*それとこの話では隻眼の黒竜は『ファフニール』と言う設定にしています
ご了承ください
竜殺しを救う少女
オラリオの天は黒い黒雲に覆われていた。今にも落雷が落ちるかのように。その下でとてつもない存在がオラリオの中に居た、正確にはダイダロス通りの古い闘技場に居る『一匹の竜』。その一匹の竜はとても体が大きく、下手すればゴライアスと同格のサイズである。だから街の人間からすれば、すぐに顔を少し上げても遠くに居ても見れる体格だ。その竜が黒雲や地震までも起こしている
だから街に住む多くの者達が悲鳴をあげる。それはもちろんオラリオの中でモンスターが出現したからだ。過去においてもこんな事件は一度もない。あってもベヒーモスが攻めて来た時だけだろう。なんにしてもオラリオの街中でモンスターが出たのであれば、討伐するのみ、甚大な被害を出さないために、だが悲鳴をあげているのは『市民』だけではない。下級冒険者も悲鳴をあげている者も居る。悲鳴だけではなく、腰を抜かして地面に尻を付ける者、もしくは膝を付いて絶望する者。各地にそれぞれとてつもない悲鳴と騒めきで人間達は怯えていた。あの娯楽に飢えた神でさえも、恐れている神も居る
遠くに居るホームで待機している各地のファミリアも、窓越しから一匹の竜を目撃する。もちろんギルド本部に属する職員達も、あまりの緊急事態と成りうる状況となってしまい。急いで警報を鳴らすために、ギルドの大鐘楼から警鐘を鳴らす。このとてつもないダイダロス通りに出現した竜の討伐を呼び掛けるために
人も、神も、オラリオに属するファミリアも、ギルドも、こんな予想外の事件が起きるなど。想像も付かないだろう。
それにどうして『あの竜』がここに居るのとも誰もが疑問に抱く
オラリオ内でモンスターが出るのは仕方ないだろう。先ほど18階層にイヴィルスが出たと警報を出した。だからイヴィルスが連れて来たのだと思うだろう。だがそんなことで皆怯え、悲鳴を上げているのではない。
その竜に問題があった。なぜならそれは
三大クエストの最後のモンスター
隻眼の黒竜だからだ
十五年前にオラリオの最強を誇る派閥ゼウス・ファミリアとヘラ・ファミリア。その最高レベルの強者達がいた最上級冒険者が居たにも関わらずその竜に敗北した。精霊も当時には居たのだが、それでも黒竜に敗北し、最後は英雄アルバートが命を削って片眼を斬ったくらいしかできず、その両方のファミリアは黒竜によって全滅した。その後黒竜は北の果てへと飛び立った
だから三大クエストはまだ果たされていない。今も世界は英雄を欲している。いずれ黒竜を倒すために
そして殺戮の女神が創った過去の生物の強化種、クリムゾンベヒーモスを倒した。新たな最強の英雄。雷帝ジーク・フリードが現れた。その後もたくさんの偉業を成し遂げた。その中には助けることが不可能な女神をも救った。だから彼ならきっと、いつか黒竜を倒せるのではないのかと、街に住む市民や冒険者たちは期待していた
だが、その英雄が
何故か黒竜になっていた
『「ぐうおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」』
俺は憎いあまりに遂に己の隠していた力を使った。もはやもう抑えきれない。エダス村の時から黒竜の鱗を触った時点で、もはや俺の体は人間としての体を保っていけなかった。それにウィーネを守るためにも使うしかなくそれにまたも俺は心臓に刺されて死にかけたんだ。これを使うしか生き残れる手段がなかった
でも、どうでもいい。
今は・・・・・・イケロス・ファミリアを殺す事を優先する
「な・・・なんだよお前は!?・・・・なんでその姿になった!?雷帝!?なんでお前が・・・・黒竜に!?」
無論ディックスだって驚く話だ。なぜ俺が黒竜になったのか。無論そんな説明するわけがない。今ここで死ぬ奴に説明など不要だからだ
『「黙れ、お前たちはここで終わらせる。ディックス・・・・・・並びにグランも他の団員も・・・・・絶望を味あわせてやる!!!」』
「ふざけんな・・・・・この化け物!!!」
『「死ねえええええええええええええええ!!!」』
「「「「「「うわああああああ!!!」」」」」
俺は両手にある青い爪がディックス達を襲う。ここ古い闘技場を壊してでも、俺はイケロス・ファミリアを潰すと。闘技場はまだ出ていないが、闘技場内で手で地面を裂くように、俺は爪でイケロスの団員を襲う
そして俺に吹き飛ばされて、俺の横の闘技場の観客席に居たヘスティア達とゼノス達は、俺の姿に驚くも、どうしてこうなったのか状況を整理する
「なんで・・・ジークさんが・・モンスターに!?」
「どういう事なんですか!?あれは!?」
「あれって・・・・・マジであの三大クエストの黒竜なのか!?」
「でも両眼がありますよ!?」
「どうして黒竜がここに!?」
「なんでジークっちがドラゴンに!?」
「どうして彼が!?」
「青年は何をして・・・あんな姿に!?」
「ジーク・フリード・・・・・なぜお前が黒竜に!?」
「ジーク・・・・やっぱりドラゴンだったんだ!」
「わかってはいたけど・・・・・・・やっぱり使ったのか・・・禁断の魔術武装を!?」
「え?神様何か知っているのですか!?」
「リリ達はジーク様の魔術に関しては何も知らないです!」
「あれはなんなんですか!?」
「どうしてジーク様が黒竜に!?」
「あれもルーン・アーマメントなんですか!?」
ヘスティアは俺がなぜあの黒竜に変身したのか、もちろんヘスティアはウンディーネに俺の正体を説明されたから訳を知っている。でも状況が状況のため、簡単な説明しかしない
でもこれは信じ難い事実。俺がなぜ黒竜に変身できる理由は。人間なら絶対にやらない方法、
それは
「簡単に説明すると!ジーク君はあの三大クエストの隻眼の黒竜のドロップアイテムである『黒竜の心臓』をちょうど半年前に食べたんだ!!!」
「「「「「「「「は!?黒竜の心臓を食べた!?」」」」」」」」
そう、人間がモンスターに変身すると言えば、この方法しかない。だがそんなことをすれば体はそのドロップアイテムのモンスターに成り果て、意識は無くなり人間としての魂は消えて、本能に生きるモンスターとなる。言うならモリガンがした。カラスにベヒーモスの心臓を食わせた方法。それと同じである。だからカラスはベヒーモスの姿へと変化した
だから誰も真似をしない。モンスターのドロップアイテムを口にするなど。
それを俺はやったのだ。半年前に
フレイ・ファミリアを属していた時に、俺はそれをしたことで。黒竜の力をルーン魔術として手にした。カオス・ヘルツの機能が更に強化したのも、感情を消すことで強くなる力も、ほぼ黒竜の力が原因。
「ジーク君はそのドロップアイテムを口にしたから!ルーンアーマメントで黒竜そのものに変身することもできるんだ!」
「ジークさんがあの黒竜の心臓を食べた!?」
「ちょっと待ってくださいヘスティア様!?」
「ドロップアイテムを人間が口にしたら体はモンスターになるんですよ!?」
「一年前にジーク殿が黒竜を食べたのなら、なんでそれからは人間の姿でいられたんですか!?」
「普通は意識も無くなって、本能に生きるモンスターになるはずですよ!?」
「神ヘスティア!今でもそうだが、なぜ彼が人間としての意識を持っているんだ!?」
「これは本人やウンディーネ君が憶測に過ぎないって言っていたけど!彼の怒りが強すぎて。黒竜に意識を取られるどころか、ジーク君の怒りで逆に黒竜の力や本能を物にしたんだって言っていた!だから心まではモンスターにならずに済んだって!」
「ふははははは!!そりゃあすげえな!やっぱり雷帝は面白えな!」
「だから君は黙っていろ!イケロス!」
「ぐふ!?」
もちろんそんなことをすれば体も意識も黒竜になってしまうが、俺の怒りが強すぎるのか、逆に俺が黒竜の力と意識を支配してしまい。自分の力へと物にしてしまい。今まで力を抑えて人間として生きていたのかもしれないと。ヘスティアは俺とウンディーネに以前言われたことを言う
でも実は完全には制御できていない。実際に今も怒り奮闘で奴らに報いを受けさせようと、完全に建物も関係なしに壊す。暴走戦法でディックス達を殺している
怒り一つで俺は幾度も奴の力を使っていたのだ。竜眼も体から溢れ出した闇も、全てカオス・ヘルツに出る力は黒竜の力と共に出してしまう。意識は黒竜ではないが、力だけは抑えられていない。
今も俺は黒竜の力を使ってでも、相手を殺すことの憎悪で。俺は己の憎しみに囚われている。その憎しみ一つで俺は全てを滅ぼすことがいつでもできたのだ。それがこの黒竜の力だ
「う・・・嘘だろ・・・・ディックス!どうする!?みんな殺されちまったぞ!?残っているのは俺とお前だけだ!」
「あの英雄が・・・こんな化け物になるなんて・・・・逃げるぞ!!クノッソスに逃げれば助かる!!ここからは全力で走れ!もう俺たちに勝ち目はねえ!」
「嘘だろ!?・・・・・く・・・・くそ!?こんなところで・・・あの黒竜に出会すなんて!!」
『「っ!下等生物共が!!この後に及んで逃げるか!!絶対に逃がさん!!殺してやる!!デイックス!!グラン!!!」』
「大変です!ディックス・ペルディクスとグランが闘技場から出ます!?」
「ジーク・フリードも追いかけてしまうぞ!?」
「ジーク!!!」
「追いましょう!神様!」
「うん!どうにかしてジーク君を止めるんだ!!このままじゃあダイダロス通りがめちゃくちゃになる!!」
俺がディックスとグラン以外のイケロスの団員を爪で一人残らず串刺しにした。さっきから反撃もされて俺の体にカース・ウエポンや大剣や槍や矢が刺さるが、傷は何一つ付かず、俺の体は黒竜でオリハルコンより硬い鱗をしているから傷すら付かない。ゼウスとヘラの眷属達が負けた原因の一つはこれである。そうして自分と副団長しか生き残っていない周囲を見てデイックスはここから近くにあるクノッソスの扉に行けば助かると思い、地下に逃げ込む算段で闘技場を出ようとする
もちろん俺は逃がさず、ダイダロス通りの建物が壊れようが、それで人間が巻き込まれて死のうが、一切俺には関係ないと。そのまま腕を地面に着けて獣のように追いかける
このままだとダイダロス通りが酷くなると、ヘスティア達は急いで俺を止めるために彼等も走る
一方ロキ達は
「嘘やろ・・・・・あれ・・ジークなんか!?」
「どうして・・・彼が」
「馬鹿な・・・・なぜだ・・・ジーク」
「なぜここに・・・・あの黒竜が!?」
「おいおい・・・・あいつ・・・前から竜眼をしていたから・・・なんでかと思ったが・・・そういうことかよ!?」
「嘘・・・・あれ・・・ジークなの?」
「は?・・・嘘でしょ・・・・だって・・・あいつは・・・ヒューマンよ?」
