ニーベルンゲン・シックザール〜竜殺しの英雄譚〜   作:ソール

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巨獣に挑む冒険者

 

 

 

翌日

 

 

ベル達は朝食を済ませた後。決戦に備えて、全員テントに出て黒い砂漠に向かうためにここ拠点の南の出口前で出陣の準備をして集まっている

 

その間に俺とベートとアイズとフィンは総合本部のテントに集まり、アイズの対ベヒーモス用の装備が完成したとヘファイストスから知らせを貰ったため、すぐに本部に集まった

 

 

そしてその装備を装着する

 

 

「どうだ?・・・・」

 

「違和感は・・・ある・・・少し全体的に動きづらくなる」

 

「そうだろうな・・・・お前は二年前同様に軽い装備を着ていたからな。少し重くなるのは覚悟したほうがいい」

 

「うん・・・・なんとか慣れるようにする・・・」

 

「悪いな二人とも・・・徹夜して貰ったりして・・・」

 

「大丈夫よ。私たち主神はこれくらいしかできないから・・・」

 

「うむ・・・・」

 

 

「よし、これでアイズの猛毒対策は十分だろう。あとは・・・・・お前にはこれだ」

 

「なんだ?この狼の模様が入った盾は?」

 

「『オハン』と言う盾だ。それを今回貸す。完全に猛毒の嵐を防げるかは怪しいが、ベヒーモス自体の攻撃は防ぐ事ができる。足蹴りをするお前にも動きづらいとは思うが、防御は大事だ。上手く使え」

 

「ああ。わかったよ」

 

 

これでベートとアイズの装備は完了した。ミアハやディアンケヒトも数多くの解毒用ポーションを用意してくれた。弓で戦うことしかできない戦い自体恐れているナァーザにも悪いがベヒーモスの決戦に回復役員として出陣して貰うようにして貰った。彼女には悪いとは思うが・・・・戦えない者も必要だった

 

 

そしてヘルメスのオラリオの報告が完了したか、確認する

 

 

「ヘルメス。オラリオに報告はしたか?」

 

「ああ。昨日の夜に伝書鳩で報告したけど、予想以上に今日の朝に報告の返しが来たよ」

 

「それで・・・・その報告を読んだオラリオに残っている主神達の感想は?」

 

「正直言って・・・・・・・・・前代未聞の事件だと知らせにあったよ。『まさかモリガンがこんなことをするなんてね』っと、オラリオからの手紙に書いてあったよ」

 

「意外だな。モリガンがこんなことをしたのは俺が原因なんだが・・・・俺を責めないんだな?オラリオに残った主神達も」

 

「それは主神達もジーク君を恐れていると言う証拠だと思うけどね」

 

 

ベヒーモスの復活がモリガンの襲撃だとオラリオに残る神々に報告したのだが、どうやらこの事件の発端が俺のせいだと責める者は居ないようだ。ヘルメスが言うには神が俺に恐れているらしい。前にアポロンのファミリアを無茶苦茶にしたのだ。その行いを見た神達は自分のファミリアも標的にされるのではないのかと恐れているようだ。

 

 

まあ・・・・オラリオの神々には、後で良い知らせを用意するとしようと

 

 

問題は後回しにして、目の前のことに集中するために、俺は再度準備は完了したかと周囲を確認した

 

 

「準備・・・完了だね?」

 

「もうあいつらは集まっている。行くぞ」

 

 

準備が怠っている部分は無いと確認は取れたため、皆が集まる南口前に待つ。オラリオの冒険者達の方へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南入口にはもうオラリオの冒険者が集まっていた。皆。もうあの猛毒の嵐を喰らってベヒーモスの実在を信じる以外もう無いのか、本当に覚悟を決めたような顔をするように。誰もが真剣になっていた

 

 

「あ、アイズさん!」

 

「ベル・・・」

 

「す。凄いかっこいい装備をしてますね?」

 

「慣れないけどね・・・」

 

 

「ベート?何その盾?」

 

「ジークから貰い物だ・・・」

 

 

「準備はできたってことか・・・」

 

「ああ。十分にな。オッタル」

 

 

ベートが手にするはずの無い盾とアイズの新装備をしたことに皆が驚いている。ベヒーモス用の装備と盾だから使用するのは最初で最後だからもう見ることは無いだろう。二人に似合わない装備でもあるから驚いて当然なのだろう。これは全員分は用意できない物でもあるからな

 

とにかく準備できたため、集まった者達の前に俺は出て。今回の作戦を改めて説明する

 

 

「聞け!!昨日のフィンからの報告を聞いていると思うが、これはある野外冒険者の派閥の襲撃。モリガン・ファミリアの襲撃だ。それも世界中を攻撃している。今あいつは本気でこの下界を遊び場だと思うようにモンスターを使って主神もろとも皆殺しをし。殺戮を楽しむつもりだ。この意味?お前達ならわかるな?」

 

「「「「「・・・・・・」」」」」

 

 

その言葉に誰もが何も言い返さない。わかっているからだ。自分たちが戦わなければ本当にモリガンに全てを壊されることを、本当に戦う以外の選択は無いと言うことを

 

 

「俺たちはモリガンに勝たなければ世界は終わる。奴はベヒーモスをテイムし、言うことを聞かせるようになっている。これから相手はモリガン・ファミリアとベヒーモス。モリガンの冒険者はたったの三人のみだが、レベル6で国崩しを簡単にできるほどの強者だ。奴らは今でもあの南に見える黒雲の中に。『黒い砂漠』に奴らが居る。あそこでこの事件の最後の戦地だ。ベヒーモスは俺とアイズとベートで猛毒の嵐を止める。お前達はベヒーモスの子供である黒い獣のモンスターを俺たちが猛毒の嵐を止める最中に全滅させろ。それからモリガン・ファミリアとベヒーモスを倒す」

 

「え!?そんな!?」

 

「アイズさんとベートさんとジークさんでやるつもりですか!?」

 

 

「そうだレフィーヤ。そうでなければ猛毒の嵐を止める事はできない。お前達はお前達にしかできない仕事をしてくれ」

 

 

「ですが・・・・・」

 

 

「俺たちは覚悟を決めてこの道を選んだんだ。そうだろう?ベート?アイズ?」

 

「ああ!!雑魚のお前らにはできねえよ!」

 

「うん。心配しないでベル。私は・・・・自分で決めて選んだ事だから」

 

「アイズさん・・・・」

 

「と言うわけだ。もう俺たちは選んだ事だ」

 

 

フィンとオッタルとヘスティア達主神しか知らないが、ベートと俺が囮をするだなんて説明はしなかった。余計反対されるとベルとレフィーヤの考えを考慮しているからである

 

優しすぎるからな。この二人は

 

 

「再度お前達に聞く!昨日の作戦はまだ死者は誰も居らず。全員生き残ってここまで集まっている!だが次は本当に生きて帰れる保証は無い!相手はベヒーモスだけじゃない!その元凶たるモリガン・ファミリアも居る。どう考えても勝てる見込みは無いだろう。だが、俺たちが戦わなければこの世界が終わるだけだ!!」

 

 

俺はこれが本当に最後の戦いになると、ベヒーモスを今度こそ終わらせると宣言した。世界を。未来を

 

殺戮の女神から取り戻すために

 

 

「殺戮の女神に怯える者がここに居るか!」

 

「「「「「居ない!!!」」」」」

 

「殺戮の女神に立ち向かうお前達は何者だ!!」

 

「「「「「「冒険者だ!!!」」」」」」

 

 

「殺戮の女神から俺たちの平和を取り戻すぞ!未来を!明日を!!勝利して必ずオラリオに帰るぞ!!!ゼウスとヘラのファミリアを越えて。ここに集まる俺たち全員が新たな英雄となる!!!立ち上がれ冒険者達よ!!今こそ俺たちの勇士を殺戮の女神と黒い巨獣に思い知らせてやるぞ!!『ここはテメエらの遊び場じゃねえ』と!俺たちの底力を見せるぞ!!全てはこの世界の未来のために!!!」

