ニーベルンゲン・シックザール〜竜殺しの英雄譚〜   作:ソール

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月女神は英雄から恋を知る

 

 

 

 

 

 

オラリオから出発して三日後

 

睡眠と休憩を十分に取りながら、俺たちは徐々にオラリオから遠く離れ、エルソスの遺跡へと近づいていた。とは言ってもまだまだエルソスの遺跡には届かない距離。まだ一週間すら経ってないのだ。空を移動してばかりで、更に野外のモンスターすらも出ないのだ。退屈な日々をゆっくりと送っていた

 

今は俺たちは昼食を終えた所。でも・・・・・・ほとんど料理を口に通しておらず、ただ飛龍に乗って空の上を移動しているだけでは、働きもしないからお腹が空かないようであまり空腹ではなかった

 

そして食事を終えた後は休憩の時間をも作っているのだが、みんな休憩するどころかどうしても退屈なのか、暇な顔をしてベル達は無理にでも体を働かせていた。ベルとリリルカは俺が指示したわけでもなく食器の片付けをしたり、まだ戦ってもいないのにヴェルフは全員分の武器の手入れをしたり。命は刀を抜いて素振りをしたりと、みんなまだ三日しか経ってないと言うのに退屈を紛らわせていた

 

その中で俺とアルテミスは・・・・・

 

 

「もう三日も経つが・・・・・お前は本当に食事をしなくて大丈夫なのか?いくら神と言えど、体に栄養は必要だぞ?」

 

「気遣いをありがとうオリオン。私はそれでも・・・・食事は要らないから気にしないでくれ・・・・・・オリオンの料理は食べてみたかったがな・・・」

 

「そこまで言うならわかった。だが空腹の時は言え。その時はいつでも俺が作る」

 

「ありがとうオリオン」

 

 

その退屈の時間の中、俺とアルテミスは退屈ではなく会話を楽しんでいた。と言うより・・・・・俺はアルテミスの監視を続けていた。明らかにやはりアルテミスがおかしいと俺は彼女を疑う。もう三日も経って何も食べていない。どう考えてもやはり神とは言え、食事を通さないなど体が持つはずがない。三日間も朝から夜までも食事をしないなどありえないとしか思えない

 

より俺はやはり彼女の体がおかしいと感づき。彼女が何か秘密にしているとわかった

 

 

「オリオンはトールともこうやって楽しく食事していたのか?」

 

「まあな。とは言ってもおふくろはそこまで料理は美味くない。たまに失敗したのを文句を言わずに食べたこともある」

 

「あ、ああ・・・・・トールの料理はな・・・」

 

「知っているようだな。ハッキリ言って・・・・あまり食えた物じゃないだろ?」

 

「ああ・・・・・私も天界の頃に食べさせたことはある。肉料理は完璧美味いのだが・・・・それ以外が最悪だった」

 

「ああ。おふくろは肉を焼き加減は上手いんだが、それ以外が下手すると焦がすからな・・・おふくろが言うにはほとんど料理に関しては俺の親父に頼んでいたらしい・・肉料理ができるのに、なぜ他がダメなのか、疑問だらけだった」

 

 

アルテミスもおふくろの料理を食べたことがあるようだ。肉料理に関しては右に出る者は居ない。おふくろは親父と結婚してから自分のファミリアをやめて『焼肉屋』と言う俺の故郷にしか無いお店を親父と共に立ち上げて女将をしていた。肉の焼き加減は俺や親父をも超えるほどの上手さ。当時はおふくろの出す肉料理は絶品で、毎日毎日行列ができるほどの人気の店だった。14を迎えるまでは俺も手伝って働いていた。肉に関してはおふくろが一番に上手い

 

それ以外が初心者でもできる料理でも不味く。肉料理以外は全然ダメな母だった。簡単に言うならパンや卵焼きや魚焼きでさえ、全部焦がしている。何度やっても、だから絶対におふくろは肉以外の料理は親父に任せていた。野菜すらも焦がし。米すらも炊けず、パンも焦がす。

 

なぜそれ以外ができないのか、今でも母の料理の腕に謎を感じている

 

 

「確かにトールの肉料理は美味しかったな、特に・・・・・・焼き肉が・・・」

 

「ああ、確かにね。俺も忘れないよ。トールにワガママを言って焼き肉を焼いてくれって頼んだ時は、本当に酒に合う焼き肉を彼女に焼いてくれたよ」

 

「確かに、私もあのトールの焼き肉は美味しかったな。狩猟をしていた私は獲物をよくトールに渡して焼いて貰ったものだ」

 

 

「なんだ?天界でヘルメスとヘスティアもおふくろの肉料理食べたことあるのか?」

 

 

「うん!あれは本当に美味しかった!お酒がすごく合う!」

 

「ああ。お酒とマッチした焼き肉は美味しかったな。また食べたいよ・・・・」

 

 

「そうか、母は必ずファミリアの仲間や家族と一緒に食事をするのが当たり前だからな。飯を囲む時は常に仲間と共にだからな、おふくろは仲間や友人想いの雷の女神だからな」

 

 

おふくろはいつだって仲間を想う女神だった。だから戦場の時は母もミョルニルを持って戦った。それくらい彼女は友情が強い女神だった。仲間と共に過ごす時も食事をする時も母は必ず全員集めて楽しむ。おふくろはコミュ力もある女神だから性格が暗い奴でも楽しめるように、いろんな笑えるような会話を出したりと仲間外れなことは絶対にしない。主神としてか、母親としてなのか、

 

ロキと同じ眷属想いの母だった。そういうところは確かに妹であるロキと同じ。子供想いの姉妹の姉であるのがわかる

 

眷属を喜ばすためにも母は料理も手を抜かない。肉以外は最悪だが

 

 

「ヘスティアもヘルメスも。あんなトールがヒューマンの子供と結婚するなんて想像付くと思うか?。夫がどんな人か私も見てみたいほどだ」

 

「それは僕も確かにアルテミスと同じ気持ちだね。あのトールが結婚なんて信じられないもん」

 

「ああ、それは確かにね。あのスタイルはめっちゃグラマーで、デメテルよりもデカイ巨乳の体をしているのに男のような性格をしたトールが、結婚なんて考えられないよ」

 

 

「そうか・・・・」

 

 

「あ、すまないオリオン!別にトールを馬鹿にしているわけじゃないんだ!」

 

「ジーク君は息子として許せない話かもしれないけど!・・・・その・・・どうしても・・」

 

「機嫌を損ねたのなら謝るよ!本当にごめんよ!ただ・・・どうしてもトールの性格を考えると信じられなくて・・・・」

 

 

「ん?ああ、別に俺は怒ってはいない、息子としても俺は母の事は男のような性格をしていると俺も思っているし、母もそれを自覚している」

 

 

「え?そうなのか?」

 

「怒らないのかい?」

 

「俺たち・・・明らかに君のお母さんに失礼なことを言っていると・・・思うけど?」

 

 

「まあ確かに母のことを馬鹿にされるのは息子として不服な話だ。でもおふくろ自身も下界に降りて結婚して子供を産めるなんて雷神の女神として想像しなかったと。おふくろも自覚し思ってたと。男に好かれる女神ではないとよく自分で言っていた。母自身が自覚していることに俺が反論しても仕方がない。事実は事実だしな」

 

 

ヘスティアとアルテミスとヘルメスは、母が結婚できるような女神には見えない。性格は男そのものの女神。あまりに結婚など考える女神には見えないため、三人はいくら下界の環境に変わったとは言え、母が下界の子供と結婚しているなど、三人は考えられなかった

 

そんなことをその間に生まれた息子である俺からすれば、母を馬鹿にされているのと変わりない。思っていた事とは言え。俺に失礼だと。三人は謝った

 

だがその部分に関しては確かに事実。おふくろ自身もそれを自覚している。本人が自覚している以上は俺も言う事はなかった。ぶっちゃけこれで結婚して俺をよく産んだなと、女らしさがまったく無い女神だと俺も思っていた

 

 

「でもおふくろは女神としての女らしさは確かに無い。でも俺を息子として想いここまで育ててくれたり、自分のファミリアを解散して別のファミリアに移った自分の元眷属にも、愛情を持って接した母親としてはある。女らしい振る舞いは無くても、母性としては確かにあったんだ。ヘスティアとヘルメスなら分かるが、豊饒の女主人の女将であるミア・グランドと同じだ」

 

「ああ。なるほどね・・・あんな感じか・・」

 

「あのミアと同じ母性なら納得だ・・・・言われてみると確かにトールとミアって似ているな・・・」

 

「まあ。おふくろの眷属のほとんどはドワーフが入っていたからな。正直言うとおふくろはドワーフの母とも言えるような女神だからな」

 

「そうなのか・・・・・・それでそのトールの夫はどんなヒューマンなんだ?オリオン?」

 

「残念ながらそれに関しては説明できない」

 

「え?なぜだ?」

 

「それは・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の父は俺を産んで半年後にある戦争で俺の故郷を守るために一人で戦って戦死したからだ」

