ニーベルンゲン・シックザール〜竜殺しの英雄譚〜   作:ソール

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へルンの想い

 

 

リヴェリア達が姉上のホームに入り込んで襲撃しているのに、俺は一人で姉上のホーム内を彷徨っている。彷徨っていると言うより、彼女を探している。気配ですぐに見つけるが、姉上が居ると思う部屋から近い。それだけ試しているのだろうか

 

 

本当にこのまま姉上と結婚しないのか、彼女が問うだろう

 

 

姉上に逆らうことがどんな意味をするのか、その先はどうなるのか。俺がこの後どうなるかも予想はしている。それでもいい。俺は彼女に会おうと

 

 

先へ進むと

 

 

祭壇のような場所へ着いた

 

 

 

その先では

 

 

 

 

 

 

 

「ヘルン。ここに居たか」

 

「はい。あなたを待っていました」

 

「答えは決まっている。全てに気づいている。その上で選んでいる。だからここへ来た。君の所まで」

 

 

 

 

ヘルンが待っていた

 

 

 

彼女もここで待っていた、俺が来るのを。俺に問わねばならないことがある。だからここで待っていた。祭壇の先には姉上が居る。その近くで問うことが

 

ヘルンには必要なことだ。俺にも必要なことだ。だからわざわざ彼女の元へ来た。襲撃されている中、それを無視して二人で話すこと。伝えないゃいけないこと。

 

それは

 

 

「何度でも言う。俺は姉上とは結婚しない。俺にとって姉上は姉だ。妻にはできない」

 

「あのお方の望みを聞かないと言うのですね?」

 

「そうだ。俺は姉上を選ばない。選ぶなら別に居る。気に食わねば殺せ。何度でも言う。俺は君に殺されるなら本望。それも俺の幸せだ。君に殺して貰えるなら、それが俺の良い終わりだ」

 

「そんな不吉なことを言って、本当にそうなったらどうする気なんです?本当に仲間を置いて死ぬつもりですか?」

 

「ベル達なら問題ない。誰のせいにもしないさ。なぜなら俺は殺されるためにここへ来たんだ。自分が望んだことなら誰も咎めない。もう自分が許せなくてな」

 

「自分が許せない・・・なぜです?」

 

「君を傷つけた。それが俺にとって心を殺すほどに苦しいことだ。何もできぬ愚かな俺が、自分が許せない」

 

「私は傷ついてなどいません。貴方は誰も選ばなかっただけです」

 

「嘘をつくな。君は俺が嘘ついても気づくかもしれないが、俺もわかるぞ。君の嘘が・・・」

 

「私の何がわかるんです?」

 

「俺の心と君の心が繋がっているなら、俺だってわかるさ、君の心が」

 

 

俺がここへ来たのは、彼女に殺されるため

 

俺は彼女を傷つけた。俺が選びをすれば変わったんだ。そもそも俺があの時しっかり彼女を選んでいればこうなってはいない。だからこうなったのは俺のせい、俺が悪い。自分を責めねば気が済まない。自分が憎たらしい、だから死にたかった。絶対に彼女を傷つけたくなかったのに

 

本院は傷ついてないと言った。しかし俺にはわかる。俺の謎のレアスキル『フレイ・リーベ』は彼女に関わる能力がある。それは『共心共命』である。つまりは俺と彼女の心は繋がっている。だから彼女は俺が今何をしているかも、心が繋がっているから、前の中層遠征の時、俺がピンチだとわかり、オッタル達を率いた。どこにいても俺が何をしているのかわかる。フレイ・リーベと言うレアスキルは俺と彼女を繋げる力

 

だから俺も今彼女がどんな心をしているのかわかる。だから俺は自分が憎かった。言葉では傷ついてないなんて言っているけど、俺にはわかる

 

彼女の全ても、彼女の心も、彼女の想いも。それは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が君を選ばなかったから傷ついた。俺に嘘を言わないでくれ。『シル』!!!!!」

 

 

「っ!?」

 

 

ヘルンの本当の名前は『シル』

 

 

ヘルンと言う名前は、姉上に拾われた時に名付けられた名前。彼女の本当の名前はシル。しかし、シルが姉上に『姉上になりたい』と言う『女神になりたい』と望んだ。その対価としてシルと言う名前を姉上が貰うと、姉上が人間の姿で化ける時はその名前を使わせて貰うと言う意味で、シルはヘルンと言う名前を貰った

 

 

