次に俺たちが向かった先は中央広場セントラルパーク
そこでは豊穣の塔と言う豊穣神四人が居る祭壇へと足を運んだ
豊穣神は人々にとって豊作物の手法や提供などを下界の子供に与え、その感謝のために、塔を建設し、その天辺で人々を見渡せる高さに座席に居座り、人々に感謝されると言う
まさしく豊穣神を祀るための建造物
感謝をするために、大勢の下界の子供が集まり、中には豊穣神に大きな声で掛け声をする者、作物を実らせたくれた豊穣神に手を合わせて合掌して感謝するなど、このオラリオに食材を実らせてくれた下界の子供にとっての希望の存在である
「シル。姉上はずっとあの柱の上で祀られているのか?」
「うん、フレイヤ様も豊穣神だから、ああやって柱の上で下界の子供達に顔を出してあげているの」
「その割には全然目をくれてやらないんだな?やはり姉上の魅了を受ける人々など、顔を合わせる気すらないか」
「あははは、ハトホル様やダミアー様、代表であるデメテル様みたいに手を振ったりはしないからね」
我が姉フレイヤも豊穣神である
四人の豊穣神は下に居る下界の子供に手を振って愛想を良くする。しかし、我が姉上は愛と美の女神でもあるため、下に居る下界の子供は自身の魅了の虜。そんな者たちに興味はなく、ただ顔を見せて笑顔を晒すだけ
姉上殿は人へのからかいも激しいため、人々の感謝されることなど、当たり前のように思うため、慢心故なのか手を振ったりもしないと愛想さはないと見た
「前回は柱が五本だったんだけど、イシュタル様がああなって・・・」
「ああ、そういえばあの女もそうだったな」
「うん、ジーク達がイシュタル様を強制送還させて、柱は四本になったけど、イシュタル様は奔放な神様だったから、毎回ある特定の女神様と騒動を起こすことが恒例だったの・・・」
「ああ、その特定の女神とは我が姉上か。騒動と言うのはどうせ自身の美しさと姉上の美しさとの比較とかの話だろう?あの女の言いそうなことだ。俺からしたら心に美しさがないから、可憐でもなくむしろ醜さを感じた程だ」
「イシュタル様のことは本当に嫌いなんだね?」
「あんなの邪神だ。美の女神でも無い」
前回はイシュタルも居たらしい。確かに言われてみればあいつも豊穣神だった
だが、過去にくだらんことに我々を巻き込んだため、イシュタルを返り討ちにして強制送還した。無論後悔はしていない。むしろ生生した。あの女はこの女神祭でもくだらん喧嘩を起こすとシルから聞いた。そんな面倒なことを起こすような女などこの下界には不要、さっさと消えてくれた大助かりなくらいだ
「っ!すまない。君のデート中だと言うのに、不快なことを言ってしまって・・」
「別にいいよ。イシュタル様はジークのファミリアにも迷惑をかけたんでしょ?だったら私も許せないもの」
「そうか、姉上の顔は見れた。せっかくだから声を掛けようと思ったが、あの様子からして忙しいようだ。また別の日にしよう。何か飲み物を買おう」
そうして、俺たちは中央広場を出て行こうとする。
俺たちが豊穣の塔に来たのは、我が姉は我の家族。豊穣神として働いているかと軽く声を掛けるつもりだった。
その理由はシルは我が姉のファミリアの人間、別のファミリアのデートをするなど、主神の許しは必要なはず。そのシルとデートをさせてくれた感謝をするはずだった
しかし、あまりにも人が多いため、忙しいようであるため残念ながら別の日に回すことにした。
せめて顔を合わせしてから出ようと。俺はここを出る前に姉上の顔を向けて、軽く頭を縦に振って出ようとした
その時
「・・・・・・・・・・・・・ジーク」
「っ!?!?!?」
柱の下に居る俺に気づいたのか。しっかりと姉上は俺の顔を向けてくれた。一瞬姉上は微笑んでくれるのかと思った
否
悲しい顔で俺の名を口にした
それを見て俺は驚かずにはいられなかった
姉上が俺の顔を見て悲しむ?いや、そんなことはまずあり得ない。姉上は俺に悲しむ顔は決して見せない。それにあの悲しむ表情が『誰かと似ている』。俺が知っている人物の顔の表情。何度もされたから覚えている。今の姉上はやはりそうなのだろうか、あの塔の上に居る姉上は俺の知っている存在
なぜ。彼女があそこに
「ジーク?」
「っ!あ。すまない。姉上がこちらに顔を合わせてくれてな、軽く挨拶しただけだ」
「ああ、そうなの。私たちが来てくれたことに気づいてくれたんだ」
「ああ、行こう。姉上の感謝はまた別の日に」
隣に居るシルに声を掛けられて、俺は正気に戻る。
シルには信じられない話であるため、誤魔化したが、まだ姉上は俺の方を向いていて、悲しい顔のままで居る。とりあえず今はシルとのデート中。シル以外の女性に気を向けるわけにもいかないため、俺はシルの方に顔を向けて、シルを連れて別の場所へ向かう。
再度少し顔を姉上の方に向ける
それでもまだ悲しい顔をしていた
まるで『私をどこかへ連れてって欲しい』ような、『誰かを思い出したくなる。あの表情』が
それでも俺は何もできずに、豊穣の塔があるセントラルパークを出ていく
だが、その途中で横から
「ジーク!」
「っ!アイズ」
「アイズさん!」
大量のジャガ丸くんを入った紙袋を持ったアイズが現れた
見たところ何か急いでいるというか。何か焦っている様子、それも一人で居るのは珍しい。こういう時は女神祭は母と過ごすはずだと思ったのだが、そういえば肝心の母と過ごす予定ではなかったのか?まさかアリアが俺の恋の行方が気になると、娘と過ごすのをやめて、こっちの見学を優先したのか?アリアは?
