ニーベルンゲン・シックザール〜竜殺しの英雄譚〜   作:ソール

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残酷な真実

 

 

 

 

翌日。十日間目

 

 

最後の日。アンタレスを撃つ日である。月下で俺たちは食事を済ませて、武器や鎧を装備して遺跡の中へと挑む。今日で彼女の依頼は最後となる。目的を果たし。アンタレスを倒して下界を救う。

 

その前に会議テントの前で全員を集め、最後の打ち合わせを始める。俺がここの指令として指示を俺から下す

 

 

「全員集まったな?」

 

 

「「「「「「はい!!!」」」」」」

 

 

「よし、B部隊は遺跡周辺の揺動をして貰う。ヘルメス・ファミリア全勢力でアンタレスの子供を一匹残らず殺せ。お前らの底力をここで発揮しろ」

 

「「「「「「「はい!!」」」」」

 

「指揮はファルガー。お前が取れ。遺跡の中にアンタレスの子供を入れさせるな。わかったな?」

 

「わかった!」

 

「そして俺たちA部隊はファルガー達が揺動している間に遺跡に侵入し。アンタレスを殺す。ファルガー達だっていつまでも保つわけじゃない。最速で倒すように完膚なきまで叩き潰す。いいな?」

 

「「「「「はい!!(おう!!)」」」」」

 

「アルテミス。お前の神威で門を開けられるな?」

 

「ああ。任せてくれ」

 

「俺たちA部隊はアルテミスも連れて遺跡に入る。女神を守りながら俺たちは進む。周りを見て行動するようにしろ。当然アンタレスの子供の卵もあるから、ダンジョンに入ると思って気を引き締めろ」

 

「ジーク。本当にアルテミス様も連れて行くのですか?」

 

「ああ。彼女は必要だアスフィ。心配するなアルテミスは俺が守る。お前らは別に何もしなくていい」

 

「オリオン・・・」

 

「グリフォン。遺跡の中に入ったらアンタレスが居るルームに案内しろ」

 

『わかりました』

 

 

これからの指示を今この場に伝え。俺の部隊はアルテミスを連れて中に入る。そうでなければ門は開けれらない。アンタレスの所に行くには彼女が必要不可欠だった。俺がアルテミスを守ればいいこと。なんの問題もなかった

 

そしてグリフォンは大昔あの遺跡で戦った経験者。中に入ったら案内して貰う

 

 

「なら僕も行くよ」

 

「ん?ヘスティア・・・」

 

「っ!ヘスティア!だが・・・・」

 

「行かせてくれ。僕も親友として見届けたいんだ。もしかしなくても・・・・・・・最後かもしれないから」

 

「ヘスティア・・・・」

 

「わかった。ヘスティアも連れて行く」

 

「オリオン!?だが・・・・」

 

「俺たちが守ればいいことだ。なんの問題もない。だろベル達?」

 

「はい!」

 

「ヘスティア様だってアルテミス様のことが心配なんですよ?」

 

「仕方ねえんじゃねえか?」

 

「ええ。親友なら当然です」

 

「アルテミス様も居ますしね。あと一人や二人増えたところで同じですよ」

 

 

ヘスティアも親友としてアルテミスの最後を見届けるつもりだった。今日で俺が彼女を矢で射抜くのだと。彼女も覚悟しているから、最後くらいは見届けようと。危険があっても一緒に行く

 

もちろん俺たちの主神。俺たちが守ればいいと反対はしなかった

 

 

「それじゃあ俺も行くよ?」

 

「ヘルメス様!?あなたまでそんな!」

 

「まあいいじゃないか?だろジーク君?」

 

「そうだな・・・・・・・・アスフィ。もしものことがあったらヘルメスを盾にしろ。昨日を覗きをした罰と言うことで」

 

「え!?なんか俺だけ扱いがおかしくないジーク君!?」

 

 

「では聞こう。ヘルメス・ファミリア諸君。ヘルメスを盾にした方がいいと思う奴は居るか?」

 

 

「「「「「「はーい!!!」」」」」

 

 

「嘘!?俺そんなに嫌われているの!?昨日のことは謝るから許してくれ!!」

 

 

「「「「「「あはははははは!」」」」」」

 

 

これから戦いに行くと言うのに、呑気にふざけた言葉を出した。気を緩めるような言い方をしたが、この方が俺たちらしくていいと思う。緊張感がある余計やりづらいと思うからな

 

この方が俺たちの戦いにおいてのモチベーションだ。楽しく相手を恐れることなく倒しに行く。これが俺たちの戦い方だ。弱小ファミリアとしての意地だ

 

