ニーベルンゲン・シックザール〜竜殺しの英雄譚〜   作:ソール

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デートの準備

 

 

ギルドの報告を済ませてホームに戻り、夕飯を食い終わった後、自室に戻って女神祭に必要な所持品を用意し、服装に汚れや埃が無いかを確認して、シルとのデートに備えておく

 

いつかこの日が来ることはわかっていた。そのための必要なものは全て揃っている。あとはその日を迎えるだけだ

 

それと、必要なものの中にある物が入っていた

 

 

「これは・・・・・爺さんの仕業か、やれやれ『我が一族の宝』を俺のバックに仕込んでおくとは」

 

 

俺の義祖父であるオーディンが俺の一族の宝を、故郷から持ってきたバックの中に入っていた。おそらくこんな日が来ようとしていたことだろう

 

 

 

これは我が一族の宝

 

 

 

この『宝は四つ』あり。一つは自分用。後の三つは俺がふさわしいと思う者に渡す物。これをシルに言えば彼女は欲しがるだろう。爺さんも俺がオラリオに居るなら、いつかふさわしき者が現れることをわかった上で、俺のバックにこれを仕込んだのだろう。大神である爺さんの予知だからなのか

 

果たして、彼女にこれを見せたらどうなるか

 

 

コンコンと、誰かが俺のドアを叩く音が聞こえる、気配を感じる限りでは

 

 

「ヘスティアか?」

 

「うん、ちょっといいかな?」

 

「ああ、いいぞ」

 

「ごめんね、どうしても話がしたくて」

 

「構わない、話の内容はシルとのデートの話か?」

 

「うん、でも反対の話じゃないよ?」

 

「関することでか」

 

 

訪ねてきたのはヘスティア

 

話をしに来たのだが、当然内容はシルとのデートに関しての話だ。ヘスティアは『シルの正体』を知っているが故に、彼女とのデートに関して反対はしないが、心配はしている。俺がシルと関わるだけでこんな大きなことになるなどと、もしくはまさか『シルがあのような者』だったとは知らずで、これからどうなるのだろうかと少しこの先どうするかの相談をしに来たってところだろう

 

 

「ジーク君、今回のシル君のデートは、デートするだけで終わりって・・・・ならないよね?」

 

「ああ。彼女は今度こそ、俺を手に入れる気だ」

 

「っ!だよね。これからどうなると思う?」

 

「彼女が『本物』だったら、俺は彼女を貰う。だがもしも彼女が『偽物』だったら、俺は断り、彼女は俺を手に入れるために強行手段で手にする。それも『オラリオを巻き込んで』な」

 

「・・・・・・そういうところは本当に横暴だね、『彼』とは大違いだ」

 

「いや、あの方も横暴な考えはある。しかし、それを手にしても意味はないと、決してその手段を手にしなかった。だが彼女は違うようだ」

 

「彼女が君に関わるだけでこんなことになるとは思うけど、ジーク君は『戦うことになる』と思う?」

 

「そうしかないと思っている。最初は本物がデートしてくれる。最後は偽物。そして次に決戦だ」

 

「まったくもう・・・・・なんで彼女はこうも、どうすればいい?」

 

 

このデートに裏があることはヘスティアも言わずともわかっている

 

彼女のことを考えればこれからどうなるか言わなくてもわかる結末を想像した。手にしたい者が手に入らないで強行手段で手にする。彼女ならあり得ること、少しは対策しないとこの先俺たちファミリアの危機になる

 

 

「もしもの時は、ベルとフィルヴィスとシルフたち俺の精霊達だけでもオラリオに一旦逃す」

 

「どうしてそんなことを?」

 

「君は知らないのか?彼女の力はオラリオも巻き込む」

 

「っ!?まさか・・・・・そんなことができるの!?」

 

「そう聞いたんだ。彼女からな、一旦ベルとフィルヴィスとシルフ達だけなら瞬時にオラリオを出ることができる。そして状況打破できる手段を見つけた時、その時はベルたちはオラリオに戻って助けて貰う。これくらいだろうな、対策を考えるなら」

 

 

もしもファミリアに危機が訪れた時、一度彼女の力を逃れるためにすぐに動けるレベルの高いベルとフィルヴィス、そして俺の精霊達をオラリオの外へ一旦逃す

 

しばらくオラリオの状況を見て行動。彼女の力から逃げるにはこれしかない

 

もしも俺が断りを入れればな

 

 

チリンチリン!!

