奴を必死に追い掛ける、俺とシル、ノエルが人質に取られているから下手な攻撃はノエルを巻き込む為、何もできない。だが奴もノエルに危害を咥えている様子もない、どうやらノエルは俺たちをおびき寄せる為に使われているようだ、彼女が無事で何よりだが
奴を追い掛け、奴が最後に向かった先はとんでもない場所だった。
それは
「まったく、まさかこんな所に辿り着くとはな」
「バベルの最上階、どうしてここに!?」
「ここは私の主神が、去った場所です」
「やはりか・・・・」
「じゃあ、ここが邪神エレボスの送還された場所」
奴が辿り着いた場所は、バベルの最上階
かつて、エレボスが天に去った場所だ
完全に奴がエレボスを否定する割には縋っていた証拠だった、主神と同じ死に場所で死にたいとは、随分とわかりやすい嘘を吐く者だ
ここで死ねばエレボスに会えるとでも思っているのだろうか、だとしてもヴィトーにとっては、エレボスは主神としても一番に頼れる存在だったと、ここに来て実感する
無論裏切られて、そこまで信頼しているつもりはないだろうがな、そう考えたら、こいつは何をしたいのか、何をエレボスに示したいのか、やりたいことがわからない時点で、こいつはもう壊れているんだなと思う
だから、なぜここへ来たのか問いかける
「こんな所まで来て何をする気だ?主神のようにここで朽ちるか?」
「ええ、私はここで終わりたいのです。あの男神がここで天に逝った、この場所で」
「そうすれば、天に逝ってあの男神に会えるからか?そんな確信もないことをするのか?あの男神を否定している割には、随分とあのエレボスに会いたいんだな?」
「私は知りたいんですよ。貴方の言葉ではなく、あの男神の、なぜ私をあの時置いて行ったのか、私はあの男神の言葉を聞きたいのです」
「それが貴方の死にたい理由、そんなことのために、自分の命を・・・・」
「くだらんな、ハッキリ言って」
七年前、なぜ自分を置いて逝ったのか、それを聞きたいが為に、エレボスが天に逝ったこの場所で死ねば会えると、確信もないことをしようとしているらしい
まだ裏切られたことに未練があるのか、自身の命を落としてでもエレボスの神意を確かめるが為に、こんなくだらんなことをするようだ
本当にもう誰の言葉も聞かないようになってしまったようだ。あるのは自身の死を望むのみ
しかし
「やめてください!ヴィトーさん!」
「ノエルを放しなさい!」
「っ!ベル・・・・」
「リュー!?どうしてここに!?」
「僕はアミッドさんが、ヴィトーさんが病室から抜け出したと聞いて、探していたんですけど、リューさんがノエルを誘拐しているところを見たようで、一緒にリューさんとここに」
「はい、買い出しの途中で街を歩いていたのでしたが、途中遠くであの男がノエルを誘拐しているのを目撃して、ベルさんと途中会って二人でここまで来たんです」
「なるほど、あいつ、ノエルと出会う前はアミッドの所に居たようだな」
「眼を治してもらってたってこと?」
「そうかもな、だが・・・・それを拒んだようだな、あの感じでは」
ここで後ろからベルとリューが現れる
ベルは最初からヴィトーを探していた。ノエルと出会う前はアミッドの病院で診てもらっていたようだが、治されるのが嫌で病室に逃げ出し、偶然ノエルと出会い、それでから俺に出会ったようだ
リューは酒場の買い出しの途中でヴィトーがノエルを誘拐している所を目撃し、ベルも偶然見つけ、二人でここに来たようだ
「ヴィトーさん!もうやめてください!こんなこと!」
「やめたければ私を殺せばいい、私は所詮世界の破棄でしかないのです!今更希望も幸福も求めるか!私はもう生きるのが苦しいのです!」
「貴様、こんなことのためにノエルを巻き込むな」
「私は最後まで悪を貫くのです。私を殺せばこんなことも終わる。私の主神のように・・・」
「主神?・・・」
「リュー。エレボスのことだ。こいつはそのエレボスの最後の眷属だ」
「な!?あの邪神エレボスの眷属!?」
