ニーベルンゲン・シックザール〜竜殺しの英雄譚〜   作:ソール

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失望

 

 

俺は宿屋を出て、一人で街を走り出していく。目指すは彼女が居ると思われる場所。そこは俺とシルしか知らない場所。俺の跡をつけられない限りでなければ辿り着けない場所

 

そこへ行って、シルから愛を知りたい

 

答えなんて出さないとならない。俺は理解しなければ彼女を傷つけることになる。こんなにも愛なんて難しいのか、母上と兄上はどうやって人を愛した?わからない。でも確実にシルはそれを欲しがっている、俺だってそれを理解すればきっと・・・・・・

 

 

「ジーク?」

 

「あれ?ジーク殿?」

 

「ジーク様?」

 

「どうしてここに?」

 

 

「っ!ヴェルフ、命、リリルカ、春姫、お前達・・・・・なぜミアの店の制服をしている?」

 

 

突然街中を走っていると、ヴェルフ達に出会う。しかし変だ。なぜかミアの店の制服を着ていた。ベル達と一緒に居ないなと思ったが、女神祭でまさかミアの店で働いていたのだろうか?まさかとは思うが

 

 

「ああ、これか?ベル達と一緒にお前のデートを観察するつもりが、その途中であの酒場の店員に店番任されて・・・・・」

 

「アーニャたちか、まさかヴェルフ達を使って、俺と姉上のデートを尾行するとは」

 

「姉上?どういうことです?」

 

「デートをしていたのはシル様じゃないんですか?」

 

 

「説明しよう。急いでいるから手短に」

 

 

俺は今日何があったのか、簡単に話した。今はシルに会いたい。夜は長いとは言えあまり長いはしたくない。簡単なことを言うと

 

 

「「「「シル・フローヴァの正体があの女神フレイヤ!?」」」」

 

「そうだ。我が姉上だ。姉上は退屈のあまり、人間に化けて、今お前達が働いている酒場で何度か働いていたんだ。娯楽目的でな」

 

「そういや、あの酒場の店長のドワーフ。元フレイヤ・ファミリア団長だったな」

 

「だからリリの嘘も簡単に見抜いて」

 

「フレイヤ・ファミリアと関係があったとは思っていましたが」

 

「まさか、あのシル様が女神フレイヤ様だったなんて・・・・」

 

「驚くこともあるだろうな、お前達なら」

 

「じゃあお前今一人なら、デートは終わったってことだよな?なのになんで急いでいる?」

 

「本物のシルに会いに行く。彼女は今待っている」

 

「本物?もしかしてその女神フレイヤは自分の眷属に化けていたってことか?」

 

「そういうことだ」

 

「うわあ〜〜〜、ジーク様を手に入れるために眷属に化けていたと言うことですか」

 

「簡単に言うとそうだな、あと一歩で性行為するところだった。あの姉上と」

 

「せ、せ、せ、性行為!?そんな大胆な!?」

 

「落ち着いてください。春姫殿!美の女神ですし、あり得なくない行動かと」

 

「なんだか、美しいとは裏腹に、結構卑怯なことをするんだな?」

 

「それが姉上だからな、欲張りな性格であるためだな」

 

 

ヴェルフ達に全てを話した

 

無論驚かないはずがない。まさかあの酒場の店員の正体がフレイヤだったなんて、信じらない話も無理もないが。これが事実である

 

しかし、今まで俺や皆に接してきた本物のシルは存在する。今からその本物に会いに行く。

 

 

「ジーク様、シル様の正体が分かり、今お一人になっていると言うことは、そのフレイヤ様のプロポーズは・・・・・」

 

「ああ。断った。俺にとって姉上は姉でしかない、他の派閥の主神でもあるしな」

 

「では、本物のシル様と言うのは?」

 

「居る。姉上の眷属だ。今は『偽名を名乗っている』。そして本名が『シル』なんだ。今までお前達が会ったのも、そっちのシルだ」

 

「それが本当のシル殿なんですね?」

 

「ああ」

 

「それは分かりました。でも、今から本物に会って、そっちの方を選ぶのですか?」

 

 

「それは・・・・・・・・」

 

 

事情は全部理解した。俺が今日のデートで何をしていたかも、結果的に姉上のプロポーズは断ったことは伝え、その後に本物のシルに会ってどうするかと聞かれ

 