 

そう楽しく話していると。今度はアルテミスが声を上げて言う

 

 

「ありがとうオリオン。そしてそのファミリアやヘルメスの眷属達も。私のためにここまでしてくれたことを感謝する!」

 

 

「感謝なんて要らないぞ?ヘルメス・ファミリアはお金目的で協力しているんだ。お前こいつらにこの依頼の報酬が出せるのか?こいつらは本当にお金にうるさいぞ?うちのファミリアもな?一人だけお金にうるさいサポーターが居るんでな・・・」

 

 

「ええ。私たちはお金にはうるさいですからね」

 

「ヘルメス様のせいで借金が多いんです。できれば報酬多くお願いします」

 

 

「リリ達もお金にはうるさいですからね?」

 

「おいリリスケ!?相手は女神様だぞ。そんなに・・・」

 

「正当な取引ですよ。ヴェルフ様・・・」

 

 

「なあ?面倒だろ?」

 

「ふふ。いや。本当に楽しい人たちだ」

 

 

ヘルメス・ファミリアは主神のせいで借金を多く抱えており。できるなら報酬を多くいただきたいと交渉してきた。ヘルメスのせいでファミリア内は苦労しているようだ。

 

リリルカも元はソーマ・ファミリアで金を盗んだりもしていた。お金に関しての大切さは彼女が一番わかっている。そして今ではヘスティア・ファミリアで会計を任せている。ファミリアの家計のためにも正当な報酬はしっかりと貰おうとしていた

 

女神相手でも。お金はしっかり貰って、ちゃんとした対価が必要となるそれが俺たち冒険者である

 

女神でも遠慮なんてしなかった

 

 

でもアルテミスも本当は用意してないのだろう。下界の危機にそんな猶予も無いまま依頼を頼んだのだから。仕方のないことだと。真実を知っている俺は言わなかった

 

 

「よし。全員の戦意が出ている所で覚悟はいいな?アンタレスを叩き潰してアルテミスを救う!!いいな!!!」

 

 

「「「「「「「はい(おう!)!!!」」」」」」

 

 

そうして決意も戦意も確かに出たところで最後の言葉を出してこれで打ち合わせは完了した。やるべきことはもう全て済んだ。あとは奴を叩き潰し

 

この世界とアルテミスを救うのみだ

 

もう俺にも迷いは無い。彼女を救う方法は『もう一つ』用意している。やった試しが無いから成功するかはわからないが。今俺が彼女にしてあげることの全力を尽くすのみ。それが俺が彼女にしてあげること

 

唯一心が薄くなった俺が彼女に捧げられるものだった

 

 

「っ!早速敵が来たぞ!後ろを向け!!」

 

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

 

『『『『ギイ!!!』』』』』

 

 

「な!?もうかよ!?」

 

「アンタレスの子供が襲撃してきた!?」

 

「構うな!!もう作戦は始まっているんだ!」

 

「そうだね!予定が少し早くなっただけだしね!」

 

「よし行くぞ!!!」

 

「「「「「うおおおおおおおお!!!」」」」」

 

 

「頼むぞ!ファルガー!ルルネ!」

 

 

「おう!任せろ!」

 

「ジークも早く!」

 

 

「ああ!よし行くぞ。これから遺跡に侵入する!グリフォン!」

 

『はい!皆さんこちらへ!』

 

 

早くもアンタレスの子供が臨時テントに襲撃をかけてきた。しかも多数で、どうやら遺跡に侵入するの阻止するためにアンタレスが送り込んだようだ。だがこちらは部隊を二つ用意して揺動を頼んでいる

 

遺跡の侵入阻止した所で無駄な話、そう簡単に俺たちがやられないとこれからアンタレスに教えてやる

 

 

 

 

 

 

 

 

そして遺跡の中に入り。壁には壁画が描かれていた。その壁画にはサソリと鳥、弓を持った女が描かれていた。おそらくグリフォン達がサソリを封印し。その封印した後弓を持つヒューマン・・・・・・・アルテミスの眷属で間違いないだろう

 

時代に連れてここを守る守護者達がここを守っていたと。壁画に描かれていた

 

 

「グリフォン。これはお前らが描いたのか?」

 

『いいえ。私たちではありません。おそらくここを住んでいた者達でしょう。今は・・・・・居ないようですが』

 

「てことは・・・・お前の大昔の眷属だな?」

 

「ああ。ここを住処にした私の大昔の眷属。大精霊にここを封印を守るように言われていたらしい」

 

『私と同じ精霊ヒッポグリフですね』

 