「どうして・・・・ジークさんが・・・・・」
「嘘だ・・・こんなの夢だ・・・ジーク・・・そうなの?・・どうして・・・・どうして!!!!!」
フェルズが用意したゴーレム三体を素早く倒して、ウィーネにしがみ付いた俺を追いに、古い闘技場を目指していたロキ達は、当然俺が黒竜に変身した姿を目撃する。正確には黒い柱から突然黒竜が出てきただけなのだが、なぜロキ達が黒竜に変身したのが俺だとわかったのか、それは声を聞いた。ここから遠くでもしっかりと聞こえる。俺が黒竜の姿になって言語を喋っているのを聞いて、黒龍がだとすぐにわかった
だが、わかったとしてどうするか
「フィン!?あれはジークなのか!?」
「僕にもわからない!なぜジークが黒竜に!?」
「ロキ!何か知らない!?」
「ウチもわからん!なんでジークがあの黒竜に変身したんや!?なんかの魔法か!?それともレアスキルか!?」
「リヴェリアは何か知らんか!?」
「私にもわからない!!私だってジークにそんな話を聞かされたことはない!どうしてだジーク!?なぜお前が!?」
「ねえ!どうすんの!?あの状態になったジークを倒すの!?」
「無理ですよ!?あれが隻眼の黒竜ですよね!?私も初めて見ますけど・・・全然他のモンスターと迫力が違いますよ!!」
「どうして・・・ジークが・・・あの黒竜に・・・」
「アイズさん!しっかりしてください!」
ロキ達でも落胆した。それはそうだ。まさか俺があの世界の敵にして世界を滅ぼすかもしれない、そしてゼウスとヘラの眷属を滅ぼし、三大クエストの最後のモンスター。隻眼の黒竜なのだ。それを目の前に突然出現したりしたら、誰でも恐れる
特にアイズが一番に驚いている。かつて父と母を殺した復讐の対象。それが今の目の前に居るのだ。となれば今ここで復讐を果たすと動くのだが、それができなかった
それが俺だからだ
かつて兄のような人だった古い仲間が、その黒竜へと変貌したのだ。それを目撃した彼女はかつての好きだった兄でもあった人が黒竜に変貌するなど。現実逃避をし始めて、彼女は膝を付いた。それを横になったレフィーヤが助けようと助言するが、彼女は青ざめて元気が出ないまま、そのまま立ち尽くす
もちろんアイズだけではない
「どうしてだ・・・ジーク・・・お前は・・・・何者なんだ・・・」
リヴェリアもだった。リヴェリアは俺に恋をした。その恋愛対象だった俺が、まさか人ではなく、本当はモンスターだったのではないのかと。もう自分が知らない俺の姿を見て。リヴェリアは生まれて初めて絶望をしたのだ
「おい・・・なんだよ・・・ジーク・・・テメエが・・・クソヒューマンじゃなくて・・・モンスターだと?・・・信じねえぞ・・・・・俺は信じねえぞ!!!!」
今までライバルとして認めていなかったが。それでも俺はベートにとっては競争相手で、少なくとも弱者ではないと、今まで俺の力を認めていた。でもそれが、本当はあの隻眼の黒竜だと。そんな馬鹿なと、俺がモンスターに変貌をしたことを信じない
「冗談でしょ・・・・冗談って言いなさいよ・・・・・ジーク・・・・なんで・・・・あんたが・・・・・・モンスターになっているのよ!?」
ティオネも俺が黒竜に変身したことに信じられない。ロキ・ファミリアに入った時から好きではない上に、むしろ嫌いだった。自分より器用で誰よりも優しい彼が。自分には持ってないものばかりを持つ俺が、いろんな才能を持っていると羨ましいと思っていた俺が。モンスターに変身するなど、これがロキのようにただの脅かしであってくれと。この現実を受け入れない
「そんな・・・こんなの夢だ・・・・きっと私まだ眠っているんだ・・・・頬を抓れば・・・・・痛!・・・・そんな夢じゃない・・・・ジーク・・・みんなの英雄なんだよ・・・・なんで・・・なんで・・・・モンスターになっているのさ!?」
ティオナもこの事態が受け入れられない。俺は英雄だ。ベヒーモスを一人で倒してみんなに讃えられた英雄だ。そんな英雄が、人類の敵であるモンスター。それも人類が悲願としている黒竜に姿を変えるなど信じられない。ティオナはなぜ俺が黒竜に変身したのか、訳がわからなくなった
「ジークさん・・・どうしてあなたが・・・・あの隻眼の黒竜に・・・・どうしてですか!?」
こんな俺の最悪の真実に、彼女は涙を流した。憧れでもあり、正直になれなかったが恋愛を俺に抱いていたのだ。リヴェリア同様に、だが、そんな相手がまさかあの人類の敵である隻眼の黒竜だとは。思いもよらずで、それが俺だったなんて、こんな現実を信じたくなかった
「どうして・・・お前さんが・・・まさか・・・また誰かに何かされたのか?」
ガレスももちろん信じたくないが。また誰かに何かをされて傷ついているのではないのかと、また誰かに大事なものを奪われて怒って、変身しているのではないかと。ガレスはこの事態も信じられないが、カオス・ヘルツが関係しているのではないのかと思っている
「嘘や・・・嘘なんやろ?・・・ウチらを騙そうとしているんやろ・・・なんでや・・・・あの姉貴の子なんやろ・・・・・なんで・・・モンスターに変身しているんや!?」
ロキも俺が姉であるトールの子供なのは知った。でもこんな事実は知らない。まさか自分の甥があの世界の黒竜に変身するなど。裏切りの女神でもあり、人を騙して笑う彼女でも、こんな冗談は流石に笑えないと。トリックスターのピエロと言われた彼女でも、これは苦笑いすらもできなかった。
それだけ自分の甥がまさか人ではないなどと。信じられなかった
そして、この中で彼だけが一番取り乱していた。それも絶対にこの状況でも冷静に状況整理するはずの彼が
「な・・・・何がどうなっている・・・いや・・・とにかくあれを討伐しないと・・でも彼は・・・英雄で・・・このオラリオの・・・でも・・このままだと街にも・・・・でも彼は友人で・・・・だが・・・僕は・・・僕は・・・僕は・・・・・どうしたらいいんだ!?」
あの勇者と言われ、どんな困難な状況でも諦めずに誰よりも先に一歩を出て、仲間を励まして勇気づけて、仲間の意識を強くさせて共に戦ってきた。そんな彼でも
青ざめて、絶望をした
こればかりはどうにもできない。勇気だけじゃあ無理な絶望、仲間と共に頑張ってもこれだけは超えられない絶望、絶対に倒すことのない絶望、これが残酷な真実だと思い知らされた絶望、英雄だった彼が本当は人類を滅ぼす怪物だった絶望。フィンの親指は疼きではなく。完全に震えだった。
彼はわかっている。レベル8のゼウスの眷属とレベル9のヘラの眷属達が、今目の前に居る黒竜に敗北されたことを、そして自分たちはそのレベルすら辿りついていない。そんなまだ未熟と言える自分たちが、世界を滅ぼすかもしれない黒竜を目の当たりにした瞬間、もはや目の前が真っ暗になった。
しかもそれが俺だと
古い友人だったなんて信じたくない。どうせ何かの魔法かもしくはカオス・ヘルツだと。そんな憶測な理由で変身したのだと。フィンは友人が黒竜だったとしても、今英雄を失うのも古いとは言え友人を殺すことなどできなかった
ロキ・ファミリアは絶望をしたのだ
まさかあの三大クエストの最後のモンスター。北の果てに去ったはずの黒龍が今目の前に居て、しかもその黒竜が俺の声をして喋っているなど考えられず、なぜ俺の声をするのかは、俺が黒竜に魔法かレアスキルで変身したのだと、推測するが
これをどうしたらいいのか、彼らは困惑していた。あれが本当に黒竜の姿をした俺なのか、今も彼らは街の市民のために俺を殺すか、こんな状況でさえ迷っていた。彼らにとっては俺は友人だ。だからその友人を消すことなんてできない。ましてやリヴェリアやレフィーヤやティオナも、黒竜となって街を壊している俺をどうしたらいいかわからない。
特にアイズは余計に
ただの黒竜ならよかった。それなら自分の悲願の復讐を果たすとすぐに行動するのだが、これが俺となると。彼女はどうしたらいいかわからない。人間がモンスターになるなど。こんな事態初めてなのだ。でもアイズは前から俺に言われていた。『お前とは分かり合えない。いずれ俺とお前は殺し合う運命だと』、あの時言っていた言葉がこういう意味だったとようやく理解した
確かにこれでは分かり合えないと言われてもおかしくない。彼女も今まで散々モンスターを斬ってきたが、復讐対象だった黒龍が俺だったことに彼女は今も剣を握れず
フィン達も含めて、ただ目の前で人間を襲う黒竜となった俺をただ恐れて見るしかなかった
だが
「団長!!」
「っ!ラウル!」
「あれ!本当にジークなんすか!?」
「なんでジークが・・・あの黒竜に!?」
「わからない。僕らも、どうしてジークがあんなになったのか・・・」
「それでどうしますか?」
「ジークをあのまま暴れ出したら!ダイダロス通りがめちゃくちゃになるすよ!?」
「く・・・・どうすれば・・・」
他の場所で警護の責任役としてラウルが、俺が黒竜となった事態に、流石に団長に指示を聞かなければわからないと。流石に持ち場を任せれてもこればかりはどうしたらいいかわからない。相手があの友人でもあった俺であるなら、どうしたらいいかなど、部下であるラウル達でもわからない。部下まで指示を聞いてきた以上。フィンはもう決断を下すしかなかった。でなければ本当にダイダロス通りがとんでもないことになる
「あ!?ジークが移動しました!?」
「「「「「「っ!?」」」」」」
「く!こうなったら仕方ない!ジークをなんとしてでも止めろ!相手が友人でも!黒竜に変身している以上は!止めるしかない!全員でジークを止めるぞ!!」
「フィン!?ジークだよ!?やるの!?」
「彼を止めなければダイダロス通りは酷くなる!彼だってまだ意識がある!声を掛ければ彼だって止まってくれるかもしれない!それでも止まらなかったら時は!覚悟を決めて彼を斬ってでも止めろ!!」
もう俺がディックスを追いかけて移動している以上、甚大をより酷くしないためにも、やはりここは迎え打つしか方法がなかった。ましてや人間がモンスターになった。俺は今のステイタスはレベル6だが、黒竜に変身したらレベル6の状態で強くなるのか、それとも黒竜そのものの強さになるのか、今俺が強さがどれだけの強さなのかなどはわかるはずもない
だがそれでもやるしかない。フィンは相手が俺であろうと、黒竜と言う姿のモンスターになった以上は戦って止める他なかった
一方、フレイヤ・ファミリアは
「まさか・・・・・・シルの話は聞いたけど・・・本当だったのね」
主神であるフレイヤは、この事態に驚いてはいない。なぜなら彼女には俺とシルから俺の正体をある程度話しておいたからだ。アポロンの宴の時に初めて俺と出会った時に俺は少し言った。その後それなりのことを最近シルから聞かされる。だから俺が黒竜に変身できることも知っている。いつの日か、必ずその日が来るとシルから言ってはいたが、まさかこんなに早くなる日が来るとは彼女も思ってもいなかった。ダイダロス通りはほぼ俺が黒竜になったことで壊滅する恐れがあるが