それで、俺は何も答えられなくなった

 

まただ。また何も答えることができなくなった。さっきもそうだ。俺は姉上に何度も愛の告白を受けたが、何も答えられなかった

 

なぜ、こんなにも何も返事ができない

 

 

「ジーク。お前は俺らがお前の心配をしていることくらいわかっていると思うが。お前の感情について・・・・・」

 

「ジーク殿、まさかとは思うのですが」

 

「ジーク様は、レベル7になって・・・・」

 

「恋愛感情がカオス・ヘルツで消えたとかじゃないですか?」

 

 

「・・・・・・・・まさか、だから『何も答えられない』のか?」

 

 

ずっと、ヴェルフ達が俺の心配をしていることは俺もわかっていた。そして心配していたのは主に俺の感情について

 

レベル7になってまた感情が取られているはず

 

 

 

それが恋愛感情が消されていると、推測で言われ、確かに俺もそう思えてしまい。だから姉上の愛の告白も返事ができず、『気持ちすらも無い』と言うことに気づいてしまった

 

 

 

そんな状態で、シルに会っても返事ができるかわからない。だが、今でも彼女が待っていると思う気配だけはしている。きっと俺が今来ることをわかって待っているようだ

 

 

「俺は彼女を傷つけてしまうだろうか、それでも今彼女は・・・・・・」

 

「近くに居るのか?」

 

「ああ、今も待っている。いくら彼女の前でも答えないはずがない」

 

「そのレアスキルに抗うことができるのですか?」

 

「わからない。でも彼女は今も待っている」

 

「行かなきゃいけない気持ちは分かりますが」

 

「返事もできないまま本物のシル様を傷つけたりしませんか?」

 

「わかっている。だがどの道、行くしかないんだ。そこからは俺の問題だ。俺がその気持ちが無くて行かなかったとしても。彼女が傷づくことには変わりはない」

 

「それは、そうですが・・・・」

 

 

「俺は行く。それでも彼女は俺を待っているんだ」

 

 

「おい!ジーク!?」

 

 

俺はそれでも行くしかなかった。彼女は待っている、行かなくても傷つくことになるにしても、まずは会って、気持ちが出せないことを説明すればなんとかなるはず

 

こんなの俺の問題のはずだと、ヴェルフ達がそんな状態で行っても告白の返事ができないなら、行っても相手を傷づけることにしかならないと言われても、俺は今彼女に会いたい

 

それだけの気持ちで、俺はヴェルフ達の言葉も聞かずに、シルの元へ

 

 

「ジークの奴、恋愛感情がない割には」

 

「シル様を大事にしているんですね」

 

「多分ですが、まだ想いだけはあるってことじゃないですか?」

 

「どうか、シル様の想いに答えればいいですが・・・・・」

 

 

ヴェルフ達はただ心配だった。恋愛感情は消されていても、シルを想う気持ちは消えていなかったことに安心はするも、その先が大丈夫なのか、ただ不安しかなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴェルフ達を置いて、俺は街中を走り続ける。誰がなんと言おうと、シルの元へ向かう。確かに恋愛感情はないのかもしれない。何も返事もせずに終わってしまうと確かにシルを傷つけてしまう。だが予めそう言ってしまえば、きっと彼女もわかってくれる、そうするしか今の俺には選択肢がなかった

 

すると

 

 

「ジーク!」

 

「見つけたにゃ!」

 

「ここに居たなんて・・・・」

 

「あれ?でもジーク一人よ。シルは?」

 

 

「っ!リュー、アーニャ、クロエ、ルノア」

 

 

またも人に見つかって止められる。急いでいると言うのに、だが会って話さなくてはならない。酒場の店員達、リュー達だ

 

 

「今度はお前達か、説明しないと納得しないか?」

 

「できれば、そうお願いしたいです」

 

「シルも居ないし、何を急いでいるにゃ?」

 

「お前達も説明しよう。そうしないとわからないようだからな」

 

 

少しでも説明しないと、いつまで経っても止められるだろうからと、また少し時間を使って、今度はリュー達に説明をする

 

彼女達もシルの関係者。話さなくては納得しないと理解しないのもわかる。

 

 

驚くことはあるだろうが

 

 

 

「「「「シルの正体は女神フレイヤ!?」」」」

 

 

