ニーベルンゲン・シックザール〜竜殺しの英雄譚〜   作:ソール

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まだまだ第一歩に過ぎない

 

 

10日後

 

やっとの長い空の旅からオラリオに帰ってこられた

 

途中約束していたデダインの村に寄り道をし。あれからベヒーモスを倒して村は平和か安全かどうかを確認していた。あれからは問題なく。もう一々確認してここまで来なくても良いと判断する。もちろんまた何かあったら困ると。村長にオラリオに伝書鳩を飛ばして助けがある時はしろと。指示に入れた

 

それを済ましてからオラリオに帰った。久しぶりに冒険者都市に帰れて、懐かしい感じもする所はあったのだが

 

 

そんな事を完全に忘れるオラリオの騒ぎがあった

 

それは

 

 

 

 

 

 

またも俺が世界を救ったと人々が街中で大騒ぎをしていた

 

 

 

 

 

またウラノスが俺がアンタレスと戦っている所を神の能力か何かで映像で流していたのかと思ったのだが。どうやらそうではなく。俺の体から放出した光がオラリオにも流れたようで。それが俺のだとなぜか感覚でわかるようで。オラリオの人々や冒険者達はまたも俺が世界を救ったと称えてきたのだ

 

俺だけでなく俺と共に戦ったベル達やヘルメス・ファミリアの団員も街の人々に称えられ、『雷帝と共に戦った冒険者達』と。ベル達を勇士としてそう呼ぶ

 

 

でも俺も知らなかった。まさか『フレイ・リーベ』の光がオラリオに流れるなど。そう考えるとするなら世界にも広まったと俺は理解する。にしても本当に謎のスキルだ。街の人々が言うにはその光を浴びてなぜか俺が遠くで戦っているのだと。感覚でわかるらしい。他者の心にも触れるレアスキルだと俺は推測する

 

俺は今後フレイ・リーベについては詳しく調べるようにする

 

 

にしても帰ったら帰ったで街の人々や冒険者に称えられて面倒だった。まあ遠くで何をしていたと聞かれるのは仕方ない。上空にアルテミスの矢が出てきたりと、ダンジョンでモンスター暴れるなど。オラリオもパニックなっていたと。後から突然現れたロキに事情を説明を聞かされた

 

上空に月の矢が出された事でダンジョンが怯えたのだと。想像が付いた

 

 

 

そしてその後が俺にとって一番の大変な事だった。それはシルとの再会だった

 

 

「ジーク!!ジーク!!!」

 

「う!シル。そんなに強く抱きついて来ないでくれ」

 

「ジークは本当に何を考えているの!自身を犠牲にしてまで戦うなんて!」

 

「わかってはいる。だが・・・・最善として仕方なかったんだ」

 

「ジークが死んだら・・・私・・・私は・・・うう!・・・ううううううう!!」

 

「な!?泣かないでくれ!わかったから!もう自身を犠牲にしたりはしないから!頼むから泣かないでくれ!!」

 

 

彼女は現場に居なかったのに、俺が一度は死んだと遠くに居るのにわかっていたらしく、号泣で俺に抱きついてきた。流石の俺もその反応に困り果てた。リューにも戦いの後散々叱られた

 

仕方ないとしか言いようがなく。彼女にもう自分を犠牲しないと約束する以外。彼女を慰める事はできなかった。そして俺の予測通り彼女は俺の死に気づいていた。

 

彼女の力を理解していたとは言え。そんな千里眼と変わらないような眼を持っているなど、彼女に恐ろしくも思っていた。そして俺の死に彼女が気づいたと言うことに俺も直感でわかる俺も恐ろしくなったと思う、どうして彼女の意志がここまでわかるのか、あのレアスキルは謎が多すぎると。少なくともシルは関係に入っているはずだと考慮した

 

もちろん今再会するまではアーニャ達も一度は死んだなど知るはずもなく。なぜシルが一人でに泣くのか。今まで気になってはいたと思うが。まさかそんなことだとは思いもよらず、彼女達もそのことについて問い詰められた

 

もちろん同じように自分の命も保健ある行動をすると。言うしか他になかった。

 

 

 

今度から本当に命は大事にしないと。今度こそシル達に叱られると。心が無いのに彼女達の怒りに触れることを恐れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから三日

 

 

アルテミスを救う事件からたった数日で平和になったこの時間を俺たちは過ごしていた。ダンジョンの暴走と言うのが俺たちがエルソスの遺跡で戦っている時にあり、その暴走も短く収まったらしい。原因がアルテミスのアルカナムである『月の矢』によってダンジョンが怯え暴走した。

 

神の力の前ではダンジョンも無力だと言うことだ。

 

でも気になる事が一つあった。実はモンスター達の暴走が収まったのはまだ月の矢が破壊される前らしい。詳細をロキに聞いたが、どうやら俺が流したフレイ・リーベの光にモンスター達が怒りを無くし。そのまま深層へと帰ったとアイズ達の証言があったらしい

 

 

フレイ・リーベというフレイが俺にくれた愛情のスキルが、ここまで威力を発揮するなど。本当に俺はとんでもない加護というレアスキルを得たと恐ろしくも思った

 

でもそのおかげで救える可能性が増したのも事実。この力をより発動できるように俺はよく調べるのだった

 

 

 

まあそんな事を考えがらも平和を過ごすと。

 

 

「やっとゆっくりな時間を手にしたな」

 

 

と、呟いた

 

冒険者になって忙しいのはファミリアによるのだが。俺たちヘスティア・ファミリアは一ヶ月ごとに大きな事件のようなことが多くあった

 

初めはダンジョン18階層で神を排除するためのゴライアスの亜種討伐。その次の数週間後にアポロンと戦争遊戯。その一ヶ月後にはモリガンのベヒーモス戦争。そしてアルテミスの救出事件

 

たった三ヶ月で、ここまでの事件が起きた。それを終えて今に至ると思うと。いろいろ苦労が絶えない毎日だったと

 

今の平和な時間が嘘のようにも感じた。

 

アルテミスの事件が個人的には大変だったと感じる。まあそれは一度死んだからなのだが、もう次にあんな事をすれば怒られるだけじゃあ済まないと。俺はもう自分を犠牲する方向は避けるようにしている。避けられるものならだが

 

 

だからそのためにアルテミスから俺に贈り物としてある物を授かった

 

 

それは『オリオンの矢』

 

 

結局これは貰ってしまった。俺ならいつまでも使えるはずだと。次会う時に死んでいたってことが無いようにこれを保険としてアルテミスから貰った。彼女も俺がいつ自分を犠牲にするのか、俺の性格を把握していたようだ

 

確かに良い武器だが、ミョルニルやレーヴァテインも含めてこれも神創武器である以上は威力が強すぎるため。ダンジョンでは緊急時以外はあまり使わないようにしようと考えていた

 

本当に良い武器は手に入った。が、アンタレスを倒したからと言ってランクアップは無かった。さすがにもう一ヶ月でオッタルのようにレベル7は簡単になれないようだ。まあここからが一番ランクアップし難い所だ。フィン達でもレベル6になって十年くらい経つが、そこから上に上がる事は全然できなかった。

 

俺もここからは大きな課題に挑む段階に入ったと言うわけだ

 

 

 

まあ、俺のランクアップは置いといて、今は・・・・・

 

 

 

このファミリアに募集した者達の意歴書を確認することに専念するんだった

 

 

「やっと俺たちのファミリアに新しい団員を加入させるんだな?ジーク?」

 

「俺たちも徐々にファミリアも大きくなったからな。そろそろ人員を増やさないと思ってな、そうすれば山積みになった仕事も分担して熟せる。こちらもロキ達と同じように頼もしい仲間が欲しいと言うわけだ」

 

「やっと僕たちにも仲間ができるんですね!しかもこんなに多くの募集してくれるなんて!」

 

「ドワーフやアマゾネスや獣人や家事系を希望するヒューマンも・・・・300人は居ますよ!」

 

「ジーク様が英雄になって人気になったからと言う理由もありますよ。あのベヒーモスの戦いを多くのファミリアが目撃しているんです。その英雄が所属するファミリアが募集しているとなれば誰だって入りたくなりますよ!」

 

 

「俺が居るから入るって言う理由でこの者達は加入を希望をしているのか?ヘスティア?」

 

 

「まあ、ほぼそうかな・・・・ジーク君のあの戦いは全世界で有名だからね、英雄の居るファミリアに入りたいのは人として憧れなんだよ。なによりあのフレイの義弟で神器を継承しているからでもあるんだから。その・・・・・この山見てごらん。今サポーター君が分けたんだけど・・・・」

 

 

「ん?これか?ふむ・・・・・・・・・・・・なるほど、エルフの女性の意歴書の山か。加入希望がこんなにもか」

 

 

俺もヘスティアと相談してそろそろヘスティア・ファミリアも新しい団員を必要だと。募集書をギルドを通じて街中にばら撒いて貰い。オラリオ中に通達させて。多く俺たちの今目の前にある机の上に多くの加入希望の履歴書の山が多く来ていた

 

俺たちのファミリアが好評になったこともあるが、一番は俺が英雄になった理由もあり、俺に憧れて是非とも加入したい希望者が多くいるようで、俺には人望があるようだ。しかもいろんな種族までも履歴書が入っている

 

その中で一番多い種族の履歴書は、エルフだった。それも女の

 

今ヘスティアが言ったように。どうやらまだ俺をフレイの義弟だからとハイエルフのように崇拝しているエルフが居るようだ。前にエイナに聞いたが。勝手に俺をエルフの王子だと言って多く崇拝している者がいると聞いた。まさかその者達がこのファミリアが団員を募集すると聞いた瞬間。履歴書を送って加入希望をするなど。加入が決まったらまたヘディンやヘグニのように様呼ばわりされるのではないのかと。面倒も多くあるのではないかと考慮した

 

だから俺はフレイの義弟であっても、ハイエルフではないと言うのに

 

 

「にしてもすげえ数だよな。見た事ない奴もいるし。こんなのオラリオに居たか?」

 

 

「それはオラリオの外から来た者だ」

 

 

