縁談が終わって次の日になった。
リリルカとフィンの縁談は街で話題になる事はなかったが、俺とリヴェリアの縁談はオラリオで話題となっていた。理由はオラリオの市民街に住むエルフ達がリヴェリアの縁談のことを他のエルフ達にも流していたようで、その話題が街の人々の耳にも流れてしまい。街の人々が『英雄雷帝とハイエルフの禁断の恋』などと。ロマンに感じる者たちが勝手に俺たちの縁談を持ち上げ、オラリオ街ではその話で持ちきりとなっていた
今日はまだ外に出てないからその話を聞かないが、今外でポムの店から帰ってきたリリルカから『昨日の夕方からそのような話で街が賑わっている』と、ノームの店員からそのようなことを聞いたと言っていた。今日もやるべき事のために外出をするのかもしれないが、その話題が街の人々から言われたら即対応することを考慮している
そして今は何をしているかと言うと
「ジーク君。昨日あんな事があっても、暇な時間が続くね?」
「仕方あるまい。もうほとんど出店も閉まっている所もある。ダンジョンも残念ながらもう昨日で封鎖した。アレスの戦争が今も迫っているんだ。ここから遠くとは言え。何が起こるかはわからないからと冒険者を街へ置いたままにするギルドの方針の結果だ」
「僕もバイトも休み続きだから、書類仕事を手伝うね」
「感謝する」
俺たちヘスティア・ファミリアは昨日あんな事があったが、全ファミリア街に待機命令が出ているため、ホームから出ずに過ごしていた。ヘスティアも今日は珍しくバイトが休み、ジャガ丸店もヘファイストスの仕事も今は休みで、俺の書類仕事を手伝ってくれる。
俺とヘスティアは書類仕事。リリルカはこれからヘスティア・ファミリアの家計と現時点の全額の計算。ヴェルフは全員の武器や鎧の調整。ベルはヘクトルに外で木刀で修行に付き合って貰っている。アフロディーテとペルセフォネは洗濯、エイナとシルとヘファイストスは外で仕事中
それぞれダンジョンとオラリオ街に行く事がなければ外出をしても大丈夫なのだが、それぞれ休日を過ごすように自分がしたいことをして過ごしていた
「そういえば聞きたかったのだけど。春姫君はダンジョンでは大丈夫だったかい?」
「ああ。初のモンスター狩りだったが、言う程手古摺るような場面はなかった。焦りは流石に初めはあった。ほとんど今までイシュタル・ファミリアの護衛付きで春姫自身は戦ってなかったようだからな。だがモンスターの行動パターンを耳で把握し、習性や特性までもほぼ見切っていた。自身が戦ってなくてもモンスーの行動を守られて見ていた経験があるのか、モンスターの動きを見切るのがリリルカ同様に判断が早かった」
「そうなんだ。初めてのダンジョンだって春姫君から聞いたから、大丈夫かと心配したけど、問題ないようでよかったよ」
「もし問題があるならアイシャを呼んでいた所だからな」
確かに春姫はダンジョン探索は初だった
でも初めて入るわけではない。自身で戦う事自体が初めてなだけ。今まではアイシャ達が守ってくれたようだが、このファミリアに入ったからには今度は自分の力で戦うこともしなくては困ると、まだサポートだが支援して貰っていた。少し手古摺るのかと思っていたが、そうでもなく、何度も潜ってウチデノコヅチを発動するしかしない作業を今までしていたとは言え。何度もアイシャ達がモンスターと戦う所を見ているからなのか、モンスターの行動パターンを把握している。ただ今まで潜っていただけでなく、モンスターの動きを20階層までの全てをモンスターを上手く見切っていた。なかなかにリリルカ同様に魔力をずば抜けているだけではなく。判断力は負けてはいなかった
