そして着いた先に
「っ!」
「ジーク・・・・・」
「雷・・・帝・・・・」
「どうやらやられたようね、狼の坊やの方は無事みたいだけど・・・」
「見てください!?あのアマゾネスの子の胸に!?」
「カース・ウエポンが刺さっている!?」
俺の予想は的中していた
先ほど乱戦した場所に戻れば、ベートが倒れているレナを抱き寄せている光景を見かける。彼女は弱っている。胸にカース・ウエポンのナイフが刺さっている。どうせ抜いても直すことはできないとわかっているが、俺が彼女の胸に刺さったカース・ウエポンを抜く、そしてフィルヴィスと共に彼女の容態を見る
「ジーク。どうだ?」
「カースを受けている。回復薬では無理だな」
「そうか・・・・・」
「ジーク!!」
「ジークさん!って・・・フィルヴィスさん!?」
「元イシュタル・ファミリアの私の同族に!?それにベート!?」
「ベート!?なんであんたがここに!?」
「まさか暗殺者に襲われたのか・・・・っ!?ジーク!?ベートも一緒か」
「レナ!!!」
「アイズ。ティオナ。ティオネ。アイシャ」
「レフィーヤ!?リヴェリア様も!?」
突然後ろからアイズ、レフィーヤ、ティオナ。ティオネ。リヴェリア。アイシャがやってきた
どうやら彼女たちも状況を知っているのか、レナを探し助けようとしているようだが、もう手遅れであり、残念ながらもう彼女は助かる見込みのない容体となっていた
「レナ!!しっかしろ!」
「やめろアイシャ。下手に揺らせば彼女が本当に助からなくなるぞ?」
「くそ!!なんで私らがこんな目に!これもあの女神のせいだ!」
「カース・ウエポンか?ジーク」
「ああ。状況は把握しているようだな、その様子だと街も同じ有様だったか」
「その通りだ。街にも襲撃されている。アマゾネスのほとんどがやられた。なんとかガレスやフィンたちや数多くの冒険者たちが加勢してくれたが、暗殺者は捕らえても経緯を話さずに毒のようなもので自害した。生き残りのアマゾネスたちは今ディアンケヒト・ファミリアが治療している」
「そうか・・・なんとかカースを解ければいいがな」
「それでなぜお前たちがここに?」
「そこに居るアフロディーテが歓楽街を観光したいと、ここら辺を彷徨いたら、こいつと出会し、それでヴァレッタと言う女までもが出会し、突然の奇襲を受けて、ヴァレッタは逃げられたが、他の暗殺者は全員殺した」
「そうか・・・まさか・・・奴までもお前を狙っていたのか?」
「ああ、初めはあいつも知らないみたいだからな。これ以上鍵の有りかの情報を流さないためにも、ここに倒れているレナ・ナタリーをもイシュタルの眷属を皆殺しにするつもりのようだ」
「くそ!!あの女神が勝手な事をしやがるから!敵に目を付けられるんじゃねえか!!」
「そして、この『弱者』がヘマをしたせいで、そのレナ・ナタリーは重傷を負うことになったがな」
「あ?今俺のことを弱者と言ったか?ジーク?」
「お前以外誰が居る?力に溺れた犬が」
正直もうこいつには呆れた
こんな簡単なこともできないのであれば、もはや強者として扱う気はない。むしろ元々品性の劣る奴だとわかっていたこと、それが本当にこんなこともできないとは、今まで俺はこんな奴を相手にしていたと思うと、相手にする価値を失った
こんなゴミ同然の奴を今まで俺は気を遣って相手をしていたのだと思うと。本当にこいつがどこまでも『俺と同じ』存在だったと認識する
「なんでこいつを守れなかった?まさかあんな数で守れなかったのか?相手はたかがレベル3の暗殺者如きに?お前はそれでもレベル6か、お前はたった一人の女すら守れなかった弱者だ」
「勝手に逃げ出した雑魚のお守りなんぞできるか!散々引っ張りやがって!うざってえたらありゃしねえ!」
「本当はそんなことを思いもしない癖に、嘘が下手くそだぞ」
「嘘なんかじゃねえ!つくづく救えねえ!雑魚って言うのはなあ!」
「救えないのはお前だ。強さにしがみつくあまり、お前は他人を救えない。どれだけ強くてもお前は周りを失うばかり、それでこれからどう強くなるのかも、そんな簡単な事も気づかないまま、お前はまだこのレベルのまま。お前が一番弱い」
「俺が弱いだと!?何がだ!?俺の何が弱い!?」
「弱いさ、他人を救えない愚かな弱さ、そして・・・・・・・」
これが俺にもわかること
俺もそうだ。失うものばかりだ。家族も、仲間も、愛していた人でさえ、俺も守れなかった。愚かしくて、哀れで、その想いすら感情を失った。憎むばかりで、相手を怒りで滅ぼすのみ、そんなやり方をして孤独を得るばかり、自分の命を犠牲するこそ、救いの道だと考えてしまう