 

 

「っ!?す、すまない・・・」

 

「そうだったんだ・・・・」

 

「ごめんね。やっぱり謝罪はしておくよ。ジーク君」

 

 

「気にするな。父は母のファミリアの団長として戦士として俺の故郷を守り、家族を愛して俺たちのために死んだんだ。会ってはいなくても、父は母の夫として成すべき事を果たしたと、誇らしいと俺も父を勇敢だと思っている」

 

 

俺の父は俺が生まれて半年後にある戦争を終わらせるために一人で戦い、最後まで振り絞り、目標を成し遂げて最後は力尽きた。

 

だから声も聞いたことはない。顔も故郷にある壁画か、絵でしか見た事がない。母からは俺そっくりで他人想いで自分の事を考えない男だと言っていた。自分の命を考えないのは人間として終わりだが、自分の命よりも大切な者たちが居たのだと、今の俺と同じ考えをしていることは、母から聞かされる父の武勇伝を聞いて理解できる

 

親が何かで死んで居ないなど、誰にでもある事。俺は悲しんだりもせず受け入れた。

 

 

「父親はおふくろと違って神ではない、人間なんだ。長くは生きられない。最後は家族のために目的のために果たして眠ったんだ。父は自分の望む通りに最後を決めたんだ」

 

「そうか・・・・君のお父さんは戦士だったんだね?それも自分のファミリアの団長か、トールも良い恋をしていたんだね?」

 

「ああ・・・・・・だが」

 

「「「ん???」」」

 

「おふくろは天界に居た頃も泣いた事はないと言っていたが・・・・・・父が戦死して遺体を抱きしめた時は泣かずには居られなかったとおふくろは言っていた・・・」

 

「トールが・・・・・泣いた・・」

 

「あのトールが泣くなんて、私でも見た事がない」

 

「俺もだよ。それだけ・・・・ジーク君のお父さんのことを愛していたんだろうね。どんなに魂が戦士の熱意でできていても、例え女の振る舞いをしない男のような性格をした雷神でも・・・・・トールにとってはその人を男として想う。女の涙が確かにあったんだろうね・・・」

 

「俺もおふくろが泣いた所など見たことない。女らしさの無いおふくろが父が亡くなったことに対して泣いていたのであれば、もはや雷神でも女でも無い・・・・・・・・俺の父の妻として泣いていたんだなと、それを聞いた俺はそう感じた。神だって人間と同じく。俺たちに恋をして、俺と言う人間を生み。母になって俺を育てる。例え雷神であろうと心は人間と変わりない。それだけこの下界でおふくろも変わったのだろう。神は全知全能の生き物ではない。ここ下界はそんな神々の知らない学ぶべき多い世界だ」

 

 

俺は天界と言う神々が住う天空世界は行った事はない。だが下界と違ってモンスターの居ない平和すぎる世界なのだろう。だから神は刺激を求めてこの世界に降りてくる。自分の命を賭けてまで

 

そしておふくろはは愛する恋人を見つけて結婚し、神が子供を産む事ができないはずなのに俺を生んで、母となった

 

神でも下界と言う世界を味わって変わる。ただそれだけのこと。別に珍しい話ではない。神であろうと俺たち下界の子供と共に過ごせば何かに惹かれ変わると言う事だ

 

 

「長々とおふくろのことを話したが、そこまで神が子供と恋するのが気になるのか?・・・・・・・・・・・アルテミス?」

 

「え?」

 

「お前。さっきから俺のおふくろのことを話すと、お前興味津々に真面目に聞こうと、顔の表情が固くなっている。さっき言っていたが恋に憧れているんだな?」

 

「ま、まあな・・・・・」

 

「恋か・・・・・・まあ確かに女性としては憧れるものだろう。別に女神であろうとそれは間違ってないと思うぞ?」

 

「え?もしかしてアルテミス誰かに恋をしているの?」

 

「は!?君が恋だって!?君も十分トールと同じように下界に染まって変わっているんじゃないか!?恋愛アンチの君はどこ行ったんだ!?」

 

「いや!?別にそんな・・・・私もここ一ヶ月前からこんな思いをするようになったと言うか・・・」

 

「別にいいんじゃないかヘスティア?アルテミスも純潔を司ろうが、女神であり女なんだ。別に悪いことではないぞ?」

 

「だとしても!?あのアルテミスが変わるなんて・・・・・僕には信じられないんだよ!?」

 

「その様子だと、アルテミスは天界の頃は相当厳しい女だったんだな」

 

 

ヘスティアがアルテミスとは天界では親友同士、彼女のことについて知らない事は何一つ無いはず、そんな彼女が魔法でも掛けられたのか、性格が一変しているようで、純潔の女神である彼女とは思えないほど、恋する女神になっていたことに

 

例え下界に染まって考えが変わったとは言え、これが彼女などヘスティア自身は考えられなかったようだ

 

でもそんなに恋が気になるなら、もっと詳しい奴に聞けばいいと俺はアルテミスに助言する

 

 

「アルテミス。そんなに恋が気になるなら・・・・ある場所を教えてやるからある女神にでも聞いてくると良い」

 

「え?ある女神って?」

 

「お前らも知っているはずの女神だ」

 

 

俺はフレイヤやイシュタルと同じように、愛と美の女神を俺は9歳の頃に母の紹介で出会った。女神を知っていた。彼女なら恋には詳しいと思い、彼女たちなら知っているだろうと思って教えた。名前だけを出せば分かるはずだと、その女神の名を出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アフロディーテだ」

 

 

 

 

「「え!?アフロディーテ!?・・・・・・」」

 

「・・・・・・」

 

「どうした?やはり知っているのか?」

 

「ああ。知っているさ・・・・・あの『ハレンチふしだら女神』め・・・・」

 

「そういえばあいつは性の女神だったな・・・・・・お前にとっては相性の悪い女神だったな・・・」

 

 

アフロディーテ

 

フレイヤとイシュタルと同じ愛と美の女神でもあり、性の女神でもある女神。フレイヤとイシュタル同様に魅了と言う能力を持ち、気が強い女神。憧れと欲望と愛を司り、下界の子供の心を征服することのできる女神

 

確か、眷属が望むなら何人でも何回でも性交すると言う。言うならエロい女神。スタイルもデメテルとあまり変わりないから、彼女を欲しがる女神は多い。無論眷属もほとんどが男である

 

でも性交を司る女神であるアフロディーテは、アルテミスにとっては純潔の敵。彼女はアフロディーテの話をすると、機嫌を悪くしているのをしっかり俺は見た

 

 

「あの・・・・・・アフロディーテが・・・・恋に詳しい・・だと・・・・そんなはずはない・・・・・そんな事があって溜まるか!!!」

 

「そこまで嫌いか・・・お前は」

 

「なんでジーク君があのアフロディーテの事を知っているんだい?」

 

「俺が9歳の頃、おふくろがなんの理由でかは知らないが俺をあいつに会わせたいがためにあいつのファミリアのホームに行った事がある。そしてあいつに出会い俺のことを『アドニス』と呼んで俺を夫にしようとした」

 

「は!?あのアフロディーテが!?」

 

「俺が自分よりも美しいからと、是非夫になってくれと俺に迫ってきた。9歳の俺に流石にまだ早いとおふくろが止められたがな・・・」

 

「ジーク君はイケメンだからあのブレイバーにも負けないと思っていたけど、女神も魅了するほどの美しさを持っているんだね?」

 

「それはスキルが原因だ」

 

 

俺のフレイ・フェロモンのせいでアフロディーテ が魅了しているのかもしれない。確かに当時俺を美少年だと彼女は言っていた。イケメンだとかはそんなことは俺にはわからないが、少なくとも俺が美しいからの始まりでアフロディーテは俺を夫にしたがっているのは事実

 

でも、それとは別に彼女に教わった言葉を貰っているため、それを俺はヘスティアたちに伝える

 

 

「だがあいつは言っていた。『愛は素晴らしいもの』だと、あいつが当時の俺が小さい頃の姿を見る限りでは俺には愛が一番不可欠だと、アフロディーテは言っていた」

 

「君には愛が不可欠?」

 

「ああ、意味はよく言ってはくれなかったが、『君は強くなるのはいつだって女のため、君は愛や恋で強くなる』と言っていた。アフロディーテは愛にも恋にも強い女だ。その二つに関して詳しいのはあいつだ。何か俺に強くなる秘訣を教えてくれた女だ。いくら純潔の女神であるお前でも、彼女なら教えてくれると思うぞ?例えお前自身があいつが嫌いでもな・・・」

 

「アフロディーテが・・・オリオンにそんなことを・・・」

 

「お前が確かめる覚悟があるのならな・・・・・居場所を教えても構わんぞ?」

 

 

愛とはなんなのか。それを知っているアフロディーテなら彼女にも分かるはず、性の女神でもあるのがデメリットだが、少なくとも邪神ではない。だから彼女にならアルテミスでも教えてくれる。

 