 

 

「ん?こんな夜に誰からだろう?」

 

「気配からして、ペルセフォネだろう」

 

「もしかして女神祭の誘い?」

 

「かもな、俺が出る」

 

 

呼び鈴が突然鳴る。こんな夜遅くに俺たちのホームに訪ねる者が

 

 

気配を感じる限り、俺の知り合いである、デメテル・ファミリア団長であるペルセフォネ・コレーの気配がした

 

 

おそらく、女神祭の誘いで彼女も俺にデートを頼みに来たのだろうと、彼女の俺への恋を考えた上で想定する。デメテル・ファミリアは女神祭でデメテルが代表の一人でもあるため、屋台は出て忙しいはずだが、空いた時間を作ったに違いない、とにかく本人に聞いてみようと俺が出向く

 

 

「ペルセフォネか?」

 

「うん、ごめんねジーク。こんな夜分に」

 

「別に構わない。俺は遅くまで起きてる」

 

「もしかして、まだファーブニルの?」

 

「違う。元々あまり寝ない方なだけ、睡眠は十分に摂れている」

 

「そうなんだ。よかった。本当は昼に訪ねたかったけど、女神祭の仕事で時間が無くて」

 

「ああ、だから作業着の服を着たままか」

 

 

俺が出向くと、デメテル・ファミリア団長のペルセフォネだった

 

俺の気配に間違いはなく。やはり彼女だった。そして彼女は畑の仕事をする仕事服である作業着を着たまま俺のホームに訪ねてきた

 

どうやら忙しいようだ。女神祭は主にデメテルが主催して行う行事。当然代表であるデメテル・ファミリアが中心として屋台の準備を行わないとならない。つまりはペルセフォネは眷属代表として他の豊穣の女神の派閥の眷属も指示を出していたに違いない。どうやらかなり急ぎのようだ

 

そして、そんな忙しい中で何を訪ねに来たのか

 

 

「推測として俺に訪ねてきたと見て、俺に何か用か?」

 

「その・・・・・女神祭の事なんだけど、私たちのファミリアで屋台も出すけど、時間をなんとか取って一日休める時間を取れたの」

 

「女神祭は数日くらいやるんだったな、それで?」

 

 

 

「だからその時。デートをして欲しいの」

 

「すまない。先に誘いを受けているため、君のデートに付き合えない」

 

 

「え?・・・え!?先に誘い!?誰なの!?」

 

「シル。シル・フローヴァから先に誘いを受けているため、君の誘いにはお受けできない」

 

「シルさん!?先を越された・・・・よりにもよってあのシルさんだななんて、ジーク。今からでもそのシルさんの誘いを断れない?」

 

「すまないが、俺も彼女とのデートがしたいため、シルとのデートの誘いを断る気はない」

 

「な!?やっぱりジークはシルさんがいいの?」

 

「彼女は、君が二年前友人になる前から知り合いであり、彼女にはここまで俺をずっと助けてくれた。そして俺も・・・彼女のことが気になっている」

 

「ぞっこんじゃない!?くう!シルさんとデートをしたら最後までやっちゃうじゃない!」

 

「エイナにも同じことを言われたが、最後と言うのは、結婚のことを言っているのか?それとも性行為か?」

 

「どっちもよ!ジーク!本気なの!」

 

「すまないが、俺も俺自身が選ぶ女性も居る。それがシルだ。シルを優先したい。君よりも」

 

「ハッキリ言われた・・・・」

 

「俺も譲れないものがある。とだけ理解してくれ」

 

 

やはりペルセフォネも女神祭でデートの誘いだった

 

が断った

 

俺とてシルとのデートもしたい、男であるが故に、誰の誘いを受けても、シルの誘いを受けたら絶対にシルとの誘いを優先する。誰の誘いであろうとも。

 

ここは残念ながら断ることをハッキリペルセフォネに伝え、少し早く誘えば良かったと彼女はかなり悔しがっている。俺に恋をして婚姻を求められればそうなるだろう

 

だが、それでも俺も譲れなかった

 

 

「今回の君の誘いは断る。すまないが受け入れてくれ」

 

「わ、わかった。ごめんね、こんな夜遅くに」

 

「俺もすまない、それでも俺も譲れない」

 

「うん、ごめん、それじゃあ失礼するよ」

 

