ニーベルンゲン・シックザール〜竜殺しの英雄譚〜   作:ソール

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彼がモンスターになった真実とフレイを失った本当の理由の話です



簡単な紹介

豊穣の神フレイ

肩まで長い銀髪の美男。眉目秀麗で妹である神フレイヤの兄にして、妹同様に魅了能力がある。だから女性に物凄くモテる。妹であるフレイヤも、自分の夫にしたい程、天界一の美男。美男でありながら財宝もたくさん持っているボンボン。でもそのほとんどを眷属やジークにあげているミアハ並に優し過ぎる男神


竜殺しの兄の真実と抗う小さな希望

 

 

半年前、ロキ・ファミリアを辞めて、故郷に戻って俺はそのまま日常を送ることなく、フレイに誘われて、フレイ・ファミリアの眷属として戦士として俺は故郷に仇なす敵を殲滅する日々を送っていた。戦争はいくつもこなしたり、モンスターが故郷にやってきては排除したりと、そんな日々をして俺はたった一年半でレベル3になった。もちろんそんな早くレベルは上がらない。アイズでも早くて一年でランクアップするのに、俺はたった一年半で一気に二つも上がる。その原因はオラリオの冒険者をしていた時に、アポロンに騙され、ロキを恨んだことが始まりで、カオス・ヘルツが新しい機能を身に付けてしまい。俺は最初は『喜び』を無くして笑顔ができなくなってレベル2になり、次に『恐怖』を無くして相手を恐れずにレベル3になった。

 

戦争を続けて、モンスター狩りをしてなど。俺はフレイに戦争で敵を無残に殺すのは良くないとか、そんな些細なことばかりで、いつも喧嘩していた。いつも団長と副団長に止められるが、それでも俺はフレイと口論をしては最終的に喧嘩になると。いつも俺たちフレイ・ファミリアはこんな生活を送っていた。まだレベル5の中堅派閥だが、それでも俺は笑うことはできなかったが、ロキ・ファミリア以上に有意義な生活を送れていたのだ。例え戦争で疲れても。フレイやその妻のゲルズや他の団長達と、故郷で楽しく過ごしていた。このままオラリオの冒険者にならないまま、自分の故郷で戦士としてフレイと共に歩むのかと思った

 

 

だが、そんな日々は続かなかった

 

 

突如、南の方からとてつもないモンスターが海を渡って出てきた。それが全身漆黒のように黒く、蒼い瞳をし、白い鋭い爪、体には黒い闇を身に纏う竜、そして片目は何者かに斬られた傷跡、それこそは伝説のモンスターにして、最強のドラゴン

 

隻眼の黒竜だった

 

俺たちの故郷はその闇を見に纏う姿をした黒竜を、闇を抱擁する者と言う意味で『ファフニール』と呼んでいた。俺たちの故郷はその強大な敵を相手に、俺たちは故郷大勢で奴を叩き込む。だが・・・精霊やアナザーモンスター達、ゲルズの部下達エルグリシ族でも倒すことができず、ゼウスとヘラの眷属が倒せなかったあの伝説のモンスターなど、誰もレベルでもマジックアイテムでも魔剣でも魔法でも勝てず、爺さんやヘイムダルの眷属でさえ、完全に打つ手なしの絶望だった。都市に住む市民も、この事態に絶望をしている

 

 

その中で、俺は全然諦めずに戦っていた

 

 

カオス・ヘルツのせいで恐怖を感じないため、俺はただ故郷を守るだけのただの人形に動く戦士だった。だから敵わなかろうが、関係なく倒すまでは止まらなかった。その時は死にかけていた。下手をしなくても俺は息が止まるほど重症を負っていた。死にかけていた俺を仲間や主神達が誰もがやめろと言って止めの言葉を出すのだが、それでも俺は止まらない

 

カオス・ヘルツで自分が殺される恐怖など無い。だから誰がなんと言おうと、重症になりながらも俺は戦おうと立ち上がり、今奴の爪が降り注ごうとした前でも引くことなく立ち向かう。奴の爪が刺されれば死ぬのだが、それでも俺は死んでも、ゼウスとヘラの眷属が勝てなかった。人類が勝てなかったこの最強のモンスターを撃ち果たそうと立ち向かう

 

のだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フレイが突如俺の前に出て、庇い

 