「「「「え!?オラリオの外からの募集!?」」」」

 

 

「一応念のためにな。俺が英雄で世界に知られたならオラリオの外の者だって俺たちのファミリアを知っているはず、なら入ってくれる者達だっているかもしれない。だからギルドに頼んで世界にも募集を流した」

 

「マジかよ・・・そんなに評判なのか・・・俺たち」

 

「ジークさんの活躍で憧れる者達が多そうですね・・・・」

 

「エルフがな・・・」

 

 

オラリオの者だけでなく、外の者達も募集をした。多ければ多いほど越したことはない。人員が多ければそれだけファミリアも大きくなること。途中止める者もいるかもしれないが、それでも大きな人材に可能性があるかもしれないと言うわけで募集を世界にも流した

 

これは以前ヘルメスに聞いた事なんだが。俺の英雄譚が世界に広まったのは良いが、あまりの人気ですぐに書店で売り切れてしまうらしい。次の在庫を待つ者もいる。それほど世界で俺たちのファミリアは有名になったと言うわけだ

 

もちろんその外の加入希望者はわざわざここオラリオにやってくる。

 

 

「俺たちに入りたいがために・・・わざわざここまで来るとはな・・」

 

「僕たちすごい有名になったんだね・・・・・・・ん?あれ?これって・・・」

 

「どうしたベル?」

 

「ジークさん!この二人の履歴書なんですけど・・・・・・これって!」

 

 

「まさか・・・・・・ダフネとカサンドラか?」

 

 

「え!?あの元アポロン・ファミリアの団員の!?」

 

「なぜ自分たちのファミリアに!?」

 

 

「あいつら。ファミリアが解散した後はやっと大人しく故郷に帰れるって喜んでいたのに、俺たちのファミリアに入るとはな・・・」

 

 

ダフネ・ラウロスとカサンドラ・イリオン

 

かつてアポロン・ファミリアの冒険者にして、無理矢理追っかけ回されて加入した。俺と同じアポロンによって被害者になった二人。俺たちの戦争遊戯で負けてファミリアは解散後。彼女達二人は故郷におとなしく帰ると喜んでいた

 

そんな二人が俺たちのファミリアに入りたいのか、ここに確かに彼女達の履歴書が置いてあった。冒険者なんてもうウンザリかと思っていたのだが

 

理由はどうであれ。そうやら俺たちのファミリアに加入したいようだ

 

 

本当に俺たちが好評になったことで、ここまで加入してくれる者が居るなど思ってもいないことだろう。だがそれだけ俺たちはそろそろもっと仲間が欲しい所だ。書類仕事とか。この広すぎるホームの掃除など。ダンジョンではないところの仕事までして欲しいと。できるなら多く引き入れたいと思うが

 

それはヘスティア次第だ。彼女が試験を出すかもしれないからな

 

だからまずはヘスティアにそのことについて確認する

 

 

「ヘスティア。一応予定としては今日の午後にこの加入希望者達にこのホームの前にある庭に集まってもらうが、試験とかはやらせるのか?」

 

「うん。まあ簡単な試験をね・・・・」

 

 

「そうか。ではこのファミリア入団試験は全部君に任せていいと言うわけだな?」

 

 

「え?ジーク君は?」

 

「え?ジークさんは直接会って加入希望者を採用か不採用かを団長として審査しないんですか?」

 

 

「俺もそうしたいが、俺にはまだギルドに報告しなきゃいけないことや、少しこれからヘルメスと会って話したいこともあるから団長の仕事としてまだ山積みなことがあるから俺からの審査は無しでいい。全部君に任せるヘスティア。主神である君が決めたことなら俺からは文句は無い。主神の言葉に聞くのが団長の務めだからな。君が全部決めていい」

 

 

「そうかい。なら全部僕が審査するけど・・・・これからヘルメスと何を話すんだい?」

 

「後で話そう。単に個人的なことなんだ。とにかく全部君に任せる。俺以外のベル達は悪いが全員ヘスティアのフォローに入りながら良い人だと思う希望者を見定めるんだ。では頼むぞ」

 

「は、はい!」

 

「え!?ジークさん!?もう出かけるんですか!?」

 

「ああ。それだけまだやることが多すぎるんだ。悪いがお昼は命。お前に頼む」

 

「わかりました!」

 

「ではヘスティア。頼むぞ?」

 

「う、うん、ジーク君が居てくれないと困るんだけどな・・・僕らの英雄なのに」

 

「仕方ありませんよ神様。ジークさんは僕らの団長なんですから」

 

「書類とか全部あいつに任せているしな。俺も手伝いたいが・・・・ジークに鍛治師の仕事に専念しろと手伝っている暇は確かに俺も無いから。いろんな武器の製作や手入れも頼まれて出来ねえんだよな」

 

 

そうして俺はホームを出ていく。確かに俺が新団員を審査しなくてはならない立場ではある。でもだからと言って団長として仕事を疎かにする気はない。団員加入者については主神たるヘスティアに全部任せて。俺は仕事に専念する

 

彼女だって良い人材かを見極めることくらいはできるはず。ましてや神なんだ。そこは全部彼女の判断力に全て任せた

 

 

これから俺はヘルメスに話をしにある店へと行く。そしてその後はギルド本部で報告書を届けに行く

 

まずはヘルメスの所へ行くのだが・・・・

 

 

「ん?これは・・・・」

 

 

俺たちのホームの前に何かを感知した。それは魔力の反応をした。それも懐かしい魔力反応。まさかとは思うが、予定を少し変更して俺は先にそっち方へ行き対象をする

 

 

 

 

 

それは

 

 

「久しぶりだなと言いたいが、何をしている?ダフネ?カサンドラ?」

 

 

「ああ!ジーク久しぶりだね?あんたが英雄になるなんてビックリだよ」

 

「お久しぶりです。ジークさん」

 

 

俺たちのホームの門を無理に入ろうとしたダフネとカサンドラが居た。まさかもうここオラリオに着いていたとは思ってもいなかったが、明らかに無理に門を潜ろうとしている。不法侵入でもする気なのかと質問する

 

 

「それで?何をしているんだ?俺たちのホームを無理に入ろうとして?ダフネ?カサンドラ?」

 

「それは・・・ここに忘れたはずの枕が・・・」

 

「枕?」

 

「ほら!行くよ!いい加減そんな馬鹿げた話を言うのはやめなよ!」

 

「お願いだから信じてよ!夢で確かにここにあるんだよ!」

 

 

「ここを改装する前に枕なら倉庫にしまってある。それを持って来ればいいんだな?」

 

 

「え?」

 

「え?ジーク?」

 

 

そうして俺は倉庫の方へと一旦中へと戻る。ここを改装する前に人数分以外の部屋の物は全て倉庫にしまってある。無理に置いてホコリになっても困るため、そして今カサンドラの言う。枕を取りに行った

 

 

「これでいいんだな?」

 

「あ、ありがとう・・・また信じてくれた」

 

「ダフネ。お前は信じないのか?彼女の力を?」

 

「え?カサンドラに力?」

 

「彼女は予知のアビリティを持つ女だ。おそらく夢で先の未来を見ることができる千里眼の持ち主だ」

 

「カサンドラに・・・・そんな力があるなんて知らなかった」

 

「まあ彼女の場合は夢で未来の先を見るようだから、あまりに発揮しない時もあるようで信じてもらえないのだろう。仕方ないと言えば仕方ないな」

 

 

予知アビリティを持つ女を俺は他にも知っていた。だから俺は信じられる。恐ろしいでもあるからな。未来の先のビジョンを見ることができるなど。先々の危機を逃れるためにそれを見て訪れないようにする。好都合な能力ではある

 

確かにカサンドラは有望な人材だった

 

 

「そう言えばさっきお前達の履歴書を見たんだが、俺たちのファミリアに入ってくれるんだな。どうしてまた冒険者に?」

 

「まあね。私は故郷でもゆっくり普通の人として生きるのもいいかもって思っていたけど。カサンドラがね・・・・あんたの英雄譚を読んで」

 

「うん・・・・今度はジークと同じファミリアに入りたいなと思って・・・」

 

「だから私もこの子を一人にするわけにはいかないから。私もまたね」

 

 

「そうか。それでわざわざまたここに・・・」

 

 

「そういう事。にしてもあんた本当にすごいわね。あのゼウスとヘラのファミリアが倒したベヒーモスを一人で倒すなんて、私たちからすればあんたは確実に化け物よ」

 

「それは馬鹿にしているのか?褒めているのかどっちなんだ?」

 

「ダフネちゃん。それはさすがに失礼だよ」

 

 

「まあいい。でも審査は俺はしないから全部ヘスティアがするから今日の入団試験頑張れ」

 

 

「え?あんたは審査しないの?」

 

 

「俺には仕事がある。団長としても山積みの仕事がな」

 

 

「英雄は忙しいんだね?」

 

 

「いや。団長と言う役職が忙しいんだ」

 

 

そうして俺はダフネとカサンドラ達の要望を物を聞いて渡して、午後の試験の健闘を祈ると言ってダフネとカサンドラを通り越してヘルメスの方へ行った。

 

でもダフネが言っていた俺を化け物か。

 

 

失礼ではあるが確かに間違っていないとは思っていた。そう言って俺はとにかく二人が無事俺のファミリアに合格し加入できることを祈った

 

そう言えば聞いていなかったが、ヘスティアは試験と言ってもなんの試験をやらせるのか、内容を聞かずに気になったまま俺は行ってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある酒場

 

 

「悪かったな。いきなり呼んだりして、このお昼は俺の奢りだ。食べたいだけ頼んでくれ」

 

「別にいいさ。英雄であるジーク君が俺に頼ってくれるんだ。俺としては嬉しい話さ。お昼まで奢ってくれるなんて感謝するよ。とは言ってもそこまで食べられないけどね」

 

 

そして俺はヘルメスと待ち合わせしていた酒場へと着き。お互いまずは料理が来てからそれでから話を進める。だがその前にヘルメスからある話がやってくる

 

 

「そう言えば今日の午後はジーク君達ヘスティア・ファミリアは団員希望者の面談があったんじゃないのかい?君は居なくていいの?」

 