アイズは迫るように俺に近づく
「お・・・・・・シルフから聞いたよ。ジーク。その酒場の店員さんとデートするって、ジークはその酒場の店員さんのことが好きなの?」
「シルフめ、アイズに教えたか」
「ジークの風の精霊で、あのダンジョンでジークが召喚したシルフさんが?」
「ああ、シルフ、どうやらアイズに俺を取らせるつもりか、アイズのことを考えた上か」
「シルフさん、アイズさんと何か関係あるの?ていうかアイズさんにジークを取らせるってどういうこと!?ジーク!?」
「彼女、俺のことが好きになったそうだ。だからいつか俺を夫にしようとロキ・ファミリアにまた戻らせる気だ」
アリアめ。アイズに余計なことを言ったようだ。娘の恋愛を応援する母の行いか
まさかアリアが娘にそのようなことを言うとは、しかもデート中だと言うのに、別の女を寄越すとは、女の恋愛は戦争だと聞いたことがあるが、シルとのデート中に乱入させるか普通
おそらくだが、ヘスティアも賛成したのだろう。シルの正体を知っているが故に、ヘスティアはわかっているのだろうか、シルに俺が取られるのが嫌だと思っているかもしれないが、仮にアイズに俺が取られたら俺はロキ・ファミリアに所属されるかもしれないと言うのに、今頃ベルは泣いているだろうが、今はこっちに対応しなくては
「そうだ。アイズ。俺とて女性を選ぶ男の意志がある。それがシルだ。すまないが今はデート中だ。邪魔しないでくれるか?」
「ジーク!私もジークのことが好き!その酒場の店員とデートをしないで、今から私として!」
「な!?」
「素直に言ったな。それでも断る。俺はお前よりも彼女としたい」
「ジークはその酒場の店員さんのことが好きなの?」
「そうだと言ったら?」
「私じゃあダメなの?」
「どうしてもな」
「でも、私なら何をしてもいいよ」
「俺は別にお前にしたいことはない」
「こんなに好きだと言っても、ダメなの?」
「ああ」
何を言ってもアイズは引き下がらない
アイズが男に恋をするとこんなことを言うとは思いもしなかった。あの戦闘バカの娘とは思えないことだ。まあ、少しでも人としての成長したと言うことだろう。アリアの娘は恋をしたら厄介だな
何を言っても引き下がらないから、どうしたらいいかと考える
すると
「アイズさん。今の私たち、婚約を考えているんですから。邪魔しないでくださる?ねえジーク?」
「え!?」
「ああ、その前提の付き合いをしている。彼女を嫁候補として選んでいる。俺の婚姻事情によりな、まだ成人を迎えていないが、それでも候補は見つかったため、デートを行なっている。すまないがお前の言葉は聞かない」
「そんな・・・・・」
「行こうシル。アイズに付き合ってられない」
「うん、それでは失礼しますね。アイズさん」
「すまないが、デートの邪魔をするな、俺達は真剣なんだ。いいな」
「あ・・・・・・・・」
アイズの言葉を無視して、俺とシルは別の場所に向かう。
アイズに俺のデートを止めさせようと、ヘスティアが手を回し、シルフが頼んだのだろうが、そうはさせない。いつまでも恐れても仕方がないんだ。このまま行う他ない
ヘスティアの目論見は簡単に潰した。『彼女』を恐れる気持ちはわからなくないが、それでもシルのデートは邪魔はさせない
「ジーク・・・・・」
「やっぱりダメだったか」
「無理ですよ。ジーク君のあの様子じゃあ、完全にシルちゃんが気になっている感じだしね」
「主様は、シルさんに随分と仲が一番よかったですからね、ああなっても仕方がない」
「あれ程とはな、ジークがあの店員と仲が良いとは知っていたが、あそこまであの店員を好んでいたとは」
アイズの後ろから、ヘスティアとシルフとウンディーネとフィルヴィスが出てきた
やはり俺とシルのデートを止めるために、アイズの好意を利用して、シルからアイズのデートに変えようとしたようだが。やはり無理だったと、俺とシルの絆は完璧だと、やはりこのデートを変えることはできなかった
「それにしても、ジーク君。あのシルちゃんが『ただの人間じゃない』って気づいているのかな?」
「そこは問題ありませんよ。シルフ。『主は分かった上でのデート』です」
「ああ、シルフくん。ジーク君は僕が言わなくても気づいていたよ」
「ヘスティア様も。シルフ様やウンディーネ様も、あの店員に何かあるのですか?」
「まあね」
シルフもウンディーネも気づいていた。シルがただの人間じゃないことに
それに俺が気づいているかと気になっていたようだが、それは問題ないとヘスティアとウンディーネも分かっている。その上でのデートであることも、相手を知った上でのことである
「ヘスティア様、ジークを追いかけましょう!」
「諦めない気かい!?ヴァレン何某君?」
「はい!私はジークを諦めきれません!行きましょう。ヘスティア様、お・・・・シルフや皆さんも!」
「あらあら、本当にアイズはジーク君に恋をしているんだね?」
「その相手を諦めない心は、シルフの娘とは思えませんね」
「フィルヴィスさんも行きましょう!」
「そうだな!私はあくまで・・・・そうだ!友人としてだ!友人としてジークが心配だ。私と剣姫は先に行きます。ヘスティア様!」
