ニーベルンゲン・シックザール〜竜殺しの英雄譚〜   作:ソール

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ジークの本当の心

 

 

買い出しから戻ってから、シルは接客に戻り、俺も調理室で食材の調理を始める

 

その前にミアにデメテル・ファミリアがどうだったか、感想を聞かれる

 

 

「どうだった?」

 

「姉上の魅了で、皆、俺のことなど綺麗に忘れていた。野菜は多少安くしてくれると思っていたようだが、皆、記憶がなく、今までとの関係はないから、安くはならなかった」

 

「だろうね。まったくあの馬鹿女神には困ったものだよ」

 

「何を言っても聞かないのも、ある意味姉上の面倒なところもある」

 

「たく、ジーク。あんたがなんとかしてくれないのかい?あの女神を変えたオラリオをなんとかできるんじゃない?」

 

「俺が?流石にできない。俺の力でもな。まあ、確かに、この姉上が変えたオラリオは俺も嫌いだな、過ごすにも何か生きている感じがしない」

 

「そう思うならなんとかしてくれないのかい?」

 

「俺は何もできない」

 

「したくない理由があるんじゃなくて?」

 

「まあな」

 

 

出店の安さを狙って、俺をデメテル・ファミリアに向かわせたが、残念ながらデメテル・ファミリアの関係は姉上の魅了によって消え、残念ながら友人経由で安くして貰えることはできずに、通常の値段で買うしかなかった

 

やはり外が異様にも環境として違い過ぎて、ミアもこんなオラリオは過ごすのは辛いと言う。現に変わったのは、俺の所属と姉上の婚約者であること、俺との関係者がほとんど消えたこと。くらいだけ

 

だけど、本当に俺でも流石になんともできない。魅了の解除は確かに可能。しかし方法は俺が魅了した者の体に触れねばならないこと。もう姉上が常に俺のそばに居て、もう行動にも制限があり、姉上の眼を盗んで魅了を解除することはもうできない。よってもう俺には何もできない

 

 

 

 

ミアにはわかっている。確かに俺は何もできないと言うのはそうだが、それとは別に、まだ姉上の派閥に居たい理由があるから何もしないと言うのもある

 

だから俺は何もしない、理由があるから

 

 

 

そんな話をしていると、いつの間にか昼になっていた

 

 

「ジーク。調理は私が一人でしばらくやるから、あんたは今の内に昼にしな」

 

「ああ、わかった。昼休憩を貰う」

 

「ヘルン!あんたもだ。あんたも行ってきな、ジークと一緒に」

 

「は、はい。わかりました」

 

「ミア母さん。私も昼休憩貰っていい?」

 

「あんたはダメだよ!シル!あんたは接客続けな。流石にもう一人を減らすことはできないね。あんたはまだ黙って働きな」

 

「な!?私はダメで、なんでヘルンはいいのさ!?」

 

「文句は言わせないよ!ここでは私が法!早く働きな!」

 

「うう!ジーク!変なことをしたらダメだからね!」

 

「俺が何かヘルンにすると思っているのか?お前は?」

 

「では、先に休憩行ってきます」

 

 

昼休憩していいと、俺とヘルン二人を先に行かせる。それに応じて姉上も昼休憩を貰おうとしたが、接待できる店員が減るのは困るからと、姉上の休憩の許可はミアに取れず、姉上はそのまま接客するようにと、休憩は取れなかった

 

姉上から変なことはしないよう言いつけられる。なぜか俺がヘルンに何かするのだと、怪しく見られるのだろうか

 

 

まあ、でもヘルンと一緒に居られるのはちょうどいい。そこはミアに感謝する。久しく二人で一緒に居られるのだからな

 

彼女とゆっくり昼休憩を過ごす

 

 

「君と二人になれるのは久しぶりだな」

 

「そうですね、ほとんど貴方はフレイヤ様と居ましたしね」

 

「婚約者だからな、仕方がないんだ。正直少しくらいは君と一緒に居られると思ったが、予想以上に姉上に付きまとわれて、君の近くには行けなかったよ」

 

「私と居たかったのですか?」

 

「ダメなのか?」

 

「いいえ、貴方がそうしたいのなら」

 

 

ヘルンは、姉上の付き人として、ほぼ姉上の側に居る。

 

本当なら俺はヘルンと一緒に居たいがために、姉上の派閥に入った。俺が姉上の命令に強引であろうと従って姉上の派閥に居るのは、もっとヘルンと話をするためと側に居たい理由だ

 

もっと彼女と話をしたい

 

