ニーベルンゲン・シックザール〜竜殺しの英雄譚〜   作:ソール

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シルと過ごす休日

 

 

 

 

 

 

 

エイナの事件から翌日の事

 

 

珍しく俺はここで休日をヘスティアとベルに頼んで貰った

 

どうしても今回は『シルの頼み』で俺は今日だけは休日を過ごす。思えば休日を過ごすのは久しい。しかも俺から休日を頼むのは初めてだ。俺が今日休日を頼んだのは他でもない。シルの頼みである場所に行くからだ

 

あれからもう何ヶ月にもなる。その場所へは

 

二年前もそこへ行ったことがあり、馴染みの場所でもある。そこは決してリュー達でもある豊饒の女主人である店員でも知らないこと。シルと俺だけしか行かない場所であり、あまり他の者にも言わない場所。今日はシルもお休みでわざわざ俺を連れ回してまで向かう

 

そしてその場所は

 

 

 

「みんな!!!ジークがまた来てくれたよ!!」

 

「元気にしていたか、お前達」

 

 

「「「「「わーい!!ジーク兄ちゃんだああ!!!」」」」

 

 

 

そこはシルのホームである。

 

『教会の孤児院』

 

彼女の家であり、彼女はミアに拾われる前はここの子供だった。つまり彼女は両親に捨てられた元孤児であるスラム街産まれである。二年前は偶然彼女がここの教会を入るのを見て、立ち寄りそこで俺はシルに好かれるキッカケを作った場所でもある。ここはダイダロス通りで治安や迷路のように複雑な街の構造になっているため、リュー達でも見つけるのは難しい

 

今日は久しくシルの『弟と妹』達に会いに来た。今はダンジョンも封鎖になっているため、せっかく暇だから会いに来てくれと頼まれた。久しくシルの仲間達に会うためここにやってきた

 

 

「ルウ、ライ、フィナ。元気にしていそうだな?」

 

「うん、私は元気」

 

「ジーク兄!聞いたよ!あのイシュタル・ファミリアを倒したんだって!やっぱりジーク兄ちゃんは英雄で強くてかっこいいぜ!」

 

「ジーク兄ちゃん!流石!」

 

「あのイシュタルを相手にするのは大変だったがな。マリア。久しぶりだ」

 

「ええ。ジークさん。またこんな所に来てくれてありがとうございます」

 

「こんな所でなんて言わなくて良い。ここは子供達のいる愉快な場所だ。酷くはない。それとこれは来れなかった分も含めての『寄付金』だ。他の施設の分もあるから渡しておいてくれ」

 

「またそんな!本当にありがとうございます!!ジークさんのおかげで助かっています!」

 

「別に構わない。俺がしたくてしている。こちらの家計は問題ない。むしろ俺はここの家計を心配している」

 

 

ダイダロス通りの孤児院は決してここだけではない

 

ここダイダロス通りはスラム街でもある。だから治安があまりに悪い。産んだ子供をここへ置き去りにするなど。世の中そういう無責任な者が多く居る。ここの教会の母であるマリア・マーテルは故人との間の子供を産めない代わりに。ここで義母として身寄りのない子供を世話している。犯罪や盗人など多くあるこの街をなるべく治安を良くするために、最近はここ周辺を犯罪から俺は守っていた。それはシルの頼みでもあり。二年前ここで新たなに友人を得た子供達のため、その大切な友人のためにも俺は密かに個人的に働いている

 

今までは、ここの孤児が大人になって冒険者として働き、ここへと寄付をしていたのだが、ダンジョンで亡くなるなどをして、今ではシルに頼んで家計を守っているとマリアから聞き、俺は最近になって多額の寄付金を用意してここへと足を運ぶことは多い

 

 

「ジーク兄!またあのベヒーモスを倒した時の話を聞かせて!」

 

「はい!この本!」

 

「私たちも買ったんだ!」

 

 

「その話をしても構わないが、頼むからその話をして『冒険者になりたい』なんて思わないでくれよ。お前達には『学区』の方が似合っているからな」

 

 

「わかっているよそんなこと!」

 

「うん。大丈夫」

 

「マリアお母さんに心配させたくないからね」

 

 

だから子供達が孤児院の寄付金のためとは言え、冒険者になってここへ帰ってこないなんてことがないように、学区と言う学び舎がここオラリオでもある。命を賭ける役職よりも、安全のある普通の役職に付いた方が、義母であるマリアを心配させずに済む。勉強はとても大変だがな

 

別にここの孤児が大人になって冒険者として寄付金を贈られるだけでなく、他には商業系のファミリアの女神や鍛治系のファミリアの男神など、心優しい神々にも助けられている。だから決して俺の助けを一つで賄っているわけではない

 

ただ俺の方が寄付金が多額なだけ。それだけだ

 

 

 

 

俺の英雄譚を読み終えて、その時の出来事を詳しく話終えると。そろそろ食事の時間になる

 

 

「シル。そろそろ食事にしよう」

 

「うん!みんな今日はご馳走よ!」

 

「「「「「「う!?」」」」」」

 

「言っておくが、『味見は俺が確認済み』だから問題ない」

 

「「「「「「あ!じゃあやった!!!」」」」」」

 

「むう・・・私だって頑張っているんだよ!」

 

「ああ。だから俺と一緒にこれからも料理の練習を頑張ろう」

 

「う、うん」

 

 