ヘスティアは初のダンジョン探索である春姫を心配していたようだが、俺の報告により問題なくサポートしてくれると言う事を聞き受け、もう心配せずに俺たちに任せた
「そういえばその命君と春姫君は?」
「調理室だ。俺がある物を作りたいから仕込みを頼んでいる。そろそろ行くとしよう」
その春姫は
俺の頼みで命と共に極東料理をご馳走しようと今キッチンにて仕込みをして貰っている。極東料理は俺でも自分で作ったりもしている。なぜなら昔父もおふくろも極東に行った事があるためその伝統文化料理を学んでいる。だからその残された書物を持っているため、それを調べて自分で作る。今は山積みの書類仕事が多く片付けられないからと仕込みだけ頼んでいたのだが、もう頃合いだと思って一旦仕事を中断して俺も調理室へ向かう
「命、春姫、どうだ?」
「あ、ジーク殿」
「言われた通り、『お豆腐』の準備はできていますよ」
「ここまでしてくれて感謝する。後は俺がやるから、命は春姫を連れてリビングで待っていてくれ」
「はい、わかりました。行きますよ春姫殿」
「え?命ちゃん?いいの?」
「いいんですよ、さ、行きましょ」
命と春姫に豆腐を調理するように仕込みを頼んでいた。極東人である命と春姫なら豆腐を作れるはずだと、以前に聞いて作れると言ったから頼んだ。どうしても豆腐を使った料理を作ろうと二人に頼んでいた
俺が豆腐を使った料理を振る舞いたい理由は、まだ春姫の入団祝いをしていなかった。だから今更ではあるが、今の所は特に忙しい時も無いため、今日はゆっくりと春姫の入団を始めようとする
もちろんこれは春姫は知らず、他に団員である命達は知っている
「春姫も全員集まっているな?」
「はい」
「うん、みんな集めたよ」
「こんな日にしか無いですからね」
「まあ、こんな事態だけどな」
「ええ、すいません。春姫殿ためにみんな集まって貰って」
「構わないわ。私とペルセフォネは部外者だけどね」
「私たちは別のファミリアですが」
「これは誰でもできる。私たちも春姫には世話になった。これくらいは部外者でもさせてくれ」
「あの皆さん・・・・・これはどういう事なんでしょうか?」
当然いきなりリビングで呼ばれた春姫は何がなんで集められたのかは知らない。言ってないから当然だが、春姫の前にはヘスティア達と豪華な飲み物がたくさん置かれている。そのテーブルにはまだ料理は無い
すると
「おう!今から始める所だったからか?」
「春姫ちゃん!こんにちは」
「間に合ってよかったですね?」
「タケミカヅチ様!?桜花君や千草ちゃん!?それに他の団員の皆様も!?」
「あら、久しぶりねタケミカヅチ」
「ヘスティアの言う通り、本当にお前がここに居るとはな、アフロディーテ。相変わらずとんでもない美貌だ」
「ありがとう。アドニスのお見合い合宿なの」
「あのジークを婿にしたいとは、お前もフレイヤも本当に欲張りだな」
「フレイヤと一緒にしないでくれる?私はフレイヤみたいに魅了を使って男を物になんてしないわ」
「確かにな、お前はフレイヤよりはマシな事をするからな」
廊下の方から、タケミカヅチ・ファミリア一行が入ってきた
主神であるタケミカヅチを始めに、その眷属達もお酒や箱のような物を持ってこのリビングに入ってきた。もちろん突然タケミカヅチ・ファミリアがやってきた事に驚くも、なぜ彼らがここに来るのか春姫には理解できない
「これはどういうことでしょうか、ジーク様」
「俺もお前に言おうと思ったのだが、どうしても命とヘスティアがこの日のために極秘で動くために秘密にしろと言われた。今彼らがここ来た理由は一つのみ、まだお前の『入団祝い』をしていない。だから今日やろうと思って、友人であるタケミカヅチ・ファミリアも誘って今ここに集まって貰った。もちろん彼らもお前に祝いたいが故だ」