しかし
『彼女』が行ったから、自分の眷属が出る必要はないだろうと思うが
『緊急警報!緊急警報!!ダイダロス通りにモンスター出現!!それも三大クエストの最後のモンスター!黒竜です!!各待機しているファミリアは直ちにダイダロス通りに向かって討伐に当たってください!ギルドはミッションを発令します!!!』
「あの三大クエストの黒竜が街中に出現したのだから。各ファミリアに討伐指令が出るのは当然ね」
バベルの警鐘楼から鐘がまたも鳴る。当然オラリオの街中に。しかも三大クエストの黒竜が突然出現したのであれば、ギルドは慌ててミッションを発令するのだと、こうなることはフレイヤはわかっていた。
だけど
「でも・・・・・なんでジークが黒竜に変身できるの?」
シルからそれなりの話は聞いてはいた。でもそれが本当だったなんて本人も信じられなかった。俺から嘘を見抜くことはできない。だからなぜ黒竜に変身できるのかは知らない。シルも俺からそれができるとだけしか聞いておらず、どうやって変身できるのかは動機はまったく知らない。ただ俺が黒竜に変身する日が来る。としか聞いていないのだ。でも今目の前に街を見渡せる窓から見ているが、十五年前オラリオに攻めてきた黒竜で間違いない。でも両眼ある。片眼は英雄アルバートに斬られたと言うのに、今は治っている。どういうことだろうと疑問は思うが
この事は自分しか知らないため、いきなり俺がモンスターに変身した事態を知った、自分の眷属であるオッタル達は
「フレイヤ様!ダイダロス通りにあの黒竜が!」
「ええ、わかっているわ。今私も確認したわ」
「なぜあの黒竜が・・・・あの野郎の声をしているんだよ!?」
「魔法かレアスキルで・・・・ジークが変身しているからよ」
「なに!?」
「本当なんですか!?フレイヤ様!?」
「ええ、ジーク・・・・相当怒っているわね。ギルドもなんて無茶な命令を、また七年前みたいに多くの冒険者を無くすつもりかしら?それも・・・・自らが称えた英雄に殺されるわよ」
事情を知らないオッタルとアレンはなぜ黒竜が現れたのか、この都市でレベル7のオッタルでも驚く。ゼウスとヘラの眷属が全滅させられたあの黒龍が、またこの街に、しかも街中で出現している。こんな事態、アレンとオッタルでも、こんなことを信じ難い。しかもそれが。この都市で英雄となった男がモンスターになった。
あの俺が、世界最強の怪物である黒竜に変身するなど。ゼウスとヘラの眷属が勝てなかった強敵を、なぜ俺が変身したのか、オッタルもアレンも目の前の事の事態が信じられない。今回ばかりは七年前同様に取り乱していた
「オッタル。アレン。この件は関わらなくていいわ」
「っ!?よろしいのですか?」
「街中に・・・あの黒竜が出ていますが!?」
「いいわ。あれは・・・・・誰にも止められないから、それに止めてくれる子が行ったわ。その子が止めるから大丈夫よ。ジークがあの姿になっては誰もがやられてしまうわ」
「フレイヤ様は・・・ジークが黒竜になることを知っていたのですか?」
「最近あの子が教えてくれたの。正直私も実際を見て驚いているわ」
「では・・・本当によろしいのですね?」
「ええ。どの道あの黒竜の姿になったジークに勝てるとは思えないわ。あなた達には申し訳ないけど、手出しは無しで。どうしても近くで見たいなら別にいいけど。姿を見せないほうがいいわ。今のジークは誰でも敵よ。姿を見せないように近くで見なさい」
「「は!」」
流石にこの黒竜の姿になった俺に勝てるとは思えず、とりあえずこのまま観察することにした。でもこのままにすればダイダロス通りもただでは済まないのだが、それは彼女が向かったからと、自分たちの眷族を向かわせなくてもいいと判断した。それに挑むとしたら、黒竜の力だけでなく半神の力も得ているはず。最悪の組み合わせをしてモンスターの姿になった俺に挑むのは眷族が現最高レベルである7が居ようと。眷族を危険に晒すことになると。下手に動かないようにするべきだとフレイヤは珍しく慎重に考えた。そんなモンスターの力だけではなく、ルーン魔術も使ってくるのであれば、
もはや俺は人間でもなく怪物である
半神半人でもあり半獣でもある。そんな異端な怪物が十五年を経って、英雄が我が兄の義弟がそんな異端な生物だったなんて
「ジーク・・・・・貴方はそんなに憎いの?人間が憎いの?」
フレイヤはなぜ俺が怒っているのか、理由は知っていた。それだけは心を見通して見極めた。その心の色は黒だった。人間の負の感情全てが混ざり込んだドス黒い色。もちろんそんな憎しみに囚われた人間の心など、誰も見たことがない。人間だけではない。全ての生物を憎んでいる。この見るにしては耐えがたい色を初めてフレイヤは見た
それが俺から出ているのだと。信じたくない
「お兄様・・・・・貴方様が居ない後・・・・ジークに何があったのですか」
「なんであの野郎が・・・・」
「ジーク・・・・・なぜお前が・・・黒竜に」
フレイヤは俺から聞いてはいるが、下界に共に降りた我が最愛なる兄は、もう俺の知らせにより、俺を庇って消えたと聞いた
だから、その後何が俺をここまで苦しませて来たのか、その真相をフレイヤは知りたかったと、天に向けて兄フレイに囁いだ
一方ギルド本部、エイナの方では
「チュール!全ファミリアに討伐指令だ!あの黒竜がオラリオの中に入っているんだ!!全員にあの怪物を討伐する指令を出せ!」
「しかし議長!!彼はジークです!私たちの英雄ですよ!?彼があの黒竜に変身したのは訳があるはずです!あの声を聞いたはずです!彼はモンスターになりつつもまだ意識があります!彼に声を掛ければなんとか!」
ギルド本部ではエイナがロイマン議長に必死に俺の討伐を無効にするように訴えていた。ギルド本部からでも俺の咆哮とも言える声をしっかり聞いていた。だから俺が変身したのだと。ギルド本部の人間でも、俺がなんだかの理由で黒竜に変身したのだと知った
それでも尚、ロイマンはこれ以上犠牲者や市民の害にならないように、俺が黒竜に変身しようが関係なく、モンスターであるなら排除するまでだと。ロイマンは勝手ながらエイナ以外の職員に警報を呼び掛けた。本来ならエイナに頼むのだが
そのエイナがこんな感じである
黒竜に変身したとは言え、俺が言語を喋って暴れているのであれば、まだ対話ができるはずだと。自分たちが声を掛けて止めさせるべきだと。あんな姿になった俺でも声を掛ければ止まるはずだと、エイナが個人的に俺に恋をしていると言うのもあるが、英雄をここで失うべきではないと。モンスターに変身して暴れているのには理由があるはずだと言っていた
だがロイマンはそれでも聞かない。今でもダイダロス通りで市民や民衆は怯えている。これが英雄の姿だったとしても、モンスターが街を暴れていることには変わりないと。どうあってもエイナの話を聞く気はない。ロイマンは以前俺とエイナがデートをしているのをどこかで聞いたのか、個人的にエイナが俺に味方をしているのは知っている。そんな個人的なことで、討伐を無効などできない
市民や民衆のために冒険者もほぼギルドの指示を無視して動いている派閥もある。それはガネーシャ・ファミリア。街の治安を守護する派閥。ガネーシャも流石にあの三大クエストの黒龍がオラリオの街中で暴れているのであれば、例え中身が俺であっても、討伐して市民を守るのだと。もはやガネーシャやそれ以外のファミリアも動いている。これではどうしようもならないと、ロイマンはエイナに諦めと言う
もうここまでになったら、どうしようもならないと。それならエイナは最終手段を取る
それは
「わかりました!!それなら私が直接ダイダロス通りに行って!ジークを止めに行きます!」
「な!?ま、待て!チュール!そんなことをしたら危ないぞ!」
「関係ありません!私は彼の友人なんです!私が止めなければ立場がありません!」
「な!?本気か!?お、おい!?」
「エイナ!?そんなの無茶だよ!?危ないよ!」
「それでも止めなくちゃ!」
エイナはもうロイマンに言っても無駄だとわかった今。それなら自分自身がジークの元に行って止めればいいと。もう議長に頼んでもダメだと。自分の足でダイダロス通りに行って暴れるのをやめさせると。ギルド職員が自らの足で今戦場となっているダイダロス通りに行くと、ロイマンの声やミイシャの声も聞かずにエイナは本部を出て、ダイダロス通りへと走った
例えモンスターの姿、それが黒竜の姿をしてようと、俺は友人だと。あんな姿になっても、彼女は見捨てず、今すぐこの暴走を止めに行くと。ルールに厳しい彼女が今破った。俺を助けるために
黒竜の出現により、全ファミリアが出動する。その中一人の男神が、偵察までしてせっかく得られた成果が目の前にあったと言うのに、俺のせいで何もかも台無しにされた。地下で潜むタナトス達は、俺の恐ろしい姿をしていることに気づいてクノッソスを出るのをやめたと、その男神の眷族から報告があった。ここまでウラノスの頼みで調査をダイダロス通りでして来た。もちろんその中でイケロス・ファミリアの調査も入っている。そのイケロスの後を追って辿り着いてみれば
英雄雷帝が三大クエストの黒竜となっていた
「なんだこれは・・・おいジーク君・・・・なんで君が・・・モンスターになっている・・・・それも・・・なんで黒竜に!?」
それを見ていたのはヘルメスだった
ダイダロス通りの古い塔の上で、彼は英雄が獣になる姿を眼の当たりにする。ヘルメスは長年の人間を見て来たが、人間がモンスターになる光景など見たことがない。無論それがあのゼウスとヘラの子供達を滅ぼした。英雄を殺した黒竜に変身するなど。あり得ない、あり得ないと。こんな現実は嘘だと言う
これではゼウスとヘラの積み重ねが台無しになると。ヘルメスはこの光景に絶望をした。
だがそれよりも
「どうして・・・なぜ君が!・・・黒竜に変身したんだ!?」
そう。誰もが気になるだろう。俺がなぜモンスターになったのか、情報を操作するヘルメスからすれば是非とも知りたい。これでは英雄アルバートの残したこともアリアのしたことも、ゼウスとヘラのしたことを無駄になってしまっても、目の前の事実の真相を知りたい
なぜ契約相手が、あの黒竜に変身たのか知りたい。そうでなければ報われないのだ。ゼウスとヘラの子供達に
などと、いろんな理由を聞きたいと誰もが思っているだろう
だがどうでもいい