 

フレイの胸が、奴の爪に串刺しにされた

 

 

フレイが串刺しにされて、そのまま振り払って横にフレイをファフニールは捨てた。俺はすぐさま地面に転がったフレイを助けようと駆けつけて彼を起こす。その時に掛けた言葉が今も忘れらない

 

 

『フレイ!しっかりしろ!おい!』

 

『ジーク・・・・無事かい?』

 

『ああ、無事だ!もう喋るな!今助けるから!』

 

『無理だよ。僕の体が・・・光っているだろ?』

 

『そんな!?・・・そんな・・・俺は・・・俺は』

 

 

でも無理だった。彼の体が光っている。もう送還寸前だった。ポーションとかでも治せない。こうなった彼は誰も救えない。もう胸を貫かれた以上は助からなかった。俺には恐怖ないはずなのに、家族を失う悲しみだけがまだ残っているのか、フレイがこの下界から去る悲しみに、俺は涙が止まらなかった

 

あれが最後の俺の流す涙だった

 

 

『待ってくれ・・フレイ・・・俺は』

 

『言わなくていいよ・・・全部わかるよ・・・僕も・・・君のカオス・ヘルツがほとんど・・・感情を殺して強くなることも・・・・でも・・・・本当は家族を守るので・・・必死なのも』

 

『フレイ・・・俺は・・・・・俺は!』

 

『君が・・・僕が居なくても・・・・これから幸せに・・生きてほしい・・・君なら必ず・・・どんな困難も・・乗り越えるはず・・・』

 

『俺は・・そんなことを・・・望んでない・・・俺は・・・・お前と共に生きていければ・・それで・・・』

 

『ごめんね・・・この先までは・・・・僕はついていけそうにない・・・・ゲルズにも・・・申し訳ないけど・・・彼女もわかってくれるよ』

 

『そんなことを・・・・俺は・・・・またも・・・俺は・・・守れなかった』

 

『確かに・・・君は・・僕を守れなかった・・・でも・・・この都市を守る・・・事が・・・君なら絶対に・・・できる・・・・この黒竜でも・・・君なら必ず・・・だから・・・これを・・・』

 

『レーヴァテインを・・・なぜ俺に・・・』

 

『君のお父さんと・・・約束した・・・この僕の神創武器を・・・君に渡すことを・・・この剣が・・・君に・・・勝利を与えてくれる・・・・君に敗北は・・・この剣を持つ限りは・・・・無い』

 

『フレイ・・・・待て・・・俺は・・頼む!・・・待ってくれ!・・俺は!!!』

 

 

『大丈夫・・・・トールも僕も・・・天の世界で・・・・君を見守っているから・・・君は・・・一人じゃないよ・・・ずっと・・・・離れていても一緒だ』

 

 

 

それがフレイの最後の言葉だった

 

今も忘れられず、頭に残っている。ずっと大事だった。大切な家族で手放したくない愛する兄だった。なのに、永遠を生きる神でありながら、この世から消えるなど。考えられなかった。でも悲しみはまだ残っていた。だから泣いた。泣き叫んだ。フレイを亡くした悲しみと怒りが

 

 

俺の全ての力を発揮させた

 

 

その日だった。爺さん達神も恐れ、人々が驚いた事も、故郷の者達でさえそんな力を発揮するなど思いもしなかった。それはカオス・ヘルツが発動しただけではない。それとは別のレアスキルを発動したのだ。今も謎に包まれた。俺が桜色の光を浴びてどんな攻撃も身に纏う光が俺の体を守る。謎にして現段階で最強と思われるレアスキル

 

 

フレイ・リーベ

 

 

詳細も『?』しか書かれていない謎のスキル。俺はその謎のスキルを発現し、体に輝く桜色の光を纏って、俺は右手にグラムを持って、口にリジルを咥えて、左手でレーヴァテインを持って、俺は再びファフニールに立ち向かった。

 

魔法やマジックアイテムや特殊武装や魔剣も含めて、どんな攻撃も通らなかった奴の体が、俺の斬撃でほとんど傷だらけになり、翼や足などが一刀両断で斬られる。奴のブレスも闇の風も、俺の身に纏う光が守ってくれるのか、奴の攻撃が全て効かなかった。レーヴァテインは勝利を導く究極の魔法の剣、グラムは俺の怒りに答えてなんでも全てを斬り裂く。リジルは込める力の分だけ斬撃破を出せるなど、今の俺はレベル関係なしにファフニールを超えたのだ。ゼウスとヘラの眷属よりも、俺はレアスキルで今一時的に最強になったのだ

 

でも悲しかった

 

 

あ!!ああ!あああ!!ああああ!!ああ!ああ!!ああ!!あああ!!あああ!!あああああああ!!ああああああああ!!あああああああああああああああああああああああああ!!ああああああああああああああ!ああああああああああ!あああああああああああ!!!あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!

