ニーベルンゲン・シックザール〜竜殺しの英雄譚〜   作:ソール

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魅了に抗う者

 

 

ミアの命令で、デメテル・ファミリアの出店に向かい、野菜を買い出すよう指示される。ミアの言う通りに、俺はペルセフォネの気配を感じ取り、彼女が居ると思われる出店に向かう

 

 

が、一人ではない

 

 

「姉上。酒場で別の仕事があったと思うはずだが?」

 

「ミア母さんに頼んで、私も手伝いたいとお願いしたわ」

 

「そうか、一応聞くが、どうしてだ?野菜の買い出しなんて俺一人で十分だと思うが?」

 

「私がついて来ちゃダメなの?」

 

「そうではない。だが気になるんだ。なぜ?」

 

「もちろん、ジークがこれ以上変なことをしないために、見張っているだけだよ」

 

「もう魅了を解除することはない、もう何もしない。これ以上はな」

 

 

姉上が付いてきた

 

俺を一人にするつもりはなく、酒場の買い出しですら、姉上が俺の行動先に付いてくる、理由はこれ以上俺が変なことをしないためだ。余程俺が何をしでかすか、自分の眼で監視をしなきゃ気が済まないようだ。

 

本当にもうこれ以上は何もしないのだがな、もう俺に信用できないのだろうな、そんな男を結婚したいだなんて、本当に意味のないことをする姉上だ

 

仮にデメテル・ファミリアの人々を魅了から解除しても、力にはなれない。ペルセフォネたちは商業派閥。一般人と変わりない。そんな派閥が仮に姉上に魅了をされて記憶が塗り替えて行動されていたにしても、力がないペルセフォネ 達では魅了を解除しても力にはなってくれないだろう。俺としても、ペルセフォネ達に危険なことをして欲しくはない

 

 

本当に、今俺がペルセフォネの所に行くのは、どうなっているのか確認のためた

 

 

 

 

 

そんなことを話していると、俺と姉上はペルセフォネが接待している出店に着く

 

果たして、姉上に魅了されたペルセフォネはどんな感じか

 

 

「ペルセフォネ。野菜を貰えるか?」

 

 

「はーい。って・・・え!?英雄ヘラクレス!?」

 

 

「やはり覚えていないか、姉上?まさかエイナもそうだったが、ペルセフォネも」

 

「ええ、あの受付嬢と同じで、貴方と過ごした記憶は全部消したわ。あの受付嬢とこの子の関係は恋人と変わりない関係だったから、ヤキモチ焼いて記憶を消したわ」

 

「またそんな嫉妬を」

 

 

ペルセフォネは、俺の予想通り俺との関係は無くなっている記憶として魅了されていた

 

姉上は俺を恋人にしたい女性は記憶の改善ではなく、俺との関係の記憶そのものを消す魅了をかけていた

 

エイナもそうだったが、少しでも俺に好意に想う女は目障りなのか、俺との関係は一切記憶はなく、ペルセフォネも俺のことなど覚えてはおらず、初めて会う対応される

 

 

本当に欲張りな姉だ。俺と結婚のために、それ以外の俺を想う女の関係を魅了で消すとは、貪欲と言っても良いほどだ

 

 

だが、言った通り魅了を解除する気はない。酒場の買い出しに来たため、目的を果たす

 

 

「野菜各種を貰いたい。リストに書いてある。これを頼む」

 

「あ、はい。ではご用意します。少々お待ちください」

 

 

「おい、英雄が居るぞ?」

「嘘、英雄が酒場の制服着ている!?最近英雄があの豊穣の女主人で働いているって話は本当だったのね」

「あれがフレイヤ・ファミリアの英雄か、マジでまだ子供なんだな」

「あれが神フレイヤの婚約者か、めっちゃイケメンじゃねえか」

「これがあの女神の夫かよ」

「結婚おめでとう。ジーク・フリード」

 

 

「まあ、みんな私とジークの結婚を祝福しているよ?」

 

「そう言わせるように姉上が思考を弄ったからだろう。それとその姿でだと、皆に誤解を受けるぞ?」

 

 

デメテル・ファミリアの団員に婚姻の祝福を受ける

 