俺は今イケロス・ファミリアを殺すのに真っ最中だ。あれだけのことをしておいてクノッソスに逃げようとする。この後に及んで逃げるとは、なんとも臆病者あると呆れるがそれでも逃さない。ドカンドカンと俺は地面を走る爆音が鳴る。手足を地面に着けて駆け走るように追いかける。その際背中に付いた翼が通る度にダイダロス通りの建物ぶつかって崩壊にするが、無論無視だ。通る度に周囲の建物にぶつかって壊れようが関係なく、ただ目の前に居るディックスとグランを追いかけることしか考えていなかった。別に死者が出ていなければ、建物は壊れてもゴブニュ・ファミリアに頼めばいい。怪我人や負傷者がいれば治せばいいと、死者さえ出なければいいと、大して気にしていなかった。
先ほどギルドから警報があった。おそらく俺を討伐するために冒険者がここに集まってくるだろう。今頃ダイダロス通りの市民も今頃ダイダロス通りに出て他の地区へと逃げているだろう。だがそれでも関係なし、もはや敵を排除することしか心になかった
そして
『「グラン!!お前を捕らえたぞ!!」』
「うわあああああああ!!よせ!?」
「う!?グラン!?」
俺は追いかけている内に、副団長のグランに追いついたため、右手で掴んだ。握り潰さないように、まだ遺言を残さずには殺すわけにはいかないと。こんな姿でも最後くらいの言葉だけでは聞いてみたいと、最後には無残には殺すが、それまでの腐った精神の最後を見届けてみたかった
怒っている癖に、やはり心はまだ人間だと思った
『「捕らえたぞ。さあこれがお前の最後になる。遺言はあるか?」』
「お前みたいのが・・・英雄だななんて!お、俺は・・・・認めねえぞ!!」
『「俺は英雄になりたかったのではない。だが仲間を守るために黒竜となった。ただそれだけのことだ!今更俺が英雄と呼ばれ、そして今モンスターになったくらいで怯えるとは、なんたる愚か。しかもそれが最後の言葉とは、お前がこれでどれだけ醜いのか、ようやく理解した」』
「なんだと!?テメエ・・・・雷帝・・ぐ!?」
『「もういい。やはり外道如きの遺言など、聞くべきではなかった。これで・・・・・・・・終わりだ」』
「うわああああああああああ!!よせ!よせええええええええええ!!うぎゃあああああああああああああああああああああああ!!!」
俺はグランを両手で握り潰す。そこからゴキゴキとグシャグシャと。骨が折れる音や体肉が潰れる音が響く。そして奴の悲鳴がこの街に響いた。奴の体はどんどん潰れてそこから血も大量に流れた。そして俺はその潰れた死体を口の中に入れて食べた。こいつが死んで当然の存在。
なぜ人は殺すなと言うだろう。俺にはそれが理解できない。敵となって立ちはだかる者は殺せばいい。今もヘスティアはやめろと言うだろう。ベルも、ヴェルフも、リリルカも、命も、春姫も、リドも、レイも、グロスも、ウィーネさえも。
どうしてなんだろな。悪に染まった人間は殺すのみ。ダンジョンでもそうだと言うのに。今本当に仲間の言葉が聞けない。
今グランを殺しただけでは、この憎しみは消えない。やはり俺が人類であるこの下界の現実と言う名の人の悪意を。全てを恨んでいる
だから続ける。虐殺するんだ。
もう俺から大事なものを奪われないように、世界に知らしめるんだ。俺に逆らうとはどういうことなのか、その眼で街の人間にも思い知らせてやる
と、俺は次はディックスを追いかける
『「さあ・・・・次はディックス・・・お前だ・・・・・俺の心臓を刺したんだ。今度は俺がお前の心臓を刺してやる。覚悟は当然できているんだろうな?いや・・・無くても殺すがな」』
「ふざけんな・・・・テメエ!マジで今自分が何をしているのか、わかってんのか!?」
『「脅しにしては随分と弱けだな!怯えているのはもう見えているぞ?まさか俺が黒竜になるなど、知りもしなかったか?知るわけないだろうな。人がモンスターになるなど。それでもお前達を絶望をさせるには十分だ」』
「どうかしているぞ!?テメエ!?それでも英雄か!?」
『「英雄は人を殺して救って称えられる場合もある。英雄は時には人も敵として斬らなくてはならない。これも街のため・・・・いや・・・俺はもう黒竜になったからオラリオのためにはならないな。じゃあ俺たちのために死んで貰おう。復讐して滅ぼす。イケロス・ファミリアがこの歴史から消してやる」』
「お、おい!?よせえええええ!!」
『「俺たちを敵にするのは間違いだったな」』
もはや慈悲など無し。俺はもう何を言おうが聞かず、ディックスはここで死なねば存在だと。テロリストの派閥は滅ぼすべきだと。一切の容赦なし、敵は殺すのみ、だからディックスを潰すと、今腰を抜かしているディックスに手を伸ばした
のだが
「テンペスト!!」
『「っ!」』
突然、横から風が飛んできた。デイックスに伸ばしていた手を、俺は顔の横に拳を作って防御する。黒竜の体になったから、この程度の風魔法がとても微風にしかならないため、急に風をガードする必要はなかったと少し後悔した。
そしてこの風は俺は知っている。いつの日かこの姿を見せる時が来ようとは思っていたが、まさかこんなに早くとは思っていなかった。まあいいと少しはここに来て良かったと、そろそろ俺の真実を知らしめるにはちょうどいいと思っていた
その風を唱えた人間も、この姿を見せなくてはならない人間も、今俺に攻撃をした人間も、俺は誰なのか知っていた
その人間は
『「ここに来るのはわかっていた。ウィーネにしがみ付いて地上に出たときに通り過ぎたのを見たからな。・・・・・・・・・・・・ここまで来たか・・・・アイズ」』
「っ!ジーク・・・・・どうしてそんな姿に!?」
その攻撃はアイズのエアリアルだと。すぐにわかった。でも驚きはしない。アイズはロキ・ファミリアだ。現最高派閥が俺が黒竜になったとなれば、討伐するのが街の治安を守るとして当然。だが俺はここでこいつらが来ることに関しては驚かない
それに
『「お前らもちゃんと来てくれたようだな・・・俺がこんな姿になっているんだ・・・当然来ると理解した・・・・・・フィン」』
「ジーク・・・ど・・・どうして・・・君がそんな姿に!?」
『「説明なら今度してやる。今はこの姿になってこいつに・・・・・復讐しているだけだ!!!」』
「ぐわああああああああああああああ!!?あ、足が!?足が!?」
『「ディックス。お前は動くな。お前はあとでじっくり殺してやる。ラーニェとフォーの仇、そしてウィーネを弄んだ罪、その身でじっくり味合わせるためにな」』
俺は密かに逃げようとしたディックスの足を俺の足の爪で踏み潰した。今アイズとフィンの邪魔で、この隙に逃げようとしたようだが、そんなことはさせないと、足の爪で刺して止める。
その間にここに辿り着いたアイズとフィン以外にも言う
『「ほう・・・・・全員で俺を止めるつもりで来たのか?ゼウスとヘラの眷属が何もできずに倒せなかったこれを。それより弱いお前らが俺を止めることができるのか?」』
「どういうことや!?ジーク!?」
「本当に・・・ジークなのか!?」
「ジーク・・・・どうしてその姿に!?」
「嘘だよね・・・・ジーク・・・こんな姿になるなんて・・・・」
「お前・・・・なんでそんな姿になってんだ!!!」
「なんで・・・あんたが・・・そんな姿になってんのよ!?」
「どうしてですか!?ジークさん!?」
『「愚かな・・・・こんな姿になった俺を見て、動機を知らなくては動けないとは。本当に愚かな」』
ここにフィンとアイズ以外のロキ・ファミリア幹部達とその主神。ロキ、ガレス、リヴェリア、ティオナ、ベート、ティオネ、レフィーヤ。その俺の元所属していたかつての古き友人達が、建物の屋根の上で、俺の邪魔をしにここまで来たようだ
まあ、ここに来ることは全部わかっていたことだが
『「お前らだけか?ラウル達はどうした?」』
「君が騒ぎを起こすから、今市民の避難をさせているよ。ダイダロス通りの市民をね。今ダイダロス通りを出して別の地区に避難させている」
『「賢明な判断だな。俺がこんな姿をして、今ここダイダロス通りをめちゃくちゃにしているんだ。死体は出さないようにしている。ヘスティアに何を言われるかわからないからな。まあそれで死人が出ても、『俺に関係ない』。死んだら死んだで事故死だったと言い訳をしよう。下等生物の一人や二人死んでいようが、どうでもいいからな」』
「っ!?君は本当に言っているのか!?今君は何をしているのかわかっているのか!?」
『「このテロリストに友人が殺されたから、復讐するためにこの姿になった。それだけのことだ。それに先ほどこいつに俺は心臓を槍で刺された。友人を庇ったせいでな」』
「は!?お前が友人を庇ったがために、心臓をディックスに刺された!?」
『「ああ。このままだと死んでしまう上に、俺がこうでもしてこいつを殺さなければ、俺たちヘスティア・ファミリアは死んでいた。こうでもしなければ生き残れなかった。まだ制御はできていないが、まあ意志だけはまだ保っている。少しヤケを起こせば俺はオラリオすら消し飛ばすかもしれないからな」』
「オラリオを消し飛ばす!?」
『「ああ。俺は『いつでも』それができた。そう。ここにヘスティア・ファミリアに入る前から、それが可能だった。俺はいつでも『国を一瞬にして消す』ことが可能だった。いつでも俺はここを吹き飛ばして『ダンジョンを解放』することもできた。いつでも『お前らを消す』こともできた。俺の力一つで、なんでもできたんだ。この力を得た時から」』
「何を言っている?ジーク!お前はなぜその黒竜に変身したのだ!?なぜそんなことができる!?」
『「リヴェリア。人の話を聞いてなかったのか?今度すると言ったはずだ。とは言ってもここにいつまでも居られるかわからないがな。お前の本当に傲慢が大嫌いだ。お前のそういうとこだけは嫌いだった。なんとも言ってもわからない馬鹿と言うか。偉そうなことをばかり言って、解ろうとしないお前がな」』
「っ!?」
「ジーク。嘘だよね?なんで・・・こんなことを」
『「こんなこと?俺がモンスターになってイヴィルスを排除しているだけだ。そんなことも見てもわからないか?愚かなティオナ。お前が馬鹿だとは知ってはいるが、こんな簡単なことも理解力に無いとは、本当に愚かな」』
「お、愚かな!?・・」
「なんであんたが・・・・そんな姿をしているのよ!あんたは英雄でしょ!なにモンスターになっているのよ!?」
『「心は人だ。少なくとも。英雄も人なんだ。英雄であろうと人である以上は恨むのも人だ。だから恨みでこのイヴィルスを滅ぼすためにこのモンスターになることを選んだ!それだけのことだ!いつまでも俺が英雄で誰の味方をするとは大間違いだ!!俺はこいつが憎い!だからこの姿になっても俺はこいつを滅ぼす!だから邪魔をするな!!」』