 

 

フレイを亡くした悲しみが強く、涙が止まらず、俺は泣き叫びながら無我夢中で奴の体をバラバラに斬り刻んだ。悲しみと怒りと憎しみが俺をここまで異常なまでに強くさせた。彼が最後にくれた愛なのか、彼が最後の望みで黒竜ファフニールを故郷のために倒せと、そんな彼の想いが詰まっているから倒せるのか、今でも彼が俺を強くさせたのだと、俺の力を発揮できたのは彼のおかげだと思っている

 

 

そして、奴の体の全てを斬り刻んで、最後は奴の心臓を貫いて、体から引き裂いた。

 

だが

 

それでも奴の体が灰にならずに、まだ息をしていた。体から心臓を取り出したと言うのに、奴の生命力が強いのか、心臓を体から引き裂いて剣を指しているにも関わらず消えなかった。

 

だから俺はとんでもない方法をして奴を消す。

 

それが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奴の心臓を食べる事だった

 

 

無論そんなことをすれば俺の体はモンスターになるのだが、もはやそんなことをなり振り構ってられずに、俺はそれを口にして残さず食べた。案の定奴の悲鳴が少しづつ小さくなって灰となった。残ったのは少し大きめの魔石のみ、フレイの言う通り、俺一人で、三大クエストの最後のモンスター、隻眼の黒竜ファフニールを倒した

 

だが

 

その後俺の体の半分だけが化け物化した。ウィーネと体型は同じだ。左腕が竜の腕となり、背中には左片翼が生え、足までも竜の足となった。左頬の皮膚は竜の鱗になり、両眼が奴の青い竜眼となったりと、完全に体半分が竜人となった

 

でも意識は取られなかった。今はフレイを亡くした悲しみでいっぱいで、ファフニールを恨む怒りでいっぱいで、ファフニールに意識までは取られなかった。と言うより完全に俺が物にした。フレイの言葉を思い出すだけで、俺は自然と人間の姿に戻り、完全ではないが、モンスターから人間の姿に戻ることはできた。人がモンスターの力を得るなど、爺さん達神でもあり得ないと思うだろが

 

 

今はどうでもよかった。フレイを亡くした悲しみに比べれば

 

 

最後だった。あの半年前流したあの涙が、人生最後の涙だった。その後はゲルズが俺を慰めてくれたが、それでも俺の涙は止まらなかった。フレイを失う恐怖はなかったはずなのに、いざ失ったとなると、悲しまずにはいられなかった

 

 

俺の故郷はオラリオよりとても遠く、情報はとても届かない上に、俺がモンスターに変身できることになってしまうと、世界から敵として認識されるのではないかと、俺が人間であることを保つために、爺さんは他国には知らせずに、俺の故郷だけの秘密にしていた。

 

フレイに関してもだ

 

フレイを信仰するエルフの里はとても多い。フレイが亡くなったことを知れば大騒ぎになると、俺の故郷の者達には関係ないが、ゲルズの優しい頼みにより。この事を隠蔽する方針となった

 

 

 

俺が黒竜を倒せたのは、フレイのおかげであり、俺一人の実力ではない。犠牲なくして勝利なしとは言うが、家族を犠牲にした勝利は・・・・とても俺の心に響いた。そして俺はそれ以降、涙は出なくなってレベル4になった。世界を救えたこともゼウスとヘラが成し遂げる事ができなかった。アリアやアルバートが倒せなかった。最強と呼ばれるドラゴンを俺が倒せたとしても喜びはなく

 

 

 

フレイを亡くした喪失感だけが、滲むだけの事件だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『以上が・・・・・半年前に起こった事件だ』

 

 

「ジーク君が・・・そんな半年前に」

 