「エレボス?おじいちゃんから、そんな神が居ると聞いたことがあるような・・・・」
「アストレア様が送還させた神の・・・最後の眷属!?」
「そうでした、リュー・リオン、貴方はあの正義の女神の眷属でしたね、ええ、私はあの男神の眷属ですよ!まあ、もう裏切られたのですから、もうどうでもいい話ですけど、アストレアの眷属なら、私を殺してこの娘を助けなさい!それが正義です!貴方の正義で私を殺しなさい!でなかればこの娘が死ぬぞ!」
「ん?ヴィトー?」
「まさか・・・・あの邪神にまだ眷属が居たとは」
今にも奴はノエルを連れて、塔の外緑に近づき、いつでも落ちようとする。しかし、ノエルも
リューはこの男があの七年前の戦争を引き起こした邪神の最後の眷属だとは知らなかったようだ。だが納得はしていた、あの邪神の眷属なら、こんな所業をするのも納得できた
だが
「私は断る」
「なに?」
「私も仲間の仇討ちの為に多くの復讐をしてきた。もうこれ以上の殺しは正義ではない。だから私はそんなことはしない。それ以外の方法で私は貴様を止め、ノエルを助ける」
「なにを綺麗事を・・・・・」
「それの何が悪い?それは実現できるかできないかの話だろう?私たちアストレア・ファミリアはいつも口にしてきて何度も実現する為にここまで強くなった。それが私たちの正義だ。今はもう私だけになってしまったが、それでもアリーゼ達の正義を掲げ続ける為に、私はもう殺しはしない。それ以外で私はお前を止める。お前が邪神エレボスの眷属であろうと、私はもう殺しはしない。それが私が死ぬまで掲げる正義だ」
「ぐ!?」
「リュー・・・・・」
「リューさん・・・」
「アリーゼ達の正義を、この前の遠征で再度持ち続けた。彼女の信念、揺るがないようだ」
リューはヴィトーを殺さない
もう殺しはしない。前回の俺たちの遠征の時に、夢でかつての仲間達に出会ったのか。彼女達が託された正義をこれからも持ち続ける為に、もう憎しみで人殺しなどしない
もう彼女の正義と言う信念のために。もう殺しをすることはない
「僕も止めます。僕はジークさんのように強くなれない。ジークさんのように人を殺してでも仲間を守れる心の強さはない。だけど、貴方を止めたいと言う心はある。貴方を止めます。殺しが正義であるはずがない!」
「く!ベル・クラネル!君まで!?」
「クノッソスの時同様に、貴方を止めて、その眼も嫌でも治してもらいます。約束を守ってくれないなら!」
ベルも同様に止める選択をする
俺みたいに相手を殺してでも仲間を守る覚悟は残念ながら子供と言う理由も含めて、ベルは殺しをしてでもノエルを助ける気はない
そもそも、それだけ殺して欲しいのなら、さっさとノエルを手に掛ければい
なぜそのようなことをさっさとしないのか、ヴィトーは今更良心に目覚めたのだろうか、こんな小さな子供のような精霊に手を出す気はなく、ただ人質を取るだけで何もせずに、殺す振りをしているのだろうか、それならこの時間が完全に無駄なと思う
風も強くて、今にも二人は吹き飛ばされそう、このままでは二人は死んでしまう。
やはり、このままノエルを助けるしかないと、奴を殺すしかないと、俺は殺しをしてでもノエルを助ける。奴の見苦しい言葉など、俺は元々感情がほぼ殺された男、良心など限られた者にしかしない
だが
俺はまだ聞いてない
「わかった。俺はお前を殺そう」
「っ!」
「ジークさん!?またそんな!」
「俺は奴の命など知ったことか」
「本当にするの?」
「ああ」
「そうですか!やはり貴方ならすると思ってました!そう!それでいいのです!私と言う悪を倒す!英雄である貴方がやるべきことです!英雄ヘラクレス!!!」
聞き分けがないようだから、もう付き合いきれないと限界である為、俺はヴィトーを殺す選択をする
もう何を言っても無駄だろう。ここまで落ちぶれようだと、説得の言葉が嫌気な言葉にしか聞こえないように、もう奴に説得な言葉を言わない。落ちぶれた人間に何を言っても無駄なだけ
