その後はヘスティアに助けたことを報告し、後でお礼の内容を考えておくことを知らせて。夕飯の支度をして、食事を済ませる。食事をした後は片ずけをして、一人で夜は湖で明かりが無くなるクリスタルを見上げていた
「・・・・・・・」
「一人で空を見え上げているのですか?空と言ってもクリスタルですが・・」
「リュー・・・・」
一人静かに過ごすつもりが来客が出てくるとは流石に考えられず。リューが俺の方へやって来た。心配になって寄ってきた訳じゃあ無さそうだが、さっきのことで何か言いたいことでもありそうな感じをした
「たまには一人になりたい事もある。そう言うお前は『かつて団員だった仲間達』のお墓前りは済ませたのか?」
「ええ、今日の昼後に終えました。それでジークさんが心配でここまで来ました」
「心配って・・・・・ここは18階層だが?」
「モンスターの警戒ではありません。他の冒険者です。ロキ・ファミリアのテントに行ってまでかつての仲間の治療しに行ったんですよね?」
「ああ。礼はしっかりしてくれると言った。対価としては十分だ」
「あなたを疑った者達ですよ?リヴェリア様も居ますが・・助ける価値なんて無いじゃないですか?」
「お前も精霊みたいに言うんだな。俺は助けられる命は助けるべきだと、自分の自己満足で助けただけだ。それに今更あいつらを恨んでもどうしようもない。それに俺に助けられたあいつらは申し訳ない顔をしているからな。俺を疑った罪悪感は感じているようだ。恨む必要はない」
「そうですか・・・・・・やはり性格は変わっても。あなたの優しさは二年前と一緒だ」
「・・・・・そうだろうか?俺はベル達と同じく。ただあまい奴だと思っているんだが?」
「そんな事はありませんよ。あなたを疑ったロキ・ファミリアの団員を貴方は疑われて裏切られたにも関わらず助けた。私は二年前もあなたの優しさに救われました」
「ただ励ましの言葉を囁いただけだぞ?」
「それでも・・・私はあなたに癒されました」
リューは元はアストレア・ファミリアの団員
ダンジョンであるファミリアに騙されて、ジャガーノートと呼ばれる大型級の怪物に囲まれてしまい。リューだけが生き残り。他の団員がジャガーノートにやられて死んだ。その復讐のためにリュー一人で自分たちを騙したファミリアを暗殺し、今ギルドでブラックリストにされ、指名手配にされていた
そんな彼女と出会ったのは、二年前一人で酒場で飯を食べていた所。彼女に出会い。その時から俺の感知でレベル4の冒険者だと知ってからよく彼女と話していた。あの頃は新人だった俺は誰これ構わず聞いていた
彼女の過去も知って、何度も俺は彼女を励ました。母の復讐の辛さを知っているからこそ俺が励ませること。当時俺もおふくろの仇を取ってその後の辛さを知っていた
虚しい事も、悲しい事も。それを理解している当時の俺は、おふくろ同様に人の話を聞かないままなんでも無邪気になんでも行動をした。リューの忙しさを無視してまでよく励ましたのを覚えている
しつこく彼女を笑顔にする方法とかも試していた。ロキ並みに悪戯もしていたな、例えばベートの首に首輪をつけて『俺の犬です』とか色々彼女を笑わせたいがためにいろんな事をした
彼女は大いに笑い。それ以外のシル達も笑ってくれた
それでシル達とも出会って仲が良くなって今でもこんな感じだ
だが今の俺にはもう彼女達を笑顔にすることはできない。そして俺も笑う事はできない。良き友人だとリューは思ってくれるだろうか
「癒されたか・・・・・・・お前のためになれたなら幸いだ。もう俺にはお前達を笑わせてあげる事はできないがな・・・」
「性格が変わっている事に対して不自然に思いましたが、さっきヘスティア様から聞いたのですが・・・・・カオス・ヘルツですよね?感情を無くすことでアビリティが成長するスキルですよね?それが性格が激変したのでは?」
「・・・・・・・ああ。もう俺はいくつか感情を無くしている。ヘスティアもよく俺のスキルを見ていたようだな。俺のスキルのほとんどが代償の大きいものばかりだからな」
「何がなくなったんですか?」
俺が感情を無くなっていると聞いた瞬間。リューは焦り出した。確かに人の性格が簡単に変われるものではない
俺が性格が変わったりしたのは、俺のレアスキルであるカオス・ヘルツのせいで変わったのは俺も自覚している。そもそもこれが発現したのはフレイの仇を果たした時。痛い想いをしすぎた結果が感情なんて必要ないと思ったせいで、俺は4つの感情を失った
