ベルは一人でヘディンを相手に戦っていた
だが戦況としては芳しくない。二度もヘディンに修行して貰ったにも関わらず、あまり力を発揮しきれていない
否
ヘディンがそう簡単にやられないように本当に『本気でベルを倒そうとしている』から全然ベルの力が通用していない
正直ここまでやれるとはヘディンも思っていなかった。確かに俺の言う通り、ベルは徐々に成長していた。深層脱出以来、ベルの成長は格段と上がっているのは間違いないと、『どんどん強くなるベルには注意』しろと、本気で俺の忠告を聞いていた
予想以上でもあった。ベルの成長速度は。
「はあ・・・・・はあ・・・・・」
「もう終わりか?私の教えた通りの動きにはなっている、しかし、それだけで倒せる程、私は甘くない!!」
「く!!」
だから手加減など、ヘディンはしなかった
容赦のない長剣の斬撃が襲い掛かるベル。教えられた通りの動きはできているにしても、それだけを活用するだけではヘディンは倒せない
頭を使った立ち回りをしているヘディンにベルも対応しないとならない。しかし、予想以上の動きであるため、修行に付き合っていた時よりも動きが素早く。最初は有利だったが、まだまだヘディンに対抗できない
「ぐわ!!」
「ジーク様はお前のことをかなり評価していたが、私にとってはガッカリだ。あのジーク様にあれだけのことを言われておきながら、この程度だったとは・・・・」
「マスター・・・・ジークさんがそのようなことを」
ヘディンは不評だった
俺が言うものだからかなり戦えるのだと思っていた。俺がわざわざベルを強くする指示をして、わざわざヘディン自身がベルを強くさせていた
だからこそガッカリだ
俺にも評価されて、ヘディンにも修行を付き合った。あれだけ強くしたのにも関わらず
それでこの程度だとは、ヘディンは落胆した
期待外れもいい所、立ち回りもナイフの振り方もほとんど教えた。教えたことを全部乗せてこの程度だと、あまりの実力不足にヘディンはもう付き合いきれないと、彼は魔法を展開する
「ここで倒れるくらいなら、貴様もこの程度なだけだ。『永争せよ、不滅の雷兵』!カウルス・ヒルド!!!」
ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!!
「くう!?」
ヘディンは容赦なし
ヘディンの周りに複数の雷の槍が展開し、一斉にベルに襲い掛かる。無論ベルは魔法を防ぐスキルも魔法もないため、避けるかナイフで斬り裂くしかない
しかし、一斉に襲いかかってくる。ほぼ一斉掃射。そんな数を相手にベルは防ぎきれない
だから
「『盾となれ、破邪の聖杯』!!ディオ・グレイル!!!」
ピキン!!!
バリン!バリン!!バリン!!!
「っ!?」
「フィルヴィスさん!?」
「間に合ったようだな、ベル・クラネル」
「マイナデスか!」
ベルの真横から、ある者がベルの前に立ち。ベルを魔法を展開して守る。魔法を展開し、ベルを守った魔道士は
フィルヴィス・シャリア
ヘイズを倒し切って、なんとかここまでやってきた。ヘディンを止めた方がこれ以上の戦いの流れも変えられると思い。軍師は落とさねばならないと、フィルヴィスは今までの戦いにおいての知恵として。ヘディンを落としに行く
「同胞、貴様がその愚兎を加勢するか?」
「無論、私の仲間だからな。もう私は仲間を見捨てたりなどしない」
「フィルヴィスさん・・・」
フィルヴィスは過去に仲間を助けられなかったことがある。もうその悔やみを今も繰り返さないためにも、フィルヴィスはベルを助ける
仲間意識がかなりフィルヴィスは強くなりつつある。これもヘスティア・ファミリアに入った影響でもある
だから、フィルヴィスは喝をベルに入れる
「ベル・クラネル!何をしている?ジークを助けるのだろ?」
「それは・・・・」
