ニーベルンゲン・シックザール〜竜殺しの英雄譚〜   作:ソール

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決戦 ベヒーモス戦

 

 

俺の後ろを全ファミリアが追うようにベヒーモスに向かう途中で、俺が先に走るのを負けず嫌いな馬鹿共が俺の速度に追いつこうと俺の隣に走る

 

 

「ジーク!テメエ一人で先に突っ走るんじゃねえ!!!」

 

「テメエ一人じゃあこのデカブツは倒せるわけねえだろが!!!」

 

 

「ふん、クソ犬とクソ猫がでしゃばるとは意外だ。お前らが戦力になればいいがな!」

 

 

「レベル低いテメエにそんなことを言われたくねえ!」

 

「テメエの方が弱い癖に偉そうなことを言うな!」

 

 

俺の隣に瞬足とも言える速度で走れるアレンと、俺同様にまだ火傷の跡があるベートが俺の隣を走る。俺には負けないと俺同様に走る。その間にもうベヒーモスが目の前に居る

 

そのベヒーモスの顔に俺たちはジャンプして襲う

 

 

『グオオオオオオ!!』

 

 

「消えろ!はあ!」

「ぶっ殺す!オラ!」

「死ね!ウラ!」

 

 

『グギャアアアアア!!』

 

 

と、ベヒーモスの顔に殴り斬りつけた。以前よりもダメージは入っていた。昨日よりも遥かに弱っているとダメージを入れて感覚で感じている。つまりこいつはベヒーモスは猛毒の風が無いと弱まるモンスターだと理解する

 

やはり猛毒の風には何もできないモンスターだと理解する

 

皮膚の奥まで剣は届かない。それだけあのベヒーモスでも皮膚の硬化がすざましいと毒の風が無くなっても簡単では無いと理解する。無防備に攻撃が通るからと言ってそう簡単に奴の皮膚や鱗の硬さは通らない

 

 

『グウウ!!』

 

 

「「ぐ!!」」

 

「く・・・やはり硬いか・・・フィン!オッタル!もっと大きな魔法や技で攻撃しろ!例えベヒーモスが毒の風が出せないとは言え奴の体は硬すぎる!」

 

「情報ありがとう!」

 

「ほう・・・なら全力でなければ崩せないと言うことだな?」

 

「そう言うことだ!遠慮は要らない!魔導師も全力で魔法をぶっ放せ!!!」

 

 

「「「「「おおお!!」」」」」

 

 

そうして顔に攻撃できた感触を感じた俺たちにしかわからない情報を他の冒険者に伝え。そうして魔導師達の魔法をぶっ放して貰おうと伝う。でなければベヒーモスを殺すことは不可能に近いと思っている

 

やはり奴の体に傷を入れるのも巨大な一撃を崩さないと殺せないと理解する

 

 

「来いグラム!」

 

 

魔剣二本で斬り崩さないと無理だとリジルをボックスに閉まって、それとは別に魔剣グラムをボックスから呼んで手に吸い寄せるようにグラムが俺の手に飛んで手にする

 

グラムでベヒーモスの腹を穿とうと剣を構える

 

 

その間に他の冒険者もベヒーモスに辿り着いて攻撃に入っていた。

 

 

「流石はウチの団長だな!俺らも行くぞ大男!!」

 

「ああ!俺も底力を見せる!」

 

 

「オラア!」

 

「でえい!」

 

 

『グウ!』

 

 

ヴェルフや桜花もレベルが低い関係なく迷うことなく前線に出て右足の前に斧や大剣で叩きつけた。その後からも他の冒険者達も攻撃している

 

 

「僕も行く!」

 

「団長!?」

 

「僕も冒険者としてあの三人に負けられないからね!オッタル。君はどうする?」

 

「無論・・・・・ベヒーモスを倒すことは変わらん」

 

「なら・・・・行くよ!」

 

「ああ」

 

 

 

「はああああああああああああああ!!!」

「うおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

『ガアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

 

「す・・凄い・・」

 

「団長・・・あの猛者とここまで・・・」

 

 

「今のは大きい一撃だな・・・・流石は年長者だけのことはあるか」

 

 

そうして冒険者らしく目の前に居るモンスターを倒そうと、フィンとオッタルに冒険者としての火が付いたのか、ヴェルフと桜花たちのように無闇に突っ込み。ベヒーモスの横を周り、左の横腹に槍二本と大二本が突き刺された

 

現冒険者の中で一番の年長者二人ががあの過去にベヒーモスに挑めなかった分を今返そうとロキ・ファミリアとフレイヤ・ファミリアの団長二人が激戦を起こす

 

その年長者がまだここにも

 

 

「ほう!フィンもオッタルも冒険者らしく暴れるか!ならワシもあの十五年前の借りを亜種ではあるが返そう!」

 

「行けるのかおっさん?」

 

「なに!ワシもまだまだ冒険者として働けるわい!その証明を見せよう!おおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 

同じ年長者でもあるガレスも負けないと斧二つを持って応戦する。

 

 

「っ!」

 

『ガアアアアアアアアアアアア!!』

 

ベヒーモスは毒の風は確かにもう出ない。だが体で体当たりすることはできるため、左足で反撃をしてくる。その攻撃に防御態勢を取る冒険者だが

 

 

「させるかああああああああああ!!」

 

「ガレス!?」

 

「ジジイ!?」

 

 

ガレスが斧二本を盾のようにデカイ左足の足払いを斧で押し返す。

 

 

「うおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 

『グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

 

「嘘だろ!?あのドワーフ!?」

 

「ベヒーモスのあのデカイを足を押し返した!?」

 

「どんだけバカ力なんだよ!?」

 

 

「流石だな筋肉ダルマドワーフ。イカれた馬鹿力は今でも健在か」

 

「ふん!ワシも老いているが、まだお主達若いのに負けてられんわい!」

 

 

まだ俺たち若い世代に負けないと本気の力を見せた。相変わらずの豪快な力任せの技。流石はドワーフと言った考えは至極単純だが、どんな種族にも腕力だけは負けず、ベヒーモスのデカイ足払いを見事一人で押し返した

 

 

