ニーベルンゲン・シックザール〜竜殺しの英雄譚〜   作:ソール

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再び、豊穣の女主人で働く

 

 

「それじゃあ、あとは頼むわね」

 

「夕方に戻る。ヘディンは俺から仕事を頼んでいるため、しばらくは不在だ。ヘイズ。ホームの事は頼んだぞ」

 

「行ってきます・・・・」

 

「はい。お任せください」

 

「アルフリッグ達もヘグニも頼んだぞ」

 

「「「「ああ、わかった」」」」

 

「ホームの留守はお任せくださいませ・・・・・・・」

 

 

「行くぞ、二人とも」

 

「ええ」

 

「はい」

 

 

俺と姉上とヘルンはミアの酒場に向かう。ミアには事前に伝えてあるため、姉上は新人として入らせると、姉上はいつも通りシルとして仕事をする。俺とヘルンは変装をせずにそのままシルの友人として、フレイヤ・ファミリアから派遣して来たと、臨時で店員を務めると店員達に説明してある。姉上が魅了で皆の記憶をリセットしたため、シルが今まで働いていた記憶は店員達にはない。アーニャとミア以外は

 

ミアが色々手を回してくれるようで、いつも通り仕事ができる

 

 

「ジーク。ヘディンに仕事を頼んだみたいだけど、何を頼んだの?」

 

「まだ姉上の魅了されてない者が、ダンジョンに居ると通達があった。しばらくダンジョンに出せないようにしろと、ヘディンにダンジョンへ向かわせ、少し荒らして来いと頼んだ。しばらくは戻らない」

 

「あの女神祭に参加してなかったのが居るのね」

 

「ロキ・ファミリアもそうだ。あのハイエルフのリヴェリアが率いる。エルフの部隊だ」

 

「お兄様の里の王族のエルフね。そうね。しばらくヘディンには足止めをして貰おうかしら、でもヘディン一人に頼んで大丈夫なの?」

 

「問題ない。あいつは強いからな、もしもしくじったなら、俺が向かう。今は姉上の計画通りに動きたい理由が俺にもあるのでな」

 

「そう、貴方が私のために動いてくれて嬉しいわ」

 

「どうしても俺も理由があるからな。そろそろシルの姿に」

 

「ええ、わかったわ」

 

「・・・・・・・・」

 

 

ヘディンに何を頼んだかを聞かれ、本当はベルを強化するようオラリオに出ているが、ダンジョンに潜って姉上の魅了を避けた者を少し片付けて来いと言う嘘を言った。無論神の力を無効できるレアスキル持ちで、姉上でも俺の嘘は見抜けない。しかし、ヘルンには気づかれているようだ。流石に彼女は俺の嘘に気づいていた。だが何も言わない。なぜなのかはわからないが

 

とにかく、酒場に着く前に姉上はシルに変身する。

 

姉上の姿で酒場で行けばフレイヤ・ファミリアの主神が居ると大騒ぎになる。姉上が変えたオライオでも、フレイヤ・ファミリアは上級派閥で皆に恐れらている。主神が居るなら尚更だ。だから大騒ぎにならないために姉上の姿を隠し、シルに変身して酒場に向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日から働きます。シル・フローヴァと言います。よろしくお願いします」

 

「フレイヤ・ファミリア所属。ジーク・フリードだ。姉上の指示で彼女の付き添いを頼まれた。調理を担当する。よろしく頼む」

 

「同じく所属のヘルンです、私もフレイヤ様の指示でシル様の付き添いをしています。接待をしますので、よろしくお願いします」

 

 

「今日から三人新人が入る、ジークは誰でも知っているから問題ないと思うが、私と一緒に調理する。それ以外の二人は接待をさせるから、皆仲良くするようにするんだよ」

 

 

「嘘。あのフレイヤ・ファミリアの英雄がここで働くの?」

 

「それ以外は知らないけど、フレイヤ・ファミリアが店員を派遣してくるなんて、しかもあの主神フレイヤの婚約者をなんて」

 

「英雄ヘラクレス、すっごいかっこいい。近くで見られるなんて思いもしなかった」

 