「あのダンジョン・オラトリアに出てくる黒竜を・・・・・フレイ様を犠牲にして倒した」

 

「なんとも・・・・切ない」

 

「ああ。喜べねえな・・・・それは」

 

「自分もタケミカヅチ様を犠牲にして・・・強大な敵を倒せたとしても・・嬉しくありません」

 

「ジーク様は・・・・そんなお辛い過去が」

 

 

「ジーク・・・・あのフレイヤ様のお兄様に助けて貰ってたんだにゃ」

 

「ジークも・・・・そんな悲しい過去が」

 

「辛いよね・・・・そりゃあ家族を失えば・・・」

 

「フレイ様が・・・・ジークさんを庇って・・・強制送還されたなんて」

 

「ああ・・フレイ様・・・フレイ様・・」

 

 

「ジーク・・・・」

 

「なんだか・・・とんでもねえ事を聞いちまったな?」

 

「私もフェルズからしか聞いた事がありませんが、黒竜ですか」

 

「地上の人間が数多く苦しめられたと。フェルズに聞いたが・・・どう思う?フェルズ」

 

「ああ。驚くばかりだ」

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

ある程度の半年前に起きた事件の真相を話したが、信じられない話ととても切なく辛い話だと。皆がそう思っている。黒竜を倒した功績よりも、それで世界を救った英雄としての名誉を手にするよりも、俺が強者として君臨したと言うことよりも

 

 

愛する義兄を亡くした事がとても辛い

 

 

あの日は、今もだがフレイとの思い出を俺は忘れられない。彼と過ごした日常と彼の笑顔が、何もかも彼と過ごしてきた思い出が脳裏に思い浮かんだ。彼を失った事で俺は悲しさが心から消えた。

 

この日からだろう。俺が自分の命を犠牲にしてまで果たそうとする考えを持つようになったのは

 

 

『ジークがこの経験をしたせいで、仲間を守るためなら自分の命を犠牲にするようになったんです。なんとかやめてと注意しても・・・・・・・・どうしても考え直してくれなくて』

 

『フレイは・・・お兄ちゃんといつも一緒だった。トールよりも遥かに、本当に実の兄弟みたいで・・・・』

 

 

「そうなんだ・・・・」

 

「ジークさんは・・・・その頃からなんですね・・・確かに誰よりも仲間を大事にしていますけど・・・・」

 

「じゃあ・・・ウィーネ様と話す時に・・・・自分のことを『お兄ちゃんが守ってみせる』って言っていましたけど」

 

 

「今水晶で見えていると思うが、ここにメイジと言う妹が居る。そのメイジとウィーネがとても似ていてな。性格も似ているとかで、つい手を貸してしまった。それがウィーネを守った理由だ」

 

 

『お兄ちゃん・・・・』

 

「ジーク・・・・・」

 

 

「現実を味わった結果、英雄だろうと全部は救えない。神でも人でも他人を守るのは決して簡単なことではない上に、全部は守れない。その現実を覆すために今までそういうことをしてきた」

 

 

「ジーク・・・」

 

 

「シル。やり方は間違いだと言ってくれて構わない。だがそうでもしなければ救える者も救えない。英雄なんてものを俺は押し付けられたが、俺は英雄がとことん好きではない。知らぬ者達まで守らなくてはならない立場、それがやがて俺を嫌う者でさえも、理不尽に守らなくてはならない。英雄など人にちやほやされるような軽いものでもない。全てを守らなくてはならない大きな責任を背負った名誉だ。そんな英雄に俺はなりたくなかった」

 

 

「ジークさん」

 

 

俺は改めて英雄としての責任を、英雄に憧れるベルに教える

 

英雄と言うのはちやほやされるような、そんな浮ついた名誉ではない。常に重く、常に誰かのために動かなくてはならない。重い責任を背負った名誉である。一人でも救えなければ、その名誉は剥奪され、人より低い価値として認識されて終わる場合もある

 

今俺もそうなのだ。今の俺は英雄としての名誉はもう無い

 

英雄がモンスターに変身した。この時点で大ごとであり、しかもそれがただのモンスターではなく。世界最強のドラゴンである『隻眼の黒竜ファフニール』である。

 

 

「さて・・・・・事情はある程度聞いたと思うが、これからどうするかだ」

 

 