「ほうガレスもやりおるの。では拙僧もヴェル吉のように派手に斬りに行くとしよう!」

 

「椿お前まで・・・・・だが・・・私もそれに対しては賛成だ!」

 

 

「椿もシャクティも全力で出るか・・・・」

 

 

「「うおおおおおおおおおおおお!!」」

 

 

椿もシャクティも遠慮のない斬撃を剣と刀から繰り出す。ベヒーモスは体当たり程度しか恐らく攻撃はできない。だから誰でも突っ込んでも踏みつけられない限りは問題ないだろう

 

だがこのまま武器だけで体に突き刺すだけではベヒーモスは倒せない。そろそろ魔法でもなんでも打った方がいいいと判断する

 

 

だから俺の後ろで魔法の攻撃が始まった

 

 

「私も行きます!」

 

「リュー・・・・魔法を使用する気か」

 

「はい!はあ!!・・・・・・ルミノス・ウインド!!」

 

 

『ガアアアア!!??』

 

 

「うお!?なんだあの緑色の風のような球は!?」

 

「リューのルミノス・ウインドよ!」

 

「ミャーも全力で行くにゃ!」

 

「ちょ!?アーニャ!?」

 

「ルノア!ミャーも行くにゃ!今日ばかりは冒険者らしく店員として仕事は忘れるにゃ!」

 

「ちょクロエ!?・・・・ああもう!なら私も行くわよ!」

 

 

「動くか・・・あの三人も・・・・」

 

 

「「「はああああああああああああ!!!」」」

 

 

『グガアアアアアアア!!?』

 

 

「効いている効いている!!」

 

「いいぞ!この調子だ!」

 

 

「ち・・・・・あのクズの癖に・・・粘るじゃねえか・・」

 

「お前の方がクズだ。アーニャをそんなそこらの雑魚と一緒にするな。クソ猫」

 

「ああ?テメエにだけは言われたくねえジーク!!」

 

 

リューが先に魔法を繰り出したことで、その後にアニーニャもクロエも出た。ルノアも仕方なく冒険者として交戦する。冒険者ですらない四人は姿を明かすわけにはいかないが、世界の危機では仕方ないと身を隠すのはやめて前線に出た

 

 

「くそ!俺らも行くぞ!」

 

「ちょ!?本気モルド!?」

 

「お前本当にジーク・フリードに毒されてんのだろ!」

 

 

「馬鹿野郎!そんなん関係なしにテメエらも冒険者として本気見せろ!」

 

「たく・・・・まあ・・・ここで怖気ついたらリヴィラの街の冒険者としてカッコつかねえよな!上等だ!テメエら!あのベヒーモスにしがみ付いてでも武器を串刺しにするぞ!!」

 

「「「「「「おおおおお!!」」」」」」

 

 

「いい具合に戦況が変わったな。このままベヒーモスに反撃する猶予を無くせば・・・倒せる」

 

 

後衛に控えている魔導師達の詠唱が邪魔されないようにと、モルド達オグマ・ファミリアが動いた。レベル1や2の欠けなしばかりの冒険者の集まりだが、それでも数で押しているため。ベヒーモスは後衛に居る魔導師たちのところまでは届かない

 

力は一人一人弱くても、数で対応する姿にいい攻め具合だと思っている。オグマ・ファミリアにも冒険者としての誇りがあるのだと理解した

 

 

「ティオネ!私たちも行くよ!」

 

「ええ!今度ばかりはあのベヒーモスだしね!本気出していくわよ!」

 

「うん!」

 

 

「オラアアアアアアアアアアアア!」

「でやああああああああああああ!」

 

 

「あまり無闇に突っ込むなよ・・」

 

 

「「わかっているジーク!」」

 

 

アマゾネスであるティオネやティオナも応戦する。こいつら二人は本当にあまり賢い考えはしないから無闇に突っ込んでやられたりでもしないか心配だった。ベヒーモスはもう遠距離攻撃である毒の風はもう出せないとは言え。あの大きな堅いで体当たりでもされたら一溜まりもない。

 

ほぼ無防備だからと言って無理に突っ込んで倒せるとは限らない。耐久力や攻撃力もイカれているあの巨獣を甘く見てはならない。あれでも三大冒険者依頼の一つだ

 

 

だから

 

 

「「「「ぐわ!!」」」」

 

 

当然怪我人は出て来る。重傷者も出て当然だ。体当たりや足払いや足蹴りなどを喰らえばただではすまない。あのデカイ足で蹴られれば壁に叩き潰されるように重傷を負う。当然これくらいのリスクは出る

 

だからこそここにモンスターに怯えるナァーザと言うヒーラーも連れて来ている

 

 

「ナァーザ!アミッド!」

 

「うん!」

 

「はい!すぐに治療に当たります!ヒーラー部隊は怪我人を後衛まで下がらせてください!」

 

 

ヒーラーと言う存在は戦場において必須な存在だ。こう言う時の怪我人の対応も必要だ。誰一人として欠けていいとは限らない。相手はベヒーモス。いくら猛毒の風が使えなくなったとは言え。亜種であろうと全力を掛ける。

 

だから助けられる者は全力で助ける。そして治ったのならまた挑む。この相手において何か予想外のことをして来た場合、不足でも起こせば困る。誰か一人でも欠かせないと言うのは、それに対応できる者が居るかもしれない

 

そう言うことも考慮しているからだ

 

それを考えていると

 

 

「ジーク!魔導師部隊詠唱完了だ!」

 

「よし。全員下がれ!リヴェリア達魔導師部隊の攻撃が開始する!」

 

 

リヴェリアの合図が聞こえ。ベヒーモスに突っ込んでいる者達を一斉に下がらせる。だがベヒーモスもそこまで馬鹿じゃない。俺たちが下がれば獣の本能として何か攻撃してくると感じ逃げるだろう

 

 

だから動きを封じるまで

 

 

「命。いけるな?」

 

「はい!ですが長くは持ちません!」

 

「それでいい。ほんの少し耐えれば・・・・・いくぞ!」

 

「はい!」

 

 

その動きを止めるのは俺と命の役目。ベヒーモスを相手に動きを止める方法は二つのみ。強力な魔道具で抑えるか、魔法で重さを重ねて動けなくなせるかだ

 