俺もベートも同じだ。俺たちは弱いからこそ気づいている。そして向き合おうとしない。だから俺とベートは一番弱い
その弱いと言うのは
「孤独を進むあまり、お前の心が弱くなる」
「っ!?」
「弱者に暴言をかける時点で、気にしている証拠。いつも傷を負うのはいつでも他人のため、その他人を失う事でお前は徐々に心が弱くなる。どれだけ孤独を進んでもお前は強くなれない。その『弱い心』がある限り」
力では強くなっても、あまりに心が弱い
心が弱いから何もかも恐れて進む事ができない。手に入れた愛も友情も家族も、なにもかもが、失うことを気にして心が弱くなっている。感情を少し出せば変われることも気づかないまま、力に取り憑かれた
だから感情など、無駄だと。弱肉強食に従うようになった
「心が弱すぎる。失うのが怖いからお前は弱者に『戦いに出るな』と、いつも暴言を吐く。素直な言葉を出せない。なにもかもが不器用な男。そして失った途端。お前は本当は心では嘆いている。最近リーネを失ったことで思い出すんじゃないのか?・・・・・・・・過去で失った『お前を愛した人たち』を」
「っ!?そんなことねえだろ・・・・・俺は!!・・・」
「じゃあ・・・なぜ・・・・・」
そう、本当は失うのが怖い。仲間も、愛した人も、家族も、本当は仲間が居ることでいろんな喜びを感じていた。そして失うことに本当に嘆いていた。心の中で
だからリーネも失くしたことも。今ここでレナがやられたことも
その悲しみの証拠に
「お前はなんで泣いている?」
「っ!?」
「「「「「「っ!?」」」」」」
「・・・・・・」
ベートの両目にしっかりと涙が流れていた。
嘘ではない。亡くなったことも悲しんでいる。弱者だから認識されると、弱音を吐かずに涙は流さず、いつも暴言ばかりで弱者たちを責める男だったが、本当は違う
こいつこそ、一番仲間想いであり、一番に愛を失いたくない、俺と同じ『犠牲者』だ
家族を故郷であった竜に襲われ、父や母や妹。そして大好きだった幼馴染でさえ、故郷でお前だけが生き残った。そして次にここオラリオで『ヴィーザルの眷属』になり、そこでレベル3になってお前は団長となり、愛してくれる女も居た。だが故郷を怒った竜を殺すために一度オラリオを出て殺した。でも戻った時はその愛してくれたヴィーザルの眷属はダンジョンに行って死んでいた
俺と同じだ。家族を失う。愛してくれた人を失う
だからわかる。お前の気持ちは、感情のない俺には不服ながら・・・・・わかる
「ベート。お前が愛してくれる女たちは、皆お前と共に生きることを望んでいたんだ。そのために強くなることも望んでいた。それでお前は守れなかった。だから弱い。ちゃんと向き合っていたら守れたんだ。志は大切だ。だから俺はベヒーモスを一人で倒せた」
「っ!?」
「俺は必死だった。モリガンが大切な仲間を手に出すと言われた瞬間、怒らずにいはいられない。だからカオス・ヘルツを発動させて、怒ってベヒーモスを一人で倒す事ができた。ベート。人を想うだけで俺たちは強くなれるんだ!ただお前が信じてないだけだ!力に頼るからお前はその程度なんだ!」
「人を想うだけで・・・・そんなことを・・・俺が・・・」
「できるわよ」
「な!?」
「アフロディーテ・・・」
俺がベートに人を想うだけで強くなると言う助言に、アフロディーテも俺に続くようにベートに助言をする
人を想うだけで強くなると言う愛情に、アフロディーテがベートに学ばせる
「あなたは信じてないだけよ。失い過ぎて前を向いてないわ。私の眼ですぐにわかるくらいに」
「なにを言ってやがる!女神の言葉に俺が・・」
「じゃあどうして人を失う事に過去に失った人達を思い出すの?それって後ろばっかり見てばかりで、前を向いてない証拠じゃない」
「な!?」
「貴方は今でも失った人たちを思い出すだけで心がボロボロになっている。本当は愛してくれた人を失うのが怖い。自分の心に素直になる事でさえも、弱さだと思って拒んでいるだけ、確かに本当に弱いわ。そういう愛を否定した貴方はアドニスよりも、そこら辺に居る女よりも弱いわ!女が想う愛は強いのよ!そこに居るアマゾネスの子が貴方を愛した。貴方がしっかりと答えていたら貴方は強くなれた。向き合ってあげなさい!力だけに拘らずに!強くなる方法が力だけあればいいと思ったら大間違いよ!この愚か者!」
「っ!?」
アフロディーテだって愛で眷属を癒してきた
イリオス王国は海から出てくるモンスターの戦争が激しい。その疲れた眷属に愛でいつも癒した。体でも、愛情でも、どんなアフロディーテの愛一つで眷属達は女であっても強くなろうと必死になれる。そのような愛の強さが欠けている今のベートには