婚約者とは言っても、所詮は姉上が魅了をしてそうなっただけの関係だ。全然嬉しくない。まるで姉上に言わせているようなもの。それで喜ぶ姉上もどうかと思うが、今はシルの姿をしている。あまり素を出すと正体がバレると注意する

 

婚姻を祝福されている間に、ペルセフォネがリストに書いてあった野菜を持ってきてくれた

 

 

「お待たせしました。リストに書いてあった野菜はこれで全部です。合っていますか?」

 

「確認する・・・・・・ああ、これで全部だ。金を渡す」

 

「確かに、お買い上げありがとうございます。またのお越しをお待ちしています。英雄様。ご結婚もおめでとうございます」

 

「ああ、これで失礼する。行くぞシル」

 

「うん、それではペルセフォネさん。失礼します」

 

 

そうして、俺は野菜が入っている紙袋を手にして、酒場に戻ろうとする。目的も果たしたため、金を渡して長話をすることなく、まっすぐ酒場に戻る

 

 

 

すると

 

 

 

 

ガシ!!!!!

 

 

「っ!ペルセフォネさん!?」

 

「・・・・・・・ペルセフォネ?俺の手を掴んでどうした?」

 

 

 

「あれ・・・・なんで私・・・・英雄様の手を取ったりして・・・・・・」

 

 

エイナと同じく、ペルセフォネも俺が野菜の入った紙袋を取ろうとした手を掴んだ。

 

やはり記憶では俺との関係はないけど、心だけは抗いがあるのか、俺のことを忘れることなく、俺と離れることを拒むように、彼女は俺の手を取った

 

その証拠に彼女の眼から涙が流れている。姉上の魅了に若干ではあるが、抗える人間がエイナ以外にも居ようとはな

 

 

「ペルセフォネ。食材を買う時はここに来る。だからまた会えるから、今は手を離してほしい。また来れば問題ない」

 

「あ、はい。どうしてかはわからないですけど、またご利用・・・・・・いいえ、また貴方に会えるのなら」

 

「ああ、また来る。行くぞシル」

 

「え、ええ」

 

 

また来ると言って、ペルセフォネの手を離して貰う。また会えるのならと、彼女は俺の手を離してくれた

 

ペルセフォネは魅了をされていても、意志は本当は俺のことなど忘れていなかった。俺に想いがあるからこそなのだろうか、エイナと同様にペルセフォネも俺のことを忘れているわけではなかった

 

 

だが、姉上は不満だ

 

 

姉上は俺の近寄る女を消すために魅了をした。ところが、まさかの魅了をしきれていない、俺に接触すると言う行動に出た

 

また会えるなんて俺は言ったが、別の女に会いに行こうとする俺にも不満でいっぱいだ。言うならこれから夫婦になるのに、その夫が別の女のところに行くような不快だ

 

姉上がどんどん不機嫌になる

 

アーニャ達にも罵倒され、エイナとペルセフォネの関係も魅了をしても中々絶えず。心無くても俺が欲しいとは言ったが、全然俺に愛して貰えないこと。

 

魅了でオラリオを変えても、自分の手に入れたいものは何一つ手に入らない。姉上の都合の良い状況や環境にしても、ほぼ意味ない形になってしまう

 

姉上の望みは何一つ。叶うことはなかった

 

 

「随分と、ご機嫌斜めだな?」

 

「当然よ、どうしてよ。魅了をしたはずなのに。なんであんなことを・・・・」

 

「想いがあるから、あんな行動に出たんじゃないのか?魅了でも消せないものがあるのだと、思い知らされた」

 

「それは私もよ。あの子は冒険者でもないのに」

 

「そこは関係ないんじゃないのか?本当に想いで姉上の魅了に少し逆らっただけだ」

 

「だから気に食わないわ、私は」

 

「別に正気を戻したわけではない、気にする必要はないだろう」

 

「それでも私は気にするわ、このまま少しづつ正気を戻すんじゃないかと」

 

「戻すも何も、どうせまた魅了をするんだろ?心配する必要はないだろう」

 

 

姉上はペルセフォネが正気を戻したことに不快だ

 

別に正気を完全に戻したわけではないのに、予想だにしない行動を取ったことで、徐々に正気を戻すのではないのかと、恐れているらしい。余程自分の魅了に自信があったのだろう。それがまさかそれを打ち破るような、俺に近づくことをしないはずが、こうも簡単に俺の手を取ると言う、まだ彼女には俺への想いがあるのだと。一番姉上がして欲しくない事をしてきたのだ。姉上は何度俺に気にする必要ないと言われても、不満だ