だから命に魔法の展開を始めた。重さで動きを止めるために、相手はベヒーモスでこのような大きなモンスターをあの魔法で止めたところは命としてもやったことはないだろうが、やるしかないと命は踏ん張った

 

 

「フツノミタマ!!」

 

「グレイプニル!!」

 

 

『グウ!?ガアアアアアアア!!』

 

 

俺は灰の砂漠にグレイプニルを投げて。そのグレイプニルと言う鎖が無数に増殖して地面に縛り付けるようにベヒーモスの体を拘束し、更にそれに命の重力魔法フツノミタマを使って重さで身動きを取らせなくした

 

これでベヒーモスは地面にへばり付くように倒れる。

 

 

その隙に魔法攻撃だ

 

 

「リヴェリア!今だ!!」

 

 

「ああ!全魔導士部隊!!一斉射撃!!!」

 

 

「ヒュゼレイド・ファラーリカ!」

「ディオ・テュルソス!」

「ウィンフィンブルヴェトル!!」

 

 

魔導士部隊の一斉放射が開始した。その魔導士攻撃に更に俺も魔術を描いて攻撃を仕掛ける。今度は氷で更に動きを封じる

 

 

「第二の世界全てを凍てつけ!!ニブルヘイム!!!」

 

 

『ガアアアアア!!!』

 

 

俺の掌に埋められたルーン文字から吹雪が噴き荒れた。ベヒーモスの足からどんどん凍っていき見る見る内に全身を凍てついた。おかげでもう完全にベヒーモスはビクとも動かない。その全身凍っている間に空から魔導師が放った魔法の光が幾つも降ってくる。それだけでなく目の前から火炎や風の息吹などベヒーモスに向かって幾つものの光が放たれた

 

 

『グギャアアアアアアアアアアアアアア!!??』

 

 

その光の数々が襲いかかり、俺が放った全身に凍った氷が砕け、ベヒーモスの体が焼き尽くされ、鱗が砕け、角も二本も折れた。体が魔法で溶けていく。これで殺せたとは思えないが、少なくとも体力と耐久力は崩せるはず

 

これで殺せなかったら、まだ残している手段を使うまで

 

 

 

そして魔法の爆撃により、煙が舞い、ベヒーモスの姿が見えない。しばらくすると煙が消えてベヒーモスの姿が見えた

 

 

『グウウ!!』

 

 

「やはりか・・・」

 

 

ベヒーモスの体は魔法砲撃により体は焼けている。鱗は溶けている。全身大火傷の跡も斬り傷もあるが、それでも重傷までには至らない。あれだけ爆撃があっても崩せないとなると、相当の耐久力を持っていると理解した

 

やはりベヒーモスは亜種だろうと伊達ではないことだ

 

 

「私たち魔導師の全力でも無理か!」

 

「流石はベヒーモスか!」

 

「く!どうすればええんじゃ!」

 

 

「これくらいは当然だ。だから・・・・オッタル!アレン!」

 

「ああ」

 

「徹底的にぶっ殺す!」

 

 

俺の掛け声によりオラリオ最強ファミリアの団長と副団長がべヒーモスを更に追尾するように大きなダメージを与えようと、二人が全力を叩きつける

 

アレンは瞬足の速度を持つ冒険者。ベートより以上の速度を持っている。追いつける者は誰も居ない。その速度が溜まった威力がある。腕力においてドワーフ達でも歯がたたない豪力。ロキ・ファミリア全勢力でなければ並ばない程の力を持つオッタルの

 

最強ファミリアの全力の一撃が掛かった

 

 

「うおおおおおおおお!」

「くたばりやがれ!」

 

 

 

ドガアアアアアアアアアアアン!!とベヒーモスの横腹を叩きつけられる轟音がこの砂漠に響いた

 

 

『グギャアアアアアアアアアアアアア!!』

 

 

とベヒーモスが喚いた。流石にレベル7とレベル6の攻撃に体が通ったのか、体に痛みが入ったようだ。確実に怯んだ感じはしている

 

それでも

 

 

『グウウ!!ガアアアアアアアアアアア!!』

 

 

「くう!」

 

「くそ!まだ生きてやがんのか!」

 

 

「これでもまだ足りないか・・・」

 

 

フレイヤ・ファミリア団長と副団長の全力を掛けた大剣と長槍の突きにおいても倒れない。だが徐々に奴の体力を奪っているのは事実

 

あとはベヒーモスに反撃させないように追撃しながらの時間稼ぎするしかない。時間稼ぎと言うのは後方に控えている魔導師が再度魔法砲撃の二射撃目を頼んでいるのではなく

 

 

 

 

 

それより更に遠く後方に控えている

 

ベルとアイズと言う『ジョーカー』に力を溜めるように魔法砲撃打たれる前から指示し、ベヒーモスに止めを一撃で倒すよう頼んでいるからだ

 

 

ベルの『英雄願望』を昨日よりも更にデカイ一撃を出すため、アイズも体に風を勢いよく集めている。ベヒーモスの体力と耐久力を破壊したからより体にダメージは入りやすくなっている。だから最後に大きな一撃で倒すしか、もうベヒーモスを倒す方法が無いからだ

 

いくらもう毒の風が出せないとは言え、奴の体で体当たりでもしても死は確実。他の冒険者達だって体力がいつまで持つとは限らない。ここで打って置かなかれば長期戦になって全員の体力が限界になる

 

その前に手を打っておかなければ負けるだけ

 

だから今は時間稼ぎと同時に反撃させないように攻撃を続けるのみ

 

 

「諦めるな!これくらいは覚悟していたことだろ!全員何度でも攻撃を続けろ!奴に反撃を絶対にさせるな!」

 

 

「「「「「「おう!!」」」」」

 

 

フレイヤ・ファミリアの団長と副団長の全力を出しても倒せなかった光景を見て他の冒険者が落胆するように戦意を無くしかけているため、俺は再度戦意をまた引き出そうと俺が進んで命令した

 

何か一つでも勝てないと感じたら落胆するなど、メンタルが弱いにも程が有る。ベルやアイズでさえまだ諦めてないと言うのに、こいつらは相手が勝てる見込みがないとすぐ諦めると言う行動、冒険者として情けないとしか言いようがない

