翌日
朝食を済まして、すぐに俺とリリルカは急いで支度をし、フィンとリヴェリアが用意していると思われる縁談場所へ向かう。リリルカは先にフィンの所へ行った。リリルカが居ない間にベルをリリルカの縁談を止める説得をするのだが
「リリルカは先に行ったようだが・・・・・ヘスティアがベルを説得するのか?」
「うん、本当はこれ以上ベル君に近づく女性を減らす事ができるチャンスでもあるんだけど、それでもサポーター君は僕の大事な眷族だから・・・・」
「そうか、皮肉だな。ベルを想う君からすれば・・・」
「まったくだよ・・・・」
本来なら俺も説得するはずが、ヘスティア自身だけでベルをリリルカがこのファミリアをやめないように説得しようとしている。どうやら主神としてだからなのか、皮肉にも想い人に別の女性に意識を向けさせるという。なんとも自分の心を自分で傷つける行為をヘスティア自身からすることを決めていたようだ。でも主神としてはリリルカはファミリアとして必要。その必要不可欠なこともあるため、ベルがリリルカに説得をするように唆すのはヘスティア自身がやるのだった
「それでは俺も行く。あとは頼む」
「うん、あとそれとなんだけど・・・・さっきから・・・あの二人が居ないんだけど」
「ああ、アフロディーテとペルセフォネのことだろう?知っている。どうせ他の女達を連れて、俺とリヴェリアの縁談先で盗み聞きでもする気だろう。とは言っても個室だから盗み聞きをするには難しいと思うがな」
「うん、苦労することはあるだろうけど、頑張ってね。それとパンドラボックスに『アレ』も入れといたよ」
「ありがとう。他の所は見えないようにしてあるな?」
「うん、大丈夫だよ。けど・・・・いいの?」
「俺がどれだけ『酷い男』になったか、分からせるにはこの方がいいだろう、では行く」
実はパンドラボックスに『ある物』を入れて貰うようにと、俺はヘスティアに頼んでいた。もちろんそれをリヴェリアに見せるのだが、個人情報にもなる物でもあるため、あまり見られるのはマズイのだが、それで知られようが、どれだけ俺が最悪な奴なのか、分からせるために見せようとする
とにかく縁談は縁談だ。
だからお粧しもした。普段着ない故郷の紳士ドレス服も着て、香水もした。縁談ならそれなりの格好するのが当然だ。髪型は変えてはいないが、頬にクリームを塗るなどをして顔に汚れが無いにようにもした。幼少の頃からニキビとかも肌荒れもしたことはないが、一応した
格好も顔もそれなりに良くした。縁談に行くにも十分な格好して縁談先へ向かった
そして縁談先はオラリオ東地区にある。高価なお店がある。ピンク色の花壇が囲まれた高価な建物のお店
そのお店は全部個室制であり、食事も高価な洋食ばかりと、あまりに金の余裕が無ければ入店できない店である。縁談するにはいい雰囲気のある場所でもあり、他の誰にも聞かれることのない店。だろうと思うが・・・・・とにかく今回の縁談先の料金は全部リヴェリアが負担する約束になっている。指定時間の15分前に到着するようにした。
「ジーク・フリードだ。リヴェリア・リヨス・アールヴの誘いでここへ来た」
「お待ちしていました。リヴェリア様のご誘いの方ですね?リヴェリア様はもうご来店しています。どうぞこちらへ、案内します」
店員に受け付けをして、リヴェリアはもう来ているらしく、個室へ案内して貰う
店員はエルフだ。まさかとは思っていたが全員エルフの店員しかいない、だとするならここもリヴェリアが所有するエルフの店なのだろうか、そう思うと俺は気まずい空気になる
その理由は
「やはりリヴェリア様が雷帝様を選んだわよ」
「リヴェリア様ならスキールニル様を選ぶと思ったわ」
「フレイ様の義弟様ですからね、フレイ様の聖剣を継承しているそうですわよ」
「しかも精霊も召喚できるという。精霊召喚師だそうですよ?」
「リヴェリア様にふさわしい方ですわ」
「・・・・・・・・・」
店員のエルフ達に、ふさわしいなどと小言を聞く。
リヴェリアにふさわしいとは、勝手なことを言う。これがレフィーヤやアリシアが聞いたら何を言い出すかわかったものではない。リヴェリアも密かにこの縁談をするつもりだろうと思うが、普通にバレて同族に知れ渡っているぞ。これが自分の故郷まで知れ渡ったらどうするんだろうと思った
「こちらです」
「ああ、リヴェリア!俺だ!ジークフリードだ!お前の縁談を引き受けに来た!」
「ああ!入ってくれ!」