「ああ、うん。後で追うよ」
「あらあらフィルヴィスちゃんも、ジーク君が気になるようね」
アイズは諦めることはできずに、俺とシルを追いかける、あれだけ断りをされたのに、まだ諦めきれないようだ。アイズがある意味頑固な所があるのは知っているが。ここまでとは思っていなかった
フィルヴィスもアイズと共に追いかける。フィルヴィスは・・・・ただ友人として俺を心配しているだけだと、アイズと共に追いかけようとする。
シルフとフィルヴィスとヘスティアからは、フィルヴィスもなんだかんだで俺を気になっているのだなと、彼女も恋をしているのだなと、自身の恋に素直になれない女だと分かっていた
「さて、僕たちも行こう。ベル君!・・・・・ベル君?」
「うう・・・・・うう・・・」
「ああ、そうだった、ベル君はヴァレン何某君が好きだったね・・・」
「ベルさん。まだ決まったわけではないですよ?」
「私の娘が好きなんだね?ベル君は?」
「うう!僕が先にアイズさんが好きだったのに・・・・やっぱりジークさんみたいに、イケメンで英雄みたいに強くならないとダメなんだ」
「別にそんなことないって。それにベル君は僕が居るじゃないか?ねえ?」
「・・・・・・・・うう!僕はアイズさんが良い!」
「な!?僕じゃあダメってことかい!?」
「まあまあヘスティア様も、早くしないと、主を見失いますので、そろそろ行きましょう」
「ベル君。行こう?まだ決まったわけじゃないよ?」
「うう!このままシルさんとのデートが上手くいくことを願います!」
ヘスティア達の後ろで泣きながら落ち込む、ベルの姿が
いくらヘスティアの頼みで、アイズに俺のデートを止めらさせるにしても、アイズも俺を奪うために動いたわけで、これは彼女の恋でもあるのだ。俺への
自分に恋をしているわけじゃないと、失恋気味のベルは、泣きながらよろけて歩く
恋をしていたアイズが俺に取られたことで、完全に何もかも絶望をしたのか、このまま俺の跡を追い、このまま俺とシルのデートが上手くいくことを願う。ヘスティアが恐れていることを望んだ
セントラルパークを出て、出店で飲み物を買って、別の場所へ向かう
「今度は何処へ行くの?」
「ライ達の所へ行こう」
「てことはダイダロス通り?」
「ああ、そこでダンスができるんだ。二人で踊ろないか?」
「うん!踊る!」
向かう先はダイダロス通り
ダイダロス通りも賑やかになっている。南の繁華街にも負けないくらいこちらも出店もあって、祭りで騒々しい程楽しい空気になっている
ここダイダロス通りでは過去では良いことなど何一つなかった。クノッソスの件がほとんどだが、だが、もうダイダロス通りの問題は全て解決した
その証拠に
ライたちマリアの子供たちやダイダロス通りの住民の人たちが、出店を出して楽しく過ごしている。今までの苦労を重なった上での、結果だ
「ライ、フィア、ルゥ。来たぞ」
「あ、ジーク兄ちゃん!シルお姉ちゃんも!」
「シルお姉ちゃん。すごいお洒落!」
「シルお姉ちゃん。デートを本当にしているんだね?あのジーク兄ちゃんと」
「うん、今物凄く楽しくてね」
「あ、ジークさん、シルさん」
「ああ、マリア。俺たちも何か買わせてくれ」
「こんばんわ。マリアさん。遊びに来ました」
マリアとライ達子供達が出店を開いていた
子供が働くのはどうかと思うが、孤児院は金が必要。寄付金はかなり貰っているはずだが、自分達でも稼ごうと、出店を開いているようだ。確かに女神祭での稼ぎは普通じゃないからな、しかもここはダンス広場、酒を飲みながら人の踊りを見れる。稼ぎとしてはちょうど良いだろう
ライ達が売っているのは、エールのようだ。まあ、酒は誰でも欲しがるからな
「マリア、ここでは自由に踊っていいのだな?」
「はい。お金は一切要りません。ただし、あのサークル内だけにしてください」
「なるほど、区分があるわけだ。と言うわけだシル?行けるか?」
「うん!飲み物も今飲み終わったし、ジークと踊りたい!」
「よし。マリア。俺とシルは躍らせてもらう」
「はい、ご自由にどうぞ」
「わあ!ジーク兄ちゃんとシルお姉ちゃんが踊る!」
「英雄とのダンスだ!」
地面に丸い赤いサークル内のみでしか踊れない。つまりに踊りにかまけて輪っか内から出るなと言うわけだ
無論問題なく、なんのための俺がリードをするのか、無論踊りをしている時は彼女の顔をしか見ないが、サークル内ラインは足で地面の踏み具合で覚えた。
彼女と踊れる。これが初めてだな。だがどうしてだろうな、『なんだか二度踊るような感覚をする』。シルと踊るのは今日で初めてのはずだがな、まあいい。彼女と過ごすこの時間を大切にしなくてはな。両腕を合わせて、手を握り、サークル内で足踏みをする。彼女と一緒にこんなに舞えるなど、今は良い時間だ
(それにしても、随分と知っている気配が多いな、目線も多い。市民やライたちはわかるとして、ヘスティア達と、アーニャ達酒場の店員、そして・・・・・姉上の眷属が多いな、おかしいな、なぜこんなに数が多い、しかもよく気配を感知したら、店員のフリをしている姉上の眷属も居る、本当にただの護衛か?にしては数がおかしいな)