「そうだ。アーニャ。お前の主神だ。お前は姉上の眷属なのに、シルが姉上だと知らなかったとすると、本当にもうファミリアとは縁を切っているんだな?ちなみにミアは知っているぞ」

 

「し、し、シルが・・・・あの女神フレイヤだったなんて・・・・・」

 

「まあ、リューは仕方がないな。お前にとっては命の恩人だからな。生きる意味を与えてくれた彼女が、まさか女神だったなんて、驚くことだろう」

 

「ミア母ちゃん。どうしてミャーに教えてくれなかったの・・・・」

 

「話さないようにされていたんじゃないのか?お前はすぐにボロが出るから、正体を晒さないために隠すようミアに止めていたんじゃないのか?」

 

「嘘でしょ。シルが・・・・あの女神フレイヤなんて・・・・」

 

「確かに私もクロエも、ミア母さんが元フレイヤ・ファミリア団長なのは知っているけど、まさかあのシルが、女神フレイヤなんて・・・」

 

「お前達からすれば、当然の反応だな」

 

 

リュー達からすれば驚くことなど当然

 

ずっと一緒に働いた店員仲間、親友とも言えるシルが、まさかあのオラリオ最強の一角の内のファミリアの主神。となれば驚かない方がおかしい

 

リューは複雑だろう。自身のファミリアを無くした後に生きる理由をくれた命の恩人が、まさかの姉上だった

 

アーニャは親友かと思えば、まさか自身の主審本人だった

 

クロエとルノアも、まさかあのオラリオ最強の一角の主神と、店で働いていたとなると。これからどう接すればいいのか

 

それぞれどうしたらいいか、これからのことを考えなくてはならなくなる。それは彼女達に委ねるしかない、説得は残念ながらできない

 

 

「ちょっと待って!?シルがあの女神フレイヤなら、ジークはその女神フレイヤとデートをしていたってこと!?」

 

「ああ、告白を断って、今本物のシルの所へ向かう」

 

「本物が居るの!?」

 

「ああ、俺しか知らない彼女こそ、俺の想うシルだ」

 

「想うって・・・・・じゃあ本当にジークって好きな人が居るってことにゃ!?」

 

「ああ、今から会いに行く所だ」

 

「まさか!?ジークそのまま!?」

 

「そうだ。俺が欲しい女性は・・・本物の方だ」

 

「じゃあ・・・今からプロポーズするってこと!?」

 

「ああ、俺は彼女を選びたいんだ」

 

「っ!?」

 

「え、でも・・・・・そんな人居たかにゃ?」

 

 

包み隠さずにアーニャ達に本物のシルを選びたいと言った

 

今だけ本人の居ない所でしっかり言えてもしょうがないのだが、それでも伝えなくてはわかってくれないと思った。俺にだって選ぶ心はある。これを全面に出しておけば、必ず彼女を失望せずに済んで、選んで貰える。

 

人の意志を考えずに独断な行動だけは避けねばならない

 

こうでも言わなきゃ俺は想いが出せなくなる。カオス・ヘルツは強さを得るために心を殺されることは覚悟していた、本当に彼女のことさえも消えてしまうとなると、俺が望んでない結果を産むことになると、もう包み隠さずに誰が欲しいかだけを答えた

 

だが

 

 

「ジーク!」

 

「っ!なんだリュー?」

 

「もうシルのことは諦めませんか?」

 

「何が言いたい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジーク!!私は貴方のことが好きです!!!私を好きになってください!!!」

 

「「「ちょ!?リュー!?」」」

 

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 

シルの正体を知って、本物が居たとしても、その本物の方へ行くと言っても

 

 

 

リューに止められ、リューを好きになってくれと俺は彼女に言われる

 

 

 

リューが前々から俺に好意があったことは気づいていた。まさかあの不器用のリューが、俺にハッキリと好きだと伝え、もう本物のシルは諦めて、自分を選んで欲しいと。彼女とは思えないハッキリとした言葉に、また俺は何も言えなくなる

 

 

「ジーク。私はこの前の深層の時から、貴方が好きになりました。愛し方もよくわからない私ですが、私は貴方を愛したいんです!シルに取られたくない!貴方がシルをどれだけ愛しているかも知っています!それでも私を選んでください!私は貴方が欲しいです!!」

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

「ちょ!?リュー!?あんた何を言っているの!?」

 

