ニーベルンゲン・シックザール〜竜殺しの英雄譚〜   作:ソール

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憎しみを超えた先に、白い風が吹く

 

 

ニーズホッグも倒し、デミ・スピリットオルターも撃破した。十階層と十一階層の敵はもう居ない

 

しかし

 

 

十二階層の戦いはまだ終わっていない

 

 

つまりはまだクノッソスの戦いは続いている。この戦いが完全に終わるにはこの階層の戦いが終わった時、そしてその戦いは二つある

 

まずは

 

 

 

 

「はあああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

 

アイズとレヴィスの戦いだ

 

アイズは俺に任せることなく、自分の力でレヴィスを倒そうと戦っている。もう誰にも頼れない中で自身の力で果たすしかない。しかも生き返ってきた母親を目の前にされているんだ

 

母親を目の前にされて不甲斐ない姿など見せるわけにはいかない。ここで自身の強くなった力を発揮して、レヴィスを倒すと。全力を賭ける

 

 

しかし

 

 

それはレヴィスも同じ

 

レヴィスも魔力が限界以上に今も爆発するような増大な力を含んでいる。つまりは全力。緑肉を体で取り込んだ力を存分にアイズに振るう

 

力ならどちらも同じ強さ。どちらも怯みは無い。後はどれだけ出し切れるかだ。黒い風を帯びているのに、レヴィスに全然歯がたたない。

 

 

何かが足りない

 

 

「来いアイズ!私の乾きを満たせるのなら、私を喰らい尽くせ!!」

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

力だけでは足りないとアイズは気づき始めた。何度刃を交わって、理解してしまう。まだ自分には何かが足りないと。ではそれはなんなのか?これだけの力を出しておきながら、まだ足りないなら

 

何が足りないのか?

 

力、速さ、耐久、その全てを備えている。それでも足りないなら、何が必要なのか、アイズにはわからない

 

ここまでオッタルに鍛えられて、何が足りないのか

 

 

それを

 

 

 

 

『おい、まだやっているのか?』

 

 

「っ!?ジーク!?」

 

「ジーク君!?」

 

 

「マジックアイテムか・・・・」

 

 

俺が答えると、アリアが持っているオクルスに、音量を大きくして、アイズに聞こえる声で答える

 

まだレヴィスの戦いが終わってないと、アリアのオクルスから激戦の音が聞こえたため。さっさと終わらせるように助言を言うために、俺はアリアのオクルスで連絡する

 

そして、力以外で必要なものを答える

 

 

『お前の力はその程度か?いや・・・お前の意思はその程度か?』

 

 

「っ・・・・・」

 

 

『アルバートは違うだろう。どんな敵でも勝つまで諦めなかった。力ではなく意志一つで何にでも抗ってきた。なのにお前はどうだ?お前は意志が弱すぎる。なんのために今日まで強くなったのか、少しでも強くなった意味を知れ!!お前はなんのために強くなった!!お前を守るべき者は今後ろに居るだろう!!』

 

 

「っ!?・・・・お母さん・・・」

 

「アイズ・・・・・」

 

 

『負けていいのか?レヴィスはお前を殺したら、次はアリアだ。アリアをどうするか知らないが、少なくとも力を奪うだろう。だが、それでいいのか?お前が強くなったのは、お前の大事なものを守るために、意志を示せ!!!それが今お前に必要なもの!!!』

 

 

「意志・・・・・・」

 

 

『失ってもいいのか?大昔みたいにファフニールにまた奪われるか?俺が取り戻してやったのに、またお前は意志が弱いまままた奪われるんだ。復讐はもう終わった!過去の憎しみも捨てろ!もうお前の大事なものはある。それを守るために前を向いて戦意を見せろ!!アイズ・ヴァレンシュタイン!!!』

 

 

「私の大切なものを・・・守るために」

 

 

アイズのレアスキルは憎しみが原因だ。

 

『復讐姫』

 

これがアイズの唯一のスキル。このスキルが彼女の力を上げている。相手がモンスターでなければ使えない力だが

 

あまりにも力任せに過ぎない

 