「だったらあの同胞に勝つぞ!ジークに期待を乗せられているのなら、その期待を答えてこそだろう!戦え!ベル・クラネル!」
「フィルヴィスさん・・・・はい!絶対にマスターに勝ちます!」
戦いの師であるヘディンにも勝つぞと、フィルヴィスはベルを気をしっかり持たせる
相手が師匠でも負けるなと、憧れの英雄を奪われないために、守るためにここで師でも倒せと、共に戦うからめげるなと、ベルはもう一度ヘディンに挑む
「同胞。今度は私も戦う。構わんな?」
「無論だ。例え同胞が相手でも。あのお方のために戦うことは変わりない。貴様ら二人でも。勝利を譲る気など・・・無い!!」
「絶対に勝ちます!僕の力が足りないなら。二人でも!!」
「レベルが上でも。私は負ける気はない。私の友は返して貰う!!」
レベル5二人が、レベル6のヘディンに挑む
軍師は予想以上の実力。ベル一人で足りないなら、フィルヴィスも加わって軍師を落とす。ここまで来てかなりの強敵に苦戦を強いられる。
それだけベル一人でも難しいと言うことだ。ヘディンはアレンが居なかったら副団長になっている実力。今度はフィルヴィスも挑んで、軍師を倒しに行く
一方、アーニャたちの方は
「兄様!どうしてウチの所に戻ってこないにゃ!ミャーたちは兄妹なのに!」
「黙れ!テメエなど、俺の家族でもなんでもねえ!」
「血が繋がっているのに!なんでにゃ!」
「こんな猫人さんも居るのね!」
「どうやらこの男は、家族を否定して力を得るそうだ」
引き続き、アーニャたちがアレンを倒そうとする
しかし、アーニャの魔法を受けておきながらそれでも素早く動く、その動きにアーニャとシルフが若干追いついているが
それでもアレンが速すぎて少しも追撃しようにも追いつけない。
だが
アレンの動きが若干単調だった
なんでこんなにもアレンが心が揺らいだ。アーニャを目の前にして居るからなのか、アーニャの魔法のせいなのか、動きがいつもと違う。何かを気にして動いている
気づくことがあるとするなら
「おい貴様?なぜあのアーニャ・フローメルを狙わない?」
「っ!?なんの話をしてやがる!」
「確か貴様の妹だったな?話はアキレウスから聞いている。貴様は妹を殺す覚悟はないのだな?敵でもあると言うのに?」
「だからなんだ!!テメエには関係ねえ!」
「確かにな。私は貴様らの家族のことなど関係ない。だが貴様は・・・・・『家族を斬る』度胸はないようだ」
「っ!?」
ヘクトルがそれに気づいた
俺からアーニャに兄が敵陣地に居ることを話した。過去までは言っていないが、事情があって妹の敵になっていると説明は軽くしてある
その話を聞いてヘクトルがアレンの様子がおかしいことに気づいた
アーニャが来る前のアレンの動きは確かにレベル6の動きとして申し分のない動きだった。だから苦戦を免れなかった
しかし
アーニャがここに居てから、アレンの動きが単純になっていた
素早さは相変わらず早いが。しかし、アーニャが来てからはどう動くのか。先が見えやすくなった。おかげで捕まえやすくはなった
だからこんな簡単な攻撃も、簡単に入った
理由は妹であるアーニャが原因
「は!」
「ぐう!ぬう!!」
「なんだ?さっきから動きが単純だな。かなり気にしているんだな?あのアーニャ・フローメルが?」
「黙れ!テメエには関係ねえだろう!」
「ああ、私には関係のない話だ。だが、貴様が動きが捉えやすくなったなったのは事実だ!!」
「ぐう!」
アレンはかなり苦戦していた
アーニャを気にしているだけでかなり動きが見えやすくなった。早くてもどう動くのか先が見える。今のアレンを倒すのはもう簡単になってきた
なぜそこまで心が乱れるのか
アーニャは、今度こそ自分からアレンに問う
「兄様、どうしてにゃ。どうしてミャーの所に戻って来ないにゃ!」
「なぜ俺がテメエの所に戻らないとならねえ!俺が戻るのはあのお方の元だ!!」