「それでも仕事が山積みでな。申し訳ないが任せてきた」

 

「英雄様は忙しいね」

 

「英雄じゃない。これは団長の仕事だ」

 

 

ヘルメスにヘスティア・ファミリアの新団員の面接があることは情報屋として知っているようで、それに着いて団長が居なくてはまずいのではと聞かれるが、団長としての仕事が忙しくて。ヘスティア達に任せたと言った

 

まあ仕事が忙しいならわざわざ急にヘルメスを呼んで話したりはしないのだが、ついでだと思い。一気にやるべきことを片付けるためにヘルメスを今日の朝に呼んだのだ

 

 

「それじゃあ話になるけど・・・・・・なんだい?」

 

 

「アンタレスの封印について話がある」

 

 

「アンタレスの封印?ああ。確かグリフォン君が大昔にアンタレスを封印したと言う精霊術ね・・・・・・でもそれがどうかしたのかい?今事件を解決した後でなんて・・・」

 

「それはだな・・・・・・」

 

 

実はあのアルテミスの事件。アンタレスの封印が解かれ、奴がアルテミスを喰らい。そして眷属を全員殺して。下界を破壊しようと世界の危機になった事件。それはまあ確かにもう俺たちが解決したこと。過去の事件のことにこれ以上関わりを入れる必要なんてないとは思うが

 

一つわかったことがあった。それを通達する

 

 

 

 

「あの事件。ある『ファミリア』が陰謀として封印を破壊し、アンタレスを放ったものではないのかと疑っている」

 

 

「っ!?どういうことだい?まさか誰かがそのグリフォン君達の封印を解いたと言うことかい?何かの目的のために?」

 

「そうだ。実はその封印を破壊した痕跡があの遺跡の門にあった。これは間違いなく、またオラリオの外に居るファミリアの陰謀だと俺は考えている」

 

「陰謀ね・・・・・でも精霊の術式って強力なはずだよね?俺も詳しくはないけど。それを破壊できる者なんていないんじゃないのかい?いくら神である俺たちでもそんなことできないよ?」

 

「いや・・・・・一人知っている男が居る。そいつはお前やヘスティアやアルテミスやデメテルとデュオニュソスとヘファイストスが知っている男だ」

 

「誰だい?」

 

 

その男は確かに精霊の術式を破壊もできる『神器』を持っていた。その特殊な武器でできる傷跡もその門に痕跡はあった。俺はその傷に少し似ている跡を付けることができる武器を知っていた。おそらくこれはそいつの仕業だと思っている

 

その男と言うのは

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハデス」

 

 

「っ!?ハデス!?あのハデスだと言うのかい?」

 

「ああ。俺はそうだと考えている。でなきゃあの二本傷。あの傷跡は明らかに奴の神器である『バイデント』の傷跡に似ている。おそらく奴ら・・・・『ハデス・ファミリア』の仕業だと思っている」

 

 

そうとしか思えなかった。でなきゃあんな深い二本の綺麗な傷ができるはずがない。確証はそれしか無いが。少なくとも精霊の術式を破壊できる知識と技術を持った奴ならできると、俺は奴の力を知っているからでもあるからだ

 

 

「あのハデスが・・・・・でもなんでジーク君はそれを知っているんだい?」

 

「俺は一年半前。フレイ・ファミリアと共に奴らと戦争していたんだ」

 

「は!?フレイのファミリアとハデスのファミリアが戦争した!?」

 

「ああ。大苦戦したが、奴らの団員を半分殺して。ある洞窟へと逃げた。あともう少しでハデスを殺せたのに、フレイが神殺しはダメだと邪魔されてその隙に逃げられた」

 

「ジ、ジーク君はあのハデスをも殺そうとしたのかい?」

 

「俺の敵だ。敵に情けなど神が相手でも必要はない。敵は殺すのみだ」

 

「ジーク君。君はハデスよりも恐ろしいよ」

 

 

ハデス・ファミリア

 

一応国家系ファミリアだが、奴らのやっていることは完全にテロリスト。いろんな国に侵略などをするアレス・ファミリアよりも危険なファミリア。故郷の国にも侵略を企んだため。俺が率先して奴らを皆殺しにしようと奇襲を掛けた

 

それで団員の半分を殺した。あともう少しで幹部と奴を殺せたが、流石にやりすぎだとフレイに止められ、その隙にある洞窟に逃げられた

 

今でも奴らは俺に復讐しようと、アンタレスの封印を解いて暴れさせようとしていた目論見があったのではないのかと疑う

 

 

「ジーク君はあの事件はハデスの仕業だと考えているのかい?」

 

「可能性としてな。でなきゃ門にあんな似たような傷は他の武器でさえ無い。それにあいつは冥府の神だ。死の精霊についていくつか知っている。だから精霊の術式を壊す方法を知っているんだ」

 

「なるほど・・・それでアンタレスの封印を解いたのがハデスではないのかってわけか」

 

「推測としてな。だからお前になるべく外からの情報をこれからお前が俺に提供して欲しい。その代わりいくつか俺もお前らに依頼を頼んでもいいと取引をしたい」

 

「俺の情報網を当てにしているわけか、それは嬉しいね。でも俺たちのファミリアが依頼を頼んでもいいって。まさか君一人で?」

 

「当たり前だろ。情報提供は俺個人の要望だ。あいつらは関係ない。俺一人で何か頼みたいことがあれば頼んでもいい。ただし何か一つでも情報を貰わない限りはな。それが報酬として貰えるなら俺はお前の頼みを聞こう」

 

「君一人か・・・・・ちなみにこの事はヘスティアは?」

 

「もちろん言ってない。あいつは難しい話は苦手だからな、だから代わりに俺が警戒を取って個人的にこんなことをしているだけだ。いずれこの事は話すけどな」

 

「まあヘスティアは子供だからな。あんまり気難しい話は彼女苦手だしね。ちなみに情報ってどんなのがいいんだい?」

 

「できるならオラリオの外も含めてイヴィルス関係。もしくは不自然な動きをしているファミリアが居るかとか、その程度でいい」

 

「イヴィルス関係ねえ・・・・・もしかしてギルドのルールを無視してファミリアは潰しなんてしないだろうね?」

 

「もしもの場合はな。他のファミリアでもあるんだぞ?イヴィルスに関わってふざけたことをする連中がな。俺はそいつらを消すためにも警戒したくて情報が欲しいんだ」

 

「マジでジーク君ならやりそうだな。まあ俺たちのことが嫌いだもんね。君は」

 

 

神が嫌いだからって理由だけではない。そういう悪事なことをするイカれたファミリアも俺は多くを知っている。今までそれに近い事件に巻き込まれて戦ったのだから。警戒としての一つや二つの情報を貰い、それを聞いて危険かどうか判断し、消す。

 

俺の個人的な敵が多すぎるため、仕方のないことだとこうするしかなかった

 

 

「それでこの取引に応じてくれるのか、どっちだ?」

 

「いや、引き受けよう。英雄になった君の力を借りれるなんて滅多なことじゃないからね」

 

「感謝する」

 

 

取引には応じてくれた。気に食わない性格はしているが、それでも商人と旅人の守護神である事は変わりないため、いろんな文化を知る男神ならいろんな情報をたくさん持っていると、皮肉ではあるが、こいつの情報網を頼るしかなかった

 

今後の敵に奇襲される前に、対策を付けるために

 

 

「ちなみにだけどいいかな?」

 

「なんだ?」

 

「逆に聞くけど、ジーク君の方は何かイヴィルスに関係する情報を持ってないの?」

 

「イヴィルス関係か・・・・・・」

 

 

ヘルメスから逆に俺から情報は無いのか聞かれた。ヘルメスから人から情報を得ようとするなんて思いもよらなかったが、イヴィルス関係なら少しある。それもオラリオ内でイヴィルスなら

 

 

 

 

「このオラリオで『エニュオ』とか言う破壊者が、この都市を破壊しようとイヴィルスの残党を利用している」

 

「っ!?どこでその名を?」

 

「どこでその名を?俺の知り合いの主神から十五年前からそんな奴がオラリオで悪事なことをして動いていると。いろいろ情報を貰ったんだ。使えない情報かと思ったのだが、以前ロキ達が59階層で戦った精霊の分身『デミ・スピリット』を放った張本人だとか、いろいろ俺の敵を教えてくれた」

 

「へえ・・・・そこまで、しかもロキ達が秘密にしていた59階層の内容まで・・・その知り合いの主神って誰だい?」

 

「悪いがそれについては話す気ない。本人も自分のことは言うなと言われている。簡単に言うならウラノス同様に千里眼の持ち主の主神だ」

 

「千里眼の持ち主の主神か・・・・いっぱい居るけど誰なのかな・・・」

 

「詮索はするな。お前が最近ロキとデュオニュソスと組んでエニュオやイヴィルスの残党について調べているのも知っているぞ?」

 

「え!?まさかそれもその主神から?」

 

「いや。お前の眷族であるルルネから、以前ベラベラと喋っていたのを聞こえた」

 

「ああ・・・・・ルルネ・・・もう少しそういうのを口走らないで欲しいな・・・」

 

「あいつは口が緩いからな」

 

 

破壊者エニュオ

 

この都市を破壊しようと企む女神。真相はまだ謎だが。奴は十五年前からこのようなことをして計画していたらしく。都市に食人花とか言う花のモンスターを放ってこのオラリオを破壊しようとする謎の女神

 

そしてオラリオに居ると思われるイヴィルスの残党を利用して、もしくは手を組んで。新種と思われる人工モンスターを作っていると。あの爺さんから情報を貰っている

 

だからそれらしい情報を俺はいくつか得ている。

 

そしてこの前ルルネからアルテミスの事件の後で。たまたま偶然話していたら、彼女が口走ってロキとデュオニュソスと組んでエニュオについて調べたりなどをしていると聞いた。

 

彼女は意外とうっかりな所があるから、口が軽くなったりする

 

 

実は言うと。俺はエニュオの正体ももう大体検討が付いていて、知っていたりもする

 

 