力と言うのは、俺もそうだが自身の力で制御するものだ。それなのにただ力をぶつけているだけに過ぎない。自身の物になってない。ただ放出しているだけ、物になってない。アイズの憎しみが消えないせいで、ただ憎しみを込めた力であるため、魔力を増幅したレヴィスには押されることなくても倒すことはできない

 

 

問題は『彼女の黒い意志』だ。これがアイズのスキルに悪影響を及ぼして、力が乱暴になっている

 

 

おそらく、まだ過去の苦しみから乗り越えていないのだろう。母と父を奪われた憎しみが消えないせいだ。だが、だから俺が母を取り戻してやった。これでもう復讐に囚われることはない

 

ならだ

 

 

もう守る者はできたはずだ。もう過去に囚われるのは終わりだ。今はアリアを利用しようとするこのレヴィスを守るために、力を優しく使って前を向けと言う

 

その黒い風ではなく。闇に囚われない風を

 

 

そのために、俺はこう言う

 

 

 

『ベルは敵の切り札を倒したぞ?後はお前だけだ。ベルは進み続けている。大切なものを守るためにも、お前は・・・守れるか?』

 

 

「っ!?ベルが!?」

 

 

「やったの?ベル君?」

 

『ああ、見事やり遂げたぞ。ニーズホッグは倒れた。あとは・・・そいつと。今俺たちが止めている奴だけだ。アイズ・・・・お前は守れるか?アリアを?』

 

 

「ベルが・・・・ここに・・・・あの子はもうこんなところまで・・・・私は・・・・」

 

 

ベルの話を持ち出した

 

一番かは分からないが、惹かれているは間違いない。ベルが先ほどニーズホッグを倒したことを教える。強大な敵を倒すことが出来るほど、あいつは大きくなったことを伝える。常に前を見続けて強くなった証、ベルにできて、お前にはできないのかと。俺はアイズに過去の憎しみを捨てろと言う

 

ベルだって過酷な過去もあったが乗り越えた。だからここまで強くなれた

 

 

だから

 

 

アイズにも出来ると、前を向かせる

 

 

更に

 

 

「アイズ!!頑張れ!!」

 

 

「っ!・・・・・・・・」

 

 

『母親に応援されているのに、期待に応えないのか?』

 

 

「・・・・・・・・・・・ふう」

 

 

ビュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウうウウウウウウウ!!

 

 

「っ!?これは!?」

 

 

母であるアリアに応援されて、体全体に帯びていた黒い風が

 

 

白い風に変わった

 

 

やっと過去の憎しみが消えた。もう取り戻した者はここにある。父親は居ないが母親が自分の前に帰ってきた。そして応援されている

 

なら

 

過去の憎しみを、今守るべき者のための『折れない愛しみ』に変わる。その大切なものを守るために、力を暴走させるだけでなく。自身だけでなく、見方全体を覆うように風がアイズだけでなく、アリアも包んでいく

 

もちろん強さもあるが、もっと凄いのは

 

 

「この程度で!!」

 

 

ガキン!!!

 

 

「なに!?弾かれた!?」

 

 

「これは・・・アイズが私の力を!?」

 

 

アイズはやっとアリアの力を物にしたんだ。自分だけではなく、味方をも守る風の壁。レヴィスはアイズに攻撃をしたが、アイズは剣で防いでいるわけでも無い。何もしていないのに体を包む白い風がレヴィスのカースウエポンを弾き返した

 

アイズがやっとアリアの力を制御した

 

 

「テンペスト!!」

 

 

「っ!?」

 

 

「はああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

その白い風を帯びた状態で、アイズはレヴィスに突っ込む。彼女が立っていた地面が突風が起きただけでバリンと割れる。風だけで地面を壊せる程の一撃を

 

アリアの風をやっと使えるようになったアイズの新しい一撃をレヴィスに直撃させる

 

 

「本気か!なら!魔力の全てを使う!!!」

 

 

「っ!緑肉に溜めた魔力を一気に!?」

 

 

アイズが本気の一撃を出すとわかった。レヴィスはこちらも本気で打たねばならないと。体に含んだ緑肉に溜めた魔力の全てを使う

 

 

「はああああああああ!!!」

 

 

レヴィスのカースウエポンの刃から、赤色に発光し、大きく剣を振りかざして赤い斬撃破を出した。その一撃は明らかに巨大なモンスターをも倒せる。いや、この階層を壊せる程の斬撃、斬撃破は真っ先にアイズの方へと飛んでいく

 

無論アイズは避けない

 

 

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!