「ああ、気をつけてな」

 

 

そうしてペルセフォネは、あまり納得していないが、俺たちのホームを少しよろけた感じで帰っていく

 

余程俺が別の女とデートすることにショックを受けたからだろう。無理もないが、それでも俺とて女性を選ぶ。それだけは理解してくれると助かる。それだけの感情はまだある

 

そう思いたいだけなのかもしれないが

 

ホームの中に戻ると、皆が集まっていた

 

 

「今のペルセフォネさんですよね?」

 

「ペルセフォネ様はファミリアの件で忙しいはずですが」

 

「もしかして、女神祭の誘いか?」

 

「そうだ。だが断った。シルとのデートがあると」

 

「ですよね」

 

「シル様のデートを優先するに決まってますよね」

 

「本当にあの店員に気があるんだな、ジーク」

 

「ああ。ペルセフォネには悪いが、こればかりは譲れない」

 

「ジーク君、本当によかったの?」

 

「反対でもあるのか?ヘスティア?」

 

「反対はないよ。ただ・・・・僕は怖いなと思って・・・・」

 

「シルが?まあ、『君』からしたらそうだろうな」

 

「まあね。ジーク君はシル君のことが好きなの?」

 

 

「好きじゃない。愛したいと思っている」

 

 

「「「「「な!?」」」」」

 

「ハッキリ言ったな、ジーク」

 

「多分部分的に理解してない所があるんだろうけど、でもそういう想いはまだジーク君にはあるんだろうね」

 

 

皆がペルセフォネが来たことに気づき、俺に女神祭での誘いをしにやってきたのが言わずともわかるようであり

 

シルとのデートを優先するために断ることも皆わかっていた

 

ヘスティアはまだ不安なのか、シルとのデートをやめて、ペルセフォネとデートをした方が良いようなことを言ってくるあまり、本当に『彼女』が怖いのだなと理解した

 

フィルヴィスは最近ヘスティアから俺のレアスキルであるカオス・ヘルツのことを聞いてため、急激に上がるレベルに関して事情は聞いて、当然ヘスティアだけでなく、他の皆もシルフも含めて、俺がレベル7になってどれだけ感情を失っているか理解している

 

 

俺の言う愛したいと言うのは、本当に皆が思っていることなのだろうかと

 

 

今の俺がまともな感情をした上で、この愛していると口にしているのか、シルのデートに反対はないが、人に恋していることに自覚があるのかと、俺の心配をしていた

 

 

「主様。一応聞きますが、それは本気の心でしょうか?」

 

「その通りだが?随分と俺がシルとデートをすることに反対はしないと言いつつも、そうするべきではないと反対意見のようなことを口にするな?お前だけでなく、他も・・」

 

「そういうわけじゃあないんですよ、ジーク様。ただリリ達は・・・」

 

「ジーク様は本当にそのような・・・シル様を想う気持ちがあってのことで、シル様とデートをするのか、ジーク様を心配していまして・・・」

 

 

「なるほど、俺にはもう人を想う気持ちすらない程、強さのために感情を捨てたと思っているのか?」

 

 

「まあな。それに想う気持ちがなきゃ。お前がなんの気持ちも込まないままデートするんじゃあ、帰ってあのシルはデートを楽しめなくなると思ってな」

 

「私もお前が他の女とデートをすることに反対がないのは本当だ。ジーク。しかし、お前が彼女を想う気持ちがなければ」

 

「シル殿も楽しんで貰えないかと・・・・」

 

「ごめんなさい。ジークさん。僕たち。勝手な思い込みでジークさんにこんなことを・・・・でも・・・心配です。ジークさんのことが」

 

 

「俺に落ち度があると言うわけか」

 

 

「ごめんね。ジーク君。僕も主神として君のすることに反対はないけど、こんなことを言うなんて・・・」

 

 

「仕方がない。なにせ強さを得るために心を捨てるんだ。相手に不快なことをさせてしまうような、俺の振る舞いに対しての心配、仲間として配慮としては当然のことだ。謝る必要はない」

 

 

仲間や主神がシルのデートに問題があるのではなく、俺に問題があると指摘する

 

カオス・ヘルツの力でレベル7まで至った。そうなると感情の何を無くしたのか皆は気になる。それが原因でただ無口で笑顔も見せない俺とのデートに、帰ってシルを不快にさせて楽しめなくなると。俺がそう望むと言っても、俺の心に問題があるため、仲間は酷く俺を心配した