「まあオラリオの街にも秘密があったりと、俺なりに知っている情報がある」

 

「え?オラリオの街に秘密?もしかして・・・・・・・」

 

「ん?なんだ?」

 

 

「まさかダンジョンがもう一つこの街にあるなんて言うんじゃないだろうね?ジーク君?」

 

 

「そのまさかだが?」

 

「・・・・・・・・ジーク君なんでも知っていたりしない?」

 

「俺は全知ではないぞ。神でもない。半神だ」

 

 

実は言うと。ここオラリオ以外にももう一つダンジョンがあったりする。それもダイダロス通りにある。完全に街にもう一つダンジョンと同じ巨大な人造の迷宮

 

その名も『クノッソス』

 

奇人ダイダロスとか言う男とその子孫で千年も掛けて作り上げた。もうう一つの人工ダンジョン。何階層まであるかはわからないが、一ヶ月前に体がベヒーモスの戦いで重症の時に暇で俺は書物屋で買い物をした時があった。その時に奥からそのダンジョンの名前が書かれた説明書と設計図のような物を書物屋で見つけて、一人で見に行ったことがある。そこで門の前に立っただけであって、中までは入ったことはないがモンスターと言うより人の魔力が中からした

 

おそらくイヴィルスの拠点ではないかと。中までは行かなかった。それに門もオリハルコンでできているため簡単には入れそうにはなかった

 

 

「だが、なぜお前らがそれを?まさか誰か挑む奴らが居るのか?」

 

「まあね、今ロキ達が探しているんだよ」

 

「そうかあいつらが、そうまでしてエニュオの足跡を追っているわけか」

 

「もしかしてもうどこにあるかわかるのかい?」

 

「まあな、俺もその門があるところまでは行ったことがある」

 

「じゃあその現在地の場所を教えてくれないかな?」

 

「教えてもいいが。気をつけた方がいい」

 

「やはり中にはモンスターが居るのかい?」

 

 

「いや中に居るのは・・・・・おそらくイヴィルスの残党かもしれない」

 

「っ!本当かい?」

 

 

「魔力を感知する限りじゃあおそらくな。でなければ『あの街』の地下にそんな物を作り上げる筈がないからな」

 

「ってことはもう中はイヴィルスの罠だらけってわけか・・・」

 

「そういうことだ」

 

 

クノッソスに活かせるのは正直オススメできない。完全に中は罠だらけだ。一体何があるのかなどは俺でもわからない。だが門越しでもわかる。嫌な魔力を中から感じた。そして神の力も、おそらくイヴィルスのファミリアが中に居るのだとわかる

 

ロキたちでも切り抜けられるか分からない、人間が作った道の領域に俺は警戒と用心をするべきだと思っていた

 

 

「オラリオも治安が悪いところはしっかり昔のまま変わってないようだな」

 

「一部だけね。まあ俺たちも手に負えなくて困るくらいだしね。」

 

「大変なんだな。お前も」

 

 

ヘルメスもヘルメスなりに、そのようなテロリストに対応しているようだ。オラリオにもそのような敵は幾つもいる。そんな敵は俺をもターゲットにしている可能性だって高い。俺も十分とした警戒をするのだった

 

 

「これから気をつけた方がいいな。裏切りを企てる神や嘘をつく神も居るからな」

 

「え?誰だい?」

 

「イシュタル・・・タナトス・・・・イケロスの三人だ。そいつらがイヴィルス残党だ」

 

「え!?あのイシュタルもかい!?」

 

「ああ。最近あの女が俺のことについて何か調べていると、エイナから聞いた」

 

「なぜイシュタルがジーク君を?さすがに関係がないと思うけど?」

 

「あいつは今でもフレイを狙っている。そのフレイは今でも行方不明になっている、その居場所を知っているのは俺だけだ。となれば?」

 

「ああ・・・・・なるほど。そういうことか。イシュタルはまだフレイを狙っていたのか、フレイヤが邪魔しているのに」

 

「フレイは天界では一番の美形の男神だったんだろ?それを欲しがる女は多く居たとフレイも困っているとあいつ本人から聞いた」

 

「まさかあのイシュタルがねえ・・・・まさかイヴィルスになったのもそれが目的?」

 

「それと邪魔な義姉さんを消すためだろうな。天界じゃあフレイに近づいてもフレイヤが守っていて近づけなないようにしていたとフレイ本人から聞いたが?」

 

「フレイヤはああ見えてブラコンだからね。敬愛する尊敬する兄を他の女に近づかせないといつも罵倒するからな」

 

 

天界でもフレイを欲しがる女神は多く居たと本人から聞いた。でもフレイはそれでも恋愛対象ができる相手とは見れなくて、いつも姉さんがフレイを守っていたらしい。姉さんも男遊びとか皮肉なことをする癖に。そんなことをしているなんて、本当にある意味ズルイ女だと思う

 

自分の愛した者は絶対に触れさせない。そういう性格は本当に彼女とそっくりだ

 

 

「あの事件が終わっても、ここに俺の敵は多く居るということだ。今後お前らも危害を加えるかもしれないから気をつけろ」

 

「ああ。そうみたいだね」

 

「それじゃあ俺の話はこれで以上だ。取引応じたことに感謝する」

 

「いや、別に構わないよ。いつもジーク君に助けられているからね、そのお礼として引き受けただけだよ」

 

 

そうして俺はヘルメスと共に店を出て。店で頼んだ品の代金は本当にヘルメスが払い。ここで別れて俺はギルド本部へと向かう

 

話の結果としてはお互い情報交換して新たな敵に備えることになった。俺たちの戦いはまだ終わらないということ。敵は決してモンスターだけでなく。いろんなファミリアと言う同じ冒険者の争いがあると言うことを。俺たちはまだ安心して平和を過ごすことはできなかったと俺は考えていた

 

もちろんこのオラリオの中と言っても襲われる可能性もうあるといろいろ備えることも考慮していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘルメスの会談は終わり、そして次の仕事である。ギルド本部に行きアルテミスの依頼のファミリア報告書を届けに行くのだが、すぐ目の前にある曲り角を抜けると偶然ある者達とバッタリ会う

 

 

「あ、ジーク」

 

 

「ん?ナルヴィ・・・・それにお前達も・・」

 

 

「よ、よう・・・・・ジーク」

 

「久しぶりだな・・・・」

 

 

そこで出会ったのはロキ・ファミリア。だが幹部ではなく、その二軍メンバーでレベル三までのかつての先輩と遭遇した。ナルヴィを筆頭にロイド。シャロン。ニック。リザ。スタークを連れてダイダロス通りで

 

久しぶりに俺の元先輩達に会ったが、俺は偶然出会っても驚くことなく、むしろなぜこんな所に二軍メンバーが居るのか疑問を感じた。それもなぜか俺を見てナルヴィも含めてなにか戸惑いの顔をしていた

 

 

「ああ・・・・なにしてんの?こんな所で?」

 

「俺は今からギルド本部へ行く所だ。お前達は・・・・・・何か探しているようだな?」

 

「ま、まあな・・・・」

 

「ちょっとロキに頼まれた仕事で、少しね・・・」

 

「そうか・・・・・」

 

 

間違いなく、こいつらはもう一つのダンジョンであるクノッソスを探しているに違いないと予測した。ロキは賢い考えをするからもう一つダンジョンがあることを気づいたのだろう

 

今でもエニュオの足跡を追っているようだ

 

 

「もしかして団長のお仕事?」

 

「ああ。やることが多くてな。ギルド本部に行って報告など。あの大きな事件の後でも忙しくて休めない」

 

「そうなんだ・・・・フィン団長みたいにファミリアの長になると大変なんだね?」

 

「そんなものだ団長と言うのは。それだけ責任が大きく大変な役職だ。仲間のことやファミリアのことも考えなきゃならないんだ。これが当然だ」

 

 

ナルヴィ達からすれば、あのベートより悪口が半端なく。でもやるべきことはしっかりとやっていて敬うことをしなかった悪ガキの後輩が、たった二年経っただけでまるで人が変わったかのようにここまで大きくなり。今ではフィンと同じレベル6を持ち。世界を救うために一人でベヒーモスを倒した英雄となるなど。

 

そんな一度やめた後輩が、他のファミリアに所属して自分たち幹部以上の実力を持っていることに、先輩達だったナルヴィ達は驚きを隠せないだろう

 

あの悪ガキの後輩が、今ではフィン達よりも実力を持った夢にしか出てこない英雄に本当になってしまったのだから。元同僚だった彼らとしては信じられない心機一転だった

 

ベヒーモスの事件ではその悪ガキの後輩の俺に指示を受けて動いていたのだ。もう彼らは俺のことを元後輩とは扱えない。立場が大きく逆転しすぎたため、俺が先輩な立場となっている

 

そんな彼らは

 

 

「お前って実はすごい奴だっだんだなって、今になって俺思ったよ」

 

 

「ん?なんだロイド?今になって俺がフィン達と同じだと。優越感と自分たちは劣等感を感じたのか?」

 

 

「ま、まあな・・・・」

 

「だって・・・・・」

 

「あの三大クエストの一つでもあるあのベヒーモスをお前は一人で倒したんだぞ?俺たちのあの後輩とは思えねえよ」

 

「でもなんだか納得してはいたんだ。お前は初めて入るダンジョンの時も怯えることなく、率先して前衛に出てモンスターを一人で蹴散らした。俺たちよりレベルが低くいのに、そしてレベル1なのに20階層のモンスターをほぼ一人で倒しやがった。俺たちとは恐怖も無ければ団長達と同じようにどこか優れた感は感じていたんだよ」

 

「だからお前はすげえし。お前はやっぱりそれだけの器があるってことだよな」

 

「本当・・・・やっぱり俺たち『なんか』とは違うんだな・・・お前は」

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

冒険者の中には強い者達を見て劣等感を抱く者は確かに居る。このステイタスを極められるオラリオで戦えばランクアップすると軽々とできるはずだと彼らはダンジョンに潜るまでの新米の冒険者だった時はそう思っていただろう。自分も英雄みたいに強くなれると

 

だが現実は厳しく。そして不公平でもある

 