「シルもいずれミャーたちの所に戻るにゃ!だから兄様も!ミャーのところに帰ってくるにゃ!!」
「ふざけんな!なんであのお方まで、テメエの所にまで戻る!?意味がわからねえことを言うな!!」
「それはシルがミャーの友達だからにゃ!!」
「ぐう!?」
アーニャは、アレン、フレイヤ姉上を家族として戻って欲しかった
アーニャはただ友達と兄が戻って欲しいだけ、ただそれだけのために今彼女は、家族を取り戻すために戦っている
しかし、アレンは否定
力を得るためにフレイヤ姉上にこれからも支えると言って何も聞いてくれない。なぜそこまでして家族を捨てて力を得ようとするのか
「どうしてにゃ!?どうしてそこまで!!」
「テメエには関係ねえ!そう言っているだろ!」
「ならミャーは戻ってくるまで、兄様の敵なるにゃ!!」
「何度やっても変わらねえ!!」
「頑固なお兄さんだね!アーニャさん!」
「本当に家族を見捨ててるのか!このクソ猫は!煌月!!!」
「ぐう!?くそ!あの野郎の精霊と三下!!」
アーニャは家族を取り戻すために兄の敵になることをやめたりなどしない
だが一人では勝てないため、シルフと少し負傷しているヴェルフに力を借りる。アレンはレベル6。勝てるレベルは居ないため、それ以外の精霊と魔剣で勝負するしかない
「くそ!どいつもこいつもひつけえにも程がある!」
「なら斬ればいいだろう!なぜ斬れない!そんなに自身の妹が嫌いなら殺せばいい。それができない貴様は、それは貴様の弱さだ!」
「っ!何をわかった上で言ってやがる!!」
「わかるさ。私も妹が居るのだからな!どれだけ大事にしているのか、見ていて私もわかる!」
「っ!?」
「ヘクトル。お前妹が居たのか?」
「ああ、戦争には向いてない妹がな」
アレンのことなど、本当にヘクトルは何も知らない
しかし
妹を持つ者同士として、アーニャに手を出せないことだけがわかる
ヘクトルも妹が居る。戦争不向きな子供が。イリオス王国はあのラキア王国と同じく武力国家でもある。戦争は常に多くで、平和な時などあまりに少ない。イリオス王国は戦争に悩まされた国だ
そこに、ヘクトルの妹、平和主義者のような者がいる
「私の妹は本当に戦う実力はあっても、戦う覚悟のない子供だ。そんな彼女は戦うこと以外で国の支えが上手くできる女の子で、戦うことしかできない私とは大違いだ。私の国はそうやって成り立っている。姉妹で国を守ることをな。力は国のために使うこと。そして私は、妹のために『アフロディーテ様の戦争がない国にしたいと誓いを建てた』!!!私がここまで強くなれるのは妹が居るからだ!!!」
「ヘクトル・・・・」
「これだけは言っておくぞ。アレン・フローメル。妹を捨てて強くなれる者はいない。家族を守れる者が強いんだ!!貴様のように何かを犠牲にしただけでは強くなれないぞ!!」
「っ・・・・・・・」
ヘクトルは国を支えるだけの統制能力は残念ながらなかった
それを国を一つにまとめてくれるのはヘクトルの妹だった。戦争が向いてない人殺しができない妹は、国の統治を上手くできたのだ。もちろん姉の戦いの疲れの癒やしも上手かった。いつも支えになってくれる妹のために、常にアフロディーテに彼女が支えるのは妹のためでもある
戦争のない国、イリオス王国を、平和な国に
民、主神、妹、国の長であるヘクトルはそれを目指して日々戦っている
今目の前に居るアレンも、何かそれに近い目的で、力を手に入れようとする。何かを目的に動き犠牲にして力を得ようとするアレンに、共通点をあるのだと気づいた
それは
「貴様?妹を守るために力を手にしようとしているのか?」
「・・・・・・・」
「何かを倒そうとしている。そのために妹を遠くへと置き去りにした。妹を守るために、違うか?」
ヘクトルも気づき出した。アレンがアーニャを大事にしていることに