「そんなずるいにゃ!だったらミャーも」

 

「アーニャ!?あんたまで!?何を勝手に言っているにゃ!?それなら私だって!」

 

「ずるい!なら私も!!」

 

 

リューは、俺がどれだけシルのことを想っているのか、やはり彼女の親友としてしっかり見ていたから故の、彼女に負けない俺への想いをしっかり伝えた。あのリューがここまでしっかりと想いを伝えると、成長したんだなと理解はできる

 

それに続いて、アーニャやクロエやルノアまで、俺に好意があるのか、プロポーズをしようとしてくる

 

 

 

だが、その想いでさえも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

何も答えることができない

 

 

そういう考えも思うことさえもない。カオス・ヘルツの感情殺しはそう思う気持ちも、返す言葉さえも思いつかない出せない。何を言っても返事が出せない

 

恋愛感情を消されたせいで、それに関する言葉が出せず、返事もできないまま、ただ無言を貫くことしかできない

 

返事をするだけでも口に出せず、その思う言葉さえも返せないなんて、このレアスキルは最悪にも程がある、これのおかげで強くはなれたけど、こんな大事なことすら思えないなんて最悪だ

 

 

どうしたらいいか、それすらも答えらない。このまま何も言わずに、ただ無言となるだろうか

 

 

その時

 

 

「ジーク様、何を彷徨っているのですか?速やかにシル様の所へ向かってください。彼女は貴方様をお待ちしています」

 

「ジーク。あの少女が待っている。今すぐ向かってくれ」

「「「シル。待っている!」」」

 

 

「っ!ヘディン・・・・」

 

「ガリバー兄弟!?」

 

「なんでフレイヤ・ファミリアが!?」

 

「まさか・・・・女神フレイヤが指示を?」

 

「なんで・・・どうして・・・・」

 

 

「ヴァナ・アルフィか。あの方の指示だ。ジーク・フリードをシル・フローヴァの所へ行かせる指令が入った。ジーク・フリードの行先を邪魔するな」

 

「ジーク様、その者達は無視して、お急ぎください」

 

 

「そうか、姉上も俺に専念させてくれるのか」

 

 

突然、ヘディンとガリバー兄弟が俺の後ろに現れ、姉上の指示でこれ以上俺の行先を邪魔するなら攻撃すると、戦闘態勢を取っている

 

姉上は、俺の気持ちわかってくれたのか、シルの所へ急ぐようにと、後押しをしてくれようだ。

 

本当にそうなのか怪しいが、今はその言葉に甘えて、俺はシルの所へ向かう

 

 

「すまない。俺はシルの元へ向かう。アーニャ、クロエ、ルノア、そしてリューも。すまないが、俺には何も言えない。失礼する」

 

「あ、ジーク!・・・・・『ガン!』・・っ!?」

 

 

「邪魔をするな、疾風。例えあのお方の親友でも、これ以上ジーク様の行手を阻むのなら、我が呪剣で、薙ぎ倒すぞ?」

 

「我々も、邪魔をするようなら無力化せよと指示をされている」

「「「邪魔許さない」」」

 

 

「おい、リュー達を殺すなよ?」

 

 

「無論です」

 

「問題ない。あのお方の友人達。殺せば僕たちがあのお方に恨まれる」

「「「命は保障する」」」

 

 

「なら良い、リュー達をしばらく止めていろ」

 

 

「は!仰せのままに!」

 

「「「「言われるまでもない」」」」

 

 

「ジーク!そこをどけ!!ダインスレイヴ!」

 

「何よ!あんた達!」

 

「そこをどきなさいよ!」

 

「ジークに用があるにゃ!退いてにゃ!」

 

 

「悪いが聞けないヴァナ・アルフィ」

 

 

「なら、押し通すまで!!」

 

「「「うおおおおおおおおお!!!」」」

 

 

「我が主の命により。執行!!」

 

「「「「止める!!!!」」」」

 

 

「やり過ぎるなよ」

 

 

俺はリュー達を置いて、シルの元へ向かう。もちろんリューたちは返事がないため、俺に返事を貰うために俺をまた行き止めようとする

 

しかし、ヘディンとガリバー兄弟が邪魔させないよう指示をしているため、リュー達の問いを阻止する。一応姉上の関係者だ。殺しはしないことは承知している、そのためリュー達の命は保障されているだろう。やり過ぎはあるだろうが