でもアルテミスは彼女を嫌っている。ふしだらな女でもあるのだから純潔の女神でもある彼女にとっては敵そのもの。性交を誰にでもする彼女は不潔扱い。彼女がそれを受け入れる覚悟があれば居場所を教えたのだが・・・・どうやら彼女は愛が分かるアフロディーテでも受け入れ難いようだ

 

 

「ジークさん!片付け完了しました!」

 

「すぐに出れますよ!ジーク様」

 

『主。皆さんもう出発する準備ができたようです。そろそろ移動しませんか?』

 

 

「そうだな、片付けが完了した。話はここまでだ。移動するぞ?でないとアンタレスの汚染が悪化されたら困るからな」

 

 

食器の片付けは完了したとベルとリリルカから通達が入る。出発する準備も完了したようで、すぐに出発するように全員飛龍に乗る。

 

ヘスティアとリリルカがどっちがベルと一緒に乗るか、言い争いが始まったが、神の遊びの一つ『ジャンケン』で勝負して勝った者がベルと一緒に乗ると言うことで、リリルカが勝利して、ベルはリリルカと一緒に乗る。残ったヘスティアは頬を膨らませてヘルメスと共に乗ってすぐに出発した

 

 

さっきの話は、結局恋はなんなのかなど、アルテミスはわからないままだった。俺のおふくろの恋の話をして、理解できるかと言ったら、純潔の女神である彼女では言葉だけでは理解できない。実感しなければわからないものだ。まあそんなものは俺でもわかってないから詳しい事は教えられないが、少なくとも俺はこう思っていた

 

今のアルテミスは恋に振り回されている。そしてその恋の相手は下界の子供で間違いない。誰なのかは知らないが、その相手に恋をしたら、どうしたらいいのかわからない乙女になった女神だ

 

との事だけが今俺はこいつの思考を理解した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五日目の昼前

 

 

オラリオから持って来た食材を、ほとんどを食事で五日で切らした。途中村と街を通り掛かって食材を買うなどをして耐え抜いていた。でも村や街がこの先いくつもある訳ではない。だからもしも食材が無くなったら『エルドフリームニル』を使って食材を作るのもいいが、せっかくの旅なのだから、できるのなら今地面に広がる樹海に生態する獣を狩猟して食材を確保したいとも考えていた

 

だからなるべく下を向いて獣の気配を感知に集中していた

 

 

「・・・・・・・」

 

「オリオン?さっきからなぜ下を向いている?」

 

「ああ、それは・・・・・っ!見つけた!は!」

 

「オリオン!?」

 

 

俺はある獣を地面に感知して、俺はリジルを下に向けて投げた。投げた森の中で『ギイ!?』と鳴き声がしっかりと聞こえた。獲物はしっかりと当たったようだ

 

 

『主ヒットです!お見事です!』

 

「よし、全員付いて来い!下に降りるぞ!」

 

「どうしたんだいジーク君!」

 

「何か見つけたんですか!」

 

 

そうして俺は全員に付いてくるよう指示をして、グリフォンに先ほどリジルを投げた森の中へと降りて貰う。俺がリジルでヒットした獲物は

 

大分大きい鹿だった

 

 

「よし。今日一日分は鹿肉で凌げそうだ」

 

「まさか・・・・これだけのために投げて殺したのか?オリオン?」

 

「ああ。そろそろ食材が切らすところだったからな、いい獲物が手に入った」

 

「無闇に殺してはダメだ!オリオン!」

 

「・・・・・・・なに?」

 

「ああ・・・・・・ジーク君。アルテミスの前で狩猟をしてしまったか・・・・」

 

「どういうことだ?ヘスティア?」

 

 

俺が鹿を狩った。事に対してアルテミスがもう反対するかのように俺のした事に抗議して来た。なぜ食材が切れそうと仕方なく狩りをしていただけなのに、なぜかそれをアルテミスは不服なのか、俺のしたことを無闇だと言い放った

 

ヘスティアがその俺の行動に何かいけない事だと分かるのか、なぜアルテミスが狩猟をしてならない理由を親友であるヘスティアに聞く

 

 

「アルテミスは純潔だけでなくて狩猟の女神でもあるんだ」

 

「ほう・・・・・それで?」

 

「狩猟と言っても森に潜むモンスターを大概倒していて、そうではない森に住む獣たちをも守り加護もしているから、モンスターではない獣を狩猟する事は彼女にとっては許さないんだよ」

 

「なるほど、だがこの鹿はもう殺した。殺した以上はその体はしっかりと貰う。それにこれが無ければまともな食材が無い。狩猟は時には必要だ。悪いがお前がやってはならない行為だろうと、生きるためには必要な事だ。悪いが狩りをさせて貰う」

 

「オリオン!それはダメな行為だ!例え生きるためでも・・・」

 

「俺たちヒューマンはそうやって生きてきた。獣の命を取らなければ腹を満たす事はできない」

 

「だが罪の無い獣を殺すのは・・・・」

 

「罪の無い?獣などモンスターと変わりないだろ?」

 

「え?」

 

「モンスターだって俺たちを食べなければ生きる事ができない。この獣だってそうだ。いろんな獣たちも共食いなどをしてまで、獣の体を食材にしなければ生きれない獣も居るんだぞ?俺たちヒューマンも肉を食べる。て事は獣だって誰かを殺してその体を食べていると言うことだ。生きるために必要な事だ。その概念を否定する気か?」

 

「だが、私は別に食べなくても・・・」

 

「お前が食べなくていいからと言って、俺たちは食事が必要なんだ。お前と一緒にするな・・・」

 

「それは・・・確かにそうだね、僕も食事は必要だよ」

 

「だが・・・・」

 

「お前にとっては確かに不服な話かもしれない。でもお前は狩猟そのものをなんだと思っているんだ?」

 

「え?」

 

「狩猟と言うのは猟の道具を使って山に住む獣を狩るのが目的だ。そしてその狩った獣を食材にし、料理する。本来狩猟と言うのはそういうものだ。俺たち下界の生き物はそうやって今まで生きてきた。魚も肉も牛乳も卵も、全部狩りして得た食材ばかり、狩猟である女神が狩猟そのものを理解していないとは、所詮お前はその程度か?アルテミス?」

 

「オリオン。我らが生きていく事には大切な事かもしれないが・・・・だからと言って・・・」

 

「もちろん狩った以上は必ず全部頂く。貰う命は大事にしなくてはな・・・それでも俺のした事に不満があるなら質問する。お前の眷属は今まで野菜か果物しか食った事ないのか?エルフの生活のように?」

 

「私たちファミリアの食事は確かにそうだな・・・・野菜のスープとかばかりだな・・・肉には手を出していない」

 

「そうか、ではお前以外にも質問するが、ヘスティア?お前たちはどうだ?命?極東でも魚を食べるだろう?それは狩猟をして食べているのだろう?」

 

「まあ・・・・確かにジーク君の言う通り、僕も肉は食べているかな・・・」

 

「確かにジーク君の言う事は間違いじゃないね。狩猟をしなければ食材は手に入らない。それは俺たち生きるためには必須な事だ」

 

「ジークさんの言う通り、僕も昔お爺ちゃんと一緒に狩りはしていました・・・」

 

「リリも肉は食べています」

 

「まあ俺も確かに生き物を食材はしているな・・」

 

「ええ。自分の故郷である極東も狩猟はしています」

 

 

「と、言っているぞ?これに対して何か反論はあるか?アルテミス?」

 

 

「うう・・・・・」

 

「確かに無闇に森に住む獣を殺すのは良くない。だがこれは食材確保のために、俺たちが生きるためとして必要な事。悪いが俺のやった事は見逃して貰うぞ?」

 

「うん・・・・わかった」

 

 

そうして鹿の腹に刺さったリジルを抜き。俺はその鹿を背負ってパンドラボックスにしまおうとする

 

だがアルテミスがどんな女神かも理解した。獣の命にも正義を持って守る女神。純潔と言うよりは狩猟の方が司っているような気がする。少しだけではあるが性格も含めて把握した

 

 

「なあヘスティア?オリオンって・・・・・あんなに厳しい男なのか?」

 

「まあね、でもトールの息子だけのことはあるでしょ?そういう所の頑固さ。仲間を想うために仕方のない殺しをする。決して悪い子じゃない事だけは確かだよ」

 

「そうだな。そう言われると確かに考え方はトールそっくりだ。ヘスティアたちの食事に必要な食材を確保するために狩猟をするのは仲間や主神想いをしている証拠だな、少しだけオリオンがどんな子供なのかわかってきた気がする」

 

「ジーク君は俺たち神々なんてあまり好きじゃないしね」

 

「え?どういう事だヘルメス?」

 

「それは・・・・」

 

 

「っ!おい!東の方から大量の獣が来るぞ!」

 

「「「「「「っ!?」」」」」」

 

 

アルテミスがヘスティアとヘルメス神々同士で何か話していたが、その途中。俺は東の方から森に住む動物たちの気配を感知した。

 

ベルたちは猛獣の可能性もあるため、武器を一度手に取る

 

 