しかし、聞きたいことが最後に一つだけある
「その前に最後にお前に聞きたいことがある、初めに言っておくが遺言を聞きたいわけじゃない」
「ほう、なんですか?まあこれで私を殺してくれるのですから、最後くらいなんでも答えますよ」
「そうか、なら・・・・・・・」
聞きたいことがあると言い、もうこれで終わりならなんでも答えると、まるで遺言を答えるように、今のヴィトーは答えるとちゃんと口にした
ヴィトーはしっかり答えると宣言したところで
俺が奴に聞きたいこと、と言うより、その七年前エレボスに聞いたことを、奴に言う
それは
「昔エレボスに聞いたんだが、お前も英雄になりたかったんだろう?それがお前の理想か?」
「っ!?」
「え!?」
「ヴィトーさんも英雄に!?」
「本当なんですか?ジーク?」
「ああ、奴が教えてくれた」
「なぜそんなことを・・・・・・あの男神はどこまでも・・・・・」
七年前、エレボスに聞いた。『自分の眷属に英雄になりたかったの夢見た眷属が居る』と、奴に聞いた。
それはもしかしてこいつのことかと、俺はエレボスからこいつの話しか聞いたことがない。エレボスの話が確かなら、英雄になりたいを夢を持つ眷属を持っていると聞けば、俺の知っている限りで、エレボスの眷属はこいつだけ
じゃあこいつが英雄になりたかった夢を持ち、それがこいつの理想だと
理想を一切言わない奴に、俺はこいつの理想だと思うことを当てた。どうやら奴の驚きを見る限りでは正解のようだ
こんな男でも、英雄になりたいと言う夢があるらしい。今はやっていることは真逆だが
エレボスの言うことは間違ってなかったようだ
「この世界の現実を知って、完全にその夢を諦めたようだが、昔ではその夢を信じていたようだ。英雄に夢見る奴がっここに居るとはな、なあベル?」
「まさか、ヴィトーさんも、僕と同じ英雄になる夢を持っていたなんて・・・・・」
「屈辱ですよ、まさか英雄に私の理想を悟られるとは・・・・・・」
「別にいいだろ。お前は死を選んでいるんだろ?今更過去で夢見た内容俺たちに知られても構わんだろう。どうせ終わるんだからな、それに別に嘘ではないのだろう」
「・・・・・・・・」
「何も答えないか、余程心に来たようだ。英雄を夢見たのに、現実を見て諦めた現実主義者。逆に悪を果たした方がこの世界においては正しいと思ったか?否、そんなのはただの馬鹿のすることだ。この世界では己の強さを賭ければどんなことにおいても状況も場面も変わる。お前は自分の力量を考えてから行動に出ている。それも正しいことだ。しかし、それだけで生きていけるだけで満足するか?」
「っ!?」
「お前は英雄になりたい。その夢をここで諦める選択をした。それで満足か?まだお前は生きている。過去に人殺しをした罪が多くてもうできない?今になって罪悪感を感じるなら人としての心は持ち合わせている証拠だ。普通ならもうそんなこと考えないで好き放題暴れて人々を殺し尽くすのが悪と言う者だ、それが自分が死のうともな。少し現実を知ったくらいで弱くなるなど、お前もそこら辺に下級冒険者と変わりない。今からでもできることはあるとは思うが、本当にその理想を諦め、人々のために英雄にはなるのを諦めるか」
「・・・・・・・」
英雄になりたい夢をここで諦めることができるか
ベルは本当になりたいが為に、ここまで昇り詰めてきた。無論苦労は当然する。しないはずがない。英雄になる為なら
人々を救うのが英雄である。自身の命を顧みずにしてでも、どれだけ多くを救えるか、それで決まる
今更過去で多くの人殺しをして英雄になれる資格を無くしていると、そんなこと誰が決めた。俺とて人殺しはする。仲間や家族を守る為ならな、一人を殺せば殺人鬼、多くを殺せば英雄だ。それが俺である。そもそも英雄に定義など無い。多くを救えば英雄。それだけは確かだ。過去でそれとは真逆なことをしていようとも、それを判断するのは人々だ