そうして、俺はエルフの店員にリヴェリアが待っていると思われる部屋に案内された。中にリヴェリアが居ることを、ノックをし確認してから扉を開けると、
エメラルドのような輝きをしたドレスを纏う。リヴェリアの姿が見えた
「15分早く着かせてもらった。リヴェリア」
「あ、ああ・・・・・見ない服を着ているな、紳士ドレスか」
「ああ、お前も綺麗なドレスを着ているな。似合っている」
「そ、そうか・・・・・ありがとう」
「ではごゆっくりお過ごし下さい。リヴェリア様、後ほどお食事等をお持ちして参ります」
「ああ、頼む」
リヴェリアが綺麗なエメラルドのドレスを着て部屋で待っていた。部屋は個室でテラスもあり、高価な机一つと椅子二つがある。椅子は向かい同士になっている。俺はその向かいの椅子に座る。机にはTカップに紅茶が二つと、透明なポットの容器に紅茶が置いてある
本当に似合う服をリヴェリアは着ていた。エメラルドのドレスなんてリヴェリアのイメージによく合う。化粧もしている。口紅にもしている、肌も綺麗にしている。イヤリングと髪飾りもしている。ハイエルフとしてドレスなどの着こなしやこういう社交界も理解している。流石だ。伊達にハイエルフを名乗っていない
とにかく縁談を始めようとする
「私の縁談に引き受けたことを感謝するジーク。お前としては・・・色々あまり納得しない部分もあるだろうが」
「その前に一つ、こちらから感謝を伝えたい」
「感謝?」
「以前俺の仲間であるヴェルフの親がここオラリオに、先に侵入した事の通達に感謝する。あれがなければ俺も対応できなかった。通達をこちらにも流してくれた事に感謝する」
「ああ、そのことか、お前にはクノッソスの鍵とそれに繋がる情報を以前渡してくれた。私たちのためではなくても、リーネ達のために渡してくれた。そのお礼としてもフィンもロキも返礼として通達しただけに過ぎない」
「だとしても感謝だ。おかげでひとまずは一件落着した」
縁談を始める前に俺は以前ヴェルフの親が先にオラリオに侵入した事の通達をしてくれたことを感謝する
あれが無かったら俺も対応できなかった。だから先に通達してくれた事を感謝する。本人達は以前俺が一つだけクノッソスの鍵と情報を渡してくれたお礼としてこちらにも通達をしてくれたらしい
何にせよ、お互い感謝の一つだった
そして
「それじゃあ改めて縁談を開始して、構わないな?」
「ああ、それで構わない」
改めて、リヴェリアの縁談を始める
本当は縁談以外にも、ここに来るはずのない『部外者』が来るかもしれないと伝えようと思ったが、聞かれたらその時はその時に対応しようと、いつまでも縁談が始められないのも困るため、縁談の方へと最優秀に進める
「まずはこちらから聞きたい。リヴェリア。なぜお前は今回俺に縁談を持ちかけたのか理由を聞きたい。わかっていると思うが、想いは伝えなかったが、俺は振られたも同然だと思っている。二年前のことで、でも俺はアポロンのウォーゲームを終わらせた後で水に流せと、過去のことは忘れろと言った。でも関係は経ったも同然だと思っている。それでも俺に縁談を申し込んだのか、理由を聞きたい」
「もちろん・・・・・・・・・私がお前を好きになったからだ」
「ほう・・・」
「確かに私は・・・・二年前のあの日、私はお前を信じてやれなかった。お前の流石の態度の悪さに。愛想を尽かしてしまった。本当のことを言っているにも関わらず」
「当然だな。だがあの時の対応は間違っていないと今の俺は思っている。それほど俺はあの時は哀れだった。それに証拠もなかった。口だけの信用は余程の関係でなければ信じてくれないと俺も受け入れている」
「手のひらを返すように、私は二年で良き成長をしたお前に惚れてしまった。だが私にはお前を信じることができなかったあの事件の後悔が今でも残っている。でもお前のことを夫として想いたい。今の私にはお前を想う資格を失くしている。だから私は・・・・・お前が私と結婚をしてくれるなら、お前のファミリアの団員になるか、冒険者そのものをやめて、お前の妻として専業主婦をするつもりだ」
「本気なのか?冒険者を辞めるのか?俺と結婚をするためだけに?」
「もちろん本気だ。これくらいのことをしなくてはお前に嫁げないと思っている。私にはお前の信頼を折ってしまった。いくらお前が過去のことを受け入れても、私にしては大きな後悔なのだ。虫のいい話だとは思うだろう。二年経って良くなったから復縁を頼むなど。私のプライドとかは関係なく、情けないと今でも私の傷になっている」