そうして森の茂みから出てくると。鹿、熊、鳥、などこの森に住む獣たちが一斉に俺たちの方へ出てきた。仲間である鹿を殺した俺たちを倒そうとしているのか、なぜか俺たちを何もせずにジーと見てくる

 

すると俺の方へと、獣たちは視線を集中した

 

今鹿の死体を背負っているから、俺がこの森の敵だと感づいたのだろうか、今から俺を襲うのではないかと、俺もリジルを手を強く握って構える

 

 

「来るか・・・・・」

 

「オリオン!待ってくれ!」

 

「なんだ?」

 

「彼らは・・・・・・・・・・・不思議な事に君を歓迎している」

 

「・・・・・・なに?」

 

 

アルテミスは俺が反撃をしようとした瞬間、アルテミスが俺に奇襲を掛けようと獣たちがここに集まっているのではなく、俺を歓迎しているとアルテミスは行ってきた。なぜ森の獣たちが俺を歓迎するのか理解できないが、確かに襲ってこない。鹿はともかく熊が俺たちを襲わないなど獣の本能としてあり得ない。アルテミスは野生に生態する獣たちの事が意志が繋がっているのか、獣たちの心がわかるようで

 

アルテミスの言う通り、獣たちは歓迎しているようだ

 

 

「どうしてジークさんに獣たちが・・・」

 

「まさかジーク君を本当に歓迎しているの?どうなのアルテミス?」

 

「わからない。でも彼らは確かにオリオンに集まっている・・・」

 

「さて、どうしたのだろうな・・・・・・・」

 

 

『・・・・・・カンゲイ・・・します』

 

 

「っ!」

 

「オリオン?」

 

 

突然。今俺の目の前に居るこの獣たちから・・・・・・・声が聞こえた。間違いなくその声は今俺の後ろに居るヘスティアたちの声じゃない。片言ではあるが、明らかに今目の前に居る獣たちの声だとわかる

 

その声が俺の脳裏に聞こえる。

 

 

「お前たちか?」

 

『はい・・・・・ワレラとオナジセイブツ。ワレラとオナジ・・・・・・セイブツのチョウテン・・・・・『ドラゴン』カンゲイします』

 

「っ!?」

 

『主?まさか・・・・・主様は彼らの言語がわかるのですか?・・・』

 

「精霊であるお前なら獣の言葉がわかるはずが・・・・・・・どうやら俺にもわかるようになった」

 

「え?オリオン?獣たちの言葉がわかるのか?」

 

「え!?ジーク君いつからそんなことがわかるようになったの!?」

 

「いや・・・・・まあな・・・・・これでならもっと良く聞こえるだろう・・」

 

 

なぜ俺に獣の声が聞こえるのだろう。どうやらヘスティアたちには聞こえない。だが俺には確かに聞こえる。今の目の前に居る一匹の鹿の声を、代表として喋っているのを、だがそんな声をはっきりと聞こえるのは

 

こいつらが獣の気配で、俺が『怪物』だとわかっているからだ

 

彼らが俺と同じ怪物の仲間だと、獣と同じだからこそ俺は獣の声が聞こえる。俺は同類だと獣の声が脳裏に響いて聞こえた。だからもっと聞こえるように俺は『エギルの髪飾り』を付けて、眼を『竜の眼』に変換させた

 

すると、

 

 

『私たちを超越するドラゴンであるあなたが、我らの命が欲しいのなら差し出します。どうかご使用ください』

 

「ご使用くださいか・・・」

 

『主?ではまさか・・・・・』

 

「ああ。そういうことだグリフォン」

 

 

片言ではなく、今度はしっかりと彼らの声が聞こえる。俺をドラゴンと呼び。生物の頂点、もしくは王として生物の掟らしく弱肉強食だからなのか、俺に逆らうことをせずに体を差し出してきた

 

こいつらはやはり気付いている。そしてグリフォンも俺の体が・・・・・ドラゴンになっていると気付き始めている。レベル6になったことでもう俺の体が怪物になり掛けていると、もうヒューマンの体になっていないと理解した

 

おまけにこいつらは少なくとも俺に『怯えている』。滅ぼされるのを怖くて俺に何匹が食材になることを覚悟して犠牲しに来ている。明らかに歓迎している雰囲気はしていない。足を震えている獣も要るのを俺は見逃していなかった

 

だから、俺は言って下がらせる

 

 

「歓迎してないことくらい見ていればわかる。下がれ。別にお前たちの命を差し出す必要は無い。俺たちはこれで十分だ」

 

『なぜ・・・・食材は要らないのですか?』

 

『主がそう言っているんです。あなた方まで食材になる必要はありませんよ』

 

『ですが・・・・』

 

「お前らまで食材にしたら、アルテミスにまた何か言われる。彼女にこれ以上叱られたくないから下がれ。こいつだけでいい」

 

『はあ・・・・あなた様がそうおっしゃるなら・・・・』

 

 

そう言って獣たちは帰っていく。まさかグリフォンたち精霊の力で抑えてもらっているあの『力』に限界が来ているなど。レベル6の現状でこの力に意地が保てなくなっていると、オーラで感じる事は無いが、獣にしかわからない気配が俺の体に察知したようで、この森の生物を全て捕食される前に、自分たちだけで犠牲になろうと、命乞いをしたようだ

 

もちろんその食材は必要ない。弱肉強食らしいが、それ以上の食材は多くは要らない。今持っている鹿一匹で腹を満たすにしては十分だと、下がらせた

 

 

「オ、オリオン?・・・・彼らの言葉がわかるのか?」

 

「ああ、どうやらレベル6になってから体が異常を起こしているようだ」

 

「ん?ジーク君?眼が変になってない?眼が・・・・・・モンスターみたいな眼だね?なんだか・・・・・・怖いんだけど・・・」

 

「お前らには関係の無い話だ。気にしなくていいヘルメス」

 

「でも・・・・・どうしてあの動物たちが君の所に集中的に集まったんだい?」

 

「それは・・・・」

 

『主は気配に強いお方です。彼らはレベル6になった主の気配に危険を察して、自分たちこの森に住む動物が滅ぼされるのではないかと、体を差し出して森を滅ぼさないで欲しいと自分たちの命を犠牲に命乞いをしたのです』

 

「そうなんだグリフォン君・・・・」

 

「ジーク様は確かにレベル6になったのですから、危険だとあの動物たちにはわかるんですね」

 

 

「獣にしかわからない本能と言うものだろう。だがあいにくさっきお前たちに言った通り無駄な殺しはするつもりは無い。こいつだけで十分だ。長い時間で寄り道をしたが移動するぞ?」

 

 

これで確信した

 

やはり強くなる分だけ心を失うだけでなく、体徐々に人間で無くなっていることが確信した。『エギルの髪飾り』を頭に取り付けて獣の言葉がわかった。やはり『あいつ』の心臓を食べた結果だ

 

レベル6になって体が侵食されている。もしくは変わっているかだ。やはり強くなれば今度こそ体全てがモンスターになるだろう。例えグリフォンたちの力で抑えて貰っているとはいえ。もう限界が来ていると言うこと

 

全て覚悟していたこと。もはや後悔など微塵も無かった

 

 

エギルの髪飾りを外して目を戻す。これ以上こいつらに悟られたくはない。だから俺は関係ないと言うが、ヘルメスが何か察しているのに気付いている。だとしても俺にはレアスキルがある限り神に隠し事ができる

 

だから何も言わずに、狩った一匹の鹿をさっさと持ち出して移動する

 

時間も惜しいため

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五日後の夜

 

夕飯を済ませて、今度は俺一人が片付けを担当する。一応片付けは日にちごとに順番で交代でやっている。だから今度は俺の番が来たと、俺一人で食器の片付けをしていた

 

誰かが共にやった方がいいとヘスティアに言われるが、一人で構わないと。遠慮をして俺は一人で片付けをしていた。遠慮した理由は別にこんなのを一人でできるからだ。別にそんな多くでやることではないと断った

 

のだが

 

 

「オリオン」

 

「ん?なんだアルテミス?」

 

「私が手伝おう。共に手伝いをさせてくれ」

 

「必要ないと言ったが?」

 

「お前たちばかりに働かせるわけには、私のプライドとしてどうしても何かしたいんだ。させてくれないか?」

 

「そうか・・・・そこまで言うなら、その洗った食器をそこに置いてある手拭いで拭いてくれ」

 

「ああ、わかった」

 

 

主神としてなのか、それともクエストを依頼した者としてなのか、何か手伝いをしなくては気が収まらないようだ。まあ神にでもプライドはあるからと、仕方なく彼女の頼みを聞いた

 

のだが

 

実は最近こいつの言うことを何か聞かなければ面倒だと思っていた。なんだが苦手な感じがする。何かと・・・・・ひつこいと言うか。失礼ながらアポロンに似ていると思っている

 

 

「オリオン。聞いてもいいか?」

 

「なんだ?」

 

「ヘスティアから聞いたんだが・・・・・二年前あのアポロンに酷い事をされて私たち神々が嫌いなんだな?」

 