もう笑う事すら叶わないだろう。涙も流せない。もっと最悪なのは自分の命さえもどうでもいいと思っている。それは流石にヘスティア達もわかってはいないと思うが、このままランクアップし続ければ兵器になるとヘスティアは気づいているのかもしれないな
もちろんリューも、俺のことを友人だと思っているなら・・・・心配しているのかもしれないな
「『喜び』『恐怖』『悲痛』『恥』と言ったところか、笑う事も叶わなくなり。死ぬことが怖くなくなり、どれだけ痛くても泣くことや悲しむ事もできなくなり、恥らいさえももう俺には心から出せなくなった」
「もう・・・笑ってくれないのですか?」
「多分な・・・・・惨めになったな俺も。強くなるために何度も犠牲にし過ぎた。まだ自分のやるべき事を見失ってはいないから俺としては問題ないが、もう二年前みたいに笑わせてはあげられないぞ?」
「じゃあ・・・・・・・・・・・・今度は私が貴方を笑わせて見せます。自信はありませんけど」
「俺をか?」
「はい。私も大抵笑わせる事は得意じゃあありませんけど。でも!!そんな貴方を見たくありません!感情が無くなったらなら!私が・・・いえ!私とシル達で必ず貴方を笑顔にして見せます!!」
「落ちつけ。なぜそこまで俺のために・・・・」
「貴方が私を救ってくれたからです。道を見失った私にここまで導いてくれたのは貴方です。私は貴方と・・・・・・・共に歩きたいのです」
「共に歩くか・・・・」
「ですから!!わた・・・・私は・・・・・」
「ん?」
何やらリューがかなり必死になり俺の方まで近づいてきた。顔が赤いし。俺のために恩返しがしたいのはわかる。俺の顔の前に近づいてまで必死に何かを伝えようとしているのがよくわかる
彼女がここまで感情を剥き出しにして、俺に何かを言うのはとても初めてだ。シル達もそうだろうか。なぜそこまで俺のことで必死になるのか。彼女の気持ちがどうしても理解できなかった
でもほんの少しだけ。暖かさを感じる。カオス・ヘルツで少しだけ感情を無くしているとは言え。それでも心が温まるようなものを感じるのか、リューの優しさが俺の魂に届くのを感じた
「だから・・・私は!」
「リュー?少しいいか?」
「な、なんですか?」
「さっきから俺の後ろでヘスティア達が覗き見しているんだが?」
「え!?」
「「「「「「あ!?バレた!?」」」」」」
ほんの数分前。ヘスティア達が俺の様子を伺おうとここまで来たようだが。リューと二人で話をしているのを見かけて、いいムードだと思ったのか、邪魔をせずに俺たちの会話を聞こうとしていたらしい。居るのはヘスティアとリリルカ
だけでなく
アスフィや命と千草も。他のファミリアの女性陣が覗き見していた
「これはどういうことですか!?」
「いや、店員君これはだね・・・」
「女性としてつい見学したいと言いますか、いい雰囲気でしたので邪魔しないように見ていただけです」
「リリルカ。ハッキリと覗き見していたと言わないんだな?」
「意外ですね。あのリュー・リオンに想いを寄せる方がいるとは?」
「アスフィ君もどうかな?ジーク君のこと?どうか思ってない?」
「な!?ヘスティア様!彼は知人でありまして、そういう想いはしていません!」
「あともう少しでしたね?千草殿?もう少しでいいのが聞けたのですが・・・」
「流石にジークさんはレベル4だし。私たちのことは気付いちゃうよ。でも・・・・・・・聞いてみたかったな」
「人の会話を覗くだなんて、貴方方は何を考えているのですか!?ヘスティア様もですよ!!」
「いやあ!あははははははははは!ごめん。気になって?」
「それでそれで?『私は・・・』・・・なんですかリュー様?」
「え!?」
「続きを聞かせてよ?私は・・・・・なんだい?」
「わ・・・・わ・・・・・私は・・」
ヘスティアとリリルカが追い討ちをかけるように。今度はヘスティア達が居る前でリューが何かを言おうとした続きを聞こうと問い掛けられた
そうすると更に顔を赤くし。かなり困惑な状態になっている
ヘスティア達の前では言えないような事なのかと思っていると
「あ、居た居た。ジークさん!」
「ん?どうしたベル?」
「あっちで滝の湖がありましたので、男だけで先に入りませんか?」
「そうか、わかった。ヘスティア?俺たちは先に水浴びするぞ?」
「え!?ああ・・うん。わかった!」
「すまないがリュー。また後にしてくれ」
「え!?あ・・・・・・・はい」
「行くぞベル?」
「はい。でも話の途中じゃあ?」