「私の入団祝い!?」
「うん、まだしてなかったからね」
「あの後はまだ後始末が残っていましたから」
「イシュタル・ファミリアと戦争をしたんだ。それなりの言い訳をするためのギルドに報告するための材料を集めていたからな」
「その後もセクメト・ファミリアを襲撃とか、いろいろあの後は忙しくて、春姫様の入団祝いができなかったんですよ」
「そして今アレス・ファミリアの戦争で、自分たちは暇な時、今忙しくない時からこそ、祝おうと思っていたのです春姫殿。かなり遅れてしまいましたが」
「皆さん・・・・・・本当にありがとうございます!!!」
あれから春姫が入団してから忙しい日々が多く、彼女の入団祝いがまともにできなかった。イシュタルを潰した言い訳の件、その後にセクメトの襲撃など、ヘスティア・ファミリアが中堅派閥になったことでまたギルドの報告書、依頼、アフロディーテの件も含めて、彼女の入団祝いができなかった
そして今ならできると、一ヶ月遅れですまないが、今から友人であるタケミカヅチ・ファミリアも含めてやろうと思っている
「それでは春姫の入団祝いを改めてする。まずは他の関係者達も春姫の入団祝いに来てくれて感謝する。今日は彼女を大いに祝って欲しい。団長としての俺からは以上だ。ヘスティア。次は君だ」
「うん!春姫君。今更ではあるけど、僕らのファミリアに来てくれてありがとう。これからもよろしく頼む!」
「はい!お任せください!!」
前置きもしっかりした所で、全員グラスを持った事を確認してから、ヘスティアが乾杯の音頭を出す
「それじゃあ春姫君の入団を祝して乾杯!!!」
「「「「「「「乾杯!!!」」」」」」」
全員乾杯をした事を確認したら、ヘスティアが次に俺に指示をする
「それじゃあジーク君。用意した『アレ』をお願い」
「ああ、もうできている」
乾杯した後で、すぐに俺が『アレ』と言う名の料理を持ってくる。それはご馳走ではあるのだが、その料理は極東人にしか知らない料理だ。
これは・・・・・・春姫の好物
「春姫。これは狐人の好物なずだと俺の手帳には書いてあったんだが・・・・合っているか?」
「これは!?・・・・・・・『油揚げ』!!!」
俺が出したのは油揚げと言う茶色をした食べ物
親父が残した料理の書記が本当ならこれは狐人の好物のはず、と書いてあったから出してみたが、春姫はその食べ物の名前を口にして、尚且つヨダレまで垂らしていた。好物なのは間違いないようだ
春姫は、ハッ!としてヨダレが垂れているのに気付いて腕で拭く
「どうしてこれを!?いえ・・・・作れるのですか!?」
「先ほど命とお前に豆腐を作らせたが、その豆腐を油で揚げる事で、豆腐が徐々に色を変えて膨らみ油揚げになる。父が残した書記を読んで試しに作ってみた。食べて確認して欲しい」
「はい・・・・・・あむ!・・・・うう!!美味いです!!」
「ジーク殿、油揚げを作るために自分たちに豆腐を作らせたのですね?」
「本当は俺も作れるのだが、ここ最近書類仕事が多くて豆腐を作れる時間が無かった。それに俺が作るよりも、豆腐を編み出した極東人であるお前達の方がより上手く作れると、思って任せて正解だった」
「ジーク、お前の父は極東に行ったことがあるのか?」
「母と一緒に昔に行ったそうだ。その時はまだ俺が生まれてない時だそうだ。そこでツクヨミに会ったそうだぞ。タケミカヅチ」
「そういえば前にヘスティアが、ツクヨミがお前の故郷に居るとお前から聞いたと言っていたな」
「そういえばトールが言っていたわね。アドニスの故郷にツクヨミが居るって」