俺が黒竜に変身したことはもう世に知れた。今外ではロキ・ファミリアとガネーシャ・ファミリアがここダイダロス通りを捜索している。目的は俺を捕らえるため、いつまでもここに居るわけにもいかない上に、ここにはゼノスだって居る。地上にモンスターが進出した情報も流れているはずだ。

 

言うなれば、もう絶体絶命の状況である

 

 

「ヘスティア。君はこれからどうしようと思う?まさかとは思うが、いつまでもここに籠る・・・・・・なんてことをするわけではないだろ?」

 

 

「どうしたらいいか・・・・ここまでになっても僕は迷っている。ジーク君は・・・・・どうする気で居るんだい?」

 

 

「選択は二つのみ、俺がファミリアをやめてゼノスを率いてオラリオの外へ出るか、ファミリアを辞めて大人しく俺が捕まってギルドに処刑されるか、の二つのみだな」

 

 

「な!?ファミリアを辞める!?」

 

「もしくはギルドに処刑される!?」

 

「そんなことギルドがするはずないよ!ジーク!」

 

 

「どうかな・・・・ロイマンだって市民のことを考えれば妥当な判断なはずだ。あいつは自分の役職を守るためなら他人すらどうでもいいからな。英雄であろうとモンスターになった人間に、人権などあらず、ギルドも人間であろうと危険なモンスターに変身するのであればタダでは済ませないはずだ。それが三大クエストの黒竜であるならな」

 

 

「さっき聞いた事情をギルドに話せば・・・・」

 

 

 

 

「ギルドに事情を説明して・・・・・・それで納得すると思うか?」

 

 

「「「「「「っ!?」」」」」」

 

 

俺は先ほどこの場に居た全員に事情を説明したが、納得もしなければ信じてくれる人間も居ないだろう。モンスターは人類の敵だ、それが英雄が変身した姿であろうと。俺が黒竜に変身して世に知られた時点で、俺にオラリオの居場所はない。

 

黙って殺されるか。ファミリアを辞めてオラリオを去るか、去っても追いかけてきて殺されるろうと思うが

 

それしかない

 

 

「その事情を信じたとしても、あの三大クエストの黒竜に変身した以上は、街の非難は俺に集中している。ロキ・ファミリアだけではないが、他のファミリアもそんな危険な生物を生かすわけがない。なら・・・・・消されるのがオチだ。大人しくウィーネ達を連れて故郷に帰るしかない」

 

 

『だがジークよ』

 

『今・・・・周辺は嵐で故郷に帰ることはできません』

 

 

「だろうな。それまでは・・・・・ウィーネたちと共に隠居生活をどこかでするしかないと思うが。そんな場所は当てがない。ダンジョンはガネーシャ・ファミリアが門を警備をして無理。バベルではフレイヤも居る。ダイダロス通りはロキ・ファミリアとガネーシャ・ファミリアが俺を捜索中。どうあってもウィーネたちを庇ってギルドに捕まって処刑されるのがオチだな」

 

 

『そんな!?』

 

『お兄ちゃん!?本気で言っているの!?』

 

 

「ああ。本気だ。他に手はあるとでも?ここにはウィーネたちも居るんだぞ?いつまでもマリアたちにウィーネたちを匿ってくれなど頼めない。俺がここで名乗り出てしまえば、その間にクノッソスを通じてウィーネ達をダンジョンに送る事ができる。俺が捕まればクノッソスの捜索はやめるはずだ。そうなれば全て治る。さあどうする?ヘスティア。ベル」

 

 

「そんな!!ジーク君を囮にして、その間にウィーネ君達をダンジョンに戻すなんて!」

 

「それじゃあジークさんはこのまま捕虜になるんですか!?」

 

 

「そういう事だ。それが俺の運命だろう。だから生き返らせるのは失敗だったな。あのまま俺を殺しておけば、こんなことにならなかった」

 

 

「そんなことないよ!ジーク!ジークは・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい加減にしろ!!!まだわからないのか!!俺は誰にも救えない!!!」

 

 

 

 

 

「「「「「「「っ!?」」」」」」」

 

『『『『・・・・・・・』』』』

 

 

俺は隠れている身でもあるのに、怒鳴り声でシルにも現実を突きつけた

 