「後でも聞ける。今はお前の言う通り水浴びでもしよう。他の奴らが来るかもしれない。行くぞ?」
「ジークさんがいいなら・・・・いいですけど」
「ああ・・・・そんな」
「ベル君。流石にタイミング悪いよ。もう少しでいいのが聞けたのに」
「リュー様。めげつに行きましょう」
「まだ機会はありますよ?」
「リュー殿!ファイトです!」
「恋する乙女は何度も挑むべきです!」
「やっと言えるチャンスだと思ったのですが・・・・・・無念です」
俺たちが去った後、リュー達が何やら呟いているが、声が小さくて何も聞こえないが、結局リューが何が言いたいのか知らないが、なにやらがっかりしている。俺はまずい事を言ってしまったのだろうか
後で続きを聞くようにしよう
そうしてテントから少し離れた北の方に行く。さっき俺が居た湖以外にも。ここに滝があるとは思ってみなかった。先に俺たち男性陣で水浴びをしている。とは言っても流石に夜に水浴びをするのも寒いため
『主?湯加減は?』
「いいぞ。少しここの湖環境を変えてしまうが。温泉になった気分でいいだろう?」
「うわあ!あったかいです!」
「こりゃあすげえマジで温泉だ!」
「いい湯加減だ!」
「これは考えたねジーク君。火の精霊サラマンダーを湖に入れて、水の中で燃焼させて湖の水をお湯に変えちゃうだなんて」
「でもサラマンダー。あんた湖に入って大丈夫か?火の精霊なんだろ?」
『問題ない。私は竜みたいなものだ。単に竜が湖の中に入って水浴びをするようなものだ。全然問題ないぞヴェルフよ?』
滝の下の湖でサラマンダーを召喚させて。お湯を沸かし沸騰させるように。サラマンダーの体温を上昇させて湖の温度を暖かくしていた。直接背中から火を出すと火傷をする程の温度になってしまうため、体温だけで調節し、湖を温泉に変えた
「いやあ!まさかダンジョンで温泉に入れるなんて夢みたいだね!ベル君?」
「そうですね!とても気持ちいいです!」
「あいつらにも入らせてやりたいな。ジーク?俺たちの後で命たちにも頼めるか?」
「そのつもりだ桜花。構わないかサラマンダー?」
『主の仰せのままに』
「ふう!こりゃあいいぜ!マジで爽快だ!」
「疲れが取れそうですね?」
「そうだな・・・」
「なあ?せっかく俺たちにしか居ないんだから、ガールズならぬ、ボーイズトークをしないかい?」
「ボーイズトーク?ヘルメス。俺たち男だけでなんの話をするんだ?」
「例えば・・・・・・・君達は好きな女性は居るのかい?」
「「「え!?」」」
「なんだそんなことか」
ヘルメスが何を言うのかと思いきや。そんなことを言うとはな
まあ男同士でならしそうな話だとは思った。男同士で温泉に入っていればこのような話は幾つでもあるだろう。それにヘルメスならではの内容だ。俺はともかく別の人間のことを聞いても意味はないのだが。興味はあったりはする
女性を好意を抱く気持ちを聞いてみたいからだ。
感情が薄くなっている俺には是非とも知りたい。それを聞いたら・・・・・・・・まだ残っている俺の感情だけで、愛がなんなのか知ることができるかもしれないからと
俺から賛成の言葉を出す
「聞いてみたいな俺は」
「おや?ジーク君が乗り気でいるとは思わなかったけど。彼はこの話に賛成な様だよ?」
と、俺は自らこの話に同意を求めた。三人が乗り気でない為にレベルの高い俺が同意を求めれば、話に参加してくれると思ったからだ
少し三人は動揺しているが
「じゃあヴェルフ君から聞いてみたいな。誰か居ないのかい?」
「俺ですか・・・・・・・・俺は・・・・・・ヘファイストス様です!!」
「「「おお!!」」」
「ほう・・・・・主神に恋を抱くか・・」
「まあ・・・・俺はあの人に感謝もしているからこそってこともある。あの人俺がファミリア内で孤立している時、いつも側で俺の鍛治を見てくれるんだ」
「お前がクロッゾだと知った。椿以外の団員がお前に嫉妬して孤立したわけだな?」
「ああ。でもあの人は俺を見捨てなかった。ちゃんと俺のことを眷属だと想っていつも俺の隣で見てくれる。そんなあの人を好きになっちまったんだ。あの人自分が綺麗じゃないとか。眼帯の下を俺に見せて女神らしくないって言っているけど、それでも俺にとっては美しい女神で・・・・・・いつかいい作品を打てる鍛治師になったらあの人に告白しようと思っているんだ」
「へえ・・・・すごいね。あのヘファイストスが眷属に自分の右目を見せるなんて、それでも女性として見るヴェルフ君も立派だよ」
