ニーベルンゲン・シックザール〜竜殺しの英雄譚〜   作:ソール

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18階層 二日目の昼

 

翌日

 

朝早く起きて十人分程の料理を用意し。朝食を簡単に済ませる。その後パンドラ・ボックスだけを持ち。俺はラフな格好をして。ヘスティア・ファミリアだけでなく。桜花たちやアスフィやリューやアイズたちと共にリヴィラの街に行く

 

リヴィラの街

 

迷宮第18階層に存在する冒険者たちが独自に作った街。アイテムの販売や戦利品が法外な価格で取引されているが、それでも持ちきれないアイテムの換金や非常事態に仕方なく立ち寄るなど利用者は多い。

 

ロキ・ファミリアもここを何度か利用していた

 

 

「ここが・・・冒険者が作った街なんですね?」

 

「ああ。二年前は俺たちも利用していた」

 

 

ベル達は初めてこの街を観光するため、ヘスティアにも色々と案内する。ヘスティアは神なため。ダンジョンに入ることはできないが、この際仕方ないと思って。一緒に中を案内する

 

中に入ると。冒険者自身が屋台を出したりなど。居るのは冒険者しか居ない

 

 

「本当に冒険者が店を出しているぜ!」

 

「でも値段が高いぞ?」

 

「え?・・・・・げ!?砥石が1万ヴァリス!?」

 

「こっちはバックパックが一万五千ヴァリス!?」

 

「宿屋もあるが物凄く高いんだ。今の俺たちじゃあ利用できない・・・・・・ん?」

 

 

そう三人に説明していると、ヘスティアが香水店に眼を付けたのか。買おうとしているのか。何か悩んでいる

 

 

「欲しいのか?」

 

「え?ま、まあね・・・」

 

「それが欲しいんだな?」

 

「え!?買ってくれるの!?」

 

「君にはお礼がある。高いが俺の金で買えない額じゃない。一つ頼む」

 

 

「あいよ。ところであんた。もしかしてジーク・フリード?」

 

 

「ああ。ここでは俺のことも知らせてあるんだな」

 

 

突然屋台のアマゾネスに俺のことを聞かれた。どうやらここでも俺が嘘つき冒険者だってことを知らせているようだ。どうせまた蔑まれるのだと何も言い返さないようにするが

 

 

「へえ・・・・・いい顔をしているじゃない。あの嘘つき冒険者がここまでいい男だったとはねえ・・・・・ねえ?この後一緒に遊ばない?」

 

「遠慮しておく」

 

「ジーク君。イケメンだから逆ナンされているよ?」

 

「逆ナンなのか?」

 

「ほら。周囲にいる女性冒険者が君を見ているよ?」

 

「・・・・・・・そうみたいだな」

 

 

ヘスティアの言葉を聞いて、周囲を見渡すと。女性冒険者が俺の方を見ている。若干顔が赤い。逆ナンされて嬉しい奴なんて誰も居ない。むしろ困るだけだろう

 

 

しかも

 

 

「おい。アイズ?ティオネ?ティオナ?アスフィ?リュー?何をそんなに睨んでいるんだお前達は?」

 

「・・・・睨んでない」

 

「じ、ジークの癖に生意気よ!」

 

「ぶー。睨んでないもん」

 

「気のせいです。私は睨んでいません」

 

「・・・・・・とにかくこれはシルに報告します」

 

 

「・・・・・・」

 

「ジーク君。大人気じゃないか?」

 

「気のせいだろ」

 

 

なんで知人にまで睨まれるのか。わかったものじゃない。

 

だが理解できるのは一つ。俺のスキルの一つである『フレイ・フェロモン』だ。あれが原因で周囲に居る女性冒険者が俺に魅了されている。だからアイズ達は他の女性達に俺がチヤホヤされていると勘違いしているのか、俺に嫉妬しているようだ

 

にしても恋愛に興味ないアスフィとリュー。他の者に恋愛を向けているティオネ。恋愛がイマイチわからないアイズとティオナまで魅了するなんて、本当にとんでもないスキルだ

 

いつ刺されるかわかったものじゃない

 

 

「ん!誰かと思えばジーク・フリードじゃねえか!?」

 

「誰?」

 

「ボールス。言うならここのボスと言うところだ」

 

 

女性冒険者たちが何やら集まっていることに気づいたのか。ここのボスである『ボールス』と言う左眼に眼帯をしたヒューマンが俺に話しかけてきた。こいつは金の汚い奴ですぐレベルが自分より下の奴から金を巻き上げようとする

 

おそらく俺も金を巻き上げようと何か言ってくるのだろう

 

 

「へえ・・・・なんでお前がここに?もしかしてまた冒険者をやっているのか?」

 

「ああ。一ヶ月で結成したばかりのファミリアにな」

 

「ほう・・・お前がな。てことは俺たちの街は初めてだな?ちゃんと金は持ってきているんだろうな?」

 

「お前。あいつらに金を巻き上げようとしたら実力行使でお前を始末するから覚えておけ」

 

「ほう?レベル3の俺に?勝てるのか?」

 

「俺はレベル4だ」

 

「・・・・・・・は?」

 

「俺はレベル4だ」

 

「嘘だろ!?二年前はレベル1のままだったのに、あれから二年でレベル4に!?」

 

「ベルたちに変なことを吹き込んだら容赦しない」

 

「ぐ!?・・・・・・・ち!わかったよ!」

 

 

「なんだい!ウチのジーク君にちょっかいかけて!」

 

「あいつはあんな奴だ」

 

 

ボールスは相変わらず自分より下のレベルの奴らから金に容赦ない。ハッキリと言って。ただのクズだ。俺がレベル4と言った瞬間。怯えて自分の仕事に戻って行った

 

 

「どうしたんですか?揉め事ですか?」

 

「心配ない。ヘスティアが欲しい物があると言って買ってあげただけだ」

 

「いいだろう!いい香水だぞ?」

 

「お前たちも買ったんだな」

 

「高いけどな!この砥石!」

 

「バックパックも必要でしたから二万ヴァリスで買いました」

 

 

金が足りないとは言え。必要なことには代わりないからな。何をしても全て冒険者が自力で揃えているのだから。どんなに値引きを頼んでも安くはならない、だからそれに似合った金額が何万ヴァリスである

 

 

「凄いですね!換金も頼めて。武器の砥ぎも頼めて便利な街です!」

 

「それも全部高いがな。この街の観光はもう済んだか?」

 

「はい!」

 

「俺もだ!」

 

「リリもです!」

 

「僕もだよ!」

 

 

「よし。特にやることが無いのなら。このままテントに戻るか?」

 

「そうですね」

 

「特にやること無いなら戻ろうか?」

 

 

「うん。アイズたちはどうする?俺たちは戻るぞ?」

 

 

「ジーク・・・・・私たちのテントに来ない?」

 

「遠慮しておく。俺が行ったらお前らの団員が拒む。俺はお前らにとって敵みたいな者だ。悪いが俺は自分のファミリアのテントに戻らせてもらう」

 

「ああ・・・・」

 

「アスフィたちはどうする?」

 

「私たちも特にやる事はないですので、ジークのテントに帰らせて頂きます」

 

「またなアイズ?」

 

 

俺たちはやることも無いため自分のテントに帰る。アスフィや桜花たちも俺たちのファミリアに帰るが、流石にアイズたちまでは自分のテントもある限り。俺たちのテントに来る事はなかった

 

あまり他のファミリアとは距離があると言うからな。あまり俺たちに加担をすれば他の連中がうるさいからな

 

 

 

 

 

そしてテントに戻れば俺はまだ呼んでない精霊も含めて。俺が召喚できる精霊を全部呼ぶ。ヘスティアが召喚できる精霊を全部見てみたいと。俺は主神の命令に従い。サラマンダー・グリフォン・そしてまだ召喚していない『林の精霊グラニ』と言う水色の馬を召喚する

 

 

「来い!」

 

『『『主様!お呼びで!!!』』』

 

「すまない。ヘスティアの頼みで全部の精霊を見てみたいと言われてな。特に呼んだ理由はないが、俺の団員や主神と良い交流をしてくれ」

 

『サラマンダー?グリフォン?彼女たちは主の団員と主神ですか?』

 

『そうですグラニ。貴方はまだオラリオに召喚されて居ませんでしたね?』

 

『全員ってわけじゃないが別のファミリアも居る。悪い奴らではないから心配するな』

 

『そうですか。私はグラニ。ただの馬ではあるが。素早く走ることができる。よろしくお願いします。主の団員とその主神』

 