ダンスしている間に、周囲の気配を感知する。ヘスティア達とアーニャ達が密かに隠れているのは理解できる
問題はそこではなく、シルの言っていた姉上の眷属が数が多すぎる。護衛ならヘディンも居るはずだ。なぜそこまで数が居る?まあ大半は姉上に寵愛と言う愛を欲しさに、貪欲のままに行き過ぎた行動をしているに違いない
どうも護衛には見えんな。デートの最中だが、仕方がない
ダンスは終わりにし、少し休憩しようと、ライ達が用意してくれた椅子に座る。
「シル。飲み物だ」
「ありがとう。ジーク。楽しかった?」
「笑顔を晒せないから不安になったか?君もわかると思うが、もう俺には笑顔を出せない。だけど・・・・・君と踊ることは楽しかった」
「よかった。本当に・・・・」
「心配してくれてありがとう。君はやはり俺のことを理解してくれるな」
「ジークのことなら、すぐわかるもん」
「そうか、では俺が今気にしていることがあるんだが、それは何かわかるか?」
「ああ〜〜〜〜、私も言わないようにしていたけど、フレイヤ様の眷属の人たちが多く私たちを見ていることだよね?」
「その通りだ。護衛が多すぎる。いくらなんでも、君は何かに狙われているのか?」
「そうじゃなくて・・・私は『監視』されているの」
「監視?どういうことだ?なぜ君が姉上の眷属に監視されている?護衛ではないのか?」
「詳しく話すことはできないけど、酒場に居る時もそうだけど、私は一人になることができないの」
「そういえば、酒場で君と出会う時は、必ずアレンが近くに居たな。詳しくは話せないにしても、君は姉上の派閥にとってそれだけ重要人物と言うわけか」
「うん、簡単に言えばそう」
彼女にどんな秘密があるのかは知らないが、姉上の眷属において重要人物であることが判明、詳しく話してくれないが、監視されているのは事実
監視の数からして、間違いなくシルは重要な存在、『まるで主のお守り』のような、シルをここまでひつこく守ることを通り越して監視をしているってことはそういうことだろう
「ジーク。私を攫ってほしい。私を自由にしてほしい。今日だけは」
「なるほど、君が普段こんなことをされる苦労がよくわかる。了解した。奴らを追い払うなど簡単だ。しかし、まずは対話からしようか、聞くとは思えないがな」
「何をするの?」
「まずは別の場所に、監視に指示をする者を叩き潰す」
「でもジーク。騒ぎを起こすわけには・・」
「問題ない。もうこのレベルなら簡単に終わる」
彼女の願いで、一人になれる時間、いわば俺と二人になれる時間がほしいと、俺に攫ってほしいと頼まれる
護衛の数が多いにしても、まずは束ねる者を対話で下がらせるよう言い聞かせる
聞くとは思えないがな
「シル。こっちだ」
「え?ジーク?」
俺はいきなりシルを抱き抱え、建物の裏に逃げ込むように入り込んだ
突然の出来事に、シルも焦ったが、シルは俺のされるがままに、路地裏に連れてかれる
もちろんその光景を見た者は多く
「シル様がヘラクレスに連れてかれた!?」
「なんだと!?追え!」
「「「「は!!」」」」
シルの護衛をしている姉上の眷属達が総出で、俺たちを追いに来る。数人が俺たちが入り込んだ建物裏に向かったが
「ダメだ!!居ないぞ!」
「居ないだと!?どういうことだ!?」
「わからない!だが、建物裏周辺には誰も居ない!?」
「探せ!!この周辺を探すんだ!!」
「「「「「「は!」」」」」」
残念ながらシルを連れ込んだ先には誰も居なかった。他の人間も居ない。完全に見失った。それに焦り出したのか、この監視に指揮を取ってる
フレイヤ・ファミリアのヴァンと言う。二つ名石火と読んで『フリント』、レベル4が、部下を使ってここ周辺を探すように指示をする
「一体どこへシル様を連れ去った。ヘラクレス」
「ここに居るが?」
「こんばんは。ヴァンさん」
「な!?ヘラクレス!?シル様!?いつの間に背後に!?」
消えたはずの俺とシルは。ヴァンの後ろに現れた。他の連中に鉢合わせすると面倒になる上に騒ぎになる。
だから『フリント』が一人になる所を狙って、奴が一人になったところで、背後から現れる。
「フリント。今すぐ部下を連れて下がれ、監視は近くに居るアレンとヘディンで十分だ。そうシルが言っている。監視が多すぎてデートに集中できないとシルが迷惑だと言っている。シルの指示に従え」
「ヴァンさん。お願いできますか?」
「な!?我々は不要だと!?幹部だけで貴方様をお守りしろと申すのですか!?」
「では、お前は『彼女の命令』が聞けないとでも?姉上の眷属であるお前が?シルの命令が聞けないと?眷属として彼女に反旗を翻す気か?」
「な!?貴様・・・・・このお方とお気に入りだからと、調子の良いことを・・・」
「ほう、そう言うか?シル?俺は別に奴にどう思われても構わんが、俺を殺そうと今手を武器に触れようとしている。これは君のデートの邪魔をしようとしている。どう思う?」
「まあ!ヴァンさん!本当なんですか?」
「い、いえ、こ、これは・・・・・」