そして彼女は『ヴァナ・セイズ』と言う姉上の姿になれる。変神魔法を手にした

 

 

姉上のアルカナムは使えないが、それ以外の美の権能や魅了を使うことができる。最上級の魔法を手にするために名前を捨てた

 

 

フレイ・リーベで彼女の過去も知った。全部知ったんだ。彼女がシルで、俺の望んだシルはヘルンだ。苗字もない生まれもわからない、ただのシル。そんな彼女と心が繋がっている

 

 

「シル。君の全てを知っている。俺が君のことを知らないとでも思ったか!わかっているのは君だけじゃない!俺も君がわかるんだ!!」

 

「っ・・・・・・・なら!どうして選んでくれない!あのお方も望まなかった癖に!」

 

「それはそうだろう!俺が選ぶのは・・・・・・・・・・・・・」

 

「ほら!そうやって何も言い出せない!カオス・ヘルツで何も言えない!貴方の心は壊れている!まったくもってその通りよ!」

 

「っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 

 

シルを知っている。全てわかっている。でも、彼女を選ばないのはカオス・ヘルツのせい。力を代償にしたせいで、最も大切なことが言えなくなること。これが俺の苦しいことだった。確かに心が壊れている。その通りだ

 

だが、姉上を選ばない理由はしっかりある

 

それは、カオス・ヘルツによって声に出せないなら、そう思えないなら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪意と悪口で変えてやる

 

 

 

「お前を奪いたいからだ!!!」

 

 

「っ!?」

 

 

 

カオス・ヘルツは良心的な感情を失っている。つまりは愛のある感情は消え、それに近い優しい言葉が出せないなら、悪意で言えばいい。意味としては伝わるはず、フレイ・リーベの力なら

 

悪意は消えてないんだ。カオス・ヘルツは。悪意だけは消えてないなんて、矛盾かもしれないが、それでも意味と伝えたいことは通る。俺は彼女の本性を出す

 

 

「俺は英雄になりたかったんじゃない!お前を狙っていたんだ!お前を奪うために全て戦ってきた!姉上と眷属全員を殺してでも、お前が欲しくて喉から手が出る程に!お前の体をも欲した!性行為を望むほどに!お前を貪りたい、お前を襲いたい。お前を汚したい!お前の全てを奪うために、俺は今までこの強さを手にしたのは、シルであるお前を奪うためだ!!!フレイヤを妻になんかできるか!!!俺はお前を無理矢理娶る!!!」

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

これで全て伝えた。悪意のある言葉で全て

 

 

 

 

俺が選んでいるのはヘルンと言うシルだ

 

 

 

 

彼女を妻にするために全てを捧げてきた。俺がオーズなら俺はシルを望む。それがヘルンだ。あの時伝えとけばよかったと後悔している。欲しかったんだ彼女が、何度も考えたさ、爺さんの言う通り、せっかく手に入れたファーブニルの力を全部使えるだけ使ってオッタル達を殺して、彼女だけ手に入れようと何度も考えた

 

だが俺はそんな心もないまま、ただ流すだけとなっていた。それが我慢してしまった。力だけが全てではないと、これがその意味を成した

 

俺は力を手にし過ぎたせいで、彼女を傷つけた、そんな自分が憎い。愛しているではなく、ずっと欲しかったのに

 

 

「はあ・・・はあ・・・俺は君を奪いたい。欲しいんだ。君を。何度手を出そうとしたことか、数えきれない程に・・・・」

 

「ジーク・・・・・」

 

「これが俺の答えだ。俺のものになってくれ。こんなにも欲しいんだから!!俺の妻になれ!!!」

 

 

ヘルンに懇願するよう求めた。

 

こんな言い方なら口にできる。やはりカオス・ヘルツで愛のある言葉はできない。なら悪い言い方でヘルンを求めればいい。少なくとも妻に欲しいと言う想いは届いた

 

欲しかったんだ。俺は

 

 

ヘルンを、シルを

 

 

俺が求めるのはシル。フレイヤではない。それだけは間違いなく、ヘルンに伝わった

 

そして、彼女は

 

 

「っ・・・・・・・遅いよ。言うことが・・」

 

「ああ、すまない」

 

「貴方は本当に卑怯ね。英雄なのに色を好まないなんて・・・・それでもあのお方を選べるのに」

 

「俺が欲しいのは君だ。君を奪うことで、俺は生きがいを感じるんだ。姉上じゃあダメなんだ。せいぜいできるとしたら、女神なんてものをやめさせるくらいだ」

 