「うん!僕がジーク君の主神!ヘスティアだよ!」

 

「僕はベル・クラネルです!」

 

「リリルカ・アーデと言います!」

 

「ヴェルフ・クロッゾ。よろしく頼む」

 

『よろしくお願いします。主?団員以外にも居ますが、ロキ・ファミリアでは無いですよね?』

 

「お前までそう言うことを言うのか?」

 

『大丈夫ですグラニ。彼らはヘルメス・ファミリアとタケミカヅチ・ファミリアとどこのファミリアは知りませんが、ロキ・ファミリアではないエルフです』

 

『そうかグリフォン。我ら精霊。よろしくお願いします』

 

 

「あ、ああ・・・・」

 

「ジーク?これ本当に!?あの赤いトカゲのようなモンスターも含めてですか!?」

 

「すごい・・・・火の精霊サラマンダーだ」

 

『ん?ほう?ヘルメスか?』

 

「初めまして火の精霊サラマンダー。俺はヘルメス。よろしく頼む。あの『四大精霊の一角でもある』サラマンダーまで召喚できるなんてすごいね?ジーク?」

 

「精霊召喚師として当然だ」

 

「ジーク!?本当にこいつら精霊か!?」

 

「グリフォンは昨日見ているから分かるだろ桜花?モンスター みたいな姿をしているがこの三体は立派な精霊だ」

 

「すごいですね・・・」

 

「初めてみました・・・」

 

 

「そうか。グラニ。ここは広いから走りたくないか?」

 

『走りたいです!』

 

「よし。命。千草。グラニの背中に乗るか?」

 

「え!?この馬のような精霊の背中にでござるか!?」

 

「いいの!?」

 

「グラニはそう言う精霊だ」

 

 

俺はグラニが走りたがりの精霊だってことを知っているため、グラニの口元にパンドラ・ボックスから馬具を取り出してグラニの口に装着する。そして紐を背中に通す

 

 

「いいぞ?」

 

『はい!命様。千草様。どうぞ』

 

「で、ではお言葉に甘えさせていただきます」

 

「あ、待って命!」

 

 

俺の言葉に甘えて、命はグラニの背中に乗り紐を掴む。命の後ろに千草が乗り。両手を命の腰に両手を回す。二人が背中に乗ったことを確認すると立ち上がる

 

 

「グラニ。二人を振り落とさない速度で走れ。このテントの周囲だけだ。他の冒険者に見つかると、モンスターと勘違いする。いいな?」

 

『はい!わかりました!』

 

「うん。行け!!」

 

『行きますよ二人とも!!』

 

「おおおおお!!」

「うわあああ!!」

 

 

そうしてグラニは速度は前回ではないが、テントの周りをグルグルと少し早めに走っている。二人は極東人だから馬術もしているかと思って乗せたが。どうだろうか

 

 

「楽しいですな!千草殿!」

 

「うん!懐かしいよ!極東の地で馬を走らせているみたい!」

 

『おや?随分と慣れていると思っていましたが、お二人は極東人でしたか?』

 

「そうでござるグラニ殿!拙者たちの国は馬術も習っていまして!」

 

「命と一緒によく馬の駆けっこしていました」

 

『そうですか!ではもっと速度を上げましょうか?』

 

「お願いします!」

「うん!私も大丈夫!」

 

『行きますよ!!』

 

「おお!凄いです!」

「極東の馬より速い!」

 

 

どうやら楽しんでいるようだな。やはり極東では馬に乗って戦うとも聞いたことがあるからな、懐かしいのか馬に乗る快感を味わっているようだ

 

 

「悪いな?あの二人を乗せて?」

 

「構わないぞ桜花。そもそもグラニはそう言う精霊なんだ」

 

『主?私もこの階層を飛んでみたいのですが?』

 

「グリフォンもか?18階層は天井も広いからな。いいぞ?」

 

『ありがとうございます!』

 

 

グリフォンも昨日リリルカと17階層で散々飛んだにも関わらず。今度はここでも飛んでみたいようで、グリフォンにも馬具を口に装着させる

 

 

「誰かグリフォンの背中に乗りたい人は居るか?」

 

「僕乗ってみたい!」

 

「ヘスティアか、一人じゃあ心配だな。あともう一人誰か乗ってくれないか?」

 

「リリはもう昨日で味わったので。いいです」

 

 

「うむ。それじゃあアスフィ?君が行ってきな?『タラリア』で何度も空を飛んでいるでしょう?」

 

「え!?私がですか!?ヘルメス様!?」

 

「アスフィか。頼む。ヘスティアを一人にしたくない。君も乗ってくれ」

 

「わ、わかりました。私が精霊の背中に乗る日が来ようだななんて、それも天空の精霊グリフォンの背中に乗れるとは」

 

「特に何もしなくていい。飛龍に飛んでいる気分で楽しんでくれ」

 

「わかりました。グリフォン。よろしくお願いします」

 

「頼むよ!グリフォンくん!」

 

『はい!行きますよ!』

 

「「うわあ!!」」

 

 

そうしてヘスティアはアスフィの後ろに乗り。グリフォンと少し遠くの方まで飛んで行った。ヘスティアも魔道具で空を飛んでいるアスフィでも楽しんでそうだ。飛龍とは違う程の速度で飛ぶことができるからな。楽しめると思うな

 

 

「リューちゃんは良かったの?」

 

「私はいいですヘルメス様。それよりも・・・・・・ジークさん?本当にこの方があの『火の精霊サラマンダー』ですか?」

 

「ああ、話してくるといい」

 

「はい」

 

 

エルフにとって、精霊の中で一番優れている精霊が居る

 

それが『四大精霊』だ

 

火の精霊サラマンダー・水の精霊ウンディーネ・土の精霊ノーム。そして名前は知らないが『風の精霊』。この四人の精霊が一番優れており。精霊の王でもあったフレイの忠実な部下でもあり。エルフにとってフレイと同様に称えなければならない存在

 

リューにとっても是非とも崇拝しなくてはならないことだからだ

 

 

「サラマンダー様。私はリュー・リオン。ジークさんの友人であります」

 

『ほう。エルフの者か。では一つ聞きたい』

 

「なんでしょうか?」

 

『ロキ・ファミリアの者では無いだろうな?』

 

「いいえ。違います。私は元冒険者です。今はある酒場の店員です」

 

『そうか、なら安心した』

 

「サラマンダー?お前もあいつらに敵意を向けるか?」

 

『申し訳ありません主。我らはそれでも許せないのです。昨夜の話をグリフォンから聞いたのですが、正直許せません』

 

「そうか・・・・・・だが俺の指示が無い限りは攻撃するな?わかったな?」

 

『承知しました』

 

 

グリフォンの奴。昨夜フィン達と話していたことを他の精霊に話したな。俺は気にしなくていいと言ったのに。敵として認識するのは。あいつらが俺に何かをした時だけでいいのだがな

 

まったく忠誠心の高い奴らだ

 

 

「ロキ・ファミリアにはあのリヴェリア様も居るのですよ?それでも敵として認識しますか?」

 

『するな。我らはもはやエルフはともかく、ロキ・ファミリアに属する者やその主神も含めて。我らの主を疑った者達を決して許さない』

 

「そうですか。私としては信じられません。あのリヴェリア様までジークさんを疑うなんて」

 

「やっぱりロキ・ファミリアの団長と昨夜揉めたのか?」

 

「いや。俺の素姓のことを話していただけだヴェルフ」

 

「あのハイエルフのリヴェリアはショックを受けていたけどね?」

 

「ショック?」

 

「フレイの幼馴染だった俺を疑ったことの後悔だベル。それはもうエルフの一族にとってデカイ痛みだからな。行方不明になったフレイにまさか幼馴染が俺だったなんて。それはフレイの信用に響くことだ。後悔以外無いだろう。これがエルフの祖国に知られたりでもしたら大変だからな。フレイの幼馴染を傷付けたことがフレイの信頼に繋がってしまうんだ」

 

「なんか・・・可哀想ですね」

 

「仕方ない。知らなかったとはいえ。自分のした行いは自分で決めたことなんだからな」

 

「昨夜。彼女泣きそうだったね?」

 

「だとしても。もう自分のしたことだ。認めるしかない」

 

 

リヴェリアには認めることしかできないだろう。一度絶った縁を戻すのは難しいからな。これで全員のエルフでは無いが、エルフの一族と精霊達は結託したも当然の形になってしまった。とは言っても精霊は俺の故郷だけに居る訳じゃない。各地の世界にも精霊は居る。そいつらはリヴェリア達の味方になれるだろう