こいつらはまだわからないのだろうか。人間の本質、現実の厳しさ、それが俺の命を殺す理由だと、わからないのかと。俺は大きな声を出して思い知らせる。もう俺には猶予もない事態だと。俺はオラリオで住める場所はもうないと。サーナの言う通り、俺は二度ここに来るべきではなかったのかもしれない

 

 

「わからないのか?市民も冒険者も神も、俺は人類の敵だ。人の姿をしていても化け物に変身する。人であろうと化け物に変身するのであれば、危険生物として排除する。それが人間の本質だ。危険な生き物を側で置いておくのはお前らにできても市民の者たちはできない。彼らはモンスターが敵であることを認識しているからだ。それがましてや世界三大クエストの黒竜であるなら、尚更の事。黒竜に恨みを持つアイズだって・・・・俺を野放しにすることはないだろう」

 

 

「でも!僕は!」

 

 

「ベル。前も言ったが・・・・夢を見るのはやめろ」

 

 

「っ!?」

 

 

「英雄に憧れ英雄になりたい。その気持ちはわからなくもないが、それでも英雄になった俺がこんな仕打ちを受けて、結局捕縛される事態になるなど。まさしく恩を仇で返されたも同然。今まで人のためにしてきたにも関わらず、この様だ。もう俺は英雄雷帝ではない。嘘つき冒険者か・・・・もしくはモンスター冒険者と言った所だな。もう俺は救える存在ではない。お前らが俺を見捨てれば助かる」

 

 

「ジークさん!それはあまりにも!」

 

 

「リュー。俺は正義では救えない。お前の主神を馬鹿にするわけではないが、アストレアがここに居たとしても、俺には正義はないと誰もが言うだろう。お前の主神だったアストレアも流石に庇いきれない。俺は前に言ったはずだぞ?俺の敵はモンスターではない。人と神が俺の敵なのだ。俺が平和を望んでも、モンスターに変身するのであれば排除されるのがオチ。人に正義などない。いや、正義のためなら人間はいつだって残酷になる。それこそ俺と言う怪物を殺すと言う正義だ。人の本質が俺を殺そうとしている。七年前の屈辱を味わっているお前なら、十分わかっていると思うが?」

 

 

「それは・・・・・」

 

「でも・・・・ロキ達に頼めば・・・」

 

 

「無理だな。あっちにはアイズやフィンが居る。アイズの両親は黒竜に殺された。その恨みがある限り無理だ。フィンは一族の再興を目指している。街から名誉が欲しいあいつが、市民の願いを叶えるためにも俺を殺すはずだ。どうあっても・・・・・人の非難がある限り、俺は救えない」

 

 

人間の本質が俺を殺そうとしている

 

人の非難がなければ簡単に事は済んだだろう。ああなったのはイケロス・ファミリアが原因だったとしても、俺が人類最強の敵に変身したのであれば。俺に英雄としても人間としても扱われない。人のためにしていようがな

 

無駄な事だった。これが人間だ。モンスターを人類の敵として認識している人間達は、俺すら敵であると、危険生物であるなら処理するのみ、害的になるのであれば

 

 

「シル。今回ばかりは君の言葉でも、俺は言う事は聞かない。少なくとも君だってわかるだろう?これが・・・・・人間だと」

 

「うん、でも・・・・・私は」

 

「わかってくれ。君でも・・・・・・俺は救えない」

 

 

俺はシルでさえも、苦しい現実を言いつけた。

 

それでも俺は救えない。人間の本質を彼女はかなり知っているはずだと。わかっているからこそ、俺を助けるなと言う。いつの日か自分の火種になるからだ

 

シルを巻き込まないためにも、俺を見捨てろと言った

 

 

『ジーク。お主本気か?』

 

『ジーク・・そんな!!!』

 

『ジークさん!それはあまりに!』

 

『お兄ちゃん!!』

 

『『『『『主!!』』』』』

 

 

 

「爺さん、サーナ達も、もう何を言っても俺の決意は変わらない。俺に猶予はない。だからヘスティア。主神として決めてくれ」

 

「え?」

 

「三日前で散々君の指示を従わなかったが、最後の決断を君に任せる。無論選択は二つのみ、俺を見捨ててウィーネ達をダンジョンに送るか、俺がファミリアを辞めてウィーネ達ゼノスをオラリオの外へ出るか、どちらかだ。それ以外の道はないぞ。もう俺の敵は世界だ。さあ、どうする?」