「貴方もそう思うの?女神をするあのお方は似合わないと?」

 

「ああ、似合わない。そんなものをやめさせて、俺の姉としてミアの酒場で働けばいいんだ。それが姉上の幸せのはずだ。やめさせてやる。姉上の救済は俺が果たしてやる」

 

「そうですか、それで私を手に入れるんですか?」

 

「そうだ!誰がなんと言おうと俺は姉上と結婚しない!!俺が娶るのは君だ!!オッタル達全員殺してでも、オラリオを掻き回しても!俺も身勝手でもなんでも、お前を手に入れる!!!」

 

「・・・・・・・・だから」

 

 

姉上とは結婚しない。これから争いを起こして酒場で働かせる。ミアの酒場で働いている方がとても美しくて楽しそうに見える。女神なんかやっている時よりも幸せそうだ

 

だから終わらせる。姉上の計画はここで、姉上にはオーズと結婚するよりも幸せがある、俺の勝手なことだが、それでも俺は選ぶのは姉上ではなく、ヘルンだ

 

その言葉にへルンは

 

 

 

 

 

「私は貴方を殺せなかった。私は貴方を愛しているから・・・・・」

 

「はあ・・・・・・・・すまない、君に無茶なことをさせてしまって・・・」

 

 

 

へルンが今までずっと俺に殺すタイミングがあったにも関わらず俺に手を出さないのは

 

 

 

選ばれなくても、それでも俺を愛しているから

 

 

 

ずっと殺されるタイミングを作っていたのに、彼女は全然俺をやろうともしなかった。本当は理由をわかっていた

 

俺を愛していたことに

 

知っていて殺して貰おうなんて、俺も馬鹿なことをしているなと自覚はしている。それでも自分が許せないことをしたから、彼女に手を掛けて貰う。確かに俺はシルの気持ちを理解してなかった。今の俺を文句を言われても反論はしない

 

全てシルの言葉を引き受ける

 

 

「ジーク。私も貴方を愛している。貴方のことはもう許しているし、恨んでなんてないわ。それに今私を選んでくれたじゃない。結構強引だったけど」

 

「今の状態ではまともな伝え方ができないんだ。だからあんな悪い伝え方しかなかった。もっと悪く言えば、本当に姉上を殺してでも君を手にする。そんな恐ろしいことを考えていたよ」

 

「そうみたいね、でも。こうなったのは自分のせいだからずっと何もしなかったんでしょう?」

 

「ああ、責任・・・・いや、自分のせいにしなきゃ。自分のしたことが許せないんだ。自分で自分を恨むなんて、馬鹿げている話かもしれない。でも・・・・・」

 

「それほど私を大事にしていたのね?」

 

「君を大事にしてきたと言っておきながら、俺自身が大事な君を壊した。これは俺にとっては許し難いことだったんだ。君が許してもな」

 

「それもカオス・ヘルツの感情変化かな?」

 

「多分な、本当に、力に溺れると言うのはこう言うことだ」

 

 

カオス・ヘルツで自分が許すことができない、自己嫌悪を思う感情をしている。今の俺にはシルを傷つけた。そのことが自分のせいにしなきゃ気が済まないほど、俺は自分を憎むことをやめられない

 

大事なものを自分で壊す憎しみが、自分の心を蝕む。

 

力に溺れた証拠。力を手にするばかりで本当に必要なものを失うことになるなど、思いもしないだろう。それが分かっているはずなのに

 

だけど

 

 

「それでも俺は望む。君を奪うために」

 

「ジーク・・・・それが貴方の答え」

 

 

例え、自分の心は壊れても、へルンを奪う。ここからは俺が姉上に逆らう。逆らってでも手にしたいものがある、俺自身が傷つけたにしても、それでも俺は欲しかった彼女が

 

 

俺は闇で、彼女は光だった

 

 

俺は英雄なんかじゃない。人間の悪意の垂れ流しみたいな男だ。皆に憧れるような所も、愛されるような存在じゃない。ただ他者より力が強いだけ、戦うことしかできない無能だ

 

 

それでも

 

 

 

欲しかった。彼女と言う希望が

 

 

 

絶望に挑むしかないこの俺が唯一全てを捨てても、俺が欲しいと懇願した存在。それがヘルンだ。それが叶うまで、悪人でも偽善者でもなんでもなってやる

 

今の俺の心にあるのは、ヘルンを奪うこと

 

 

これだけが、俺のカオス・ヘルツでも消えない欲望だ

 