 

だが・・・・四大精霊とはもう無理だろうがな、風の精霊は知らないが

 

 

『ところでリューよ?貴様一人でここに来たのか?別のファミリアと共に?』

 

「はい。私は元冒険者ですので、今回はジークさんが危険だと聞いて居ても立っても居られずに他のファミリアと共にここに駆けつけました」

 

『ほう・・・・・もしや主様に気があるのか?』

 

「え!?いや・・・・その・・・」

 

『ハハハハハ!!これは驚いた!やはり主様は特定ある女性に愛されているではないか!』

 

「やめてください!ジークさんの前で!」

 

 

「なにやら楽しそうだな?」

 

「でも恥ずかしがっているみたいだぜ?」

 

「リューさん。サラマンダーさんに何か恥ずかしいことを言われたんじゃないんですか?」

 

「あいつはそんなデリカシーの無い言葉は言わないはずだがな?」

 

 

 

「あれれ?桜花君もヴェルフ君もベル君も・・ジーク君もわからないのかい?」

 

「何がだヘルメス?」

 

「いや!なんでもないよ!」

 

 

「?」

 

 

ヘルメスが何を言っているかは知らないが、確かにリューは顔が赤く何やら恥ずかしがっている。サラマンダーは情熱的な精霊ではあるが、紳士だったはずだがな。何か困るようなことを言われたのだろうか

 

 

「おお!居た居た!おーいヴェル吉!ジーク!」

 

「ん?げ!?椿!?」

 

「ん!椿か!」

 

 

「おやおや主神様まで居るとは。フィンの言ったことは本当だったか」

 

「フィン達の遠征に付き合わされていたのか?」

 

「ああ、そんなとこだ。それにしても二年ぶりだなジーク!なんか変わったな?」

 

「そういうお前は変わらないな?」

 

「手前は変わらん。お主が変わりすぎたんだ」

 

「かもな・・・」

 

 

彼女の名前は椿・コルブランド

 

ヘファイストス・ファミリア団長。極東出身のヒューマンとドワーフの間に生まれたハーフドワーフの女性。ステイタスはLv.5。黒髪赤眼で、左眼に眼帯を装着している。

 

何度かアイズの武器製作を断っていた。だからその時に面責している

 

ヴェルフに用があるようだが。ヴェルフは嫌そうな顔をしている。苦手なようだな。まあこいつは無鉄砲と言う強引な奴だからな。それが原因で嫌っているのかもしれない。腕がいいのにな

 

 

「何かヴェルフに用があるか?」

 

「まあな、実は・・・・・・うお!?なんだあのトカゲは!?」

 

「敵じゃない。俺の精霊だ」

 

『ん!?主!』

 

「待てサラマンダー。敵じゃない」

 

『ん!ご友人ですか?』

 

「そうだ。心配するな。敵じゃない」

 

『そうですか、では・・・・あの遠くに居るエルフ二人もですか?』

 

「ん!アリシア。レフィーヤ。・・・・・椿?お前か?」

 

「ああ、あの二人がどうしてもジークとヴェル吉に話をしたいそうだ」

 

「俺に!?」

 

「俺とヴェルフと言うことは、精霊関係だな?」

 

『主?まさかとは思いますが・・・』

 

「ああ、椿は違うファミリアだが。あの二人はロキ・ファミリアだ」

 

『ロキ・ファミリア・・・・エルフでありながら・・・・またしても!』

 

「やめろ。敵じゃない。様子を見ていろ」

 

『わ、わかりました』

 

 

椿が連れてきたエルフ二人。レフィーヤ・ウィリディスとアリシア・フォレストライト。ロキ・ファミリアの団員にして。かつて俺の仲間

 

レフィーヤは俺を信用し、アリシアは俺を疑った者。サラマンダーは酷く警戒している。

 

ヴェルフは精霊に血を分けてもらったことの事情。椿が喋ったことで知ったのだろう。俺は多分リヴェリアから昨夜のことを聞いて。俺がフレイの幼馴染だってことを知ったのだろう。リヴェリアに言っておけば良かったな。だがもう一斉に神に知れ渡っているから今更言ったところで手遅れだがな

 

 

「ジーク・・・・・」

 

「久しいなアリシア。レフィーヤ?一応聞くが用はなんだ?」

 

「烏滸がましいかもしれませんけど。ジークさんがあのフレイ様の幼馴染だったこととヴェルフさんのクロッゾの魔剣について話を聞かせていただけませんか?」

 

「やはりな、何度も説明するのが面倒だが。俺は構わない。ヴェルフは?」

 

「俺もいいぞ」

 

 

「わかった。話をする。サラマンダー!何もするな!」

 

「ロキ・ファミリアの私の同胞ですか?」

 

「ああ。リューも何もするな。穏便にいきたい」

 

「わかりました」

 

 

「あの・・・・そのトカゲのモンスターはもしかして・・・」

 

「サラマンダーだ。モンスターじゃないから安心しろ」

 

「え!?サラマンダー!?」

 

「あれが!あの四大精霊の一角!」

 

「敵じゃないから安心しろ。ただ変なことを言うと暴言を受けるぞ?」

 

「あ、そうですよね・・・・・・」

 

「簡単に説明する。長いからな?・・・」

 

 

俺たちはテントの前にテントの中から折りたたみ式の椅子や机などを出して、机を囲むように全員椅子に座る。また焚き火をしてお湯を沸かして、紅茶を作り全員分提供する

 

それでから長い話を始めてフレイのことを話す。リヴェリアにもそうだったが、リューはともかく、いくらこいつらでもフレイが亡くなったことは話すことはできなかった。今にでも話したら泣き出しそうだからな、あえてそこは言わなかった重いだろうと。もちろんヴェルフもクロッゾの魔剣についても話した

 

クロッゾの魔剣は過去にエルフの森を燃やした経歴がある。アリシアはそれを酷く憎んでいるが、だがそれは誰かがクロッゾの魔剣を買ってそれを使ってエルフの森を燃やしたため別の者の責任であり、アリシアが彼を恨むことはできず、そのまま彼の言葉を話を言わずに聞き入れていた

 

レフィーヤはそれほど睨んでもいない。あまり実感が無いのか。それとも今更恨んでも仕方ないのか。レフィーヤは恨むような感情はして無いように見える。

 

 

一番重症なのはアリシアの方

 

ハッキリ言ってこいつは思い込みが激しいと言うか。鵜呑みにしやすいから今まで疑ったものや信じてたものが全部嘘だとわかった瞬間、申し訳無さそうな顔をしている

 

ヴェルフのクロッゾの魔剣に関しては。恨む相手を間違っている。クロッゾの魔剣についてはクロッゾの一族は『魔剣を作っただけ』であって、自分で使用してはいない。

 

でも彼らの一族は鍛治師の家系。鍛治師として当然のことをした。それが魔剣を作っただけであって。それを使って悪事をしようとはしていない。問題はその買い手がエルフの森にそれを使って放った者。製作者に罪は無い

 

それにクロッゾの魔剣はヴェルフの言う話では。少し使っただけで砕けてしまう程脆いらしい。そんな魔剣をヴェルフ本人は作りたくないようだ。所有者を残して砕ける魔剣など、そんなの魔剣とは言わず。鍛治師としても武器とは言えないものだ

 

だからヴェルフは今まで客は腐る程居たようだが。それを断って今では客寄せのない鍛治師として、ヘファイストス・ファミリアの団員にも見放されて。今までパーティーは組めない状態だったらしい。ギルドにもパーティーを組める相手を探すようにも頼んでは居るが、それでも居なかったらしい。たまたまベルが彼の防具を買ったことから、俺が入団する前にリリルカの三人でダンジョンに入っていたらしい

 

ともあれ彼は彼で、クロッゾの魔剣に関して真剣に向き合っている。恨む相手では無い

 

 

 

そして俺の方は・・・・・・・・・・言うなら後悔だろう

 

 

俺が変哲もない男だと思っていた。アリシアにとっては俺のことはどうでもいいと今まで思っていたかもしれないが、

 

それがまさか

 

自分達エルフの一族が崇拝し崇める存在、エルフの国家系ファミリアの主神

 

行方不明になった豊穣の神フレイの幼馴染だったなんて知るはずも無いだろう。今まで行方不明になった訳が俺を一人前の精霊の騎士にするために、今まで俺の兄として俺を育ててきたなんて、アリシアも知る筈もない。リヴェリアでさえ俺の故郷の詳細も手掛かりも無かったんだ。誰も知る筈が無い