「それでも俺に恋を抱いたの嘘ではないと、自分の心に正直を持って俺に頼んでいるわけだな?」
「忘れられない。どうしてもお前のことをな。しかも私は40代でお前はまだ未成年の19歳。年齢としても、私の今していることはおかしいと思う者は多いだろう」
「他人は関係ない。これはお前と俺が決める話だ。他人にどうこうを言おうが思うにしても言わせておけばいい。年齢に関しても関係ない。別にお前はハイエルフにしてエルフ、俺より老化の遅い種族だ。見た目が若いから俺たちヒューマンでは熟女の年齢だろうと若く扱うから歳の差は気にしない。年齢に関しては見た目の誤魔化しとして言わせて貰う」
「そうか・・・・・二年前のことについて・・・・あの出来事の後で・・・・私はお前を振ってしまったも同然の関係となった。それについてはどう思う?」
「二年前のあの疑い事件は水に流した。だが・・・・・確かにお前との関係に切れ目ができたのは間違いないだろう。それは確実な関係になってしまったのは逃れようのない事実だ。特に俺としては仕方のない関係になったと、出来事が原因で折れてしまった関係にこれ以上自分からは用がない限りはなにもしないつもりだった」
「そうか、その復縁を・・・・私は最近考えていた」
「最近?」
「今までは・・・・諦めようと思っていた。でもあの女神アフロディーテの言葉を聞いたら・・・・なぜか私の心はお前のことを想ってしまう」
「なるほど・・・今まではもう俺との関係は冒険者の同業者くらいしか認識できなかったが、アフロディーテの愛のある言葉に唆されたのではなく、単にその言葉に羨ましさを感じたのか、自分も恋をしてみたい出来心で俺に頼んでみたわけか」
「あの女神の言葉に嫉妬したというのもある。あの女神はお前と結婚して子供も産みたいと言っていた。その理想のある家庭を目標にしていると聞いた私も、その女としての夢を目標にしたいと、遅すぎるかもしれない上に、後悔した相手に、もう一度復縁を頼もうと。結婚を無理にでも申し込んでいる」
「そうか・・・・お前の婚姻を申し込んだ理由は理解した」
俺を好意に想うとは、あのリヴェリアとは思えないが、俺は驚きはしなかった
事の始まりは、以前ヴァレッタを殺した後にアフロディーテが愛は素晴らしいと言う言葉をベートに言った時にリヴェリアも居合わせていた。その時に聞いて自分もその女としての道を歩もうと、今好きになりかけている俺に勇気を出して告白したようだ
驚きはしなかったが、本気で俺を好きになるとは思っていなかった
あそこまでの関係になれば、もう無縁になったも同然だと言うのに、それを戻そうとするとは、アフロディーテの言葉に本気で信じてみようと、愛をぶつけてきたのだと認識した
「ではこちらからも質問するが、なぜもう関係を途絶した状態だとわかっているにも関わらず、私の縁談を引き受けてくれた?」
「簡単な話、俺が気になったからだ。あそこまで関係となったのに、申し訳ない気持ちもあるのに、それでも俺に婚姻を頼む理由が気になるからだ」
「まあ、お前からすればそうだろうな・・・・」
「普通に誰もがそう思うだろう。俺の仲間でさえ『ありえない話だ』と言ってくるのが当たり前な程に、本当に手のほらを返すような話だと、何様のつもりだとも言っていた」
「そうだな、確かに私は傲慢だ。それは否定できない事実だ。それでお前にも酷い事をしてしまったな」
「もはや絶縁もいい所ではあるが、生憎俺はこのくらいなら恨む程度にはならない。人に蔑まれるのはもう慣れた。だからあまりにそんなことに対して悲しんだり怒ったりする感情は無い。だから今まで俺にした事へは水に流すし。お前がどんな想いを今しているか、今だけが大事だから。過去のことについてはもう何も想わない」
「ジーク・・・・・」
「過去のことで後悔した所で意味はない。過去は過去だ。受け入れるしか何もできない。むしろ俺はお前が俺と結婚してファミリアや冒険者を辞めていいのかと心配する。フィンはともかく・・・・レフィーヤやアリシアが泣くんじゃないのか?相手は俺だぞ?ヒューマンと結婚なんて他者からはともかく、お前の仲間や同族は納得しないんじゃないのか?」
「確かにそれは言われるだろうな。特にレフィーヤやアリシアからは、それでも私の選択だ。同じ同胞でもそればかりは文句は言わせない。好きな男に寄り添って共に生きたい。女としての幸せを得たい。私なりの夢でもあるんだ」
「流石のハイエルフでもそこまで王族扱いされてはウンザリするか、そこまで高貴な扱いは迷惑に等しいわけだ」