「ああ、せっかくだ。あの女の話を聞くか?」
「ああ。聞かせてくれ」
春姫達が油揚げを楽しく食べている間に、俺とヘスティアとタケミカヅチとアフロディーテで俺の故郷に移住したツクヨミに関して話をする
ツクヨミ
月の女神、アルテミスと同じ月の女神で、極東の女神。
タケミカヅチ同様の武人でもある。袴と背に月が描かれた羽織を身につけるオカッパ髪の女神、彼女の刀捌きは強く、彼女は大昔に極東で偶然母と旅をしている父に救われて、恩を返すために俺の故郷で兵士育成のファミリアを立ち上げた
そこで厄介な眷属五人を率いて、俺の故郷の戦士達を訓練し、俺の故郷のために全力を尽くして防衛の一部として当たっている。おかげで俺の故郷は他国から守れ、戦士達もほぼ五百人近くがレベル5となった。まあその五百人は爺さんの眷属
ツクヨミが極東を出たのは、タケミカヅチ達がオラリオに来る前から居なくなったと、今タケミカヅチに聞いた。その時はまだ命は小さい時、おそらく恩を返す前に親父が亡くなった時期だろう。その時に親父が亡くなった後の故郷を守るために極東を出たのだと推測する
「ツクヨミはお前の故郷を守るために、お前の故郷に移住していたのか」
「おかげで面白い技を習得できた。ツクヨミから色々極東の剣術を学んだ。おかげで俺はフレイにも剣で勝てるようになった。その気になれば俺も刀で抜刀術も余裕だな」
「前から思っていたけど、アドニスの剣捌きが異常だと思っていたけど、理由はそれだったのね」
「ツクヨミは剣捌きがタケミカヅチ並に異常だからね。彼女の剣で恐れていた神々は多かったからね」
俺もツクヨミに剣を学んだ一人
極東の剣術は俺も驚く威力が出せる技ばかり、これを習得すればどんな剣の動きも全て見分け、相手より先に斬ることもできる。極東の剣術と刀は本当に相手を簡単に切り刻むことができるものばかり、流石は『侍の国』と言った所か
「この料理は全部お前が作ったのか?」
「いや、俺はあの油揚げだけだ。それ以外は全部命だ」
「はい、全部自分が調理しましたタケミカヅチ様」
「おお、そうか。命もヘスティアのファミリアに来て成長したんだな」
「お口に合いますでしょうか?」
「ああ、とても美味しいぞ。剣の腕だけでなく、料理の腕もどんどん上がるな」
タケミカヅチは命がヘスティア・ファミリア所属となってからより腕も料理も上たちしていると褒める。その褒めた流れに連れてタケミカヅチはある褒め言葉を出す
「良いお嫁さんになれるぞ。命」
「え!?」
「「うわあ〜〜」」
「「「「「「え!?」」」」」」」
「・・・・・・・」
良いお嫁さんになれると言われた命は、顔がトマトのように耳まで真っ赤になり、しかも元主神に誉められるのが余程嬉しいのか、命は慌ててフォークを持ったまま恥ずかしさのあまりにご乱心になり、あっちこっちと行ったり来たりする
「よ、嫁!?な、何を仰るのですかタケミカヅチ様!?自分はまだ未熟で、お嫁なんて!!あは、あはははははははははは!!!」
「おわ!?」
「危ないですよ命さん!?フォーク!フォーク!?」
「落ち着け!何を恥ずかしがっているんだお前は!?フォークを置け!あぶねえだろうが!!」
「ヘスティア。タケミカヅチはここに来ても相変わらずなの?」
「そうだよアフロディーテ 。正直呆れるだろう?」
「どれだけ堕として、どれだけ鈍いのよ。この武神は」
「命。元主神に褒められて嬉しいのはわかるが、食事の時に暴れるのはやめろ。春姫の入団祝いだ。お前は幼馴染の祝いを台無しにする気か?」
「う!?す、すいません!!皆さん!!!」
「やれやれ」
俺は流石に食事の時に暴れられては困ると、フォークを振り回す命を右手で掴み止めて、命の暴走を止める