 

俺にどこまで煩わせるのか、わかったものではない

 

 

「よし!なら戦闘続行だね!行こうティオネ!」

 

「ええ!この程度で私は諦めないわよ!!」

 

 

「「うおおおおおおおおおおお!!」」

 

 

「相変わらず考えのない戦い方だな。だが・・・・・・・今は考えなど不要だ。好きにやればいい。その方がベヒーモスも反撃できまい」

 

 

ティオネとティオナが防御を考えずに無謀なやり方がで突っ込んでいく。だが今はそれが正しい。今は何も考えずただひたすら時間稼ぎをして反撃させないようにすれば問題ない

 

今回ばかりはバカではあるがあのアマゾネス二人が居てくれて助かっていると俺は思っている

 

 

「よし、なら俺も!・・・・・ジーク!『アレ』使っていいんだよな?」

 

「っ!まさか・・・・・使う気か?」

 

「ああ!それも・・・・『三本』もあるぜ!」

 

「わかった。他の者達にもそれを持たせろ」

 

「おう!」

 

 

ヴェルフが突然俺に『アレ』の使用許可を聞いてきた。まさかヴェルフが本当にアレの三本を昨日の夜の内に完成しているなど、俺でも知らなかった。どうやら俺たちの鍛治師は仕事の早さもあるようだ

 

だが使用するにしては三本となると・・・・ベヒーモスを包むほどの範囲の威力が出てしまう。だとするなら今攻めている奴らを一旦下がらせるしか無いと俺は指示するのだが

 

それまで逃げる時間を稼がないとならない。

 

そのためには・・・

 

 

「アスフィ。手伝え」

 

「ええ。私も『タラリア』を使いましょう!」

 

「よし。来いグリフォン!」

 

『はい。主!』

 

「俺を乗せてベヒーモスの顔に近づけ!空中戦に挑む!」

 

「はい!」

 

「ジークさん!私も!」

 

「頼むリュー。行くぞ!」

 

「「はい!!」」

 

 

俺はグリフォンを呼び出して背中に乗り、アスフィはタラリアを使用し、リューは風のように素早く動き、空を飛んで空中戦に挑む。先に先行している者達を逃すためにいつでも空に逃げることができる俺たちが時間を稼ぐ

 

その間にヴェルフは、自分以外にも『アレ』を持たせようと桜花と命を呼ぶ

 

 

「おい大男!命!こっちに来い!」

 

「ん?どうした!」

 

「なんですか!」

 

「今ジーク達が稼いでいる間に俺たちは『これを使って』ベヒーモスを吹き飛ばすぞ!」

 

「っ!?これは!?」

 

「ヴェルフ殿!完成させていたんですね!」

 

「ああ!なんとか三本な!」

 

 

ヴェルフは昨日の内に頑張って間に合わせた製作した物。それは『クロッゾの魔剣』。それも三本。威力が尋常じゃないあの魔剣を三本を昨日の夜の内に製作しておいたらしい。一つは全身紅の大剣。二つ目は青い刃となった大剣と変わらない大きい太刀、三つ目は黄色い普通の大きさの西洋剣。の三つのクロッゾの魔剣を背中に背負っている袋から取り出した

 

その内の二本を命と桜花に渡した。共にあのベヒーモスを威力で焼かそうと桜花には青い巨大な太刀と、命には黄色い西洋剣を渡し、残った紅の大剣はヴェルフが持ってベヒーモスに立ち向かう

 

 

「こっちはレベルが低い、だからこの魔剣ならレベル関係なく良い威力が出せる。二人ともこれを持ってあのベヒーモスに叩き込むぞ!」

 

「はい!」

 

「おう!」

 

 

そうして三人はクロッゾの魔剣を持ってベヒーモスに向かって走る。その三人がたどり着くまでにこちらは顔に追撃を続ける

 

 

「ふ!」

 

「やあ!」

 

「はあ!」

 

 

空を飛んで俺とアスフィとリューはベヒーモスの顔を斬ったり蹴ったりなどを、ヴェルフ達から気を紛らせようと攻撃を続ける。ヴェルフ達がベヒーモスの脚の近くまで辿り着くと、俺はリューを呼んでグリフォンに乗せようとして撤退をする

 

 

「アスフィ!ここまでだ!」

 

「ええ!」

 

「リュー!俺の後ろに乗れ!」

 

『次の攻撃が来ます!』

 

「はい!」

 

 

そうしてリューはベヒーモスの頭を足場にしてこっちに飛んできた。リューの手を取り後ろに乗せて空を飛んで引き下がる。もうその時にヴェルフ達がクロッゾの魔剣を振りかざそうとしていた

 

そして全力で威力を出し、ベヒーモスに向けて振りかざした

 

 

「「「吹き飛べええええええええええええ!!!」」」

 


『グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?』

 

 

ベヒーモスや顔や足に火炎や氷や雷などが魔剣の刃から放出し、その三つの属性の波をベヒーモスはまともに喰らった。だがあまりに威力が強すぎて爆破を起こし、またもベヒーモスがその爆破の煙により見えなくなった

 

 

「クロッゾの魔剣か・・・」

 

「本当にすごい威力だ。我らの故郷の森が燃やされたのも、これで納得だ」

 

 

フィンとリヴェリアがクロッゾの魔剣の威力に驚いた。魔剣で爆破を起こす威力はクロッゾの魔剣以外の魔剣は存在しない。その威力を他の冒険者達は平伏すように驚いてその魔剣の衝撃に地面に這いつくばって耐える

 

 

「ああ・・・・ここまでだよな」

 

 

ヴェルフはその衝撃に吹っ飛ばされながら自分の作った魔剣三つが砕けるのをしっかり見ていた。これだけに威力を出して一回使用するだけで砕けるのがこれの未だにあるデメリット。一度の使用で壊れなければ良い魔剣なのだが、残念だがヴェルフの魔剣はここまでとなった

 

しかも砂漠の地面を大きく爆破するほどの威力をベヒーモスは喰らっていても

 

 

『グオオオオオオオオオ!!!!』

 

 

「くそ!」

 