 

それだけじゃない、エルフに友好を結んでいると言っても過言ない精霊の主となって、精霊達が俺に仕えているだなんて信じられる訳も無い

 

俺としては厄介と思うのは、少なくとも俺の故郷に居る精霊はロキ・ファミリアを好ましく思っていない。エルフにとって精霊に疑いを得られる事になるのは絶望もいい所だろう。彼らは生活の中で多くの精霊に助けられても居るのだから、それを助けるように言ったのが精霊の主にして、王でもあったフレイ

 

フレイはエルフだけでなく、精霊の王でもあった主神。精霊たちにおいてもフレイのことは崇拝している。

 

そしてフレイが居なくなった今。俺が後継者として『精霊の主』になった

 

 

なにもかもが疑いをしたことで、自分達が築きあげてきた関係が絶ってしまった。フレイや精霊との関係を。フレイはもう居ないから何も言うこともできないが、精霊たちは酷く彼を恨んでいる。

 

あの時信じていればこうはならなかったと、アリシアは酷く後悔しているだろうか。彼女の言葉を聞いていないからわからない

 

 

「以上だな。それでどう思うんだ?」

 

「ジークさんは・・・・・・ロキ・ファミリアに入団してから。どうして私たちにフレイ様の幼馴染だってことを言ってくれなかったんですか!?」

 

「言う必要が無いだろう。お前たちに関係ない事を話す気は無い。そもそも俺はフレイがエルフの主神だったことはロキ・ファミリアをやめた後に知ったんだ。知ったとしても俺は特別扱いされるのが嫌だったんだ。俺はそんなの関係なしに一人前になりたかったんだ」

 

「関係ないって・・・・」

 

「関係ないだろう?それにアイズやティオナやラウルはともかく、それ以外はあまり俺の話をまともに聞いてくれなかったからな。それでどうやって素姓を話せと?」

 

「・・・・・・そうね。あなたの言う通りだわ。団長達はともかく、私はあなたの事をあまり相手にしていなかったわ」

 

「お前はそうだろうなアリシア。少し会話したけで『ああ。こいつはこういう性格』だってわかるからな」

 

「ジーク・・・・・本当にごめんなさい」

 

「謝らなくていい。疑うか信じるかは聞かれた本人の自由だ。それ俺が見込み無いと疑われた。それだけのことだ。それに今更謝られれても嬉しくない。優しい言葉を貰っても癒しにもならない」

 

「・・・・・・・」

 

「ジークさん。どうにかして私たちの所に戻ってくれませんか?」

 

「本気で言っているのかレフィーヤ?あれだけ散々な事を言って戻れる訳ないだろう?それに俺が自分で決めてやめたんだ。戻る気は無い。一度絶った縁は戻らない。これが当然だ。レベル3のお前なら分かるだろう?それくらい・・・・いくらお前がリヴェリアの弟子で世間やいろんな事が分からないからって、人間関係くらいは分かるだろう?」

 

「ああ・・・・そうですよね」

 

「戻ったとしても、ベートとティオネが否定する。もう戻れない俺とお前らは別のファミリアだ。フィン達だって受け入れている。俺とお前らの関係はここまでだ」

 

「私たちは・・・・・昔みたいに戻れないんですね」

 

「戻れない。俺はもう別の道を選んだ。別に俺が居なくても。お前らはお前らなりのやり方で生きていけばいい。一度絶った縁は戻らないが。それでも今繋がっている縁だけでも大事にしろ」

 

 

アリシアはもう俺に言い返すことは何も無い。レフィーヤはまだ俺の居なくなったことへの後悔がデカイ。信じてくれたとは言え。何もできなかったと後悔している

 

自分で決めたこと。そして自分が決めて俺を疑った

 

全て一度決めたこと。今になって引き返すことなんてできない。現実を否定すぎるにも程がある。どんな理由があろうと俺とあいつらの関係はこれまでだ

 

 

精霊の関係を取り戻したいなら、もっとそれ以外の成果を見せるしか無い

 

 

「俺から何も言うことはない。ヴェルフは何か言いたいことはあるか?」

 

「いや・・・・・特に無いな。俺もクロッゾの魔剣については散々な事をいろんな奴らに言われたからな。俺もこの事は受け入れているし。今更こいつらに文句を言ってもどうしようも無いからな」

 

「そうか・・・・・お前らはまだ何か言いたい事はあるか?」

 

「・・・・・・私はもうありません」

 

「・・・・私は一つある」

 

「なんだ?アリシア?」

 

 

「フレイ様は・・・・・今どこに?」

 

「・・・・・・」

 

 

やはり聞いてきたか

 

当然だと思っていたが、伝えたら・・・・・・多分とんでもないことになると思う。ヘスティアから主神達には亡くなったと多分伝えていると思うから今になって嘘をつく必要が無いと思うが

 

今そんな言葉を聞いても受け止めきれるかは分からない。でもフレイの言われた通りに亡くなった事はエルフ達には話さないようにて欲しいとも言われているからな。リューは聞かれたから仕方ないとして、こいつらの精神力じゃあ弱そうだから、言ったところで余計気が重くなるだけだろう

 

 

「教える事はできない。これはフレイの頼みだ」

 

「そう・・・・・わかったわ」

 

「話はこれで終わりでいいか?そろそろ昼の支度をしたい。遅くならない内にな?」

 

「はい、お話をして頂きありがとうございました」

 

「ああ。それとこの事は広めるなよ?一々お前達みたいに説明しないとならないからな」

 

「わかったわ・・・・・」

 

 

そう言って俺の頼みを聞いて、二人は自分たちのテントに帰っていく。穏便にはいけたと思うが、二人にとっては気が重いだろうな。だが事実だ。こればかりは受け止めて貰わなくては困る。事実を受け止めなければ前は進めない

 

 

「あれで良かったのかジーク?」

 

「良いも悪いも無いだろう椿。もう俺はロキ・ファミリアをやめたんだ。距離を置くのは当然。もう友人と言うことすら関係があやういほどもう俺は赤の他人だからな」

 

「寂しい事を言う奴だな・・・」

 

「お前もそろそろ自分のテントに戻れ。お前達と話は終わった。俺たちは飯にしたい。あいつらもそろそろ戻って来る頃だからな」

 

「節操もジークの飯・・・・・美味いとアイズから聞いた。食べてみたい」

 

「俺の?別に食う分には良いが・・・・・・・なんかヴェルフが嫌そうだぞ?」

 

「そうだ!お前はあっち行け!!お前はあっちのファミリアの遠征に頼まれたろ!早く帰れ!」

 

「いいじゃないかヴェル吉!拙僧も食べてみたいのだ!」

 

 

「別に構わないが。静かにしろよ?」

 

 

アイズ達から俺の作る飯が美味いと椿に広めたようだ。誰かに言うのは辞めて欲しいのだがな、誰これ構わず食べたいとひつこく言ってくる奴がこいつみたいに出て来ると思って気が知れない

 

別に作るのはいいが、なんだか食事系ファミリアみたいに扱われそうで恐ろしい。人数分の食事も作るのも大変だからな。まあ今回は客も多くいるという事でついでと思って提供するとしよう

 

それにたかだか一人増えたほどだからな全然問題ない

 

 

 

 

 

 

 

 

そして命と千草を乗せたグラニが帰ってきた。その後ヘスティアとアスフィを乗せたグリフォンが帰ってきた。その頃にはもう食事の支度はできていた。桜花やヘルメス達が居て助かった。おかげで食器の運びや机の準備も省けた

 

椿は軽く、ヘスティアに挨拶をして、一緒に食事がしたいと要件を言った

 

 

そして今日の昼食のメニュー

 

 

『豚汁』

『握り飯』(中身は焼肉)

 

 

メニューは少ないが量を多く用意した。実はこのメニューにしたのも理由がある。それは桜花達タケミカヅチ・ファミリアや椿に関わる料理

 

客人に招くにしては合っている。せっかくの客人には持て成しが必要だからな

 

これがなんなのかもわかる

 

 

「ジ、ジーク殿!?こ、これはもしや!」

 

「豚汁!?」

 

「と『おにぎり』!?」

 

「なぜジークが極東の料理を知っているんだ!?」

 

 

「おにぎり?握り飯のことか?俺の父親はよく多くの国を旅していたらしい。そしてその国の料理を知って自分で作っていたんだ。そのレシピを書物に書いてあって俺もその書物を読んでその通りに作った」

 

 