俺はこの命の慌てる様子を見て、明らかにタケミカヅチに好意を想っていることがわかった
褒めた本人であるタケミカヅチは全然わかっている様子はなく、残念ながら命に好意を想われている事は気付いていない。だがヘスティアとアフロディーテは気付いている。同じ女性だからなのか、命の慌てるような照れ隠しが余程恋に浮かれているのだと気付いている。それと同時にタケミカヅチが恋する女性の気持ちに気づかずに鈍感な素振りをすることに対して、アフロディーテとヘスティアは呆れていた
「そういえばジーク。聞きたかったんだが、最近春姫とダンジョン探索をしているみたいだが、彼女は大丈夫か?」
「ああ、問題ない。フォローしつつ俺たちが守り、リリルカ同様に良いサポートしてくれている」
「そうかそれは良かった。桜花達からのダンジョン探索を共にした事への報告を聞いてはいるが、彼女が無事に探索をしていると聞いて安心した。ヘルメスの子供であるアイシャ・ベルカにも『できる限り春姫の力になって欲しい』と言われたものでな」
「なんだ?アイシャはお前の所にも言ってきたのか?あいつは意外と過保護なんだな。前も『もし加勢が必要なら頼みな』と俺たちにも言ってきたくらいだしな」
タケミカヅチは最近春姫のダンジョン探索をしていると聞き、無事に順調がどうかを聞き、問題ないと答える。むしろ更に楽になった。サポーターはリリルカのみだ。リリルカの負担を少し減らす事もできる上に、レベルブーストの『ウチデノコヅチ』もある。攻撃面はまったく無いが、それでも支援はリリルカ同様に頼りがある
タケミカヅチは極東の男神として春姫を心配したのだろうが、それだけでなく。どうやら春姫の義理の姉としてアイシャが俺たちだけでなく、タケミカヅチにもしもの事があれば支援して欲しいと言ってきたようだ
アイシャは俺が見る限りではそこまで過保護のようなアマゾネスではないと思ってはいたが、レナがカースでやられた時と言い、姉としての立場として妹達である春姫も含めて心配のようだ
「ところでジーク。こんな事を言うのは今更かもしれないが、命の事をここまで成長させてくれた事を感謝する」
「ん?どういう意味だ、それは?」
「命は言うなら・・・・・俺の娘のような者だ。最近実は心配だったんだ。命がヘスティアの所でコンバージョンしてから上手くやっているのか」
「問題ない。むしろ俺たちの良い戦力になってくれている。家事においてもな」
「そうか・・・・それならいいんだが」
「娘か・・・・・やはり命の両親は極東の戦か?」
「ああ、残念ながらな」
「そうか、これ以上はそれについてはこの祝杯には似合わないから聞かないが、命をあまり心配掛ける必要はないぞ?」
「む、なぜだ?」
「お前が思っている程、命は常に毎日毎日精進している」
「そうだよタケ。命君はね。ジーク君に剣の振り方から教えたりといつも強くなるために毎日努力をしているんだよ?」
「ほう、それは・・・」
「タケミカヅチ、あの命ちゃんをあまり子供扱いするべきじゃないわ。あの子はね。春姫ちゃんを守るために必死にアドニスから剣を教えてもらったり、私やペルセフォネから未知の料理を教えて習得したいと、貴方が思っている以上に自分から進んで努力をしているのよ」
「そうか・・・・・もう俺の知る命は、見ない内に成長をしているわけだな。父親としての俺としては喜ばしい話だ」
「父親ねえ・・・」
「タケ。本当に鈍い」
「どうした二人とも?俺の顔に何か?」
「「別に」」
「ん?」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
タケミカヅチは娘である命をかなり心配していた