「ジーク!正直テメエがあの黒竜に変身しようがどうでもいい!だが・・・・なんでテメエがこんな汚れたことをしやがる!?テメエはそんな奴じゃあなかった!!」
『「そんな奴じゃあなかった?ベート、お前?俺の気持ちがわかるとでも言うのか、何を馬鹿なことを言う?本当に愚かな。お前みたいな奴が俺をわかった気で言うな。わかったとしても理解できまい。俺の心は『人と神を恨む』ことで一杯だ。そういえばわかるだろう?ロキ?」』
「・・・・っ、ジーク。なにがそこまで自分を酷くさせたんや?」
『「そうだな。神の恨んだ始まりはヘルだった。お前の妹だ。お前の妹が俺の母を送還した」』
「は!?あのヘルが!?姉貴を!?と言うか・・・・・あの姉貴がヘルに送還された!?」
『「ああ、その後にアポロンとモリガンとハデス。まあ俺には憎むべき邪神は多く居た。そんな奴には一人残らず冥界に行って貰った。フレイに止められた時も多くあったが。俺はヘルを始め、多くの神殺しをした。お前らのファミリアをやめて一年の歳月を得てな」』
「は!?私たちのファミリアをやめた後で、神を殺した!?」
「ヘルを・・・殺した!?ホンマか!?」
『「本当だ。やはり神が消すべきだ。なにが『神は刺激を求めるためにこの下界に降りてきた』だ?くだらない。お前らは俺たち人間を道具としか思ってないんだろ。娯楽に飢えた神は所詮俺たちのことを道具としか思ってないんだ。だから俺は神を『侵略者』と言う。だから滅ぼす。それだけのことだ。お前だって本当はフィンのことを面白い道具としか思ってないんだろ?ロキ?いや・・・・・ただのピエロ」』
「ウチは・・・・・そんなことを思ってへん!ウチはフィン達は大事な家族や!そんな道具だなんてウチは邪神やない!ウチは本当にフィン達をそんな風に思ってへん!」
『「・・・・・嘘だ」』
「え?」
『「そんなの『お前のいつもの嘘』だろ。お前は裏切りの女神だ。あの死の女神ヘル同様。お前は邪神だ。お前のその『黒い笑み』を見ていて本当に目障りだった」』
「っ!?」
ロキのことなど、俺は絶対になにも信じたくない
こいつの眷属に一度なったから俺は理解している。こいつは信用するべきではないと。裏切りの女神であるこいつを信用するべきではない。俺はここ下界に来てからずっとこいつだけは信用せず、関係に入れないようにしていた。
こいつが『とんでもない裏表』があるとわかっていたから、俺はあまりこいつに関わらないようにしていた。もうこの際だから、俺はこいつに思っていることの全てを明らかにする
『「ロキ。俺はお前のことなんて、ここに戻ってきた時から信用もしていなかれば関わりたくないと思った。なぜなら・・・・お前は『裏切りの女神』だから」』
「な!?ウチのことを・・・・信用していなかった!?」
『「おふくろとフレイと爺さんの言う通りだった!!こいつは本当に嘘つきだった!裏切りの女神だけのことはある!ああ!思い出すだけで憎い!!あの『二年前』を!!」」
「「「「「「「っ!?」」」」」」」
俺はロキ達の前で、二年前の話を持ってきた
俺がロキを信用したくないのは。その事件をキッカケに俺は学んだ。アポロンに騙されたあの事件。俺がアポロンの眷族を暴力を振ったことへの事件。あれから誰でも信じて貰えなかった。始まりはその事件がキッカケだ
それで誰も信用して貰えなくて、やっとわかったんだ。このロキの本性を。そしてそれに続いてフィン達のこともわかった
こいつらは全員、嘘つきだと
『「お前は嘘つきだ。家族を大事にするとか言って、あの時アポロンの嘘にまんまと騙されて俺を見捨てた。俺だってその時まで家族だったのに!!俺を疑った!なにが家族だ!!この嘘つき!この裏切り者!この薄情者!!」』
「ウ、ウチは・・・・」
『「フィンもそうだ!お前は偽善者だ!!パルゥムの再興を目指す割には俺は仲間だったにも関わらず、お前までも俺を疑って見捨てた!この偽善者!!」』
「ぼ、僕は・・・・」
『「リヴェリアもそうだ!!二年前あれほどの暴言を吐いておいて、それで二年経って別人のようになった俺に恋をして婚姻を頼みたいだと?とんだ手の平返しだ!!お前のそういう傲慢なところも!お前のその矛盾も!あの時救ってくれなかった癖に!!本当にお前が大嫌いだ!!!」』
「わ、私は・・・・」
俺はもう二年前のことは過ぎたことだと、あの仕打ちは忘れようと思っていたが、この黒竜に変身したからなのか、カオス・ヘルツが抑えていた感情が、ファフニールに変身したせいで、恨む感情だけは引き出してしまい。今まで思っていたことの恨みを全開に引き出した
俺の本性の言葉を聞いて、ロキやフィンやリヴェリアはなにも言い返せず、ただ俺に恨み言を言われるままになっていた。
この姿で言われることに恐ろしさを覚えたのか、ロキ達は何も言えない。全員足も少し震えて怯えているようにも見える。あの黒竜が目の前に居るのだ。それが俺だったとしても、彼らからすれば恐ろしくも思うのだろう
だがその中でアイズはそれでも、俺に言いたいことを言う
「ジーク!どうしたあなたが・・・その・・・・黒竜の姿になっているの!前からそんな気はしていたけど・・・いいから教えて!どうしてそうなったのか!」
『「俺がこの姿になったのはどうしてか、まだわからないのか?俺がお前だけは敵だと言ったのはこれが理由だ。やはり俺とお前は相反すると言うことだ。さっきも言ったが説明ならこれが済んだらギルドに報告する。だから今説明する気はない」』
「ジーク!お願いだから!・・・」
『「黙れ。邪魔するなら殺すぞ!!!」』
「「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」」
俺は彼らに威嚇をした。黒竜の姿であるならその力も発揮する。ゼウスとヘラの眷属達が怯えるような睨み眼だ。俺に睨まれた者は、誰もが腰を抜かして地面に這いつくばるのだが、まあ流石に全員ではなく、レフィーヤとロキとティオナとティオネとアイズが腰を抜かしただけであって、それ以外のフィン達は辛うじて立っているが、今にも動けそうにないほど震えていた
現最強のモンスターが睨まれれば、怯えもするだろう。もうこいつらの話は聞きたくないと、さっさと事を済ます
『「話はもう終わりだ。いつまでもこの下等生物を・・・・・生かしておくにはいかないから・・・・・な!!」』
「ぐわあああああああああああああ!!!」
「デイックス・ペルディクス!?」
俺は足で潰していた。ディックスの足を退けて、今度は腕の爪で俺は奴の胸を刺した。今度は俺が奴の心臓を貫く。先ほどの復讐を決行する俺は爪で刺したままデイックスを顔の目の前に上げる。
『「どうだ?痛いだろう?心臓を貫かれて苦しむ痛みは?」』
「ああ・・・・あああ・・・・」
『「なんだ?もう即死か?言う程大したことはないんだな。愚かしいと思ったが、この程度とはな・・・・・・アグ!!」』
バク!!バク!!バク!!!
「た、食べた!?」
「ディックス・ペルディクスを飲み込んだ!?」
『「体はモンスターなんだ。人間を食べることだって容易にできる。だが・・・・グランもディックスも不味いな。鉄分が多すぎる」』
俺は爪でデイックスの心臓を刺したが、即死で、返事もあまりなく。あっという間にデイックス・ペルディクスは俺に抹殺された。そして死体となったデイックスを、俺は口に運んでしっかりと噛んで体をバラバラにしてからお腹へと飲み込んだ
その光景にフィン達は驚くが、俺は当然だと言う。体がモンスターなら当然人だって食える。だがグランも含めてデイックスも体は不味かった。
『「さて・・・・やるべき事は終わったが・・・・まだ気が済まないな・・・・このまま『イケロス』を殺すか」』
「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」」
「ちょ!?ジーク!?なにを言うとるん!?」
『「神を殺すと言っているんだ。これで『四人目』になる。神が敵となったら殺すのみ、神でも容赦はしない。神だって生き物だ。殺すことはできる。なにをこんな程度で驚くとは、愚かで騒がしいな」』
せっかく、ルーン魔術武装の黒竜怪獣を使ったからには、まだ俺の憎しみは消えない。イケロス・ファミリアの団員は全員滅せた。だがそれだけでは俺の憎しみは気が済まない。もっと滅ぼさなければ、一番に痛みを思い知らせてやらねば気が晴れない
これで四人目になる。神を冥界へ葬るのは
すると
「ジーク君!もうやめるんだ!」
『「っ!ヘスティア達か。リド達も一緒か?」』
「ジークさん!もうやめてください!」
「もう街が粉々です!」
「もう十分だろ!」
「これ以上は流石に!」
「もう終わりにしましょう!人間の姿に戻ってください!」
「ジークっち!ここまでだ!」
「もうやり過ぎです!」
「少しは怒りを鎮めろ!ジーク。フリード!」
「ジーク・フリード!このままでは他のファミリアが来るぞ!」
「ジーク!もうやめて!」
「ベル!」
「ドチビ!?」
「ヘスティア・ファミリア!?と・・・喋るモンスター!?」
ヘスティア達がちょうど運よく、ここまで辿り着いた。リド達も全員欠けることなくここまで追いかけてきた。今ヴェルフの背には紐で縛られたイケロスが居る。ちょうど目的な者を連れているようで、さっさと用を済ませて、他のファミリアが来る前にやるべきことをすると、ヘスティアの方へ歩く
『「確かにこれでイケロス・ファミリアの団員は一人残らず俺が殺した」』
「そうだろう!ならもう終わりにして、人間の姿に戻って・・・」
『「だが、それだけでは俺の恨みが気が済まない。だからヘスティア。イケロスを俺に今引き渡せ。今ここで・・・・イケロスを殺す」』
「「「「「「「は!?」」」」」」」
「なにを言っているだ!?ジーク君!?また神を殺す気か!?」
「おいおい・・・なんだ?・・・俺は送還されるのか?マジかよ・・・しかも下界のガキに殺されるとか・・・しかも・・・あのトールのガキにかよ」
『「そいつは敵だ。神だろうと関係ない。ヘスティア。彼を俺に引き渡せ』」
このままでは気が済まないと、俺はヘスティアに手を伸ばしてイケロスを寄越せと要求した。このままで終わりにする気はない。原因を作った者を全員葬るまで、俺が神だとしても、敵の一人であるなら。関係者であるなら、滅ぼすまで。
必ず敵は全員殲滅するまでだと。俺は止まらない。イケロスも自分の危機が迫っているのにも関わらず、好きにしろとなんでもいいと面倒くさがっている。それなら滅ぼしても構わないはずだと。俺はヘスティアにイケロスを寄越すように要求するが
「ジーク君!もういいじゃないか!もう十分だよ!眷属はもう全員死んだ!イケロスももう諦めた!これでいいじゃないか!?」