「そして私は天界に降りて。彼女達と出会い。彼女達を眷属として彼女達の言う通りにしてきた。だが・・・・・・アンタレスは力を長年蓄えて封印は解けた」

 

『アルテミス様それはありえません!我々はそれすらできないようにも封印しました。ですから今回なぜ封印が解けたのか、自分でも知りたいがためにまだ召喚されたままここに居るのです』

 

 

「もう封印がどう解いたのかなど詮索するな。封印などいつかは解けるものだ。今更アンタレスの封印が解けたことに後悔しても意味が無い。それについては後にして奴を倒すことだけを考えろ。まずはそれからだ」

 

『はい・・・・』

 

 

グリフォンとしてもプライドがある。奴が力を蓄えないようにも身動き取れないように封印していた。それだけ精霊の封印術は完璧なのだろう。だがそれが解けた。俺だって精霊召喚士として精霊の術式はわかる。確かにそれは強力な力だ

 

俺の使うルーン魔術よりも強力だ。それで邪竜だって封印できる。俺でも精霊の術式はわかっていた

 

だからそれが解けたと言うのなら

 

 

『誰かが』解いたとしか言いようが無いからだ

 

 

『主。着きました!』

 

「アスフィ。これがお前が言っていた門か?」

 

「はい。これがどうにも開きません。壊そうとしたのですが・・・・どうにも壊せないのです」

 

『この門も私たちで作りました。壊すことも不可能です。鍵はここに住むヒューマン達に渡しました。ですが・・・・・門を見る限り時代に連れて鍵が変わっています。私でも開けられません』

 

「大丈夫だグリフォン。私の神威で開けるように変えたんだ」

 

「だろうな。でなければこの門からお前の力を感じるはずがないからな」

 

「今までの私たちの苦労はなんだったんでしょう・・・・」

 

 

「そう言うなアスフィ。知らなかったんだ。ダンジョンでなら知らないまま冒険するこれが当たり前だ」

 

 

アスフィは今まで門を潜ろうと壊すなり無理に開けるようにしようとしたようだが。精霊が作った門でもあるためそう簡単にはいかなかった。今までの行為が無駄だったと落胆した。知らずに未知の場所へ行くと言うのはこういうこと。仕方のない話だった

 

にしても門の鍵まで変えるとは、大昔のアルテミスの眷属はどうやら俺と同じ錬金術並みの技術を持っていたようだ。誰にも開けないようにしていたんだと理解する

 

すると

 

 

「っ!」

 

 

「どうかしましたか?ジーク?」

 

「アスフィ。あの『二本の傷』はお前らが?」

 

「ん?ああ・・・この二本の傷ですか。私たちが来る前から付いていました。これがどうかしましたか?」

 

「まさか・・・・・そうなのか・・・・」

 

「ジーク君?何か気づいたの?」

 

「いや・・・・・・なんでもないヘスティア。とにかくアルテミス。ここを開けてくれ」

 

「ああ。今やる」

 

 

とりあえず門を開けて貰うようにアルテミスに神威を流し込むように頼むのだが。その前に門に気になる傷があった

 

それは『二本の傷痕』。その傷痕に俺は見覚えがあった。

 

それはかつて俺がフレイ・ファミリア所属の時に戦争した『あるファミリア』の眷属が持つ武器で付けられる傷痕。特徴と深さも見て俺は明らかにそれと同じ傷痕だと。今でも思い出せるくらいの忘れらない傷。それが門に付いていた。アスフィ達が壊そうとした傷ではないと本人が言っている。となれば・・・・・・

 

 

俺の推測通り。やはり誰かがここの封印を解いたんだと理解した。それも・・・

 

 

『あいつら』だったとは。

 

 

今でも忘れない。あの『狂った連中』を。まさかあいつらがここを解いたのだと。俺は信じられなかった。なんのために。何を目的にここを解いたのか。やはり俺は奴らとまた戦わなければならないと考慮した

 

 

でも今は目の前にいるアンタレスを片付けてからと。アルテミスが門に手を触れて神威を流し込む

 

 

そしてその通りに門が開いた。

 

 

 

だが

 

 

「な!?」

 

『まさか!?ここまで!?』

 

「なんだいこれ・・・」

 

「なんですかこれ・・・」

 

 

「やはり。壁や天井に寄生して卵を作って繁殖していたのか。通りで外は子供が多かったわけだ」

 

 