「いつまでも冒険者としてやっていけるわけがないと、一番私がわかっている。おまけにハイエルフと言う特殊な種族だ。子孫だって残さないとならない」
「故郷であるエルフの森の里の者やお前の両親にもそう言われているのか?」
「まあな、『いい加減結婚しろ』とは言われる。とは言っても、私に好きな人はお前しか居なかった。私の夢は未知の世界を見ると言う王族でありながら旅をしたいと言う冒険家の夢があった。だが私も女だ。男の妻になったり。子供も産んで。家庭を作りたいと、本当に母親としての道を歩みたいと思っている」
「そうか・・・・お前も引退をするような道を選ぼうとしているんだな」
経緯や仲間のことに対しても、リヴェリアは本気で俺と結婚したいがために、プライドを捨て、ファミリアの縁を切ってまで俺を選ぼうとしている
彼女は本気で女としての母の道を貫こうとしている。いつまでも冒険者としてやっていけないのは自分が一番にわかっているから、今度は子孫を残せる母親になろうと俺を選んでいた。
でもそこまではわかるが、なぜ俺を選んだのか
俺のどこが好意に想うのかを聞く
「先ほどお前は俺を好きになったと言った。俺の何が好きなんだ?」
「実力の方は関係ない、ロキ・ファミリアだからと私に釣り合うのは力を持つ男だと言ってくる者が多いが、私はお前の優しい所が好きだ」
「優しい所?」
「お前は以前も18階層で私の仲間が毒化している所を、あのフレイ様のルーン魔術で助けてくれた。それだけでなくこの前も死んだリーネ達にも鍵を渡してくれた。お前はこれまでも助ける義理のない者達まで助けてきた優しさがある。私はお前のそんな所を好きになった。それが理由だ」
「俺の内面を好きになるとは思ってもいなかった。お前としては俺が唯一ルーン魔術師だからとか、精霊召喚師だからとか、フレイの義弟だからとか、そっちの資格を所持しているから好きになっているものだと思っていた」
「他のエルフはそう思っているらしい。私がお前に婚姻を頼む理由がお前に今所持しているフレイ様から教わったものを全て継承しているからと、条件に合うと認識している。だが、そちらの方が一番どうでもいい。私は強いからとか弱いからだとか、そんな理由で男を選んだりしない。私が好きになる男は優しくて誰でも助けようとする勇敢な男性のみだ」
「勇敢な男性か・・・・・・それが俺だと、自分では思えないがな」
「そうでなくても、私にはお前が勇敢な男性として見える。お前は今までに多くの者たちを救ってきた。英雄になれたことも私はお前のやってきたことを振り返ればなれるのも当然だと思っている。それだけお前は多くの者達を救ってきたのだ。それも優しさがあってこその行動だ。勇敢でないはずがない」
「当たり前だと思って助けてきただけだ。敵には容赦なしに斬ってきた。最善を尽くしただけに過ぎないと思う。それでも優しさだと思うなら、そう思っても構わない」
「そうか・・・・・」
リヴェリアは俺の事を優しいと言ってくるが
俺は最善を今まで尽くしたに過ぎない。敵に容赦のない殺しをたくさんしてきた。そんな事をする男が優しいとはとても思えない。優しいと言うのは俺ではなくベルの方が似合っている。俺は優しいわけではない。ただそうした方が最善だと思っていただけの、限界を尽くしただけに過ぎない
「ここまでもう理由はたくさん聞いたと思うが、そろそろ・・・・・・・・・お前の気持ちを聞きたい。私の婚姻を引き受けてはくれるかどうかを聞きたい」
「本題の話か」
「ジーク。私は信用を取り戻してお前と夫婦になりたい。私の婚姻を引き受けてくれないだろうか?」
「・・・・・・・・」
そして遂にこの婚姻を受けるのか決断を迫られる
もうそれなりに理由も聞いた。他の者にも否定はさせないと覚悟も決めている。もし俺と結婚したらファミリアも辞めてこっちのファミリアに入るか、もしくは俺を支える主婦として冒険者そのものを辞めるか
本当に俺と結婚するために、俺に合う条件にしようと全てを捨てる覚悟をしていた。彼女はハイエルフと言うプライドが高かった性格だったのに、プライドも捨て、レベル6の最強魔導師と言われ、あのヘディンやヘグニすらも従わせるハイエルフと言う身分でもありながら
彼女は本当にヒューマンである俺と結婚を望んでいだ
それに対しての
俺の答えは
「返事については、一年後にもう一度お見合いをしてくれないか?」
「一年後に回す?」