 

どうせ、正気に戻したらまた魅了をするんだ。心配するだけ無駄だと。不快に思う理由がわからないな

 

 

そんなことを考えていると、今酒場に戻ろうとする矢先で

 

 

「っ!・・・・・・アイズ、ティオナ、ティオネ」

 

「っ!?ロキ・ファミリアの皆さん!?」

 

 

「ジーク・・・・・」

 

「あ!ジークだ!」

 

「まさか・・・・こんなところであんたに会うなんて、あんたが最近酒場で働いているって聞いたけど、本当だったのね」

 

 

アイズ、ティオナ、ティオネと言う。ロキ・ファミリアの幹部に出会う

 

当然、姉上の魅了に掛かっている。瞳を見て、姉上の魅了にかかるピンク色の光をしている。だから関係としてはどうなっているか気になる。ティオネの今の言葉を聞けば、少なくとも俺との関係は、ロキ・ファミリアとしては最悪なはず

 

ロキが魅了されていた時でさえ、俺に余所余所しさがあった。少なくとも良好な関係ではないはず

 

果たして

 

 

「ジーク。あの神フレイヤと婚姻するんだよね。その・・・・・おめでとう」

 

「ああ」

 

「ジークは英雄だしね。あの女神様と結婚してもおかしないよね」

 

「姉上の望みだけどな」

 

「へえ、私らのところをやめて、二年後に私らの宿敵の所に入って、活躍して大英雄になって、その主神と結婚して、良いご身分ね」

 

「すべきを事をしたら、こうなっただけだ」

 

 

やはりこんな良好な関係にはなっていないとわかっていた。ティオナとアイズは気まずい関係。ティオネは相変わらずの険悪

 

二年ぶりにここに戻ってから、久しくロキ・ファミリアに会う時を思い出す。三人の魅了された記憶としては、まだ俺は嘘つき冒険者として呼ばれるような、ロキ・ファミリアの裏切り者としての扱いの近さ、その後にフレイヤ・ファミリアに入団して数々の試練を乗り越えて英雄となった経緯にされ、ロキ・ファミリアを裏切って、宿敵であるフレイヤ・ファミリアに入って英雄となったことで、より険悪な関係となっていることにされている

 

やっとあいつらと少しマシな関係になったのに、姉上の魅了のせいでまた悪い関係に戻ってしまった。まあ、別の派閥に入団して、そこで活躍して英雄まで上り詰めるとなると、裏切り者のすることに近く、関係としては歪になるのも仕方がない

 

今も敵対関係であるなら、当然襲われてもおかしくはない。だけどそれでも襲ってこないのは、フィンがなんとかフレイヤ・ファミリアに接触しないよう指示しているのだろう。厄介ごとを引き起こすなんて、あのフィンがするはずがないからな

 

むしろ厄介なことをしているのは、こちらだと言うのにな

 

今は無視するくらいでいいだろう。変に争い事を起こしても困る。ここは酒場の仕事を優先する

 

 

「失礼する。今は酒場の仕事をしているんだ」

 

「あんたが、派閥の仕事以外をするなんてね、酒場の仕事を英雄がしているって聞いたけど、なんの真似でそんなことをしているわけ?」

 

「お前には関係ないだろ。たまにはこう言う普通の仕事をするのも良いなと思っただけだ。日常を味わう為に」

 

「まったく、あんたはより性格が悪くなったわね」

 

「もう話す気はない。あまり接触すると、フィンにドヤされるぞ?」

 

「言われなくてもわかっているわよ、あんたらと関わらないようにしろって、団長に言われているしね、英雄を敵に回したら街の人々に嫌われるしね、ティオナ、アイズ、行こう」

 

「え、でも・・・・・話すくらいなら」

 

「もうこいつはロキ・ファミリアの敵よ。簡単な相手じゃない。接触するととんでもないことになるわよ」

 

「う、うん」

 

「・・・・・・・」

 

「アイズ?」

 

 

「ん?なんだ?」

 

「アイズさん?」

 

 

俺と接触しないよう、俺たちフレイヤ・ファミリアに関わらないようにしろと、フィンに言われていると、今は派閥のルールに従うべきだと、無駄な争いをするべきでないと言う

 

ティオネもそこはわかっているらしく、派閥闘争をする必要ないと、俺たちの接触は避ける

 

そうして、ティオネはティオナとアイズを連れて、どこかへ行こうするが

 

 

 

アイズがなぜか、俺の前に立つ

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

ギュ!!!!!