「私はジークが好きです。なのにそのジークを殺そうとするなんて、そんなヴァンさんはもう嫌いです!」
「な!?そ、そんな!?・・・・・・」
「嫌われたくなければ、言う通りにするべきでは?」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬ、ヘラクレス。覚えていろ!!」
「その時は、それ相応の対応させて貰う」
「ヴァンさん。それとヘディンさんを呼んで貰えますか?でないと、本当に嫌いになっちゃいますよ?」
「は、はい!わかりました!!すぐに!!」
フリントは、やはり俺の言葉は聞かなかった。だからシルが代わりにフリントにもう監視は二人だけで十分だと、フリントとその部下は下がれと言う
聞かなければ、シルが嫌いになると、フリントに言い聞かせる
フリントは、一度は俺に武器を触れて向けようとするが、シルが望むことではないと、更にこのまま続ければ彼女に嫌われると。それは困るため、彼女の言う通りに指示に従い。部下を下がらせる指示を出すと同時に、ヘディンを呼び寄せるように、すぐにフリントは武器を抜くのをやめて、指示通りに動く
「シル。助かった。やはり君の指示には誰も逆らえないな?」
「最初からこうすれば良かったね?」
「君だってわかっているだろう?言わなくても勝手な思い込みで行動する連中だ。直接言わねばこうなると、俺は君の仲間と姉上の眷属の考えなど、もはや単純しかない為すぐわかる」
「過激なところあるから、少し苦労をするかな・・・」
シルがこう命令しなければ、周りの迷惑も考えないで勝手な行動するような、主のためかと思えば自分達のことしか考えてない単純な奴ら
力で序列を決めるような、愚かな連中。主のためなら何をしようと躊躇わない。本当に姉上も面倒な者たちを眷属にしたなと、姉上は眷族選びは慎重にした方がいいと、いつか姉上に言ってやりたいと思った
そうでなければ、いつかとんでもないことをしでかすのではないのかと、問題を起こしかねないと思ったからだ
「お呼びでしょうか?シル様。ジーク様」
「来たか」
「ヘディンさん。監視の数が多いのですが?」
建物の上から、ヘディンが飛んで現れる。どうやらフリントは言う通りに動いてくれたらしい、気配からしても姉上の眷属たちの気配がどんどん離れていく、どうやら命令通りになったらしい
「申し訳ありません。シル様。ヴァンたちのまた勝手な行動です。貴方様のデートを邪魔させたお詫びは後で私がします。それと監視しているつもりはないのですが・・・」
「そんなことはもうどうでもいいです。とにかくもうジークと二人だけでデートをさせてください。護衛はもう要らないです。それを言ったらジークが居ればもう十分ですから!」
「ですが、それでは・・・・・・」
「ヘディン。お前も彼女の命令が聞けないか?それとも俺一人ではシルを守れないと?俺を甘く見ていると言うわけか?」
「っ!いえ、そんなつもりでは・・・・わかりました。アレンにも言っておきます。ジーク様。シル様をお願いします」
「お前に言われるまでもない」
「もう付き纏わないでくださいね」
「心得ました」
シルはヘディンを呼び出し、幹部すらも誰一人監視も護衛も要らないと、下がるよう指示をする。
一度は躊躇ったが、護衛は俺が努めると、なんのためのエスコートなのか、意味がなくなるため、ヘディンには渋々了承して、アレンにもそう伝えて、彼は飛んで下がる
それと同時に、俺の気配感知でどんどん姉上の眷属が遠くなっていく。今回は彼女の言葉を聞いて引き下がったようだ
「気配もどんどん遠くなっている。どうやら君の言葉は今回は聞いてくたようだ」
「まったく、護衛ならジークがなんとかしてくれるのに」
「他者など信用しないさ、あいつらは」
「この後はどうしようか、ジーク?」
「それなんだが、今女神祭のみしか中に入れない場所へ行かないか?」
「女神祭のみしか入れない場所?それはどこなの?」
「君も聞いたことがあるはず、『聖フルランド大聖堂』だ」
次の場所は聖フルランド大聖堂
教会なんだが、かつて聖騎士の伝説フルランドに纏わる大聖堂である
俺に支えるウンディーネ、それ以外のウンディーネが存在し、聖騎士フルランドの祀る場所。その大聖堂は普段は中に入ることはできない。しかし、女神祭の日だけは中である礼拝堂まで入ることができるため、俺もシルも入ったことがないため、この日を利用して、一度は中を見たいと、二人で向かう
そして、聖フルランド大聖堂へ到着
運が良いのか他の客人はほとんど見当たらない。オラリオ住まいの下界の子供においては女神祭は毎年やっているため、もう誰でも入っているため、ここは観光客向けの場所のようで、運良くあまり客が居ない
ここはオラリオ観光名所でもあるのだがな
「うわあ!これが!」
「君でも入ったことがないのか?」
「一人で行っても面白くないかなと、思って」
「確かに、誰かに聞いた話だと、ここはもはや博物館だと言われているらしい」
「博物館?」
「壁画、もしくは彫像など、フルランドに関する物が集まった博物館だと、教会とは思えない美術館とも言われている。入ればわかるだろう。中に入って確かめよ。受付をしないと中に入れない」