ちなみに彼女がここに来るのは、もちろん自分の家族にご馳走を運んであげるのが目的なのだが。無論それは『自分の手料理』である。だが生憎彼女は料理が下手なため、食えなくはないが味は酷い。俺に食わせるじゃあともかく。子供達に食わせるのはあまりに栄養バランスが悪い。それではまずいからと今日の朝から俺が料理の組み合わせを手伝ったりして、味は俺が確認してあるため問題はなかった

 

実はライ達もシルの料理が下手なのは知っている。その理由は最近俺にご馳走を振る舞おうとライ達を実験台にしていたのを知っている。別に自分の自信作を毎度誰かに実験台に使う必要はない。むしろ俺はシルが料理下手なら俺が教えるまでだけだと。別に料理が下手なことに対して恥ずかしがる必要ない。

 

だからライ達を実験台にして。自分の料理を振る舞うのはやめてもらいたい。それはある程度上手くなってからでいい。そうでなければライ達も流石にガッカリする羽目になる

 

実はライ達はシルでなく、密かにご馳走は俺が作って欲しいと、シルが居ない所で俺に頼まれことがある。彼女がもっと料理が上達するまでは俺が練習に付き合うようにしている

 

 

 

 

昼食が終わると

 

今度は子供と外で遊んでいる。言うなら食後の運動と言うことだ。シルは女の子達を連れて花で飾り作り、俺は子供達を連れてチャンバラごっこなど。俺とシルはこうやっていつも子供達と遊んでいた

 

その途中でだが

 

 

「よし、行くぜ?」

「今日も失敗するよ?」

「無理だって・・・」

 

「ライ、また『スカートめくり』をする気か?これで何度目だ?」

 

「いいじゃんジーク兄!絶対に上手くいくって!行くぞ!」

 

 

ライはたまに、油断しているシルによくスカートめくりをする

 

ヤンチャな子ならではの行為なのだが、今までにもライは一度でもシルからスカートめくりを成功したことはない、他の孤児のスカートめくりはできても、シルのスカートめくりだけは一回も成功したことがないのだ。

 

彼女は『あの女神の力を半分もらっている』だから、心を見通せる彼女にはライの考えなどお見通し、だから成功することは

 

ないはずなのだが

 

 

「それ!」

 

「え!?きゃああああ!!」

 

 

「「「「「「え!?」」」」」

「「「「「「初めて成功した!?」」」」」」

 

「・・・・・そのようだな」

 

 

珍しく、と言うより初めてライのスカートめくりが成功した

 

今のタイミングは明らかに避けられる間合いだった。なのに彼女は避けもせずにそのままされるようにスカートをめくれられた。彼女が今回初めてそんなヘマをするとは思えない

 

となれば

 

またシルの悪戯をしようとしているのがわかった。下着は俺は完全に見た。それを脅しに何か俺に要求しようとしている魂胆だと、彼女の企みだと理解する

 

 

「ジーク?見た?」

 

「ああ。見た。咄嗟とは言え謝罪する」

 

「ジーク。私。下着を見られるのは初めてなんだよ?」

 

「そうか、それで何かして欲しいことでもあるのか?」

 

「え?」

 

「君がわざと俺に自分の下着を見せて、俺に脅迫して何か要望することなど、お見通しだぞ?」

 

「もう!私はそこまで意地汚いことを考えてないよ!」

 

「どうかな、君も『彼女に似ている』わけだから、君の悪戯は俺にとって当然の日常だ。そんなことをして俺に脅迫をしなくても、君の頼みなら俺はできる限り引き受ける。別にこんなことをしなくても構わんぞ?」

 

「本当?じゃあ・・・・私と結婚でも?」

 

「できる限りと、言ったぞ?」

 

「じゃあ膝枕で」

 

「わかった」

 

 

彼女の頼みならできる限りは引き受ける

 

別に相手の弱みを握って何か要求をしなくても、できる範囲なら引き受ける。ましてやその程度であるなら問題ない。彼女最近俺がアフロディーテとペルセフォネと婚約を迫られているのを聞いて、彼女も俺との距離を縮めようと。少しでも今は俺をアフロディーテとペルセフォネを忘れさせたいようだ

 

彼女に膝枕をさせているが、中々に終わりそうにない。だからこのまま『本来の話』を聞く

 

 

「シル。そのままでいいから聞かせてくれ」

 

「ん?何?」

 

 

「君とライ達の依頼を聞かせてくれ」

 

「あ、うん。そうだね。それだけ先に説明しちゃうね」

 

 

ここへ来たのはそれだけではない

 

今日はシルの依頼のためにもここへ来ている。決して子供達と遊ぶだけではない。今回シルだけの依頼ではない。これはライ達の依頼でもある。何か困りごとでもあるようだ。俺と言う冒険者に頼むと言うのならそういうことだろう。危険かもしれない依頼かもしれない。本来なら依頼なのだから当然対価と引き換えに行うのだが、孤児院の子供からお金を貰うなど、気が引けてできない。ましてやライ達から金を貰うなど、尚更である

 

そして、その依頼内容は

 

 

ここから教会を出て東にある少し広めの空き地がある。だがそこには隣に何か建物が倒壊した瓦礫の山がある。そこから『うねり声』がするらしい。『う・・・う・・・う』と小さく聞こえるらしい。最初にライ達が気づいたようだが、その日以来何度もそこで遊んではそんな声がするらしいとライ達は言っていた。

 

依頼内容はそのうねり声を確認することだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

「ここでいいのか?」

 

「うん。そうみたい」

 

「うん!ここだよ!」

「最近・・よくする」

「うん・・・何か居ると思うの」

 