ダンジョンで死ぬ人間は大勢で。モンスターも恐ろしく。急に出てきて襲撃なんてこともあり得る。それで死ぬ奴は大半。そしてそれだけをこなしただけでは強くは簡単にはなれず。中にはレベル1でダンジョンで死ぬこともある。まさにダンジョンはこの世界の厳しさを表した弱肉強食そのものである

 

そんなナルヴィ達は何度か自分たちより上司の先輩や同僚をいくつかあのダンジョンで亡くしている。彼らもその現実を思い知り。モンスターに何度も恐れて、それでも何度も戦ってきた

 

なのにフィン達みたいに第一冒険者になれない

 

オラリオで第一冒険者はなった数はたった数十人しか居ない。それだけでレベル4からその上は難しい。何か成長させる一歩を得ない限りは強くなれないのだ。特に二軍メンバーの隊長であるラウルは特に酷い。判断力と指示力はフィンと同じように強く。フィン自ら次期団長はラウルが良いと言っていたと以前奴から聞いた。だがラウルはそれを酷く断っている。なぜなら自分が臆病者だと他の者より遥かに力も無いからと蔑んでいるからだ。ここに居るナルヴィ達は一つや二つくらいならスキルや魔法を所持している

 

でもそのラウルにはスキルも魔法も無い。レベル4だと言うのに

 

幹部達には到底及ばない。自分たちの力は所詮ただの兵士並。俺みたいに英雄譚に載せられることもないまま、歴史に忘れ去られるだけの駒でしかないと

 

今になって、俺たち第一冒険者に優越感を感じて、自分の無力差である劣等感を感じていた

 

 

だが、それでも俺は言う

 

 

「最初は皆こうだろう。俺だって二年前はお前らより酷かった。でもいろんなことを経験して強くなった。それだけだ」

 

 

「ジーク・・・・」

 

 

「お前らは劣等感を今抱いているが、そんな暇があるなら強くなる努力をすればいいだけだろう。そんな難しい話ではない。ただアイズやフィン達より・・・・あいつらより勇気を出して前へ出ればいいだけの話だろう。そんな簡単なことをなぜお前らができない」

 

「でも・・・・私たちは・・・」

 

「お前らはロキ・ファミリアなんだろう?どんなモンスターにも戦いを挑み、勝利した最大派閥の冒険者だろう?それともその名はただの『お飾り』か?」

 

「「「「っ・・・・・・」」」」」」

 

「ラウルだって少しでも強くなろうと頑張っているくらいだぞ。自分から弱いからって諦めるようじゃあロキ・ファミリアもこれからは続かん。フィンやあいつらだっていつまでもロキ・ファミリアに居るとは限らないんだ。そいつらが居なくなったらお前らはどうする?」

 

「それは・・・もちろん私たちがしっかりと・・・」

 

「そうだ。お前らが今度上に立って仲間やその部下のためにも戦ったりせねばならないんだ。劣等感を抱いている暇も無ければ意味も無いってことだ。何か一つでも仲間の犠牲が出ても前を向いて仲間を守るために強くなる。それ以外進むべきことはないと思うが?」

 

「ジーク・・・・・」

 

 

気持ちとしては分からなくはない。確かにフィン達は少し他の冒険者とは違って優越感を感じさせるような能力は持っている。でもあいつらだって昔はこいつらほどだったはず。ゼウスとヘラがこの街に居た時は

 

誰だって初めは弱い。

 

これから強くなるためにどうすればいいかだ。幹部達よりも勇気を出して前へ出て死に物狂いで戦うか。そう言う努力がこいつらには無さすぎる。ラウルはそれをなんとか今でも頑張ろうとしているのを俺は何度も見ている

 

アイズやティオネやティオネやベートやレフィーヤだってそうだ。あいつらだって初めは弱かった。今でももっと強くなろうと何かを求めて必死に率先して戦っている。アイズなんて特に酷かった。あいつの剣捌きは。初心者かと思うような雑や無駄な動きをする。昔俺も教えていたから今ではあんなに上手いんだ

 

誰にだって強くはなれる。そのためにどうするかだ。

 

 

「このまま努力せず弱いまま終わるか、それともあいつらにはできない事を。もしくはそれ以上なことを何かをしてあいつらと同じ強さを得るのではなくそれ以上を超えるか、全てはお前ら次第だ」

 

「私たちに・・・・・できるかな?」

 

「そんなものは誰にだってわからない。それでもこのままで居るよりはマシだろう?俺だってそうしてきたんだ。やるかやらないかはお前らが決めることだ。まあ無茶なことをし過ぎて死なないことだな」

 

「ジーク・・・・・」

 

「俺からはこれくらいしか言わん。あとは武運を祈る。じゃあな」

 

 

そうして俺はナルヴィ達を置いて先にギルド本部へと向かう。

 

彼女達も俺の戦いを見て活躍を聞いて、心なしか劣等感を今になって感じ始めたようだ。ラウル達もそんなことを考えていたりするのだろうか、まあベートは今でも俺に対抗心を持っているだろうとは思う。あのアルテミスの事件以来会ってはいないが。彼らにとっては思いもしなことかもしれないが、人の成長は知らずの経験を得ることで急激に変わるものだ

 

俺だってそうだ。ロキ・ファミリアをやめて、フレイの誘いで眷属となり、フレイ・ファミリアの副団長としていくつものの国家と戦争してきた。そして俺は『あの竜』を殺して化け物となってレベル4になった

 

そして亜種のゴライアスを倒し、次に新種のベヒーモスを倒して、フィン達と同じレベル6まで強くなった

 

これから俺はオッタルと同じレベルになって強くなるためにこれからも進む。

 

 

誰もが目標をあってそのために強くなる。現実を知って挫折してやめるか、それでも諦めずに前を向いて強くなるのを続けるか。全てはその者次第と言うわけだ

 

これからはあいつらも。弱いだろうが関係なく強くなることを諦めないだろうか、まあ伊達にロキ・ファミリアの眷属として今まで頑張ってきたんだ。心配ないだろうと思うが

 

例え犠牲者が出ても。その犠牲になった仲間も含めて前を向いて強くなることを武運を祈って、俺はあいつらに強くなった者としての助言を残して去った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「報告は以上だ」

 

「うん。わかったわ。ヘスティア・ファミリアもまたすごく大きくなったね?そしてジークくんはまた二度も世界を救ったんだね。本当に・・・・流石は女神の息子だからかな?」

 

「違うな・・・・・アルテミスが俺に力を貸してくれたんだ。それでなくベル達もアスフィ達ヘルメス・ファミリアの力も借りたんだ。全員ではない」

 

 

ギルド本部へ着いた俺は持っている報告書を全部エイナに渡す。報告書の内容はアルテミスの依頼内容とその達成報告。一応念のためために詳細をギルドに報告をした。ギルドには詳しい詳細は伝えられてなかったからな

 

念のために全て詳細を明かした。

 

 

「にしても今回も大きな事件だったわね・・・」

 

「ああ。外にだってモンスターが出てくるんだ。ダンジョンと同じように突然そのような自然な現象で出てくる時だってあるんだろう。早めにヘルメス達が気づいて助かった。おかげで奴をなんとか討伐出来た」

 

「ジーク君達はなんだか英雄・ファミリアね?」

 

「なぜそう思う?」

 

「だって・・・・・・まるで誰かの助けに応じて駆けつけるじゃない。まるで英雄よ。神アルテミスが助けて欲しいから助けるなんて、御伽話そのものよ」

 

「まるで俺たちが『ヒーローチーム』とでも言いたいのか?」」

 

「ヒーロー?」

 

「俺の故郷じゃあ英雄をヒーローと言う別名の名前があるんだ」

 

 

まるで英雄・ファミリアか

 

そんなことを言われるのは初めてだが、確かに誰かの助けに応じてそれを救おうと駆けつけた。確かにそのような行動は取っているな。単に害になる敵を排除したに過ぎないつもりなのだが

 

エイナにはそのように見えるらしい

 

 

「あと今日でヘスティア・ファミリアも新団員加入試験があるんだっけ?いっぱい新人が入ってくれるといいね?」

 

「それはヘスティア次第だ。全部彼女に任せている」

 

「そうなんだ。それとジーク、もしかしてまたランクアップしたりとかは・・・・しないか」

 

「ああ。レベル7がそんな簡単になれるはずが無い。まだレベル6だ。フィン達だってレベル6になってからその上を目指そうとして十年くらい経っても上がらないんだぞ?そう簡単ではない」

 

「それもそうだよね。でもジークは今まで短期間でランクアップしてきたじゃない。あり得ると思って・・・」

 

「まあ確かに、俺もベルも一ヶ月くらいでランクアップするレコードホルダーに登録された者だ。だからと言ってまた一ヶ月経ってレベル7になるなど俺も簡単ではないことくらいわかっている。もしなったらそれこそ俺はかつてのゼウスとヘラの眷属以上だ」

 

「私はもうそれ以上の存在だと思っているけどね。だってあの赤いベヒーモスは新種で強化種でもあるんでしょ?つまりはオリジナル以上ってことでしょう?それを一人で倒したんだから、私はもうゼウスとヘラの眷属を超えていると思うけどね?」

 

「あいつらはほぼレベル9から8と言う。このオラリオでまだ他のファミリアの眷属でもなったことの無い最上級のレベルの奴らだ。オッタルもそれを目標にしているがまだレベル7止まり、オッタルよりもそれより強いあのゼウスとヘラの眷属にはまだ俺は超えてはいない」

 

「まだってことはジークも目指しているってことでしょ?」

 

「まあな。そうすればヘスティア・ファミリアもゼウスとヘラのファミリアと並んで、新たな都市最強のファミリアとして名乗れる。と・・・・言いたいが、俺一人で強くなったて仕方がない。ベル達も強くならなければ」

 

「ベル君達。必死にジークに追い付こうと頑張っているもんね。あのベヒーモスの戦いの後ダンジョンに潜る回数が前より増えたもん」

 

「だからこそ冒険者としての血が騒いだんだろう。まさか俺の背中を追う者ができるとはな。俺に対抗心を燃やす奴も居るが」

 