ミアのおかげでなんとか姉上の側を離れて、ヘルンと共に居られるようになった。ミアの数少ない気遣いなんだろうが。それでも今はありがたい。二人で話したいことをある

 

 

「ヘルン。言っておくが俺は姉上と結婚する気はない。今俺の仲間が姉上が変えたこのオラリオを元に戻す方法を準備してくれている。そうすれば、姉上の派閥はオラリオに属する派閥全てが敵になる。姉上でもそれは苦戦するだろう」

 

「そんなことを私に言ってどうするのですか?私には関係ない話ですよ?」

 

「そうかもしれない。でも君に伝えたかった。俺の勝手な報告だ、気にしないでくれ」

 

「あのお方の婚姻を断って、派閥まで壊滅させようなど、やはり貴方は最低です」

 

「そうだな。君になら好きに言ってくれて構わない。でも不思議だな?」

 

「何がです?」

 

「今なら俺を殺すことができるのに、なんでしないんだ?」

 

「貴方はあのお方の婚約者です。そんな事をすれば、私はあのお方に命を捧げます」

 

「そんな事をするとは、姉上の想いを踏み躙り、なんでも拒んできた俺が、このまま姉上の思惑に乗るなんて真似はしない。君ならわかると思うけどな」

 

「なぜあのお方の婚姻を断るのです?あのお方から愛されることは名誉であるはず、そして貴方の姉でもあります。貴方の兄の妹と結婚すれば、良い家庭が気付けると、なぜあのお方の婚姻を断るのです?」

 

「何度でも言う俺にとって姉上は姉だ。妻としては愛していない。俺が愛したい妻は・・・・・・・・ダメだ。やっぱり口に出せない」

 

「貴方のその力はそんなにも、感情を素直にできないのですね」

 

「まったく、力を代償にした結果がこれとは笑えんな」

 

 

ヘルンに、姉上と結婚しない理由を問われ、俺にとって姉上は姉でしかないと、妻として見られないと、本人にも言っているが聞いてくれない。人の聞く気はないから別に気にしていないが

 

それに妻として愛したいのは・・・・やはり言えない。口にすらできないが本当に、伝わらないなんて酷いにも程がある

 

目の前で、彼女に伝えたかったのに、俺には何も言えないんだから、本当に彼女に殺してもらいたいくらいだ

 

でも

 

 

「君と食事をすると、二年前を思い出す」

 

「あの時はとても明るい性格していましたね。あのブレイバーよりも貴方は」

 

「母親譲りの性格だったからな、だからヤンチャでもあった」

 

「今思い返すと懐かしいですね」

 

「ああ、正直あの頃に戻れば、素直な言葉が言えるんだがな」

 

 

彼女と食事をしていると、二年前を思い出す。ロキ・ファミリア所属時代、まだ俺がヤンチャな性格をしていた時代、あの時は彼女の存在を知ってから、ロキ・ファミリアの仕事がない時は、いつも彼女に会うために酒場に来ていた

 

彼女と過ごす休日だけが、俺にとって良い休みだった。だからいつも会いに行った

 

ひつこい程に

 

 

『おーい!また会いに来たぜ!』

 

『いらっしゃい。今日も来てくれたんだね?ジーク』

 

『君と過ごすのは楽しいからな、昼休憩まだだろ?一緒に食おうぜ?飯は俺が奢る』

 

『別にいいのに、でも、私も一緒にジークと食べたい!』

 

 

まだ感情があった時代、ロキ・ファミリア時代の休日はいつも酒場で彼女と食事をすることだった。休みが入ったらいつも酒場に居る。たまに姉上が代わりに来ている時もあったが、なぜヘルンではなく。姉上なのかを聞きたいが、何か事情があると思って聞いたりはしなかった。

 

とにかく、二年前からヘルンとの付き合いがあった。今も二人だけで過ごせるのも数ヶ月ぶりだ。今だけが普通に過ごせている安心感がある。あの時のように笑えないけど、あの時みたいに二人で食事するのが一番安心すると言うか。一番充実しているなと感じるんだ

 

 

「君と食事をまたできるとは思いもしなかったな」

 

「あのお方抜きでですか?」

 

「ああ、姉上の侮辱に聞こえるか?」

 

「省くのはどうかとは思います。けど、私もジークとまた一緒にいられて嬉しいとは思います」

 

「そうか、俺もだ」

 

 

その証拠に、ヘルンも俺と食事を二人だけで過ごせることに楽しさを感じている

 