極東の戦で両親を亡くした命を、父親代わりとして命に接してきた。だから娘のように心配している上に。他のファミリアでも頑張っているかを確認したが、問題ないと俺もヘスティアもアフロディーテも答える
だが
なぜか命はその会話を聞いて険しい顔をしている。何か納得をしていないかのような顔である。
すると
「命。ちょっといい?」
「っ!なんですか千草殿?」
「そろそろ・・・・・・タケミカヅチ様のお祝いなの」
「あ!そろそろそんな時期ですか」
「春姫ちゃんも誘ってあるから、何を贈り物か考えておいて欲しいの」
「そうですね。自分もその日までに必ず」
「・・・・・・・・」
俺は遠くからその命と千草の会話を聞いた
タケミカヅチのお祝いだとか言っていた。何か贈り物を用意して欲しいと言っていた。明らかにタケミカヅチの祝う会を近日中にするとわかった。その言葉に命は今度は何か焦る素振りを見せる。何か困っている様子、もしかしなくても贈り物を何にしようか悩んでいる様子だ
そのまま無事に春姫の入団祝いは無事に楽しく終わった。まだ昼で本来は夜にするのだが、タケミカヅチが急用で夜は居ないため、昼に春姫の入団祝いをするしかなかった。だからこの後はまた暇な時間ができる
のだが
「なるほど、お前達がタケミカヅチにお祝いだと聞いたが、『降臨祭』をやるとはな」
「言うなら誕生日ですかね」
「まさか俺たちが借り出されるとはな」
「はい。ジーク殿達に明日までに、同じ男としてタケミカヅチ様に何を贈ったらいいのか助言をお願いしたいんです」
「明日か、随分と急だな」
俺とベルとヴェルフは命の頼みで買い出しを共にされている
理由は明日に控えているタケミカヅチの降臨祭を極東人だけでやるのだが、肝心なプレゼントを用意したいのだが、女の自分である命ではタケミカヅチに何を送ればいいのかわからず、俺たちに同じ男として何を贈ればいいのかと、助言を求め、市場に借り出されている
「確か、命はここオラリオに来てから二年経つんだよな?」
「そうなのか?俺がまだロキの団員だった時にはタケミカヅチ・ファミリアなどは聞かなかった。つまり俺が辞めた後、すれ違いでタケミカヅチ・ファミリアもオラリオで冒険者を始めたんだな?」
「はい。これまでは真心込めた品こそ渡してきましたが、資金に限界があって立派なものは贈れませんでした」
「ファミリアは立ち上げの時が一番大変だからな。資金が生活費や武器費も含めて限られている。確かにまだ新団のファミリアからすればまともにできなかったはずだ」
「ですから、自分はここヘスティア・ファミリアにコンバージョンしてから資金もたんまりとあります。どうかご協力お願いします」
「それくらいなら構わない」
「僕もです」
「俺もだ」
「ありがとうございます!」
タケミカヅチに似合うプレゼントを用意する手伝いと助言が欲しいと言われた。別に構わないと俺もベルもヴェルフも答える。特に俺たちは午後には用はない。それに普段仲間として頼っているのだ。仲間の要望くらい答えようと俺たちは拒まない
のだが
「一応聞くが、桜花達が何をタケミカヅチにプレゼントをするのかは聞いたか?」
「あ、それは・・・・」
「おいおい、お前それは聞いておかなきゃまずいぞ。命」
「もしも桜花さん達とプレゼントが同じだったら困りますからね。そこは聞いておかないとダメですよ」
「た、確かに!?自分不覚でした!!?」
「となると、ますます難しくなったね?」
「ああ。俺も仕事以外での物は買ったりしないからな。服も仕事服ばかりだし」
「ではお前はアポロンの宴の時、紳士ドレスを着ていたが、アレは?」
「アレはヘファイストス様が俺のためにと、勝手に・・・」