 

 

「っ!どうした?アイズ?」

 

「アイズさん!?」

 

 

 

「ごめん、どうしても・・・・・・・・・・・『離れたくない』」

 

 

 

「アイズ!?何をしているのさ!?」

 

「アイズ!あんた何をやっているの!」

 

 

「お前・・・・・・まさか・・・・」

 

 

アイズは俺に抱きついた

 

そして離れたくないと言った。間違いない。アイズはただの人間の子ではなく、精霊と人間の子供であることは知っている。その母であるアリアは風の精霊の中でも特別。俺の召喚精霊である『ウンディーネ・ヘッド』『サラマンダー・ヘッド』『ノーム・ヘッド』を並ぶ最上級精霊だ。四大精霊の一種としてふさわしい存在。その血を持つ子供であるアイズが、精霊の血を受け継いだだけの彼女が

 

 

姉上の魅了を、若干ではあるが弾き返している

 

 

まさか、精霊の子供が神の魅了を弾き返しつつあるなんて、アイズも成長をしているんだな、ベルといい、レフィーヤといい、そしてアイズ。ここまで俺の後を追う者達が居るとはな、この先が楽しみだ。アイズも姉上の魅了を若干ではあるが争いを見せた。神に抗う者こそ、この時代に担うにふさわしい。俺の英雄神話も終わる時が近づいている。その時は、ベルが、レフィーヤが、アイズが・・・・

 

いや、なんにしても今は修正だ

 

 

「アイズ。また会える。だから今は離してくれ」

 

「いや・・・・・離れたくない」

 

「また会える。その時は、『彼女』も一緒にな」

 

「彼女・・・・・・お母さん?」

 

「っ!」

 

「ああ、そうだ。また会える。今は我慢してくれ。頼めるな?」

 

「うう・・・・・・・わかった」

 

「すまない。また会える。その時は美味しい飯でも用意する。今は我慢してくれ」

 

 

彼女は俺の頼みで離してくれた

 

また会うことはできる。その時はお母さんであるアリアも一緒だと、アリアが今の時代に復活したこともアイズは認識している、だとしたら姉上の魅了を無意識で抗っている。姉上の魅了はかなり強い、あのアフロディーテと並ぶ程に、まさか俺がアリアを復活させた本当の経緯まで覚えているなら、確実に姉上の魅了を覆すことができる。徐々にだが

 

 

「行こう。シル」

 

「う、うん」

 

 

「またね。ジーク」

 

 

「ああ、また会える」

 

 

姉上の魅了が完璧ではないことが発覚した

 

エイナ、ペルセフォネ、そしてアイズ。魅了に抗う下界の子供は俺やベルのようなレアスキル関係なしに、想いだけで抗うことができると

 

魅了でも、記憶を改善するだけ、心までは奪えないとわかった。姉上はその全てを狂わせるつもりだったのに、まさかの三人も反抗する者が現れた

 

姉上としては非常に

 

 

 

「く・・・・・・」

 

「姉上。爪を噛まない。女としてはしたないぞ?」

 

「だって、まさか私の魅了に抗うことができるだなんて」

 

「それだけ想いがあれば、魅了なんて通じないんだろう。魅了なんて思考を操る催眠でしかない。姉上も魅了でも、奪えないものある。人間を甘くみすぎたな、あんたは」

 

「別に私の魅了を弾く子が現れたのは別に良いのよ」

 

「では何が不満なんだ?」

 

「『あの子達』が魅了を弾いたことよ。ジークに近くづくあの三人だけは、なんとかしたかったのに」

 

「嫉妬で人を変えても、心をまでは支配できない。若干だから、今は何もしなくてもいいんじゃないか?」

 

 

不満だった

 