門前で、受付があり、金を払わないと中に入れない。ギルド職員が受付し、俺が金を払う。金を払うと受付しているギルド職員が驚いた。まさかレベル7のヘラクレスがここに来るなど思わなかったようだ。まあ、ギルド職員に知られているのは仕方がない。レベル7の人間が観光場所など来るなど。最上級冒険者が観光をしていることに驚いたようだ
チケットを貰って、中に入る
すると
中にはたくさんのフルランドの物語を描いた壁画と彫像がたくさん大聖堂の中に置かれていた
「うわああ!!すごい綺麗!」
「天井画まであるのか、ここまでフルランドに関することが残っているとはな」
「そういえば珍しいね。ジークが童話に興味があるなんて?」
「そうか?実際に過去に存在した英雄譚の遺物には興味がある。俺もここでどうしても確認したいものがある。だから来たんだ」
「それは何?」
「この先にある礼拝堂に、フルランドに恋をした『ウンディーネ』の精遺物があると。俺のウンディーネが教えてくれた。ぜひ見てみたい」
俺が英雄譚に興味があるとは、シルには思いもしなかったようだ
英雄譚は別に嫌いではない。俺は今でもそれに関する物が実在しているなら興味があるとここへ足を運んだ。それに俺に支えるウンディーネとは別のウンディーネの精遺物。俺のウンディーネが教えてくれた。ここに別のウンディーネの精遺物は確認したい
実際に見れるわけではないと言っていた。この大聖堂に入って教会内は壁画や天井画や彫像がフルランドに関する全てが存在した
英雄譚に書かれた文字が壁画として描かれていた。実は見たいのはそれではない
フルランドに恋をした、俺のウンディーネではなく、別のウンディーネの精遺物がここに眠っていると聞き確認しに来た
それが、今目の前にその精遺物が入った棺まで、大聖堂の奥である礼拝堂まで到着する
「これがそうなの?この水色の綺麗な棺が?」
「ああ、俺も流石に千里眼は持っているわけではない、だから中まで確認取れないが、少なくとも今目の前に居てわかる、ウンディーネの力がこの中から感じる」
「四大精霊の力と精霊召喚士として?」
「ああ、確か伝承だと、ウンディーネの遺体、もしくはその遺体が結晶化された。もしくはそのウンディーネが剣になった遺物がここに眠っていると、伝承ではそうなっている」
俺のウンディーネも言っていたが、この棺の中身は間違いなくウンディーネの体が入っていると聞かされた
ウンディーネは水の大精霊で、水を司る精霊にして、自身の体を水にして剣にも変身できる能力も持っている、そのため、中身は確認できないが、ウンディーネの力がこの棺に感じるとなると、剣になっていようが伝説は本当だった証が今感じて理解した
「ウンディーネっていっぱい居るんだね?確か、『水と光のフルランド』って言うんだよね?」
「ああ、これは千年前のウンディーネの存在だ。まさかそれがまだ残っているとは、この棺は固く閉まっているようだが、ちゃんと千年経った今でも残って見れるのは、俺と君は運が良いものだ。普通なら精霊の遺体など武器にして、活用して残らないのだがな」
「もしかしてジークは、この棺を開けることもできたりしない?」
「ああ、今見てわかったが、この棺の開け方を今解明した」
「流石ジークね。四大精霊召喚士だもんね。でも、開けたりなんてしないよね?」
「無論だ。フルランドが愛した女の遺体を見るなど、必要じゃない時以外はしないさ」
「良かった。流石に私もそれは見たくないから」
「そうだな、死体であることには変わりないからな」
ちなみに、四大精霊召喚士にでもなると、この古代の棺の開け方も今見て解明した。この棺に精霊術が施してある。この棺を作ったフルランドかは知らないが、少なくともこのウンディーネの遺体を守るために、強固な棺を用意したようだが、俺には解明は簡単だった
だが、無論開けない
この中にあるのは。言うなれば精霊の死体。優しいシルなら見たくないのは当然、俺もフルランドが愛した女の遺体など、関係者でもない俺が開ける気などない。確認したいのは実在があるかどうかだけでいい。開けたりなどしない。開けたら大騒ぎだろうしな。それに開けて何かの武器にされるなど、フルランドが望んでもないことになる。だから開けない
「聖騎士フルランドと愛し続けたウンディーネの遺体を、棺を開けて確認をするのかと思ったよ」
「流石に俺もそんなことはしないさ、だが愛し続けたと言うのはどういうことだ?」
「え?水と光のフルランドに出てくる。ウンディーネって、聖騎士フルランドと最後は結ばれたんでしょ?だから愛し続けたのが結末でしょ?私はいつもライくんたちに読み聞かせをしたから覚えているよ?」
「なるほど、子供の夢を守るために『事実を隠した』か」
「どういうこと?」
「それは童話として語られる水と光のフルランドの話だろう?」
「そうだよ?」
「この物語は登場人物は三人居る、騎士と精霊と聖女。それは今の童話にも書かれているか?」
「うん、騎士をずっと前から支えていた聖女のことだよね?」