アーニャを守るために、自分の居場所から遠ざけた。おそらくヘクトルもアーニャが自身の妹に似ていて、戦いには向いてないと感じ始めたのだろう
アレンがアーニャを狙えないなら、それが理由ではないのかと、彼女は気づき始めた
それに続いてアーニャがアレンに問う
「兄様。どうしてにゃ。どうしてシルを女神にして、そこまで力を手に入れるにゃ!どうしてにゃ!シルを女神にして、兄様が力を手に入れるとは限らないにゃ!」
「知った口を言うんじゃねえ!テメエがあのお方を語るな!派閥を抜けたテメエが!!」
「わかるにゃ。ミャーはフレイヤ様を知っている。ミャーはフレイヤ様を友達だから!!」
「っ!」
「兄様。これ以上フレイヤ様を女神にしても、それがフレイヤ様の幸せとは限らないにゃ、確かにフレイヤ様がジークと結婚したいことが、それが望みだったとしても、フレイヤ様が兄様に力を与えるわけじゃないにゃ!どうしてそこまでのことを兄様がするにゃ!」
「黙れ・・・・何を知った上で・・・」
「いい加減にしてにゃ!!!ミャーたちの故郷を滅ぼした黒竜を討伐するためとはいえ!!もうミャーたちの村を滅ぼした黒竜は居ないにゃ!!」
「っ!?」
「ミャーみたいにワガママを言うばかり、ミャーが兄様の気持ちがわからないとでも思ったのかにゃ!?ミャーだって知っているにゃ!兄様がそこまでフレイヤ様に支えることの理由も!!でももう居ないにゃ!黒竜も!ジークが倒してくれたにゃ!」
「アーニャちゃん。あなたの村も?ファフニールに?」
「そうにゃ。シルフ。ミャーと兄様もとある村の生まれで、突然黒竜に村を滅ぼされたにゃ」
「そうなの。あなたも黒竜に何かを奪われた人なのね。私と同じね」
アーニャが人生初めて、アレンを怒鳴りつける
もうアレンのワガママに付き合ってられなかったのか、もしくはもうアーニャの気持ちを考えない兄に苛立ちをしたのか、もうアレンの言葉に屈することはなかった
そして妹だから。アーニャは知っている。自分を追い出して、フレイヤ姉上に支える理由を、力を本当の目的を
それは故郷である黒竜ファフニールを倒すため
しかし、俺に滅ぼされてもうこの世には居ない
黒竜ファフニールに村を滅ぼされて、生き残りはアーニャとアレンのみ、そこにフレイヤ姉上に救われた。その恩として支えると言うのもあるが、それと同時に村を滅ぼした黒竜ファフニールを倒すため、だからアレンがフレイヤ姉上を元に支えて強くなる
しかし
先にその復讐対象は取られている。俺に。俺にファフニールを討伐されていて、もうこの世にはいない
つまり、アレンの復讐は彼自身が果たせずに終わった。俺に復讐対象を取られた。皮肉かもしれないが、アレンが何もしなくても復讐をとられたのだから、もうこれでアレンが力を手にする必要はない
なのに、なぜまだアレンは彼女に支えるのか
「兄様、もう終わったにゃ!ジークがミャーたちの苦しみをも断ち切ってくれたにゃ!なのになんでミャーの所に帰ってくれないにゃ!もうファフニールも居ない復讐が終わったのに、なんで戻ってこないにゃ!」
「っ・・・・・だとしても、俺はなの女神の眷属だ!あの女神の眷属として!あのお方の望みを叶えるのが、俺があのお方の車輪としてだ!テメエの所に戻る気なんかねえ!!!」
アレンはそれでも拒む
家族が弱さに繋がるのか、もしくはそれでも女神の眷属として今もフレイヤ姉上に支えることを諦めないのか
復讐が終わっても、女神の眷属であることには変わりないのか、女神の望みを叶えるために車輪として戦うと、アーニャの問いかけにも応じない
しかし
「貴方は、まだ過去を引きずっているのね」
「っ!何を知った上で言ってやがる。あの野郎の精霊!剣姫に似た女!!!」
「わかるわ。だって私もアイズも、ファフニールにやられた過去を持つから」
「なに!?」
「おいシルフ!それ以上は!」
「いいの、ヴェルフ君。私はこれくらいは、この子に教えたいから・・・・」