門を開けると。そこは壁や天井に多くの卵が寄生されていた。どうやらアンタレス はもう既に遺跡の中を支配していたようだ。石壁や地面も見えない肉壁になって埋め尽くされていた。中でアンタレスの子供は無数に居ると、外で感知していたが、まさかここまでの規模になっていたなど。全員予想していなかっただろう

 

もう卵は子供を産む寸前だった。そして中に入ると

 

 

「っ!退路が!?」

 

「必要ない。もう俺たちは今日でアンタレスを倒すんだ。退路を確保して逃げる必要はない。帰る時はその時考えればいい。このまま突破するぞ!全員走れ!」

 

『く!大昔よりも繁殖の数ができるようになっている!?なぜ!?』

 

 

門を潜って中に入ると。アンタレスがもう俺たちを逃さないと。地面から肉壁が盛りだし門を埋め尽くした。だが逃げる気はない。ここまで来たら最初から退く気は無い。今日で必ず倒すんだ。このまま突破して進むのみだった

 

だがアンタレスの子供が天井から壁にどんどん産まれて攻撃してくる

 

 

『ギイ!?』

 

「うわあ!!」

 

「神様!」

 

 

「はあ!!」

 

 

「ジーク君!ありがとう!」

 

「ヘスティア。グリフォンの背中に乗れ。グリフォン!」

 

『ヘスティア様!私の背中へ!』

 

「うん!」

 

 

ヘスティアに襲ってきたがそれを斬って。ヘスティアは反撃する武器はないため。走るのもあまり得意じゃないようで。グリフォンの背中に乗せて避難させる。

 

 

「ジーク殿!前!」

 

「まだすげえ来るぞ!」

 

「それなら僕が!」

 

「待てベル!アスフィ!」

 

 

「下がってください!ふ!」

 

 

『『『『ギイ!?』』』』』

 

 

前方が多数のアンタレスの子供で阻まれた。だがアスフィはすぐに応戦する。マジクアイテムである『バースト・オイル』でアンタレスの子供を爆破させて燃やす

 

だが

 

 

『『『『ギイ』』』』

 

「な!?バーストオイルが効かない!?」

 

 

「どうやら進化したようだな。自己進化だ。自己増殖までしている」

 

「それも異常なスピードで。これは厄介だな」

 

 

「マジックアイテムが効かないなら魔法で消すまでだ。リュー!やれ!!」

 

「はい!来たれ・・さすらう風・・・・・流浪の旅人・・空を渡り荒野を駆け・・・何者よりも疾く走れ・・・・星屑の光を宿し・・敵を撃て!『ルミノス・ウインド』!!!」

 

 

『『『『ギイ!?』』』』

 

 

風の丸い弾丸が壁に引っ付いている卵も含めて前方全体に放たれた。そうして今度はアンタレスの子供は撃たれて消えた。歯応えはあったようだ

 

 

「やったか!?」

 

「やったとしてもまだ卵はある!どんどん増殖してくるぞ!構うな!前に居る敵だけを殺してどんどん奥へ進むぞ!追いかける敵は徐々に倒せばいい!」

 

「これでは・・・・ダンジョン以上だな」

 

『なぜだ!?なぜアンタレスがここまで・・・・大昔はここまでじゃなかったはず・・・・なぜここまで力が・・・』

 

「さあ・・・・どうしてだろうな・・・・・・奥へ進め!グリフォン!奴が封印したルームはどこだ!」

 

『この下に続く道です!皆さん急いで下さい!!』

 

 

一々倒してもキリが無い。だから前だけの敵を倒してさっさとアンタレスの所に行って元凶を倒すしかなかった。一々倒しても魔力も体力も切れる。今は奥を進んで元凶を倒す以外方法はなかった。

 

 

 

だとしても奥へ行けば奥に行くほど。奴らの数がどんどん増す。キリが無いほどどんどん数が増える。その後ろに追ってくる敵を俺とベルで応戦する

 

 

「ファイア・ボルト!」

 

「ふ!!」

 

 

ベルの魔法と俺の体に流れる雷で何度も追っ手を払っていた。だが俺は何度もやって耐えることはできても。ベルはレベルも低いため魔力切れがすぐに来ていた

 

 

「ベルもうよせ!マインドダウンするぞ!」

 

「くう・・・・・・」

 

「ベル様。ジーク様が予め渡された『ハイエリクサー』です」

 

「ありがとう。リリ」

 

 

「まずいな。このままでは追い込まれてしまう。グリフォン。アンタレスが居るルームはまだか?」

 

『もう少しです!この下を進めば・・・・』

 

 

『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

 

 

「「「っ!?」」」

 

「近い・・・」

 

「ああ。近くに居るな・・・・」

 