姉上はエイナは直接会ってないから何も言わないだろうが、ペルセフォネ、アイズの抗いようを見て、完璧に魅了をできなかったこと。最も理由は俺に恋をしている他の相手の魅了ができなかったこと。これで俺から彼女達を遠ざけることはできないことをわかって、シルの姿にも関わらず、不満いっぱいで爪を噛みだす

 

姉上でも我慢できずにイライラな顔を曝け出した

 

そんなに、俺を自身の物にしたいのか、我慢ができないようだ。人の心を無視して手に入れる価値でもないのに

 

 

「姉上。いつまでこのようなことをするつもりだ?」

 

「もちろんいつまでもよ。貴方が私のものになるまで」

 

「こんなくだらなくて色も無い。まるで偽物の都市。そんなことをして意味はないと思うが」

 

「意味なんて要らない。私は必要だからこんな都市にしたの。貴方を手に入れるために手段は選ばないわ」

 

「手段は選ばない・・・・・か」

 

 

姉上は俺を手にするためには、どんなこともすると発言した。それは何を敵に回してもと言う意味も入っているのだろうか、なら、俺を手にするのは簡単ではない。俺の意志で欲しいと思わない限りは

 

俺を選ぶにしても、厄介な条件もある

 

 

それは、姉上にとっても最大な事

 

 

「なら、俺の祖父上。『オーディン祖父上』にはなんて言うつもりだ?」

 

 

「オーディンには・・・・貴方から言ってくれればいいじゃない。私と結婚するから手は出さない欲しいって」

 

「俺の本当の意志でもない言葉に、祖父上が聞くと思うのか?俺は聞くとは思えない。こんなくだらないことをしたら、たちまち祖父上はオラリオを攻め込んででも、姉上の派閥を潰すはず。祖父上の敵にもなる気か?」

 

「ジーク。貴方は私の夫なのよ。私のためにオーディンに手を出さないよう言ってくれないの?」

 

「それがあんたのためになるはずがない。ハッキリ言わせて貰う。あんたはもう派閥の主神をやめるべきだ。酒場の店員をした方が楽しいぞ。俺と結婚するよりも」

 

「それは私の幸せじゃない。私の幸せは貴方と結婚することが幸せなの。それを叶えてくれないの?」

 

「俺は姉上と結婚することが俺の幸せとは思えない」

 

「それは貴方が私じゃなくて、『あの子』のことを愛しているからでしょ?」

 

「まあな、でも、俺は愛していると言いたいな」

 

 

俺の家族である爺さんにはなんて言うつもりだと聞く

 

爺さんに何も言わずに俺たちが結婚だなんて、認めるはずがない。もちろん俺の意志ではなく、誰かの強制で婚姻することになるのなら、尚更である

 

案外姉上も恐れているものがあるようだ。相手はあの爺さんだしな。あの戦争の神に喧嘩を売るのは、あのゼウスかヘラか俺の母と兄くらいだしな。姉上も流石にあのヴァルハラの大神には姉上でも手が出しづらいようだ

 

俺の家族でもあるしな。爺さんに何も言わずに婚姻するなど、普通にありえない

 

爺さんに知られないように、報告なしで婚姻しようとすれば最悪な場合もある

 

 

「祖父上に婚姻報告をせずに婚姻をすれば、たちまち爺さんが眷属を率いてここまで攻めてくる。千里眼を持っている祖父上に嘘など通用しない。遥か彼方の先でも祖父上は見ている。連絡してないからわからないが、少なくともこんなオラリオに変えた姉上のしたことを許すはずがないだろうな」

 

「迎え打つわ、あのオーディンの派閥だろうと。どんな眷属を率いても、私はジークを手放す気はない」

 

「ほう、そこまで言うとはな。まあ、ずっと俺を手にできるのならの話だが・・・・」

 

 

姉上は何があっても俺を手放すことはしない

 

オラリオは元に戻さないし、邪魔する者は誰であろうと蹴散らす。本当に俺を手にするために横暴や傲慢を貫き通そうとする

 

もはや姉上に何を言っても聞かない。このオラリオを変えない限りは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ヘスティアは

 

 

「もうそろそろかな、これを渡すのは」

 

 

ヘスティアは一人で珍しく行動をしていた。ヴェルフたちをホームを置いて、一人でオラリオの街を歩いていた。その理由はヘルメスにある物を大事に持っているからだ

 