 

 

 

それでも、俺はシルの元へ向かう

 

ヘディンとガリバー兄弟が早く向かうように言われているなら、間違いなく、何かあってのことだろう

 

それでもいい、彼女に会えるのなら、話したいことがあるんだ

 

 

と、俺はリュー達のことは気にせずに、シルの元へ向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう俺を止める者は居らず、俺はシルの元へ辿り着いた

 

ヘスティア達やロキ達にも見つからずに、無事に辿り着けるなど、姉上がまた何か企んでいるのか、俺に誰も近づかせないように、眷属を回しているのかもしれない

 

何が狙いかわからないにしても、それでも今ここで俺は

 

 

 

 

 

「シル・・・・・・・」

 

 

「ジーク・・・・・・」

 

 

 

 

 

本物のシルに会えた。ここはどこかと言うと

 

 

 

ヘスティア・ファミリアが最初にホームにしていたへファイストスから貰った廃墟だった教会

 

 

 

へスティア・ファミリアが最初の拠点にしていたは古びた教会、ここに居ると分かり、足を運んでみてたは、彼女は待っていた。本物のシル。今日姉上が着ていたドレスお同じものを着ている

 

 

本来なら、その彼女とデートをするはずだった。だが姉上の命令で、俺とデートをする時は代わるように言われたのだろう

 

 

俺を手に入れるために、姉上は本物のシルを利用したのだ。この前の恋文だって、彼女の意思で送ったものだ。打ち合わせの時も、本物のシルがした。なのに、デートの時だけ姉上だった

 

なんでそんなにも、彼女の今日まで至ることまでわかるのか

 

 

それは俺と彼女の心が繋がっているから、シルが俺の気持ちがわかるように、俺も彼女の心がわかる

 

だから

 

 

「すまない。君があの柱の上で、君だと気づいていたのに。俺は君を連れ出さなかった」

 

「ううん、いいの。これはフレイヤ様の命令だから、私はこうするしかなかった。でも嬉しい。今ここに貴方が来てくれると、私はずっと待っていたんだから」

 

「それで許されるとは思っていない。残念ながら俺は、確かに君の所に俺は来た。でも・・・・俺は君に謝りたいんだ」

 

「謝る?何を?」

 

 

 

ここまで来ておいて、俺はシルに謝りたいと、俺は彼女に謝罪をする。結局俺の心に彼女の恋を受け取る準備は

 

 

残念ながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シル。君も目の前に俺が居るならわかるはずだ。俺は結局・・・・・・・・『君に恋をしていない』ことに」

 

 

 

 

「・・・・・・・・・そうね、今貴方が私の所に来て、貴方を目の前にして、そういう心をしているのだとわかるわ」

 

「すまない。何も答えらなくて。君がどんなに俺を想ってのことなのか、最悪だよ。本当に今一度。俺は自分を大嫌いになる」

 

「ジーク・・・・・・・」

 

 

無かった

 

ここまで来ておいて、彼女に俺には恋愛感情がないと告げるしか無かった。もう俺にそんな心はなかった

 

 

だが彼女もわかっていた

 

 

本当に心が繋がっているのか、今俺がどんな感情をしているのかわかるらしく、もはやどんな愛な言葉を言われても返事はできないと、俺のレアスキルでもう恋愛感情がないと理解してくれていた

 

 

「すまない、君は本当は俺とデートするはずだった。でもそれは姉上によって叶わなかった。でもその代わり、姉上の想いは断って、最終的に君の想いさえも・・・・・答えることができなかった」

 

「そうね・・・・・・本当に度し難い」

 

「どんな君の罵倒でも受け入れる。だから俺は君に頼みがある」

 

「頼み?なに?」

 

「ここへ来たのはそのため。君もそのために来ているはず」

 

「なんのこと?ジークは何を言っているの?」

 

 

ここへ来たのは謝罪だけじゃない。ある望みがあって彼女の所へやってきた

 

むしろ彼女もそのためにここへ来たに違いない。俺が姉上の言うことを聞かなかった。そんな俺を彼女は許さないはず、今の俺は彼女に何をされてもいいと、彼女のすることを受け入れたい

 

 

俺がそんな彼女に望むのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今背に隠しているナイフで、俺をどこでも刺してくれ」