世間の言葉を気にして、それを現実に見立てても同じこと。だからこそ、それを自分で決めることではない
なりたいのなら、なればいい。
それがお前の理想であるなら
綺麗事の何が悪いのか、英雄は綺麗事を並べてでもそれを実現させるのが英雄だ。少なくともヴィトーはそれを夢見た。イヴィルスで多くの人殺しをしようが、案外人生でやり直しなんてできる。俺やリューがそうであるようにな
過去とは関係なくとも、今からやり直しは生きている者の特権だ
それができるか
未だ英雄と扱われる俺が問いかける
誰かが必要としてくれる英雄に
そんな話をしていると
「ヴィトー・・・・英雄になりたかったの?」
「ん?なれませんよ。私には・・・」
「じゃあ私の英雄になって!ヴィトー!私の英雄に!それじゃあダメかな?」
「っ!?」
「「「っ!」」」
「だそうだ。ノエルはお前になってくれと頼んでいるぞ?もう一度その理想を追い求める覚悟はお前には無いか?」
再度俺は問いかける
ノエルがどういう意味で、そんなことを言うのかわからない。だが神託を託されたノエルはヴィトーを助ける為に、彼が望もうとしない望みを頼みかける
ノエルの英雄になること
彼女を守る為にこれから生きればいいと、生きる希望を作った。ノエルは確かに身を守る力はない。つまりは精霊を守る英雄に、ヴィトーが選ばれた
もう過去で人々を殺した大罪に、人々の英雄になれないのなら、今助けを求められている精霊の英雄になればいい
英雄になる資格など、人それぞれだ
その資格が今、精霊によって手に入った。ノエルをこれからも守れる英雄に、その英雄になって欲しいと精霊の呼び声に
ヴィトーは答えるのか
「・・・・・・・」
「ヴィトー?」
無論、返事に困っていた。
突然なこともあるだろう。精霊に英雄になってくれと言われるなど、余程なことがない限りは、だがこれで英雄になる資格は手に入った。精霊に英雄になれなど、普通に光栄であり、試練としては大きいが、それでもそれになる価値はある
ノエルと幸福や思い出を作ると消える。リスクの高い精霊だ。それを守る英雄としてこれから生きるのなら、まだこれからの人生を謳歌できる
この世界と言う現実を知って、罵られた男にはふさわしい使命だ
が
それを受けるか、受けないか
かなり迷っている
そんな迷いは
『突風』のせいで迷う時間などあまりなかった
「あ・・・ああ・・・・」
「っ!?」
「ノエル!?」
「風で!?」
「っ!」
突然、人が吹き飛ばれるような強い突風が、この頂上に吹き荒れる。その突風のせいでノエルが、頂上の外緑から落ちようとしている
ベルとリューが助けに行くが
「待て」
「ジークさん!?このままじゃあノエルが!?」
「いいから見ていろ」
俺はあえて二人に助けるなと止めた。もしここでノエルが落ちたとしても、俺がまたファーブニルに変身して空を飛んで落ちるノエルを助ければいいと、別に手段はある
しかしだ
ノエルを今でも手に掛けないのなら、彼女が落ちようとなっているのなら、助けるだろうと、ノエルが英雄になってくれと言う返答はこれで決まるだろうと、俺達は何もせずに、奴が本当に助けるかどうか見極めると、俺はヴィトーがどんな行動に出るか、この場が見ているだけにしろと、ベルとリューに動くなと言った
そして
「ぬ!!」
「っ!・・・・ヴィトー・・・・」
「ぐう!・・・ぬう!」
「ヴィトーさんが!?」
「ノエルを助けた!?」
「ジーク?まさか貴方は・・・」
「ああ、ずっとノエルに手を出さない限り、殺すつもりはないと思った。俺の予想は的中したようだ」
頂上の外緑からノエルは落ちようとしていたが、それをヴィトーが彼女の手を取り助ける
やはり奴にノエルを殺すつもりは一切無い。もし殺したいのならとっくにしているはずだ。でもしないのならただの人質、俺たちを殺させるためのただの道具でしかない、最初から殺すつもりなどないのだと、彼女が死のうとすれば助けると、俺の予想は的中した
が
ビュウウウウウウウウウ!!!