 

 

「「「「「「「全てはこの世界の未来のために!!!」」」」」」」

 

 

「今こそ!!我らの戦意を滾らせろ!!!」

 

 

「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」

 

 

 

「あいつ本当にすげえ・・・」

 

「ジーク様・・・またも凄いスピーチを」

 

「ジーク殿・・・あんな事を何度でも言えるんですね・・・」

 

「ジークさんが本当に英雄に見える」

 

 

「ジーク君・・・・・必ず帰ってくるんだよ?」

 

「ああ。俺たちが生きて帰ると願ってくれ」

 

 

と、俺が熱意を上げるように宣言した。俺の団員達であるベル達が、その宣言する姿が英雄らしいと、誇らしいと俺を大きく評価していた。そんなつもりはないんだがな

 

 

そして最後にヘスティアに必ず帰るように命令される。本当に生存できるかはわからないが、なるべくそうするように心掛けた

 

 

まあ、とにかくだ

 

 

 

「全員出撃!!黒い砂漠に向かうぞ!これが最終決戦だ!!」

 

 

皆、意志を合わせて黒い砂漠へと、一歩へと、足を動かした。

 

 

モリガンに教えてやらねばならない。俺たちがベヒーモスを相手にしても俺たちは絶対に引く事なく戦ってお前達に勝つと言うことを。底力を見せつけなくてはなと

 

 

俺も

 

 

怒りを剥き出しにした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決戦地。それは黒い砂漠

 

 

その黒い砂漠があるのは目の前にある大空に広がる黒雲の中、それの黒雲に向けて俺たちは歩いた。それまではモンスターが一匹も出てこない。多分モリガンが俺たちとしっかりと決着をつけるように、黒雲の中で待っているのだろうと推測する

 

デダインの村から出てだいたい一時間ほど。昨日までは奴はここ付近までは確かに移動してき。昨日の戦いの跡が地上に残っている。そこを越えて通り過ぎる。

 

そしてその先にはもう・・・・

 

 

「嘘だろ・・・」

 

「これ・・・・入れるんですか?」

 

 

「ああ。入れる。だが・・・・やはり昨日より黒雲が広がりつつある」

 

 

俺たちの目の前には煙のような黒い黒雲が地上にまで覆い尽くされていた。煙が舞うように霧の壁になっていた。そこから入ると思うような人物は居ないだろう

 

それに昨日よりも遥かに黒雲が広がっているのがわかる。と言うより地上にまで黒雲が覆い尽くせてはいなかった。それが地上にまで煙が舞うように地上にまで広がっていた

 

 

だが

 

 

「奴は・・・・この先だ」

 

「感じるんですか?」

 

「ああ。間違いなくこの先に居るぞベル」

 

「じゃあ・・・・この先から。決戦だね・・」

 

「ああ・・・・・ここからは戦場だ」

 

 

ベヒーモスの反応はする。それも大きな力を確実にこの先に感じた。モリガンやマッハ達の神威と魔力は感じない。カラスに変身しているからなのか、もしくは違う生き物になっているからなのか感知できない

 

 

だが・・・・確実にここからはベヒーモスと決着の地だと確信する。

 

 

もちろんその黒雲の入り口に立ち止まることもない。この先を進む

 

 

「黒雲の中に入るぞ。ここからは本当に引き締めろ。全方位にモンスターが出てくることを覚悟しろ」

 

 

そうして俺を先頭に進み、隊列を崩さずに黒雲の中に入っていく

 

中に入ると、息苦しくもない。黒い霧で相変わらず前は見えない。それでも黒雲の中心の多く深くまで進む。奥まで進めば当然猛毒の嵐にも近づくことになるのだが、そこでベヒーモスがいるのが確かなため、防御体制や襲撃に対応できる戦闘態勢で進んだ

 

しばらく進む、霧が晴れた奥まで進み

 

 

黒く染まった砂漠に辿り着く。そこに・・・・・・砂に埋もれた大量の人や獣人やエルフやパルゥムも含めた死体が転がっていた

 

 

「うわあ!?」

 

「なんで死体が!?こんなところに!?」

 

「これは・・・どういうことだろうね」

 

 

「間違いないな。今まで俺たちがデダインの村にまで向かった途中に廃墟となった村や町があっただろう。そこが無人になっている理由はこれだ」

 

「まさか!?・・・・ベヒーモスが腹を空かして、この人たちを攫って食べていたんですか!?」

 

 

「そうだベル。俺らも生物だから立派な『食材』にもなる。奴らだって腹を空かせたら何かを食べる。弱肉強食として当然だ」

 

「酷い!!子供まで!」

 

「同胞がこんなにも・・・」

 

 

「モリガン・・・・またあの時のように本当に殺戮を楽しんでいるようだね」

 

「それがあいつだ」

 

 

フィン達東ルートと俺たち西ルートもここに辿り着く途中でいくつか廃墟となった小さな村や町があった。そこもしっかり住民が居るか確認をした。だが無人だった。微かに街の建物の壁には獣の爪の傷痕や血が飛び付いたりと襲撃の跡があった。

 

無理やりベヒーモスの子供に捕らえられ。餌として無残に終わった村と街の住民の者たちであると。今転がっている死体を調べて理解した

 

少し斬れた部分から食いかけの跡があった。餌であることがハッキリしていた

 

 

 

無残ながら中途半端に体を残してこの砂漠に捨てられていた。察するにここは彼らの墓場と言うことだろう。大人や女だけでなく、子供や・・・・最悪として赤ん坊まで容赦なく上半身だけを残して食われていた

 

 

「モリガン・・・・殺戮の女神・・・僕たちの同胞までこんなことをして・・・・そんなに殺戮がしたいのか」

 

「フィン。もうその屍たちは砂漠の奥に埋めて眠らせてやれ。生きている俺たちにこんな惨めな姿を見られるのはこいつらにとっては痛みでしかない。全員死体を掘り返すな。今俺たちにこの屍になった者たちにできることはこれくらいしか無い」

 

 

「くそ・・・」

 

「なんて酷いことを・・・」

 

「こんな小さい子供まで・・・・生まれたての赤ちゃんまで・・・」

 

 

「これがモンスターに襲われて無残に殺された者たちの末路だ。これが現実だ。仇ならこれから取ればいい」

 

「く・・・・」

 

「アイズ・・・・」

 

「うん。わかっている・・・」

 

 

そうしてアイズは小さな子供の目を手で閉じさせ、砂の中に埋めてあげた。しっかりと周囲に居る者たちもまだ砂の上で転がっている者を砂の中に埋めてあげた

 

こうすることしか死者たちにできることがなく、死んだ者は生き返らないとこうたむけるしか方法がなかった

 

 

「この砂・・・・触ってみてわかったけど・・・砂じゃなくて灰じゃない!?」

 

 

「ああ。俺もここで辿り着いてわかった。これはモンスターが死ぬ時に出る灰だ」

 

 

「うお!?本当だ!?ってことはこの一面辺りが・・・・全部か!?」

 

 

「そうだモルド。おそらく・・・これはゼウスとヘラ・ファミリアが倒した。十五年前の『ベヒーモスの死骸』の灰だ。そうだろう?フィン。ガレス。リヴェリア」

 

「ああ。これは全部ベヒーモスの灰だ」

 

「それくらい大きさの体積があったと言うわけだ」

 

「ここでは何も生まれやしないから心配ない、じゃが・・・・ここも十五年前はは美しい草原だったのじゃが・・・・・ベヒーモスを倒したことでこうなってしまったのだ」

 

 

モンスターを倒せば灰になる。それは冒険者たちが常識に知っていること。だがその灰がここ砂漠になる程の地面一帯に散らばっている。亜種ではないゼウスとヘラのファミリアが倒したベヒーモスは相当の大きさと体積をしたモンスターと言うことになる。

 

俺とベルたちが遭遇したベヒーモスはそれほど大きかったわけではない。少しひと回り小さかった。所詮亜種だからなのか、元々の大きさを見ていないから俺にはわからない

 