 

一時間後、俺はすぐにシルとライ達にその空き地に案内してもらい、その場所へ到着すると。目の前に煉瓦の山がある。その山からうねり声がするらしい。それをまず調べようとその山に歩み出ようとすると

 

 

『う・・・う・・・・う・・・う』

 

 

「「っ!」」

 

「ほら!まただ!」

「また聞こえる」

「なんだろう・・これ」

 

「これは・・・まさか・・・」

 

「ジーク?もしかしてわかった?」

 

「ああ。どういうことかわからないがな」

 

 

よく考えてみれば、ここは『あの隠し通路』でもあった。ちょうどこの座標位置。俺はある手帳を出して確認した。この声の正体もわかったが、間違いなくここは『あの隠し入り口』だ。今は塞がっているはずだが

 

 

「まさかな・・・・」

 

「ジーク?」

 

 

俺は出した手帳を再びパンドラボックスにしまって、俺はすぐにその瓦礫の山を全部手で剥すように周りに退けていくと、地面にある古びた扉があった。その扉は鍵が掛かってはおらず。その扉を開くと、地下に続く階段が現る

 

 

「地下室の入り口?」

 

「ああ。間違いない・・・・『廃棄されたクノッソス』だ」

 

「それって・・・前にジークが言っていた。もう一つのダンジョンのこと?」

 

「ああ」

 

 

まさかこんな変哲も無いこの場所に廃棄されたクノッソスがあるとは思ってなかった。俺のこの持っている手帳が確かなら、この先は広間に繋がっていて通路が一つあるのだが、落盤で道は塞がっているはず、でもこの先に確かに・・・

 

 

「この声と気配・・・・間違いない。深層モンスターの『バーバリアン』だ」

 

「深層モンスター!?なんでこの地下に!?」

 

「理由はわからない。だが相手は一体で俺は何度も相手にしたことがある。問題ない。だからここで待機してくれ。くれぐれも付いてこようだなんて思わないでくれよ」

 

「うん。気をつけてね?」

 

「ああ」

 

「俺たちもいくよ!」

「私も」

「怖いけど・・私も・・」

 

「ダメだ」

 

「「「っ!?」」」

 

「子供が入っていい場所ではない。いきなり怒鳴ったことは謝るが、この先は危険な場所だ。子供が軽々と入っていい場所ではない。下手をしたら死ぬんだぞ?軽々と自分の命を晒すな」

 

「ジークの言う通りよ!みんなダメよ!」

 

「「「はい・・・」」」

 

 

興味津々で未知の場所に行ってみたい冒険心のある子供であるからこそわかるが、それでも命の危機があるモンスターが居る以上はダメだと。俺は怒鳴ってでもシルに頼んでここで待たせて、俺だけ中へ行く

 

少し広い広間があるが、その中心に

 

 

『グウ・・・・グウ・・・』

 

 

「まさかこんな所にバーバリアンが居るとはな、なぜ全身血だらけで居るのかは知らないが、どうやらここに閉じ込められて空腹のようだな」

 

 

目の前にが鹿の角が生えた赤いゴリラ。本来なら37階層あたりで出現するモンスター。ここに居るかなど、もう詮索はどうでもいい。こんな奴がここへ居て言い訳げない。こんな敵は今の俺なら問題なく倒せる。余裕を見せる気もない

 

敵は殲滅あるのみだ

 

 

「はあ!!!」

 

『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

 

俺はグラムを使って、たった一振りで一刀両断で終わらせた

 

バーバリアンは体を真っ二つに斬られて消える。斬ってみてわかったのだが、随分と体が弱っていた。おそらく全身に付いていた血は自分の血。誰かに追われてここに迷い込み。そして目の前にある通路と思われる道は残念ながら落盤して閉じ込められた。それでここへ引き籠るしかなく、腹が減って唸り声を発していたようだ

 

その後、俺はギルドに通報する前に、この広間に入れる通路をヨトゥンヘイムで防ぎ、ドアをニブルヘイムで氷漬けにしてから瓦礫の山へと姿を隠す。誰も入れないように。子供が不用意に入ったりしないようにする。もちろんライ達にもここへはもう二度と遊ばないように言い聞かせる

 

そしてこの地下通路は間違いなく、『建設途中のクノッソス地下通路』。理由はわからないが今俺が持っているクノッソスの書記が確かなら、廃棄された通路。ダイダロス通りにいくつか扉を作るつもりだったがようだが、ここは廃棄されたルートだと書かれている。この地下通路は本来ダンジョンにも繋がるルート。間違いなくこの地下通路とあの広間にダンジョンでたまたま迷い込んで閉じ込められたようだ。何がともあれ犠牲者が出ずに済んでよかったと思う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とにかくシルとライ達の依頼は完了した。ギルドには一応通報しておいた。彼女と休日を過ごすつもりが、まさか依頼を頼まれるとは、やはり俺には常に戦いが日頃らしいと思えてしまう。まあでもいい。久しくライ達に会えて楽しかった

 

夕方となり、今は二人でホームに帰る途中である

 

 

「ジーク。今日はありがとう」

 

「お礼を言うのは俺の方だ。久しくライ達と遊べて楽しかった。誘ってくれたことを感謝する」

 

「ううん。私もジークと遊びたかったから。ここの所ファミリアの仕事で忙しっかでしょう?」

 

「そうだな。今アフロディーテとペルセフォネの関係で忙しいから、君と一緒に遊ぶ時間はこれからもほとんど無いな。とは言っても君も俺のホームに居候しているから一緒に過ごしていることに変わりはないんじゃないか?」