「っ!?」
「キャ!?」
「ヴィトーさん!?」
「ノエル!?」
「ジーク!!」
「今日は風が強いんだな、ふ!」
さっきよりも風が強く、今度はヴィトーまでも風で吹き飛ばされてしまい。このままだと二人は落下してしまう
流石に助けないとならないと、ファーブニルに変身する準備をする
その瞬間
パシ!!パシ!!
「っ!」
「え?」
「っ!お前は!」
突然、ヴィトーとノエルの両腕を『空中に浮いて掴んでいる男』が現れた。若干体が透明に近いが、その男は俺も知っている男、なぜいきなり出てきたのかはわからないが、少なくともヴィトーも知っている。いや、奴は絶対に知っている
今会えるのなら会いたい男、なぜ今更になって、ヴィトーを助けるかなどわからない。しかし、その男はおそらく霊体化になって、ヴィトーとノエルを助けた
そして、一言を口にする
「ダメだ。まだこっちに来るなよ。ヴィトー」
「っ!?貴方は!?なぜ!?」
それだけをヴィトーに言った。ヴィトーは一瞬だけ見た。男の顔を、それだけを見ただけで、ヴィトーはもう驚きを隠せない。いつものように変な笑顔を晒していない。その男は今奴が一番会いたかった存在
俺の方からでも後ろ姿だが、誰がか俺にはわかる
その男は
「まさかお前が・・・出てくるとは・・・・・・・・『エレボス』・・」
その男は、否、男神はヴィトーの元主神、霊体化して落下するヴィトーとノエルを助けた男神
その名前は
エレボス
もう七年前にここを去った。人間を愛し続けた男神、今になってヴィトーを助けた。いや、今になってじゃない。本当は七年前から去ったあとでも、見守っていたはず、出なければ先を見失った今のヴィトーを助けるはずがない。しかもまだ天に来るなと言った。
何が主神に裏技られただ。
しっかり守られているではないか
今の光景を見る限りではな
「ぐ!」
「う!」
「無事なようだな、二人とも」
「ヴィトーさん!」
「ノエル!」
「二人とも無事?今のは一体・・・」
「なに、こいつの主神が助けただけだ」
「じゃあ・・・あの幽霊みたいなのは、やはり邪神エレボス・・・・・」
「僕も見ましたけど、あれがヴィトーさんの主神?」
「はい、私は会ったことがありますので、間違いありません。それで・・・邪神エレボスは・・」
「消えた。ここまですれば十分だと、もうエレボスの霊体は消えた」
二人はバベルの頂上地に戻された
ヴィトーとノエルは問題なく無事だ。霊体化になったエレボスは、二人を地に戻して即座に消えた。ベル達も確かに見えた。幽霊の男が二人を助ける瞬間を、リューとシルは一度会っているから知っている。あれが紛れもなく嘘でもなく、ヴィトーの主神、エレボスだと
だから言える、ヴィトーは裏切られたわけではない。ずっと見ていた、自身の眷属を。出なければ今の助けたりしないだろう
「おい、これでお前はもう死ねないな、主神であるエレボスにあんなことを言われたわけだしな。もう俺もお前に殺意はない。これからはまともに生きるんだな」
「・・・・・・」
「ノエル。良かったな?お前を助けたのはヴィトーだ。奴はこれからもお前を守り続ける。お前の英雄だ」
「英雄?ヴィトーが?」
「ああ、そうだ」
「英雄・・・うん!英雄!ヴィトーは私の英雄!ありがとうヴィトー!」
「・・・・・・・まったく」
これでもう奴を仕留める理由は無くなった
本音言うと、俺もこんな奴を斬るか斬らないかと言われたら、どうでもいい。敵意が無い奴を俺も斬る気はない