『「なにがだ!!ふざけたことを言うな!散々見物のように俺たちのすることを見ては高笑いしたこいつを、そのまま生かすわけないだろ!そいつは立派な敵の親玉だ!!それなら殺すのが道理だろ!!君が優しいのはわかるが!そんな奴にまで優しくするな!!!」』
「っ!これ以上を続けたら!本当にジーク君が世界の敵になる!いいから早く戻るんだ!でないと君を消しに、そこに居るロキ達だけでなく、他の冒険者が・・・」
俺を消しに他の冒険者が来ると、一刻も早く俺は人間に戻れと言うが、そんなことはもう手遅れ、ここまで来てもう他の冒険者は俺が黒竜に変身したことなどはもう気付いている。もうそんなことは今に始まったことではないと。俺にはどうなろうと構わないと、邪魔をすれば消せばいいと。構わず俺はヘスティアにイケロスを寄越せと要求するが
「ジーク!」
「あ!?アドバイザー君!?」
「エイナさん!?」
『「っ!エイナか?なんの用だ?」』
「ジーク!やめて!どうしてそんな姿に!?」
『「お前には関係ない。邪魔をするな。俺は今からイケロスを殺す」』
「神イケロスを殺すですって!?ダメよ!そんなことしちゃ!神殺しをするだなんて!?」
『「敵である以上は神であろうと関係ない!敵であるなら殺すまでだ!邪魔をするならお前も殺すぞ!エイナ!!」』
「わ、私を殺すって・・・」
『「ああ!!本当に憎い!!なんでお前もヘスティアも!ベルも!リリルカ達も!リド達も!フィン達も!こんな奴を味方にする!!敵だろう!神であるからと言って敵に情けなど入れるな!人間は悪だ!神も悪だ!もう俺は英雄ではない!こんな姿をした俺はもはや英雄ではない!と言うより英雄なんて言われるのが今まで本当に嫌だった!!」』
「英雄になるのが・・嫌?」
「ジークさん・・どうして・・」
『「なにが英雄だ!!別に俺は仲間を守っただけで!オラリオの市民を守った覚えはない!英雄などと勝手なことを言いおって!責任を勝手に俺に押し付けるな!こんな姿な俺を人間が英雄と呼ぶはずがない!お前達人間はいつもそうだ!あの二年前も!人を上辺や見た目だけで判断をして、軽蔑し、侮辱し、暴言をしてなど。人はいつも眼で見たものしか信じない!俺がどれだけ苦労してここまでなったのか知りもしない癖に!本当にあいつらに英雄と呼ばれるのが嫌だった!どうせお前ら人間はまた七年前のように軽蔑をしてくだらない仕打ちをするのだからな!!」』
「ジーク!?まさか・・・知っているのか!?七年前を!?」
『「ああ、知っているともフィン!人間は愚かだ!!七年前イヴィルスの大群に襲われて街に住む市民を全員守れなかったと、たった『数十百人死んだくらい』で市民は民衆は冒険者達を侮辱した!!あんな守る価値のない弱気生き物をなんで俺たちが守る義理のない冒険者が、なんで市民を守らなくてはならない!俺は最初からあんな価値のない生き物を助けたくはなかった!なんの意味がある!?俺たちに何かしてくれるのか?散々俺は二年前にアポロンのせいで俺を『嘘つ冒険者』と呼ばれて侮辱された!それで二年経ってベヒーモスを倒して、成果を得たからと勝手に英雄と呼んで手の平を返してきた!そんな態度や評価を一変させることしかできない下等生物に守る価値など無い!!!」』
「ジーク君・・・」
「ジークさん・・・」
「ジーク・・・・」
俺は人間への憎しみと、どれだけの愚かさしさがあるのか、俺は全てを吐いた
七年前、ここオラリオでイヴィルスの大群にやられた事件があった。その被害は甚大で幾つかのオラリオ所属のファミリアも壊滅した。その中では市民にも被害が、その被害にどうして守ってくれなかったと。今までたくさん市民を守ってきた冒険者達を市民は仇を返すように、石を投げたりなどをして暴動を起こしたことがオラリオの経歴にある。
そう、人や神はいつもそうだ。人を偏見でしか見ない。だからいつも争いが終わらない。欲望に全てを悪事に出す者、今回だって狂気な考えで俺の友人に手を出した者。人は偏見で態度や評価を一変させて態度に出す。俺はそれがいつも過去にあった。人や神の悪意に振り回されて、俺はここまで人の全てを知った
だから消す
人は消さねばわからない。そうしなければ立場を弁えない。報いを思い知らさねば人は理解しない。憎いと言う気持ちから生まれた。俺の人間への罪悪。その罪悪をこの神罰を持って葬るべきだと。俺は仲間や友人以外の生き物など助けない
だから
『「ヘスティア!最終警告だ!イケロスを寄越せ!でなければルーンブレイクを使って!街を吹き飛ばすぞ!俺はもう英雄だとか!名誉も評価も!もうどうでもいい!!所詮人など!偏見でしか見ないのだ!それならいっそ全部滅ぼしてしまえばいい!人間は悪だ!それを唆す神も悪だ!!!」』
「だ、ダメだ。ジーク君は・・・完全に怒っている!?」
「これじゃあ何も聞いてくれない!?」
もはやヘスティアもベルも、俺が人間と神の憎しみを持った状態でカオス・ヘルツが発動したことに気付いた。もう俺は無理だと。もう怒りが抑えきれないと。カオス。ヘルツを一度発動させては怒りが収まるまでは止まらないと。もう市民や民衆の味方すらしないと。もう英雄の肩書きどうでもいいと、目的を果たすためなら、もう人の評価などどうでもいいと英雄としての名誉を捨てた
だが
「ジーク!ダメ!」
『「ウィーネ!?お前・・・・そいつはお前らの敵だぞ!味方なんてするな!」』
ウィーネがヘスティアの前に立ち塞がった。彼女はさっきまでイケロスの眷属に、人間に酷い目にあったにも関わらず、彼女は敵であるその人間達の主神であるイケロスを守る。その行動に、俺も手出しはできないが、なぜ先ほど酷いことをされた本人達の主神まで助けるのか、俺には理解できず、ウィーネに問いかける
『「なぜだウィーネ!そいつはお前に酷い事をした親玉だぞ!助ける必要はない!そいつを捨てろ!!」』
「でも・・・できないよ!どうしてこんな事をしているのかなんて・・・私にもわかるの!こんな事しちゃいけないって!人を傷つけちゃいけないんだって!だって殺したら・・・苦しんだよ!とても!ジークは私を守ってくれるのは嬉しいけど!・・・・けど・・・けど・・けど・・・・・」
彼女は覚えてしまったのだ。優しさを
たった数日しか俺と過ごしていないと言うのに、どこでそんな事を覚えたのかは知らないが、彼女はヘスティアと同じ気持ちになってしまったのだ。例え自分に酷いした人でも、それでもその人を救うと言う。なんとも甘くて酷い、心の広さを。
「ジークが人を殺して苦しむ姿なんて見たくない!!!」
『「っ!?」』
俺のためでもあった
彼女は俺が人を殺すことに躊躇いがなかったとしても、それがやがて俺に罪が重なることに気付いてしまった。殺しは悪で。常にどんな理由があろうと。それをして罪が重なって心が辛くなると、もう心なんて死んだも同然の俺が、それでも殺しをするなと。ウィーネは俺のためにイケロスを殺すなと言う
どうしてだと。俺はウィーネの言葉でさえ、疑問を抱いた
敵を生かすことになんの意味がある。敵は常に相手から全部奪わんなければ治らない。野蛮な存在だ。それが邪神と言う敵だと。
なのになぜだ
散々仲間を奪われたはずだ。ラーニェだってフォーだって、なんでそんな奴を庇うのか、俺にはわからない。どうしてだ、お前は世界からすれば敵なのに、どうしてそんな奴を庇うのか、俺にはもうどうしたらいいかわからない
と、俺が彼女の行動に驚いて行動できない時に
彼女が現れた
「ジーク!!!」
『「っ!?シル!?」』
「シル君!?」
「シルさん!?」
シルが横の建物の裏から出てきた。
俺がファフニールに変身していることに気付いたのか、喋るモンスターであるウィーネ達を目の前にしても驚かず、尚且つ俺が黒竜の姿になって驚かず怯えずに俺の前に出る。彼女は本当に俺の全てを知っているとでも言うのだろうか、俺がこうなるとわかっていたのだろうか、今になってはわからない。彼女が本当に俺の心と繋がっているのか
彼女は俺の前に出て言う。言うことはわかっていると思うが
「ジーク。憎い?人間が?」
『「ああ!憎い!殺したい!所詮あいつらなど!偏見でしか見ない下等生物だ!助ける義理なんてない!むしろ殺したい!」』
俺はシルが前に居てもそんな言葉を吐く
彼女から止めの言葉が出るのかと思ったが、彼女が聞いたのは俺が人間が憎いのかと聞いてきた。そんな事を言われるとは思っていなかったが、それでも俺のカオス・ヘルツが止まらない。ウィーネを手を出した人も。俺を二年前軽蔑した人も、俺を道具のように扱った神も、全てが憎かった
今まで押さえてきた憎しみが、今になって引き起こしてしまったのだ。今までの憎しみと怒りが、もう抑え切れないと、今になって憎しみと怒りが爆発しそうだった
「そう・・・じゃあジーク」
そして彼女は両手を一杯に開いて、俺の憎しみをどうにかしようと
とんでもない言葉を口にする
「私を殺して。そうすればジークの憎しみも晴れるでしょう?」
「「「「「「「は?」」」」」」
『「っ!?」』
普通の人間だったら、茫然の声を出すのが普通だ。自らの命を友人に差し出して死のうとするのは、どう考えてもおかしいと誰もが思うのだが
俺は違う。シルがそういう意味で言っているのではないと
シルは
自分の命を犠牲にして俺を救おうとしているのだ
俺がどうせ他人の命しか、友人や仲間のために自分が死んででも救おうものなら、彼女も俺と同じやり方をして死にたいと、最後は俺に殺されて終わりたいと真似していたのだ。それで俺の憎しみが晴れるなら救えるはずだと、シルは自分も人間だという理由で、そんなふざけた救済方法で俺を救おうとした
今まで、俺がしてきたことが、こんな事で仇になるとは思いもしなかった
「ジーク。私だって人間だよ?だから殺して?私は死ぬならジークに殺されたい」
『「やめろ・・・やめてくれ・・・違う・・違うんだ」』
「なにが違うの?ジークは人間が憎いんだよね?なら私を殺して?」
『「違う・・・違う!!!俺は・・・俺は・・・俺は」』
「また大事なものでも取られたの?それを守ろうとして怒っているの?それを取ったのは人間なの?」
『「あ、ああ・・・・だが違うんだ!君は悪くない!俺が殺したいのは・・・悪意がある者で」』
「人間はね。みんな悪意の一つや二つあるよ?それが人間だよ。貴方だってそうだよ?たくさん人を救うために人を殺した。それも立派な悪意だよ?」
『「シル・・・俺は・・・ただ・・・ただ」』
「わかっているよ。みんなを守りたいんだよね?だから黒竜になっても仲間や友人を守りたいんだよね?そうじゃなきゃ・・・・・・・みんなを守れないから」
『「っ!?」』
やっぱり俺は彼女には敵わない
彼女に全部言い負かされた。彼女の口論も、全て俺の何が言いたいのかも全てお見通し、彼女は本当に俺の魂が繋がっているのか、俺が何をしたいのか、何を思いたいのかも、全部わかっている。