シルフが、アレンがアーニャの問いかけに応じないことについて、過去を引きずっているのだと、気づき始めた
シルフの正体を明かすことになるが、それでも自分とアイズと同じだと。同じ過去に傷がある者同士として、シルフはアレンに教える
復讐対象が居ないにも関わらず、過去に縛られる者の支えになることをシルフはする
「私もアイズもそうよ。過去に黒竜にいろんなものを奪われた。でもジーク君が助けてくれた。これでもう過去を乗り越えて、未来と言う前に出れる。でも貴方は・・・・過去が原因で力を求めることをやめたりなどしない。貴方が怖いのは・・・・・・『また奪われる』こと?違う?」
「っ!?」
「本当は怖いのね。またアーニャちゃんが誰かに奪われるのではないのか、それが怖いから力を求めることをやめたりしない。違うかな?」
「・・・・・・・・・」
「ずっと彼は、貴方を守るために力を得ようとしているようね。アーニャちゃん」
「兄様・・・・・・」
「黙っていると言うことは、そうみたいだな」
「こいつ。こんなにも妹想いなのかよ。それなら側に居てやればいいのに」
黒竜ファフニールが居なくても。アーニャの所に戻らずに、フレイヤ姉上に支えるのは
アーニャをこれからも守り続けるために、更に力が欲しいからだ
過去に村、家族、おそらくだがそこにも友人も居ただろう。黒竜ファフニールに全てを奪われた彼は、もう二度と大事な者を奪われないためにも、復讐が終わっても力を得ることをやめたりなどしない。守りたい者がこれからも守れるために
「ジークが黒竜ファフニールを倒してくれたにゃ。ミャーはもう一人じゃないにゃ。友達が居るから、兄様に守って貰わなくても大丈夫にゃ。だからミャーの所に戻って欲しいにゃ。兄様だけじゃない。ミャーはフレイヤ様・・・・・シルにも戻ってきて欲しいにゃ!!それがミャーの望みにゃ。ミャーのお願いを聞いて欲しいにゃ!!」
「・・・・・・・・」
家族が帰っきて欲しい。これがアーニャの望みだ。
復讐は俺が終わらせ、アレンが守ると言っても、もう友達もたくさん居る。もう誰かに守って貰える仲間はたくさんできた。そして今度はアーニャが家族を取り戻すために戦う。
全てはフレイヤ姉上を取り戻すために
フレイヤ姉上を家族だと想い。取り戻すために実兄でも敵になる覚悟。もう復讐は終わり、過去はもうここから乗り越える。アレンの戦いはもう終わったのだ
それも聞かないなら、アーニャは、俺と打ち合わせしたことを、アレンに伝える
「もしも兄様がこのまま帰ってくれないなら・・・・・・」
無論本当ではないが、アレンをアーニャの元に戻すにはこうするしかない
「ミャーは。ジークの側室になるにゃ!!」
「っ!?」
「え!?」
「おい、本当なのか?」
「アーニャちゃん?それ本当なの?」
「ジークが言ったにゃ。正妻にはできないけど、ミャーを側室くらいなら迎え入れるって」
「あいつの・・・・・側室にだと?」
「そうにゃ!兄様がミャーの所に帰ってきてくれないなら・・・・ミャーはジークと一緒になって新しい家族を作るにゃ!!」
アーニャが俺の側室になること
アレンが一番嫌う俺と妹が結婚するなど、耐えきれないはず、それを狙って俺はアーニャにそう言うよう指示をした、無論本当ではないが。それでもアレンの真意を取るにはそれしかない
その言葉に、アレンは
「ふざけんな!!!」
「「「っ!?」」」
「・・・・・・・・」
アレンは大激怒
しかも今までの中で一番の。それだけは納得できないのか、アレンはその場に槍を刺して。武器を持たずにアーニャに近づく。俺と結婚するなど、それだけは許さない。一番嫌いな男と妹が結婚するなど、認める気などない
「あんな奴がテメエを幸せになどできるか!!俺はテメエを守るためにここまでやってきたんだ!!よりにもよってあの野郎と結婚するだと!!」
「兄様・・・・・・」