「なるほど」
「どうしましょうか?できれば桜花さん達と被らないプレゼントを用意しないと」
「大男や千草や春姫や飛鳥達も物でプレゼントをするだろうな。そうなると俺も難しい」
「ああ!!自分とした事が!!肝心な事を!!」
「それならお前は料理が得意。だからケーキをプレゼントをすると言うのはどうだ?」
「「「ケーキ!?」」」
「ああ」
命は桜花達が何をプレゼントをするのかしっかり聞いていなかった。もしも同じプレゼントをしたら、タケミカヅチも反応に困ると思う。(あの優しすぎるタケミカヅチの事だから困る反応はせずに、どっちでも喜ぶとは思うが)それでも被らないようにプレゼントをするのであれば、もはやそのお祝いで出す。料理をプレゼントをするしかない
「確かに今までのお祝いは自分はまだ料理は未熟でお出しした事はありません」
「なら都合が良い。今回でお前の料理の腕をケーキで発揮してプレゼントをした方が良いと俺は思うぞ」
「ですが!自分はケーキは流石に作ったのことがないのですが」
「心配するな。俺がケーキの調理方法を教えよう。俺はデザートもしっかり作れるからな」
「おお!!流石ですジーク殿!」
「なんだか僕たちは必要なかったね?」
「ああ。ジークに任せればよかったな?」
「いや、このままベルもヴェルフも手伝って欲しい」
「え?」
「なんで俺たちまだ付き合わなきゃならねえんだ?」
「タケミカヅチは極東の武神。であるならケーキも極東に合わせなくてはならない。だからこれからそれに必要な材料の買い出しを手伝って貰いたい」
「ケーキも極東に合わせる?」
「どういうことだ?」
「簡単に言うなら、『和風ケーキ』を調理すると言うことだ」
「「和風ケーキ!?」」
「ああ」
「ジーク殿!?和風ケーキも作れるのですか!?」
「全部父の書記に記されていた。もちろん俺は調理したことがある。上手くできたぞ」
どうせならここでは作れないケーキをプレゼントしようと、相手は極東の武神なら、故郷を思い出す味を出すべきだと、極東の和風ケーキを作ろうとする。そうすれば桜花達共プレゼントが被る事は無い。幸い春姫も料理上手だが、ケーキは流石に作ったことがないと聞く
その日で終わってしまうが、それでも桜花達よりもインパクトのあるプレゼントにはなるはず
「和風ケーキなら、タケミカヅチ様も喜んでくれるはず、ここオラリオではそんなものはないですからね」
「絶対に必要な材料は持っているのだが、それでも足りない物がある。その買い出しをベルとヴェルフにも付き合って欲しい。重い物もあるからな」
「わかりました。ではプレゼント選びは決まりで」
「肝心の材料集めだな、わかった。俺たちが手伝わないとならない多さか?」
「それもあるが、アレスの侵攻のせいで材料を売っている店が限られているかもしれない。春姫の入団祝いでデザートに使うホームに買い溜めしていた食材はある程度使ってしまったからな」
「あ、そうですね」
「そういえばそうだった。じゃあ手分けして買い出しってわけだな?」
「ああ。俺とベルで別の買い出しに行くから、お前と命でこれを買ってきてくれ」
「どれどれ、うわ!?結構あるな・・・」
「これが絶対に必要なんですね?」
「ああ。でなければ不可能だ。とにかく急いで買い出しに向かってくれ。ベル、俺たちも店を閉めてない店を全部探って材料を見つけるぞ」
「はい!」
「すいません。自分のために」
「構わねえさ、お前も俺たちの団員だからな。これくらい安い御用さ。俺たちも行くぞ」
「はい!」