 

だが

 

 

 

「でも・・・・・わかるでしょ?今の私の所属がどこなのか?」

 

「ああ、姉上の派閥だ」

 

「私もね。貴方を奪われたくない恐怖を持ち、貴方があのお方のものになることすら、私は拒絶した。そのために今日まであのお方を裏切って、今も貴方が奪われないように、あのお方の邪魔をした」

 

「っ!まさかリヴェリア達だけではなく、今気配で感じ取ったが、アフロディーテやアルテミスがここに居るのも・・・・」

 

「私が呼んだわけではないけど、少なくともヘスティア様に今日の内に『儀式』を開始してくださいと、頼んだ」

 

「そうか・・・・だから外で『ヘスティアの神力』が感じるのか」

 

 

 

ヘルンは俺が姉上のものになるのを阻止しようと

 

今ホームの外や内で起きていることのほとんどは、ヘルンの仕業でもある。ヘスティアが近くに居るってことは、もう姉上の変えたオラリオを元に戻す準備を整っているのだろう。そしてそのタイミングをヘルンが今日行うよう伝えた

 

リヴェリア達とアフロディーテとアルテミス達は別の者が呼んだ。だからヘルンの仕業ではない。ヘルンがやったのは、俺と姉上がファミリア内で勝手に結婚式を挙げることは、完全にギルドの報告にも上げてない。独断計画である

 

その情報をヘルンはヘスティアに流した。

 

今フレイヤ・ファミリアを攻撃しないと、俺と姉上が婚姻してしまうと、姉上の計画を邪魔する手引きをした。俺と姉上の結婚式をさせないために

 

 

 

 

その行動は  完全に姉上への裏切り行為。

 

 

 

眷属が主神に裏切る行い。派閥としてもファミリアとしても許されない行い。今のへルンは立場も考えないで、私利私欲で主神の望みを邪魔した。姉上からしても許されない行いだろう

 

 

だから

 

 

「私は罪を償いといけないの。今私が貴方の前で何をするのか、わかるでしょ?」

 

「・・・・・そうしないとダメなのか?」

 

「ええ、私の心がわかるなら、今の私のすることを見逃して欲しい。これは私の罰だから」

 

「姉上は認めないぞ?当然・・・俺もだ」

 

「それでもだよ。私がしたいことなの。例えあのお方が認めなくても・・・・」

 

「・・・・・・わかった。君が決めたことなら・・・・・俺はただ見届ける」

 

 

裏切り行為いに罪悪感はある。これが許されないことも

 

それを償うためにも、最後になるかもしれないからと、彼女は俺に見届けをして貰うために、わざと俺の目の前で行う。愛しているから、愛している人の前でする事

 

それは俺や姉上が望んでないことの行い。そんなことをしても罪が消えるとは限らないのに、しかし、俺もそれに似たような行いを、先ほどヘルンに頼もうとした身でもあるため、止める権利はないはずだ。それほどへルンは自分のした行いを、自分を許してないと言う俺と同じ気持ち

 

今彼女は、姉上に罪を償い。罰を自身の手で受ける

 

 

それは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザシュ!!!!!!

 

 

「がは!・・・・・・・」

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

 

自身の胸に、隠し持っていたナイフで

 

 

 

自害することだった

 

 

 

姉上への裏切り行為を自身の手で受ける

 

姉上に従うか。俺を守る愛を選ぶかで、彼女は心では俺を愛していたと同時に、姉上への申し訳なさもあった。姉上のおかげで人生が変わった。そんな恩のある姉上に、仇で返したんだ。主神の恩を仇で返すなど、眷属としては許されない行為

 

へルンだって、オッタル達にも負けないくらい、姉上への信仰と忠義はあった。

 

 

のはずが

 

 

彼女は自身の恋を優先してしまい。俺を助けるために恩のある主神の望まぬことをしてしまった。姉上ではなく、俺を優先してしまったが故に、彼女は姉上への、詫びとして自身の命を捧げる

 

 

「っ!」

 

 

俺は彼女のすることをさせたが、死なせるつもりはなく、俺は倒れそうになる彼女を抱える。罰はもうした。ならその後はもう良いはず、俺は彼女を助けるために、素早く回復魔術を使う

 

 

「ここまでして意味はあるのか?なぜ・・・」

 

「私は・・・フレイヤ様の繋がりがある。そしてあのお方の全てを裏切った。死を償うしかないの」

 

「それで姉上に許されるかはわからないのに」

 