「・・・・・・ヘスティアが言ったのか?」

 

「ああ、さっきな・・・・・」

 

「あまり余計なことを言わないで欲しいのだがな・・・」

 

 

どうやらヘスティアから俺が神嫌いだと聞いたようだ。あまりあいつのことに関してのことを他人に言わないで欲しい。思い出したくないと言うのもある。もう終わった話を掘り返さないで欲しいと、せっかくあのクソ野郎がオラリオを出て行ったおかげで気が楽になったんだ

 

あいつがオラリオにまだ住んでいた事を思うと、あの災害が自然に頭に思い出す、気掛かりで堪らない。だからもうあいつが居ないからと言ってあいつの話をアルテミスにして欲しくはなかった

 

 

「私の弟が悪いことをしたな。姉として謝罪する」

 

「っ!お前の弟?どういうことだ?」

 

「私とアポロンは天界で姉弟のように育ったんだ。私はアポロンの姉で天界ではよく共に弓の上手さを競っていたんだ」

 

「なるほど、通りでな・・・」

 

「え?何がだ?」

 

「お前はなんだかアポロンにそっくりだなと思ったんだ。なんと言うか・・・・・・しつこく俺に付き纏うと言うか・・・・お前もアポロンも俺のやることに一々文句を言うひつこさを感じる」

 

「ひつこい!?私はそんなにひつこいか!?」

 

「ああ、知っているかアルテミス。ひつこい女は嫌われるって言うんだぞ?」

 

「そ、それは知っているが・・・・・私はどういうところがしつこかったんだ!?」

 

 

「俺のやることに対して全て何か言ってくることと、文句を言うところ、そう言うところは弟であるアポロンとそっくりだ」

 

「うう・・・・・私が・・・・そんなにひつこかったか・・・すまない」

 

 

確かにそう言うところはアポロンと似ていた。確かに姉弟だけのことはあるなと思った。勝手に狩猟を始めたことが原因だが、それが始まりで何かと俺のすることに何か言ってくる。質問なら仕方ないが、文句も入ってくる時もある。そう言うところは確かにアポロンそっくりだなと思った

 

まさかアルテミスがあのアポロンの姉なのは知らなかった。見た目は全然似てない。俺の母とロキ以外にも姉弟が居るなんて知らなかった。俺の母とロキのように神々の姉弟と言うのはあまり見た目は似てないものだと理解した

 

 

「それとアポロンが・・・・私の弟が申し訳ないことをした・・・・姉として謝らせてくれ」

 

「その必要はない。俺たちはそのアポロン・ファミリアとオラリオの正式な決闘で勝ち、奴をオラリオから追放したんだ。弟を都市に追い出した男に謝罪など必要ない。お前の家族を追っ払った。それだけで俺はお前に恨まれる者だと思うが?」

 

「家族か・・・・私も姉としてあまりアポロンのことを良き弟だと思っていない」

 

「そうなのか?」

 

「アポロンは美しい者ならなんでも手にする執念深い性格をしているからな。オリオンが美しいからと手を出したとさっきヘスティアに聞いた。私も天界ではやめるように言ったのだが・・・どうにも聞いてくれなくてな。だから弓で射抜こうとして無理にでも言うことを聞かせようとした時があるんだ」

 

「あいつは天界でもそんな感じなんだな。本当に太陽の男神も微塵も無い男神だ」

 

「あのアポロンに酷い目を受けて、我々神が嫌いなったんだなと思い、弟が本当に申し訳ないことをしたと。姉として申し訳ないばかりだ」

 

「それとは別だがな・・・・」

 

 

アルテミスは俺が神々を嫌いになったのは別にアポロンだけでの話ではない。俺が神を嫌いになったのは別の理由でもある。だから別にお前が代わりに謝る必要はないし。現にあいつは外に追い出した。別にどうでもいい話だった

 

でも月の矢を示したアルテミスと太陽の矢を示したアポロン

 

確かに姉と弟の感じは確かにすると確信する

 

 

「だが神々全員ではない。そこまで否定をすれば俺は母をも否定することになる。俺が嫌いなのはそう言う邪神共だ。その者たちが嫌いなんだ。でなきゃ俺はヘスティアの眷属にはならない」

 

「そうか・・・・てっきり私は神々全員だと思っていた。ロキもあのアポロンなどを信じず、なぜオリオンを信じないんだ。訳がわからない」

 

「当時は俺も性格が悪かった。いろいろあったんだ。過ぎた話だ。もう気にしていない」

 

「オリオンは・・・・強い意志があるのだな」

 

「まあ、いろいろ経験しているからこそ折れない精神があるって言うのもある」

 

 

確かにここまで強くなったのは、いろんな痛みも後悔も悲しみを知ったことで得た力だ。痛い想いをして得たものは確かにある。そのせいで折れない精神をしたのもある。人は経験することでそれを知り大きくなる

 

まだ成人をしていないとは言え、少し大人のように早く成長し過ぎただけのこと。なんら不思議なことではなかった

 

 

「これがあのフレイの義弟か・・・・私も君のような弟が欲しかったな」

 

「アルテミス。俺でもフレイでも喧嘩はするぞ?」

 

「そうなのか?」

 

「兄弟と言うのは時には喧嘩もするんだ。時によって競ったり、仲良くしたりもする。兄弟によって違うが、俺はそこまで良い弟ではない。その意味がこの旅をしてわかる。片付けの手伝いありがとう。もう行くぞ?」

 

「あ、ああ・・・・」

 

 

川で食器の洗いを済ませて、ヘスティアたちの居るキャンプに戻る。フレイとは仲が良いと言えば良いかもしれないが、それでも何かと俺とはある部分で相性が悪い所がある。そう言う些細なことで喧嘩することもある。小さい頃ゲルズ姉さんとおふくろにいつも止められていた

 

兄弟だって時には喧嘩するものだ。それに俺は厳しい性格をしているとかでよく俺のことに対してフレイはよく意見する。それが原因でよく言い争い。最終的に剣で喧嘩すると言う危ないこともしていた。ほぼ喧嘩の始まりが全て俺の原因。俺は何に対しても厳しくなったため、根が悪い俺はあまり良き弟ではなかった

 

そうしてキャンプに戻ると、ヘスティアたちが楽しく話をしているのだが。ヴェルフの姿が無かった

 

 

「あ、お帰りなさいジークさん」

 

「ベル。ヴェルフはどうした?」

 

「ヴェルフならあっちでみんなの武器を手入れしていますよ」

 

「そうか・・・・・一応刃を磨いているのだろうな、念のために」

 

 

戦いは五日経ってもしていない。けどもしもの戦いのために用意は怠らないと、夜の内に手入れして、もしものことが無いように武器の刃を磨いている。鍛治師としての働きをしているのか、もしくはまた退屈を凌がせようしているのか

 

俺以外の全員分の武器を手入れしている。そうして俺はヴェルフの所へ

 

 

「ヴェルフ。武器の手入れをしているのか?」

 

「ああ。砥石で全員分の武器をな。お前のもやろうか?」

 

「悪いが、あれは特殊武器だ。ヴェルフの腕を疑うわけではないが、それでも特別にできているため自分で手入れしなきゃダメなんだ。それに魔剣でできている。お前は触りたくないだろ?」

 

「触りたくないってわけじゃねえけど・・・・・・・あの魔剣グラムってのが・・・・なんだか怖い」

 

「だろうな。あれは怒りに特化した武器だ。俺じゃない奴が簡単に触っていい武器ではない」

 

 

魔剣グラム

 

怒りと意味をした特殊武器。上級武器とは異なる。何でできているかも不明。けどこれは父の形見でもあり、父の愛剣でもある。そんな特殊な武器を俺が扱い継承した。雷の力もある謎の魔剣。クロッゾの魔剣よりも危険な威力のある魔剣。それを扱っている俺と父は一人で戦えるほどの戦力と為す

 

怒り一つで国すらも破壊する魔剣。だからグリフォン達精霊が恐れる魔剣でもある。クロッゾの血を引くヴェルフでも恐怖を感じる。精霊の血を引くからこそ、俺の魔剣グラムは鍛治師でも触れたくなかったようだ。

 

俺の武器のほとんどは鍛治師が触れていい武器ではない。特に・・・・・・・『宝剣フロッティ』。あれも触れていい武器ではない。だから俺の武器は触らせることができない

 

 

「ヴェルフは・・・・鍛治師なのか?」

 

「は、はい。自分はヘスティア・ファミリアの鍛治師をしています」

 

「アルテミス。彼はラキア王国の貴族。クロッゾだ」

 

「なんと!?」

 

「ヘスティア様!?」

 

「秘密にすることはできないよヴェルフ君?神相手にね・・・」

 

「ですけど、ヘルメス様・・・・・」

 

「いいんだ。苦労しただろう?あのアレスに扱き使われて・・・・あのアレス・ファミリアの国に。ラキア王国の出身であるあのクロッゾだったとはな」

 

「アルテミス様は知っているんですか?ヴェルフのクロッゾのことを・・・」

 