 

 

「・・・・・・・・・やっぱり、ジークはわかるんだね?」

 

 

今彼女の背中に隠し持っているナイフで、俺を刺して、裁きを下して欲しいと願う

 

 

なぜ彼女がそんな物を持っているのか、それは俺が姉上の期待を裏切ったから、そして姉上の想いにも答えず、目の前に居る本物のシルの想いにも答えなかった

 

 

本当に俺は何がしたいのかもわからないほど、姉上や彼女までも振り回した。結局答えるはずの返事も出さないまま誑かした

 

そんな俺を殺そうと彼女は今、背にナイフを隠し持っている。隙を見せて殺す気だ

 

 

「ああ、俺を好きなようにそれで刺してくれ。俺は君に裁きが欲しいんだ」

 

「それ本気で言っているの?」

 

「君の想いに応えられなくても、嘘は付くわけないって、君ならわかるだろう?」

 

「あのお方はどうしたの?」

 

「置いてきた。姉上は姉でしかない。今の俺は」

 

「ジークは卑怯ね。そうやって貴方に好きな人をそんな風に人の気持ちも知らないで振り回して何も答えずに誑かすんだから、いくら心が無いからって限度くらいあるでしょ?」

 

「そうだな、でももうそれくらい俺は壊れている。だから・・・・・・」

 

 

 

バシン!!!!!

 

 

 

「ぬ!?・・・・・・・っ!?」

 

 

「はあ・・・・はあ・・・・・はあ・・・」

 

 

俺は彼女に頬を叩かれた。そして俺を叩いたシルは泣いていた

 

 

そんなことを言って欲しかったんじゃなかった。謝罪でも懺悔でもなければ、罰して欲しいわけでもなく、彼女が俺に言って欲しい言葉、それは愛の告白の返事じゃなかった

 

 

 

 

 

 

 

シルの気持ちを理解してあげることだった

 

 

 

 

 

 

それさえあればよかった。愛の告白に返事できなくても、彼女の気持ちを理解してくれれば。それだけでよかった

 

なぜならナイフを持っていても、彼女が俺を傷つけることなんてできないって、俺はわかっていたんだ

 

なのに、彼女の気も知らないで、自分のことしか自分を傷つけることしか考えてない俺に、少しは彼女の気持ちを理解して欲しいと頬を叩かれた。

 

 

「私はわかっているわよ!ジークがどんどん心が無くなることくらい、もう私に愛な言葉も出して貰えないことも!それでもできるだけ私のために気持ちを理解して欲しかった!」

 

「それは・・・・・」

 

「私がそんなこともできないことも知っているでしょ!どうしてこんな時ばかり貴方はわかってくれないの!」

 

「シル・・・・・・・・」

 

「私は今回ばかりはジークを恨むわ!こんな時ばかり自分の答えが出せないからと、私に刺されるためにここに来るなんて、そんなことをできるわけないでしょ!確かに私はあのお方の想いに答えなかったジークを殺そうと考えた。でも私だってジークに思いがあるからそんなことできるわけがない!少し考えればわかるでしょう!」

 

「・・・・・・そうだったな、君はそんなことをしないよな」

 

「本当に最低!あのお方も、ジークも、私の気持ち考えてくれない!!」

 

「ああ、俺と姉上の唯一姉弟として似ている部分だろうな」

 

 

彼女が欲しかった言葉は一つだけ、愛なんて言葉が出せないことくらいわかっていた。だからそれ以外の言葉が欲しかった

 

彼女が欲しい言葉は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

君を愛せないけど、大事な人だ。だから君は俺の側に居てくれ

 

 

 

 

 

 

 

それだけで良かったんだ。愛なんて無くてもいいから、必要として欲しかった。彼女が俺を殺すためにここへ来たのではない。確かに姉上の眷属でもある彼女は主のことを一番に考えていた。主を選ばなかった俺を殺すつもりでナイフを持っていた。でもやはり俺を目の前にして俺に手を掛けることはできなかった。だからせめて彼女望む言葉を俺から欲しかったが

 

 

結局、俺からは何も答えられないまま

 

 

ただ彼女がゆっくりナイフをその場に落として。瞳から涙を眺めることしかできなかった。

 

 

 

俺が回避したかった結末を、俺は作ってしまった

 

 

 

 

 

 

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