「未成年と言う理由もある。まだ子供の俺にはわからない。まだ冒険者として夫婦円満な生活をするのはまだ俺にも抵抗がある。来年には20歳になる。正式に大人になってからそういう事を考えたい。子供に婚姻についてはヒューマンにとっては流石にまだ考えられない」
「そうか・・・・それもそうだな」
「それにお前も知っての通り、俺は今あのアフロディーテとペルセフォネとお見合いという名の宿泊をあの二人としている。今ここでお前に返事をすれば俺はあいつらに返事しなかった事を問われる事になる上に、俺が婚姻をしない道理が無くなる。俺が婚姻しない理由を成立させるためにはお前にも俺との婚姻の返事を一年後に回さねばあいつらも納得しない事。という理由で納得したか?」
「ああ、確かに私も強引ではあったな。そちらもお見合いと言うものをしているにも関わらず、私も一方的に婚姻を頼むなど、お前に迷惑にしかならなかったな」
「そんなことは思っていはいないが、お前どうせ断れるような形になることは予想していたんだろう?」
「まあな、それでも頼まずにはいられなかった。お前を好意に想うのは嘘ではないからな」
「でも一年後に返事を回すだけでも、まだチャンスがあると言う形を残すのだから、納得はしただろう?」
「ああ。まだ私にお前を想えるチャンスができたことは嬉しい」
もちろん予定通り、婚姻の返事は一年後に回した
アフロディーテやペルセフォネやエイナにも俺は一年後に返事を回した。あの三人に婚姻の返事を回したのに、今ここでリヴェリアに婚姻の返事をすればあの三人に何をされるかわかったものではない。だからここで返事を来年に回さなければならない。そうでなければあの三人が何をしてくるのか、敵が急遽襲撃するみたいに恐ろしく思う
リヴェリアだってそんな簡単に婚姻ができるとは思っていない。いろいろ俺とは悪い過去もあることだから、早々に上手く話が通るとは思っていなかった。でも俺を想うようになったのは嘘ではないと言うことで、今回このような形になった
これから一年に及んで、俺の事をよく知って貰い、それでも返事が必要かどうかを確認してから一年後に返事をする予定を入れる
のだが
「リヴェリア。今日から一年後のこの日まで俺の事を知り、俺がどう言う人間なのか改めて知ってからもう一度一年後に婚姻を頼んでもらいたい」
「なに?それはつまりいつかお前が私が嫌うようになることが起きるから、この一年で本当に婚姻をしていいのか見極めろと言うのか?」
「その通りだ」
この一年の間にロキ・ファミリアと敵対する日が必ず来ると俺は思っている。その時は真っ先に俺の味方はせずに、自分のファミリアを守るようにと、俺の味方ではなく。自分のファミリアを守るように呼びかけた
もちろんそれだけ理由ではない
「リヴェリア、この紙を見て欲しい。全部書かれてはいないが、俺のある一部のステイタスの内容だ」
「ジークのステイタス!これはカオス・ヘルツのスキルしか書かれていないが・・・・・・・・・・・っ!なんだ?何か一つ文章が多い。私たちのファミリアに居た時にはなかった筈の文章が!?・・・」
俺がヘスティアに頼んでおいた物は、俺のステイタスの紙
ただし、もちろん全て明かされているわけではない。明かされているのは一つのレアスキルのみ、それが
忘我混沌(カオス・ヘルツ)
怒りの感情が強くなることで絶大な魔力と力を得る。相手が強くてもレベル差が関係なく圧倒することが可能。更に感情を無くすことで異常なアビリティを成長をさせる
これのみしか書かれていない。でも十分だ。俺がここまで強くなりリヴェリア同様のレベルになれた本当の理由も、別のファミリアであるリヴェリアに見せるのはどうかと思う者は今この光景を見れば疑うかもしれないが、今俺を知ってもらうために必要だと明かす
「感情を無くすことで異常なアビリティを成長させる・・・だと・・」
「薄々は気づいていたはずだ。俺があれから二年で別人の性格をするようになったのも、たった一ヶ月つづでレベル5からレベル6に上がるのも、全て普通ではないと。俺のこのレアスキルが全ての原因だ」
「つまりこれは・・・・感情を失くす度にランクアップすると言うのか!?」
「ああ。まさしく強くなるための代償だ」
俺のステイタスの一部を公開する。
カオス・ヘルツに更なる能力を備えたと、元仲間だったリヴェリアが知るはずのない俺の唯一のもう一つのスキルを明かす。そうすれば俺が今どれだけ酷い男だと、知って貰うために元仲間だったリヴェリアだけに明かす。まだロキ・ファミリアだった時にはない力を。