「ジークはあの喋るモンスターでも守ろうとした。それはね。ジークが優しいからだよ。普通ならあのモンスターさん達は冒険者様が殺すもの。でもジークはそれでも対話ができるなら仲良くなれそうだと、仲間を作る感覚で友人になった。全部わかるよ。例えモンスターでも友人を奪われるのは嫌だよね?わかるよ?ジークの全てが」
『「シル・・・」』
彼女は本当に俺のしたかった事を理解してくれた
今までの人間は全然理解してくれなかったのに、誰もウィーネ達を悪だと言って斬り捨てたくせに、それでも彼女は理解してくれた。俺の気持ちを。感情でほとんど殺された。僅かな感情を、理解してくれた
「ジーク。仲間や友人が大事なら、その気持ちも答えてあげなきゃダメだよ。ジークのそんな辛そうな姿はここに居る神ヘスティアやベルさんだって辛いんだから。そこに居るモンスターさん達や・・・ウィーネもね」
『「シル・・・・俺は・・・・」』
ここで俺の感情に変化があった。
一瞬で怒りが消えた
あれだけ憎い心が一瞬で消え飛んだ。神や人に怒りを覚えたカオス・ヘルツの発動を完全に急停止した。初めてだったカオス・ヘルツの発動を急停止するなど。今までは散々恨みで相手を殺し終えるまで治らないあのレアスキルを。たった一人の少女の言葉に、怒りと憎しみが一瞬で消える。あれだけの怒りを抑えきれなかったのに、彼女が俺の心を癒してくれた。なにも感じないのに、なぜか彼女の言葉は俺の心に刺さる
やはり彼女が俺の謎のレアスキル・『フレイ・リーベ』が、何か繋がりがあるのか、俺の怒りを抑え込んでくれた
だが
『「うぐ!?・・・がは!!!」』
「は!?ジーク!!」
『「ぐう!!がはああ!!!」』
「後ろに倒れました!?」
「ジークさんの体が元に!?」
俺は突然口から血反吐を吐いた。おそらくカオス・ヘルツの効果が切れたからか、もしくはもう魔力が切れそうになっているのか、もう俺はこの姿を保っていけず、俺は建物に寄りかかるが、最終的にシルとヘスティア達を下敷きにしないように後ろに道の真ん中にそのまま倒れた
そして俺の黒竜の体はモンスターがやられた時同様に、灰になって消える。つまりはルーン・アーマメントが解けたのだ。魔石は出ないがそのまま元の状態である。装備を着たままの人間の姿に戻る
カオス・ヘルツと黒竜の力で死を先延ばしにしていたが、もはやもう限界らしく。体に魔力はもう残らず、マインドダウン寸前にまで体の生命が低下していた。ディックスのカース・ウエポンで心臓を刺されたため、もう生きていくのは不可能となり、胸から大量の血が流れる
シルやヘスティア達やエイナが俺の近くにやってくる。フィン達はそのまま屋根の上に居る。さっき俺が威嚇したせいで降りる事はまだ足が震えて降りられないようだ。でも下を覗く事はできるようで、俺が倒れたのを確認する
「ジーク!しっかりして!」
「・・・・・・シル・・・・聞かせてくれ・・・俺は・・・間違っていたのだろうか?」
「ううん!全然間違ってないよ!やり方は横暴だけど!やった方針は全然間違ってないよ!」
「そうか・・・・すまないヘスティア・・・・また迷惑をかけて・・・・またワガママを言って」
「そんな事ないよ!まだ今回だけだよ!今までだって!ジーク君はみんなのためにいろんな事をしてくれたじゃないか!今回だってウィーネ君のためにいろんな事をしてくれたじゃないか!」
「そうだったか?・・・・今になって・・・・なにをしてあげたか・・・思い出すのも・・・難しいな」
「ジークさん!お願いですから喋らないでください!絶対に助けますから!」
「諦めろ・・・・ベル・・・俺はもう・・・助からない・・・・カース・ウエポンで刺された心臓は・・・・回復薬も・・・ポーションも効かない・・・・・」
「そんな事を言わないでください!絶対に死なせません!!絶対に死なせないからそんな事を言わないでください!」
「無理だって・・・・普通に考えて・・・・一番お前が・・・わかるだろう・・・リリルカ・・・・わかれ・・・・俺はまた死ぬんだ」
「ふざけた事を言ってんじゃねえ!!そうだ!ディアンケヒトだ!ディアンケヒト・ファミリアに頼めば!」
「無理だヴェルフ・・・・アミッドも・・・今それに対抗する・・・・回復薬を開発している・・・真っ最中だ・・・・グフ!!・・・・もう俺は救えないんだ」
「やめてください!そんな事を言わないでください!今回で二度目なんですよ!また自分たちは・・・・・貴方を救えなかった!!」
「いや・・・十分・・・救われたとも・・・・こんな事を・・・仕出かした・・・俺に・・・・まだ仲間意識を・・・持って・・・・ここまで近くに来て・・・・くれたんだ・・・・・まだ俺に・・・仲間が・・・居るんだって・・・感じられる」
「ジーク様!ここで終わるなんて言いませんよね!?まだ貴方はこれからなんですよ!ここで終わってはダメです!」
「仕方ないだろ・・・・俺は・・・ウィーネの代わりに・・・・心臓を・・・刺されたんだ・・・・お前だって・・・人が心臓を刺されたら・・・終わりだって・・・わかっているだろう?・・・・・だから・・・・俺はまた先に・・・終わるんだ・・・お前らを・・・置いてな」
「なにを言っているんだよジークっち!!ウィーネや俺っちやベルっちを置いて死ぬ気かよ!?そんなの絶対に許さねえぞ!」
「ああ・・・・そうしてくれリド・・・・そうしたほうが・・・いつまでも・・・死んだ後・・・お前達のことを・・・・忘れないで・・・済むから」
「冗談を言わないでください!必ず助けが来ます!ですから・・・・頑張って生きてください!」
「レイ・・・・・あれからどれだけ・・・時間が・・・・経ったと・・・思っている?・・・・もうあれから・・・・心臓を・・・刺されてから・・・一時間だぞ・・・・心臓刺されたら・・・・・即死が・・・普通なんだよ・・・今も・・・体の意識が・・・・ほとんどない」
「ふざけるなジーク・フリード!貴様は!仲間を置いて先に行くのか!?友人となった私たちを置いて先に行く気か!?」
「グロス・・・・お前・・・・やっと・・・俺たち・・・のことを・・・友人って・・・・呼んで・・・くれる・・・ようになったのか?・・・・相変わらず・・・・俺より・・・手厳しい奴・・・だな・・・・まあ・・・・・わからなくないが」
「ジーク!お願いしっかりして!ダメよ死んじゃあ!!ここで死ぬなんて!」
「エイナ・・・・さっきは・・・・すまなかった・・・・お前には・・・少し・・・冷たく・・・しすぎたな」
「いいよ!そんなこと!もうどうでもいいから!お願いだから死なないで!!」
「ジーク・・・・」
「すまないウィーネ・・・・・お兄ちゃんは・・・・・もうダメだ・・・・俺は・・・お前を・・・・助けただけでも・・・・・・良かった・・・・お前を・・・守れて・・・・本望だぞ・・・・・別に・・・・・死ぬことに・・・・後悔は・・・・ない」
「イヤだ・・・・イヤだ・・・イヤだ!・・・・・・ジーク!!!!」
またも俺は死へ朽ち果てた。
また二度も死ぬなど。考えても見なかった。でもまあ救える者は救えた。アルテミスの時と同じだ。これでよし。もう十分だよ。どうせ俺のような存在は死ぬべきだったんだ。これでいいと、なにも後悔していない
それに
「ジーク・・・・」
「アイズ・・か・・・・・」
アイズが屋根から降りてきたのか、俺の前へ出る。近づいたりはしないが、そのまま俺は彼女に言いたいことを言って、彼女との因縁を終わらせることにする。
「アイズ・・・・良かったな?・・・これで俺は・・・死ぬぞ・・・お前の復讐は・・・・果たされた・・・・・俺は・・・黒竜だ・・・・両親の仇が・・・取れて・・・よかったな」
「やめて・・ジーク・・・わ・・・私は!」
「もういいんだ・・・俺は・・・どうあっても・・・生きては・・・・いけなかったんだ・・・・だから・・・・俺たちは・・・・相反する・・・って・・・言ったろ?」
「私は・・・私は・・・・私は!!こんなことを・・・・望んでない!!!」
彼女は泣いた。今でもなぜ俺が黒竜に変身したのかなど、わかるはずがない。でも俺が死ぬことに対しては否定していた。俺は黒竜でもあるのに、それでも彼女はまだ俺を人間として扱ってくれたらしく、俺が死ぬことを否定していた
彼女だけじゃない。今雨が降り注いでいる中。全員泣いているのがわかる。それでも、今の俺は顔に水が濡れているのがわかる。
これが雨ではなく。シルの涙だだと。今も俺の背中を起こして。優しく抱きしめて、俺の顔のすぐ上に彼女の顔がある
「今回は・・・・君の前で死ねるとはな・・・・」
「ジーク・・・お願いよ・・・・私は・・・・まだ」
「言わなくても・・・わかるよ・・・・全部・・・わかる・・・君が俺の全てを・・・わかるように・・・・君の気持ちも・・・・・俺に言いたいことも・・・・・全部・・・わかるよ」
「じゃあ・・・生きてよ!」
「すまない・・・・そうしたいが・・・・・・いつもの癖で・・・・そうも言って・・・られない・・・・リューに・・・アーニャに・・・クロエに・・・ルノアに・・・・すまないって・・・・・言ってほしい」
「そんな・・・そんな・・・イヤだ・・・イヤだ」
「君にだけに・・・・・これを伝えたい」
もう限界が来ていた。まだ最後だけ彼女達に話せてよかったと。俺のタフな体に感謝した。伊達に黒竜の心臓を食っただけの事はあったようだ。最後まで彼女やヘスティア達やウィーネ達に最後の言葉が言えただけ、今だけは黒竜の力に感謝する。
ここに居ないリューやクロエやアーニャやルノアにまたもあれこれ言われるだろうが、仕方ない。人などいつもこれで終わるのだ。許せとしか言えないが、意識が無くなる前に最後に告げる
「すまない・・・・・君の約束を守れなくて」
それしか言える事はなかった。謝罪しかとても言えることがない。俺は前にも自分を犠牲にして散々怒られた。今回は咄嗟とは言え、俺がまた犠牲になったことには変わりない。いつも彼女には助けてもらってばかりで、今回も俺は君の願いを叶える事はできなった
だから謝るしかない。君は・・・もっと俺と一緒に居たいと。それが彼女の願いだと俺は知っておきながら
雨が降る中、彼女に抱かれたまま、眼を閉じて
俺は息を引き取った
「・・・・・・・・・」
「ああ・・・・ああ・・・・・・ああ!!」
「そ、そんな!!」
「嘘だ・・・・・こんな・・・二度も」
「また・・・ジーク様・・・が死んだ」
「おい・・・・嘘だろ」
「ジーク殿だけが・・・なぜ・・・・こんな事にまた・・・」
「どうして・・・どうして」
「冗談・・・じゃねえぞ」
「こんな・・・私たちのために・・・こんな」