 

 

「はああああああああ!!」

 

 

赤い斬撃破を白い風を帯びて受け止める。今度は剣と共に防ぐ。その衝撃で、アイズのデスペレートの刃に少しヒビが入りそうになっている。つまりはレヴィスの一撃はかなり大きいと言うことだ

 

だが

 

もう守る者は後ろにある。だからもう前を進むしかない。横に避けたり、後ろに下がっても、ちょうど後方にアリアが居る。つまりはこれを自分で塞がないと母親がやられる。この一撃をなんとしてでも防ぎ切る

 

 

ファフニールの復讐はもう終わり、両方では無いが、母親だけでも帰ってきた、もうこれから生きる意味も強くなる意味もある。もう過去には囚われない

 

自分の全てを救った俺のように

 

今でも強くなることを前を進み続けるベルのような

 

 

強い心を持って

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バリン!!!!!

 

 

「っ!何!?」

 

 

「はあああああああああああああああああああああああああ!!」

 

「アイズ!クリーチャーの一撃を打ち消した!」

 

 

見事にアイズはレヴィスの最大の一撃を相殺した。アリアの力を物にしたいアイズは、レヴィスの巨大な一撃も打ち消すことが出来る力を手にした

 

そして

 

これが母から貰った風を纏った、彼女の必殺の一撃

 

 

 

 

「リル・ラファーガ!!!!!」

 

 

 

 

ビュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!

 

 

「ぐ!?ぐわあああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?」

 

 

アイズの必殺技の一撃を、レヴィスは一度は剣で防いだが、それすら白い風で散り散りのように斬り刻まれて、緑肉で取り込んで強化した右腕もアイズの風で散りにされ、防御もできなくなったレヴィスにアイズはデスペレートで魔石があると思われる胸を貫いた。

 

剣で胸を刺した場所から、白い竜巻が発生し、レヴィスの胸部の中身が徐々に散りになるように斬り刻まれ

 

 

綺麗な風穴が空いた。

 

 

肉の破片も残らず、綺麗な風穴がレヴィスの胸部に綺麗な穴が空いた。無論

 

 

心臓でもある魔石も完全に破片も残らずにチリになった

 

 

 

「がは!?・・・・アイズ・・・ヴァレンシュタイン・・・・・」

 

 

「はあ・・はあ・・はあ・・・私の勝ちです」

 

 

「ああ・・・・・私の・・・負けか・・・」

 

 

心臓である魔石はもう散りになって消えた。だからレヴィスの体は徐々に灰になる。クリーチャーは怪物同様で魔石が心臓だ。だからレヴィスも心臓やられて体が灰になろうとしている。消える前に何か遺言を残したいのか、いくつか彼女は喋る

 

 

「見事だ・・・ジークとも最後に戦いたかったが・・ここまで私を追い詰めたのがジークを合わせてお前で二人目だ」

 

 

「貴方は・・・・どうして私に目を付けたの?」

 

 

「単純だ。お前から力を貰おうとしていた。私と同じ・・・・精霊の紛い者であり、私は元精霊だった。だが・・・・あのダンジョンで怪物になった・・・・それでからの私は・・・怪物らしく・・いろんな怪物と戦ったが・・・・なぜかどいつもこいつも私に敵わなくてな・・・・・つまらない人生だと・・・精霊に戻りたいと、手段を探していた」

 

 

「もしかして貴方は、私を探しているって言っていたけど。まさか私の力を盗んで精霊に戻りたかったの?私がシルフでもあるから・・・・」

 

 

「ふふ・・・・・・『初めはな』」

 

 

「初めは?」

 

 

「ああ・・・・だが、あの二年前で『ジークと出会って』からは違う。私はより強さを求めるようになった。それが・・・・私の快楽でもあった。あの男が・・・・私の戦意を作った・・・英雄と呼ばれたあの男は・・・私に心を作ったのだ・・・・あの男に挑んで戦うこそが私に生きる喜びをくれたんだ」

 