「まだ生きてんのかよ!」

 

「ヴェルフ殿の魔剣攻撃でも息絶えないなんて!」

 

 

体中に傷は多くあるものの、それでもベヒーモスは倒れない。それだけ体力も生命力も強いのか、クロッゾの魔剣でも倒れず、だが攻撃が通っているのは間違いない

 

 

「狼狽えるな!攻撃が通っていることには変わりない!引き続き攻撃しろ!」

 

 

「なら今度は私たちだ!」

 

「リヴェリア・・・」

 

「今度は私達も行きます!」

 

「私たちエルフを舐めるなよ!」

 

「私もまだやれます!」

 

 

「レフィーヤ・・・・フィルヴィス・・・アリシア」

 

 

魔導師部隊のエルフ達がいつの間にか詠唱をしていたのか、詠唱を終えて次の二射撃を放とうとしていた。リヴェリアも十五年前ゼウスとヘラのファミリアがオリジナルと戦っていた現場を見ているからわかっているのか

 

この程度で倒せないと理解し、更に次の攻撃を用意していた

 

 

「第二射魔導師部隊!放て!!!」

 

 

「「「「「「「はい!!」」」」」

 

 

 

リヴェリアの合図と共に魔導師部隊の一斉掃射の二撃目が放たれた、今度は第一の砲撃と違う魔法を使っての砲撃だ

 

 

『グガアアアアアアアアアア!!』

 

 

ベヒーモスに向けて魔法の光の雨を喰らいながら身動きを止める。リヴェリアも居ると言うのに、その魔法をくらってもまだ歯がたたない。怯んではいるがまだ倒れないベヒーモスの頑丈な体に俺も驚いた

 

だがそれでも諦めずに攻撃するしか無い

 

 

奴が倒れるまで攻撃を続けるのみだと、今度はリリルカに攻撃を頼む

 

 

「リリルカ!」

 

 

「はい!ノーム様!サラマンダー様!援護をお願いします!」

 

『はい!』

『任せよ!』

 

 

俺は後方にノーム とサラマンダーを呼んでおいた。そこでリリルカに『ある剣』を渡してあるため、その槍を放って貰おうとリリルカに指示をした

 

 

『では行きます!』

『頼むぞリリルカ!』

 

「はい!この・・・・ジーク様から借りた『クラウ・ソラス』で!」

 

 

クラウ・ソラス

 

輝く剣、あのチビ女王から貰った便利な剣。巨人などの大きなサイズをしたモンスターに有利に匹敵する武器。ベヒーモスならこの光の剣に突き刺さるはずだろうと、ここに来る前に予めリリルカに渡しておいたのだ

 

サラマンダーやノームに頼んで援護してもらい、その直後に奴に向けて放つ戦法だ

 

 

『えい!』

『でやああ!』

 

 

『グガアアアアアアア!?』

 

 

「なんだあのパルゥムは!?」

 

「それにアレって・・・ドラゴン!?」

 

「以前ヘスティア・ファミリアのウォーゲームに出てきたモンスターだぞ!?」

 

「精霊か!」

 

「サラマンダーにあれは・・・・ノーム!?まさかジークが召喚したのか?」

 

 

ノーム とサラマンダーの姿を見た俺の魔法を知らない冒険者達はその光景に驚く。ノームは見た目がパルゥムだから精霊だと他の冒険者は気付かない。サラマンダーは特にモンスターと間違われやすく、姿がトカゲのようなドラゴンのためモンスターだと勘違いしている冒険者が多く居た

 

だがガレスとリヴェリアはわかっている。これが俺の召喚魔法だと。

 

 

ノームは地面に斧を叩きつけて、そこから岩雪崩を出してベヒーモスの動きを岩が囲むようにして身動きを封じる。サラマンダーはベヒーモスの顔に自分の口から出す火炎のブレスを出して反撃させないようにする

 

その間に左腕のアームに取り付けてあるグロスボウに刀身が白く輝く剣クラウ・ソラスを装填させて放つ

 

 

「行きます!クラウ・ソラス!!!」

 

 

グロスボウからリリルカは放った。その途端

 

ビュン!!!

 

と、魔法の光線のように素早く一直線にベヒーモスの腹の下を貫こうと飛んでいく。クラウ・ソラスは最も弱点なところを探し貫く剣なため、ベヒーモスの弱点が腹の下で間違いないと理解した

 

そしてその腹の下を

 

 

『グウ!?』

 

 

光の線に刺されるようにクラウ・ソラスに貫通された。そしてその穴から大量の血が溢れてきた。背中の方まで一直線に風穴が開いていた

 

 

『ガアアアアアアアアアア!!!』

 

 

『おお!ベヒーモスが苦しそうだ!』

『手応えありです!リリルカさん!』

 

「よくやったリリルカ!」

 

「いいえ!これくらいしかできませんが!リリも負けていられませんので!」

 

 

「へえ・・・あの僕の同胞・・・やるじゃないか」

 

「俺たちのサポーターをあまり舐めない方がいいぞ。フィン」

 

「舐めてはない。むしろいい攻撃だと僕も感心したところだよ」

 

 

リリルカの攻撃は最も勝機が見えた瞬間でもあるため、他の冒険者もレベル1の冒険者に負けないと前線へとどんどん押し寄せて行く

 

リリルカの攻撃に、フィンは同胞として素晴らしいと大きく評価をした

 

 

「ならフィン。指示は俺がするからお前もそろそろ『自分の怒り』で戦え」

 

「そうかい・・・・じゃあ・・・・・君に僕らの部隊を頼むよ!僕も・・・・・本気を出す!!」

 

 

フィンは左親指をおでこに当てた。フィンの魔法である『ヘル・フィネガス』を発動する

 

 

「うおおおおおおおお!!!」

 

「本気出せ。クソチビ」

 

「誰がクソチビだ!はああああああああああ!!!」

 

 

『グギャアアアアアアアアアアアアア!!??』

 

 

フィンは魔法は全然使わない方だが、『ヘル・フィネガス』と『ティル・ナ・ノーグ』という2つの魔法を持っている。『ティル・ナ・ノーグ』は、投擲魔法でレベルやアビリティの数値で威力が上昇する攻撃魔法。投擲魔法だから結局物理攻撃に過ぎないが、レベル6のフィンが行使すればその威力は絶大する。