「ああ。そうだよベル。私のファミリアもアレス・ファミリアと戦ったことがある」

 

「え!?あのアレス・ファミリアと戦ったことがあるんですか!?」

 

「あの国そのものが眷属のファミリアに!?」

 

 

「ほう・・・・お前達アルテミス・ファミリアもアレス・ファミリアと戦ったことがあるのか?」

 

 

「ああ。オリオン。二年前になるのだが・・・・私の眷属をラキアの兵士にしたいと勧誘をしてきてな・・・」

 

「なるほど、それでその勧誘を断れらたアレスが、気に食わないと、兵を送り出してお前らのファミリアを奇襲したってわけか」

 

「ああ、なんとか私の眷属が止めてくれたから、問題なかった」

 

「ヴェルフ。確か将軍クラスならレベル3だったな?」

 

「ああ。そうだ。アレス・ファミリアは副団長のマリウス・ウィクトリクス・ラキア王子はレベル4だ。それ以外の将軍クラスはレベル3。それ以外は軍勢の兵でレベル2くらいだな・・・・」

 

「私のファミリアは団長と副団長でレベル5だ。なんとか止められた」

 

「どれだけ多くでも第一冒険者であるレベル5が二人居るなら、アレス・ファミリアが軍勢を揃えても無理だろうな」

 

「私はその時に、アレスの兜に矢を放った。アレスは馬に乗って戦いもせずに高笑いをしていたのを見て、気に食わないと放ってしまった」

 

「ほう・・・・アレスは戦い好きだと聞いた。その時は自分自身が戦わなかったんだな?」

 

「ああ。私自身も戦うのだが、その時アレスは我らが野外ファミリアだと。弱いファミリアにアレスは自ら戦いはしなかったのだろう」

 

「確かに、野外ファミリアはステイタスを極めるにふさわしい鍛える場所は難しいに等しい。確かにアレスが侮って当然だな。野外ファミリアはオラリオのファミリアと違ってそこまでレベル上げはほぼ不可能だからな」

 

「あのジークさん?神が戦っていいのですか?」

 

「ん?神が戦うのがそんな不思議な話か?ベル?」

 

「ベル君達には考えられないかもしれないけど、僕たち神だって戦っていいんだよ?ただアルカナムを使ってはならない。それだけを守れば神だって戦って構わない。俺たちでも自主防衛は必要だよ?」

 

「オラリオはギルドのルールにより神はダンジョンに入ることはできない。ベル君も知っているはずだよ?以前18階層にアンダーリゾートである場所に出てきた階層主」

 

「っ!?ゴライアス!?」

 

「そう。漆黒のゴライアス。僕とヘルメスが入ったことで、神を排除するためにダンジョンが投入したモンスター。そのため神が入るにしては危険があるためギルドは僕たち神を侵入禁止になった。野外は神を憎むモンスターは居ないし、ギルドのルールもオラリオ外は専門外だからね。神でも野外で襲われたら反撃する。アルカナムを使わなければ神が戦ってもいいんだよ」

 

「とは言っても、アルテミスは天界でもよく弓で狩猟をして自ら戦い。天界の中でも強い女神でもあるから、野外でもしているんだね」

 

「神でも戦うんですね・・・・」

 

「リリも知らなかったです」

 

「そう言えばリリルカはオラリオ生まれだったな、俺のおふくろやフレイだって自分で戦うんだ。そんな珍しいことではない」

 

 

ベルはまだ幼くて知らないことは多い。神自身が戦うなど彼らには想像つかないのだろう。ギルドのルールで神はダンジョンに入ることは許されない。そればかりを常識としてきたベルとリリルカには知らない話だった

 

アルテミスは天界でも強い女。負けることなどありはしないと。彼女自身もモンスターと戦っていると理解した

 

 

「ところでオリオン?さっきアルテミス・ファミリア『も』と言っていた。君もアレスのファミリアと戦ったことはあるのか?」

 

「ああ、一年前にな。あいつは俺の故郷を探していた」

 

「ジーク君の故郷かい?」

 

「俺の故郷は黄金の宝を大量に所持している。その宝を盗もうと俺の故郷を探していたらしい。俺の故郷など探すことなど不可能と言うのに・・・」

 

「それで君はアレス・ファミリアと戦ったのかい?」

 

「ああ。その宝はフレイの財産でもある。それはつまり俺の国の害。なら排除するまでだと。俺は・・・・・・・・・・一人で奴らを奴らの軍勢を半分殺した」

 

「な!?」

 

「あのアレスの軍勢を半分殺した!?マジかよ!?」

 

「しかも一人で・・・・」

 

「ジークさん軍勢を半分殺したって・・・・・人間ですよね?」

 

 

「そうだ。当時はレベル4で俺は奴らを一人で半分皆殺しをした。フレイが止めなかったら俺はこの下界からラキアと言う国を完全に破壊するつもりだった。アレスも含めて皆殺しにしようとした」

 

「マジかよ・・・・・あのアレス・ファミリアが・・・・一年前ジーク一人で滅ぼされるところだったのかよ」

 

「フレイの財産である宝を狙った以上は俺の故郷の敵と見做して俺は奴らを排除した。それだけのことだ。俺の敵にならなければ良かっただけのことだ」

 

「ジーク君・・・本当に容赦ないんだね?」

 

 

俺は一年前、アレスがフレイの財産である宝を盗もうと考えたのを聞いた。俺の故郷を捜索もしていた。それを聞いた俺は、フレイや爺さんにも言わずに俺一人で奴らを排除しに行った

 

軍勢は半分を殺した後、フレイが駆け付け、俺を国まで攻めるのを止められた。そうして俺はラキアに無断で襲ったことをフレイと爺さんに怒られるが

 

それでも、俺はこう言った

 

 

『あいつらが俺の敵にならなければいい』と敵に容赦など要らないと、殺したことへの罪悪感は何もなかった

 

ヒューマンだろうと考えない。敵であるなら排除すると、人間もモンスターと変わりないと心が動くことのないまま斬り捨てた。ためらいなど必要はない。生きるために、俺たちに害する者が一人でも居るなら。俺は容赦なく殺すまで

 

それが神だろうと殺すまでだ

 

 

「ジークさん・・・それ本当ですか?」

 

「ああ。今になって俺を軽蔑したか?ベル?」

 

「軽蔑とかじゃなく・・・・どうして人間を殺すんですか!?」

 

「そこか?そこにお前は不満があるのか?」

 

「ありますよ!人間が人間を殺すなんて・・・・」

 

「ベル。お前は信じ難いことかもしれないが。オラリオの過去の履歴に人殺しは当たり前にあった。それもダンジョンの中でな」

 

「な!?ダンジョンの中で人殺し!?」

 

「それも人からされたものだ。モンスターからのものではない。オラリオでは暗殺系ファミリアと言うのがある。人殺しをするファミリアだ」

 

「暗殺系ファミリア!?」

 

「あ、それはリリも聞いたことがあります!何かの依頼か。もしくはその暗殺者を育成・派遣する犯罪組織で暗殺をするファミリアだとリリも聞いたことがあります・・・」

 

「ああ、セクメト・ファミリアのことか」

 

「それだけではない。過去に『ルドラ・ファミリア』と言うファミリアがあった。当時アストレア・ファミリアと言うファミリアを壊滅しようと、ダンジョンで罠を仕掛けてある強大なモンスターを放ってアストレア・ファミリアの団員を殺したと暗殺履歴が入っている。その後何者かの暗殺によりルドラ・ファミリアの団員は全員殺され、ギルドから主神ルドラが闇派閥だと通報を受けて、ギルドによってルドラは天界に送還されたなどと、オラリオでも目的のために人殺しは珍しくないんだぞ?」

 

「でも、そんな・・・・」

 

「気持ちはわかる。人殺しは悪だからな。だがそんなことも時には必要だ。戦争は常にそんなものだ。相手に情けを出せばその隙に殺される。自分の身を守るためにはこうするしかない。ダンジョンも同じだ少しでも隙を出せば殺される。戦争と言うのは善も悪も無い。卑怯な手を使ってでも、戦争は勝つことが全てだ。情けをかければ自分が殺される。戦争と言うのは正しいことなどなに一つ無い」

 

「あのアレスを相手にしているんだからな、調子のいい神だから少しでも情けを見せれば奇襲ってこともあり得るだろうな・・・・」

 

「でも・・・人を殺すなんて・・・」

 

「ベル殿。認めたくはない気持ちはわかりますが、ジーク殿の言う通りです」

 

「え?命さん・・・」

 

「自分は極東出身で小さな村で桜花殿達と育ちました。でも・・・人に襲われ自分たちの村は壊滅しました」

 

「え!?命さんの生まれた村が・・・人に!?」

 

「極東はモンスターは非常に少ない。代わり人同士の争いの絶えない国でもあるからな」

 