 

「ジークが・・・・・」

 

 

初めは怪物になって、生きるためにダンジョンに住う怪物達を殺し続けて魔石を喰らってきた。だがそんな日々も嫌になり、精霊に戻りたいからと。普通な生き方を望んでいた。それに必要なのがアリアだった

 

 

風の精霊シルフと言うのは、人間に近い体の性質を持つ精霊だ。つまりは風を操ること以外は人間と変わりない生き物だ。だから人間に恋して、子供を作る生殖も出来る。だからアイズが生まれた。ウンディーネが唯一自由な恋ができる羨ましい精霊だと、アリアに少し嫉妬もしていた

 

 

だから、アリアを手に入れば、その力をどうにか盗んで人間・・・もしくは精霊に戻れると思っていたらしい

 

 

しかし

 

 

そんな望みは、二年前の俺とダンジョンで出会って、目的が変わった

 

 

二年前、偶然俺はダンジョンで彼女に会い、理由もなく襲撃を受け、重症に追い込まれる。理不尽に襲撃を受けたことでカオス・ヘルツで怒り狂い。当時何一つ太刀打ちできなかった彼女に圧倒して打ち倒した。命は奪えないものの。レヴィスはクリーチャーになってから初めて敗北を味わった

 

それが原因で、彼女には戦いの喜びを得た

 

俺に勝ちたいと言う欲望が出た。今までどんな怪物もレヴィスには敵わなかった。しかし、俺は違った。当時は俺もレベル1だが、どんな敵をも圧倒できるカオス・ヘルツの力で俺に敗北し

 

それ以来、精霊に戻るよりも。より強くなって俺に挑むことに専念するようになった。そのためには精霊の力を持っていると思われる、アイズを見つける。それで力を奪うつもりが、アイズもまた俺に近しい力を持っているとして、何度も挑んでは強くなると、戦いを楽しみとしていたレヴィスからすれば喜びでもあった。

 

 

そして

 

 

ここまで強くなったアイズに敗北した

 

 

「アリアの力を奪って、お前を倒し、ジークにも挑みたかったがな・・・・まあ奴には何度も倒されていたから・・・・十分奴と戦ったからいいだろう・・・」

 

 

「これで貴方は・・・・終わり」

 

 

「ああ・・・・さらばだ・・・アリア・・・ジーク・・・そして・・・・アイズ・・・・ヴァレンシュタイン・・・・」

 

 

「うん、さよなら。精霊に戻れなかった人・・」

 

 

「ふふ・・・今では戻りたいなんて思わないけどな・・・・」

 

 

サアアアアアァァァァァァァ

 

 

レヴィスはそれだけを言って

 

 

体が灰になって消えた

 

 

元精霊、なんの精霊だったのか結局わからなかったが、戦いを楽しむ精霊だとアイズは認識した。本当はアイズも彼女に少し感謝していると思っている

 

それは彼女に挑むことで、ここまで強くなれた

 

敵ではあったが、自身の強さを極限まで高めるような相手をしてくれた。彼女と言うライバルが居なかったら、ここまで強くなれなかったと、きっかけを作った彼女には、敵であるけど感謝をした

 

 

「うう・・・・・・」

 

「アイズ!」

 

「う!少し・・・無茶しちゃった・・・」

 

「本当に強くなったね・・・あの人みたいに・・」

 

「うん、お母さん。私・・・強くなれたかな?」

 

「うん。あの人みたいに強くなったよ、ここまで強く生きて・・・良かった!」

 

「お母さん!・・・・」

 

 

アイズはもう限界を迎えたため、その場で倒れそうになるが、アリアがアイズを受け止める。アイズは二年ぶりに出会う母親に少し甘えてしまう

 

死んだはずの母に出会えるなど、こんな嬉しいことはないと、少し甘えて褒められる

 

 

嘘ではない。ここまで強くなったんだ

 

 

強くなった娘を褒めて優しく抱きしめる。母と娘が奇跡の再会を果たした。もう会えるなど叶わないと思っていたのに、でもこうして奇跡的に果たせた

 

もう二度と離さないと。絶対に守って見せると

 

ここにアイズの大事な者が帰ってきた瞬間だった

 

 

 

 

 

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