『間違いありません。アンタレスの鳴き声です。まさか・・・・本当に復活したとは・・・』

 

「ぐ!?」

 

「アルテミス!グリフォン!アルテミスも背中へ!」

 

「ほら。アルテミス」

 

「大丈夫だ。私は・・・」

 

 

「こんな時でも強がるな!早く乗れ!」

 

 

『さあ?アルテミス様』

 

「うう・・・・すまない」

 

 

アンタレスの鳴き声が大きく聞こえた。ベル達でもハッキリと。俺の感知でもわかる。大きな気配。間違い無くこの先にアンタレスが居ることがわかる。だがアンタレスの近くに行く度にアルテミスが胸を苦しむ

 

少しは休ませようと。グリフォンの背中に乗せるが。彼女はこんな時でも強がり。乗ることを拒むが。俺が怒鳴って乗らせる

 

前ならこんな風に怒ったりはしないが、なぜだか彼女のことを見ていると心配してしまい。無理をさせずにはいられなかった

 

俺らしくないことだった

 

 

『主。この入り口の先に居ます』

 

 

「よし。なら・・・・・魔力最大!!ムスペルヘイム!!!」

 

「ジークさん何を!?」

 

「追手を先に排除しただけだ。全員入り口に入れ。入り口も氷魔術で入口を塞ぐ。そうすればアンタレスの子供もしばらくは来ないだろう」

 

 

俺はアンタレスが居ると思われるルームの入り口に着くと、この先にしっかりとアンタレスが居るかの気配を感じ取って確認してから後ろに向けて炎の波ムスペルヘイムを全開で解き放った。これ以上追手の相手をしないために退路を完全に燃やしてまうが排除する。

 

そして全員入り口に入るのを確認して。ニブルヘイムで入り口を凍らせて出口を氷の壁で塞いだ。しばらくはここに入って来れないはず

 

まあ帰りは酷くなるが。仕方のない話だった

 

 

「っ!居るな・・・・この先に」

 

「居ますか?」

 

「ああ。全員気を引き締めろ。いよいよ本番だぞ?」

 

 

「「「「「はい!!(おう!)」」」」」

 

 

ついに目的であるアンタレスと鉢合わせする時が来た。ここにはそれほどレベルの高いのは俺しか居ない。その他はレベル4以下の冒険者。いくら俺が居ても苦戦することは間違いなしの敵

 

ベヒーモスを相手にするのと変わりない。古代のモンスターなんて俺だって戦ったことがない。

 

未知の相手に挑むのはこれが初めて、戦うのに十分の警戒をし、気を引き締めて挑むのだった

 

 

それに・・・・・ただのモンスターじゃないからな。これから出会す敵は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして入り口を通過して出る。そしてルームに出ると。広い広場のようなルームに出た。そこは入り口は多くあるルーム。

 

でもその中心で

 

 

「あれが・・・・・・アンタレスか」

 

『ええ。まさか・・・・・本当に復活したとは!?』

 

 

「あれが・・・」

 

「大きいです!ゴライアス並じゃないですか!?」

 

「見たことねえぞ!?あんなの!?」

 

「あれがサソリのモンスター・・・アンタレスですか・・・強敵だと感じます」

 

「これが・・・グリフォン様達が封印したモンスター」

 

「これを相手に戦うことになりますか・・・・」

 

 

黒い甲羅をし、赤い筋が入り、サソリの下半身とその背中にカマキリの上半身が繋がっているかのようなモンスター。アンタレスが立っていた

 

サイズはおそらくワイバーンかゴライアスとほぼ同時。奴の体から触手ようなものが背中から生えていて天井に繋がっている。あの触手から自然の生命を奪い。力をより蓄えているようだ。

 

見た目からして竜のような形をしている。頭もあり目玉も生えている。まるで悪魔のサソリのようだ。

 

 

「ぐ!?」

 

「アルテミス!」

 

「頼むオリオン!あれを・・・・・・・『私』を撃ってくれ!!」

 

「アルテミス。お前の体はどこだ?」

 

 

「え?ジークさん?アルテミス様?何を言っているんです?」

 

「そろそろ真実を伝えよう。ここに来たわけだ。もう隠し事は無しだ」

 

 

『ギイイイイ!!』

 

 

もうここに来た以上。隠すことはもう不可能。真実を伝え。俺たちがこの依頼の本来の目的を話すために、俺はまずアンタレスの『ある部分』を見るように指示を出す

 

それを見ればアルテミスが『自分を撃て』と言う意味がわかる

 

 

 