「もういくつか感情を失った。おかげでレベル6になった。ロキ・ファミリアの時には無い。新たなカオス・ヘルツの能力だ」
「だからお前は・・・・・急激にランクアップしていたのか、確かにお前はなぜか二年前から別人の性格をしているなと思っていた。理由はこれだったのか。ランクアップをこのまますればお前の感情はどうなる?」
「ヘラの眷属と同じくレベル9になれば、俺は無感情の人形に成り果てるだろうな。それで強くなるなら仕方ないだろうと構わないがな」
「感情をなくして強くなるなど・・・・・そんなものを・・・・・いつからお前はその能力を得たんだ?」
「お前らに疑われた後、怒りだけでなく、誰もが信じられなくなり。どうせ裏切りられるのなら何も想わなくていいと。心を失った方がいいと考えていると、カオス・ヘルツに影響したんだろう。『心を捨てて力を』とな」
「っ!?それも・・・・・私たちのせいか」
「代償として俺は今も当然だと思ってこのレアスキルを使用している。犠牲無くして勝利は得られない。安い限りだ」
カオス・ヘルツの感情を失くしてアビリティの成長を強くさせる新たな能力にリヴェリアは驚いていた
薄々は気づいていたと思うが、まさかリヴェリアでも知っているカオス・ヘルツが新たな能力によりランクアップを成長させているとは思いもしなかっただろう。感情を壊して強くなろうなど、自滅もいい所、しかもその発現の原因が、かつて自分たちの疑いにより人の信用をすべきじゃないと、心を無にしてしまった事。リヴェリアにとってもまたも心にも響いている
「この一年の間に、俺を想えるのかどうか見極めてくれ。俺とお前は別のファミリア。また何か事件が起きて相反するようなことが出るかもしれない、お前達と対立になっても、俺を敵として認識し、最優先は自分のファミリアを味方にしろ。対立になっても自分のファミリアを蔑ろにするな」
「それは・・・・・・いつでもお前を想うのをもしもの場合は諦めろと言いたいのか?」
「俺はもう・・・・二年前のようにお前を想うことはできない。前にも散々に言うほど、『敵になれば想うことはない』と、口にしただろ?これがその理由だ」
「何度も人に対して、『情を感じない』などと、口にしていたが・・・・これがその理由だったか」
「それ程に、もう俺は人間としての感情を持っていないと言うことだ。とは言っても・・・・・・・それからのフレイのファミリアではまだ少しだけ感情はあったけどな」
「っ!?あの後フレイ様のファミリアに入ったのか!?」
「ああ、そういえばお前にはまだ言ってなかったな。ロキ・ファミリアを辞めた後はフレイ・ファミリアの団員になり。故郷の敵を殲滅するため、数多くの戦争をしていた。心が無いあまり多くを殺した。中には神もいた。それすら敵になった者を殺そうとした」
リヴェリアにロキ・ファミリアを辞めた後はフレイのファミリアに入っていた事を明かす
そこで他国といろんなファミリアと戦争をしていたと、フレイ・ファミリアの経歴を全てリヴェリアに話す。もちろんその中には、今戦争をしようとしているあの『ラキア王国』とも戦争をしていたともを明かす
アレスをも殺そうとした所をフレイに止められたとも話す。そして俺がそれ以来『デュオメデス』やたくさんの二つ名を故郷や他国でつけられるとも言った。フレイ・ファミリアで俺がレベル4になるまでの戦いを
そして、その最後の戦いをも明かす
「お前がフレイ様のファミリアに居たとは・・・・・だがなぜお前はフレイ様のファミリアをも辞めて、オラリオに来てあの神ヘスティアのファミリアに入団した?」
「それが一番に、お前に伝えたい事だ」
「私に一番に伝えたい事?」
「驚かずに落ち込まずに聞いて欲しい。これはもうフレイヤには聞いている事なのだが、俺が今告げるのはフレイのことに関してのことだ」
「フレイ様のこと?」
「俺がフレイのファミリアを辞めたのは、いや・・・・・辞めたのではない」
これがリヴェリアにとって、ハイエルフであるからこその残酷な真実
この縁談で俺は必ずリヴェリアに伝える予定だった。これはフレイヤにも伝えてあるフレイに関してのこと。これだけはもういつまでも秘密にするわけにはいかずに、俺はリヴェリアになぜ俺がフレイのファミリアでも辞めて、再びオラリオに訪れてヘスティア・ファミリアに入団したのか
その真実は常に一つのみ
「半年前、俺はある竜に襲われて、フレイが俺を庇って強制送還された」