「わかっている。それでも。私は自分が許せなかった。あのお方を・・・・フレイヤ様を裏切った。三度も破った私は・・・・」

 

「俺を愛しているからではダメなのか?」

 

「ええ、だってフレイヤ様だって、貴方を愛しているから」

 

「でも、俺は選んでいる。君だ。君は俺にとってのシル。姉上は姉だ。こればかりは君に言われても譲れない」

 

「じゃあ・・・・『これを聞いて』も。揺るぎない?」

 

「っ!まさか・・・・・」

 

 

姉上の裏切った行いを。自身の命を捧げて、詫びようとする

 

そんな自殺みたいなことをしても変わらないと言うのに、それでも姉上も同じ気持ちだった。へルンも俺を愛している。姉上も俺を愛している。男に恋をする二人。へルンも、フレイヤも、俺を男として婿に欲しかった。この恋は嘘ではない

 

だから、へルンが先に取った。

 

主神の恋を横取りをした。眷属でありながら主神の恋を奪う行い。今日まで生きてこれた恩をくれた主神への裏切り。へルンだって姉上を信仰をしているが故に、主神への裏切りを自分が起こしたものとはいえ、自分も許さない

 

 

だが、俺はへルンを選ぶ

 

 

俺は今まで選びはしなかった。だが、もうここまでになったのなら。時が来たのなら、俺も選択をさせて貰う

 

 

 

俺が愛したいのは、へルンだと。

 

妻にしたいのは、へルンだと

 

 

 

この揺るぎない気持ちを前に、俺は姉上の気持ちを無視する。それが本当かどうか

 

 

へルンが魔法を唱える

 

 

 

「『未到の階梯よ、禁忌の門よ、今日この日、我が身は天の法典に背く、愚かな魂、浅ましき渇望、交わした真名のもとに降りろ。神々の娘』、ヴァナ・セイズ!!!」

 

 

ブウン!!!

 

 

「・・・・・・・・・シル」

 

 

「こんな姿でも、ジークは私を選んでくれないの?」

 

 

「その声は・・・・・姉上か」

 

 

へルンが唱えた魔法は、あのウラノスのメイジであるフェルズと同じく『禁断の魔法』である

 

それは、姉上に変身できる魔法。アルカナムは使えないが、それ以外の権能を使うことのできる。まさしく姉上になれる変神魔法『ヴァナ・セイズ』。彼女は今まで姉上の指示でこれを使ってきた

 

そして、今使って変身した姿は

 

 

 

 

 

 

ミアの酒場で働く、シル・フローヴァの姿だった

 

 

 

 

だけど、言葉は別の人の言葉、へルンから出している言葉かもしれないが、別の人物の言葉だ

 

 

これは姉上の言葉

 

 

へルンは姉上に変身して、姉上の気持ちを俺に伝えようとしている。彼女が姉上に変身している時は、姉上の気持ちが同じになり、今発言することの全ては姉上の本心の言葉であり、へルンは姉上に変身して、姉上が今抱いている気持ちを、全面に俺にぶつける

 

 

「どうして・・・・私を選んでくれないの?」

 

「俺が選ぶのは、姉上ではない。俺が欲しいのはあんたの娘だ。へルンが俺の初恋だ。俺がオーズであるなら、オーズである俺はシルを求める」

 

「私は・・・・・・シルじゃないってこと?」

 

「俺にとってのシルはあんたではない。あんたにとってのシルは、へルンを繋ぐ絆のようなものだ。けど、俺にとってのシルは愛だ。力に溺れた俺をいつも愛し続けた。自分の命さえ顧みない。自分の命すら俺のために使おうとするへるんが、俺にとってのシルなんだ」

 

「私はそれにはなれないの?」

 

「なれない。けど、これから姉上をシルにする。あんたが俺の妻である必要はない。何度でも言う、姉上は俺の姉だ。姉であるあんたも俺の家族だ。俺はあんたを姉にするために、あんたの野望を壊し、俺が別の幸せを用意する。それは・・・・・・あんたをシルにすることだ」

 

「それが私の救いになるとでも思っているの?」

 

「思うさ。だって今までもずっと楽しくやってきただろう。少なくともミアの酒場で働くあんたの顔は楽しくて、それはもう誰も想像のできない笑顔だった」

 

「そんなの嘘よ・・・・」

 