「これには実話があるんだ。フルランドは確かにウンディーネに出会った時は愛を誓った。だが、その後でウンディーネに出会う前から支えて貰った聖女に心を揺らぎ、最終的にフルランドはウンディーネに愛を誓っておきながら聖女を選んだんだ」
「そんな実話があったの!?」
「君でも驚く話なのはわかる。俺も俺のウンディーネから聞いた実話なのだが、聞いた俺の感想としては、『とんだ浮気話』だ」
光と水のフルランドとは
千年前、フルランドはウンディーネと共に、地から這い出る魔物と戦い、後にフルランドは水の大精霊に愛を誓った、しかし、ウンディーネと出会う前から親しかった聖女との長い思い出があるのか、水の大精霊に愛を誓っておきながら、最後には聖女を選んだ
そのため、水の大精霊は悲しみに浸り、街を湖にしてしまう程の涙の量を流した
「それで、その後どうなったの?」
「ウンディーネにはある掟がある。俺のウンディーネもな」
「掟?」
「水の大精霊ウンディーネは、人間と交わることができる。それこそ風の精霊シルフのように、精霊との間に子供も作れる。いわば水を操れるだけの人間とほぼ変わりない。しかし、もしも自分が愛した人が別の女と浮気をした場合、その浮気した人を殺さねばならないと言う掟がある」
「ジークのウンディーネさんにそんな掟が、じゃあフルランドは・・・・」
「もちろん、愛を誓ったにも関わらず、フルランドは聖女を選んだ。これは立派な裏切り。彼女はフルランドを殺すと決めた。が・・・」
「が?・・・・・・」
「そう決めた矢先に、フルランドが魔物によって殺されそうになっていた。その光景を見たウンディーネは、彼を守ろうと身を挺して守って死んだ」
「・・・・・・・・」
「掟で殺すつもりが、結局なところウンディーネもフルランドを愛していたが故に自身の命を先に落とすことを選んだ。これが彼女の結末だ」
「そして遺体がこの棺の中に・・・」
「君が知っている童話の真実がこれだ。確かに子供にも夢がないから書き換えられた。浮気で何も失い、愛で選択肢を選び間違えると悲劇が起こる。英雄譚として語られているが、残念ながらこれはその中でも悲しい物語だ」
水の光のフルランドの最後は虚しく
死んだウンディーネの死体を抱きしめたフルランドは、この大聖堂を築いて彼女の遺体をあの棺に入れた。
ウンディーネは本来なら湖に眠らせてあげるのが埋葬の仕方なのだが、彼が悔やみきれないのか、最初からウンディーネを選んでいたらこうはならなかったと、後悔が消えないからなのか、遺体を湖に戻すことなく、こんな教会を作って、彼女と過ごした歴史を残した
なんとも、俺からしたら英雄譚とは言いたくない、もはや『フルランド懺悔の物語』だ
「デート中とはいえ、すまないこんな所に連れてきて、真実とはいえ、虚しい話をしてしまって」
「いいわ。だって私もそんな話をされたら気になるもの。でもウンディーネを祀っているなら、どうしてその名前の聖堂にしないの?」
「ウンディーネも個別として真名は確かに存在する。しかしそこはいろんな説がある。真名を最後までフルランドに教えなかったのか、もしくは知ったとしても、それだけは自分の物にしたいからと、彼女と結ぶことをしなかった代わりに名前だけ自分だけ知っておきたいからなのか、この大聖堂の建設させたフルランドの名前に置き換えた。ってくらいだな」
「真名を教えなかった・・・・・・」
「ん?どうかしたのか?」
「急な話になるけど、ジークは私がおかしくなったらどうする?」
「君がおかしくなったらか?」
「うん、この棺の水の精霊は裏切られて、悲しんで怒って誰かを傷つけようとしたらどうしますか?」
「無論止める。それが俺なら気が済むまでやってくれて構わない。でもそんなことがしたい時があるのか?」
「ううん。この精霊さんの話を聞いて、もしもその時が来たらどうするかなと思って・・・」
「君のしたいことなら、俺は止めないと思ったのか?」
「ううん、ただ聞きたかっただけ」
「君の悪いことは俺は見逃さない。その相手が俺なら構わないがな」
フルランドの話を終えて、彼女は俺に変な質問するとは思えないことをされた
彼女がおかしなことをするとは思えないが、何にしても、彼女が悪いことをするなら止める以外ない。なぜそんな質問されるかはわからない。まあ、少なくとも彼女は優しいは優しいが、俺に関してのことは悪いことをして俺に近づくから、好きなことには誰にも譲れない、恋だけに関しては悪い女であることは間違いなしだ
フルランドの話はこれで終わり、もうこの大聖堂には用がないため、別の場所へ向かうために、大聖堂を出ていく
「シル。そろそろ夕飯の時間に近い、夕食を食べに次へ向かおう。予約をしてあるんだ」
「え?そんな打ち合わせはしてないはずだけど?・・・・」
「ああ、これは俺のサプライズだ。君の誘いはとても嬉しかったため、サプライズをしようと思って、中々予約が取れないレストランを予約した。そこへ向かおう」
「嬉しい!ありがとうジーク!」
次に向かうは、もう少しで夕方を迎える。そうなれば夕飯だ。次は夕飯を食べに予約してあるレストランへ向かう