エルドフリームニルがそれに合うような食材がたまたま出たため、その料理が一番いいと思い。俺は極東料理を提供する。桜花達は極東出身。椿もドワーフのハーフだがその半分は極東出身の母。この料理の方が合っていると思い。客人である椿のために出した

 

 

「おお!うまいぞ!おにぎりの塩加減も!中に入っている肉に掛かっている香ばしいタレの味も!なかなかに合う!」

 

「この豚汁も美味しいですよ!ジーク殿の料理は本当に美味しいですよ!」

 

「うん・・・・極東に帰っているみたいで美味しい」

 

「俺はその通りに作っただけだ。だが喜んでくれて幸いだ」

 

 

「確かに!ジーク美味いではないか!まさかオラリオで・・・・・しかもダンジョンの中で極東の料理が久方に食べられるとは思わなかったぞ!それも節操が知る限り・・・ジークの方が断然美味い!お主らもそうだろう?」

 

「はい!間違いありません!」

 

「拙者達極東人だからこそ分かる味です!」

 

「どうやったらこんなに美味しく作れるのか聞きたいくらい・・」

 

 

「確かに剣姫の言う通り。これは美味いぞ!ウチらの主神にも食べさせてやりたいくらいだ!」

 

 

「そうだね!僕からも断言するよジーク君!ヘファイストスならこれを食べたくなるよ!」

 

「確かに美味いな・・・・・流石はフレイの幼馴染か」

 

 

「そこは関係ないだろうヘルメス」

 

 

「確かに・・・昨日の夜もそうですか。確かに美味しいです。私が今まで食べてきた中で一番美味しいです」

 

「アンドロメダ。私はあの酒場で働いているのですが、その店主であるミア母さんが、二年前ジークを冒険者じゃなかったら是非雇いたいと言っていたほどです。彼の料理の腕前は本物です」

 

「あの『デミ・ユミル』がですか、確かにこの味じゃあ店を出してもいいほどですからね」

 

 

「ジークさんの料理!今日も美味しい!」

 

『主はこれくらいは朝飯前だぞ!ベルよ!』

『主に作れない料理は無い!』

 

「精霊の皆様!?あなた方も食事をするのですか!?」

 

『本当は食事は要らないのですが、主から魔力で実体化をさせて貰っているので、実態化している内は食事もしないと空腹で苦しむのです。ですから私たちは豚汁の汁だけを貰っています』

 

「精霊も食うんだな。ていうかジークって極東料理も作れるとか、料理に関してはもはやチートだな」

 

 

なんて最後にヴェルフが言ったが、俺は料理チートじゃなくて、親父が残してくれたレシピの本を読んで作り方を学んだだけで合って、なんでも作れるわけじゃない。

 

男料理しかできない母親の代わりに、俺が小さい頃から料理をフレイと一緒にしてきたからここまで上達できたことであって初めから得意だったわけじゃない

 

初めの頃は俺も焦がしたりと失敗したりとうまくいかなかった。

 

初めからなんでもできる奴など誰も居ない。あまり俺を万能な言い方をしないで欲しかった

 

 

まあでも・・・・・飯が美味いと言ってくれることに関しては俺も幸いだった

 

 

それともう一つ

 

 

「おい?そこに隠れてないで食べるなら来い?飯もまだある。食べてもいいぞ?」

 

「いいの?」

 

「そうでもしなければお前らまた木の影で覗くままだろう?気が散るから食うなら早くしろ」

 

「わーい!ありがとうジーク!」

 

「やれやれ・・・・」

 

 

「ジーク君。ヴァレン何某とアマゾネスの子は本当に君の料理のファンだね?」

 

「二年前は苦労したがなヘスティア」

 

 

またしてもアイズとティオナが俺たちの食事を木の裏で隠れて見ていた。あいつらは昨日もそうだが、どうして俺たちが食事をしているとどこで知ったんだ?まさかとは思うがベートみたいに俺の作る飯の匂いを辿って来ているんじゃないかと気が知れない

 

アイズはともかく、ティオナはそんなことしてそうだ。

 

確かにヘスティアの言う通り、二年前も俺の飯はこの二人は必ず食べた。他の誰よりも量を多く食べていた。あれから二年経っても俺の作る料理の味を忘れないのか、俺が別のファミリアの所になっても食べたいと隠れて見ている。

 

この二人はファミリアの距離と言うものを理解しないのだろうか。作るのはいいが、いい加減自分たちのファミリアの料理を食べればいいのに、いくら俺の料理の味が恋しいからって、いつまでも俺が料理長だと認識してないか?

 

二年前みたいに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼飯を過ごした後はリューと一緒に皿洗いを済ませ。午後からは全員それぞれの時間を過ごしている。まあ流石に三日も18階層に居るじゃあやることは無いだろうがな。

 

そして俺はと言うと

 

 

『主?今日も歌ってもらえますか?』

 

「わかった。グリフォン!特に周りは居ないな?」

 

『はい!周囲に冒険者は居ません!』

 

「これを聞かれたら厄介だからな、特にエルフの冒険者には聞かれたくない」

 

 

俺は小さい頃から爺さんやお袋やフレイにいろんな習い事をしていた。その中でも趣味である歌を。よく精霊に聞かせていた。俺は精霊召喚師だけでなく、詩人として詩を作って自分で歌って精霊たちを心地良くさせることができる

 

ただこれには問題が二つある

 

これは歌うだけでなく魔道具である『ブラギの竪琴』と言う楽器を使って歌う。それをパンドラ・ボックスに出す

 

これが問題でこの魔道具は絶対に誰でも聞き惚れる魔法の竪琴。もう一つの問題は俺のこの歌声。俺の故郷に居る爺さんが俺の歌声を更に良くするために俺にしかレシピを教えなかった酒

 

『詩の蜜酒』と言う酒を俺に作らせて『自分で飲め』と言われて。俺はそれを飲んで詩人になることが可能になり。あらゆる情報を物語ることで歌詞が自然に思いつくことができるようになった。更に歌声までも聞いた誰もが俺の声に魅了し。フレイ・フェロモンに繋がるほど。俺の歌声に魅了し。誰もが虜になってしまうという。まるでセイレーンのような危険な歌声をしてしまうため

 

 

俺は絶対に精霊以外には俺の歌声を聞かせないようにしている

 

 

だからグラニ達を連れて、芝生に座らせて誰も居ない湖で俺はグラニ達にブラギの竪琴を奏でて歌い始め。演奏する

 

 

「♬〜〜〜〜〜♫!♬〜〜〜♫!」

 

『おお・・・・』

『いい歌声といい音色』

 

『やはり主は『詩の王子様』です』

 

 

グリフォンの奴。誰が詩の王子様だ。俺はただの詩人だ。俺は王子でもなんでもない。だが精霊達は心地良く大人しく聞いている。ひょっとすると精霊達もこれで魅了をしているのかもしれないと気が知れない。でなきゃサラマンダーの背中の炎が消えている訳がないから。それだけ何も出来ないほど、誰もが惚れる音色と歌声。

 

更にこの『ブラギの竪琴』は『竪琴とは思えない音も出す』それはギターやバイオリンなど、竪琴では絶対に出せない他の楽器の音も出せる。糸のを引き加減でどんな楽器の音でも出すことができる。それだけでなくそれを同時に出すこともできる不思議な魔道具

 

本当にこれ一つで一人で曲を作れる魔道具

 

あと俺は歌いすぎると夢中になって、周囲に魔力感知を疎かにしてしまうほど、歌を歌い続けることに専念してしまう。フレイやおふくろと爺さんにいろんな習い事をしている中で一番の得意分野。誰かが実力で俺を止めないとならない程。俺は歌い続けてしまうと言う癖がある

 

おまけに蜜酒を飲んだせいで、あと100曲ほどは歌える程に声が枯れる事すら無い。

 

もちろんこの後は夕飯の支度しか無いため、俺はまだ時間があると思って歌い続ける

 

 

 

 

 

だが

 

 

「あれ?ジークさん?」

 

「どうしたレフィーヤ?ん?・・・・・・あれは・・・ジーク・フリード!?」

 

 

レフィーヤと、もう一人は・・・・・ここに居る筈ない白い服を着たエルフ。ディオニュソス・ファミリア団長の『白巫女』のフィルヴィス・シャリア。六年前の27階層の悪夢の生き残りの冒険者がどうしてここに居るかは知らないが。彼女達二人が俺が歌っている湖にやってきた。それもグラニとは反対の方から