 

「だって!あの美しい女神様だよ!ジークのことを夫にしたいだなんて!そんなこと私がさせないもん!!」

 

「俺にはまだ結婚なんて考えられないんだがな」

 

 

今でも彼女とは一緒に居る。アフロディーテとペルセフォネが俺の嫁になりたいと、お互い知るために一緒に同居している。シルから見てもアフロディーテは美女であり、フレイヤに負けない美しさ。誰もが欲しがる美しき女神が今度は俺を夫にしたいと縁談まで持ち出されたことを知ったシルは。彼女も俺に恋をしているからと負けたくない想いで

 

 

「ジークはまだ結婚をしたいとかは思わないんだね?」

 

「そうだな。冒険者だからってのもある」

 

「そうなんだ・・・・・・・・」

 

「もしかして君は、今度は俺が『ダンジョンで死ぬんじゃない』かと思っているのか?」

 

「うん・・・・・・だって・・・・ジークは『自分より他人が大事』なんだもん。私も多く冒険者の人と友人になってきたけど。帰ってこない人はほとんどだもん」

 

「そうだろうな。特に俺は」

 

 

冒険者となれば帰ってこない者がほとんどだろう。孤児院の子供が大人になり冒険者となってファミリアに入団してダンジョンで帰ってこなくなると言うのを彼女は経験している。その中には過去に同い年の友人が何人も冒険者となってダンジョンに潜って死んだとか。彼女は以前アルテミス事件で俺が一度死んだが、友人を失うのはそれが初めてではない。孤児院にいた頃に、自分より年上の人や友人を亡くしたのを彼女は経験しているからだ

 

 

「ジークは自分の命は考えられないわけ?」

 

「俺も仲間を守るのに必死だからな。君だってわかるはずだろう?心が死んでいることを」

 

「うん、でも・・・・私は会った事はないけど、貴方は雷神トールの息子なんでしょ?自分の命を無下に扱ったら、そのお母さんが怒るんじゃない?」

 

「そうだろうな。それでも守りたいものがあるから、無茶をしてでも助けるんだと思う。俺たちが向き合っている現実は、決して綺麗事や夢言葉では片付けられないことばかりだから。俺には自分の命までは考えられないことかもしれない。仲間を多く失う悲しみばかり受けたせいで、自分の命までは配慮してないのかもしれない」

 

「ジーク・・・・・」

 

 

失う悲しみを得るくらいなら自分の命を否定する

 

どちらかが命を葬らなければ生き残れない時もある。そんな時に俺はいつも自分の命を投げ捨てでもいつも突っ走っている。そんなやり方が誰もが認める行為ではないが、自分が悲しむよりはマシだと。いつも俺は自分のことは考えない

 

だから彼女は

 

 

「ジーク・・・私はいつもあなたが帰ってくることを祈っているからね・・」

 

「ありがとう。俺も君と約束した通り、自分を犠牲にすることは控えるようにする」

 

 

彼女は必死に俺の手を握る。不安そうな震えている手で

 

でも彼女の約束は守る。仲間を助けて自分の命を守る

 

なんのためにいろんな物を俺に託してきたのか、その意味も込めても俺の命だ。俺の命はどうやら俺だけの物ではない。母、フレイ、ゲルズ、故郷のみんな、ベル達やヘスティア。アフロディーテやペルセフォネやリュー達。そしてシルと。多くの者達の者でもある。俺の命はそこまで人とのつながりがあるのだと。今頃になって気づくとは、やはり俺もまだまだ学ぶ所が多いと思っていた

 

 

そんなことを考えていると

 

 

「おい、いつまで俺たちを見ている気だ・・・・・・アレン」

 

「え!?」

 

 

「ち、やっぱり気付いてやがったか」

 

 

突然建物の上から、フレイヤ・ファミリア副団長にしてアーニャの兄、アレン・フローメルが出てきた。どうやら俺たちを・・・・いや、シルを護衛していたに違いない。でなければこんな市民街にフレイヤ・ファミリアの副団長一人が居るわけがないだろうからな

 

 

「義姉さんの命でシルの護衛をしているようだが、お前があの孤児院に辿り着いてから見ていなくても、俺がシルを守るから問題ない」

 

「テメエ!?そんな時から気付いてやがったのか!」

 

「お前の気配を察知しないわけないだろう。俺の感知はお前とてお見通しだ。義姉さんはシルを『ある程度』のことは守るようにしているようだな」

 

「え!?ジーク・・・それをどうして!?」

 

「っ!?テメエ!?気付いてやがったのか!?」

 

「ああ。シル。君が『フレイヤのヒューマン』だと言うことは俺も気付いている。ただ『君がフレイヤと何を対価にして力』を貰っているかは俺も知らないがな」

 

 

団員かどうかはわからないが、シルがフレイヤ・ファミリアの関係者だってことは知っている。

 

ミアもアーニャも元はフレイヤ・ファミリアの団員だ。クロエとルノアとリューは冒険者ではないが、別の主神の恩恵を受けている。でもシルはフレイヤと同じ『神の力』を体から感じている時点で、俺はすぐに彼女がフレイヤと何か契約をして力を貰っている事に気付いている

 

 

「テメエ!!どこまでも全部俺らの事まで把握しやがって!」

 

「槍を向けていいのか?お前を狙ってくるぞ?」

 

「は?」

 

 

ブンン!!