エレボスに助けられ、もうヴィトーはもう死ぬ気にもなれなければ、死ぬことができなくなった。もうエレボスは必要ない程、新しい仲間ができた。それがノエルである。奴がノエルを助けたのは事実、死ねない理由もできたため、もう悪を名乗ることはできない
まあ、そんなことを思う暇もないほど、今のヴィトーは悲しみでいっぱいであるだろう。なぜなら裏切られたと思ったエレボスが助けてくれたのだから
「今になって私を助けるなら、なぜあの時に私を助けてくれなかったのですか、貴方は・・・エレボス様・・・私はもう終わったも同然だと言うのに、この精霊を守るためにこれからも生きろと言うのですか。まったく不愉快ですよ・・・まったく・・・まったく」
「どうしたのヴィトー?泣いたりして?どこか痛いの?痛いの痛いのどんでけ・・・・」
「別にありませんよ、痛いところなんて、ただ、懐かしい人に会って、まさかあんなセリフを言われて驚いて、変な気持ちになっているだけです」
「だが、これでお前は生きる理由はできた。俺たちはもう何もしない。ノエルと長旅に、幸あれ。これだけお前に言っておく、英雄を名乗るつもりはないが、現英雄としての助言を受け取れ」
「まったく・・・・・私にこのような生き方をさせられるとは・・・・」
「だがこれで精霊の英雄にはなれる、大きな試練もあるが、ノエルのために生きて貰う。これがお前の使命だ。ではな、さらばだ。行くぞ」
「「はい」」
「うん」
そう言って、俺たちは二人を置いて出ていく
これからヴィトーが主神に与えられた使命を生きることになる。もう奴は殺す価値はない。こいつにはノエルと共に長い旅に出る。
本当に英雄になれるかなどはわからない。だが、それまで果たすまでは死ぬこともできない。理由があるとしては、ヴィトーが英雄になれるまでずっとノエルが付いてくるからだ
「まったく・・・・・・・行きますよ。ノエル」
「どこに?」
「オラリオを出ましょう。ここで得られるものは得ました。ここを出て違う場所でも行きましょう。共に生きてくれますか?」
「うん!私はヴィトーと一緒に居る!いつまでも!」
「はい。わかりました。オラリオを出る前に、まずは服を買いましょう。その格好で出るわけにはいきませんからね。服を買って、外に出る準備を整えてから旅に出ましょう」
「うん!旅に出る!」
「ふう・・・・わかりましたよ。エレボス様。まだ私はここで生きていきます。貴方が驚くような旅をしてみますよ」
こうしてヴィトーはノエルと共に長い旅に出ることに
これが幸福ではないが、長きに渡る旅であり、彼の今までの罪を償う贖罪の旅となる。これが新たなヴィトーの旅の始まり
英雄になるまでこの旅は続く。ノエルを守り続けると言う長い道のりをヴィトーは歩むことになる。エレボスの使命を渡され、これからやっと理想を追い求める生き方ができる
まあ、それからどうなるかは、もちろんヴィトー次第である
ヴィトーが起こした騒ぎは、俺がギルドに言って騒ぎを鎮圧した
子供を連れて男がバベルの頂上を突っ走った光景を、多くの者に見られ騒ぎになっていたため、俺がギルドに言って、その男は俺が倒して消えたと、嘘の報告を言って鎮圧する
一応、ヴィトーがノエルと共に旅に出られるように殺したと嘘を付く。二人が無事に旅に出られるように
これでヴィトーはノエルと共にオラリオの外へと出ることになり、これでイヴィルスが完全に滅んだ
「ジーク、ノエルはヴィトーさんと旅に出ることになったけど、ノエルは幸福を得ると消えちゃうんじゃ・・」