姉上を抜きに二人だけの食事も楽しい。それだと姉上が邪魔者みたいな扱いになるため、そこまで悪くは言いたくないが、それでも二人だけで過ごすのは楽しい。特に盛り上がる会話はしていない。それでもヘルンは俺と過ごす食事を楽しんでいる。とは言っても軽食でベーコンとソーセージとパン二つの、そんな多くない食事だがな

 

 

「やっぱり、こうでありたい」

 

「っ!やっぱりあのお方の願いを叶えてくれないんですね?」

 

「ああ、先に君にハッキリ言っておく、俺は姉上とは結婚しない。俺が愛したいのは別に居る。その女性を選ぶ。今まで選ばなかったが、今回で俺が妻を選ばなきゃならないなら。俺はもう自身の願いを叶えるために、姉上を救うためにも、この計画をこれから打破させて貰う」

 

「私が貴方の敵になってもですか?」

 

「その時は君が俺を殺せ。もう俺は覚悟は決まっている。今でも君は俺を殺せるのに、それをしないなんて、君にも俺に訳があるのか?こんなにも俺が近くにいるのに」

 

「それは・・・・・・」

 

「まあいいさ。いずれわかることだろうしな。俺がこの計画を打破する理由はそれだけではない。俺と姉上が結婚するだけで『ここが戦場になるかもしれない』。それだけは絶対に避けるために、姉上のこのふざけた計画を壊す」

 

「え?ここが戦場になるかもしれないとはどう言うことですか?」

 

 

 

 

 

「実は、前に我が祖父上から連絡が来た。『私の孫にこんなふざけた婚姻をするなら、我々が潰しにかかるぞ』と、我が祖父上が姉上の派閥に宣誓布告をなさった」

 

 

 

 

「っ!?」

 

 

祖父上の連絡が数日前届いた

 

祖父上も千里眼でここがどうなっているか見えている。無論姉上の傲慢な行動に怒り奮闘だった。当然だ。人の意識と記憶を弄る魅了をされれば尚更だ。そのため眷属を率いてオラリオに攻め込むとのこと。

 

 

つまりは戦争だ。爺さんの眷属はかつてゼウスとヘラの眷属とやりあった経験がある。数十のレベル6が居る眷属も居る。そんな派閥が戦争を起こしたらどんな被害が起こるかわからん。戦争の神のするなど、その祖父を持つ孫である俺ならどんな結果が待つのか最悪の一択以外ない

 

 

つまりはもう猶予はない。このまま姉上の言うことを聞けば、爺さんが戦争を引き起こしてオラリオまで攻め込まれる。その前に姉上の計画を俺がなんとかするしかない。もう姉上のくだらん計画は終わりにしよう

 

 

「まあ、『君に言えばもう姉上に伝わる』と思うが、これ以上はもう姉上の好きにはさせない。俺は婚姻を断らせて貰う」

 

「本気なんですね?」

 

「聞かなくてもわかるはずだ」

 

「そうですか、あのお方の願いを叶えてくれないなんて、貴方は酷い人です。ジーク」

 

「そう思うなら。君が俺を手にかければいい。俺はもう覚悟は決まった。と言うより、絶対に姉上と争うことになると。結末はわかっていたはずだ。君も。俺はもう姉上の言うことを聞かない。姉上の思惑の破壊を実行する。それが嫌なら、君が俺を手にかけろ」

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

ヘルンにそれだけを言って、俺は昼食を済まして調理場に戻る

 

もう姉上のこの偽りな都市は終わりにする。そして元に戻せば、姉上が何があろうと俺を手放さないと、姉上は戦争を引き起こす。もうそれはわかっていたことだから恐れていない

 

それよりも

 

 

 

『ヘルンはどっちの味方になる』かだ

 

 

 

残念ながら良いやり方は存在しない。俺がこれから姉上を傷つける。それが嫌なら俺を殺す他ない。姉上の苦しみは俺の婚姻なんかで救えるわけじゃない。姉上の恋の相手が本当に俺だったとしても。俺は受け入れない

 

 

俺は、自分の願いを叶えたい。その想いだけはカオス・ヘルツでも抑える気はない。

 

 

その願いを叶えるために、姉上の願いを拒む。それがどれだけ悲しいことであっても、姉上の幸せは俺の婚姻だけではない。もっとここに、今ここにある。その幸せだって存在する。それが姉上の真の救済のはず、今は姉上がそれを否定しているけど、それは俺が諦めさせる

 

俺が姉上を救うしかないのなら救う。しかし、姉上の願いや想いは引き受けない。なぜなら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当に俺がオーズなら、俺も自分の心に従うからだ

 

 

 

そうだろう。兄上?

 

 

 

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