その現場でベヒーモスを見たフィンやオッタルたちが言うには、この砂漠一帯が灰でできる程の大きさ、昨日遭遇したベヒーモス・オルタナティブはそれなりに小さく、それほど大きいとは感じなかった

 

 

いくらモリガンがベヒーモスを復活させたとは言え、元々のオリジナルの完全復活させることは、昨日の目の前で出くわして見る限りは、亜種として生き返らせることしかできなかったようだと、推測している

 

 

 

 

 

 

だが

 

 

本当にそうなのかと俺は疑った

 

今確かに物凄い強大な力を今ここ黒い砂漠に辿り着いて感知はしている。実際のオリジナルのベヒーモスの気配を感知したことがないからわからないが

 

 

明らかに桁違いな力を持つモンスターがここに居る事を感じる。でもそれは昨日出くわした『ベヒーモス・オルタナティブ』のものではなかった。だからこの先に感じる気配は大きい気配を二つ感知している

 

一つは明らかに昨日出くわしたベヒーモス・オルタナティブの気配で間違い何だろう。昨日を感知していたからまだわかる。

 

だが

 

もう一つがなんなのかがわからない。でもその大きな気配は明らかにベヒーモス・オルタナティブを上回る何かを感じる。だから今でもモリガン はベヒーモスを復活とは別にそれ以外の何かを用意していると推測する。

 

 

一体あいつは何を用意しているのか、ここに来てから安心できなかった

 

 

 

とは言っても・・・・

 

 

「そろそろ来たみたいだぞ?」

 

 

「っ!?おい!すげえ来たぞ!」

 

「モンスターに囲まれています!敵の方向は・・・・・全方位!?」

 

「もう囲まれている!?」

 

 

そんな事を考えている暇はもう終わった

 

モリガンが何処かで俺たちがここに入ってくるのを見掛けたのか、全本位からベヒーモスの子供でるモンスターを送り込んできた。俺とベートとアキとナァーザがいち早くその気配に気付いた。獣人であるこの三人も黒い霧に覆われたとしても、モンスターの気配を匂いなどで感知していた

 

 

「囲まれたなら囲まれたで結構だ。全員応戦しろ!一匹たりとも残さず完膚なきまでに滅ぼせ!!村と街の人々を殺した連中を許すな!!」

 

 

「「「「「「おおおおおおお!!」」」」」

 

 

そうして囲まれようが関係なく、俺たちはここに来た以上は戦う事は変わらないと、俺たちはそんな状況下においても挑む

 

アイズとベート以外が武器を持って応戦する。

 

 

「よし!」

 

「ぶっ殺すぞ!」

 

 

「待て二人とも。お前たちはここで待機だ」

 

「え!?」

 

「は!?なんでだ!!ジーク!」

 

「忘れたのか?俺たちの本来の作戦を。ここで体力を無駄に使うな」

 

「ダメ?」

 

「ダメだ。ベートもベヒーモスに挑むために体力を温存しておけ」

 

「ち・・・・わかった」

 

 

ベートとアイズはやる気満々だったが、この後の戦闘のために体力温存のため待機させた。この後三人だけでベヒーモスと戦うと言うのにここで体力を使われては困る。

 

だが・・・・・・確かに加勢が無くては困る数だ。ここまでに辿り着くまでこいつらベヒーモスの子供と進軍する途中で戦ってきたが、確かに今まで以上の数が出てきている

 

 

正直捌ききれないと言うのは確か、こればかりは認めざるを得ない

 

 

 

だが

 

 

こちらにも『ジョーカー』が二人も居る。そいつらを今使用するべきだと。俺だけで無くフィンも気付いた

 

 

「フィン」

 

「わかっているよジーク。オッタル。アレン。有言実行だ」

 

 

「いいだろう」

 

「ち!ジークだけじゃなく・・・クソチビにまで命令されるとは・・・本当にイラつく」

 

 

「黙ってやれアレン。でなきゃフレイヤに『お前は使えなかった』と報告してやるぞ?」

 

「て、テメエ!?・・・・ち!・・・・ああ!やってやるよ!!」

 

 

こっちにはオラリオ最強を誇る『フレイヤ・ファミリア』の団長と副団長が居る。この二人だけでこの百をも超える数でも無双できると言う事を。こちらにも切り札があった

 

 

そして二人が動く

 

 

 

「どけ」

 

「邪魔だ!!」

 

 

『『『ガアアアアア!?』』』

 

 

「な!?あの大型竜巻を纏った大きいサイズのモンスターを一撃で!?」

 

「それも三体同時ですよ!?」

 

「流石はフレイヤ・ファミリアと言う事だろうな・・・」

 

「アーニャ・・・・あんたのお兄さんってあんなに強かったのね?」

 

「兄様もそうだけど・・・・当時一番ヤバかったのはミア母ちゃんだけどにゃー」

 

 

「まあ・・・・確かにミアがここに来てくれた方が良かったが・・・・あいつもオラリオの防衛に一応回っているからな・・・・・あいつも連れてくればこの『クソ猫』を黙らせてくれたんだがな・・・」

 

「聞こえているぞジーク!ミアに余計な事を言ったら承知しねえぞ!!」

 

 

ミア・グランドは元フレイヤ・ファミリアの団長。オッタルとは良き競い合うライバルでもあった。あの女のパンチは確かに威力はある。当時冒険者でもあったフレイヤ・ファミリアに所属していた彼女はゼウスとヘラのファミリアにも負けない腕力を持っていた。

 

ドワーフの女でもあるから、腕力にかけてはオッタルと並ぶ力。彼女はレベル6であるがそれでもまだ現役と変わらない力を所持し、レベル7のオッタルでも未だに互角。アレンもそのミアの恐ろしさを知っているため、本人はミアがやめた後はあまり関わろうとしない。下手な事を言ってぶっ殺されたくないからだろう

 

 

ここに来てくればいい戦力ではあるが、彼女にも店があるため、オラリオを出るわけにはいかなかった

 

 

 

まあ今は居なくても、二人とも無双しているようでどうやら戦況の有利はこちら側があることに変わりはなかった

 

オッタルは昨日もほぼ一人で無双をしていた、にも関わらずまたここでも一人で突っ走る。無謀にも無茶にも他の者が当然思うが、俺たち第一冒険者からすればレベル7などこのようなものだと、いつもの事だと驚きはしなかった

 

 

「す、すげえ」

 

「あの二人がもう圧倒している状態です・・・」

 

 

「呆然するな!まだ敵は多く居るぞ!」

 

 

「そうだぞ大男!俺たちは先に行くぞ!」

 

「すいません!先行きます!」

 

「千草殿も!武器を構えてください!」

 

 

「僕が先陣します!ファイア・ボルト!!!!」

 

 

「お、おお」

 

「命・・・・なんかヘスティア・ファミリアに入ってから・・・率先するようになった?」

 

「おお!ヴェル吉も見ない内に大きくなったな。真っ先に前線に出るとはな・・・」

 

 

「ほう・・・・あの僕らの同胞・・・・・確かリリルカ・アーデだったかな?・・・・サポーターとジークから聞いているが、よくあそこまで前線に出る。ヘスティア・ファミリアはジークから勇気を貰っているようだね・・・」

 

「うう・・・私もベル・クラネルに負けてられません・・・・リヴェリア様!私も前線に出ます!」

 

「おいレフィーヤ!?お前は魔導師だぞ!?わかっているのか!」

 

「それでも負けたくないんです!」

 

「私も行くよ!!アルゴノオト君に負けない!ジーク見てて!私もやれるから!」

 

「ティオナ!ああもう勝手に!・・でも・・・・・・私も本気で行くわ!」

 

「自分も行くっす!ここで引き下がらないっすよ!」

 

「ちょ!?ラウル!?」

 

「お、おい!?お前までジークのファミリアに染まったのか!?」

 

「私達も行くから待ってください!」

 

「申し訳ありませんリヴェリア様!私たちも行きます!」

 

 