だから精霊達はレフィーヤ達が来たことを気づいていない。そもそもグラニ達は俺の歌に夢中で周囲の気を配っていなかった

 

その後から

 

 

「おい?二人ともどこに行く!・・・・ん?ジーク!」

 

 

その後ろからリヴェリアまで来た。なんで今日はこいつらと出くわす日が多いのだろうな。しかも歌い始めた俺はもう止めることはできない。頭では止めるべきだと判断しているのに、俺の心が止めてくれない

 

エルフが聞いてはまずいこの歌声と音色を俺は三人を無視して歌い続ける

 

 

「・・・・・・ジークさん。良い声はしているとは思っていましたが・・・これほどとは・・・」

 

「なんだこの歌は・・・・私はあんな嘘つき冒険者のことなどどうでもいいのに・・・・なぜこうも彼が気になる!?」

 

「な・・・あ・・・いや・・・・なんだこの感情は・・・・・私はジークになんて感情を!」

 

 

エルフが聞かれてはならない理由は『俺に恋をしてしまう』からだ。一目惚れというのも入ると思うが、これを聞いたら中毒になる程、俺のことが忘れなくなり。俺を恋愛対象を向けずにはいられなくなる。

 

ああ。やめたいがやめられない。エルフは歌になびかせやすく。強力な魔力を持っている代わりにこいつらもいろんな弱点があったりする。俺の歌声は精霊だけになびかせ易いだけでなく、エルフに絶対にある筈のない。異種族の恋をさせることができる

 

 

そんなかつての仲間だったエルフと知らないエルフに恋を寄せられても困るが、歌を歌い続けることしかできない。気がすむまで俺には心に従う程抗うことはできない

 

俺も歌って心地も良く。恨みも怒りも忘れるように。楽しく歌える

 

 

リヴェリア達の感情をどうにかしたいにも。やめられない

 

 

だが

 

 

「ジーク!!!」

 

「ん?ベート!?」

 

 

『な!?貴様!?主様が歌っている最中に横槍を!』

 

「は!?なんだ!?このモンスター達が喋べりやがった!?」

 

 

森の方から俺の歌声も聞いて魅了もせずにベートが出てきた。どうやらフィンのお使いやらとかで帰ってきたようだ。俺もそれに反応して歌を歌うのをやめた。さっきの穏やかさが嘘のように吹っ飛んだ

 

やはりこいつが来るとロクでもない程が有るとわかっているのか。すぐに対象しないとならないと自分から歌うのやめてすぐにベートに対応する

 

 

「お前らは手を出すな。ベートは俺が対応する。久しいな?なにか用か?」

 

「テメエ!なんでここに戻ってきた!」

 

「俺は別のファミリアに入ったそれだけだ。お前には関係ない話だ」

 

「テメエあんなことがあったのによくオメオメと顔を出したな!」

 

「お前に顔を出した覚えは無い。俺だってお前のような奴は会いたくないほどにな?」

 

「あ!?テメエ?性格が随分と変わったが、相変わらず減らず口を叩くじゃねえか!」

 

「お前のような性格をした奴が面倒なだけだ。それにたかだか俺が戻ってきたくらいで、自分から会いに来るなんておかしいとは思わないのか?普通嫌な奴が居ればそいつに会わないのが当然だろう。それをわざわざ俺に会いに来るとは、品性が劣る奴だとは思っていたが・・・・ここまでとはな」

 

「なんだと!」

 

「お前は二年前と何も変わらない。相変わらず自分の頭では考えず気に入らないものに対してただ威張っているだけ。見栄だけ張っているからアイズに愛想を尽かされるんだ」

 

「な!?なんでそこでアイズが出て来る!?」

 

「お前はアイズのことが好きなんだろう?強い女が好みなんだろう?そのお前がただ強くなるためにタダ威張るだけしかできないからアイズにも見向きされないんだ」

 

「テメエ!喧嘩を売ってんのか!」

 

「喧嘩売った覚えは無いが、少しは自分に足りないものを認めて直せ。本当なら俺はお前に何も言わないで去るつもりだが、こうでも言わなきゃ聞かないのがお前だろう。短気な奴にはそれなりの言葉で対応するべきだと俺は学んだだけだ」

 

「テメエ!あれから二年前よりも減らず口を多く叩きやがって!ぶっ殺すぞ!」

 

「俺に戦いの意志はない。お前と戦っても何も意味は無い。それにここで俺を倒せば、今度はお前があの時の俺と同じ屈辱を味合うことになるぞ?それでもいいのか?」

 

「うるせえ!テメエの存在が本当にムカつく!ここでテメエをぶっ殺す!二年前の続きだ!」

 

「穏便に行くと言う考えは無しか?相変わらずだなこの単細胞め」

 

 

俺は久しぶりに会った獣人。ベートローガ

 

俺が二年前で一番険悪だった団員。こいつがレベル5だろうと俺もこいつを暴力で対応するなど、いろいろ小さな事でも喧嘩していたが、もうこの性格になるとこいつとの喧嘩も面倒になってきた

 

唯一こいつに張り合う奴は男では誰も居なかった。けど二年前の俺は性格が正反対のベート同様の不良みたいなものだった。だから俺もこいつの存在が嫌いで。フィンに怒られようとこいつの尻尾を掴んでモンスターに投げたり。部屋に悪戯するなど。俺はこいつそのものが本当に嫌いだった

 

レベルとか関係なくてもスキルが無くても。当時はこいつを相手に下っ端な立場な俺でもこいつに毎日喧嘩していた

 

 

それが冷めたような性格をした俺を見て。余計苛立っているのだろう。二年前張り合っていたのに、今では張り合うどころか毛嫌いされていることが余計こいつのプライドにささるようで

 

俺と会った以上は俺に喧嘩をふっかけること以外何も考えていないようだ

 

 

 

だが

 

 

「やめろベート!」

 

 

「リヴェリア・・」

 

「なんだよクソババア!邪魔するな!」

 

「それ以上ジークに手を出すな!他のファミリアに暴力行為を吹っかけることは禁止した筈だぞ!それ以上ジークに何かをすればフィンとガレスに報告するぞ?」

 

「ち!運がよかったなジーク!ババアが居なかったらテメエは今頃俺にボコボコにされていたぞ!」

 

「わかったらさっさと去れ。お前のことなんてどうでもいい」

 

「な!?く・・・・・覚えていろよ!!」

 

 

後ろからリヴェリアが止めてくれたことでなんとかベートと喧嘩にならずに済んだ。俺から『どうでもいい』と言われたあいつは。俺に失望を覚えたのだろう。今まで多く張り合っていたのに、今では相手すらされないのだから。

 

あいつからすれば気の毒かもしれないが、俺からすればどうでもいい話だ

 

 

『なんだあの狼人は!主に失礼なことを!』

 

「放っておけグリフォン。あんなの相手にするな。面倒になる」

 

 

止めてくれたリヴェリアに礼を言う

 

 

「礼を言うリヴェリア。あのまま続いていたら俺はあいつに魔術で口を封じする所だ」

 

「いや、構わない。ところでお前は歌が上手いんだな?」

 

「それについては一つ言うが、熟女でハイエルフのお前が盗み聞きとはどう言う了見だ?」

 

「な!?別に盗み聞きしたわけじゃ無い!私はレフィーヤを追いかけただけだ!盗み聞きしたのはたまたまだ!」

 

「そうか・・・じゃあ俺が歌が歌えることは他の奴らには言うな。面倒になる。盗み聞きしたわけじゃないとはいえ。聞いたことには変わりないからな。それくらい償いはして貰うぞ?」

 

「あんないい歌を誰にも聞かせないのか?」

 

「お前ともあろう者が聞き惚れたんじゃないだろうな?」

 

「あ、いや・・・・・まあ・・・・・嫌いではなかった」

 

 

ダメだ。完全に聞き惚れている。やはり危険だな。恋愛や結婚に興味を持たなかったリヴェリアがここまで俺の歌声に聞き惚れるなど。冗談にも程が有る

 

 

「まったく・・・・・・ディオニュソス・ファミリア団長の『白巫女』のフィルヴィス・シャリアだな?なぜお前がここに?」

 

「ディオニュソス様の命令でロキ・ファミリアの遠征帰りの警護を頼まれた。ジーク・フリード。そこに居るトカゲのようなモンスターはまさか・・・」

 

「サラマンダーだ。俺は精霊召喚師だ」

 

「精霊召喚師!?精霊を召喚できるのか!?」

 

「フィルヴィスさん!ジークさんはなんとフレイ様の幼馴染だったんですよ!」

 

