ニーベルンゲン・シックザール〜竜殺しの英雄譚〜   作:ソール

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悪は再び、けれども正義は折れず

 

 

十一階層

 

 

「ふ!」

 

 

『『『『『ギイ!?』』』』』

 

 

「ふう・・・・段々数が減ってきたかな?」

 

 

ベルは一人でここで激戦を繰り広げている。ヴィルガもヴァルグを退治し続けると徐々に数も減ってきたのか、もう怪物達は出現しなくなった

 

どうやらもうある程度片付け切れたようで、もう出現しなくなった。

 

 

ベルの役割はこれで終わりではない。『十一階層にまだ残っている』のはそのためであり、俺たちの目的でもある

 

 

しかし、このまま何もしないのは時間の無駄でもあり、皆はまだ戦っていると言うのに、自分は何もせずにここで『目的なもの』が出てくるまでは、ペルセフォネ達が無事に出て行ったか、クルス達に任せたが、一度道を戻って確認しに行こうとする

 

 

しかし

 

 

「おやおや、まさかここに来て、また貴方に会うとは思いもしませんでした」

 

 

 

「っ!やっぱりジークさんの言う通り、ここに来たんですね」

 

 

突然敵とも思われる人物に出会う

 

だが偶然ではない。俺が必ずその人物がここに居るとベルに教え、ベルに倒して貰うよう頼むためにも目的の場所である十一階層に残って貰っている

 

そしてその人物はベルの知っている者、以前ベルが倒した人物、その後逃げられて捕縛できなかったが、再び現れた

 

その人物は

 

 

 

「ヴィトーさん・・・」

 

 

「ええ、私もこの戦場を利用をしようと思いましてね、あのエニュオの目的は私の理想でもあるのですからね、あの聖なる夜以来ですね・・・リトル・・・いいえ・・・・ラビットフット」

 

 

 

現れたのは、ヴィトー

 

前の聖夜祭の時にノエルを狙ったイヴィルスの幹部の最後の一人だ。エニュオの計画に便乗しようとこのクノッソスに来て、敵として立ち塞がる

 

無論目的はエニュオ同様に、オラリオの街の人々を皆殺しにしようと、ダンジョンのモンスターを地上に解き放つこと、前回同様、何も目的は変わっていない。まだ地上に絶望を放とうと戦場へと現れる

 

 

「貴方がここに居るってことは、前と同じで目的は変わっていないってことですか?」

 

 

「それ以外に、ここへ来ることなどあるのですか?」

 

 

「少しはあれ以来で考えを改めてくれると思っていたんです。でも・・・・・考えを変えてくれることはないようですね?」

 

 

「ええ、あれで終わりにするつもりはないですとも、私の野望が叶うまでは」

 

 

前回の戦いの敗北で学ぶことなく懲りることなく、まだ人々に絶望を与えようと下らん企み事を狙うヴィトー。

 

もう彼は人々に絶望を与えることしか考えておらず、まだイヴィルスの幹部として地上にモンスターを解き放とうとしている。一度は理想を求めた男でもあるのに、そうまでして現実を知らしめられて、夢を忘れてしまったのだろうか

 

 

「どうしてそこまでオラリオの崩壊を望むんです?貴方はオラリオに恨みでもあるんですか?」

 

 

「恨み?あるとしたら・・・・・・貴方達の正義が気にくわないことくらいですかね」

 

 

「僕たちの正義?」

 

 

「くだらないんですよ。主神と絆されて、恩恵を得てこの街のために怪物を倒し続ける貴方達が、反吐が出る程に、全くもって不愉快でしかありません」

 

 

「そんなに主神と共に生きることが、僕たちの生き方が不愉快ですか?」

 

 

「不愉快ですよ!何が主神と共に生きるファミリアですか!くだらない!主神に裏切られた私からしたら、まさしく絶望でしかない!」

 

 

「っ!ふ!」

 

 

ファミリアと言う存在、主神と共に生きるこの街の人々が気にくわないなど

 

本当に世間の姿が気に食わないのか、まるでベルに八つ当たりするようにベルに攻撃を仕掛ける。かつて自身が信じた主神に裏切られた彼からすれば、俺たちのオラリオで生きる生活が不愉快でしかないだろう

 

もう彼は自身の信じるものはなくなり、それを持つ者が、嫉妬しているのか、不愉快で破壊したくなるようだ

 

 

もう『破綻者』として常識が持てなくなったようだ

 

 

「私は君も!あの英雄ヘラクレスも!理解できない!主神のことを信じる君達が!私には君たちが色を付いているようで付いてない灰色に見える!」

 

 

「そんなことのために、貴方は地上にモンスターを解き放とうとしているのですか!」

 

 