「でもあの銀髪の子。物凄くこっちを睨んでいるんだけど、あと単眼隠れている隣に居る人も」

 

 

「はいはい、なんだっていいから早く仕事をしな。ジーク。あんたは私一緒に仕込みさ、これからの客に備えるよ」

 

「了解した」

 

「・・・・・・・・」

 

 

ミアの酒場の店員に俺たち三人の紹介をし、早速仕事に入る。今までも何度かここで働いていたのに、俺とシルの姿を見ても、初めて見るように驚く。しかもそこにクロエとルノアも居た。もちろんアーニャも居る。アーニャはもちろんおかしいと思っている、ルノアとクロエは魅了されているため、記憶がリセットされて俺たちと今まで過ごした記憶がないため、ただ英雄がここに働きに来ていることに驚いているだけだった

 

残念ながらここで詰まったシルの思い出が何一つ無く、姉上に消された変な空気をした酒場で働く他なかった。

 

もちろんこの状況の異常さに、アーニャは俺に聞いてくる

 

 

「ジーク。ジークはシルを知っているにゃ?・・・・・・・・・」

 

「ああ、俺は覚えているさ、俺は姉上の魅了は通用しないからな」

 

「っ!?よかったにゃ。ジークだけでも覚えてて、じゃああのシルは、本当にジークが言うように・・・あれって」

 

「姉上だ。お前もこの状況を見ればわかるが、姉上が魅了を使ってオラリオの常識を変えて、このオラリオでシルが過ごした記憶は全て全員消されている。お前含む数人の記憶はシルと言う存在はあるが、それ以外の者にはない」

 

「クロエもルノアも覚えてないなんて、フレイヤ様の魅了ってこんなに凄いのかにゃ?」

 

「ああ、オラリオ全体まで魅了できるのは、姉上が美の女神としてできる実力だろうな」

 

「まだこの状況で悩んでいるのかい?今はジークにそんなことを聞いてないで、あんたもさっさと仕事しな」

 

「は、はいにゃ・・・・・」

 

 

アーニャは俺が姉上に魅了されてないか、シルを覚えているのか確認をしてきた。無論俺はちゃんと覚えていると答え、シルも忘れてないと言った

 

それを聞いてシルを覚えていることに安心するが、この状況はアーニャにとっても居心地が悪い。それはシルの正体がフレイヤと言うアーニャの主神だったこと。今正体を知った上で、その上で一緒に仕事をするなんて、かなりアーニャ本人としては気まづい。しかし、この状況を変えることも何もできない。ミアの言う通り、このまま働くしかない。シルが今まで店員として働いていたが、もうその記憶は無く、シルは新しく新人としてこのままアーニャは渋々ミアに言われるがまま働くことに

 

 

「あんたはいつかこうなることをわかっていたのか?」

 

「あの女神が前に言い出した。私はその女神の契約の関係で、この変わり果てたオラリオに何も手出しはできないのさ。正直ウチの娘たちに手を出したあいつらをぶちのめしてやりたいが、今はこっちが手一杯でね。しかもあの女神が居てはね」

 

「急に姉上を店員に迎え入れて欲しいと頼んで悪かった。姉上は主神なんかよりも、こっちで仕事をさせた方が、姉上としてはこっちの方が似合う上に楽しそうだと思ったからだ」

 

「だけど、あの女神がオラリオを書き換えたことで、あのいつものような雰囲気じゃあないけどね」

 

「俺がシルの正体を先に教えたのもある。しかもルノアとクロエの記憶も弄られている。そのせいでアーニャが気まづそうだ」

 

 

ミアは姉上からとある契約をしているらしく、今の状況を反撃することができないらしい。なんの契約かは聞いてないが、とにかくミアは今の姉上の計画を打破することはできないらしい

 

そんな計画の中で、酒場でいつものように働いているが、リューが不在な上に、クロエとルノアが一部記憶がない。アーニャは全部知っているが、俺とミアしか覚えてなく、シルと言う存在が今までなかったような、なんとも気持ち悪さを感じるような気まづい雰囲気になっていた

 

 

このままでは良くないなと俺は判断する

 