「奴の腹を見ろ。それを見ればわかる」

 

 

「わかるって何を・・・・・・・え?」

 

「う・・・嘘」

 

「なんだあれ・・・・」

 

「そ、そんな・・・・」

 

「どうして・・・・・」

 

「これは・・・・・・」

 

 

「く!・・・・」

 

「ああ・・・もうこんなに侵食されていたのか・・・・」

 

 

 

「どうして・・・なんでですか?ジークさん?アルテミス様?」

 

 

それは最悪な真実だった。誰もが否定したい真実。悪夢と言ってもいい絶望の光景。こんなことを今までヘルメスとアルテミスは隠していたのだ。これは大事の言葉では片付けられない。そんな事態だった

 

その最悪の真実は

 

 

今アンタレスの腹に。埋め込まれたクリスタルのような結晶の中に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここに居るはずの『アルテミス』が結晶の中に埋め込まれていた

 

 

 

 

「やはりか・・・・だから奴はアルテミスのアルカナムを使い。空から『月の矢』を展開していたわけだ」

 

 

 

「どういうことですジークさん!?なぜアルテミス様が!?

 

「簡単な話だ。アルテミスはアンタレスに喰われた。そして喰われたアルテミスの力をアンタレスが使っているんだ。珍しくもない話だ。神を食べたモンスターはその神の力を得られることなど。そういうことができるんだ。神を食えばな。それがこの結果だ」

 

「じゃあ今ここに居るアルテミス様はなんですか!?なぜ二人も!?」

 

「アルテミスの眷属が分身魔法で魂だけ分離させたんだ。そして分離させた分身体でヘルメスに頼み依頼を頼んだのだろう。自分ごと殺せる者をこの矢が撃てる者を。ずっと探していた。そうでなければ神の力を得たアンタレスには勝てない。ということだろう?ヘルメス?」

 

「ああ。その通りだ。全部正解だよジーク君。君はすごいな・・・・本当になんでもわかるんだから・・・・・」

 

「ちょっと待ってくださいジークさん・・・・じゃあこれから僕たちがやろうとすることは・・・・」

 

 

 

 

「そうだベル。俺たちがやることは常に一つ・・・・・・・アルテミスをこの矢で殺すことだ」

 

 

 

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

「本気なんですか?ジークさん?」

 

 

「神の力を得たアンタレスを殺すにはそれしか無い。普通の攻撃でも神の力を得た奴は再生し、殺すことができない。この神創武器である矢。『オリオン』なら・・・・奴を殺せる。これは神をも殺す武器だからな」

 

「アルテミスは今分身体で残り僅かな力をこの矢に含ませてある。これならアンタレスを倒すことができる。そのためには・・・・・ジーク君がこの矢を使ってアンタレスを撃つしかない」

 

 

「というわけだ。これでこの依頼は達成する。始めるぞ」

 

 

そうして真実を告げた。そしてやるべきことは一つのみ。アルテミスを殺してこの世界を救う。依頼として真っ当な事をすべきだと。俺は躊躇いもしなかった

 

例え友人になれた女でも、彼女が望むままに俺は彼女の願いのために。アルテミスを撃つ

 

残酷だが・・・・・・これが現実だ

 

 

でも・・・・・・ベルはそれでも認めない

 

 

「待ってくださいジークさん!」

 

「なんだ?」

 

「アルテミス様を殺すんですか!?仲間にもなれたこの人を!?友人にもなれたこの人を殺すと言うのですか!?僕はそんなことを・・・」

 

 

「お前はアルテミスと下界どっちが大事だ!!」

 

 

「っ!?」

 

「お前の気持ちはわかる。だがこれしか無いなんだ!ヘスティアも気付いていた。ヘスティアもあの矢を捨てようとした。でも俺たちは無力だ!例え無限の力を得ても!英雄になっても全部は救えない!!お前はいい加減現実を見ろ!お前はそうやってなんでもかんでも夢ばかりを見て現実を見ないつもりか!!!」

 

「うう!・・僕は・・僕は・・・・」

 

「心配するな。お前は何もしなくていい。彼女の血で汚れるのはお前らじゃない。俺だけだ。俺が女神を殺す。神殺しの大罪など『もう受けている』。痛みも悲しみも知っている俺ならできることだ。お前らはただ・・・・見届けろ」

 

「ジーク!本気なんですか!?あなたは神殺しの大罪を受けるつもりですか!?」

 

「下界を救うためなら・・・・アルテミスの命をも葬る。犠牲無くして勝利は得られない。仕方のない話だ。これが現実だ。神を殺してでも救済は必要だアスフィ」

 