 

 

「・・・・・っ!?ち!」

 

「え!?槍が突然飛んできた!?」

 

「護衛をしているのは決してお前だけではない。そうだろう・・・・ヘクトル?」

 

 

「ああ。貴様を守るのは尺だが、これもアフロディーテ様の命だ」

 

 

突然後ろの方からアレンの方へ槍が投げられた。それは避けられたが、投げたのはアフロディーテの眷属、ヘクトルだ

 

護衛しているのはアレンだけではない。今朝からアフロディーテの命でヘクトルが密かに俺と汁を護衛していたのだ。万が一を考えてアフロディーテは俺を守っていたのだ。そんなことをしなくても俺が守るから問題ないんだが、念のためのようだ。

 

どうせ『シルが俺に過度な事をしないように』も含めての監視もだろうが

 

 

「そこのキャットピープル。これ以上この二人に何かしようものなら容赦しないぞ?」

 

「なんだテメエは。一丁前にオリハルコンでできた槍を使おうが、俺に勝てると思っているのか?」

 

「レベル6か、ここオラリオではフレイヤ・ファミリアはほぼ最強派閥と聞いた。私よりレベルが高かろうと、相手に不足はない」

 

「ふん、どこのどいつかは知らないが、邪魔するなら轢き殺す!!!」

 

 

「二人ともやめてください!ここは街中ですよ!」

 

 

「「うおおおおおおおおお!!!」」

 

 

シルの言葉を聞かずに、二人は自慢の槍を構えて激突する。

 

二人は闘志を燃やしてしまったのか、ここが街中だろうと関係なく、戦闘を始めようとする。本当に二人は本来を目的を失くしている

 

だから

 

 

 

「そこまでだ」

 

 

ガキン!!

 

 

「「っ!?」」

 

「これ以上はやめて貰おう。お前らの本来の仕事は護衛だろう。こんな所で争うな」

 

 

俺は二人より素早く先行して、二人の槍を交える前に掴んだ。場を修正しつつ、相手が身動き取れないようにするにはこれしかないと、俺は二人の武器を捕らえる

 

 

「アレン。ふざけたことをするなら義姉さんに報告するぞ?『くだらない理由で街中で戦闘をした』と、ヘクトルもだ。アフロディーテに言うぞ?いいのか?」

 

「く!テメエ・・・・まだあのお方を義姉さんなどと言いやがって」

 

「おのれアキレウス!アフロディーテ様に報告するとは!ぬん!」

 

 

お互い俺への弱みを握られて、俺は力を緩めて槍を離して、お互い武器を引いた。変なことを言われれば自分がこいつらが罰せられるからな

 

 

「アレンさん。いくらジークが嫌いだからと言って、そういう意地悪はやめてください」

 

「っ・・・・・分かりました」

 

「ヘクトルも、本来の仕事を忘れて問題を起こすな」

 

「貴様に言われなくてもわかっている」

 

「わかっていないから言っているんだ、お前も去れ。もう用は済んだだろ?」

 

「ふん、・・・失礼いたします」

 

 

そう言ってアレンはどっかの建物の屋根へと飛んで行った。

 

まさか最前線に出ているはずのフレイヤ・ファミリアがオラリオに戻ってくるとはな。おそらくアレンだけだと思うが、まさか奴が彼女の護衛していたとはな。あんな暴君のような性格をした男が護衛とは、いくら瞬足の足を持っても隠密行動はあると言うことだ

 

 

「ヘクトル。護衛は構わないが自分から争いを作るのはどうかと思うぞ?」

 

「ふん、あのような敵に出会っては相手しないわけにもいかないだろう」

 

「あんな奴を相手にするな。あんな品性の劣る奴。相手にしても意味はない」

 

「ジークも何気にアレンさんのことを嫌いなんだね?」

 

「嫌いじゃない、シル。大嫌いだ」

 

「あはははは・・・あのアレンさんだからね」

 

 

あんな性格の悪い男、好む奴など居る筈もない。アーニャも実の兄だからと言って親しくする必要はない。力を求めて家族を捨てた男など、あんなのを家族として扱う必要などないのだ

 

 

「アキレウス。シルも。もう用は済んだか?」

 

「え、ええ」

 

「どうかしたのか?」

 

「まだ私も内容は聞いていないが、神ヘスティアから、『用が済んだらすぐに戻ってきて欲しい』と伝言を預かっている」

 

「何かあったのかな?」

 

「だろうな。このまま真っ直ぐ帰る所だ。すぐ戻る」

 

 

ヘクトルは姿を現して俺たちを守っただけでなく、ヘスティアから用が済んだらすぐに戻るようにと伝言を受け取った。何かあったに違いないと、俺はシルと途中合流したヘクトルと共に真っ直ぐホームへ帰る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてホームにたどり着くと。なぜか主神以外の団員達が全員門の前まで待機していた。そこにはここにいるはずのないメンバーが居る

 

それはベル達ではなく、エイナ、椿、リュー、フィルヴィス、アスフィと言う。明らかに俺たちの団員ではない者達まで居る。エイナとリューはまだ仕事中なはずだ。なぜ今この時間帯にこの者たちが居るんだと疑問を抱く

 

 

「皆さん。ただいま帰りました」

 

「ベル・クラネル。アキレウスを連れてきたぞ?」

 

「あ、ジークさん!今帰ってきたんですね!」

 

 

「ああ。ところででなぜお前達がここに居る?なぜ中へ入らない」

 

 

「それはですね・・・・」

 

「ジーク。今帰ってきたんだ」

 