「仕方ないよ。あんな活躍をしたら。みんなあなたを追いかけるわよ。他のファミリアでもジークになりたいなんて言う新米の冒険者だって居るのよ?アドバイザーの私からすれば大変よ」

 

「そうか・・・・・英雄とはそんなものなのだろうか・・・」

 

 

俺も思いもしなかった。まさか俺のようになりたい奴が他のファミリアで居るとは。俺のようになるのはやめたほうがいいと思うが。まあ目標を作って強くなるのはいいことだから。俺はそれについて別に否定はしなかった

 

なにせ英雄になった俺に憧れる。俺の団員であるベルもそうだったからだ

 

 

「報告は以上だ。俺は帰らせてもらうが構わないな?」

 

「ああ!ちょっと待って!」

 

「なんだ?」

 

 

報告はもう全て伝えた。早く終わりにして今頃俺たちのホームで開催している『新団員加入試験』の審査の進み具合を見なくてはならないと思ったのだが。帰ろうとした途端。エイナに止められた

 

まだ何か伝えなくてはならないことがあるようで、俺は相談部屋を出ずにエイナの方へ向く

 

 

「あ、あのさ・・・・明日の夜なんだけど・・・」

 

「明日の夜がなんだ?」

 

「私と一緒に・・・・お食事でも行かない?」

 

「食事?明日の夜か?」

 

「う、うん・・・」

 

「別に構わない。今日じゃあ無ければ」

 

「うん!じゃあ待ち合わせはここでいいかな?」

 

「わかった。明日またここへ迎えに行く」

 

「うん!明日はお願い!」

 

「ああ」

 

 

エイナから明日の夜。食事の誘いが出た。急ではあるが予定は今日ではなく明日の夜と言っていたから、明日の夜は特に予定も無いから引き受けた

 

初めは顔が赤く。返事を出した瞬間物凄く喜んでいたが。まさかデートの誘いなのかと思っていたのだが。彼女は友人だし。そんなことではないと思って食事会に深い意味は無いと思って詮索はしなかった

 

 

 

そうして俺は用を済ませて部屋を出て。ギルド本部の入り口を通り過ぎる

 

そこへ

 

 

「あ!ジークじゃない」

 

「ん?ヘファイストス」

 

 

ギルド本部を通り過ぎた後でヘファイストスと偶然出会う。ヘファイストスに偶然出会うなど滅多にないことだ。なぜなら彼女は鍛治師の仕事で忙しいはず。たまにミアハやヘスティアと外食する所は見たことはあるが、

 

彼女が一人で外を歩くのを見かけるのは初めてだった。それも彼女一人がギルド本部にくるとは。明らかに何か用があるように見えた

 

 

「聞いたわよ。あのアルテミスを救ったんだって?やっぱり英雄は強いわね」

 

「確かアルテミスも言っていたが。お前も彼女の友人だったな。彼女は今でも村で新しくまたファミリアを始めて元気にしている」

 

「ヘスティアから聞いたわ。本当にモンスターに喰われた神を助けるなんてあなたはすごいわ。ところでヘスティアから聞いたんだけど・・・・・あのアルテミスに求婚されたって本当?」

 

「ああ。だが断った。コンバージョンだってまだ期間は経ってないし。個人的にまだあいつに女としての魅力が無いから受けなかった」

 

「あの純潔の女神が男に恋をするなんて・・・・アルテミスもこの下界で変わったわけね。差し詰め自分を救ってくれた騎士様に惚れたってところかな?」

 

「さあな、どうなのかは知らないが。俺は彼女が元気ならなんだっていいからな。ところでお前が一人でここまで来るのは珍しいな。何かギルドに用か?」

 

「そのつもりだったんだけどね。ちょうど貴方と偶然会ったからあなたに渡そうと思うの」

 

「何をだ?」

 

「実はヘスティアに渡したい物があってね。と言うか・・・・・私たちファミリアの更衣室のロッカーに隠していたのよね。あの子は本当に・・・だから、はい。これ」

 

「ん?・・・・・・これは・・・」

 

 

俺はヘファイストスにヘスティアに渡す物を預かっていたらしい。だがそれは彼女がバイトをしている更衣室のロッカーに隠していた物らしい。ヘスティアがヘファイストスでバイトをしているのは聞いた。友人だからとファミリアのお金稼ぎのためにヘファイストスのところで働いていることは知っているが。なぜ彼女がそのバイト先の更衣室のロッカーに物を隠すのだろうか、

 

その隠していた物を渡すつもりだったが、ちょうど彼女の眷属である俺が目の前にいるからと俺に渡された

 

そしてその隠していた物を見て・・・・・・・俺は

 

 

「ヘファイストス。これを渡してくれたことを感謝する」

 

「え、ええ・・でもジーク?・・・・・・・あの・・・・ひい!?」

 

 

「彼女には少し問い詰めなくてはな・・・」

 

 

俺はそれを渡されて少し怒ってしまった

 

これはどういうことなのか。今から彼女を問い詰めなくてはならないと。俺はヘファイストスに別れを告げて、すぐにホームに戻る

 

少し怒った俺の顔にヘファイストスは完全に怯えて腰を抜かしていた。でも俺はそれを無視してでもホームに急いで戻るのだった

 

まさかヘスティアがこんな物を隠していたなんて。まさか俺たちにも言わないとはどういうことなのか、今から俺はヘスティアの所へ行く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてすぐにヘスティアファミリアのホームである『竈火の館』に着く。そこにはもう何十人と言う数の新米冒険者がホームの玄関の前へ集まっていた。まだホームの中に入っていないと言うことは、まだ試験は開始してないと言うことがわかる

 

すると

 

 

「お!みんな後ろを振り向くんだ!我らの団長にして僕らの英雄が仕事から帰ってきたぞ!!」

 

 

「「「「「「おおおお!!!」」」」」」

 

「ジーク・フリードだ!?」

 

「あの伝説の!?」

 

「スキールニルだ!?」

 

「雷帝様!!」

 

「ジーク様!!」

 

 

ヘスティアは俺が門の前で立っている所を見つけて、全員一斉に俺の方へ振り向き。好評と歓声が大きく響いた。ほぼエルフの女の黄色い声援が大きい。その中にカサンドラやダフネもしっかり居た

 

集まった新米の冒険者達は自然に俺に道を開けてくれた。そして俺も流れるがままにヘスティアの所へ移動する

 

 

「仕事は終わったのかいジーク君?」

 

「ああ。たった今終わって帰ってきた。試験は今から始める気か?」

 

「はい!ジークさん!仕事が早く終わったみたいですし、団長として皆さんの審査をお願いします!」

 

「そうか・・・なら一言を言おう」

 

 

そうして俺はヘスティアとベルの言うとおり、団長として俺は率先して今集まる者たちに一言大きな声で掛ける

 

 

「ヘスティア・ファミリア団長のジーク・フリードだ!お前達で言うなの英雄雷帝だ。お前達はよく俺たちのファミリアを選んでくれた。それだけ俺たちのファミリアを当てにしているか。お前達のファミリアの評価を聞いて是非とも入りたいと冒険者になる覚悟をしている者達であることは明白だろう。遠くここまできたものも居るだろう。俺たちの募集に希望をしてくれたことは感謝する」

 

 

と言って、まずはここに来てくれた者たちにわざわざ足を運んでくれたことは感謝する。まずは団長として自己紹介をし、俺たちのファミリアを希望をしてくれたことを感謝を伝えた。

 

もちろんその言葉に感激を持ったのか。泣いている奴らが何人も居る。英雄の居るファミリアにこれから入るのだと期待しているのだと思う

 

 

だが

 

 

それを俺は曲げる

 

 

 

「だが!今回俺たちのファミリア団員募集は。すまないがやっぱり無しにさせて貰う!!!」

 

 

 

「え?」

 

「え?」

 

「「「え?」」」

 

 

「「「「「「「「「えええええええええええええええ!?」」」」」」」」」」」

 

 

俺の言葉に一気に驚愕の声を上げて、ほとんどの奴が全員驚きの顔に一斉になった。あの目の前に居るダフネやカサンドラも驚きが出ている。当然団員であるベルもその隣に居るリリルカ達も、全員今俺の通達した言葉に驚愕していた

 

それを聞いてまずヘスティアが聞いてくる

 

 

「ちょ!?ジーク君!?募集を無しにするってどういうことだい!」

 

「それに関してはこれを見てから言ってもらおうか?」

 

「これ?」

 

 

「ヘスティア?この明らかに君の字で書いたかのような『開けるな』と書かれたこの箱はなんだ?」

 

 

「な!?それは!?」

 

 

パンドラボックスから俺はある紙を入れるような小さな箱を取り出した。そしてその箱には明らかにヘスティアが書いたかと思われる文字が描き出された箱を。ヘスティアに本人に見せた

 

その箱を見せた瞬間。頭から大量の汗が出てきて完全に青ざめている

 

 

「返すんだ!!・・・・・・ってあれ?中身は?」

 

「中身はこっちだ。もう取り出した」

 

「ジーク君!それは・・・」

 

 

 

「ヘスティア?これはどういうことだ?君が俺たちに黙って二億ヴァリスの借金をしていたのは本当か?」

 

 

 

「え!?」

 

「はい!?」

 

「は!?」

 

「なんですと!?」

 

 

「「「「「「「「二億ヴァリスの借金!?」」」」」」」

 

 

俺がヘファイストスに渡された物は。二億ヴァリスの借用書だった

 

ヘスティアはこれをバイト先の更衣室のロッカーに隠していたようだ。いつからこれをしていたのか知らないが、薄々彼女がなぜヘファイストスのところでバイトをしているのか。友人だからと仕方なくバイトさせているからだと友人関係でヘスティアを雇っているのかと思ったら

 

借金を返すために今までヘファイストスのところでバイトをしていたようだ

 

 

「先ほど。ヘファイストスにこれを渡されて事情はもう把握した。これは本当なのか?ヘファイストスのサインも入っている。この借金はベルが持っている『ヘスティア・ナイフ』のだな?」

 

「ヘスティアナイフ!?神様本当ですか!?」

 