「ジークさん!でも!」

 

「もう時間が無い!!空にある月の矢は展開された!今日の夜には放たれてしまう!そうなれば下界は消える!俺たちが死ぬんだぞリュー!それでもいいのか!」

 

「だけどこんなことは・・・」

 

「正しさなんて無い!人はいつか手に血を流してでも生きなければならない道だってある!そこに善も悪も無い!!生きるか死ぬかだ!生きるためには必要なことだ命!!」

 

「でも・・・アルテミス様は!」

 

「アルテミスはこれを承知で俺に渡したんだ!なら俺ができることをするまでだ!彼女の願いを邪魔するなリリルカ!!」

 

「本気かよ!?お前撃てるのかよ!?あんだけ仲良くしていたアルテミス様を!!お前は撃つのか!?」

 

「撃つとも!!それが彼女の願いなら!!俺はオリオンじゃない!!ジーク・フリードだ!俺は成すべきことを果たす!誰に恨まれても構わん!!今オラリオにも大切な人が居るんだぞ!アルテミス一人のためだけに多くは犠牲できない!これが俺の選択だヴェルフ!!!」

 

「ジークさん・・・・・あなたはそこまで心が無くなったんですか!!」

 

 

「アルテミスのことは確かに何も想ってない!!でも彼女は撃てと言っている。俺は英雄じゃない!大切なことのために自分の全てを犠牲したただの嘘つき冒険者だ!!俺は全能な力を持ってない!俺も無力な存在だ!でも俺がアルテミスを想ってなくても!彼女の願いだけは必ず成し遂げる!!彼女のことをわかりもしないお前らが偉そうなことを言うな!!!」

 

 

「「「「「「っ!?」」」」」」

 

 

俺らしくない言葉が出た。彼女を思うと心が蘇る。

 

みんなに止められる。俺だってこんなのは救いでも助けでもないことくらい理解できる。でも。それでもこれしか方法がない。人は無力な存在だ。全部は救えない。殺して解放させるしか無い時だってある。命は脆く。誰も否定することのできない壁と。誰も超えることのできない壁。人はそれを現実と呼ぶ

 

それでもお前らは打ち当たり俺に反論する。お前らが羨ましいと思う。お前らのように勇者になって彼女を救いたい。

 

 

でも俺にはその心が無い

 

 

「俺には・・・・・もう何もできない。彼女がそう言う限りこれが・・・・・・俺の限界だ」

 

「オリオン・・・・」

 

「ジーク君・・・・・」

 

 

なんでこうも上手くいかないのだろうな。俺にだって限界がある。彼女だって救われたい想いで彼女は殺してくれと言ってるんだ。彼女の意志を無駄にはできない。彼女だってこの下界を守るために自分を犠牲にしているんだ。自信を犠牲にしてでも誰かを守ろうとする意志は俺も同情している

 

俺もそれしか勝利を得られないから。現実を味わった者にしかわからないこと。自分の無力差も知ることは必要なのだ

 

 

『ギイイ!!』

 

「っ!まさか!」

 

 

こんな時に邪魔話をしているせいで、アンタレスはアルテミスの力を使って、アルカナムの光を天に放出した。放出した光の先

 

空に浮かぶ三日月の形をしたアルテミスの『月の矢』

 

そのアルテミスの『月の矢』から矢の雨をこの遺跡内と周辺に落としてきた

 

 

「く!まずい!スヴェルヘイム!!!」

 

「あ!?ジークさん!?」

 

 

俺は流石に矢の雨の量に全部は防ぎれないと判断し。俺は全員分入れるほどの大きなサークルバリアを出して展開した。俺にアルカナムが効かないなら防御魔法展開すれば効かないはずだと防御魔術を発動した

 

予想どおり、なんとかサークルバリアで光の矢は弾けた。

 

だがサークルバリアではなく、地面に雨の矢は刺さってしまい。地面が崩壊した

 

 

「く!」

 

「「「「「うわああああああ!!!」」」」」

 

「うう!?うわあああ!?」

 

「は!?ヘスティア!!」

 

「アルテミス!ヘスティア!く!」

 

「ジークさん!?」

 

 

地面が崩壊したことで、下の階へと落ちる。地面が崩壊したことで結界は解除され。ヘスティアだけが別の階へと落ちそうになったところを、俺とアルテミスがすぐに空中で足に力を出してヘスティアの所まで飛ぶ

 

 

「アルテミス!ヘスティア!」

 

「ヘルメス!俺たちはこのままもっと下に行く!後から追ってこい!」

 