「まったくレフィーヤは。本当に変わったな・・・・だが・・・・私も行こう!ディオ・テュルソス!!」

 

 

 

「お主ら・・・・」

 

「やれやれウチの団員もヘスティア・ファミリアに・・・・いや・・・ジークに毒されているのかもね・・・」

 

 

「変な事を言うなフィン。ベルたちは俺の指示を聞いているだけであって。レフィーヤたちまでに誘惑するような発言をした覚えはない」

 

「ずるい・・・・」

 

「ち・・・白兎のくせに・・・・」

 

 

「お前らは待機だぞ?」

 

「う、うん・・・・」

 

「何度も言うんじゃねえ!それくらいわかっているに決まっているだろ!」

 

 

と言うように、俺が指示をしたと言うより、俺が敵が目の前にしているのにボサとするなと注意しただけなのだが、その言葉にベルたちが更にオッタルたちのように先走るように前線に出た。

 

レベルは低いとは関係なく、ただ目の前の敵を応戦していた。オッタルとアレンの戦う姿を見て負けられないと冒険者としての魂に火が付いたのか、それを見たレフィーヤやティオナやティオネにも火が付き。問答無用でベルたちの跡を追うように前線に突撃する

 

 

単に俺がこいつらに戦意に火を付けただけに過ぎないと思うが、こいつらがこうなったのは、フィンが言うには俺に毒されたと、身に覚えのない事を言われた

 

 

俺はベルたちにも毒されるような事を発言した覚えもないと言うのに、そのような事を言われたことに対しては『心外だ』としか思っていなかった

 

 

「だが・・・いい戦況になったことには変わりはない」

 

 

「そうだね。皆!このままモンスターを全て倒し!ベヒーモスが居る中心まで目指すぞ!」

 

 

「「「「「「「うおおおおおおおおお!!!」」」」」」」

 

 

「ヴェル吉に負けてられんな!節操達極東人も行くぞ!」

 

「おお!」

 

「私も頑張る!!」

 

 

桜花や桜花や千草も、ヴェルフと命が前線に恐れず出ていることに驚いて、自分たちも負けないと極東人としての底力を見せようと、椿達も出た

 

 

「ジーク!遠慮なく行っていいんだね!」

 

 

「ああ。と言うより全力で行けルノア。相手はベヒーモスの一部でもあるんだぞ。遠慮なんて必要ない。もちろん冒険者ではなくてもギルドからは俺の権限で戦闘の許可をしてある。遠慮なく行け・・・・・リュー!蹴散らせ!」

 

 

「はい!皆さん!ジークさんが私たちの事情は伏せてくれます!問答無用で闘ってください!」

 

「わかったにゃ!」

 

「それじゃあ遠慮なく行くにゃ!!」

 

 

冒険者ではない豊饒の女主人の店員であるリュー達は、オラリオの外に出る事も理由なく戦うこともギルドからは許されない。だが、もうオラリオやギルドの権限は無い。だから俺がウラノスの権限を奪った以上。俺がルールであり。リュー達も大事な戦力として、ギルドから罰されることはない

 

リューに関しては『ルドラ・ファミリア』の団員を復讐で殺したと言う大罪があるため、ギルドからブラックリストに載せられているため、犯罪者として表に出ることは許されない

 

当時同じ市民を守るファミリアである。ガネーシャ・ファミリアの友人でもあるシャクティには正体がバレている

 

それでも友人として正体をギルドにバラさずにしているようで、今でもギルドにバレずに居る

 

 

と、シャクティ自身はそうしている事を以前リューから聞いたが、実はそれを以前聞いて以来、昨日オラリオから出発する前に

 

シャクティにリューのことをもしギルドにバラしたら『お前らのファミリア主神もろとも全員殺すぞ』と、脅しをかけておいた

 

シャクティは根が真面目だから本気で報告する可能性が高いと、ガネーシャ・ファミリアは正義感は強い。あのファミリアは市民の治安をしっかり守っている。その正義によって友人であるリューにバラすことがあると、時には正義が俺の友人に害が出るのではないかと、念のため脅しをかけた

 

 

カオス・ヘルツで心を薄れている俺に、シャクティと言う同じレベル五の冒険者でも、友人のリューに手を出すのであれば容赦しないと。ガネーシャ・ファミリアに喧嘩を売るようなことをした

 

それを口にしてでも、リューに手を出すなら古い友人のファミリアでも本気で滅ぼすつもりだった

 

 

「まったく・・・・ジーク。私はリュー・リオンを売るつもりはないが、他の者にバレてもお前は昨日私に言ったことを他のファミリアにも言う気か?」

 

「当然だな。友人を守るためなら他のファミリアなど滅んでしまって構わん」

 

「はあ・・・・お前は性格が変わっても・・・・やり方は何も変わらんな」

 

「お喋りしている暇あるのかシャクティ?敵がもう迫っているぞ?」

 

 

「わかっている!お前達どけ!!はあああああ!!」

 

 

シャクティは昨日言った言葉に愚痴が出た。知ったことではないと俺は他のファミリアにもリューがルドラ・ファミリアを壊滅させたと知ったら、他のファミリアを滅ぼすつもりだった

 

ルドラ・ファミリアは『イヴィルス』と同じ派閥。あのようなファミリアは滅んで当然だと、リューのしたことは正義だと。唯一俺はリューの行為は正しいと認めた

 

 

そうでないと思う人間が一人でも居るなら、この世から消えて貰うつもりだった

 

 

「うわあ・・・アスフィ。みんな戦っているよ?」

 

「ええ。正直今は私も冒険者として戦わなくてはならないと、私も戦意を見せるとしましょう!ふ!!」

 

 

『ガアアアアア!!!』

 

 

「アスフィ!?魔道具の爆弾あんなに持っていたの!?」

 

「ベヒーモスと戦うんです。これくらい製作しておいたんです」

 

「たく、アスフィ。派手にやるじゃねえか。俺たちヘルメス・ファミリアもやるぞ!!」

 

 

「「「「おお!!!」」」」

 

 

アスフィもいつも落ち着いて戦闘すると言うのに、今日だけは冒険者らしく荒々しく。量を考えずに爆破を起こした。しかも火薬の量を考えずに以前漆黒のゴライアスを相手した時よりもすざましい爆破を起こした

 

今回は本当に建物を吹っ飛ばす爆破を起こしている。アスフィは王族出身だと言うのに、随分とオラリオに染まったのだと、アスフィも腐っても冒険者だと理解した

 

その団長であるアスフィが動いたことで、団員達も恐れることなく挑んだ

 

 

「ああくそ!こうなったら俺たちもやるぞ!俺たちだって雑魚でも冒険者だ!底力を見せるぞ!!!」

 

「モルド!?」

 

「お前も本当にジーク・フリードに毒されたんじゃないのか!」

 

「なんだっていい!お前ら!いっちょやるぞ!!」

 

 

「「「「「おおおお!!!!」」」」」

 

 

「モルドもボールスも戦意を見せたか」

 

 

レベル2しか居ないオグマ・ファミリアも戦意を燃やして、雑魚だろうと前を進んだ。ボールスを筆頭に数だけを頼りにどんどん一匹づつしがみつくように襲った

 

 

 

「ぐわ!」

 

 

「ん?怪我をしたか・・・・・・アミッド!ナァーザ!」

 

 

「はい!動かないでください!魔法を掛けます!」

 

「こっちに退避して!ポーションを掛けるから!」

 

 

当然周囲に囲まれているのだから、全員ベヒーモスの子供を相手にして勝てるわけでもない。一人や二人くらい。怪我人が出て当然。そのためのヒーラーと回復要員のファミリアを用意してあるため。後衛からの回復もあるため問題なく突っ込むことができる

 

 

「全開っす!」

 

「まだまだ行くぞ!!」

 

 

全方向に囲まれていると言うのに戦況は完全に有利な方へ進んだ。囲んでいるベヒーモスの子供が立ち塞がっていると言うのに、どんどん灰となり、もうベヒーモスの子供に囲まれていると言うより、俺たちの領土がどんどん広がるように進行している