「そういえば見た事ないな。あのヘファイストスの右目。眼帯しててわからないが、確かに魅力が無いとかいつも素っ気ないことを言うのは知っている」
ヴェルフの異性を想う相手はヘファイストス
確かに彼女の右目の下はどうなっているかは知らない。見たことある人間はヴェルフくらいだろう。自分のことを美しくないと言うのだから。予想で言うなら傷があるか、何かで焼けた跡のついた顔ではないかと思う
だが、どんな顔をしていようが、孤独だったヴェルフを温めたのはヘファイストスで間違いないと話を聞いてそう思う。何がどうあろうと孤独は辛いものだ。それは俺が苦しいほど経験しているからわかること
そんな孤独から救われたヴェルフは。ヘファイストスがどれだけ美しくない女神でも、彼女の暖かさを理解して手に入れるためにいつも必死にいい武器や防具を作ろうとしているのを感じられた
孤独から始まる愛だと言うのだろうか。そう言ったものを理解した
「いいねいいね。男なんだからこうでなくちゃ!じゃあ桜花君は?」
「俺ですか!?俺は・・・・・・団員である千草のことを・・・・・愛焦がれている」
「お!?あの千草ちゃんか!」
「髪で片目隠れているあの女か?お前には悪いが少し気弱そうだが」
「ああ、ジークの今の言葉は間違っていない。その通りだ。彼女は気弱な性格なんだ。でもな・・・・・・意外とああ見えて頑固なんだ」
「頑固?」
「ああ。俺はいつもいつも無茶ばっかしていてな。正直団員には申し訳ないほどいつも無茶をして傷だらけでダンジョンから帰ってくるんだ。ホームに帰れば当然その時にいつもタケミカヅチ様に怒られるのだが、それよりキツイのが千草でな・・・」
「あの彼女が怒るのか?お前に?団長に?」
「ああ。怪我を治しながらいつも怒られる。気弱な性格なのに、俺のことになるとなんでも怒って怪我の治療をしてくれる。俺の様な無鉄砲な奴にいつも付いて来て助けてくれる千草が好きなんだ。俺の様な弱い奴に着きそう必要なんて無いのに。俺の助けのためにあいつはなんでもしてくれた。多分俺は千草が居なかったら生き残れて居ない。いつも俺のことを助けてくれる千草が俺は好きだ」
「いつも助けてくれる・・・」
桜花はヒタチ・千草を想う
確かに女性に助けてもらうと言うのは、心に癒しを貰うのと変わらないものだろう。心配して怒るのは彼を思ってのこと。気弱そうではあるが桜花を想っているのは確実だろうな。本人は気付いてないようだが、千草もそのような想いがあるのでは無いかと疑ってしまうほど愛があると思っている
でもそれを聞くと少し懐かしい気もする
よくアイズに心配をかけられたことが何回かある。当時俺も何度か一人でダンジョンに行って怪我をして帰ってきた時よく治療してくれた。ひつこい程に。放っておけばいいのに彼女は俺のことをよく心配しながら傷を治してくれた
そのようなものだろうか、心配して想ってくれると言うのは
未だに俺にはまだ恋と言うのをわかっていなかった
「じゃあ次・・・・・・ベル君は?」
「僕ですか!?・・・・・僕は・・・」
「もしかしてアイズか?」
「え!?ジークさん!?わかるんですか!?」
「おお?君も剣姫か?」
「どうしてわかるんですか!?」
「お前昨日からアイズと一緒に居ると困惑したり、あいつがお前に話しかけたりするとぎこちない会話をしたり、あいつの前だと照れている所を見せるなど。もしかしたらと思ったが・・・・・当たっていたか」
「それでどうなんだい?」
「えっと・・・・・・・好きでもあるんですが・・・・憧れているんです」
「憧れている。確かヘスティアから聞いたが、お前は一ヶ月前7階層で下の階層から逃げてきたミノタウロスに襲われてアイズに助けられたのを聞いた。憧れ出したのはそこからか?」
「はい。あの人に・・・・・追いつきたくて強くなりたかったんです。前にアイズさんのファミリアの団員の中に狼人が言っていたんですけど、『あの剣姫に釣り合うには強くなくちゃ意味がない』って聞いて、憧れ出した時からあの人に近づこうと強くなろうと必死にしていました。あの人に届くように毎日努力して。今はあの人はレベル6で遥かに遠いですけど、あの人みたいに強くなれば僕のことをしっかり見てくれると思うんですよね。あの人なんかあまり人には興味ない顔をしていますから・・・・・・で正直に言うとジークさんになりたいなと思っています」
「俺に?なぜ?」