 

「ミア。少し失礼する」

 

「ん?何をする気だい?ジーク」

 

「ちょっとな、クロエ、ルノア。ちょっと来てくれ?」

 

「え?う、うん」

 

「フレイヤ・ファミリアの英雄がなんだにゃ?」

 

「失礼する」

 

「ん?」

 

「え?なに?」

 

「っ!ジーク?なにをする気?」

 

 

持ち場を一旦離れて、俺はクロエとルノアを呼ぶ。姉上はこれは反対していたことだが、それでも俺はクロエとルノアを正気に戻す。突然俺はルノアとクロエの肩に手を置く。その行動にシルに見つかり、何をするのかと注意される

 

だが、もう手遅れ

 

 

「ゴット・シェアシュテールング」

 

 

「ぐう!?」

 

「にゃあ!?」

 

 

俺は二人の肩に俺の体から流れる黒い雷を全身に浴びる。神の力を無効化レアスキル。クロエとルノアに掛けられた姉上の魅了を解除する。俺の黒い雷を浴びた二人は

 

 

「うう・・・・・あれ?私はなにをして?」

 

「ここは・・・酒場?そういえばウチらはあの後フレイヤ・ファミリアに襲われて・・・」

 

「正気に戻ったか?二人とも?」

 

「あれ?ジーク?私たちなんでここで働いて・・・」

 

「ミャーたちはフレイヤ・ファミリアに返り討ちにあって、倒れてたはずじゃあ・・・・・」

 

「そのあとは・・・・あ!シルは!?ジーク!?」

 

「ここに居るだろう?中身は無論姉上だ」

 

「ジーク。二人を正気に戻すなんて、なんの真似よ?」

 

「戻してはダメとは言ってないだろう。持ち場に戻る」

 

「あ!逃げないでよ!」

 

 

ルノアとクロエは正気に戻った

 

俺のレアスキルで姉上に掛けられた魅了を無効化し、ルノアとクロエは無事に正気に記憶を元に戻す。記憶としてはアルフリッグ達にやられて後の記憶は曖昧だが、しっかりとシルの正体が姉上であることは覚えているようだ

 

俺は姉上の思惑を無視して魅了を解除した、友人に魅了を掛ける理由がわからないため勝手に解除した。例えルノアとクロエが俺を欲しがっていると言っても、友人を魅了を掛ける理由はないだろうと、勝手に解除した。勝手な行動をした俺に怒ろうとシルが俺に迫る前に、ルノアとクロエが

 

 

「ちょっと!シル!あんたがあのフレイヤって本当なの!」

 

「どういうことか説明するにゃ!」

 

「そ、そうよ。私はフレイヤよ。それが何?」

 

「証言したにゃ!?隠すことなく!?」

 

「何もないわよ。あんた私に魅了をかけてなんの真似よ!」

 

「ジークに近づかせたくないために、魅了をかけたの。それが何か問題でもあるの?」

 

「そんなことで私たちに魅了をしたの!?フレイヤって貪欲な女神って聞いたけど、その通りだったわね!」

 

「問題大アリにゃ!勝手に人の記憶を弄るなんて、ウチらを遠ざけるためとはいえ、これはやり過ぎにゃ!」

 

「ジークに近づかなければいいのよ!ルノアとクロエが!」

 

「は!?逆ギレ!?あんた正体を露わにすると、そんな性格なのね!」

 

「そういう考え!女神らしいにゃ!これが今まで私らと連んでいたシルだなんて、思わなかったにゃ!!」

 

 

 

「うるさいよ!!!」

 

 

「「「ひ!?」」」

 

「口喧嘩するくらいなら、食材の買い出しに行ってきな!シルあんたもだよ!」

 

「私も!?」

 

「そうさ!あんたがあの女神だろうと、ここでは私が法だ!早く行きな!」

 

「「「は、はいいいいい!!!」」」

 

 

ミアはあまりの口喧嘩に我慢ができないのか、口喧嘩するシルとルノアとクロエに、罰として食材の買い出しを強制する。さすがの姉上でも、酒場の権限はミアにあるため逆えず、言う通りに三人は買い出しに酒場を出ていく。