 

 

これなら黒い砂漠の中心であるベヒーモスの所まで問題なく進めると推測した

 

 

「す・・・すごい。モンスターがどんどん倒されていく!?」

 

「当然です!オラリオの冒険者のほとんどがここに居るんですから・・・」

 

 

 

「大分進めたか・・・・・・っ!・・・アレは・・・・」

 

「っ!?まさか・・・」

 

 

有利に戦況を進行することができたが、その途中で俺はある『風』に気づいた。それに気づいたのは俺とフィンだった

 

 

「全員止まれ!!霧の毒だ!!」

 

 

「っ!?ぐ。ぐわああああああ!!」

 

「ベル様!」

 

「リリルカ!ハイエリクサーだ!」

 

「はい!」

 

 

突然毒の霧が煙のように掛かってきた。その霧に前線に誰よりも先に居たオッタルやアレンも引き下がった。その毒の霧に直撃したのがベルだった。直撃したのは左腕だけ、その装備していたアームが消化されるように溶けていく

 

すぐにハイエリクサーで左腕は治した。だが左腕に装備したていたアームは完全に溶けて無くなった

 

 

「うう・・・・・まさか!?装備がこんな簡単に!?」

 

「フィン。これがお前が言っていた装備を溶かす風か?」

 

「ああ。懐かしいよ。またこんな恐ろしい光景を見るなんて・・・」

 

「なるほど・・・・進行している間に俺たちは・・・・もうベヒーモスの住処にたどり着いたようだ・・・・地面を見てみろ」

 

 

「え!?これって!?」

 

「砂漠が・・・・さっきよりも黒いです!!」

 

 

 

進行している内に俺たちはベヒーモスの住処までたどり着いたことに戦っている最中に気づかなかったようだ

 

今見渡す限りではさっきまで白い砂漠が。黒い砂漠へと変わっている。そしてこの先に・・・・黒い霧が覆われて前が進めない壁の先に

 

 

奴が居ると感知した

 

 

 

『グオオオオオオオオオオオオオ!!!』

 

 

 

「っ!?」

 

「今の鳴き声!?」

 

 

「居るぞ。この先に・・・・・・ベヒーモスが」

 

 

『ビュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!』

 

 

「うお!?また猛毒の嵐だ!」

 

「このタイミングで来たか・・・・っ!」

 

 

『グウ・・・』

『ガア・・・』

『ガウ・・・』

 

 

「ベヒーモスの子供が更に地面の底から出てきたぞ!」

 

 

ベヒーモスがもう先に居るのが感知アビリティの無いフィン達でもわかった。その先でベヒーモスが猛毒の嵐を展開し、更には周囲の地面から更に増援のベヒーモスの子供が出てきた

 

 

戦況はまたも悪化した

 

 

 

 

 

だがここまで来れば十分だと、俺たちは・・・・・前に出た

 

 

「ベート!アイズ!待たせたな!!俺たちも出陣するぞ!!」

 

「ち!待ちくたびれたんだよ!」

 

「うん!・・・行こう!!」

 

 

「アイズさん!」

 

「ベートさん!」

 

 

「本気で三人だけで行くつもりですか!?ジークさん!?」

 

「ああ。お前も毒の霧を浴びているからわかるだろう?俺たちでなければ突破できない。それとも俺たちが負けると・・・・思うのか?」

 

「い、いいえ!!!」

 

「それでいい、お前達はただ俺たちのやり遂げると信じろ。フィン!ここの指示はお前に任せるぞ!」

 

「うん。ジークもアイズもベートも・・・必ず帰ってきてくれ」

 

 

「生き残れたらな。行くぞ!!アイズ!ベート!俺たち三人でこの猛毒の嵐を突破する!」

 

「うん!」

 

「おっしゃあ!!」

 

 

そうして俺たちは迷うことなく。アイズはエアリアルを展開して飛んで猛毒の嵐を突入した。そしてベートも『オハン』と言う盾を前に出して走り出す。そして俺はリジルとフロッティを両手に持って何も魔法を掛けずにベートと共に走り

 

 

猛毒の嵐の中へと入っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!

 

 

 

と紫色の竜巻をベートはオハンと言う盾を前に出して防ぎ、俺はリジルとフロッティの二つで防御体制を取りながら、立ち止まることなく前を走った。強風で体が吹き飛ばされそうにもなるが、そこは踏ん張って体を前に倒すようにただ走った

 

オハンや俺のスキルで装備が溶けることは無かった

 

 

「く・・・くう!くそ!・・・これ程かよ!」

 

「ベート。ギブアップか?」

 

「は!?そんなわけねえだろうが!人の心配してないでテメエも進め!」

 

「それでいい。さっさと走れ」

 

 

そうして俺たちはただ走った。後ろを向いても、横を振り向いても、前を向いても、視界がまったく無い真っ暗な空間。その暗闇の中を走り続けた。暗い夜を走るように、それでも感知や匂いや気配を辿って俺たちは前を進んだ

 

今頃アイズは俺たちの真上を飛んでいる。その注意を逸らすために俺たちは地面を走る。それを無理に走り続けると・・・・

 

 

「っ!見えたぞ!」

 

「ち!昨日もそうだが相変わらずでけえな!」

 

「なんだビビったか?所詮クソ犬だったか・・・」

 

「テメエこんな時でも俺をバカにしなきゃ気が済まねえのか!」

 

「でも少しは気が紛れるだろう?こんなデカイ敵を相手に怖気つくことが無くなるだろう?」

 

「認めたくはねえが・・・・確かにこれを相手にするってことに関してはな」

 

 

『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

 

 

ベヒーモスを前に出ると末恐ろしく感じるのは事実だった。流石は『三大冒険者依頼』の一つ。亜種とは言え、ゼウス・ヘラのファミリアはこれを相手に戦ったとなると、これに勝った彼らはやはりかつては最強のファミリアと呼ばれるにふさわしいと思うほどに強敵だと恐ろしく思う

 

昨日出くわしているとは言え、恐ろしい力を感じる。心が薄れている俺でも本気でいかないと死ぬと思っているほど、生存率が更に低くなると思っていた。それも猛毒の嵐の中でこれから戦うとなると、視界も暗く、とても動きづらい砂の上で挑むとなると生存率は低いも同然だった

 

 

だからと言って、俺たちはここまで来て成すべきことをすべきだと、決して下がらずに武器を構えた

 

ベートも片手だけではあるが魔剣を手に持ち、オハンを前に出しながら挑む

 

 

「行くぞ!このまま倒すと言う方向でも構わん!とにかく注意を引け!」

 

「テメエに言われなくてもそのつもりだ!!」

 

 

そうして俺たちは今真上に居るアイズを決して気づかせないために、無駄に暴れようとベヒーモスの顔に斬りつける。その応戦にベヒーモスは首を振って竜巻を起こす

 

 

「く!はあ!!」

 

「ぐ!おらああ!!」

 

 

「「はあああ!!!」」

 

 

『グギャアアアアアア!!』

 

 

ベートはベヒーモスの頭の中心に紫色の角があると確認した、そこから黒い風が纏っているのも確認できる。だがそこまで辿り着つせないのか、ベヒーモスは俺たちの狙いだけはわかっているようで頭を下げない。ジャンプして飛んでも真上から竜巻が落ちてくるため顔まで飛ぶことはできない

 

仕方なく足を狙った。顔を狙わせてくれないなら、足を狙って身動きだけを崩そうと俺だけでなくベートも俺と同じ考えをしているようで、俺が何も言わなくても狙いを考えていた

 

 

「くそ!竜巻が面倒だ!」

 

「顔を狙う必要はない!足でもなんでも顔以外で狙うだけでも身動きを封じるぞ!」

 

「テメエに言われなくてもそうするつもりだ!だがこいつらが鬱陶しい!」

 

「それがベヒーモスの能力だ!猛毒の風をオハンが防いでいるだけマシだろ!場所が悪いからと言って本気で戦えないなんてふざけたことを言うなよ!文句を言わずに崩せ!」

 