もう1つの「ヘル・フィネガス」は人格を変える魔法で、その効果は戦闘意欲を引出し、術者の各パラメータを大幅に引き上げるという強力なバフ魔法

 

二年前俺のカオス・ヘルツとフィンのヘル・フィネガスで一対一の喧嘩をしたが、俺のように怒りで考え無しになんでも敵を壊すのとは別で、相手を倒すために戦闘意欲を引き出してそれに勝てるだけの考慮を大幅に出す魔法であるため、俺のようなバーサーカー状態とは違う

 

だがこの魔法は自分のことしか考えられず、仲間や指示するための考慮はできないため、ほとんど使わない魔法だ。あまり滅多に使わないのは将としてみんなに指示するスキルを持っているフィンにはあまりに役目として向いてないからだ

 

 

だが今は俺が命令権を得ているため、今ロキ・ファミリアの部隊の指示権を俺が奪ったことにより、フィンも一人で自由に戦えると野獣らしく目の前のベヒーモスにご自慢の槍術で攻撃を仕掛ける

 

 

「うおおおおおおおお!!」

 

 

「ほう・・・あのクソ生意気パルゥムめ。やりおるな・・・・ならワシも負けるわけにはいかんな!」

 

「だったら自分らも負けてられないっす!アキ!クルス!リーネ!自分らロキ・ファミリアも行くっすよ!」

 

「ええ!」

 

「ああ!」

 

「はい!」

 

「全員突撃っす!ベヒーモスの背中に乗ってしがみ付いてでも自分らの根性を見せるっすよ!」

 

 

「ふん。ラウルも見ない内に成長をしているんだな・・・・」

 

 

フィンの戦う様を見ているのはガレスだけでなく、ラウル達もだった。ラウル達はその光景を見て自分たちも負けないと二流なりの意地を見せる。モンスターと戦うことを怖がるラウル達が勢いよく戦意を見せるなど、意思のない俺としても見事だと思った

 

この調子で攻撃を続ければベヒーモスも反撃できないはず

 

 

『グオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

 

 

「「「「「うわあああ!!」」」」

 

「ベヒーモスが暴れ出したぞ!」

 

 

「足掻くか、それでも・・・・」

 

 

いろんな魔法や剣の攻撃を受けてでも争うように、砂漠の上をジタバタするように足を暴れ出した。地震を起こすように足に衝撃を与える。そのせいで冒険者達もベヒーモスに近づくことができない。足を上げたりして今にも踏みつけらそうで近づくことができない

 

 

なら

 

 

「アレン!アーニャ!崩せるか?」

 

 

「誰にものを言ってやがるジーク!」

 

「兄様!ここはジークの提案に乗るにゃ!」

 

「ジークに言われなくてもこれくらい楽勝だ!!!」

 

 

瞬足で動くことのできる『フローメル兄妹』ならジタバタする足を二本の金と銀の長槍で刺せば足を封じることができる。瞬足で動くことのできるなら踏み潰されることはない。こんな揺れ程度、この二人においては瞬時の揺れでしかない

 

 

「行くにゃ!」

「ブッ刺す!」

 

 

そうして素早く動いた。目にも捕らえることのできない素早さ。目で追えるのは俺かシャクティかフィンか椿のみ、音速で動いた二人は前の二本の足をそれぞれ刺した。大きな揺れの地震の轟音の中大きく鉄に刺される音が響いた

 

 

『グアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

 

「く!うわ!にゃ!」

「大人しくしやがれ!」

 

 

槍が刺された痛みに前の足が上がれなくなり、ベヒーモスは痛みに抗おうとハウルを吐き出した。暴れなくなったとは言え。生き物らしく、痛みに抗おうと涙を出して泣き出す子供のように咆哮だけで叫び尽くした

 

その中で二人に動いた

 

 

「足を崩せばいいんじゃな!」

 

「なら黒き獣の足を切り落とせばいい・・・」

 

 

「ガレス・・・・オッタル・・・」

 

 

咆哮で地面に響く中、剛力とも言われる筋力を持ったドワーフと猪人が動いた。ノームが地面から山で囲んでも地震で壊された。俺のグレイプニルで動きを止められるにもこれだけ図体がデカイと地面に縛り付ける時間が保たない。なら他に動きを封じるためにやることは一つ

 

足を切り落とすのみ

 

 

「これなら斬り落とせるじゃろ!」

「本気で斬り落とすのみだ」

 

 

ガレスは愛斧を取り出し、オッタルも二本の大剣を捨て、愛剣である『ウダイオスの黒剣』の素材で製作されたオッタルの専用武装『覇黒の剣』を背中からバックパックから取り出した。オッタルももはや本気を出さざるを得なくなったようだ

 

そして大きな武器を手に取った二人が、大きく武器を上げて振りかざす

 

 

 

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」

 

『グウ!?グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

 

「おお!?」

 

「斬り落とすことはできないが、半分ほど足を斬り落とせたか・・・」

 

 

オッタルとガレスの一撃により前足二本を半分斬ることができた。威圧の入った斬撃が届いたのか、半分だけ斬り落とすことができた。おかげでベヒーモスは体を崩すように地面に引きずった

 

もうここまで足を崩せば動くことはできない。やっと戦ってから数時間で崩すことができた。もう激しい動くことは不可能。多くの者達の積み重ねによりここまでやっとあのベヒーモスを皆で崩せた。もはや奴に争うことはできない。もはや動くことのできないベヒーモスは当たるだけの的でしかない

 

だから

 

 

 

 

 

 

 

今この時のための一撃を・・・・・・・待たせてきた

 

 

ベルとアイズの出番のために良い場面と光景ができた。今ジョーカーを出すにはふさわしい舞台が完成した。準備は整った。チャージも十分なはずだ。今この時を持って全ての想いや恨みをぶつけるのみとなった

 

 

「アイズ・・・・・ベル・・・・・」

 

「うん!!!」

 

「はい!!!」

 

 