 

「・・・・・・・」

 

 

 

最終決断を、主神であるヘスティアに決断を頼む

 

 

オラリオの外に出ても、後から冒険者が来ると思うが、それでも主神であるヘスティアに最後の決断を聞く。どうあってもここから先はもう俺に生きる道は本当にない。まさしく絶望の事態だ。これが現実であることを突き付けた俺をどうするのか、俺は最終決断をヘスティアに迫る

 

 

そしてその答えは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なら僕も覚悟を決める!!!ギルドやロキ達や冒険者を敵に回して力で捩じ伏せる!君を守ってウィーネ君達をダンジョンに戻す!その後ギルドに君を捕縛しないようにウラノスに頼むか脅迫するかで、君を冒険者のまま継続させる!!」

 

 

 

「・・・・・・・・・・まさか、君がそんな強引な方法を取るとは思っていなかった」

 

 

 

 

ヘスティアは俺を助けるために、他の冒険者を倒して、力でこの場を切り抜けると傲慢な選択をした

 

 

 

ヘスティアが見ない内にそんな大事をするとは思いもしなかった。驚いている顔はしていないが、内心は驚いている

 

まさか他の冒険者を敵に回して、ギルドの俺の捕縛命令をウラノスに頼んで取り消してもらうようにするらしい。街の市民に関してはこればかりは無視するようだ。まさかオラリオを戦場にしてまでウィーネ達をダンジョンに返すとは、中々にデカイことをするようになったな

 

俺に仲間意識を持っているのか、こんな事態になっても俺を諦めないようだ

 

 

「本気で言っているのか?相手は世界だぞ?遥かに弱いお前達が俺を助けるとでも言うのか?」

 

 

「そうだよ!こっちは二度も君を失っているんだよ!もう君を失うのはたくさんだ!!それなら僕らも強引な方法でこの事態を切り抜ける!」

 

「ええ、神様の言う通りです!もう僕らは散々です!あなたを失うのも、あなたを守れなかったことも、全部僕も思い知りました。だからと言ってまたあなたを見捨てるなんて、あなたを失う方が一番の後悔です!!!」

 

 

「ほう・・・・・・他は?」

 

 

「リリも・・・・ジーク様の言う言葉は分かります。ですが・・・・それでもリリ達に仲間を三度も見捨てろなんて、真平ごめんです!」

 

「俺もだ!お前もいい加減にしろよ!現実が厳しいのはわかるが、そんな理由で自分の命を捨てるんじゃねえ!!上等だ。仲間のためなら他の冒険者なんて魔剣で吹き飛ばしてやる!!」

 

「自分もです。自分もあなたを守る事ができませんでした。自分たちがどれだけ無力なのかもわかっていますが、それでも仲間を見捨てるなんて、自分にとってはもう真っ平です!」

 

「私もかつては貴方と同じでした。娼婦だった私を貴方様に皆様が助けてくれました。今度は私たちが助けます!例え他の方達が否定しても!!」

 

 

「そうか・・・・・その他は?」

 

 

「ええ、助けます・・・・貴方を助けたフレイ様の想いを・・・無駄にしないために!!」

 

「ミャー達は冒険者を辞めているから関係なしにゃ」

 

「偶には大きなことをやるにゃ!」

 

「面白そうじゃない!ジーク。私たちも諦めないからね!」

 

「私も!フェルズ様と一緒にウラノス様の所に行って、ジークの罪状を軽くして、ゼノス達を無事ダンジョンを返すように頼んでくる!私もジークを失うのは嫌よ!」

 

「そういうことだ。私もなんとかしよう。ここまで彼らにしてくれたのだ。私も少しは君の力を貸そう」

 

 

「リュー・・・お前達まで」

 

 

「じゃあ!俺っちも残るぜ!」

 

 

「っ!リド・・・・」

 

 

「俺っちは残る。なに、窓越しではあるが、ライっちに頼んでこの三日間三階の窓から夕日を拝ませて貰って。もう死んだって夢は叶ったし後悔はないからな」

 

「なら、俺も残ろう。ジーク・フリードにここまで貸しをさせるわけにはいかん」

 