「エイナ。お前はまだ仕事中だろ?なぜもう俺たちのホームに帰っている」

 

「私は報告があってここに来たの」

 

「報告?」

 

 

 

「うん、明日ラキア王国がここオラリオにやっと到着するって、直接私から連絡をしに一度ここに来たの」

 

「「っ!?」」

 

 

「来たか、アレスめ。随分と遅かったがやっとここへ来るか」

 

 

遂にラキア王国がここオラリオに到着すると、エイナ自らがここへ足を運んで通達した

 

随分と遅かったが、どうやらやっと武器が全部揃ったのか、明日ここへ到着するとギルドの偵察隊から連絡があったとエイナが通達してきた。別に俺たちが最前線に出るわけではないが、警戒しなくてはならないことは変わりない。もし戦争で負けて身を潜めてオラリオに侵入する可能性もあるからだ

 

 

「ついに来おったぞジーク」

 

「予定とは随分違く、遅いようですが」

 

「明日に軍勢を連れてここへ来るようだ」

 

「我々ヘルメス・ファミリアも監視役として市外壁に警備しますが、そちらも油断なさらないように」

 

 

「そうだな。ところでなぜお前らがここに居る?椿、フィルヴィス、アスフィ」

 

「それはだな」

 

「ある客がここに来たとデュオニュソス様が聞いて、その客にどうしても会わなくてはならないと。ここへ私も同行してきたのだ」

 

「ジーク。あなたにとっては今の状況で『会って欲しくない客』が来ていますよ?」

 

 

「客だと?」

 

「リューもどうしたの?まだ仕事の時間じゃあないの?」

 

「シル。どうしても私もここへ戻らなくてはならない理由ができたため、ミア母さんに少し休憩を貰ってその客を見に来たんです」

 

 

「客と言っているが、ベル?誰のことだ?」

 

 

「実は・・・その・・・」

 

「二ヶ月半ぶりに・・・あの方が来ましたよ?」

 

「マジでこんなタイミングで来て欲しくない人がな」

 

「どうして連絡して来ないで、ここへ来たのか自分でもわからない相手です」

 

 

「ん?お前達は誰のことを言っているかわからないが、俺たちの知っている人か?」

 

「ジーク様、私は知りませんが・・・・・今来ている客人は『女神様』なのですが、私以外全員知っているようで、ジーク様に会いに来たと言っていますよ?」

 

「俺に?女神が?」

 

 

客人と言うのは女神らしい

 

でもなぜか全員、その女神の名前を出さずに、焦らすようにその客人が誰なのか言わない。ベル達は知っているのに、春姫は知らない。そんな俺たちの団員であるベル達が知ってて春姫だけが知らない女神など。そんな女神が俺の知る限りで『一人』しか居ないのだが

 

と考えていると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は自分のホーム内から

 

あの『女神の神力』を感じた

 

 

「っ!この感じは・・・まさか・・・・・・・お前達が言う客人と言う女神と言うのは」

 

「「「「「はい」」」」

 

 

それは俺も知っている女神だと、感知をしてわかった。まさかこんなタイミングで出てくるとは、しかも今『アフロディーテが居る状態』で『あいつが』来るとは。非常にまずいと思っているのと同時に、なぜ彼女がここへ来たのだろうか、

 

確かに中から複数のアルカナムと、ペルセフォネ以外の人の魔力を感じる。そしてその中で一番に俺が感じ取って、たった二ヶ月半くらいしか経っていないが『懐かしい女神』が居るのがわかった

 

 

それは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジーク!!!会いたかったぞ!!」

 

 

「ああ。やっぱりお前か」

 

 

「「「「はい。アルテミス様です」」」」

 

 

 

それはアルテミス。

 

 

正面出入口の扉を開けて出てきた

 

 

あれからたった二ヶ月半くらいしか経っていないと言うのに、彼女がここオラリオにやってきたようだ。後ろに眷属らしき人物男女の二人と、ヘスティア以外のヘファイストス、ヘルメス、デュオニュソス、デメテルと、頬少し膨れているアフロディーテとペルセフォネが見えていた

 

どうやらいきなりやってきたアルテミスに問いかけていたようだが、外から俺の声を聞いて話を切ってまで、門を開けて俺の方へ姿を現したようだ

 

確かにこれでは名前も出しづらくて当然だ。まさかアフロディーテと同居しているこのタイミングで来るとは

 

そして彼女は俺に飛びついてきた。今回は避けないようにして受け止める

 

 

「ジーク!元気にしていたか?会いに来たぞ?」

 

「ああ。お前なぜここへ来た?連絡もなしに?」

 

「そのだな、あれから二ヶ月でファミリアが少しマシにもなった。そして私も眷属にいろいろ修行をして女として磨いてきた。まだ途中だが、それでもやはりお前に会いたくて我慢できずに来てしまった♡」

 

「いつから可愛く言うようになった?それも眷属の女に教えられたのか?」

 

「ジーク君。アルテミスが君に会いたくて、一ヶ月前にここまで旅してきたんだって」

 

「わざわざ俺に会うためだけにエルソスを渡ってきたと言うのか」

 

 

どうやらそれなりにファミリアを立派にし、そして女としてもっと俺の女に似合うように、家事や嗜みなどを眷属に教わってきたようだが、まだ完璧にできるわけでもないのに、我慢できずにここまできたようだ。後方に控えている眷属二人を同行させてまで。ここまで長旅をしてきたようだ。それも一ヶ月前から、エルソスからここまで来るとは、なんと言う根性だ