「はい。極東は人同士で戦をしています。村が壊滅後自分たちはタケミカヅチ様に助けを頼んだんですが、それでも人に襲われ、自分も桜花殿も・・・・生きるためにと仕方なくその襲った人を殺したことがあります。人が人を殺すと言うのは・・・・・・もしもの場合はしなくてはならないのです」

 

「そんな・・・・命さんも人殺しをしていたなんて・・・・」

 

「信じられないかもしれない。況してや英雄になりたいお前には受け入れ難いこともかもしれない。英雄は決してモンスターだけが敵ではない。人を殺して平和を掴んだ英雄も居る。人殺しは相手が本当に俺たちの言葉を聞かず。武力で自分の命に危機があればする最終手段だ。戦争はそれが当たり前であり、相手を殺さねば勝つことはできない。受け入れ難いかもしれないが、これが現実だ」

 

「ああ。正直ジークの今の言葉は仕方ねえよ」

 

「ええ。これが現実です」

 

「そうですね。リリも戦争をダンジョンで例えるなら・・・・そうするべきだと思います」

 

 

「でも・・・・僕は・・・・・」

 

 

「・・・・・・・」

 

 

これだけ言って俺のしてきた戦争は、全て国を守るため、そんな自分の大事なものを守るためなら殺しも止むを得ずとするしかない。そうでなかれば生き残れない。特にダンジョンは、12階層に出てくる可愛らしい兎の『アルミラージュ』でも危険なモンスターであり、人を襲う。死ぬのが嫌だったら殺すしかない

 

戦争も同じだ。少しでも情けを出せば隙を狙われて殺される。それが嫌なら確実に相手を殺すしかない。戦争と言うのは残酷だが、こうするしか生き残れない。戦って殺さねば生きることはできない

 

そんな弱肉強食のような現実に、ラキア出身であるヴェルフも、生きるために仕方なく奇襲をしてきた人を殺した命も、まだ戦争経験の無いオラリオ生まれのリリルカでも認めているのだが

 

ベルは・・・・・それでも受け入れ難いようだ。それでも人が悪だと判断できない。本当に何もかもが甘い子供だ。何も知らないクセに正そうと無邪気に反論する。優し過ぎる少年。現実を見ていない証拠だ

 

でも

 

 

 

その現実を覆そうとする優しい精神は見事だと思って、俺は助言する

 

 

「もしそれでも人を殺すのが嫌なら、相手を納得させるようにお前が必死で止めろ」

 

「え?」

 

「別に俺は人を殺すのが全面的に正しいとは言ってない。俺は自分が弱いからできる限りとして相手を殺すしか生き残れなかった。それでも自身の命も仲間の命も守り。相手を更生させて人殺しをさせないように俺の前でやってみろ。相手を重んじる心がお前にあるのならお前に任せる。お前が正しいと思うことを貫け。俺は自分が守りきれないと仕方なく人を殺した。それだけだ。自分が俺より強くなって相手を殺しもしないよう更生させて見せろ。それが思い描いてた英雄だろう?」

 

「相手を更生させる・・・・・」

 

「俺が挑む相手はみんな言うことも忠告も聞かなかった。だから排除した。それでお前が更生させる手段があるならやって見せろ。それがお前が思い描いていた英雄だろう?なって見せろ。この現実を覆すほどの覇気を俺に見せてみろ。そうすればお前も俺以上の英雄になれる」

 

「ジークさん以上の英雄に・・・・・・・僕が・・・・・」

 

「俺は英雄になる気は無いが・・・・英雄になった者として、英雄になりたい目指す者に助言する。俺を超える『正義の冒険者』になって強くなれ。相手を殺すではなく、倒すと言うお前の正しいと思う正義を貫け・・・・」

 

「僕が正しいと思う正義を・・・・・・はい!!!」

 

「ああ。遅くならい内に寝ろよ」

 

 

それだけを言って、俺はベル達から離れて飛龍の様子を見に行く。食事をして体力をちゃんと回復しているか確認する

 

でも俺は思っていた。やはり現実を知らないベルは、母が殺される前とロキに疑われる前の現実を知らなかった俺に似ていると。俺はこの現実を受け入れて仕方のないことをした。でもベルは受け入れることなく、それを覆そうと抗った。現実に抗うなど人の力では無理だと、常識に考えるのだが。なのにあいつはそれでも正しい道を行く。そう言うところが『あの爺さんの孫』のことだけはあるなと

 

やはりベルは俺と同じ『存在』だと。否定できない同類を感じた

 

 

「オリオンは優しいのだな。ベルに正しい道を導くとは・・・」

 

「導けたかはわからないがなアルテミス、それはこれからあいつの成長による」

 

「でも英雄になった者ならではの助言だったよ?」

 

「そうだったかヘルメス?」

 

「うん!やっぱりジーク君は仲間想いだよ・・・・」

 

「そうか・・・・・あいつのためになれなたら・・・・団長として嬉しいよ・・・・笑顔になったりはしないが・・・」

 

 

ベルのために何か成せただろうか。今でも俺の助言がベルに効いたのかはわからない。今でも俺は英雄になったからと言っても一ヶ月で経っても。そんな実感は感じない。単に自分がどうでもいい肩書きだと思っているからだ

 

でも団員を成長させるには十分だと思っている。特にベルは俺と同じ異常な力を持つ男の子だ。必ず俺をも超えた英雄になるはずだと、なぜかそう思い知らされる感じがした

 

 

「お前たちも、明日は早いんだ。早く寝ろよ」

 

 

そうしてもう夜も遅いからとヘスティアたち神にもさっさと寝るように言う。明日も早く朝飯を済ませて、なるべく早めにエルソスの遺跡へと着くことを考えている

 

すると

 

 

「ああ・・・・オリオン?ちょっといいだろうか?」

 

「なんだアルテミス?何かトラブルか?」

 

「そうじゃないのだが・・・・・・・・今日は私と寝てくれないか?」

 

「ん?なぜ?」

 

「え!?アルテミスがジーク君と二人で寝る!?」

 

「おおっと!アルテミスが大胆に出た!!!」

 

「大きな声を出すなヘルメス。もう遅いんだ。それで・・・・なぜだ?」

 

「いや・・・・寝る前にもっとオリオンと話をしたいなと思って・・・・・・ダメだろうか?」

 

「はあ・・・・・仕方ない。わかった。少しだけだぞ?ヘスティア。今日は俺と交代だ」

 

「え!?ジーク君本気なの!?」

 

「俺と交代すればベルと寝られるが?」

 

「っ!?よし!わかった!なら今日は交代だ!!!」

 

「お、おいヘスティア!?」

 

 

そうして今回はアルテミスの要望により、俺とアルテミスと二人で一つのキャンプで寝ることになった。理由はまだ少しでも俺と話をしたいと言う理由で、俺を指名した。俺とヘスティアと交代で、ヘスティアがベルの居るキャンプに寝るのだが、そこにはリリルカが一緒だとは一言も言わないで行かせた

 

どうして寝る寸前まで俺と二人で離したいなど理解できないが、まあ彼女も友人とまだ話したいのだと交友をもっとしたいのだと

 

神としてではなく、彼女の意思で男と女で寝たいのだと。予測した

 

 

 

 

 

そしてそのテントの中で。俺とアルテミスは・・・・・・・少しどころか、かなり長話をしていた

 

 

「そうか・・・・ジークはヘスティアたちのために、あのベヒーモスを一人で倒したのか」

 

「達成した後は、かなり無茶しすぎだとヘスティアに酷く怒られたがな。成し遂げたとは言え。厳しく叱られた。まああれはどう考えても俺が悪いのだがな」

 

「ヘスティアだってそりゃあ怒るさ、君は本当に誰かのためなら自分の命までも葬るなど、普通はありえないんだぞ」

 

「そうだな、あの戦法は少なくとも無茶な行為だ。真似していいものではない」

 

 

と、俺は自分が行ったことを忘れて楽しく会話をしていた。話をすればするほど眠気も無くなり、どんどんアルテミスの会話が止まることなく会話が続く。でもまともに話ができる相手だった。今まで出会う奴は仲間や友人以外はまともに会話できない奴らばかりだ

 

これほど俺はアルテミスの会話に徐々に興味を持つかのように、俺たちは会話が続いた

 

狩猟でも趣味でも途切れることなく会話が続く。俺から質問をすると言うこともあった。まあ大抵はアルテミスの眷属はどんな奴だったとか。ファミリアの雰囲気を聞いていた。アルテミス・ファミリアなど聞いたことがないからを聞きたくなってしまったのだ。夜は長いとは言え。永遠に続くかのような終わらない会話だった

 

ここまで続いた会話はシルほど続かない。それほど俺も心が無いとは言え。顔にも出ていないが会話を楽しんでいた

 

 

「長々と話が長くなってしまったな・・・・」

 

「そうだな・・・・・これでは俺も少しと言った言葉を訂正しなければならないな」

 

「なあオリオン?」

 

「ん?なんだ?」

 

「オリオンは・・・・・・・神と子供が恋する事をどう思う?」

 

 

「どう思う?そうだな・・・・・実感した事ないからわからないが、別に構わないんじゃないか?俺の母だってしたんだ。そして俺が生まれた。別に間違いではないと否定はしない」

