ベルの考えは単純だが
「僕はお爺ちゃんみたいに筋力はないけど、でも・・・・・お爺ちゃんみたいに、僕は強くなりたい!!」
ベルは祖父がどれだけ力持ちで強い男だったか知っている。そんな男の見様見真似をするなど、子供らしい
でも、いつかキュロスも思っているだろう
必ずいつか自分を超えてくれると
キュロスなら言うだろう。その言葉が今
現実となる
バリン!!!!!!!
「うおおおおおお!!」
『ガアア!?』
「ウダイオスの剣が砕けた!?」
ウダイオスの黒剣を、本当にラリアットで砕けた。あの大きな衝撃を抑え切って、押し返して刃が耐えきれなくなりベルの左腕で粉々になる
そして、そのまま
「アルゴ・ウェスタ!!!」
ボオオオオオオ!!ズシャアアアアアア!!!
『ギャアアアアアアアアアア!?』
その後、ウダイオスの上半身、本体を。右手に残しておいたナイフのアルゴ・ウェスタで、ウダイオスの本体を一刀両断
ウダイオスはその一撃を喰らい、全身燃え出し
『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?!?』
ドボン!!!!
「やった・・・・ウダイオスを倒しました!!」
なんと、ベルは見事。レベル4でありながら
第三の階層主、ウダイオスを倒すことに成功した
ウダイオスはベルのアルゴ・ウェスタに斬り裂かれて全身が燃え、胸にあった魔石も壊されたため、そのまま灰になって消えた
ベルが新技を二つ使って見事クリアしたのだ。それも一人で、これは大きな功績である
しかし
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」
ガクン!・・・・・・・ドカン!!!
「ああ・・・・・ああ・・・・」
「べ、ベル様!!?ぬう!」
今の一撃でコロシアムの床が崩壊し、ベルはそのままコロシアムの地面の底に落下していく。ベルは新技を無理に二度使ったがために、もう体力の限界でその底に落下していくしかなかった
それを見たリリルカが、無理矢理足を動かして、ベルを助けようと、彼と同じく地面の底に落下する
そして。コロシアムの地面の底に落ちて、リリルカは地面に着くギリギリでベルを手で掴み、少し弾みのあるスカルシープの皮でクッション代わりにして地面に落下した、モンスターの素材のおかげで、落下死することなくベルは助かる
ウダイオスに勝ったはいいが、ベルもボロボロでもうこの先動ける状態じゃない。けどここまでやって凄いと彼女は涙が出る
「うう・・・カッコよかったですよ。ベル様・・・」
「僕・・・勝てたの?」
「ええ、しっかりと」
「はは・・・ならやった」
何とか息はしていた。ベルはもう動ける状態ではないが、なんとか困難を乗り越えたのは事実。ひとまずは一件落着と言うところだ
だが、この先はどうしたらいいかと、辺りを見渡すと
「っ!あれは?」
突然、落下した先で、奥から光が刺し、そこから物凄く細くて天井が低い道のような場所を見つける。ひとまず何かありそうだと、ベルを引きずりながら、リリルカはそこへ向かう
すると、その先では
「っ!・・・・川?それに花まで・・・まさかセーフティポイント!?こんな場所があったなんて、もしかして誰もコロシアムに近づかないから、この場所を発見していないのかも」
運の良い事に、リリルカがベルを引きずって進んだ場所は
まさかのセーフティポイント
モンスターも居なければ気配もしない。透明度の高い綺麗な川、この階層には生えないはずの植物や花まで、しかも何かの回復に使えそうな花
ここは間違いなくセーフティポイント
コロシアムは絶対に誰も近づかない死地だから、その下にセーフティポイントがあるのだと、俺でも知らない事実をここでリリルカは運良く見つける
「ここなら・・・しばらく休める!」
運の良さにしばらく安全な拠点を確保できた
まさかコロシアムの地面の底でこんな場所があるなど意外、もしかしたら危険な場所が近くにある程、安全な場所もあるのだと、リリルカは考える
とにかく少しでも、ベルの治療をしようと、もちろんもう回復アイテムは手持ちは無い。でもこの階層で少し傷を治せそうな花がある
「これは!・・・ベル様。この花の蜜を!」
「うう・・・・あむ!・・・っ!少し軽くなった・・・」