 

 

 

実際、俺もヘスティアですらも、カオス・ヘルツはレベルが上がるとなんの感情が消されるのかわからない

 

 

 

つまりは実際に味合わなければわからない。一体なんの感情を消されているのか、俺やそのステイタスで更新をする神であるヘスティアすらもわからない

 

だから余計心配をしているのだろう。強さを得るために心を捨てた男に、本当にデートなどできるのか、仲間として主神として家族として皆心配している

 

だが

 

 

「それでも俺はシルを愛したい。そのために必要なことをしたい。それがデートだ。デートをして彼女を愛せるように『なりたい』んだ」

 

 

「「「「「「「っ!・・・・・・・」」」」」」

 

「わからないからするじゃあダメなのか?」

 

「そんなことはないけど・・・・」

 

「もしもそこまで言うなら教えてほしい。特にフィルヴィスやヴェルフや命は、今でも愛している人は居るだろう?そういう人にデートを頼むのだろう?愛しているから?違うのか?」

 

「そ、それは・・・・・まあデュオニュソス様のことを考えれば、まあ・・・・」

 

「俺もヘファイストス様のことを考えれば、まあ・・・・」

 

「タケミカヅチ様のことを想えば確かに・・・」

 

 

「だから俺はシルを愛するために、こんなことをしている。彼女も望み行動した。そして俺も望みがあるから受け入れた。だからデートをする。お前達の心配は感謝する。それでも『理解できなければ』意味がない」

 

 

「「「「「「「・・・・・・・・」」」」」」」」

 

「「「「「「主・・・・・」」」」」」

 

「ジーク君・・・・・」

 

「やっぱり、シグ君とそっくりね」

 

 

心配されるのは仕方がない。それは受け入れる。しかし、もう俺の話を聞いただけで、皆はもう俺に関して断言できるだろう

 

 

 

 

 

 

俺は愛することに関して、なんもわかってないことに

 

 

 

 

 

『理解できなければ』『なりたい』だなんて、それはもはや知ろうとする発言だ。デートで知ろうとしている時点で、俺はもはや心が壊れていると言う証拠に、皆や特にシルフが気づいていた

 

確かに俺は心配される程、人を愛すること、シルを愛することをわかっていなかった。本当は心底シルを愛するとまでは思っていないだろう。だがカオス・ヘルツで感情を失っても、知りさえすれば、そう思えるはずだと。デートに自身の想いを賭けている。皆は気づいていると思うが、それを誤魔化すために俺はワザとあんな愛を語るようなことを言った

 

 

シルとのデートをしている際は、笑顔が出せないような、不快なことをさせる愚かな自分が

 

 

こうも無様だと、母が見たら一度叩かれているはずだと、自分の情けなさを表していたことにだけは気づいているも、思いはしなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、女神祭当日

 

 

女神祭は格豊穣の女神達が開始の合図をするために宣言を口にしてから女神祭は始まる

 

代表はデメテル。ダミアー。ハトホル。それ以外の豊穣神。そして・・・・・我が姉フレイヤなど。数々の豊穣神がバベル前のセントラルパークでターミナルのような祭壇を設置する、名前は『豊穣の塔』、街が見渡せる天辺へと集まり、セントラルパークに集まる下界の子供達に今までの苦難を乗り越えた証と、ここまで辿り着けなかった亡くなった人たちの分も含めて、今日のお祭りで痛みと悲しみを乗り越えて元気に生きていこうと言う

 

デメテルの言葉で始まる。

 

デメテルにとってはこれは大きなこと、クノッソスで大事な眷属を失った彼女だからこその言葉。その眷属とも今日過ごしたかっただろうと思うが、その悲しみを今ここで乗り越える

 

 

 

「それでは女神祭の開催を宣言します!!!」

 

 

 

「「「「「うおおおおおおおお!!」」」」」

 

 

デメテルの言葉で、セントラルパークに集まる下界の子供達が歓声を上げる

 

 

女神祭が宣言された

 

 

女神祭と言っても、少し豊作物を使った出店が多いだけで祭りとほぼ変わらない。シルと楽しめるデートにしては問題なし

 

 

 

 

俺はもう待ち合わせに一時間前で待っていた

 

 

 

 

故郷の紳士服を着て、彼女に必要な物をパンドラボックスに入れて所持品も問題なし。シルとデートに必要なことは完璧に頭に入れた

 