「いや、『今は逆だ』。ヴィトーが幸福を得ないと消えない。つまりはヴィトーがノエルの英雄になるまでほぼ消えないんだ。つまりは今度はノエルが幸福を与える側になったんだ」
「そんなことあるんですか?」
「あれほど希少種な精霊ならできるだろう。しかもノエルはエレボスに神託を託されていた。それもあって、ノエルはヴィトーの理想が叶うまでは消えることはない」
「二人とも、無事にこれからは元気で生きてくれるといいですね」
「それこそ、あいつ次第だ」
理想は物凄く厳しい試練で叶うのは遥か先だ。しかし、生きてこの理想を叶えるしかヴィトーはもう道はない。
どうなるかなど当然わからない。だが、生きてやるべきことはできた。今からでも理想を叶えることはできる、裏切られたと思ったエレボスに今度は助けてくれた。まだ夢破れた男が天に登ることはまだできない。またもう一度夢に挑む。生きてまだやるべきことはある
どうなるかはあいつ次第だ
「とにかく、もうあいつはイヴィルスをやめた。これでオラリオに潜むイヴィルスは全て消えた。しばらくは平和を謳歌できるだろう」
「今まで色々あったけど、やっと平和になったんだね」
「ゼノスの事件以来は、いろんな戦いをしていましたからね」
「なんだか、ここまで来て、僕たちすごい戦いをしていたんですね」
「ほぼイヴィルスを相手にしていたのは、ロキ・ファミリアだがな、人生生きていたらこんなこともあるだろうってことだ」
「長い道のりでしたね」
「まだまだこれからだけどな」
ここまでに来るまで、俺たちは随分と長い旅をしてきたものだ
生きていれば、こんな試練はあるものだ。冒険者をやるだけで、命の張り合いをしてモンスターだけではない敵と戦いをする
それでも俺たちは十分成長もした。ヘスティア・ファミリアは初めは小さかったが。多くの戦いをして、大きく成長した。それでフレイヤ・ロキと同じ最上級派閥のファミリアとして、俺たちも大きくなった
それでイヴィルスの元凶を断った。これでオラリオの平和はもう成し遂げたと言っても良いだろう。当然まだしばらくはの話だが
あとはダンジョンのみ
デュオニュソスの言うではもう限界だ
まあ、何しても。今まで通り皆と協力して、乗り越えればいいだろう、まだ問題は残っているが。その試練は皆と乗り越える。今はそれでいいはず
「ジーク。以前あの・・・・・マイナデスに『俺のものになって貰う』と言っていましたが・・・・あれは一体・・・」
「無論、俺の仲間になれと言うことだ。皆も勘違いしているが、俺はあいつと結婚するためにあんなことを言ったわけじゃない」
「あ、やっぱりそうなんですね。よかった・・・」
「リュー。聞こえたよ?よかったって何?ジークのことをいつの間にか名前で呼んでいるけど、やっぱりリューもジークを狙い始めたんだ?」
「い、いいえ!シル!別に私はジークを・・」
「また名前で呼んだ!完全に意識している!?もう!リュー!ジークは渡さないからね!」
「ジークさん。いろんな人に惚れられていますね。どうやったらジークさんは女性の人にモテるんですか?コツとかあるんですか?」
「その質問は答えられない。俺もわからないからだ。それとそれを聞いても物にしても、アイズがお前に惚れるかはわからんぞ?」
こんな変な会話をできるくらい平和を今は謳歌している
残った問題はあるが。今は考えてもわかるわけじゃない。今はこの再び手にした平和を楽しむ
何かまた事件が起きた時は皆で対処する。
俺たちの旅もまだまだこれからだ
第二次クノッソス大戦 END