 

そしてアルテミスの新しい眷属と思われるヒューマンとアマゾネスが挨拶にやってくる

 

 

「こんばんは。雷帝ジーク・フリードさん。私はアルテミス・ファミリア現団長のカリス・テートと言います」

 

「同じくアルテミス・ファミリア副団長のアクタ・イオンと言います。我が主神を救ってくれた英雄オリオン殿。よろしくお願いします」

 

「ああ。団長のジークフリードだ。アルテミスの事件の時はオリオンと言われていた。お前達二人はは魔力が高いと感じるが、レベル三ほどあるな。元はどこかのファミリアの者か?」

 

「はい、私と彼はとある国のファミリアの元団員だったので」

 

「私もとある王国の偵察兵士だったので、やめて彼女と共にあの村に移住をして守っていました」

 

「なるほど」

 

 

槍を持ったアマゾネスのカリス・テートが団長と弓を持ったヒューマンの男性でアクタ・イオン。新しい眷属のようだ。だが、魔力が普通に高いと感じて、この二人がレベル三だと把握した。二人は元王国の兵士のファミリアらしく、あの村には脱走兵らしい者が居たようだ

 

 

「俺のことはオリオンではなく、ジークと呼んでくれ」

 

「わかりましたジーク殿。ここに来たのはアルテミス様が貴方に来たと同時に、あなた方にラキア王国がここに来る事を伝えにもここに来ました」

 

「そうか、だからギルドにも情報が回ったのか。とは言っても俺達は前線には出ないがな」

 

 

ギルドにラキア王国の到着の情報を流したのは、ギルドの偵察部隊が流したのではなく。アルテミス達が直接報告をしにきたようだ。元偵察兵のアクタ・イオンならアレス・ファミリアの動きがわかるようだ

 

まあ。でも俺たちはヘスティアが決めたことにより最前線参加はしないのだが

 

 

「ジーク。お前に会えたのは嬉しいが、会って早々お前に聞きたい」

 

「なんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでここにアフロディーテが居るんだ?」

 

 

 

「彼女とつい先週縁談を受けた。婚姻をするかは再度一年後にお見合いをすると回して、今はお互いを知るためにここ一ヶ月同居している」

 

「同居?・・・・ジーク・・・私と言う者がありながら・・・・アフロディーテとお見合いだと・・・・・おまけに婚姻・・・・」

 

「俺とアフロディーテは10歳の時におふくろの紹介で会っている。出会いはその時からだな。そしてその隣に居る茶色の髪をした女がペルセフォネ・コレー。彼女にも婚姻を掛けられていて結婚はできないが、彼女とも同居している。彼女もお互いのことをよく知るためにな」

 

「な・・・な・・・な・・・あのヒューマンの娘とも!?」

 

「彼女はデメテルの眷属だ。冒険者ではなく、商業系のファミリアだがな」

 

 

俺はアルテミスにそれだけを言って、今彼女達が居ることを説明したのだが、彼女は俺を抱きついていたにも関わらず、今度は俺の後ろに回って、俺の首に手を回して、俺の首を締める

 

 

「ジーク!!これはどういうことだ!?先ほどヘスティアとヘルメスとヘファイストスから聞いたが、お前がここまで別の女性にモテるなど聞いてないぞ!?しかも私が居るにも関わらず、別の女性と・・・・しかも・・しかも・・・あのアフロディーテと縁談など!?」

 

「俺はお前を待つとは言ったが、結婚するとは言っていない。それに縁談をするくらいなら構わないはずだ。どの道来年にならなければ俺はヘスティア・ファミリアもやめられないから結婚もできない」

 

「だからアルテミス!?首を絞めちゃダメだってば!」

 

「アルテミス!マジでそれはダメだ!?俺たちの英雄を殺すな!」

 

「あんたマジでジーク・フリードを殺す気!?」

 

「やめるんだアルテミス!?いくらなんでもそれはやり過ぎだぞ!?」

 

「アルテミス!ここは抑えて!ていうかジーク君はなんで抵抗しないの!?」

 

 

「別に苦しくないからな。デメテル」

 

 

またもアルテミスは俺に嫉妬して首を絞めてくる

 

アルカナムを使っていないアルテミスの筋力では俺の首の筋力に叶うはずもないため、全然苦しくない。まさかアルテミス が俺とアフロディーテと同居している今の状態に来るなど、完全に運が悪いな。そしてその犬猿に相手であるアフロディーテと縁談までしているなどを聞けば、嫉妬をしないわけがない。彼女が俺を夫にしたいと好意に想うのなら、自分の好意だって負けたくないと嫉妬をして当然だと、アルテミスの行為は流石に否定できなかった

 

だが

 

 

「アルテミス。それ以上アドニスに苦しいことをするなら、許さないわよ」

 

「っ!アフロディーテ。神威を剥き出しに・・・っ!」

 

「なんだアフロディーテ?私に意見をする気か?例えお前でもジークは渡さんぞ?」

 

「あら?貴方は確か処女神よね?そんな貞潔な女神が男と結婚していいのかしら?」

 

「私はもう貞潔はやめた。今の私は狩猟の女神だ。だから女性の貞潔は好きな男性であるなら捧げて良いと認め。私の処女もジークに捧げるために彼に恋をしている。だから貴様みたいな愛と美を理由にジークを誘惑するふしだらな女神にジークを渡す気はない!」

 