「ジークさん。昨日から思っていたんですけど、すっごくアイズさんに懐かれていて、元団員だっただけのことがあるのか。アイズさんやティオナさんだけでなく、信じてくれなかった他の団員にも優しく接していて、アイズさんは今日もそうでしたけど。ジークさんの所に来ては甘えているように見えました。それくらい・・・・・・二人は仲がいいなと思いまして、ジークさんみたいになればアイズさんに近づけると思っていたんです。勝手ではありますけど・・・・」
「・・・・・・・・」
確かにあの中で一番一緒に居たのはアイズで間違いない。
でもあいにくベルには言えないが、アイズは世間知らずな女で恋がわかっていない。それに俺はアイズのことを強さでは負けては居るが、俺は世話の焼ける妹としか思っていない。
あいつは恋心と言うのを理解していない。そんなことをベルに言うべきかは悩むが・・・・・・俺に甘えているのは俺の飯が目当てであって、別に俺に恋をしているわけでない
と
ベルに言えるわけもなく、あまりに憧れが強くて言えなかった
「へえ、ベル君もいいね!まだ少年なのにいい目標を持っているじゃないか!じゃあ最後に・・・・・・ジーク君は?」
「ん?俺か?」
「ああ、そうだよ?誰か居ないのかい?憧れているでもいいんだよ?」
「俺は・・・・・・・・
居ない」
「え!?本当に!?」
「おいおい!?そんなことはないだろう!?」
「俺たちだって恥ずかしくても答えたぞ!?」
「居ないってことは・・・・・無いんじゃないですかジークさん?例えば・・・・・・やっぱりロキ・ファミリアになりますけど、アイズさんとかティオナさんとか・・・」
「そうだな・・・・・ハッキリ言うなら・・・・『昔は
居た』・・・だな。今は居ないだけだ」
「昔は居た?昔って・・・・誰だい?」
「それは・・・・・・・・・」
確かに居た。昔と言うより、二年前に。
俺が絶望を知るまでは
もう俺の恋は叶わないと全部を捨てたも同然だった。もう俺は疑われて振られたと思い、もう誰にも知られないままにしておこうと、もう心の無い俺にはそれを奥に仕舞うどころか、心が無い限り初恋も捨てたも同然だったからだ
それで二年前は強くなろうともしていた。でももう叶わない
その相手は
「リヴェリアだ」
「え!?」
「リヴェリアって!?」
「あのロキ・ファミリアの『ナインヘル』のリヴェリア・リヨス・アールヴ!?」
「マジかよ!?お前!?あんな歳上の女性に昔恋をしていたのか!?」
「ああ、歳の差は全然考えていなかった当時は・・・・・これでは昔と言うより二年前になるが・・・彼女と付き合えたらいいなと。彼女がハイエルフだと知ってもな・・」
「す、すげえ・・・・」
「あのナインヘルに惚れるヒューマンなんてワンサカ居るが。ここにも居たなんて・・・・・」
「でも・・・・・どうしてリヴェリアさんなんですか?」
「まあ・・・・・色々ある。あいつは本当に母親らしいと言うか、おふくろみたいに母親気質のある所があるんだ。よくロキに『ママ』とか言われていて。本当に我が子のように心配したりとか、リヴェリアとは思えないような場面を目にしてな。俺のこともよく心配してくれて熱意のある女性だと思った。失礼だと思うけど。母親に似ていたんだ」
「母親?トールかい?」
「ああ、彼女は・・・・おふくろに似ていた。どうも俺は母親に恋しいのか、おふくろを亡くしたあの後でもリヴェリアは何処と無く母親と同じような熱意を感じてな。だから・・・・・・ハイエルフだろうと、彼女の相応しい男になろうとはしていた。他のエルフが反対しても強くなって紳士な男になろうとはしていた」
「おお・・・・すごい」
「あのナインヘルを相手にマジで恋をしようだなんて・・」
「ジークの方が熱意があるじゃねえか・・・」
「ジークさんもそんな恋があったんですね!」
「じゃあ・・・今は?彼女にも会ったよね?」
「ああ・・・・・・だが俺はもうこの歳になって、色々経験すると恋がわからなくなったがな」
「え?」
「もしかして・・・・・そのリヴェリアに疑われたから?」
「それもある。重い話になったり暗い話になるけど。俺はもう現実や絶望を知って。自分の生きている意味がわからなくなってきたんだ」
「自分の生きている意味?」