 

姉上の文句は後で聞くとしよう。まずはアーニャのためには必要なことなんでな。姉上には悪いが

 

 

「アーニャ。二人を戻してやった。少しはこれで気まずくならないぞ」

 

「ありがとうにゃジーク。だけど、あのシルの正体は・・・・フレイヤ様」

 

「そうだ。話しても問題ないさ、シルであることは変わりないからな」

 

「それって、今までウチと過ごしたシルと同じにゃ?」

 

「そうだ。ただお前としては相手があの姉上だから気まづいから上手く話せないだけだろ?ファミリアをいきなりクビにした主神だから?」

 

「ま、まあ・・・・そうにゃ」

 

「聞いてみるといい。本人に聞けばわかるさ。今回酒場で働くのは、姉上の本心を知って貰うためだ」

 

「フレイヤ様の?」

 

「ああ、とにかく今は働け。でないとミアに怒られるぞ」

 

「わ、わかったにゃ」

 

 

姉上の本心を話すために、酒場で働くのもそうだが、アーニャのためでもある

 

そのためにルノアとクロエの正気を戻した。友人に魅了を掛ける必要はない。そこまで姉上の都合で動いても良い結果に繋がらない。本心を言いたいのならルノアとクロエを正気に戻さねば。無論姉上が望んでないことをしたのだから、後で説教を喰らう覚悟でだ

 

 

「ジーク。そんな真似ができるとは驚きだけど、あの女神に対してよくそんなことができるものだね」

 

「俺は姉上の婚約者だ。そこに上も下もない。だから姉上の言う事ばかりだけ聞いて動くつもりはない。それに二人は姉上の友人だ。俺が取られそうになっても、友人に嘘をつくのと変わりないくらい無駄なことだ。姉上のためにもならんしな」

 

「その女神を姉扱いして、よく婚約者を名乗れるね?」

 

「それは俺が未だに姉上と婚姻する気がない証拠だ」

 

「そうかい・・・・じゃあその婚姻の話を・・あの娘にも言ったらどうだい?」

 

「ヘルンか・・・・あんたも女なのかそういう話がわかるんだな?・・・それは・・・・・言えたらいいなと思っている」

 

「言えたらね・・・・・あんた。あの子も私の娘みたいなものだ。泣かしたら承知しないよ」

 

「そうなったら、自殺してやる。俺も苦しい話だからな」

 

「あんた。感情がない割にはあの子には随分と執着しているんだね」

 

「そうだな、彼女に対しての執着は確かにある。それを彼女に想いを伝えれば苦労はしないんだがな」

 

「言うだけが恥ずかしいのかい?男らしくないね」

 

「その言い方、俺の母そっくりだ。だがその言葉は正しい」

 

「じゃあ何か言おうとか思わないのかい?」

 

「今は・・・・何も言えない・・・・・・」

 

「そうかい、だってさ?」

 

「そうですか、私からも何も無いです」

 

「本当に?言わないと後悔するかもしれないよ?」

 

「それでも、今のジークの心は壊れていますので、何を言っても無駄です」

 

 

酒場の店員達の母であるミアは、俺とヘルンを普段よく見ているのか、俺とヘルンの今の事情も把握していて今の関係がどれだけ不仲と見れるのがわかるようだ

 

それでヘルンのために何かを言ってあげるべきだと言われるが、それでも俺は何も言えない。彼女に執着する部分があっても、それを口にすることがレアスキルで封じられているため、何も言えない、口に出さなくても想いがあるにしても、言葉にして欲しいのに何も言えないのは。本当に随分と俺は最悪な男になったなと自覚をする

 

ヘルンも、今の俺の心情をわかっているからなのか、何を言っても無駄なほど、無心に近い感情の無さに何を追求しても無駄だと、全ての原因は俺にあるため、俺もヘルンも何一つ会話はしないまま

 

酒場での仕事を全うする

 

 

何も言わないのは、俺にも『理由』があるからだが、彼女は気づいてくれるだろうかと、俺が何も言わない理由に気づいて欲しいと願う

 

 

 

 

 

 

 

 

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