「これで傷を少し癒せます」
ここのセーフティポイントに咲いている花は、少し傷を和らげる自然回復アイテムだった。傷から流れる血が止まった。
バックパックからあの死体の冒険者が身に付けていた装備の袖を削いで、手拭い代わりとしてベルの傷をなるべく抑える
「リリ・・・」
「なんですか?」
「もう負けないから・・・・次も勝つから」
「・・・・・別にいいですよ。負けても、生きていればいいですから」
治している最中でベルはリリルカにそんな話をする
でも、リリルカは負けてもいいから生きて欲しいと願っている。自分もここに来て本当に恐怖を感じるからこそ、ここがどれだけ死が隣合わせな場所なのか、思い知らされる
こんな場所もまた来るなら、次は負けてもいいから生きて欲しいと、本当に惨めで逃げてもいいから、死なないで欲しいとリリルカはベルがいつでも生きてくれると信じている
こんな話をすると。彼女はこんな話をする
「そういえば久しぶりですね。ベル様と二人でダンジョン攻略するのは」
「そうだね・・・まだヴェルフさんとジークさんと出会うまでは・・・僕とリリだけだったもんね」
「はい、あれから・・・リリはベル様やジーク様やヴェルフ様や命様や春姫様のために、サポーターとして戦えているでしょうか?」
「もちろんだよ。リリが居なかったら、僕はもうとっくに死んでいた。リリがいろんなことを教えてくれるからここまで生きて来られたんだ。ありがとう。僕たちのサポーター!」
「ベル様・・・・はい!これからもリリは皆さんのサポートします!」
まだ脱出できていないのに、ここまで来れた喜びと巨大な敵を倒せた喜びなのか、ベルはここまでくれたリリルカに感謝をした
ベルはそこまで詳しいことは学んでいない。でもリリルカが俺にこの階層のことを詳しく学んでいたから、ここまで来れた
レベル1であろうと。これはリリルカ・アーデの実力。37階層でも的確な指示や判断をして、乗り越えることができた真っ赤な証
リリルカはヘスティア・ファミリアとして、良い団員となった。力以外で知識や判断や指示は彼女が一番。ヘスティア・ファミリア一の指揮官である
それを言われてリリルカは喜ばずに居られなかった
本当にここまで乗り越えたのが、自分でもあるなら、リリルカは俺たちと出会う前から、ベルと二人でやってきた時から、ここまで強くなれたことを喜ぶ
そんな時に
コツン!コツン!!コツン!!!
「っ!?」
「この足音・・・モンスター!?リリ達が来た道から!?」
感動話をしている最中に、突然ベルとリリルカがここに来た道から足音が聞こえる
これは間違いなくモンスターの足音、まさかモンスターが偶然この場所に続く道入り、自分たちが居るのだと気づいたのか、獲物に気づいてここまで来たのだと、推測する。足音が軽いことからスパルトイの可能性がある
しかし
「もう流石に戦えない!!相手の数は・・・おそらく3!・・・今の状態じゃあまともに戦えない!?」
リリルカのバリスタも弾は無い、頂いたあの冒険者の武器もベルが全部ウダイオスを倒すために使い果たし。もう戦えるアイテムも無い。
そして二人はもう戦えない状態の負傷。ここまで来てモンスターに追われて追い詰められるなど、やっと乗り越えたと思った矢先に、また苦難など、最悪としか言いようがない
ここまで来て、流石のリリルカもどうしたらいいかわからない。ここで万事休すなのかと思う
だが
「ぐう・・・ぐう・・・ぬう!!」
「べ、ベル様!?ダメです!もうそのお体では!?」
「僕は・・・まだ戦える!!!」
ベルは無理にでも立ち上がり、自身のナイフを握り締める
かなりの負傷でもう体力もほとんど無いと言うのに、無理して立ち上がり、ここまで来たなら迎え打とうと、ベルは無茶ながら死に物狂いで戦おうとする
相手がスパルトイの三体くらいなら、倒せると、かなりの傷を流しながら、まだ戦おうとした
当然ながらリリルカが止めるが、ベルは全然聞きやしない。ここで終わる気など本当になく、絶対に生き残ると、無理して立ち上がって戦う
そうして、コツン!コツン!!コツン!!
現れたのは
「な!?」
「どうして!?」
現れたのモンスターでは無い。しかし、なぜここに居るのか、ベルとリリルカは驚いた
ここに現れるはずのない者に出会った
現れたのは・・・・・・・・