もはや俺の言葉も要らない。それほどの言葉も合図も要らないほどに言わなくてもわかるほどの想いや熱心がある。ここまで殺されてきた村や街の人々の命をこの一撃に捧げて

 

 

「「「「「「「ベル!!!」」」」」」

 

「「「「「「「アイズ!!!」」」」」

 

「「「「「「「リトル・ルーキー!!!」」」」

 

「「「「「「「剣姫!!!」」」」」」

 

 

その捧げたのはこの砂漠に眠っている殺された者だけじゃない。今生きている者。今オラリオで俺たちが勝つことを祈って待っている者。今共に戦っている者も含めた想いや一撃がここに集まってる

 

10代の子供にこれを託すのはとても重いかもしれない。だが・・・・・・・・

 

 

 

 

 

二人はそれでも・・・・・・・意思は俺たちと同じだった。皆が積み重ねくれたこのチャンスを・・・・・・・二人は無駄にせずに

 

 

「行きます!」

「これで終わらせます!」

 

 

 

放った。自分の全力を出し切る程の・・・・・・・究極の一撃を

 

 

 

「ファイア・ボルト!!!!!」

「リル・ラファーガ!!!!!」

 

 

 

『グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』

 

 

ベルの手から放たれた白い光。アイズの剣から放たれた緑色の風。その二つの一撃が合わさり。ベヒーモスの顔に直撃を入れた。その一撃により煙が舞い。ベヒーモスは痛むように叫んだ。間違いなく攻撃が通っているだろう

 

叫びからしてかなり効いていると確信はしている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが

 

 

 

『グオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

 

 

 

「そんな!?」

 

「僕とアイズさんの一撃でも足りないなんて・・・」

 

 

「く!このままでは・・・」

 

「次はどうすれば・・・」

 

 

予想以上にベヒーモスは耐久性が強く。アイズとベルの究極の一撃をもってしてでも倒せなかった。オッタルもフィンも流石にまずいと思っている。なぜならもう手は尽くした。もう打つ手が無い。魔法も回復薬も全部使い果たしたからだ。

 

つまりはもうマインドダウン寸前になるところまで戦い尽くした。

 

もはや限界となっていたからだ

 

 

フィンも『どうすればいい』と頭をフル回転にしてまで考える。だが今度ばかりは本当に手段が無い。尽くすべき手は尽くした。打つ手になるものは何も無い。そして今度こそ・・・・・・・・・・絶体絶命を迎えている。この最中はフィンだけが絶望しているわけじゃない。ガレスもリヴェリアも・・・・あのアレンやオッタルでさえも理解の耐えがたい長期戦と限界を思い知っている。そして彼らでさえももう打つ手が無いと絶望しているのだ

 

 

誰も彼もが諦め、絶望しているこの時に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「け。あの『クソヒューマン』ロキみてえにまた俺たちに嘘をつきやがって・・・」

 

「ベート?」

 

 

ベートは笑っていた。気に食わないと思うほどに『ある男』に向けて笑っていた。でもベートだけじゃない。笑っている者は

 

 

「うん!やっぱりだよ!」

 

「本当にロキの血筋の子供だけはあるわね」

 

「はい!ですけどあの人らしいです!」

 

「レフィーヤの言う通りだな。あの男はここまで隠し球を持っているとはな」

 

 

「うん。でも・・・やっぱり凄い」

 

 

ティオネやティオナ。レフィーヤやフィルヴィス。そしてアイズですらも笑っている。今全力を引き出して倒れなかったと言うのに、それでも彼女たちも笑う

 

その者たちだけじゃない

 

 

「うん。確かに凄い」

 

「はい!でもあの人なら!」

 

「ああ!!絶対にやれる!」

 

 

ナァーザや千草や桜花ですらも笑う。なぜこうもレベルの低い者や自分の仲間でもあったアイズたちが笑うことに感の鋭いはずのフィンがどうしても理解できない

 

 

でも。その理由はすぐに分かった。彼らが笑う理由は・・・・・

 

 

「流石です!」

 

「ああ!お前ならそうだろうと信じていたぜ!・・・」

 

「はい!ベル様がジョーカーなら・・・あの人はエースです!!」

 

 

命とヴェルフとリリルカが笑っている。彼らが笑っているのは一つだった。理由も常に一つ。この戦いはもはや彼の手の中だと。正気が見えていたのだと

 

だからフィンは

 

 

「お願いします!」

 

 

ベル・クラネルが笑っている後ろの方を振り向いた。そのさきに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「ジーク!!!!」」」」」」

 

「「「「「ジークさん(様)(殿)!!!」」」」

 

 

 

その笑っている者たちが俺の名を呼んだ。そうして呼ばれた俺は黒い雷を右手に持つ魔剣グラムにルーン文字と共に集めている。大きな一撃を放つための準備を整えていた

 

 

「ああ。待たせたな」

 

 

これで倒せなかった時の対策はとっくに俺は考えていた。これまでの戦いを見てベヒーモスがこれほどかと言うほどの威力を与えても倒れなかった。だったら俺が全ての力を尽くしてでも俺はルーンブレイクを使うのみだった。ベヒーモスを相手に戦うと言うことは全力を使わなくては倒せないことなど当然と言うこと

 

だから俺も体に雷を全て集めて使い果たす。俺の命を使い果たしてでも

 

 

「行くぞベヒーモス。これがお前の最後だ・・・・・・・ルーンブレイク発動!!!」

 

 

 

「「「「「「行けええええええええええええええええ!!!」」」」」

 

 

俺のルーンブレイクの発動と共に、ベル達が俺に応援を掛けた

 

そうして俺はグラムに黒い雷を纏って、俺は大きく足に雷を溜めて踏み込んで飛ぶ。光速で瞬時に動いた。誰の眼にも終えないほどに、俺が向かう先、狙う先は奴の腹の下。その腹に黒い雷を穿つ

 

オラリオの街を壊し、多くを殺してきた者の恨みを・・・・・・・俺が代わりに晴らそう。恨みを尽くしてベヒーモスを滅ぼしてやろう

 

 

これがベヒーモスの最後だと、剣の先から電光を放った

 

 

「ヴォルスング・サガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

グラムの刃の先から電光の光線を放出した。その光線がベヒーモスの腹を一直線に閃光が貫いた

 