「ああ。俺は14の頃。俺は自分の不甲斐なさで大切な者を守れず。そしてそれから17の時に信じていた仲間をも疑われ。そしてそれから18の時に多くの仲間も亡くして。俺は辛いことばかりだった。何を信じたらいいか。わからないまま今も生きているんだ。ここに来たのはフレイの願いのために『立派な冒険者になって欲しい』と言われ。ただその通りに動いているだけであって、自分の意思では無いんだ。恋していた相手には疑われ。優しい人がどんどん死んで、一人になって。俺は一体なんのために生きているのかわからなくなった。本気で頑張っていた目標が変な神に壊され。関係のない奴が俺の大切な人を奪い。自分の積み上げてきた信頼が無くなって。どんな苦しみにも耐えて諦めずにいたものを壊されて奪われて貶められて侮辱されて。生きているこそが罪だと自分を攻めたことがいくつもある」
「ああ・・・・・君は本当に切ない生き方をしているね?」
「ああ。だが俺はこのままでいい。恋ができなくてもいい。フレイの願いが叶うなら俺の恋なんでどうもいい。もうフラれたも同然だ。今和解しても嬉しくもない。もう俺はリヴェリアに恋心を抱く事はできない。この事は本人に言うなよ?今この階層に居るんだから?」
まあ。言うなら若い頃にはしゃいでいた想いのようなものだ。思春期でも言うのだろうか、異性に恋を抱いたり一目惚れをして浮かれていたものだ。俺だってヒューマンなのだからエルフの美しさに見惚れる事だって良くあった。エルフと言う名の美しさは絶大だからな
もう抱く事はできない。俺の心は完全に恋なんてどうでもよくなった。疑われたのはフラれたも同然。今更振り向いてくれても俺にはもう彼女を想う心は無い。ボロボロに崩された俺の心は尽きた。このまま本人に知られないままにして欲しい
今更恋を抱かれていたなんて、あいつが何を言うか想像もしたくなかったからだ
俺の初恋はこれで終幕だな
「ん?」
すると、遠くから何か多くの冒険者達がこちらに向かっているのを感知した。この魔力からして、『あいつら』で間違いない
「え!?」
「な!?」
「・・・・・」
それはロキ・ファミリアの女性冒険者たちだった。こいつらもここで水浴びをするつもりだったようだが、サラマンダーが湖に入っているのを気づかずに湯気が出ていると思い温泉かと勘違いしてここに来たのかもしれない
サラマンダーの体温で温泉にしていると知らずに
「「「「うわああああああああ!!!」」」」
「「「「きゃああああああああ!!!」」」」
「・・・・・・」
ベル達は女性の前で裸である事を恥じらって大声を出して叫んだ。ヘルメスも一緒に。裸を隠しながらサラマンダーの裏に隠れた。俺はそのまま裸を隠さずに立ち尽くしている
それはロキ・ファミリアの女性の方もそうだが、アイズやティオネやティオナまでも居た。そして大きい悲鳴を上げたのはアイズとティオネとティオナ以外だった。リヴェリアも居る
「じ、ジーク!?なぜここに!?」
「リヴェリアか?水浴びしていた。サラマンダーの体温で水に浸けて温泉に変えてな?」
「それはわかったから!下を隠せ!」
「は?何がだ?」
「ちょ!?ジーク君!?下を隠した方がいいよ!」
「ん?ああ・・・・これか。別に見なきゃいいだけだろ?」
「ちょ!?ジークさん!?なんで下を隠さないんですか!?」
「だから別に見なければいいだろレフィーヤ?男の汚物なんて女からすれば見たく無いだろ?それに俺たちが先に先約していた。俺が裸だろうと先に水浴びをした俺たちの自由だが?」
「ちょ!?あんた何やっているのよ!?」
「へえ・・・・ジークの下ってそうなっているんだ。ていうかいい体している」
「ああ・・・・・」
「ちょ!?ティオネさんもティオナさんもアイズさんも!?ジークさんの下を見ないでください!!と言うか見てはダメです!」
「ジークさん!行きましょう!」
「ベル?」
「ああああああ!?アイズさん!?」
「ベルの体・・・・そうなっているんだ?」
「あああああ!!もう僕お婿に行けない!!!!」
「おいベル?どこに行く?」
「ちょ!?ジークさん!?」
「お願いだから下を隠してジーク!?」
「見なければいいのに」
「ジークは・・・相変わらず恥じらいがない」
慌てて俺の下を隠そうとしたベルが出てきた。だが、目の前に居るアイズに裸を見られて。憧れていた相手に全てを見られて泣きながら裸のまま逃げて行った
リーネとアキが必死にも俺の下を隠してくれと言ってくる。恥じらいが無いと言われるのは否定しない。おふくろの血が俺の体に含まれるのか
俺もおふくろ同様に裸を見られても恥じらいを見せなかった
でもお湯に浸かるのはもう十分だった
「もう十分お湯に浸かったしな。サラマンダー?この後ヘスティアにもここに入って貰いたいのだが、このまま入って貰ってもいいか?」