「さっきから威張りやがって!上等だ!!ここでテメエに負けてられるか!!」

 

 

そうして俺たちは場所がとても悪い中でも、ベヒーモスの攻撃を避けながら身動きを崩そうとする。あまり俺たちの攻撃は効いているようには見えないが、それでも挑み続ける

 

 

真上に居るアイズを気づかせないために、ここからは俺とベートは体力勝負だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今俺たちの真上に居る。エアリアルで空を飛んでいたアイズはと言うと

 

 

「あれがベヒーモス・・・・それであれがジークが言っていた『紫色の角』。確かに見えた。でも・・・・」

 

 

猛毒の嵐の中、黒い霧の中とは言え。目の前に居るベヒーモスに全体は見えていないが、顔だけが若干見えていた。底から紫色の風が纏った俺が言っていた『紫色の角』を目で確認できた

 

だが、嵐が酷くベヒーモスに近づくことが困難であった。それどころか

 

 

「く!・・・どうして竜巻が私を集中的に・・・狙うの!?」

 

 

まさかもう俺が建てた作戦がバレたのか。それとも俺とベート以外に何か気配を感じてアイズに気づいたのか、ベヒーモスがアイズを集中的に猛毒の竜巻をアイズに攻撃する。多数の竜巻に襲われるだけでなく、ベヒーモスが体全体にその竜巻を纏っている、その竜巻も今俺たちが放たれている竜巻よりも威力が強く、近づくことができなかった

 

 

「っ!」

 

「あ?おいどうしたジーク!よそ見すんな!」

 

「作戦失敗だ!ベヒーモスがアイズに気づいた!」

 

「は!?気付きやがっただと!?」

 

 

エアリアルの魔力が弱まっているのを感じて、俺はアイズがベヒーモスに攻撃されているのを俺は気づいた。作戦は失敗した。やはりいくら暴れて注意を引き付けたとしてもベヒーモスは敏感なのか、すぐに気づかれてしまった

 

作戦は最悪ながら失敗してしまったのだ。これではアイズも近づくことができない。ここまで来といて失敗で終わるなどできない

 

 

 

 

 

 

だから『最後の手を使おう』と思う。失敗することも考慮してある。

 

生存率が低くなると言うのはこのことだ

 

 

 

「ベート・・・・わかっているな?」

 

「ああ・・・・・覚悟しているから問題ねえよ」

 

 

「え?」

 

 

そうして俺とベートと何か喋っているのを聞こえたアイズは、作戦を途中で中止して地面に着地する。そのやりとりを聞きに俺たちの元へ

 

 

「二人とも・・・何をする気!?」

 

 

「俺たちが全力でベヒーモスの猛毒の竜巻を無理やり剥がす。マインドダウンを覚悟で魔法を全力でぶっ放す」

 

「捨て身戦法でベヒーモスを叩くってことだ。そうすりゃあベヒーモスもお前を狙ってこねえよ」

 

「そんなことしたら・・・・二人がベヒーモスに殺されちゃう!?」

 

「こんな作戦を建てた時からこれを考えていた。失敗した時の保険としてな」

 

「ここまで来たら俺たちでやるしかねえよ!テメエは奴が少しでも隙を見せたらあの角を剣で斬れ!」

 

「でも!!」

 

「お前はただ・・・・俺たちがこれでも死なないと信じろ。そしてそれを無駄にしないと、お前が必死にでも成功させろ」

 

「そうすりゃあ俺らは死なずに済む。お前の頑張り次第で俺たちが生き残るってことだ・・・・」

 

「俺たちの命はお前に掛かっているってことだ。重いかもしれないが、俺たちの命はお前に託す。道具のように使い果たせ・・・」

 

「でも・・・・

 

 

「俺は勝手ではあるが・・・お前がこの嵐を止めると信じている」

 

「だから俺たちがくたばる前に・・・・・あれを折れよ。テメエなら絶対にできるはずだ。ここで弱気になるんじゃねえ」

 

 

「ベートさん・・・・ジーク・・」

 

 

「行くぞベート。作戦変更で戦闘続行だ。アイズをなんとしてでもあそこへ辿り着かせろ!」

 

「ああ!ここでくたばってでも!アイズを何としてでもあの頭の上に届かせてやる!」

 

 

「「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」

 

 

そうして無謀ながらベヒーモスが纏っている猛毒の嵐を魔法で吹っ飛ばすなどをして、アイズに近づかせるためになんとしても突破口を開く。この身を滅ぼしてでも俺もベートもアイズを必ずあの角の所まで辿り着かせると

 

俺とベートは犠牲を選んだ

 

 

「ウオラ!!」

 

「ベート!雷だ!受けとれ!」

 

「ああ!これでも食いやがれええええ!!」

 

「はあ!ぜやああああああああ!!」

 

 

ベートは俺の雷を足で受け止めて、雷を纏って叩きつける。そしてそれと同時に俺も黒い雷を帯びたリジルとフロッティで猛毒の竜巻の壁を無理にでも斬り崩そうとする

 

 

「く!」

 

「ぐ!か・・・固え!?」

 

「竜巻でこの威力か!」

 

 

『グウ!!』

 

 

「「ぐわああああああああああ!!」」

 

 

ベヒーモスは反撃しようと、更に竜巻を大きくして弾き返され。その竜巻の威力は刃のようになり、俺たちは体中を斬り付けられた

 

 

「「ぐ!!」」

 

 

「ジーク!ベートさん!」

 

 

「来るなアイズ!」

 

「お前はそこで待っていろ!俺らであの竜巻をこじ開ける」

 

 

「でも!」

 

 

「必ずお前をあそこまで届かせる!俺たちがやられてもお前はやるべきことに集中しろ!」

 

「くそ!なんとしてでもこじ開けてやる!」

 

 

アイズは何もするなと待機させられ、その目の前で俺たちが体中から血を流してでも突破を繰り返した。紫色の角とは別の角で殴られたり、足で蹴られたりなどもされた。体がボロボロになってでも挑み続け。纏っている竜巻をなんとかしてでも突破しようとする

 

 

「はあ・・・はああ・・・くそ・・」

 

「く・・・・・流石は・・・・ベヒーモス・・・か」

 

 

もう限界に近いほど体がボロボロになるまで挑んだが、それでも竜巻の壁は剥がせず、瀕死状態になりそうな所まで体が負担していく。

 

 

「これでも無理か・・・・第三の世界!ムスペルヘイム!!」

 

 

俺は効くかどうかは見込みは無いが、無理に魔力を使ってベヒーモスにムスペルヘイムを発動して身体ごと燃やそうとベヒーモスの前でルーン文字を投げた。炎の波がベヒーモスに押し寄せた

 

 


『ガアアアアア!!』

 

「なに!」

 

「竜巻で炎を弾き返しやがった!?」

 

「あれだけの炎を竜巻で!?」

 

 

炎の波はベヒーモスが纏っていた竜巻を更に強風にして弾き返された。ベヒーモスを覆い尽くすほどの火炎の波を弾き返されたのは流石も驚いた。ムスペルヘイムはそれだけ俺の使う魔術の中で最高の魔術だった

 

それだけ強大な魔術でも弾かれる威力を持った竜巻だと理解した

 

無謀にもムスペルヘイムはベヒーモスには昨日は連続で効いたが、今の一撃だけでは効かなかった。

 

 

 

 

 

だが

 

 

かすかに竜巻が少し揺らいだのが見えた。つまりはあともう少しデカイ衝撃を与えれば竜巻を壊すことができると思った。強大な一撃だけでなく、それに続く一撃を・・・・つまりは二連撃分。大きなダメージを与えればいいと

 

突破口が見えた

 

 

ムスペルヘイムをもう一度発動させた後に、更にデカイ一撃を与える

 

そうすれば猛毒の竜巻を突破できると思う。確証はないが

 

 

「おいベート・・・・今の魔術の攻撃見ただろう?少し猛毒の竜巻が揺らいだ。もう一度アレを放つ・・・・・・その後で俺とお前でそれと同じ威力を出す」

 