「へえ。言ってくれるわね?私はアドニスを10歳の時から見惚れて恋をしているの。つまりは私が早い者勝ちなの。貴方は遅れてアドニスに恋をしたじゃない?今になってアドニスの魅力に気づいて近づこうなど。自分の気持ちに気づくのが遅し。それに強気なだけの女など。魅力など無し。また女を磨いて出直すことね?」

 

「ジークを名前で呼ばないお前に。彼の嫁などふさわしくない」

 

「じゃあ今からジークって呼ぶわ。女らしくもない魅力もない強気だけが取り柄の貴方にこそ彼にはふさわしくないわ」

 

「ぐぬぬぬ」

「ぬう・・」

 

 

「うわあ!?」

 

「女神同士の神威のぶつかり合いです!?」

 

「すげえ!?なんて力だ!?」

 

「これが女神同士の神威!?」

 

「これ程なんて思いもしませんでした!?」

 

「アフロディーテ様!お辞めを・・く!」

 

「アルテミス様も!」

 

「落ち着いてください!」

 

「く!これは神アルテミスの神威か!?」

 

「ここまでとは!」

 

「シル!下がってください!く!」

 

「アルテミス様の神威!?」

 

「く!ここまで神威を剥き出しになるとは!」

 

 

「アルテミス!ダメだ!」

 

「この二人がぶつかると!なんでいつもこうなるんだ!?」

 

「アルテミスやめなさい!」

 

「アフロディーテもやめるんだ!」

 

「二人とも!神威を放っちゃダメ!」

 

 

まさしく犬猿の女神同士が神威をぶつかり合うとここまで威力を発揮するとは思っても見なかった。ベル達は二人の神威に圧力がかかるように、体が重くなる。レベル5の椿でも二人の神威のぶつかり合い衝撃は重いらしく、滅多に身動きが取れない

 

ヘスティア達もあまりに強い二人の神威を必死に止めようとする

 

 

でも、その前に俺には神威など通用しない

 

 

 

「やめろ!!!」

 

 

「「っ!?」」

 

「「「「「「「っ!?」」」」」」

 

「「「「「っ!?トールの神威!?」」」」」

 

 

今度は俺が威圧を与えて二人の神威を跳ね返す

 

俺にはゴッドシュテールングのレアスキルもあるから、二人の神威など俺には通用しない上に無効できる。更に俺は『トール・エンペラー』を発動して以来、母の血が流れる俺は母の力も扱えるようで、母の神威も出せるようになった。だから母の力を使って跳ね返す。まさか神の子として生まれるだけでアビリティとレアスキル関係なしの力を得られるとは思わなかった

 

 

「別に今結婚するわけじゃないんだ。そんな二人して怒るな。周囲にも気を配れ。神威を放つな」

 

「う・・・・すまない」

 

「ご・・・ごめんなさい」

 

「まったく、仲が悪いからと言ってここで争うとは。ならお前達もここで同居してみるか?」

 

「え?いいのか?」

 

「いいもなにも、そうでなきゃお前は納得しないだろ?それとも俺とアフロディーテが共に居てもお前はいいのか?」

 

「そんなものは良くない!ジーク!私たちも同居させてくれ!アフロディーテをお前と一緒にさせたくない!!!」

 

「ヘスティア。ひとまずはそれでいいと思わないか?この場を収めるにはこれが一番と思わないか?」

 

「そうだね。まだ部屋はあるしね。でも・・・・・・物凄く怖い」

 

「今の君の気持ちはもの凄くわかる」

 

 

でも仕方のないこと

 

アルテミスが俺とアフロディーテと同居していると知れば、当然放っておくわけがない。とても危険ではあるが、何かあれば俺が止めればいいだけのこと。別に俺がなんとかすればいいと。もう俺が処理をすればいいとどうにでもなれと思った

 

 

「アルテミス。貴方に家事なんてできるのかしら?」

 

「お前よりは上手くなっている。眷属にいろいろ教えて貰ったからな。私が女としてより魅力を上げたところを見せてやる!」

 

 

「程々にな」

 

「ねえ?ジーク?あれがまさか前に・・・婚姻を頼まれた女神様?」

 

「ああ。そうだ。まさか彼女がここに来るとはな」

 

「へえ・・・そうなんだ・・・ねえジーク?あの女神様と結婚するの?」

 

「ジーク!?あれがアルテミス様!?またもこんなに私のライバルが!?」

 

 

 

「シル。ペルセフォネ。俺の話を聞いていたか?俺は結婚する気はまだ無いんだが」

 

 

本当にこれ以上はややこしくしないでほしいのだが

 

こうしてアルテミス・ファミリアも同居することになった。以前よりも酷いことになるが。もう自分の力でなんとかするしかないと。もうどうしようもならなかった。シルとペルセフォネも今の状況を悪化しないでほしい。そして俺は結婚しないといつになったら聞き入れてくれるのだろうか

 

俺の恋愛事情は複雑だ

 

 

そして遂に明日はアレス・ファミリアが進行を開始する

 

俺たちは関係ないとはいえ、警戒に当たる。アレスのことだ。たとえ戦争に負けても密かにオラリオに侵入するに違いない。その万が一を予測して俺は対応すると明日に備える。彼女と過ごした休日はなんとも疲れを癒すにいいと思うが、またも今の状況のせいでまた疲れが増えるのだった

 

 

ああ。本当に面倒だ

 

アフロディーテとアルテミスの対応も、アレスの対応も

 

 

本当に神々は俺たちの下界を騒がせる

 

 

 




予定として

アレス戦争はあと二話で終わります
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