「・・・・・・・・・は?」
「俺の故郷に、『ファフニール』と呼ばれる邪竜に襲われて、俺が戦いに挑んだが、危うい所をフレイが身を挺してまで庇って強制送還された」
「そんな・・・・フレイ様が・・・・・強制送還・・・されただと!?」
「ああ・・・・・・俺を守るために・・・・もう彼は天界に還った。そして俺はフレイの仇を取るために復讐をし、ファフニールを殺した。復讐は果たせたがフレイは犠牲になってしまった」
いつまでも隠す気はない。リヴェリアと言うハイエルフには大事な話だと。今この場で話すべきだと、タイミングは悪いかもしれないが、今この場にリヴェリアのみしか居ないこの部屋でなら誰も聞かれずに住むと、お見合いの場だと言うのに、そんな辛い真実を言い渡す。それでも俺が伝えるのはこの悲しみをリヴェリアに乗り越えられるかどうか試すためでもある。フレイが強制送還された事実を受け止め、それでも前へ向き合っていけるのか、それでも愛を信じるのかと、本当に俺を愛し続けられるのか試すためでもある
「こんなお見合いの場でこんなことを言うのは不謹慎にも程があるが、俺はそれを聞いてもお前は愛を信じて前へ進むのか、試練を言い渡すつもりでお前がこの残酷な真実を前にしても、お前は俺を思い続けることができるのか?フレイを信仰し続けて自分らの意志を保っていたお前達エルフが、その信仰していた者がもう居なくなっても希望が持てるのか?」
「それは・・・・・・」
「俺はフレイにたくさんの愛を教わった。それでも愛など信じない。愛など、所詮偽りだ。そんなの信じない。俺はフレイを失ったことでそれを覚えた。愛していると言っておきながら亡くなるなど、そんなもの、愛に意味などない」
「ジーク・・・・」
永遠でなければ俺は愛に意味など無いと信じなかった
愛していると言っておきながら失うなどなんの意味がある。俺には多くの者達にそれを言われた。愛しているだから守ると。愛しているいつまでも一緒だと。愛しているから嬉しいと。
だからなんだ?
そんなことを吐く者ばかりが『早死』にするんだ
優しい奴ばかりが早死にした。残された者達のことなど考えもしないで、なにが愛だ。くだらない。偽りに過ぎない、そんなものは嘘だ。あるはずがないそんなものを。『下等生物』共はなにを血迷ったことを口にすると。理解も意味もわからない。失う者などからの愛など何の意味もない。くだらない。なにが愛だ。くだらな過ぎる。なぜそんなことをいつまでも『下等生物』共は口にする。失う愛など、偽りに過ぎない
なのにフレイもゲルズもなぜこんなものを信じる
わかったことを言うな。偽りを口にするな。怒りを覚える。そんなものは。絶対にあって溜まるかと俺は腹ただしい
いや、そうじゃない
そうじゃないんだ。俺は信じないんじゃない
「違う・・・・・・愛はあるんだ。フレイから貰った愛も。俺を今まで愛してくれた人たちもあるんだ。だが・・・・違うんだ」
「違う?なにがだ?」
リヴェリアは突然の俺の世迷言に戸惑いもしたが、それよりもなぜその言葉を口にしたのか疑問を抱いた
俺だってこんなことを言う自分に疑問を抱いている。愛がある無いとかで悩んでいるとかじゃない。信じてない信じないとかも別だ。そうではないんだ。
俺が愛を
「欲しくないんだ。愛なんて・・・・どうせ失うんだから」
「・・・・・・」
リヴェリアに言っていたことは撤回する。エルフの一族がフレイを信仰にし、その信仰されていたフレイを失っても、お前達は挫けずに前を向いていられるのか
いや、そうじゃない
俺が一番、フレイを失ってから、愛なんて一瞬で無くなると覚えてしまったからだ
愛など受け取らない方がいい。どうせ失うからと。それに俺は一度は死んでいる。一度死んだ男に愛など不要。俺もいつかは死に。愛していると口にする者もいつかは早死にする。あのフレイでさえも、それを覚えた。だから望まない。失う愛など意味がないから手にしない。だから捨てた。心を捨てた
愛を感じないように、欲しないように、心を捨て殺し無にしてもう悲しまないように。信じないよりもあると言う確証よりも、手にしない方がいいと。多くの者たちに愛されそして失った俺に。愛なんて手にしても意味はないと、全て諦めていたのだ
「フレイを失った時、俺はこう思った。『嗚呼。俺に愛なんて不要だ』と心を捨てた。だからカオス・ヘルツが感情を捨て力を手にすると言う代償を手にした。リヴェリア。俺には愛などわからない。お前やシルやアルテミスやアフロディーテやペルセフォネが俺を欲しがるが、それでもわからない。俺にはそんなものなど必要ない。失うだけの愛など」