これはシルの打ち合わせにはない。このデートは彼女の誘い、何かこちらも大きなことをしてあげたいと思い、予約が取りに難いレストランの予約を取った
彼女は大喜び、彼女のためにはなったようだ
「お!ヘラクレスじゃねえか!?なあ?俺の品見ていかねえか?」
「ん?土産屋か?」
「見たところ、銀製のアクセサリ店だね?」
「ああ、俺はゴードン。細工師だ。銀細工が得意で、銀製のアクセサリを売っているんだ。二人は大聖堂に入ったんだろう?そのフルランドに因んだアクセサリを用意したんだ。番のもあるぜ?どうよ?」
「ほう、作りは良いな。確かに売れるだけのデザインと形も磨きも輝きもしている。売り物としては十分なくらいだ」
「あの英雄ヘラクレスに褒めてくれるなんて、嬉しいね!」
突然大聖堂前で、小さな出店を開くウェアウルフに声を掛けられる
名は細工師でゴードン。銀細工が得意らしく、主に銀属でアクセサリを作り、作ったアクセサリを客に売る職人でもあり商人でもあるようだ。
売っているアクセサリは、売り物としては申し分のない完成度。確かに自分から売り出すには出来の良い物ばかりだった。ヴェルフも銀細工は得意。だがこのゴードンと言う者のアクセサリも中々だ。下手をしたら数万も稼げるような、良きデザインもある。こんな風呂敷で商品を並べた小さな出店を開くとは、とても思えない高級そうな物もあった
「あ、せっかくだ。作ったばかりのがあるんだが、これなんてどうだい?」
「これは・・・・・」
「二つの銀細工?あ!くっ付いている!?」
「デザインからして、騎士と精霊が描かれた銀細工のペンダントか」
「そう、魔除けとして騎士と精霊の悲愛を辿らないようにって、俺が念を込めただけの物なんだが、二つにこれを分けることができ、精霊の方は女性なら髪飾りにもできる。騎士の方は男なら胸にバッジとしてつけるも良しだ」
「なるほど、その二つは形を合わせることもできる。まさしく番用のペンダントか」
ゴードンが紹介してくれたアクセサリは、先ほど俺たちがフルランド大聖堂に入ったことを知った上で、そのフルランドに関係するアクセサリを紹介される
大きなバッジのようなアクセサリ、そのバッジには騎士と精霊が二つ描かれている。二つ合わせると満月型のペンダントとなる仕組みだ
まさしく番のペンダントだった
「せっかくだ、それを買わせて貰う」
「毎度あり!流石はヘラクレスだぜ!二千ヴァリスな所を、一千ヴァリスにしておくよ!」
「ああ、シル。君はこれを髪に」
「いいの?」
「当たり前だ、君とペアルックで買いたかったんだ。受け取ってくれるか?」
「うん!」
「それじゃあ髪に付けるから動かないでくれ」
ゴードンが紹介した番のペンダントを買った
二人でペアルックできるペンダントなら、分けて使えると思い、精霊の方は彼女の髪に付け、騎士の方は俺の左胸のベストに付けた
「似合っている。右の方で良かったか?」
「うん、ジークも似合っている」
「ありがとう。良い物を買わせて貰った。感謝する」
「おう!二人とも似合っているぜ!」
デートの買い物でペアルックを買うのは当然のことだ
彼女とお揃いな物を買って、彼女を喜ばせる。デートなら当然の行いだ。これが二つ合わさる時が来るかはわからないが、同じ物を持って自分達がいつまでも繋がっている愛情表現にはできた
良い買い物だった
「シル、もう少しで夕方になる。もう行こう」
「うん!」
そろそろ向かわないと間に合わなくなるため、シルを連れて次の目的地へと向かう
早くしないと『乗り遅れてしまう』。だからもう寄り道はせずに目的地へと真っ直ぐ向かう。俺が予約したレストランだからシルでも知らない。打ち合わせにもないレストランを予約した
シルが知らないレストランとは
「ここだ」
「これって『客船』!?」
「ああ、『スプーン・アクア』と言う、ボートレストランだ」
俺が密かに予約したレストラン、オラリオの水路を一周する船上レストラン
スプーン・アクア
普段は岸に固定して、船上で食事レストランだ。確か元々はオラリオ外から中古を買い取り、立て直して。オラリオの地域で建てる所はない為、水路の上なら営業できると、オラリオの水路の上でレストランをする店らしい
豪華客船とまではいかないが、俺たちのホームと同じか、それがすっかり入ってしまう程の大きさ、彼女とここで夕飯を過ごす
「素敵!こんなところで食事ができるなんて!」
「オラリオの水路を一周できるんだ。君とゆっくり食事できるにはここが良いだろうと思ってな、どうだろうか?」
「うん!すごい嬉しいありがとうジーク!」
「喜んでくれるなら何よりだ。さあ、もう入ろう。でないと出港してしまうからな」
「あ、もうなの?」
「あともう少しでな、間に合わなくなる前に入ろう」
どうにか出港する前の予約時間に着き、すぐさま中に入る
流石の船上レストランなら彼女とゆっくりできる。彼女には話したいことがたくさんある。もちろんデートであるため、変なことや嫌な話はしない。それでも彼女にしたい話がたくさんある
今日の食事は彼女と楽しく過ごす長い夜の始まりである