「なに!?てことはディオニュソス様の言う通り我ら祖国の主神フレイ様の幼馴染は本当なのか?!行方不明になっているはずなのに!?」

 

 

「レフィーヤ?誰も言うなっと言ったはずだぞ?」

 

 

「あ!?ごめんなさい!」

 

「まったく・・・・だがディオニュソスが勝手に喋っていることもあるようだな」

 


『主!まさかまたロキ・ファミリアのエルフですか!』

 

「こいつは別の主神のエルフだ。関係ない。お前たち二人も俺が精霊に歌を歌っていることは誰にも言うな」

 

 

そう言って俺は精霊たちを連れて去ろうとする。またもまた厄介ごとが増えたが。まさかあのディオニュソスが眷属にまで俺のことを喋るとは。仕方ないとは言え。やはり面倒だな

 

 

「ま、待ってくれ!ジーク・フリード!」

 

「フレイの話ならレフィーヤとリヴェリアに聞け。俺はもうあいつの説明は疲れた。もう話す気は無い。聞いた奴にでも聞け。その二人が知っている」

 

「お前がどうして・・・」

 

「答えるつもりは無い。行くぞお前ら」

 

『『は!』』

 

『よろしいのですか主?』

 

「もう俺のことは知れ渡っている。こうなっては仕方ない。グリフォン!サラマンダー!お前たちは先に戻って他の精霊たちにこのことを報告しろ!」

 

『『わかりました!!』』

 

 

ルーン文字を描いて空間を開けて。二人を先に精霊樹に帰らせる。グラニはまだテントに帰るためにまだ残って貰うことにした。多分問題ないと思うが、別のファミリアに深入りして貰っても困るため、念の為にあのじいさんにも報告するようにと他の精霊にも知らせる命令をグリフォンとサラマンダーにさせる

 

フレイや俺のおふくろの件で俺を狙う可能性もあるかもしれないと保険のために報告させる

 

 

「待ってくれ!頼むからお前から話してくれ!」

 

「もう俺は疲れた。自分達のテントに帰らせて貰う。聞きたいならその二人に聞け。レフィーヤ?フレイのことなら構わないが、俺の歌を他の奴らに言ったら承知しないからな?」

 

「は、はい!すいません!」

 

「わかればいい。グラニ。行くぞ」

 

『はい!』

 

「あ、おい待て!」

 

 

 

そうして俺はフィルヴィスの言葉を無視して自分のテントに戻っていく。いちいちフレイと幼馴染だった説明を何度もするのは面倒だ。いくら自分たちの祖国の主神だからと言って、俺に何度説明を頼まれるのは困る

 

確かに知っているのは俺だけだが。それでもキリがなくて困る。流石に説明疲れた

 

 

それにしてもあの歌だけは本当に聞かれたくなかった。フィルヴィスやレフィーヤまで俺のことを意識するようになって、あのリヴェリアさえも俺に気があるかのように近づくとは

 

やはりあの歌はエルフには危険だな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして自分のテントに帰ると、俺たちのテントの前でベル達と誰かが揉めているのが見えた。なにやら口喧嘩のようには見えないが、なにやらお辞儀をしてまで何かベル達に頼み込んでいる光景が見えた

 

その頼み込んでいる者達は三人居た。必死にヘルメスとヘスティアが対応しているがそれでも引かず。主神にまで頼み込んでいるのは・・・

 

 

「あれは・・・ラウル?アキ?クルスか?」

 

 

それはかつて俺の先輩でもあった三人。その三人がヘスティア・ファミリアのテントの前でヘスティアとヘルメスにお辞儀をしてでも何か頼み込んでいた

 

俺はテントに急いで駆けつけて。状況説明を聞く

 

 

「おいこれはどう言う状況だ?」

 

「あ!ジークさん!」

 

 

「ジ、ジーク・・・」

 

「やっぱり本当に戻ってきたのね・・・」

 

「お前が本当に・・・・」

 

 

「ヘスティア?ヘルメス?一体どういうことだ?」

 

 

「それがねえ・・・・・」

 

「なんでも俺たちに解毒薬を持ってないか聞いてくるんだよ。あいにく解毒薬なんて持ってないのに・・・」

 

 

「解毒薬?」

 

「ジーク!戻ってきたんすね!」

 

「ラウル?この際挨拶はどうでもいいから、どう言う事か説明しろ」

 

「じ、実は・・・・・自分たち遠征帰りなんすけど・・・・その帰りに毒を撒き散らすモンスターにやられて。団員のほとんどがその毒に侵されているす」

 

「それで?」

 

「その・・・・さっきベートさんがディアンケヒト・ファミリアから解毒薬を貰ってきたんだけど、全然効果が無いの」

 

「新種のモンスター の毒だからなのか滅多に治らないんだ。このままじゃああいつらが死んじまう。だからリヴィラの街でも聞いたが無くて、仕方なく別のファミリアに頼み込んだんだ」

 

「お願いジーク!煩わしいと思うし烏滸がましい事とは思っているけど!解毒薬を持っているならそれを私たちに譲って!必ずお礼はするから!」

 

 

「今更君達がそんなことを言う?ジーク君を信じなかった疑った君達がジーク君に助けを求めるだなんて」

 

「そうですね。ハッキリ言って図々しいにも程があります」

 

「二年前疑って見捨てたにも関わらず、自分たちが危うくなっているからって。態度を変えて疑った奴に頼むだなんて何様だよ」

 

「リリ!ヴェルフも!神様まで!?」

 

 

「そ、それは・・・・そうですが」

 

 

「・・・・・・」

 

 

確かに普通ならヘスティアやリリルカやヴェルフの言う通りではあるな。疑って信じなかった奴らのことなど今更遅いと。どうでもいいと恨みを晴らすために助けないのが道理だ

 

 

だが

 

あの頃を思い出すと、感情がどんどん薄れている俺に唯一の感情が動いている

 

『あの時、俺が助けていればこうはならなかった』と後悔が俺の心に滲む

 

 

決別した相手だが、死んでいく姿を見るのはどうも好まなかった

 

確かにクルスやアキは俺のことは信じてくれなかった。だがラウルは・・・・・特にスキルや魔法も持ってないのに根性があるのか、真っ先に俺のことを信じてくれた努力家でもあるからな、今は信じてくれる人のために戦うであって、信じてくれたラウルのためだと思ってやればいいだろう

 

 

「わかった。解毒薬は無いが、状態不良を治す魔術を持っている。それで俺が治す」

 

「ジ、ジーク!」

「あ、ありがとう!」

 

「いいのジーク君!?」

 

「ヘスティア。確かにもうこいつらとは決別をした。助ける道理は無いと思う」

 

「なら!」

 

「だが・・・・・そいつらが死んでいく罪悪感を感じて放っておくことはできない。それに礼は貰えるんだろう?ならそれなりの対価を貰うために働くだけだ。そんな難しい話じゃない」

 

「ジークさん・・・・」

 

 

「グラニ。そろそろ帰れ。このまま残ってももうやることないぞ」

 

『は!』

 

 

もう流石にグラニにさせる仕事も無いため。グラニも役目を終わらせて空間を空けて精霊樹に戻させた。それでからラウルに案内を頼む

 

 

「ラウル。案内しろ」

 

「は、はいっす!こっちす!」

 

「少し行ってくる。揉め事にならないから心配するな。夕飯までに戻るからここを頼んだぞ?」

 

「はい!」

 

 

フレイの死に際を見た俺はそれを思い出すのか、瀕死になっている人を見捨てることができなかった。それが例え縁を切ったかつての仲間でも見捨てることはできなかった

 

三人が申し訳ない顔をしているが、そんな顔もするなんて意外だ。しかも俺のことを二年前は散々色んなことを言ったのに、ラウルはともかく、クルスやアキが後悔した顔を見たのは初めてだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もちろん俺の疑い事件を起こした事により。ロキ・ファミリアのテントに着いた瞬間。他の団員に睨まれていた

 

 

「おいジークだぞ?」

「マジで帰ってきたんだな?」

「しかも俺たちより上みたいだぜ?ラウルさん達と同じレベル4だって?」

「マジで!?あいつが!?」

 

「ねえ?あれジークよね?」

「なんか・・・・二年前よりも更にカッコ良くなってない?」

「だよね?団長みたいにイケメンだから。今度はお兄さんみたいな人になってない?」

「でしょ!?見ない内に『お兄さん系イケメン』になってない?二年前はベートさんみたいな『不良イケメン』だったのに!」

「なんかクールよね!」

「ヤバい・・・・私タイプかも」

「でも私たちは疑っちゃったのよ。私たちのことなんてもう話したく無いわよ」

「あ、そうよね・・・・」

 