「そうだとも!それだけのためだけにエニュオの計画を利用しているのですよ!最後のイヴィルスであるタナトス・ファミリアが消えても、私はそのオラリオの崩壊を眼にするまでは、私はイヴィルスと言う『悪』になり続ける!お前のたちの正義を壊すために!」

 

 

タナトス・ファミリアと言う最後のイヴィルスが消えたのに、それでもヴィトーはイヴィルスの幹部として名乗る

 

主神に裏切られた彼にとっては、この街に住む人間全てが異常だと言い、主神と共に生きていくなど。無駄に等しいと彼は言う

 

もう悪を名乗ることしか道がないと何もかも分かったような口をする

 

しかし

 

 

ベルは

 

 

「貴方の眼には『その灰色』しか見えないんですか!」

 

 

「何を!今更!?」

 

 

「貴方の眼、『色覚異常』なんじゃないんですか?貴方の眼、何かおかしいんです。何か色が無いような薄い色の目」

 

 

「っ!?」

 

 

ベルはヴィトーの眼がおかしいと思って、聞いてみたが、どうやら彼には眼の病気があったようだ

 

 

色覚異常とは

 

 

特定の色に対する識別能が低下している状態であり、正常とされる他の人と色が異なってしまう病気である

 

つまり彼の眼に見える光景の色が見えない眼の病気である、色の区別ができず、全て灰色のに見える病気をしている

 

 

ベルがその病気をしているのに気づいたのは、あまりにヴィトーが眼を開こうとしないからなのか、微かに眼は開いているが、あまりに目の瞳の色に濁りがあるのに気づいたのと、やけに灰色しか見えないと言う意味深な言葉に、彼が色覚障害の眼を持つ人だとベルは気づいた

 

 

「アミッドさんなら治せます!その眼も!そうすればいろんな色が見えるようになれるんです!」

 

 

「それで私を救うとでも言うのか!?君は本当にあの英雄ヘラクレスよりも忌々しい!あの赤い血を見た私の感動を奪うのか!?この眼が治ったとしても!私のこの憎しみは癒えない!絶対に!」

 

 

ベルはヴィトーが何度犯罪を起こしても救おうとした、これがベルの選択であり、何度も人としての道を歩ませようと、犯罪者をあるべき道へと導こうとする

 

だがヴィトーは否定する。ここで色が見えるようになったとしても、今まで殺戮をしてきた赤い血を見た快楽に近い感動と、今までやってきた悪行の数々が無駄になると

 

眼が治ったとしても、悪を捨てることなどできず、そして主神に裏切られた憎しみが癒えないと

 

今更人らしい生き方などできないと言う

 

なら

 

 

「ヴィトーさんの主神は『エレボス』って言うのですよね!」

 

 

「な!?なぜそれを!?」

 

 

「ジークさんから聞きました。とても人間の可能性を信じた主神だと、もしかして世界に絶望をした貴方に、もう一度前へと進めるために貴方をこのオラリオに残って貰うために、自身だけ天に還ったとかじゃないんですか!」

 

 

「っ!?何を知ったことを!?」

 

 

「僕もその神エレボスって言う神が、決して貴方を裏切ったのではなく、もっと世界を知って貰うために貴方をここへ残したんじゃないんかと思います!悪だけが全てじゃないと!」

 

 

「黙れ・・・・・」

 

 

「貴方はまだ周りと前が見えてないだけです!その眼が治ればもっと先が見れるはずです!破綻になっても意味はないと!」

 

 

「黙れ・・・黙れ・・・・」

 

 

「世界を壊しても!その先に貴方の幸せなんてありません!神エレボスは貴方に理想を追いかけ続けて欲しかったんですよ!正義と言う理想に!現実に打ち勝つ正義の理想を!」

 

 

「黙れええええええ!!!その言葉を口にするなあああああああ!!」

 

 

俺がヴィトーには主神が居ると、前に俺はベルに話しておいた

 

その話を聞いて、エレボスは一度はこのオラリオのために悪を名乗った。しかし、それはオラリオの冒険者達が更に高みや強みを歩んでもらう為だと。人間の成長のために自身の名誉を汚してでも、人間の強さを信じて愛した神だと、ベルは俺からの話を聞いて、そう思った

 

だから

 

神エレボスが眷属であるヴィトーを見捨てたのではなく、現実を見るのも正しいが、だからと言って悪が全てではない。眼を直せばより良い光景は見えて前を生きていけると、ベルは破綻し欠けているヴィトーを救おうとしている

 

しかし、それでもヴィトーは否定を続ける

 

もう主神のことを信じていないからなのか、そんな想いで自分をここオラリオに残したのだと、眷属に前へ生きていけるためにも、いろんな成長ができるここへヴィトーをここへ置いて行ったと言っても

 

ヴィトーはそれでも破滅を望み、それが自身のためではならなくても良いと、自分の汚点を突かれて、もう彼らしい冷静さは無くなっている

 