「それで突破できるんだな?」

 

「でもそれをするってことは・・・・・・言わなくてもわかるな?」

 

「あの火炎の中に入るってことだな?」

 

「そう言うことだ。それと同時にあの竜巻に大きな一撃を与えれば突破できるはずだ」

 

「とんでもねえ賭けだな?」

 

「だが、やる価値はある。行くぞ?用意はいいな?」

 

「ああ!いつでもやりやがれ!」

 

 

「あの火炎の中に突っ込む!?本気なの!?・・・・二人とも!?」

 

 

「もうそれしかねえ!!」

 

「あの火炎の波が直撃した時、竜巻が少し揺らいだ!その直後にもう一撃与えれば突破できる見込みがある!これしか方法がない!」

 

 

アイズがそんな捨て身戦法でベヒーモスが纏う竜巻を崩すなど、死に行くような者と同じだと、アイズが呼び止めるが、そんな言葉は聞かずに俺とベートは迷うことなく、ベートは突こっむ準備をしてオハンを前に出して待機している

 

その直後にもう一度ムスペルヘイムを俺は放つ

 

 

「魔力最大!!竜巻を崩せ!!!ムスペルヘイム!!!!!」

 

 

ゴゴゴ!!と俺は地面に赤い文字でできたルーン文字を叩きつけた。そのルーン文字から火炎が吹き出た。その火炎の波がベヒーモスを再び襲う。

 

 

『グオオオオ!!!』

 

 

またもベヒーモスは自身の身に纏う竜巻で吹き返そうとする。その同時を見逃すことなく、俺とベートは突っ込む

 

 

「行くぞベート!ムスペルヘイムをお前のブーツに吸収しろ!!」

 

「言われなくてもそのつもりだ!!」

 

「俺も・・・・・20万ボルトの雷を放つ!!」

 

 

ベートには今度は俺が放つ雷ではなく。目の前にあるムスペルヘイムをミスリルブーツで吸収し、炎を纏って竜巻の壁を壊す。俺は自身の体に溜まっている雷をフロッティに流して崩そうとする

 

フロッティは防御破壊と言う『ソードスキル』がある。それに加えて雷も重なれば、猛毒の竜巻も突破できると全力を賭ける

 

 

無論ムスペルヘイムは皮膚なんて簡単に溶けるほど燃え尽きる。しかも竜巻の壁を壊すために魔力最大で放った。今目の前にあるムスペルヘイムの中に突破すれば当然助からないものだと俺は見込んでいる

 

 

だが

 

 

そんな溶岩に等しいムスペルヘイムでも俺とベートが焼かれて死ぬとは思ってない。使命を全うするために俺たちの命を

 

 

 

 

竜巻の壁を壊す剣となってムスペルヘイムを突っ込んだ

 

 

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」

 

 

ムスペルヘイムの中、皮膚が溶けるように俺たちの体は燃える。いくら俺が雷神トールの息子とて、体から雷を纏っていてもムスペルヘイムの火力は世界を焼き尽くす豪炎。ベートも手に持っているオハンを前に向けずに体だけでそのままムスペルヘイムの力を体で吸収し、目の前にある

 

 

黒い竜巻の壁を剣と足で崩す

 

 

「砕けろおおおおおおおおおおおおおお!!」

「ぶっ壊れろおおおおおおおおおおおお!!」

 

 

『グウ!?』

 

 

ガキン!!!!

 

と、鳴るような轟音が鳴り響く。強風に炎と雷がぶつかる音。その衝撃に猛毒の風に揺らぎが見えた。どんどん猛毒の竜巻が威力が弱まっていく。そのチャンスを俺とベートは見逃さなかった

 

 

「今だ!!」

「くたばりやがれえ!!!」

 

 

と、全身皮膚まで焼き尽くされる中。更にそこからデカイ一撃を入れた。俺はフロッティを、ベートはもう片方の左足に込められた火炎を纏った蹴りを

 

竜巻を吹き飛ばす一撃を入れた

 

 

『グウ!?』

 

 

「「はああああああああああああああああ!!!」」

 

 

 

ビュン!!!

 

 

と、ムスペルヘイムの火炎が吹き飛ぶと同時に、ベヒーモスを纏った竜巻が吹き飛んだ。ベヒーモスは防御を砕かれ、頭の上にある紫色の角までの突破口を開くことに成功した

 

 

 

「ぐは!」

「がは!」

 

 

その竜巻を吹き飛ばした俺とベートはその場で倒れた。盾や鎧があったとしても、全身大火傷をした俺たちの体は力尽きてもう次に全開は出せない

 

 

 

だが

 

 

 

 

これでいいと、俺とベートは重症になりながらも笑った

 

 

「行け・・・・・お前ならできる」

「ぶちかませ・・・・派手にやれ」

 

 

 

 

「「アイズ!!」」

 

 

「うん!」

 

 

待機していたアイズに俺とベートは全てを掛けた・・・・アイズに全てを託した。お前なら砕けることができると、俺たちが命を賭けて捧げたこの時間を無駄にしないようにと

 

アイズはただ待機していただけでなく、魔力を溜めていた

 

ベヒーモスの竜巻が崩されたらすぐに展開準備をすることくらいはわかっている。だから魔力をここまで温存していた。今までもこうやって誰かに助けられた。彼女は本当に多く助けられていると、アイズ自身理解していた

 

 

フィン、ガレス、リヴェリア、ラウル、アキ、クルス、リーネ、アリシア、ティオナ、ティオネ、ベート、ベル・・・・・・

 

 

そして俺など

 

 

アイズは今まで助けてくれた人たちの分を

 

 

 

 

 

 

 

 

返そうと、期待に応えようと。彼女は全力風を身に纏った

 

 

 

「ジークやベートさんが崩してくれたこのチャンスを!私は・・・・・・この風で切り開く!!!」

 

 

『グウ!!』

 

 

ベヒーモスは再度大型の竜巻を展開して身を守る竜巻の鎧と言う壁を作り出す。だがその前より早く

 

 

『ぐう!?』

 

 

彼女がもうすぐ顔の前に辿り着き。頭に乗って剣を突き刺す。目標である・・・・・紫色の角に向けて

 

 

 

 

「リル・ラファーガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 

 

 

彼女は紫色の角を、デスペレートで突き刺した

 

 

『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!??』

 

 

その突き刺された痛みにベヒーモスは喚いた。角と言う皮膚の痛みとは違う痛みがあるのか、ハウルを叫び始めた。その同時に

 

 

「く!」

「ち!」

 

 

と、ベヒーモスから黒い突風が吹き出した。その突風に倒れているベートや俺も巻き込まれた。今ベヒーモスの近くに居る俺たち毒の霧の中のみ、突風が巻き起こされて、俺たちの姿が霧に包まれて見えなくなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霧の外

 

ベル達が俺たちが角を折っていると同時に、彼らもなんとかベヒーモスの子供を全部退治することに完了していた。その後でベルとレフィーヤが俺たちが入った黒い霧の前に待機していた

 

 

「ジークさん・・・・」

 

「ベートさん・・・・アイズさん」

 

 

二人は入ってから大分経つと言うのに、三人が帰ってこない。それでも二人は俺たち三人を信じて待った

 

すると

 

 

『グオオオオオオオオオ!!!』

 

 

「っ!?」

 

「今の鳴き声は!?」

 

「まさか・・・・・全員退避!!」

 

 

そのベヒーモスの鳴き声に素早く反応したのはフィン。そのフィンの言葉にすぐに黒い霧は膨張するかのように、黒い霧の中から突風が舞った。その衝撃に速やかにフィンは全軍を下がらせた

 

 

「ぐう!」

 

「ぬう!」

 

 

真っ先にその黒い霧に近かったベルとレフィーヤは徐々に下がりながら地面にしがみ付くように踏ん張った

 

だが黒い風に直撃しても身に付けている装備が灰になることはなかった。そのまま突風が吹き続けて数分が経った。目には見えないものの

 