 

「そうか・・・・」

 

「恋をしている相手が居ると聞いたな、今その質問をすると言うことはやはり子供に恋をしているのだな。アルテミス」

 

「え!?ああ!いやでも・・・・そんな・・・・私がしていいだろうかと今でも迷っている」

 

「それで手遅れになって後悔しないならな」

 

「え?手遅れ?後悔?」

 

「よくあるんだぞ?お前が誰に恋をしているかなど俺は聞かないが、お前が悩んでいる間にその恋をしている相手が他の女と恋をしていたり、誰かに取られることなんてことがあるんだぞ?」

 

「な!?他の女性に取られるだと!?それはダメだ!!!」

 

「おい静かにしろ。みんなもう寝ているんだ。大きな声を出すな」

 

「あ、すまない」

 

「そこまで焦るなら本気でその者に恋をしているようだな、その相手にしっかり自分の気持ちは伝えておけよ?」

 

「うん・・・・そうだな。他の女性に取られる前に・・・・私の気持ちを伝えよう」

 

「そうしたほうがいいぞ」

 

 

アルテミスはその恋をする相手に他の女性が取られると言う恐れはまったく考え無かったようだ。それだけその相手を自分の男にする自信があったのか、もしくはその相手に他に恋をしている女など居ないと、案外世間知らずな女神だと思った

 

俺には関係ないとは思うが、その相手と言うのは誰なのかは気になる。こんな女神に恋をされるなど、想像するといろいろ苦労するなと思ったからだ

 

世間知らずで色々矛盾の多い事を口にする、そしてなにより自分のやったことに対して間違いだと気づかない愚か者

 

こんな無粋な女に恋をされるなんて災難だなと、俺はこいつの事をどうにも好きにはなれなかった。会話をする限りでは悪い奴ではないが、こいつの考え方が好きじゃない

 

 

「オリオン。寝る前にいいだろうか?」

 

「なんだ?」

 

「私はその・・・・・ん?オリオン?そのペンダントはなんだ?」

 

「ん?ああ、これか・・・・」

 

 

アルテミスは何か俺に何か言おうとしたのだが、その前に今でも大事に首に掛けているミョルニルとレーヴァテイン以外の神創武器ではないペンダントを首に掛けていた。

 

それは二ヶ月前にアポロンの戦争前にシルから貰った『女神のエンブレム』が描かれた緑色の宝石でできたペンダント

 

そのペンダントを眼に入ったのか。アルテミスはそれを聞いてきた

 

 

「これは以前オラリオに住む俺より一歳年下の女の子がプレゼントしてくれた首飾りだ」

 

「そ、そうか・・・・オ、オラリオに住む女の子のプレゼントか、その女の子とはどんな関係なんだ?」

 

「・・・・・・・大事な友人」

 

「そうなのか!友人か!オリオンは友人が多いのだな?」

 

 

女の子プレゼントと言う言葉に、アルテミスが焦り出した。そしてそのシルとどんな関係だとアルテミスは聞いた。そして俺は・・・・・・大事だと思っているが、やはり俺も恋をしている自覚が無いのか、大事だと思っても友人としか思えなかった

 

大事なだが

 

そしてその友人だと答えると、アルテミスが喜んだ。一体どう言う理由かは知らないが、なぜこんな反応するのか、アルテミスはどんな性格をしているのか理解できない

 

 

でも、俺は余計だと思うが、一応こんな事を言った

 

 

 

「でもその子は。俺の事が好きらしい。俺に恋しているようで、自分に恋してくれとプロポーズを貰った」

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・ふふ」

 

「ん?」

 

「ふふふふふ、ふふふふふふふふふふふふふ」

 

「おい?どうしたアルテミス?」

 

 

シルが俺に恋をしている余計な事を言うと、アルテミスは一瞬黙り。そしてなぜか笑い出した。布団からいきなり起きて、高笑いをするかのように『ふふふ』となぜか笑顔だが、明らかに怒っている顔をしていると俺でもわかる。そのため俺も様子がおかしいと体を起こす

 

彼女は次に立ち上がって、俺の後ろに回った

 

 

そして

 

グギギギギギギギギと首を締めてくる

 

 

「おい?何をする?」

 

「ふふふふふ!オリオン!それはどう言うことだ?私を差し置いて別の女性と恋をしていたのか!答えなさいオリオン!!」

 

「おい何を怒っているか知らないが、大きな声を出すな。他の奴らが起きるぞ?」

 

 

首を締める行動に関してはレベル6にもなれば女神に首を締められても、ステイタスを極めた以上はアルカナムを使えない女神の腕力など全然力が無いため、苦しいと感じずそこは何も抵抗も否定しなかった

 

でも大きな声を出して、ベルたちが起きてしまうとそこだけは注意したのだが・・・・・聞いてくれなかった。その後何度も何度も大きな声で訳のわからない事を言ってくる。俺には全然理解できなった

 

そして

 

 

「なんだい?何を騒いで・・・・・・ってアルテミス!?」

 

「アルテミス!?なんでジーク君の首を締めているのさ!?ジーク君が死ぬからやめろ!!ていうかなんでジーク君も冷静に抵抗せずに首を締められているんだい!?」

 

「全然苦しくないから・・・」

 

 

アルテミスの大きな声によりヘスティアとヘルメスが起きてしまった。そして俺とアルテミスが居るテントに入ると、なぜかアルテミスが俺の首を締めていると言う暗殺現場を目撃してしまった

 

急いで二人は俺の首に締めている腕を取ってアルテミスを抑える

 

 

「落ち着くんだアルテミス!!」

 

「君は俺たちの英雄を殺す気か!?」

 

「離してくれヘスティア!ヘルメス!これは私にとって大事なことなんだ!!オリオンどういうことなのか話すんだあああああああああああああああ!!!」

 

 

「喋り方はヘスティアにそっくりだな。お前・・・」

 

「ふわあ・・・・なんの騒ぎですか?ジークさん?」

 

「なんかアルテミス様が騒いでますよ?」

 

「なんかの・・・トラブルか?」

 

「モンスター・・・・・ではないようですね?何かあったんですかジーク殿?」

 

 

流石のアルテミスの大騒ぎに、ベル達も起きてしまった。モンスターの襲撃ではないことは分かっているようだが、何がこうなったのか状況が掴めていなかった

 

でも俺は

 

 

「いや・・・・・・俺でも・・・・・・・わからない」

 

「「「「本当に何があったんですか(だよ)!?」」」」

 

 

説明はどうしてもできなかった。俺でもなぜこうなったのか理解できない。状況説明するなら勝手にアルテミスが怒って。アルテミスが勝手に俺の首を絞め殺そうと暴れた。としか説明できなかった

 

まあ多分俺の言葉が原因だと思うが。俺が何か彼女を怒らせるような言葉を言ったからこうなったのだが、それでも俺は怒らせるような言葉を言った覚えなど微塵も自覚も無い。

 

俺でさえなぜアルテミスが怒ったのかわからない。本当にどうしてなんだろうな

 

 

「オリオン!オリオン!私の質問に答えなさい!!!」

 

「うるさい・・・・もう寝ろ」

 

「ぐへ!?」

 

「ちょ!?ジーク君ミョルニルで殴るとは言え。女神を殴るのは・・・」

 

「知った事か。夜中だと言うのに全員を緊急事態でも無いのに無駄に起こしたバカ女神など。殴って気絶させて収めるのが一番だ」

 

「ジーク君・・・・・本当に神でも容赦ない」

 

 

そうして俺はミョルニルを使って。アルテミスの頭を殴って気絶させて寝かせた。アルテミスの神威など俺には効かない。むしろうざったらしいと俺がアルテミスを収める。訳のわからないことで騒ぎを起こす女神など。殴って収めるしか収まりないと女神でも容赦せずに殴って眠らせた

 

どうしてこうなったかは知らないが、それでもこんな状況になった原因を説明できるわけもなく、彼女が訳わからず怒ったと言って。言い訳をした

 

無論それだけでは理解できないがアルテミスのことだろうと。それ以上何も言わずに皆さっさと寝た

 

 

 

 

 

次の日。アルテミスが起きたがそれでも俺を睨んでいる。まだ昨日のことを恨んでいるようで、気になってヘスティアとリリルカと命が聞いた。その昨日騒いだ原因を聞いた後、なんで怒ったのか詳細をヘスティア達に俺は聞いたが

 

『乙女にしか分からない話』だと

 

どうやら男である俺やベル達ではわからないことでアルテミスは怒ったようだ。ちなみにその後ヘスティアが何とかアルテミスを納得させるような事を言ったらしく、恨まれなくなったが・・・・・・・・・なぜかその後からアルテミスは俺の顔を見れば顔を膨れて少し怒った顔をして、俺とあまり喋らなくなった

 

と言うか、捻くれるようになった

 

 

本当に俺は何を言って彼女を怒らせたのか、言い始めの俺でも謎だった

 

 

 

 

 

 

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