 

などと俺がロキ・ファミリアのテントを通りかかるとかつての団員達が俺のことをそう呟く。話したく無いなどと俺からして自分たちが目障りみたいな言い方を確定しているが、俺の場合は話すことなんて何も無いだけで話しかけたりしないだけ

 

 

「このテントす!」

 

「・・・・・・十人か」

 

 

ラウルの案内で奥にテントがあった。その中に入ると男女十人の冒険者がテントの中で息疲れや汗を垂らしたりなどをして苦しんでいた。中でリーネなどが看病をしていた

 

見る限りでは、確かに毒に苦しんでいるな。

 

 

「え!?ジークさん!?」

 

「リーネ。挨拶はいらない、具合はどうなっている?」

 

「あ、はい!ベートさんから『解毒薬』をさっき持ってきてくれたんですが。解毒が全然効いて無いんです!」

 

「新種のモンスターの毒にでもやられたのか?ディアンケヒト・ファミリアから貰っているんだろ?アミッドがそんなヘマをするとは思えないがな。解毒薬が効かないなら魔法で治すしかない」

 

「とは言っても・・・毒を消す魔法なんて・・・」

 

「俺が持っている。アキ」

 

 

ディアンケヒト・ファミリアの団長はアミッドで間違い無いと思うが、あいつはヘマをするとは思えない。それでも治せないなら新種のモンスターの毒で間違いない。まだ未知な毒には違う解毒薬じゃないと効かないのか、治っているようには見えない

 

そうなったら魔法で消すしかない。確かに毒化している冒険者を治す魔法もヒーラーも限られている

 

 

だが、俺も実はそれらしい魔術を持っている

 

 

俺は指で紫色のルーン文字を宙に描いて、それを手で全部掴み。唱えて放つ

 

 

「安らかに戻れ。安息なる命。ミーミスブルン!!」

 

 

そうして俺はその文字をテントにばら撒くと、ルーン文字が一文字づつ。眠っている冒険者の頭に乗っかり。その文字が冒険者の頭の中に透き通るように入る。そのあと体が一瞬だけ紫色に発光し。息疲れや汗も消えて。さっきまで寝込んでいた冒険者達が。次々と自分達から起き上がり。嘘のように毒が体から消えていた

 

 

ミーミスブルン

 

本来は回復魔法ではあるが、万能薬魔法でもあり状態不能になった時に使用する魔法。毒でもなんでも何か体に毒になるようなものを盛られた時に使用する魔法。大抵なものならなんでも治せる

 

 

この魔術は流石に俺もスキルがあるから使わないと思ったが、どうやらそうでもなく。ちゃんと覚えて損の無いものだった

 

 

「す、すげえ!」

「さっきまで苦しかったのに!」

「風で吹き飛んだように、毒が消えた!」

 

 

「す、すごい・・・」

 

「毒を治せる魔法を持っているの!?」

 

「ひとつだけな。用は済んだ。もう行く」

 

「あ!待ってジーク!」

 

 

「何事だ!」

 

「あ、団長!」

 

「フィンか」

 

「ジーク!?どうして?」

 

「ラウルに頼まれた。毒に侵された冒険者を治してくれって頼まれた」

 

 

寝込んでいた冒険者達の歓喜を聞いて。フィンがテントに入ってきて駆けつけてきた。何か大ごとだと思って来たようだな

 

フィンに頼まれて来たと思ったが。ラウルが独断で動いていたようだな

 

 

「ラウル。今度礼をして貰うぞ。今はして貰うこともないからな」

 

「了解っす!」

 

「どういうことだいラウル?」

 

「あ、団長すいません!これは自分が勝手に・・・」

 

「要するにベートが持ってきたと言われる解毒が効かないと知ったラウルは二軍のメンバーだけで独断で俺たちに頼み込んできた。礼はたっぷりしてくれると聞いたから俺はそれに応じて治しただけだ。仲間を助けるためなら他のファミリアに頼るしか無かっただけだろう?判断としては間違ってないと思うぞ」

 

「それを君が?」

 

「ああ。俺はヒーラーと同じ魔法を所持している。これくらいの人数を治すことなんて簡単だ。あまりこいつを責めても何もならないぞ」

 

「そうか・・・・・・団長として礼を言う。君が助けてくれるなんて、報酬は僕からもしっかりと提供しよう」

 

「報酬の内容はヘスティアに聞いてからだ。俺の独断で決めるわけにはいかない。ラウル?俺はお前の頼みを完了した。帰らせて貰うぞ?」

 

「はいっす!ジーク!本当にありがとうす!」

 

 

用を済ませて俺は外に出る。だがラウルもあれから二年経って随分と自分から進んで行動するようにはなったな。二年前はまだダンジョンで戦うことでさえ臆病者だったと言うのに、あれから二年経って色々成長しているようだな

 

 

「待ってジーク!」

 

「なんだ?」

 

「こんなことを聞くのはあれだけど・・・・・・・まだ私たちのことを恨んでいるわよね?」

 

「どうでもいい」

 

「え?・・・・ちょ。ちょっと!」

 

「なんだ?アキ。お前はそんなことを聞いてどうする?またアリシアの様に謝るのか?そんなのはいらない。やめたのは俺の意思だ。今になって恨んでも仕方がない」

 

「そうなの・・・・・本当に変わったわね?団長から聞いたわ。私と同じレベル4になったのね?」

 

「ああ。さっきから何が言いたい?俺に久しぶりに会って俺の愚痴を言うかと思ったら、そんなつまらないことを聞くのか?」

 

「つ、つまらないって・・・」

 

「俺はもう赤の他人だぞ。団員じゃないんだ。あまり気軽に話しかけるな。ファミリアの距離もあるだろう。それに二年前俺を疑ったお前に話したいことなんて何も無い」

 

「あ。そうよね・・・」

 

「じゃあな?」

 

 

話す内容がまったく無いのは事実だった。アキの喋り方はまるで団員に話をするような言い方だ。アキはいつまで俺を友人として扱うのだろうか。赤の他人らしく扱えばいいものを

 

散々俺を疑ったのに。今になって色々話しかけてくるなど。立場としてはあえりない行為だ

 

 

そのままテントに出る際も。他の団員達に睨まれているが、それでも俺は無視して出て行く。魔力感知からして未だにレベル3止まりみたいだからな、フィンからレベル4だと聞かなかったら、俺を袋たたきにしていた所だろう

 

この際恨まれることは受け入れるが、こいつらも俺を嫌うなら無視すればいいと理解しないのだろうか

 

少し考えても疑った相手など。相手しない方が良いと言うのに。

 

 

 

 

 

もう何も無い

 

本当に俺は何も言う事はない

スキルである『カオス・ヘルツ』のおかげで恨む感情が徐々に無くなって来ている。あのスキルは強くなる分には越した事は無いが

 

強い力には代償があるように

 

それは俺の感情だった。レベル4になった事で、『喜び』『恐怖』『悲痛』『恥』を感じることができなくなった。もう笑うこともできない。死ぬことが怖くなくなる。仲間の死を恐れない。悲しむことさえもできない。恥じらうこともできない。レベル4になってからもう随分と感情に動くことができなくなった

 

多分この先も更に少しづつ感情を無くしていく

 

『嫉妬』『苦しみ』『憎悪』『欲望』『驚愕』『信頼』『不安』もどんどん無くなっていくだろう。アイズは無表情で人形のようだと言われているが、彼女は立派に感情がある。だは俺はそれ以上に酷く。感情を剝きだすことのない

 

 

戦いの人形のように成り果てる

 

 

ヘスティアは多分、これがわかっているはず。本当に俺のような奴を入れてくれたよ。あの女神は

 

俺がいつか使い物にならなくなることも承知しているだろうか、多分残るのは怒りか無関心だけ。そんな哀れなヒューマンをあいつらはどう思うんだろうな

 

 

と、今になって自分の存在を見つめ合う俺。ロキ・ファミリアのテントを振り向くと二年前の俺の姿の残像が見えたのか、本当はこのファミリアに戻りたかったのか、どんどん俺のしたいことが良く分からなくなり始めた

 

 

今になってアキの言葉が心に刺さるのか、それとも疑った奴など知らないと鬱陶しさを紛らしたいのか。もうその『感情の理解すら』も俺は分からなくなってしまったまま

 

ロキ・ファミリアのテントを後にするのだった

 

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