「嘘なんかじゃない。俺に嘘をついても無駄だ。俺はあんたの弟だ。弟である俺はあんたの顔をしっかり見ている。酒場で居た時のあんたをずっと見ていたからわかるんだ。あんたの弟はしっかりあんたを見ている。だっての俺の家族だから。俺の大切な『フレイヤ姉上』だ。あんたのことを見てないわけないだろう・・・ずっとフレイ兄上の代わりが欲しかった、俺は寂しくなかったんだ。『家族を失い続けるこの俺』に、ここオラリオでも俺の家族と呼べるような人がまだ居たんだと、俺は姉上が家族になれることを望んだ。弟と姉と言う。姉弟が欲しかったんだ!!!」

 

「っ!・・・・・・・・」

 

 

姉上に必死に自分を選んで欲しいと懇願される

 

 

けど、妻はへルンに選んでいる

 

 

姉上を選ぶことはできない。代わりに俺は姉上を姉として、今まで通りにあのシルの姿になって、ミアの酒場で働く店員になって欲しいと

 

俺は姉上は姉として生きて欲しいと望む

 

兄上に妹が知らなかった。だから嬉しかった。俺に姉がもう一人できるなら嬉しい限りだと、ゲルズ姉のような優しさはあまり無いが、それでも俺の姉になってくれる人が居ることに嬉しさはあったんだ。俺にはカオス・ヘルツでも例え抑えさせない。家族のへの想いは消えさせない

 

でも姉上が俺に恋をするのを諦めてくれない

 

なら

 

 

「姉上。あんたの恋は悪いが受け取れない。俺だって恋をしたい。それはあんたではなく。へルンを。あんたの恋は俺が終わらせる。あんたを俺の姉にするために」

 

「・・・・・・酷い弟。姉である私のお願いを聞いてくれないなんて・・・・」

 

「姉のワガママを全部受ける程、俺は良い弟ではない。でも、これからそうなるように証明する。俺はあんたの弟だ」

 

「・・・・・・・・これがお兄様と私の弟かしら・・・・それが私の救済になるなんて限らないのに・・・・・」

 

 

ブウン!!!!

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

それだけを告げると、シルの姿からへルンの姿に戻る

 

もう姉上の言葉は終わった。今の話を聞いても、姉上は俺を求めることをやめない。本当に俺がオーズであることを信じて、俺を夫にしたいらしい

 

けど、それでも俺がオーズであるなら、シルであるへルンを選ぶ

 

けど

 

 

「へルン。俺はできることなら君が今自害した行いを止めたかった。俺だって君に殺されたいと望んだんだ。もっと返事を上手くできればよかった。自身の胸に自らの手で殺めたとしても、そんな君を見たくなかった。なぜ俺は止めなかった。そんな自分が・・・・・・憎い!」

 

 

本当はへルンに自殺行為を止めたかった

 

愛していた女の自殺なんて見たくなかった。これは仕方がないことだと、彼女が姉上への裏切りを免じるために、彼女が望んだこととはいえ

 

 

 

それでも彼女が死んでしまうかもしれない、あの自害を止めたかったと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポタポタ   ポタポタ   ポタポタ

 

 

「なぜだ・・・俺は・・・・・そこまで・・・力に・・・溺れたか・・・・・・」

 

 

涙を流した。二年ぶりに涙を目から流した。カオス・ヘルツで涙なんて流れないはずだった。でもヘルンのことになると抑えられない

 

 

 

 

涙が止まらなかった。彼女のすることを止めることができなかったことも、彼女の死に行く姿も見たくなかった。俺が止めるべきだったのに、どれだけ俺が失いたくないと望んだことか

 

そんなのを誰が見る?俺がヘルンを愛しているなら彼女の行いを止めるのが普通なはずだ。なのにカオス・ヘルツでその行いが、彼女の望みであるなら、当然だと思って何もしなかった自分が憎い。

 

今彼女の命をなんとか取り留めたとはいえ、こんなことを止めずに見過ごした自分が憎かった

 

だが、彼女の望みを叶えるために、俺は動く

 

 

「へルン。君の願いである姉上は俺がなんとかしてみせる。君はもう休んでいてくれ。あとは俺と姉上の喧嘩で決着を付ける。もう俺は君んを失わせない」

 

 

へルンの望みは姉上を救うこと

 

俺はへルンのために姉上と喧嘩する。そうでもしなきゃ姉上を救うことはできない。姉上の恋なんかよりも幸せなものは確かにある

 

その幸せを教えるためにも

 

 

 

俺はヘルンを抱えて、姉上への元へ

 

 

 

 

 

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