『構いませんが・・・ロキ・ファミリアもですか?』
「敵じゃないから何もするな。争い事を作るな。いいな?」
『わかりました。主の言うことなら』
「おい行くぞ?」
「は!?裸のままで!?」
「なら、これで腰に巻け」
「お前本当になんで恥ずかしがらねえんだよ!」
「男らしいとは思うけど!?流石に女の前で裸にならねえよ!?しかもロキ・ファミリアの女冒険者の前で!?」
「ジーク君って本当に・・・トールの子供なんだね?」
「恥ずかしいいなら見なければいいだけの話だ」
そうして俺たちは湯から出る。ヴェルフたちは腰に急いで俺が渡したタオルで腰に巻き、すぐに湯から出て遠くに服を置いてある森の茂みで着替えようとする
ヘルメスが確かにトールの息子だと断言している。こればかりは認める。おふくろ同様に恥じらいが無かったのは俺でも自覚はあったからな。しかも二年前にリヴェリアに裸を見られた経験がある
その時も俺は恥ずかしがっていなかった
未来永劫俺は恥じらいを覚えないだろう。もちろん女性の裸を見ても恥じらいを見せないだろう
だから今アイズとティオネとティオナ以外はかなり俺の裸を見て恥ずかしがっているが、俺は当然気にせずに俺は湖から出た
その後ヘスティア達にもサラマンダーが湖を温めて温泉に変えたから湯に入れると行って、若干意味がわかってないようだが、行ってみればわかると、ヘスティア達に意味も問わずに行かせる。先にロキ・ファミリア達も居るから問題ないと思い。それ以上のことは何も言わなかった
明日を控えて俺以外の団員は全員寝ていた。主神二人も含めて。温泉に出た後は体の汚れが何一つ付いてないように綺麗になってヘスティア達は帰ってきた。もちろんその後は明日のことを説明して就寝するようにヘルメス達にも指示した
それでも起きているのは俺とサラマンダーくらいだった
昔からそうだが、上手く眠ることができず。こうしてテントから離れた所の森でブラギの竪琴を奏でて少しでも眠るようにしようと奏でていた
今度は歌わずに、ブラギの竪琴は弾き方を変えれば、眠気を引き起こすような静かな音色を出す
今頃ベル達やヘスティア達は気持ちよく眠っている頃だろう。サラマンダーも俺の背中の後ろで眠たそうにしている
だが
『いい音色ですね・・・・・・ん!?主!?』
「ん?」
「ジーク。少しいいか?」
『なんだリヴェリア・リヨス・アールヴ?ハイエルフのお前が主になんの様だ?もう主以外の団員や主神様も就寝なさっていると言うのに!』
「サラマンダー?大きな声を出すな。あいつらが起きる」
『申し訳ありません』
一人でリヴェリアが俺の方にやってきた。しかも他の団員は連れて行かずに、そっちも他の団員は寝ていると見る。そこを狙ったのか、夜遅くまで起きていたようだ。俺が一人で居る所を確認した上で
「それでなんの用だ?」
「先ほど私たちもあのお前達が浸かっていた温泉紛いの湖にお前達が出た後にヘスティア様達と共に入って会話していたのだが・・・・」
「それがどうした?」
「その会話の途中でサラマンダー様から聞いたのだが?」
「なんだ?サラマンダー?何を言った?」
『ああ、それは・・・・・・・・・・
主が二年前にあのリヴェリア・リヨス・アールヴが好きだったと話してしまいました』
「・・・・・・・そうか」
「お、驚かないのか?」
「いつかはバレるものだ。サラマンダーにも誰にも言うなとも口止めをしても居なかったからな」
『申し訳ありません。出過ぎた真似を』
「構わない、言ったことは仕方ないことだ」
これでも俺は恥じらいを見せなかった。別に過去の初恋で恥ずかしがる必要もないし、過去は過去なため、今更動揺してても仕方なかった。誰かに言われたところで所詮は過去の恋だからな、今更そのような話をされても俺には何も言えない
だから
「それに関して何か言いたいことでもあるのか?リヴェリア?」
「本当なのか?・・・・・二年前私が好きだったと言うのは?結婚も本気にしていたと?」
「ああ。ヒューマンである俺がその好意をお前が受け止めるとは考えづらいとは思ってても居た。ハイエルフでも、そんなことを聞いた他のエルフもうるさいと、条件としてはキツくてもな?」
「そうだったのか・・・・・」
「それでなんだ?それだけか?」
「あ、いや・・・・・・・その二年前に言う気は無かったのか?」
「あの頃じゃあ俺は弱すぎて、お前に相応しくない。だから言わなかった」
「そうか・・」
「さっきから何が聞きたい?何が言いたい?」