『主!!く!』

 

「よせグリフォン!この矢の雨の中、無闇に動くな!」

 

 

そしてヘルメスたちはちょうど下に地面があり先に着地した。だが俺とアルテミスとヘスティアはヘルメスたちから大分離れてしまい。ヘルメスたちよりも早く落下している。下にはすぐ着地できそうな地面も無く。このままヘルメスたちよりも、もっと下の階へと落下するしか無く。部隊が分断されてしまった

 

途中グリフォンが助けに来るが、空から降る矢の雨が多く降りすぎて。俺たちに近づくことができず助けることができなかった、その間に更に奥へと落下し、追うことができないほど暗い下へと俺たちを見失ってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘスティア?大丈夫か?」

 

「うん。大丈夫。ジーク君は!?」

 

「無事だ。ここに居る」

 

「ジーク君のグレイプニルのおかげで助かった」

 

 

あの高さからここまで落下するとただでは済まないと。グレイプニルを壁に貼ってネットのように絡ませて地面に激突する前に、体を鎖で支えた

 

俺たちはヘルメスたちよりもより深くまで落ちたようだ。上も薄暗くて上の階は全然見えない。ヘルメスたちが俺たちを見つけるのは大分長くなりそうだと思った。

 

 

「なんとか地面に着いた・・・・ってジーク君!?誰か倒れているよ!?」

 

「っ!これは・・・・・お前の眷属か?」

 

「ああ・・・・・私の眷属だ」

 

 

すると、ヘスティアが目の前に多く地面に倒れた者たちが居た。その倒れた者たちの横に月の矢が描かれたエンブレムの旗があった。間違いなくアルテミスの眷属なのがわかる。

 

ここでアンタレスに殺されたのがわかる。ここが彼女たちの墓だったのだろうと。見て理解した

 

 

「私は・・・・見ているしかなかった・・・・私が無茶をして一人で突っ込むから・・・」

 

「その時はアルテミスはあのモンスターに食われたんだね」

 

「ああ。そして私は・・・・眷属に言われた・・・あのモンスターを倒してくれるのがオリオンのはずだと。彼女のアビリティで予知し。彼女が分身魔法を掛けてもらい私はオラリオに一人で向かった。彼女の言う・・・・・私の希望オリオンに救って貰おうとしたのだ」

 

「ジーク君が・・・・・アルテミスの希望・・・」

 

「オリオンか・・・神の言葉で『射抜く者』・・・・俺には似合わない名前だな・・・・・・・ん?これは・・・」

 

「ジーク君?どうかした?」

 

 

俺はアルテミスの眷属である彼女たちにあることに気づいた。彼女たちの死体をずっと見ていたら気づいたこと。今度は近くに行ってまでもう一度確認した。それは彼女たちの装備。その装備にあることに気づき。俺はこの彼女らが地面に這いつくばって死んでいる光景を見て俺は気づいてしまった

 

 

彼女たちは・・・・・・・アルテミスのために『死ぬしか無かった』んだと。

 

 

眷属らしく最後を迎えたと。最後の最後まで俺に託そうとしていたのだと。同じ冒険者で同じ眷属で同じ主神想いだからなのか。俺は今ここに倒れている者たちの気持ちを理解してしまった

 

そして彼女たちなんのために・・・・・ここまでした事も理解したことで。俺は

 

 

「・・・・・できない」

 

「え?」

 

「ヘスティア。すまない」

 

「オリオン?」

 

 

「俺には・・・・・・」

 

 

やっぱりこの依頼は失敗だ。俺には何もできない。彼女たちがどうしてこんなことをしたのかも理解してしまった。もしこれを実行すれば彼女たちの死が無駄になってしまう。戦士の血がある俺から共感できるからなのか、自信を犠牲にする行為を同じくする者たちだからなのか。気持ちがわかるからなのか

 

心が薄れていても

 

 

「俺には・・・・・アルテミスを撃つことはできない」

 

 

できなかった。

 

やっぱりこんなのは・・・・・間違いだったと。今こんな時になって俺がやろうとしていることを見直した。彼女たちが『ここまで覚悟』していたことも。恐怖だってあっただろうに、足を震えて今でも逃げ出したいはずだと思ったのに、彼女たちの覚悟や気持ちを考慮して。

 

 

俺にはアルテミスを撃てなかった

 

 

死んだ者たちの気持ちなど。俺が感じない上に考えないはずなのに。何よりアルテミスのことなど、どうでもいいはずなのに、これが正しいとは思わず

 

 

できなかった

 

 

 

 

 

 

 

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