本当は心の底では分かっているからなのか彼は認めたくないと、誤魔化すようにベルに攻撃し続ける。今更信じられるはずがない。理想など。主神を裏切られたあの時からなのか、眼がもう色覚がわからなくなったからなのか、何もかも壊せば幸せになれると勘違いしている

 

なぜそれを望むのか

 

それは

 

 

「貴方はこの世界に絶望したから死のうとしているんですよね?そんなことは・・・・絶対にさせない!!」

 

 

「っ!?!?」

 

 

まさかのヴィトーはベルに目論見を見破られる

 

死んで楽になろうとしているなんて、それこそ本当の無意味だ。世界を壊す程世界は汚れていない。現実はそれに近いかもしれないが、それでも生きていれば美しく見えるはずだと。死んで良い事なんてないとベルは彼を助ける

 

現実に打ちのめされた。英雄なんて簡単になれるはずないどころか英雄なんて存在するはずがないと、現実の酷さを見据えたかもしれないが、そんなことはない

 

 

なにせ、ベルはまだその理想を追い続けている上に、その仲間に『本物の英雄が居る』。だからヴィトーもその理想を追い求めるられるように、彼の悪をここで

 

 

ゴン!ゴン!!ゴン!!!

 

 

「っ!?その鐘の音は!?」

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

「お、おのれ!死ね正義!私の悪を持って!!」

 

 

倒そうと

 

ベルは新たに手に入れたゴライアスの大剣で、ベルのレアスキルをチャージさせて、一撃の力を溜める。大剣の刀身に白い光が集まる。鐘の音と共に

 

ヴィトーもそれに立ち向かおうと、持っていた剣で反撃をするが

 

 

「はあああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

「ぐ!?ぐわああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

白い斬撃破が、ヴィトーが近づく前に放たれた

 

ヴィトーはその白い斬撃破に直撃を受けて吹き飛ばされる。避ける余裕はあったのに、ベルの励ましの言葉が余程気に食わずで、避けることすら考えていなかったのか、それすらできなかったのか、ヴィトーは後方に吹き飛ばされて倒れ

 

ベルの一撃に直撃を受けてもう立ち上がれらないのか、もう戦闘続行不可能となった。そもそもヴィトーはレベル4でベルはランクアップで5になった。戦闘を始めた時から勝負は決まっていたのだと、ヴィトー自身も分かっていたのに、それでもあの理想を言い続ける少年にここで出会ったからと、挑みたかったのだろう。理想が本当に正しいのかを

 

その状態で、ベルはヴィトーに近く。そして倒した彼に伝えたいことを言う

 

 

「ヴィトーさん、このお金を置いておきます。これで眼を治してください」

 

 

「本当に甘い人ですね。貴方は・・・」

 

 

「僕にできるのはこのくらいだけです。僕はまだここで戦わなくてはならないですから」

 

 

「勝てるのですか?あのエニュオが用意した怪物に・・・」

 

 

「勝ってみせます。僕は正義が必ず勝つと、その理想を信じます」

 

 

「ふふふ、あの英雄ヘラクレスの後継者だけのことはあるようですね。私が眼を治しても私の悪事が終わることがないかもしれませんよ?」

 

 

「その時は何度でも僕が止めます」

 

 

「・・・・・・・・ふふ、そうですか・・・・」

 

 

「僕は行きます。それでは、貴方が変われると祈っています。それでも変わったその時は。僕が何度でも・・・・・・」

 

 

「・・・・・・・わかりました。早く行かないと、エニュオの計画通りになってしまいますよ?」

 

 

「はい・・・・・」

 

 

それだけを言ってベルは去る

 

ただ倒しただけではヴィトーが変わるとは思えないが、それでもベルは信じる道を選ぶ。どこまで甘いと言われても構わない。だが信じるからこそ値する理想だ。信じることから始めなくてはと、ベルはそれだけをヴィトーに伝える

 

もしそうでなかったとしても、何度でも止めると。ヴィトーが何度も悪に堕ちるのなら、何度でも挑み続けると、ベルは揺るがなかった

 

だからなのかヴィトーは

 

 

「神エレボス・・・・これが貴方の信じたものですか・・・・どうして・・・それを私に教えて下さらないのですか・・・・まったく、私には不愉快です」

 

 

神エレボスはなぜこんな可能性を教えてくれなかったのだろうか

 

いや

 

気づかせるためにここに残されたのかもしれないと、彼は自分で気づかせるためにも何も言わなかったのかもしれない。ここで知ることを知って、それで答えが出るなら苦労はしないだろう

 

どの道、もう自身の主神はいない。ベルが置いて行ったお金で眼を治して、それで全ての色が見えるようになったら、いろんな光景が見れて、自身は変われるのだろうかと

 

あまり期待していないが、彼は悪に成りきれなかった

 

ただそれだけを実感してしまった

 

 

 

 

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