「テメエはいつまでも『俺の妹』で居ろ!!!」
アーニャの胸倉を掴んで、いつまでも自分の妹で居ろと怒鳴る
それだけは認めるわけにはいかなかった。村も黒竜に奪われ、家族をも奪われた。そして最後に残ったのはアーニャだけだった
そのアーニャでさえも。俺に奪われる
それだけは奪わせるわけにはいかなかった。
それだけを言うと、アレンは槍を取りに戻り、アーニャに告げる
「おいクズ。これだけは言っておく、俺の復讐は終わってねえ。俺の復讐はあの野郎。ジーク・フリードを倒すことだ!!!」
「っ!なんで?」
「あいつは俺の目的を奪った。それだけでなくお前までも奪う。あいつこそ二代目ファーブニルだ!!黒竜は今も存在する!あいつだ!!俺の復讐はあいつを倒すまで終わらねえ!!」
アレンの戦いはまだ終わらない
俺を人ではなく、黒竜ファーブニルとして扱う。俺など怪物としか思っていない。復讐も妹も、そして主神すら全部奪う俺を許さないと
だから力を手にして、俺を倒すと、今でもフレイヤ姉上に支える
それがアレンと言う車輪だ
「俺はテメエを守るために、あのお方を守るために、あいつをぶっ殺す!!『金の車輪、銀の首輪、憎悪の愛、骸の幻想、宿命はここに、消えろ金輪、轍がお前を殺すその前に、栄光の鞭、寵愛の唇、代償はここに、回れ銀輪、この首落ちるその日まで、天の彼方、車輪の歌、を聞くその死後まで・・・駆け抜けよ、女神の神意を乗せて』!!!!!」
「これは兄様の詠唱!!?」
「これはまずい!?」
「シルフ!!」
「風の壁を展開するわ!!私の後ろへ!!」
アレンは俺をいつか倒すために、戦いをやめない。そのために今目の前に居る妹とその仲間を蹴散らそうと、魔法を展開する
本当ならアレンは使いたくなかった。詠唱の中にアーニャのことも含まれているから、恥ずかしさがあって発動することに今まで躊躇ったのかもしれない。しかし、それでも俺に奪われないために。今はこの戦いをやめたりしない
俺がフレイヤ姉上のものになるのは嫌だが。それでアーニャが側室にされるくらいならマシだと
アレンの体から魔力光を纏った突撃が炸裂する
シルフはその突撃を防ぐために、風の壁を巻き起こして防御展開して、アーニャたちはシルフの後ろに隠れる
「グラリネーゼ・フローメル!!!うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!
ドカン!!!!!
「ぐうう!?」
「なんて魔力だ!?」
「これがこの猫人の魔法か!」
「まずいにゃ!兄様の魔法は階層主をも貫くにゃ!」
アーニャが冒険者時代にアレンと共にダンジョンに行っていた時期、彼が階層主を相手に魔法を発動したことがある
アレンの特攻魔法は階層主の体を貫くほどの突撃攻撃である。これを止められるのはオッタルくらいだ。まだ俺も受けたことはない。
シルフでも風の壁でなんとか守っていたが、その範疇を
アレンは超えた
「ダメ!耐えきれない!きゃああああ!!」
「ぐわあああああ!!!」
「ぐはあああああ!!」
「にゃああああああ!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
アレンの突撃魔法は、残念ながらシルフでもどうにもならず、風の壁も突破される。
シルフ、ヴェルフ、ヘクトル、アーニャはアレンの魔法に轢かれるかのように吹き飛ばされる。周囲の建物を破壊し尽くして、真っ直ぐに突撃する
その先で、増援に来たアイシャたちが
「なんだ!?うあああ!?」
「これは!?ぐわあああ!?」
「魔法!?ぐあああ!?」
「このような!?きゃああ!?」
増援に来たアイシャ達がそのアレンの魔法に巻き添えを喰らう
アイシャ、命、アクタ、カリスも容赦なく、魔力光を帯びた突撃に巻き込まれて轢かれる。増援も容赦なく轢き殺す一撃
これがアレンの魔法だった