絶対に強くなれないと、今逆に弱くなっているとアフロディーテは断言した
「泣いているなら守れ。他人を守ることこそ、強者がすべき事であり、その者こそ弱者達も俺たちに近づこうと、憧れて強くなる。そこに居るレナ・ナタリーも強くなるために必死なんだ。弱者達には弱者なりの努力がある。お前が思っているほど弱者はそこまで愚かではない。初め弱かったお前と同じだ。弱さは成長するのに必要だ。弱さを理解しているからお前も大きくなるんだ。そして誰にでもある。否定するな弱さを」
「ちい・・・・テメエに言われなくてもわかっているんだよ!俺が・・・・・こんな事じゃあ強くなれないこともな!」
「やっと自分の無力差を理解したか、気づくのが遅いぞ」
ベートがやっと自分の無力差を理解した。もうそれだけ分かっていればもう十分だと、俺はもうベートに何も言わずに。レナ・ナタリーの方へ近づく
「ジーク。なにを?」
「動かすな。リヴェリア」
「っ!?フレイ様のルーン魔術!?」
俺はレナ・ナタリーに近づき、その彼女の腹の上でルーン文字を描いた、今度は緑色の文字を、俺はその描いた文字を手で掴むと、その握った手のひらから緑色をした透明のような水が出てくる
「ミーミスブルン・・」
俺はその緑色の水ミーミスブルンを胸に空いた傷に掛けた。回復魔法ではあると同時に状態不能も治す事ができる、フレイの最高回復魔術。蘇生はできないが、レアカースでも猛毒でも治せる。以前も18階層であいつらも治した
だから今カース・ウエポンで刺された。レナ・ナタリーの胸の傷も
「っ!?傷が!?」
「塞がっていく!?」
「レナ!!」
「アイシャ、起こすな。傷を塞いだとは言え、休ませてやれ」
「まさか・・・カースを解いたのか!?」
「俺の回復魔術は蘇生以外ならなんでも治せる。腕を斬り落とされても治すことのできる回復魔術だ。フレイの最高の魔術だ。あいつには感謝だな」
「すごい・・・・カースを解くなんて、それも魔法で・・・」
レナ・ナタリーの胸の傷が完全に塞がる。
カースでもレアカースでも簡単に解く事ができる。フレイにこの魔術を教えて貰って助かっている。これで何度もベル達を助けた。ナァーザやアミッド達が聞けば羨む魔法だが、今はそんな貴重な魔法を説明する暇はない。これでレナ・ナタリーは助けられた。
それでどうなるかだ
「これでレナ・ナタリーは助かった。だが今こいつが助かっても、こいつや他のアマゾネスを狙うあのヴァレッタとか言う女はまだ生きている。と言えばわかるな?」
「っ!?また襲ってくると言うのか!?」
「奴は・・・まだ近くに居るのか?」
「ああ・・・・・・北地区の方に居る。魔力を感知した。それで・・・・・・どうするベート?」
「俺は・・・・・」
「奴はまだ生きている。必ず生き残っているアマゾネスを皆殺しをするまでは止まらないぞ。彼女は今助かってもまた襲ってくる。だから・・・・・どうする?」
助けたはいいが、無論まだイヴィルスは生きている。今ここで助けてもまたいずれ襲ってくるだろう。とりあえず今レナの命は助けても、また襲われれば意味がなくなると考えつく。当然まだヴァレッタは近くに居る。そうなればどうすると俺はベートに問う
そんなことを問う必要もないだろうがな
「無論あの女をぶっ殺す」
「なんのために?」
「っ・・・・・・・・・・・・レナのためだ!!」
「それでいい。想ってくれる者が居るなら守れ」
「テメエに言われるまでもねえ。俺をあいつの所に案内しろ!雨がそろそろ降る。俺の匂いじゃあ嗅げねえ」
「いいだろう。お前の意志見せてみろ。アフロディーテ。ペルセフォネ。お前達は帰るんだ。フィルヴィス頼むぞ。もう雨も降る。デートはここまでだ」
「ええ。分かったわ」
「気をつけてね!」
「二人とも、ヘスティア・ホームへ!」
「ジーク!私たちも!」
「お前らはそのレナ・ナタリーをディアンケヒト・ファミリアに連れて行け、ここからはベートの戦いだ。邪魔することは許さない。言うなら男の戦いだ。水を差すな」
「ジーク・・・・・」
「行くぞベート。お前のその意志で彼女を救ってみせろ」
「テメエに言われなくても・・・・・・・・あの女を守ってやる!」
そうして俺はベートと共に、今居ると思われるヴァレッタの所へ向かう。
今度はこっちから襲撃を掛ける。言うなら仕返しだ。レナ・ナタリーの復讐するためにこちらも奇襲をかける。イヴィルスを放っておけば大変な事にもなる。だから野放しはせずにこちらから仕掛ける
今度こそイヴィルスの残党を絶滅させる。それが可能になるかは
ベート次第だ