「私も残ります。個人的なことを言うのですが、貴方を放っておけません。それで貴方を守って死んでも構いません。ラウラはウィーネ達を連れてダンジョンへ戻ってください」

 

「リド。グロス。レイ。本気かい!?」

 

「ええ、覚悟はお有りです」

 

 

「はあ・・・・・・ウンディーネ達は?」

 

 

『『『『『無論です!我が主!フレイ様の想いを潰さないために!!』』』』』

 

 

「まったく・・・・このバカ共が」

 

「それでもジークを大事にしているんだよ。私もなるべく街の人に貴方がまだ英雄だってことを説得するよ」

 

「シルまで・・・・・なんと無茶苦茶な」

 

 

そこまで俺を庇うなど、有り得ないと俺は言う

 

ここで見捨てておけばいろんなものが普通で居られるというのに、それでも見捨てる事はできないと、他の冒険者を敵に回してでも仲間として俺を見捨てないと、全員宣言した

 

今からやろうとするのは、世界を相手に反逆するということだ

 

 

『ジーク・・・ヘスティアの眷属になってよかったな』

 

『まだ貴方のことわかっている方達が、まだオラリオに居るんですよ』

 

『お兄ちゃん、まだ終わりじゃないよ』

 

『ジーク・・・・最後まで仲間を信じて』

 

 

 

「本当にお前達は・・・・・・・・・後悔するぞ!!俺を庇った事を!!!」

 

 

 

「「「「「「「絶対に後悔なんてしない(にゃ)!!!」」」」」」

『『『『『『『絶対に後悔なんてしない!!!』』』』』』

 

 

「・・・・・・・」

 

 

もうそれだけを聞いて、俺は自分を犠牲にするのをやめる

 

フレイはこんな想いだったのだろうか、愛する者のために全てを敵に回すと言うのは、これだけは譲れないと言う想いがあるのか、もう二度も俺を失い、もう三度も俺を失うのであるなら、今度こそ世界の常識すら力で乗り越えると。

 

もはや彼らに迷いはなかった。人と精霊と魔物が手を取り合っても俺を守ると決意した

 

だから俺は言う

 

 

 

「そうか、なら言っておく・・・・・・・・・本当にありがとう」

 

 

「「「「「「っ!?」」」」」」

『『『『『『っ!?』』』』』』

 

 

 

俺は感謝の言葉を言った。

 

ここまで俺を庇おうとする人間は故郷以外には居ないと思っていた。なのにここにまだ俺を仲間として認識する者達が居たようだ。まったく俺を捨てれば早く済むと言うのに、それでも彼らは俺を見捨てなかった敬意を込めて、俺は感謝を口にする

 

だが、問題はここからだ。

 

ロキ達とやり合う事は変わりはないだろう。もちろん戦うからには準備も必要だ。相手はあのロキ・ファミリアだ。レベル6が七人も居るようなファミリアを相手にするならそれなりに時間が掛けて準備するしかない

 

 

「さて・・・・・ではオラリオに逆らうってことで決まりだが・・・・色々準備をしなくてはな」

 

 

「それでどうするんだい。ジーク君?」

 

 

「その前にあいつを呼んで来て欲しいヘスティア。あいつを野放しにすると何をしてくるかわからないからな。あの主神は」

 

 

「あの主神?・・・ジーク君・・・まさか」

 

 

色々準備をする前に情報も必要だった。まあそれに関しては一番それを専門にしているファミリアの主神が居る。それを言っただけでヘスティアとリリルカとリューはすぐにそれが誰なのかすぐに理解した。

 

俺がそいつを野放しにしたくないと言った途端、納得するような顔をして頷く三人。その主神と言うのは

 

 

 

「ああ。ヘルメスだ」

 

 

 

情報流通の専門であり、ウラノスと裏で手を組んでいるあいつを野放しにするわけにはいかず、俺の名誉を取り戻すためなら変なことをして企む男神だと。奴の性格を知っている故に、リューとルノアに頼んでヘルメスとアスフィをここへ捕まえて来いと頼んだ




フレイを失ってモンスターになっても、彼の仲間は見捨てなかった。だが、世界はそれでもジーク・フリードを許さない。かつての友人でもあったロキ・ファミリアも敵

これから、ヘスティア・ファミリアは


人間の常識に抗う正義を示す戦いが始まる



次回は開戦準備です
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