今はアレスの侵攻前、まだやっている店や閉めている店もあるかもしれない。その限られた中で食材を探すしかないと、手分けして探す。大抵はデメテル ・ファミリアのお店に行けば買えるが、それでも無い可能性があるため、俺とベルで西地区の方へ行く
「僕らの方はなんとかなりましたね」
「ああ。まだ営業している店があってよかった」
俺とベルの方は全部買い出しは完了した。必要だった食材は全部手に入れた。運良く店が営業をしていたのが運の良さなのか、こちらの方は材料は全て確保した
問題は
「ヴェルフ達はどうでしょうかねえ」
「ああ。ん?これはヴェルフと命の魔力か。あれは・・・」
「ジークさん?あれは・・・」
俺は近くにヴェルフと命の力に反応した。すぐ近くに居るとわかり、今目の前に目撃した。もちろんベルもすぐに目の前にヴェルフと命が居るのを見つけた
のだが
「これは・・・・・」
「え!?嘘!?なんでこんなことに!?」
二人を見つけたのは良い。だが見つけた矢先にとんでもないものを見てしまう。状況があまりに驚くものとなっていた。
それは
「タケ・ミカ・ヅチ・様の・天然ジゴロ!!!」
「ぐは!ぐは!!ぐは!!!」
命がタケミカヅチの顔を殴り続けている光景だった
「はあ・・・はあ・・・」
「ああ・・ああ・・ああ・・・・」
「おい!バカ!何やっているんだ!?」
「は!?自分とした事が!?なんて事を!?」
「な、何やっているんですか!?命さん!?」
「なるほど・・・・タケミカヅチが親切心で女性と対話しているを見てしまって、命が嫉妬して殴った所か」
「ジークさん!?なんでこんな状況で現場推理しているんですか!?」
状況はすぐにわかった
タケミカヅチは武士の心得を持つ武神。自分が正しいと思う正義を貫いて、いろんな下界の女性を変態な行為をする男神から追い払ったりなど、オラリオ街の女性や女神達に『紳士的』に接し方をしていたタケミカヅチは、ミアハ同様に男神の中で上位にモテる。とヘスティアから聞いた。今ではここオラリオで、男神の中で一番好感度があるのはタケミカヅチとミアハと聞く
だからなのか、おそらくただ紳士的に女性達に振る舞った所を、命に見られて、命は勝手に嫉妬して殴ったようだ
と、状況は把握した。命の後ろに複数の女性は居る限り、そうだろうと察する
「命。これから感謝する相手を殴るのは、どう考えても切腹物だぞ?」
「は!?自分はなんて事を!?」
「もうやってしまった以上は取り返しが付かん。大丈夫かタケミカヅチ?」
「うう・・・・・」
「これは起きそうにないな。命。材料は全部買えたか?」
「は、はい。なんとか」
「そうか、ならこれを」
「これは?」
「作り方の紙だ。眼を通してわからない所はあるか?」
「えっと・・・・・無いです。とてもわかりやすいです」
「そうか、悪いが俺が見て教えてやりたい所だが、タケミカヅチを治療をしにミアハの所まで行く。言うなら部下の不始末は団長たる俺の連帯責任だ。タケミカヅチを運んで行く」
「すいません」
「謝るなら俺ではなく、タケミカヅチに明日謝れ。自分の謝罪は自分で明日償え」
「は、はい」
「ベル。すまないが俺の分までホームまで運んでくれ。ヴェルフ。食材を持って戻れ。命。明日までに完成するには今から調理するしかない。謝罪内容も考えておけ、調理中にな」
「はい・・・・・」
「では頼む」
タケミカヅチは命に殴られて気絶して起きそうにない。こうしたのは命のせい、その責任は俺が側で止めなかった俺の不注意と言う連帯責任である。責任を取るために怪我をしたタケミカヅチをミアハの所まで負ぶって送っていく
命がちゃんと作れるか、俺の目の前で教えるつもりだったが、こうなっては仕方あるまいと団長として責任を取るのだった。タケミカヅチをここへ置いていくわけにはいかないため