あとは彼女を迎えることだ

 

周りは観光客や休日を満喫する冒険者も居るが、当然ながら姉上の眷属らしき気配もする。俺が居ると言うのに二人きりにさせないようだ。しかも、近くでヘディンの気配もする

 

まったく監視するのは好きにしろと言ったが、目立ち過ぎにも程がある。あれでよく護衛ができたものだなと、隠密行動が全然できないようだ

 

 

そんな周囲の気配を察知していると

 

 

「っ!シル!」

 

「ごめん!ジーク!遅くなっちゃって!」

 

「そんなことはない。ちゃんと時間通りだ。それに俺が早いのは君を待たせないために俺が早く来ただけだ。気にする必要はない」

 

「よかった。ちょっとお粧しするのに時間がかかって」

 

「なるほど、だから今までより、より美しく見えるわけだ。白いドレスか、やはり君は白が似合っているな」

 

「ふふ、ありがとう。やっぱり念入りに準備をしておいてよかった」

 

 

デート相手である、白いドレスを着たシルがやってきた

 

少し化粧もしている。今までのデートに比べてもかなり本気でいるのがわかる。バックもかなり高級そうな物まで、やはり今の彼女を見て、今日はただデートで終わるはずがないと理解する。

 

 

しかも『シル本人』を見ても、狙っているのだとわかる

 

 

だが、これは彼女からのデートだ。真意はあれとはいえ、楽しませることには変わりはない

 

 

「今回は君からの誘いとはいえ、今日は俺が君をエスコートさせてくれるか?」

 

「うん、もちろん」

 

「お互い忘れられないデートをして、楽しもう」

 

「うん、さあ、行こう!」

 

「ああ」

 

 

彼女の手を取り、俺は早速シルをエスコートしようと女神祭の出店に向かう。

 

まずは飲食系の出店だ。デートプランはシルと相談したため問題はない。『邪魔しない限り』は、とにかくこのデートは何があっても成功させる。エスコートをしている間は何があっても俺はシルの手を離さない。歩きの速度も彼女に合わせる。彼女が歩き疲れないために。そして道中歩く他者や馬車にぶつからないように俺が彼女の手を誘導するように軽く引っ張る。

 

もちろん道中会話もする。楽しいことだけの話を、ネガティブな話は何がなんでもしてはならない。デートの雰囲気が崩れる。雰囲気を良くするために、最近はどうだったかとか、最近のことでも構わない。とにかく楽しい話をさせて雰囲気を良くすることだ

 

本当は目立ち過ぎているシルの護衛達のことを言おうともしたが、ここは二人だけの空間、誰であろうと他者のことを話すわけにはいかない。ここはあえて護衛している者が居ようとも話すことはしない

 

別の者も、こちらのデートを見学しているが

 

 

『シル!あんなにジークにくっついて!』

 

『ムカつくにゃ!いつもシルはそうにゃ!』

 

『ジークにいつも甘えてずるいにゃ!リューもそう思うよにゃ?』

 

『別に・・・・私は・・・シルが良ければ・・・・・・』

 

『『『この意気地なし!このポンコツエルフ!!』』』

 

『な!?声が大きいですよ!シルやジークに聞こえたらどうするんです!?』

 

 

『フィルヴィスさん。ウンディーネさん。まだこんなことをするんですか?』

 

『流石に二人とも。これはジーク君にも迷惑がかかると思うよ?』

 

『いいえヘスティア様。私はジークの友人として護衛をしているだけです』

 

『その通りです。私は主の召喚精霊として主を影からお守りしないとならないのです』

 

『その割にはかなり怖い顔をしていますけど』

 

『これは相当だな、フィルヴィス君も友人と言いながら、ジーク君のことを気になっているじゃないか、ウンディーネ君まで、シルフ君、ウンディーネ君の恋愛は危険なものじゃなかったけ?』

 

『その通りです。ヘスティア様。ですからこそ、せめてこんなことをしているのだと思います。私とウンディーネの恋愛はリスクがあるか無いかですからね。でも珍しい。あの『ウンディーネ・ヘッド』が人間に恋をするなんて、あなたも千年経って変わったのね?』

 

 

と、真後ろの建物の両方から、隠密する気のない、俺の友人と俺のファミリアの者が俺とシルのデートを監視していた

 