「ジーク・フリード・・・お前は・・・なぜ・・そこまでに」
「ジーク・・・嘘よ・・・こんな・・・・・こんな」
「ジーク・・・ジーク・・・・ジーク!!!」
ウィーネも、俺が死んだことを確認すると、ウィーネも俺に抱きつく。でも俺の体は動かず、体温も低下して冷たく、もう俺の鼓動は聞こえない。もう俺の声は聞けない。俺はもう死んだ
その光景にアイズ達は
「私は・・・違う・・・・ジークを・・・殺したい・・わけじゃあ・・・」
「ジーク・・・まさか・・・君が死ぬなんて」
「そんな・・・馬鹿な・・・あのジークが」
「ジーク・・・どうして・・・お前が・・・・」
「嘘や・・・ジーク・・・自分が・・・死ぬなんて」
「そうだよ・・・私は今・・・夢を見ているんだ・・・・悪夢を見ているんだ」
「なんの冗談よ・・・・あいつが死ぬ・・・・冗談でしょ」
「おい・・・・ふざけんな・・・なに・・・勝手に死んでんだ・・・おい!!」
「ジークさんが・・・死んだ・・・そんな・・・・そんな!!」
アイズ達も涙を流した。
さっきまで敵対関係をしていたと言うのに、俺が死んだのを確認して、彼女達も俺へのしに様に悲しんでくれたのか、涙を流して俺への最後を泣き叫んでいだ。アイズは俺のことは敵なはずなのに、俺が人間に戻ったからなのか、アイズは俺が死んだ事に後悔をした。殺したいなんてそんなつもりはなかったのに、俺が別の人間にやられて終わるなど。微塵も思っていなかったのか。彼女は涙が流れ終わることはない
俺は今になって、こんなに友人が増えたのだと、思うはずなのだが、もう俺は死んでいるか
ら、なんとも言えない。またこんなので終わるとはな
これが俺の哀れな二度の最後だった
「未踏の領域よ、禁忌の壁よ。今日この日、我が身は天の法典に背く。ピオスの蛇杖、サルスの杯。治癒の権能をもってしても届かざる汝の声よ。どうか待って欲しい。王の審判、断崖の雷霆。神の摂理に逆らい焼きつくされるというのなら。自ら冥府へと赴こう」
「っ!?」
「フェルズ様!?」
「フェルズ!?まさか・・・あの魔法を使うのですか!?」
突然俺が死んだことを確認して、フェルズは特殊な魔法を使い出す。もう死んだにも関わらず、死んだ俺を助けようと。魔法の詠唱を唱えた
俺の下に魔法陣が展開し。周りに蛍のような小さな光がたくさん出て散っている
「一回も成功したことないが、『蘇生魔法』を使用する!」
「「「「「蘇生魔法!?」」」」」
「だがフェルズ!」
「それは一度も!」
「ああ。一回も成功したことはないが。やってみせる。ここで英雄を無くすわけにはいかない」
フェルズは、蘇生魔法を所持しているらしく。それを発動させて俺を生き返そうと詠唱を唱えた。リド達もフェルズがその魔法を所持していると知っているようだが、一度も成功がない魔法だと言った。
それでもここで英雄を無くすわけにはいかないと。それでも詠唱を続ける
すると
『なら!私が手を貸すわ!最初から死なせるつもりはないしね!』
「っ!?誰だ!?」
「ジークの胸から・・・女の人が!?」
「ヘル!」
『ヘスティア。私がまた救うわ。最初から甥であるジークを死なせるつもりはないしね』
「ヘル!?」
『はーい姉さん。久しぶりね。私が霊体化しているならわかるわね?説明ならジークから聞いてね』
ヘルが俺の胸から霊体化して出てきた。彼女がフェルズの蘇生魔法を手伝うと、蘇生魔法を成功させるようにまたもアルカナムを使う。でもその前に屋根の上にいるロキに挨拶をしてから始める。もちろん霊体化をしているなら、説明もなく俺に殺されたのだと。ロキは知っていると説明は大してしなかった。
そしてヘルは両手を広げて、そこから黒い霧が放出し、俺の胸へと流れる
『条件は全て揃った!ジーク・フリードと言う竜殺しを想う者達は涙を流した!その者たちの想いに答え!死の女神である私が死者を生き返らそう!これは死の女神である私の決断であり!冥界の支配者である死の女神が宣言であり!冥界の世界からこの現世へと死者の送還である!」
「開け戒門、冥界の河を越えて。聞き入れよ、冥王よ。狂おしきこの冀求を。止まらぬ涙、散る慟哭。代償は既に支払った。光の道よ。定められた過去を生贄に、愚かな願望を照らしてほしい。嗚呼、私は振り返らない!」
そう言って、ヘルはアルカナムで、フェルズは蘇生魔法でと。俺を生き返らせようと、二つの奇跡が、俺の貫かれた胸を。光と闇が交わって傷穴が塞がる
「ディア・オルフェウス!!!」
『グニパへリル『冥界の門』!!!』
と、ヘルの流れた闇が地面から黒い花を咲かせ、その芽から黒いアゲハチョウが俺の胸に集まり、そしてフェルズの魔法陣から天まで続く光の柱が開き、そこから光の渦巻が現れ、その渦巻が俺の体の全ての傷が無くなっていく
人を生き返らせると言うのは、大罪であり、それは許されない。だがフェルズもヘルも死者であり、もはや死神同然であり、冥界に行く存在なのだ。だからせめて、自分達が終わるのはわかっているから、今生きる者だけを助けろと。二人は冥界の一員として。死者として俺の命だけはまだ終わらせまいと
死の魔術師と死の女神が。俺の冥界降りの扉を閉ざして、俺を冥界へと送らず
ここへともう一度戻した
「すう・・・すう・・・すう」
「あ!ジーク!」
「ジーク君の体の傷が!?全て無くなっている!!」
「ジークさん!」
「やったのか!?」
「息はしています!」
「ジーク殿が・・・・また生き返った!」
「これは・・・・奇跡です!」
「よかった!本当によかった!」
「ええ・・・ええ!!」
「まさか・・・こんなことが・・・」
「ジーク!・・本当に・・・よかった!!」
「まさか・・・八百年も費やしてこの魔法が一度も成功したことはないと言うのに、意味のない魔法だと思っていたのに、まさか・・・・・こんな事に意味があったとはな。これがディア・オルフェウスの成功方法だったとは。礼を言う。死の女神よ」
『なに、私は甥を救うために、冥界の支配者である私が少しルールを破っただけの事。死者を生き返らせることは私にとって、簡単な作業よ』
俺は二人の力により、俺は今は熟睡しているが、息はしていた
また生き返るなど、皆もあり得ないと思うが、この奇跡は嘘ではないのだ。あんな黒竜の姿になってもベル達は見捨てなかった。俺が世界の人が黒だと言っても、彼らは白と呼んで見捨てなかった。その強い想いと切ない涙が、ディア・オルフェウスの成功方法だったのかもしれない。ヘルもそうだ。アルテミス事件の時も、俺が死んで皆が泣いたから救えたのだ。その死に行く者達を想い。もう一度やり直せてくれと願うのなら、生き返らせても構わないと。ヘルのアルカナムの唯一の使用ルールである
こんなことをした俺でも、彼らは見捨てなかった。例え世界を滅ぼす黒竜でも。俺は仲間だと。彼らは見捨てなかった
ロキ達の方は
「ジークが・・・ヘルのアルカナムで生き返ったや。ヘルの奴、送還されないってことは・・・霊体化しているってことはホンマに死んだんやな」
「ジークが・・・蘇生魔法とあの女神のアルカナムで生き返るなんて」
「こんな奇跡なことなんて・・・あるのか?」
「ジーク・・・本当に・・・よかった」
「生き返った!ジークが生き返ったよ!ティオネ!」
「見ればわかるわよ!・・・本当に・・・あいつが生き返るなんて」
「マジかよ・・・あいつは・・・まだ生きているのか?」
「ええ!生きてます!今眠っていますけど!しっかり息しています!」
「ジーク・・・よかった・・・本当に」
ロキ達も俺の復活を喜んでいた。
先ほどまで敵だったのに、俺を殺すまでは望んでいなかったらしく、俺が復活したことは友人として喜んでいた
ロキは、ヘルがアルカナムを使って送還されないとなれば、霊体化になっているのであれば、本当に俺に殺されたのだと察した。霊体化した俺の胸から出ているのであれば、俺の魂に亡霊となって取り憑いているのだと。妹の神力をロキは知っていた
とにかく俺が生き返ったのはいいが、ヘルは早く俺を連れてここを抜け出した方がいいと言う
『ヘスティア。急いだ方がいいわ。他の冒険者が来るわよ?』
「っ!そうだ!?」
「皆さん!ここはひとまず逃げてください!まもなくガネーシャ・ファミリアが来ます!」
「くそ!ここまで来て!」
「これだけの騒ぎを起こしたジーク様を、ガネーシャ・ファミリアは捕らえますよ!」
「どうすれば!」
「今からホームに戻っても!ホームにまでやってきます!」
「どうすれば!」
安心するのはまだ早かった。騒ぎを起こしたせいで、他の冒険者がここまでやってくると。先ほど俺が黒竜に変身して暴れたことや、今喋るモンスター達であるゼノス達も居るじゃあ、確実に捕獲されると、俺まで指名手配されて捕らえられると、ここに要るべきではないとヘルは忠告した
でも当てはない。ホームに帰るにしても、ガネーシャ・ファミリアがホームまで来るはずだと、どこかしばらく隠れる場所に移動するしかない。けど・・・他にどこへ行けばいいか。彼らには当てがない
だが
「皆さん!来てください!当てがあります!私に付いてきて下さい!あなた達も!」
「俺っちも!?」
「ですが!?」
「私たちはモンスターですよ!?」
「関係ありません!さあ!早く!!」
シルが俺を含め、全員を匿う場所があるらしく。今はそこへと身を隠せるはずだと、俺を背負って向かった。そこがどこなのか、もちろんシルにしか知らないが、今はそこへ身を潜めるべきだと、あとでの事はは後で考えればいいと。今はここから逃げて身を潜めるべきだと。今はシルの言う当てのある場所へ向かうしか、ヘスティア達にはできなかった
そして残されたフィン達は
「ジーク・・・待って・・・・」
「アイズ!追うな!」
「っ!?でも!」
「今は・・・・この後始末が最優先だ。彼は・・・・これが終わってからだ。それでいいだろう?ロキ?」
「そうやな・・・ジークはヘルの力で生き返ったんや。あとで詳しいことを聞けばええ。今は・・・・・この騒動の事態収集や」
ロキ達はここで残って、後処理をすると、今は俺が生き返ったことだけを喜びつつ。今からここに来るガネーシャ・ファミリアの説明や他の冒険者の説明と街の被害の後処理を担当することになった
フィン達もロキもアイズも、なぜ北に飛び去ったはずの黒竜がここに居て、その黒竜がなぜ俺に変身するのか、そしてロキは本当にあの妹である死の女神を殺したのか、俺から聞きたいことは山ほどあるが、それでも今は目の前の被害を抑えるのが先だと、最大派閥のファミリアとしてやるべきことを実行する
俺はヘルの力で生き返ったのであれば・・・・まだ後でも聞けると
今は俺のことは後回しにして、この大惨事の説明と収集を始める
ここから後編になります。前編の続きです
後編も話が長いです