「いや・・・私は・・・」
「過去に俺がお前を好きになっていたからなんだ?それを聞いてどうするんだ?」
「今でも・・・・・その想いを今でも変わらないと思って聞いたのだが・・・」
「あんなことがあって、今でもお前に想いを抱いていると思っているのか?今更俺がお前に恋をしていると知ったら振り向いてあげようとしたのか?俺がフレイの幼馴染と精霊の主なら相応しいと思っていたのか?お前がいい加減な奴ではないと思うが、たった二年で俺の変わった姿を見て随分とコロッと態度を変えるんだな?」
「あ。そうだな・・・・・私も悪気はありすぎた」
「もう俺はフラれたも同然だと思っている。あの時信じてくれなかったお前に俺は逆に愛想が尽きた。お前が二年前俺のことをうわべだけしか見てないこともハッキリした」
「な!?私はお前のことをうわべで今まで見ていたわけでは・・・・・」
「じゃああの時なぜ俺を信じなかった?うわべだけじゃ無かったらお前は俺のことを証拠が無くても信じてくれたんじゃないのか?」
「そうだな・・・・お前の言う通りだ」
「お前?ハイエルフだからいつも上から目線で言うとは思っていたが、俺の価値が変わった瞬間。態度を変えるとはな。偉そうな奴だと思ったがここまでだったとは」
「す、すまなかった」
「謝らなくていい。もう終わった話だ」
正直言って、失望も良いところだ
俺は二年前こんな奴に恋をしていたと知ると思うと、自分がバカバカしくなっていく。まさかあの冷静かつクールな女だと思っていたが、自分のしたことを忘れて俺の縁を戻そうだなんて、どうせフレイの幼馴染と精霊の関係を取り戻すためだっただろう
俺の価値を全然見てないも同然だな
かつて疑った相手を助けなかった奴が、今更好きになれるわけないだろうに、救い用がないと言うか。もう俺は嫌いにもなりそうな想いだった
見る影も無いと言うのはこういうのだろうな
所詮はハイエルフだったて事だ
「この話はあいつらにも聞いたんだろう?あいつらに聞かされるのは最悪だな。言いふらされそうで面倒だ。だからお前らの所の女どもはお前から誰にも言わないようにしろ?こんな話二度としたくない。それほどお前のことで愛想が尽きた。フラれてよかったと思うくらいにな?お前?二年前にいい人が居ないだとか。色々言っていたようだが、結婚しないじゃ無くてできないの間違いだろう?お前のそのハイエルフらしい上から目線を直さない限り、お前の価値はその程度だ」
「ぬう・・・・認める。今のお前の言う言葉は正しい」
「俺もよくこれ程言いたい放題言える。それほどお前の呆れた言葉にウンザリしたんだろうな?」
それほど信じられなかった
ふざけるなも良いところ。俺の心がスカッとするような気分じゃない。怒りをぶつける想いだった。こいつも俺に間違ってない言葉を言われて言い返すこともできないまま黙ることが多い。二年前は散々言い返していたのに、立場が変わるとこうも弱くなるとはな。醜いにも程だった
もう話したくもない
「もういいだろう?これ以上終わった話を掘り返したく無い。もうこの事は忘れろ。これは過去の話だ。何があろうともうこの話はするな?いいな?」
「そうだな・・・・・私は許されない事をした。本当にすまない」
「だから謝るな。俺はお前らのと縁が切れればそれでいい。それさえ望めばあとは世迷言だと思って受け取る。お前もそう思って忘れろ」
「・・・・・わかった」
「もう遅いぞ?お前ら明日も早いんだろ?テントに戻れ」
「ああ、話を聞いてありがとう」
「ああ」
そうしてリヴェリアはテントに戻って行く。少し落ち込んだ状態で
あの様子なら俺たちとあいつらの関係に溝が入ったのは確実だろうとリヴェリアは思い知っただろう。そうでなくては困るがな、俺は本当にあいつらとは縁を切たいと必要以上に思ってしまう。やはり恨みは無いとは言っても。どうでもいいと強く思うほどに、関係があったことすら抹消したかった
疑った相手に関係を取り戻すなんて、あいつは大人だからそれくらい常識わかると思うのに、なぜそこまでのことを理解しないのか
あいつの気が知れなかった
サラマンダーを世界樹に帰らせて。紛らわしい気持ちになった上に余計眠れなくなったが無理にでも寝た
正直もうあいつらと一緒に階層に居るのが面倒になってきた。面倒な事を何度も聞いてくるのがウンザリと思うのか、あいつらと会うのが段々嫌になってくる。もうファミリアの仲間でも無い俺に何故そこまで関わりを入れてくるのか理解できないまま
その日を終える