それは手紙なのだが、そこに大事なことが書かれている。しかし、ヘスティアがそれを持っている理由は、ヘルメスがいつか自分も魅了して。その大事な紙を処分してしまうかもしれないと、ヘスティアに一度渡し、状況を見てからそれを渡すようにと言われている

 

そのタイミングを窺っているのだが、今かどうかは判断できない

 

でもこのままにしておきたくない。姉上が変えたオラリオでヘスティアは過ごしているが、ヴェルフ達は俺との過ごした記憶は全く無く。団長はベルになっている。俺が団長になった記憶は一切無く。ヘスティア・ファミリアの記憶から俺の存在も活動も全て失っている

 

そんな一人仲間を失った、異様な空気で彼女は過ごしている。ベルもフィルヴィスも外に行ったまま帰ってこない。自分の眷属がほとんど居ない中で、ヘルメスにどんなタイミングで渡せばいいのかわからない

 

その時

 

 

「なんや。こんな所で何をしているんや?どチビ?」

 

「ロキ!?なんで君がここに居るんだよ?僕は今は忙しいんだ。放っておいてくれ」

 

「あの色ボケ女神からどうやってジークを取り戻すのか、考えてるんか?」

 

「な!?ロキ!?君はジーク君が僕の眷属だと覚えているのかい!?フレイヤに魅了をされたはずじゃあ・・・・」

 

「そのジークが解いてくれたんや。レアスキルでな」

 

「ジーク君がロキの魅了を解除したのか」

 

「ウチもあの色ボケ女神が変えたこのオラリオを、元に戻したい。どチビの力を借りるのは癪やけど、ウチの甥っ子があの色ボケと結婚するなんて反対や。だからウチも力になる。全ては甥っ子のためや」

 

「助かるよ。僕も君の力を借りるのは癪だけど、ジーク君のために力を貸してくれ」

 

 

ロキがヘスティアの前に現れる

 

俺のおかげで姉上の魅了は解除済みで正気でいる。しかし、問題はこのオラリオだ。この偽りでしかないこの都市をなんとか戻したい。そして甥っ子である俺、姉上の手から解放して自由にさせること。叔母として俺を助けようと、できるなら力を借りたくないヘスティアに、今回ばかりは因縁のある彼女の力を借りることに

 

それはヘスティアも同じ、ヘスティアもロキの力を借りるのは抵抗がある。しかし一人で事を成すことはできない。ここはロキの力を、不本意でありながら力を借りる

 

 

「ロキ、そっちは何か対策はしてないのかい?」

 

「ウチのリヴェリアがエルフの部下を連れてダンジョンに行って、あるエルフ二人に連れ戻すために行って貰っている。それ以外は眷属はあの色ボケ女神に魅了をされて、あの色ボケ女神の派閥を攻撃するよう言われても、派閥戦争を起こすべきではないと、どうしてもリヴェリア達の帰りを待つしかない。ダンジョンに行ったリヴェリア達は魅了をされてないからな。そっちは?」

 

「僕の力なら、オラリオに居る全ての人々と神々に掛けられた魅了を解除することができる」

 

「ホンマか!?」

 

「そのために、ヘルメスからこの紙を一度本人に見せる必要があるんだけど、タイミングがあるようで、それを今見極めているんだ」

 

「どんな紙や?見せてみ?」

 

「うん」

 

 

ロキも対策は付けているが、ヘスティアはどうかと聞き、ヘルメスに一枚のメモ紙を用意してある。それを本人に渡すのだが、タイミングがあるらしく、どのタイミングに渡せばいいのか、状況を見ないとならないが、どんなことが書かれているのか、ロキも確認する

 

 

「なるほど、それならウチも行くで」

 

「どうしてロキが?」

 

「ウチも考えがあるんや、これを渡して、どチビが考案したその作戦を成功できるタイミングが」

 

「わかった、ロキに任せるよ。君の方が賢いしね」

 

 

ヘスティアもここはロキを信用して、ここの判断は彼女に任せる。ヘスティアとロキが組む時が来るなど、それだけ姉上が強力だということだろう、強敵を相手するには力を合わせて挑むしかない

 

果たして、因縁同士の二人がどう姉上に太刀打ちできるか、二人の行動次第である

 

 

 

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