「ジーク・・・・・・」
フレイが教えてくれたのは愛と言う素晴らしさ。だが俺が得たのは愛の無意味だった。どんな希望も嬉しくない。感じない。意味がない。なにをしても無駄だった。答えることができない。シルの愛も、アルテミスの愛も、アフロディーテの愛も、ペルセフォネの愛も。きっかけはいろいろある。いろんな気持ちで彼女達は俺に惚れたのだろう
でも俺には感じない。シルのことを気になってはいたが、でもそれは彼女が『謎に包まれている』から知ろうとしただけであって、別にそれほど想っていない。でもつくづく彼女は俺の心に入ってくる。だから俺は彼女にだけ心が許せる。けど彼女は俺の心は理解していない。どの女もそうだった。誰も俺の気持ちは考えずに自分の気持ちを俺にぶつけてくる。心の無い俺に気を遣うことを必要ないと思うのか、誰も俺がどんなことを思っているのか気づかない
でも愛なんて俺には必要ない。だから勝手にすればいいと俺も人のことを考えない
そんな俺でも
「それでもお前は欲しいのか?俺を?リヴェリア。どうなんだ?」
「・・・・・・・」
そんな重い男を伴侶として選ぶはずがない。そんな男など婚姻した後で苦労するのみだ。いつかの戦場で戦死するか。愛想を尽かして捨てるか、のみだ。そんな男を欲しがる必要はない。愛を信じたにも関わらずいつか朽ちる戦士の男を伴侶にするなど意味のないこと。
と言っても
「それでも私はお前が欲しい」
「っ!」
リヴェリアは俺を求めた。これだけ自分を蔑むようなことを言っているのに、それでも彼女が俺を求めることに驚いた。何故そのようなことを求めるか聞く。彼女の欲望なのか、俺が美しいからと女性の欲としてなのか、理由は聞かなくてはわからない
「なぜ?俺をそれでも欲しがる?」
「自分を蔑んで私を遠ざけても無駄だ。お前はもう十分ヒューマンとしても冒険者としても戦った。フレイ様を失ったお前の悲しみが癒えない状態で、自分を蔑むのは誰もお前の傷を癒してくれる人が居ないからだ。だから私がお前の女となってお前の傷を癒そう、いつまでもいつまでも」
「それは俺を欲しがる理由じゃない。ちゃんと俺の質問に答えろ」
「とても優しいお前が自分を蔑んだ所で、重かろうが蔑もうが、人のために何度も守ってきたお前に惚れた。お前は何度も人々のために救ってきたお前が好きになってしまった。それだけの理由だけでは不満か?」
「まだあると言うのか?」
「女が男を惚れる理由はたくさんある。お前が綺麗で料理ができて暗い顔をしているけど優しくて昔笑っていた笑顔が眩しくてなど。様々な理由で私と言う女性は男性に惚れる理由は多くあるんだ。それに」
「それに?」
「私の好きな男がフレイ様を亡くした痛みで悲しんでいる所など見たくない。私はお前に恋をしてしまいお前を愛してしまった。フレイ様の代わりにあの時守れなかった私が今度こそお前を助けて守る」
「・・・・・・・・・・」
そんな言葉をシル以外に言う者が居るとは思ってもみなかった。それがまさかリヴェリアだったとはな。彼女のことは一年でロキ・ファミリアの所属期間中に知り尽くしたと思ったのだが、どうやら俺は彼女の全てまでは知り尽くしていなかったようだ。もしくは俺と関わったことで彼女自身が変わりつつあるようだ。
それにしても
「そうか・・・・・でも・・・・・失礼であるがやはり男である俺にお前たち女性の気持ちなどわからないな」
「カオス・ヘルツで感情を消されているから相手の気持ちもわからないのか?」
「いや・・・・・それは関係ない。カオス・ヘルツは自分の感情を徐々に消すだけ。単に男だから女の気持ちが察せないだけだ。やはり女が男を好きになる理由がわからない」
「そんなに難しいことではないぞ。お前は人を好きになったことはあるだろう?例えばフレイ様とか・・・・」
「確かにそうだが、相手が女であるなら理解は難しい。繊細な気持ちを持つ女性の気持ちなど、男では察するには難し過ぎる」
「お前は・・・なんだかんだで鈍いからな」
「それらしい事を最近ミアに言われる」
自分を蔑んだ所でリヴェリアには通用しないようだ
ならもう諦めるしかないだろう。彼女の思うままにさせればいい。俺の心に届くかどうかはわからないが、少なくとも彼女は本気で俺を求めるのなら俺が拒む理由はない。好きなように俺を求めればいい。俺のカオス・ヘルツに抗えるなら