 

『グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!??』

 

 

 

腹を貫かれたベヒーモスは大きく咆哮を出した。咆哮とと言うより悲鳴に近いほどに泣き叫んだ。

 

 

「ぬん!」

 

 

俺は光線を出し終えるとグラムを後ろに下げて砲撃をやめた。その光線にベヒーモスの腹に大きな風穴が空いた。それからベヒーモスは完全に立ち上がることができなくなった

 

 

『ガアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァ・・・・・』

 

 

力尽きるように倒れた。そして見る見る内に体がどんどん灰になっていく。魔石が砕ける音もしないまま、そしてその砕けた魔石すらも出ないまま。ただベヒーモスの体は灰となり、ベヒーモスは消えてなくなった

 

ベヒーモスが灰で無くなると、ベルとアイズが皆より人先早く声を出した

 

 

「勝ったんですか・・・・・」

 

「私たちで・・・・・やったの?」

 

 

 

「ああ!僕たちの勝利だ!!!」

 

 

「「「「「うおおおおおおおおおおお!!!」」」」」

 

 

と、フィンの宣言により、皆が大きく声を上げて勝ち鬨を上げた。あのベヒーモスをゼウスとヘラのファミリアの居ないまだそれ以下のレベルである俺たちが勝ったのだ。ベヒーモスをレベル7以下の俺たちが倒した喜びを誰もが喜んで叫んだ

 

 

「やった!やったよティオネ!!」

 

「ええ!私たちが勝ったわよ!」

 

 

「はい!私たちがやりましたよ!フィルヴィスさん!」

 

「ああ!私たちでなんとか倒したぞ!」

 

 

「ち、あのクソヒューマンが最後を決めるとはな・・・」

 

「うん。やっぱりジークは凄い!」

 

 

「凄い・・・・ジークってこんなに強いんだ」

 

「ああ。あいつは本当に凄い奴だからな」

 

「うん。ジークさん凄い」

 

 

「ジーク殿!流石です!」

 

「ああ!すげえ!あいつのあの必殺技!最強じゃねえか!」

 

「はい!ジーク様ならやれると信じていました!」

 

「ジークさん!僕たちやったんですね!」

 

 

と、誰もが勝利を祝っている。ベルやアイズたちは俺がとどめを刺したことにかなりの評価を褒めてくる。功績がなぜか俺の方が大きく、何かとあいつたらを俺を褒めている

 

 

「驚いたよジーク。君にあのような魔法があったなんて・・・・」

 

「・・・・・」

 

「ジーク?」

 

 

「・・・・・・・」

 

 

俺はフィンの言葉に返事はしなかった。誰もが喜んでいる中。俺だけは笑っていなかった。それどころからまだ冷汗をかいていた。もうベヒーモスは居ない。確かに俺たちは倒した。なのにそれでも俺は笑ってはいない。

 

どうしてベヒーモスは倒されたのにそれでも喜ばないのは俺のカオス・ヘルツのせいだからでではない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巨大な気配がまだ感じているからだ。それもさっきのベヒーモスの気配とは比べ物にならないほどの気配を。それも力も物凄く強大。それも今立っているこの地面の底から感じる。この気配と巨大な力。考えることは一つだった

 

 

「フィン。お前の左指から震えはするか?」

 

「え?いや特に・・・・え?」

 

 

俺はフィンに親指に震えは無いか確認を取った。フィンの親指に疼きがあるのなら嫌な予感を指す意味でもあるのだ。その震えが俺が聞いてくるまでは無かったが。俺が聞いた途端。いきなりフィンの親指は震え出した

 

そして俺は告げた

 

 

「フィン。今すぐ総員退避だ」

 

「ま、まさか・・・・」

 

「全員退避だ!」

 

 

俺は今すぐに俺はこの場に居る全員を一斉に下がらせようと大きな声で告げる。間違いなく俺の感知が正しいなら、その気配は間違いなく地上にやってくる。

 

 

「全員この場から離れろ!」

 

 

「え?」

 

「何を言っているんだジーク?」

 

「ジーク様?どうかしたのですか?」

 

「ジーク?何を言っているの?」

 

「ジークさん?どうかしたんですか?」

 

 

「いいから全員この場から離れろ!」

 

『主!下から何か来ます!』

 

「く!」

 

 

俺の言葉に誰も耳を傾けない。突然の勝利を手にしたと言うのに、突然この場から離れるなど信じるはずもない。だが今から離れねば大変なことになる。だから俺はその理由を叫んだ

 

この気配とこの強大な力。間違いなく『あいつ』の気配だった。その地面に潜む者を言った

 

それで俺がどうしても今この場に居るのは危険すぎると思った。だから何も隠さずに言った

 

それは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベヒーモスがもう一体居るぞ!」

 

 

 

「「「「「「「え?」」」」」」」

 

 

その下に潜む生き物を俺は告げた。間違いなくベヒーモスの気配だと。俺はすぐに気配を感じ取って退避させるように告げた。それを告げた途端

 

 

『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

 

「「「「「「っ!?」」」」」」」

 

 

「なんだ!?」

 

「地震!?」

 

「でもこの咆哮は!?」

 

 

突然地面からさっき倒したはずのベヒーモスの声が聞こえた。先ほど倒したはずなのに未だに奴の声が聞こえる。更にはゴゴゴと地震が発生する

 

そして次の瞬間

 

 

 

『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

 

 

と、全身赤いベヒーモスの顔がいきなり地面から飛び出すように出てきた。やはりモリガンがまだ隠し球を用意していたようで、先ほどのベヒーモスとは比べものにならないほどのサイズの大きい赤いベヒーモスが突然出現し、大きく開いた足で地面に衝撃を与えた

 

 

「「「「「「うわああああああああああああああああ!!!」」」」」

 

 

「く!!」

 

 

その衝撃に誰もが耐えきれずに吹き飛ばされた。新しいベヒーモスが居るなど誰も予想付かずに防御をしている暇もない。誰一人として奴が地面から出てきた衝撃の突風に耐え切れなかった

 

まさかモリガンはこの時のために姿を現さないのだと今になって俺は理解した

 

 

 


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