左真後ろからリュー、ルノア、クロエ、アーニャの豊穣の女主人の店員である俺の友人達、店はどうしているかは知らないが、どうやら俺たちのデートを見たいがために抜け出してきたよようだ

 

その反対では、ベル、ヘスティア、ウンディーネ、フィルヴィス、シルフも俺とシルのデートを建物に隠れて見ていた。見てても良いとは行った。だが護衛は頼んでない。フィルヴィスもウンディーネも俺の何を気にしてあんなことをしているのだろうか、ベルとヘスティアとシルフはその二人に付き添う感じだな

 

 

やれやれ、姉上の眷属と言い、俺たちとデートを見るだけで終わってほしいものだな、このまま邪魔しないまま終わるとは隠密行動が全然できないあいつらには思えなくなった、会話がまる聞こえで、いつか手を出そうとしている感じがする。まあ、その時の対応でなんとかするとしよう

 

今はシルとのデートを楽しむだけだ

 

 

「シル。ジャガ丸くんはどうだ?カレー味だ。口に香りがついてしまうが、味は間違いなく上手い。どうだ?」

 

「本当に!うん!欲しい。できればジークが口付けたところから欲しいな?」

 

「君が望むなら、口を開けてくれ」

 

「はい、あーん。あむ!」

 

「どうだ?」

 

「うん、すごく美味しい!ジークの口の味もするな」

 

「大袈裟だな君は、俺の口は味などしないと言うのに」

 

「そんなことないもん、ジークの味もするよ。ジークも私の分も食べてみて?」

 

「いただこう。口に運んでくれるか?」

 

「もちろん、はい、あーん!」

 

「あーん、あむ!」

 

「どう美味しい?」

 

「ああ、マヨチーズ味のじゃが丸くんがするが、それと同時にハーブの味がする。これは君の口の味だな、俺は君の口の味を知っているぞ?」

 

「まあ!ジークは自分の味はしないって言う割には。私の口の味はするって言うんだね?ちょっとずるいわ」

 

「仕方がないんだ。一ヶ月半前の時、『君がダンジョン18階層で俺の口にキスをした』。それをされてしまったら、俺は君の口の味を覚えてしまったんだ。だから俺は君の口の味を覚えている。これは当然と言うことなんだ」

 

「・・・・・・・あ〜〜〜、た、確かにね、そんなことをしたわね?」

 

「シル?まさか『君からしたいと言った』のに、俺の口にキスをしたのを、覚えてないのか?」

 

「い、いや、そんなことはないよ。しっかり覚えているよ。ただ、またその話を言われると恥ずかしくて」

 

「なるほど、君は酷いな、君がしたいと言ったのだぞ?俺は全然君がしたいなら無論構わないが、俺の口の味は覚えていなくても、行為をしたことは覚えて欲しいのだがな」

 

「だって!私もできると思ってなかったもん!あの時はその・・・・・・・誰かに取られると思ったから・・・・」

 

「あの時、リューが俺に好意を寄せるようになったことを恐れてか、なるほど、理解した。だが、今からでも覚えるようにしてくれ、あれは俺と君のファーストキスなんだからな、貴重な初めを忘れないでくれ?」

 

「うん!恥ずかしいけど・・・しっかり覚える!!」

 

 

出店でジャガ丸くんの食べさせ合いをしたのだが

 

俺は彼女の口にしたジャガ丸くんを口にしても彼女の口の味を覚えていた。間接キスってことになるが、たかがシルの食べかけからジャガ丸くんを口にしただけで、彼女の口の味をするなどと、大袈裟かもしれないが、俺にとっては仕方がないんだ。なにせ前に彼女がダンジョンに来てまで助けてくれた時に、彼女の要望で俺は口付けをしたのだからな、だから彼女の口の味を覚えてしまった。

 

なのに、シルは前に俺にキスをしたことを覚えていないようだ

 

酷いものだな、いくら恥ずかしいとはいえ、頼んだのは彼女のだと言うのに、俺の口の味は覚えてなくても、俺にキスをしたことは覚えて欲しいのだがな

 

 

 

それとも『覚えてないではなく、知らないと言って、誤魔化している』のではないのかと思うが

 

 

 

まあ、彼女には今からでも覚えて貰えればそれで良いと、俺はそれ以上追求せずに、今度は彼女を連れて出店通りを出て、別の場所へ行く

 

 

 

 

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