「うう・・・・・ま・・まあね」

 

「てことは僕は今まで!?二億で刺したり!?二奥で突いたり・・・ああ・・・ああ・・・」

 

「おいベル!?ベルウウウウウウウウ!?」

 

「ベル様が倒れた!?」

 

「ジーク殿本当なんですか!?」

 

「ああ。読んでみろ命」

 

「はい・・・・・ふむふむ・・・・・・ふむふむ・・・・間違いありません!これは間違いなく!ヘスティア様は二億の借金をしています!?これは間違い無しのヘスティア様への借用書です!!」

 

 

借金は間違いない物だった。ヘスティアは俺たちが入る前ベル一人だった時にベルのためにヘファイストスに頼んでヘスティが借金を得てでも制作して貰ったようだな。制作費用がこの様だが

 

そして俺は新団員を希望する者達に向き合って、事情を伝える

 

 

 

「これでわかっただろう?俺たちは今弱小ファミリアよりも酷い、借金まみれのファミリアになったわけだ。それでもこのファミリアに入りたい者は居るか?」

 

 

「「「「「・・・・・・・・」」」」」」」

 

「賢明な判断だな。ここまで足を運んでくれた事も俺たちのファミリアを希望をしてくれたことは感謝するが、すまないが帰ってくれ。今後ファミリアの募集は一切しない。それでも入りたいなら物好きな者達のみだけだ」

 

 

当然そんな負担が大きいファミリアに入るわけもなく。全員一斉に門の外へ出て行った。二億ヴァリスの借金をしたファミリアに入るなど、本物の物好きだけだ。いくら俺と言う英雄が居てもそんな借金を毎度返さなくてはならない負担をするのでは冒険者としてもやっていけるはずないと全員帰ってしまった

 

でもダフネとカサンドラは残っていた

 

 

「何をしている?聞いての通り借金まみれのファミリアだ。まさかそれでも入る気か?」

 

「いや・・・でもねえ・・・・実はここまで来たのはいいけど」

 

「実は私たちの村は遠くてそう簡単に戻れないのよ。だからその・・・・帰るお金が・・・」

 

「はあ・・・・帰りを考えずに経験もあるからと俺たちのファミリアに加入する気満々だったんだな・・・・・・・もしまだ冒険者になりたいなら・・・ミアハ・ファミリアの所に行ったらどうだ?」

 

「ミアハ・ファミリア?あの薬舗の?」

 

「ああ。まだあそこは団員が一人しか居ないんだ。それにミアハは優しいからすぐに入れてくれるはずだ。あっちも多少は借金をしているが、ウチら程ではない。そこへ行ったらどうだ?宛がないならな?」

 

「そうだね、じゃあそうしようか、行こうカサンドラ」

 

「うん、またね・・・・ジーク」

 

「ああ。今度上手くミアハの冒険者になったら・・・一緒にダンジョンへ行くか?」

 

「ああ、それは助かるよ」

 

「お願いします」

 

 

そうしてダフネやカサンドラはミアハ・ファミリアの薬舗へ行った。まだ冒険者になる気があるならとミアハ・ファミリアを進めた。あそこはまだ一人しか居ないし。ちょうどいいからとそちらの方へ進めた

 

借金をしている俺たちのファミリアに入るよりはマシだと。そちらの方へ進ませた

 

 

「さて・・・・どういうことか・・・聞かせて貰うぞ?ヘスティア?」

 

「・・・・・はい」

 

 

そうしてこれから尋問が始まった。ヘスティアがいつからこんな借金をしていたのか。詳細となぜこのようなことをしたのか、これから彼女の経緯を聞く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまりベルは当時武器が無かった。そしてベルに合う武器を製作して貰うためにヘファイストスに土下座なりなんなりして、これを制作して貰ったわけか・・・」

 

「うん・・・・ごめん・・・黙ってて・・・」

 

「そうだな。これは俺たちに絶対に伝えなくてはならないことだ。なぜ黙っていた?」

 

「えっと・・・・・さっきの人たちみたいにやめるかと思って・・・失望されるかと思って・・・・」

 

「失望なら今した。君が黙ってなければな・・・・でも俺たちはやめたりはしない。特に俺はな。当時嘘つきと言われた俺を拾ってくれるのは君だけだった。やめるわけないだろう」

 

 

ヘスティアは今までこの借金を隠していたのは、俺たちが失望して辞めるかもしれないと黙っていたようだ。そんなことをするわけも無いだろうに。借金二億ヴァリスは確かに痛いが

 

それでもあのナイフが使えることには変わりはない。だからベルのためにももう買った物は仕方ない。だからこの借金も地道に返すしかないと判断する

 

 

「まあなんにしてもこうなった以上は仕方がない。ダンジョンの回数を増やして俺たちも・・・・」

 

 

「待ってくれ!!!それだけは僕がなんとしてでも払うよ!」

 

 

「二億ヴァリスだぞ?君が全部払う気か?確かに君にバイト代の給料は大体7万ヴァリスだったな。リリルカ。だいたい何年で払い切れると思う?」

 

「えっと。一ヶ月に7万ヴァリスなら一年で84万ヴァリスですから・・・・・・大体200年はかかりますね」

 

「だそうだ。君は俺たちが老死した後でも払い切ることを続けるのか?」

 

「うん!これは僕が得た借金なんだ!!君たちがなんと言おうと君たちに迷惑をかけずにこれは全部僕が払い切る!」

 

「ですがヘスティア様!いくらんなんでも二億ヴァリスをお一人で・・・」

 

 

「わかった。そこまで言うなら、それは主神である君に全部任せよう」

 

 

「ジーク殿!?ですがしかし・・・」

 

「ヘスティアがこう言うんだ。彼女なりの意地だろ。そこまで自分でなんとかしたいなら任せる。でも、もしも俺たちも払わないといけない事態が来た場合は許せよ?」

 

「うん!これは何がなんでも僕が払い切る!これは主神命令だ!」

 

「了解した。この件に関しては以上だ。新団員の募集は条件として物好きな奴だけにする。もちろんこの事はギルドに報告させて貰う。今日のようなことが起きてから困るからな。いいなヘスティア?」

 

「うん!それじゃあこの話は以上で解散!僕はお風呂に入らせて貰うよ!」

 

「ああ。ベルは今ヴェルフが看病をしている。あとで俺も行って起こしに行くから任せろ」

 

 

そうして。ヘスティアは部屋を出て行った。解決というほどではないが。残念ながら新団員はこのファミリアが借金を背負うファミリアだと苦労の絶えないファミリアでもいいと思う者だけを入れると決定した

 

そして二億ヴァリスを彼女に全部任せたことに関して。リリルカと命が意見を言ってくる

 

 

「どうして全部任せたのですか?」

 

「自分たちも手伝うべきでは・・・」

 

「確かにこんな大金彼女一人で払い切る事はできても長すぎる。200年なんて俺たちが長生きできるはずもない。俺たちも一緒に払うべきだし。ファミリアの評価としては最悪なものだ」

 

「ではどうしてお任せに?」

 

 

「それは彼女が主神としてできることがしたいと。最近ヘスティアも主神として何ができるのか、自分なりに探して率先して行動しているんだ。全部俺たちが頑張っているだけでヘスティア本人はこのファミリアには何もしてないと。彼女も主神として何をしてあげたらいいか。悩みながらも俺たちに恩返しをしようとしているんだ」

 

 

「ヘスティア様が・・・・」

 

「そんなことを・・・・」

 

「ああ」

 

 

確かに主神としてやる事は神によって仕事量が無い。

 

主神と言うのは大まかにファミリアの方心や眷属に恩恵とステイタスの更新をする事。あとはギルドに報告などの書類仕事。これは団長として俺がしている。そして主神はダンジョンに入る事は許されない。前みたいにダンジョンがモンスターを神を殺すためにイレギュラーを召喚するからだ。そう考えるとやる事は非常に主神は少ない。ヘファイストスやゴブニュみたいに仕事の神でも無い。竈の女神である。彼女は家事ぐらいしかできない

 

そんな彼女はずっと悩んでいた。俺たちは必死に戦っているのに自分は何もできない。そんな苦しい立場にいる彼女は何か恩返しできないかとずっと彼女はできることを探していた

 

 

「彼女なりに主神としてみんなに役立ちたいんだろう。まあその想いを強くさせてしまったのは、紛れもなく俺のせいだがな・・・」

 

「ああ・・・・」

 

「それは・・まあ・・・・」

 

「お前らもあんな想いはもう嫌だとは思うが、俺が一度死んだことで彼女も大きく後悔をしている。だからこそ今度は自分自身もなんとかできる事は俺たちに迷惑をかけずにしながらしたいのだろう。こればかりは彼女の好きにさせてあげよう。彼女が決めた事だ。俺たちがこれ以上言っても無駄だぞ?」

 

「どちらへ?」

 

「俺もベルの所へ行く。せっかく新団員が入れると期待したのにこの様だからな。起こして慰めに行く」

 

 

そうして俺も部屋を出る

 

一番に期待していたのはあいつだからな。慰めに行くと俺も出て行く。彼女やこいつらだって一度体験した。仲間が戦場で戦死する体験を。彼らも初体験したはずだ。それで嫌と思うほどの絶望を味わった。俺はもうとっくにそれを何度も経験した。おかげで心は感じずそれが当たり前と思うようになった。

 

でもベル達やヘスティアは違う。小さい頃からドラゴンを殺し続け。戦士として生きてきた俺とは違う。彼らは初心者だ

 

だからヘスティアももうそんな思いをしないようにこれから努力をする。本来なら俺もあそこで死んでいた。ヘルの助けがなければ。それがもし死んだとなれば・・・・大きな悲しみを生む。そして経験しもうしたく無いと努力する。死んだのは俺だがベル達に良い教訓だと思っている

 

 

 

「ヴェルフ。ベルの容態は・・・・・・起きていたか・・」

 

「おお、ジーク」

 

「ジークさん・・・あれからどうなりました」

 

「全員帰らせた。新団員は残念ながら無しだ。二億の借金はこれからヘスティアが全部返す。そう決まった」

 