その突風が止むと、皆目を開けて黒い霧が包まれた先を見た。なにも変化が無いようにも見える

 

 

 

だがそこから

 

 

 

「はあ・・・・はあ・・・」

「ぐ・・・はあ・・・く・・」

 

「二人とも、しっかりして」

 

 

「ジークさん!?」

「アイズさん!?ベートさん!?」

 

 

アイズが俺とベートを無理にでも肩を手に回してでも霧の外まで連れ出してくれた。無論歩くことさえ困難な重症の体をした状態で連れ出された

 

 

「ジークさん!?なんて火傷を!?」

 

「ヒーラー!すぐにジークとベートに治療を!」

 

 

「聞けフィン!!」

 

「っ!?」

 

 

俺とベートの重傷を見て、すぐさまフィンは俺たちに治療を施そうとヒーラーを呼ぶのだが、それでも尚、俺はフィンに大事なことを伝えようと

 

右手にある物を俺は見せた

 

 

「やったぞ・・・・」

 

「ああ・・・・・フィン・・・なんとか砕けたぞ」

 

「フィン・・・・これで・・・・もう毒の風は起きないよ!」

 

 

「それは君が言っていた『紫色の角』!?」

 

「てことは!?」

 

 

「ああ・・・・・・これで全員近づけるぞ。もう毒の風は起こらない」

 

 

「「「「「「うおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」」」

 

 

と、俺が今手に持っている。俺たちの手でも持つことができる小さな紫色の角をフィン達に見せて。黒い風はもう起こせないと。俺たちの確証と賭けに勝ったのだと、今この場に居る皆が喜んだ

 

これでもう毒の風関係なしに全員近づくことができる

 

 

「す、すごいですジーク様!」

 

「さすがトールの息子だぜ!」

 

「ベートもよくやった!」

 

「アイズもベートも凄い!」

 

「本当にお前達は無茶をするな・・・・ベートも・・」

 

「仕方ないじゃろうリヴェリア。それがこ奴らじゃ」

 

「ジーク・・・ベート・・・アイズ・・・君たち三人は本当に凄い」

 

 

「うん。二人のおかげで私もあそこまで届いた」

 

 

「だそうだ・・・ベート・・・」

 

「ふん・・・・この程度は楽勝だ」

 

 

リリルカやヴェルフ、リヴェリアとガレスとフィンは俺たちの無謀である行動にあっぱれと言わん程の実力を見せて、本当に予想外の功績を作る俺とベートをフィンやガレスやリヴェリアも恐ろしく感じていた

 

ベートは全身大火傷を負っても、この程度は楽勝と言った

 

 

ならと俺はもうアイズの肩を借りずに自分で立った

 

 

「なら・・・・この後も付き合ってもらうぞベート」

 

「上等だ・・・」

 

 

そうしてベートももうアイズの肩を借りずに自分で立った。普通なら俺もベートもこの重症の体に倒れるのが普通だが、頑丈なのか我慢強いのか。無理にでも立ち上がって・・・・これからの本番に体を向った

 

 

「ジークさん!そんな無茶を!」

 

「ベートさんも・・無茶をしないで下さい!そんな体で!」

 

 

「うるせえ!ノロマに心配される玉じゃねえ!」

 

「それに・・・敵は待たせてはくれないからな・・・・見ろ二人とも」

 

 

「え?・・・」

 

「あれは!?」

 

「霧が晴れていく!?」

 

 

そうしてベートは俺には負けないと、俺同様に立ち上がった。俺に言われなくてもまだこれから本番だとわかっていようで例え体の皮膚が溶けるように大火傷をしてもこれから本来倒す敵を目の前に背は向けられないと、毒の霧の方に向いた

 

俺の言葉にベルやフィン達も毒の霧の方へ向く。するとどんどん前が暗くて見えなかった霧が晴れていく。そしてベヒーモス全体が見えた

 

 

「うお!?」

 

「で、デケエ!?」

 

「なんてデカさだ!」

 

「これがベヒーモス!?」

 

 

全冒険者にベヒーモスの姿を見た瞬間。今まで彼らが見ていた階層主と言う。ゴライアスやアンフィス・バエナとは比べ物にならないほどの大きさをしたモンスターにこれから挑み。これがかつてゼウスとヘラのファミリアが退治したと言うベヒーモス

 

改めて初めて全体の姿を見た冒険者達は恐ろしくも感じた

 

 

だが

 

 

「オッタル。どうだ?」

 

「ああ。間違いなく・・・・亜種だ」

 

「姿形や似ていても・・・オリジナルより少し一回り小さい」

 

「なら・・・その力も半分弱いはず・・・」

 

「毒の風も出せない・・・・ジーク・・・」

 

 

「ああ。フィン。これで総攻撃ができる」

 

 

霧が晴れ、全体姿を俺たちに見せると言うことは間違いなく奴はもう猛毒の風は出せない。確信を持っている。問題としてはこのベヒーモスを復活させたモリガン達の姿はまだ一向に見えない。まだどこかでカラスになって隠れているのか、俺の感知でも確認はできない

 

だが今はそれは後にして、今目の前に居る挑むべき敵を逃すわけにもいかないため、モリガン達のことは後回しにして、猛毒の風がもう引き出すことのできない今がチャンスだと、見逃すことなく

 

 

俺とベートは全身大火傷を負っても一歩前へ出る

 

 

「ジーク!せめて回復薬を!」

 

「ヴァナルガンドも!」

 

 

「そうだな・・・・少しは体を治さなくては」

 

「へ!まだこの程度で俺はくたばれねえからな!」

 

 

かなりボロボロにもなっても、それでもまだベヒーモス本体と戦い続けると、俺たちはナァーザとアミッドから貰ったエリクサーを体に掛けて少しは体の火傷を治す。とは言っても一本だけでは全開治るわけもなく、全回復してないがそれでもこの火傷を治さないだけでもマシだと思って、一本だけを掛け、ボトルを捨てて

 

 

俺は全軍より一歩前へ出る

 

 

そして全軍に総攻撃の合図を出す。このためのチャンスは今この時のために、全ては備えてきた。今この瞬間を全て叩く時

 

ここに来るまでに村や街の人々の多く殺された者達の恨み。今こそ晴らす時がここに来た

 

 

 

 

「聞け冒険者達よ!!あの黒き巨獣に反撃する勝機見えたり!!今こそ我らの故郷を破壊し尽くし、あまつさえここに来るまでの村や街の人々を喰らい尽くしたあの化け物に復讐する時が来た!!!さあ足掻け!!抗え!!あの巨獣に恨みを尽くせ!!今ここに下界に刻むは我らの復讐劇!!巨獣を滅ぼさんとする怒りを今こそ剥き出せ!!!!!」

 

 

「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」」」

 

 

俺の大きな宣言に誰も彼もが武器を上げて、雄叫びを上げる。もう誰もベヒーモスを恐れる者は今俺が言った言葉により居なくなった。冒険者に戦意が見られた。ベヒーモスだろうと恐れずに向かうにはこの言葉を吐き出したほうがより戦況を強くする

 

レベル5の俺が全部隊に勝手に指揮するようだが、これくらい言わなくては戦える者も居ないだろうと、全員に戦意を作らせてでも

 

今見える勝機を見逃すわけにはいかなかった

 

 

 

「ゼウスとヘラのファミリアを超えた戦いをここに!歴史に残すぞ!今こそ巨獣に挑む我らは英雄となる時だ!!!我らの平和のために巨獣を狩り殺す!!!」

 

 

「「「「「「おう!!!」」」」」」

 

 

皆その言葉に右足を一歩出して、武器を持ち構える。あの巨獣に挑む準備を整えて、目の前にある敵に目掛けて走り出す

 

 

 

 

 

 

 

「さあ行くぞ!!!全軍!!!突撃いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

 

 

 

 

 

「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」」」

 

 

 

 

 

俺が皆より先に走り出した後、他の冒険者も一斉に走り出した。向かうは目の前にある無防備になった巨獣、ベヒーモスに向けて

 


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