「全部って・・・・二億ヴァリスをか?」

 

「彼女が決めた事だ。主神命令と言うわけで決まった。彼女がやると言った以上は好きにやらせる。それが団長としての判断だ」

 

「そうですか・・・結局新団員は一人も無しですか」

 

「そういうことだ。別にこのままの人数でも問題ない。全員頼れる仲間だからな」

 

「ジークさん」

 

「だよな団長・・・」

 

「今から風呂に入るのだがどうする?お前達は?」

 

「はい!」

 

「俺も行くぜ!」

 

 

そうしてベルの気持ちを慰めて全員男湯に入りに行く。女に弱いベルにとっては女性団員が入って欲しかったと思うが、借金のせいで無駄になったとベルも仕方なく諦めた。

 

少し気を引き締めようと風呂に入りに行く

 

 

 

 

新しいホームになってから三十人くらい入れるスペースのお風呂だった。だから三人しか居ないからなのかそれ以上物凄く広く感じる。本当はヘスティアが多く団員が来る予定をして設計したのだが無駄になり、今では泳いでも良いスペースとなった。三人しか居ないことにより

 

 

「にしてもやっぱりジークはいい筋力をしているな。ベルもだけど・・・」

 

「そんな・・・ジークさんの方が・・」

 

「戦っていればこうなる。もしくは・・・・修行をすればな」

 

 

お互い前から裸になって晒していたが、今更になって俺とベルの筋力が良いと言い出した。まあ確かにあれだけ戦っているし、ベルも筋力だって大きくなっている。むしろ俺は・・・・・傷が多い。体から血の匂いだってする。

 

強くなった分は体は傷と血で汚れているのだ。化け物になったに過ぎないと思うが

 

 

「そうか・・・・・なあジーク・・・聞いても良いか?」

 

「なんだヴェルフ?」

 

「ヘスティア様から聞いたんだが・・・・・前は戦争をしていたって本当か?」

 

「本当だ。ベルはもう知っている」

 

「うん。僕はとっくに・・・・」

 

「そうか・・・・じゃあ戦死した仲間も居るのか?」

 

「多くな。その中に・・・・・・フレイもな」

 

「男神まで・・・・・お前は辛くないのか?」

 

「こんな職業をしているんだ。慣れれば当たり前だと思い。最後くらい弔ってあげる。俺たちヒューマンは他の種族よりも命は短い、死ぬのは遅いか早いかだけだ。それが現実だと俺は知り尽くした」

 

「じゃあ・・・・・もう次にそれが出てもジークさんは耐えきれるんですか?」

 

「お前達が失ってもな。空っぽなだけはあるだろう?」

 

「本当に心が無いんだな・・・」

 

「じゃあジークさんは本当に自分の命に躊躇いが無かったんですね?」

 

「ああ。果たすためなら自分の命すら使う。犠牲無くして勝利は得られない。これが現実であり。これが俺のやり方だ」

 

 

失望したと二人は思うだろう。心が無いだけのことはあるはず。アルテミスの事件は完全に俺は死ぬつもりで果たすしか無かった。それが最善であり俺の成すべきことだった

 

軽蔑してくれても大いに構わない。それが正しいわけじゃない。人はいつでも最善を尽くす。人は無力であり。限界がある。そして俺は全てを経験して得た経験

 

だが

 

 

「だからと言って当たり前に犠牲を作る気は無い。もしもの場合のみだ。お前らを犠牲になどはできない。仲間が死ぬ光景を味わったからと言ってそれを当たり前にする気は無い。俺にだって耐えきれないものが今でもある。だからその全てを守るために俺は自分の命も使う。俺の言う犠牲とは自分のことだ。お前らを守るためならなんだってする」

 

「ジークさん・・・」

 

「そうかよ・・・・・じゃあ俺はお前を守る」

 

「そう言うと思った。お前ならなヴェルフ」

 

「僕も考え方は変わりませんよ。あなたを守る事は変わりません」

 

 

「そうか・・・・・・・・お前達もそう言うのか?聞こえているんだろう?ヘスティア?リリルカ?命?」

 

 

「「っ!?」」

 

 

隣に繋がっている。女湯からヘスティアとリリルカと命もお風呂に入っていて話を聞いているため、俺は大きな声で彼女達に聞いてみる

 

そして

 

 

「ええ!自分も!もうあなたを失うのは嫌です!」

 

「リリもです!あなたがその道を選ぶなら!リリもジーク様を守ります!」

 

「ジーク君がそこまで言うならこっちも君を守るまでだよ!!」

 

 

「だそうだ・・・・本当に俺は今度こそ良い仲間に恵まれたな」

 

 

犠牲を経験したベル達の得た答えはこれだ。もう絶対に次からは仲間を見捨てない。そして俺は仲間を守るためなら自分の命を犠牲にする。そして仲間は俺を守る。彼らの答えはこれだった

 

普通ならもう見捨てればいいのに。本当にお人好しな奴らだ。でもそれだけ頼りだ。失うことを恐れて守り続ける。

 

 

彼らが犠牲を眼にして得た答え。自分の命を玩具にするようだが、彼らが学べたなら良いと、やはり一度は犠牲して正解だったと、今になって思った

 

 

 

 

 

 

そして今度は夕食の時間になった。

 

そして反省会をする。アルテミスの事件を学習し、仲間が犠牲になったことの学習をして、そして今日に至るまで。借金したことやこれからの団員募集についてもまとめる

 

 

「大まかにまとめるぞ。まずはアルテミスの依頼ご苦労だった。皆・・・・・・辛い経験をしたと思う。だが。これで二度も味わおうとは思わないだろう。だから次は仲間を失わないように強くなろう。そして借金についてはヘスティアが全部払うと彼女が決めた。主神としての彼女の仕事だ。だがもしも状況の場合は俺たちも払う。ダンジョンの回数を増やして働く。そして新団員募集についてはギルドには二億ヴァリスの借金をしているとさっき報告した。これで俺たちに入りたがる奴は本当に物好きな奴だけだ。でもこう言ってはあれだが俺は必要ないとも思っている。なぜなら・・・・・・もうここにこんな俺を仲間として扱ってくれる。お前らだけで十分だからだ」

 

「ふふ・・・そうですね!」

 

「流石はジーク君だ」

 

「よく言ったぜ!」

 

「やっぱりジークさんはわかっています」

 

「ええ。自分たちはいつだってこうです」

 

 

そう言って俺たちはこれからの方針を決めて進む。新団員は残念ながら誰も居ないが、仕方ない。居ない居ないでこれから俺たちだけ頑張ればいい。これからまた大きくなるんだ。まだ長い先がある。でも今は勝ち取った平和を楽しもうと全員にグラスを持たせて

 

俺もグラスを持って宣言する

 

 

「まだこれから新たな戦いもあるかもしれない。外かダンジョンの中からなのか。俺たちのヘスティア・ファミリアの活動はこれからも大変になるだろう。でも他のファミリアもそうやってきた。そして俺たちは二度も世界を救った。今では俺も英雄になってしまった。地道に前を進もう。仲間と協力し合い。敵を倒して。またここで全員で楽しく食事をしよう。ここからこのファミリアを大きくして行こう。でも今は休息が大事だ。だから祝おう!全員グラスを持ったな?では・・・言おうか。ヘスティア・ファミリアの新たな船出に!!乾杯!!!」

 

 

「「「「「乾杯!!!!!」」」」」

 

 

乾杯した後。そうして俺と命がフルコースに作った料理を目の前に全員が楽しく食べる。いつもの食事に俺たちは楽しく過ごす

 

もう死んで無理だと思っていた。楽しい時間が今日も過ごせた。ヘルに助けられたのは不服だが。またもこんな楽しい時間が過ごせた

 

にしても女神に恋をされるなど。やはり生きていけば面白いこともたくさんあると理解した。そうなると母とフレイの言う通り生きていて楽しい時間を過ごせると。まさかこんな俺にまたも恋をする女神に出会すなど。やはりこの世界は広い

 

そしてこの世界で俺はこんな仲間想いの強い。絆で結ばれた者たちと一緒に居る。俺はこの世界でベル達と共に生きていく。

 

 

俺たちは大きな第一歩へと進んだ。そして俺たちはまた大きく前へ進むのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食事を楽しんでから30分後

 

ピンポーン!!

 

 

「ん?誰か来たようだな?」

 

 

突然食事を楽しんでいると言うのに、外からアナウンスが鳴った。誰かこんな夜遅くに誰か来たようだ。すぐに行こうと俺は自ら出ようとするが

 

 

「ジーク殿。自分が行きますよ」

 

「ああ。じゃあ頼む命」

 

 

命が代わりに出ると言って、俺は彼女に任せた。こんな遅くに訪ねてきた人は誰だろうかと命が尋ねる

 

 

「はいはい・・・誰ですか・・・・って千草殿?」

 

「ああ。命」

 

 

訪ねてきたのはタケミカヅチ・ファミリアの団員であり命の友人であるヒタチ・千草。彼女が一人でヘスティア・ファミリアのホームにやってきた

 

 

「千草殿!どうかしたんですか?もしよかったら今夕食の時間ですから一緒にどうですか?」

 

「ありがとう。でもそうじゃなくてね命。聞いて!」

 

「なんですか?」

 

「実はその・・・・・・・・・」

 

 

千草が一人でここに来たのは意味があった。そのことを命本人だけにその場で伝えた。それを聞いた命は

 

 

「そんな・・・・まさか・・・・・歓楽街に・・・」

 

 

命はその事を聞いて彼女は今後調べることを千草と計画した。千草が伝えた事は命にとって大事な事だった。

 

その内容は歓楽街に関係する

 

 

 

 

そこに居る。小さな狐人。美しくて清らかなか弱い少女。

 

その少女と関係する事件がまたも俺達は巻き込まれることに気づかないまま。この月下で楽しく平和を過ごし、三日月から満月に変わる季節へと成り行くと当時に

 

新たな戦いがもうすぐそこまで来ていた

 

 

ヘスティア・ファミリアにまたも新たな事件が始まろうと火蓋が吹くことになった




月女神の狩人編 END

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