それはそうだろう、なぜならロキ・ファミリアの首領であるフィンとその特攻隊長でもあるベートを相手にしているのだ。手加減などするはずもない
「うおおおおおおおおおおおお!!」
「はああああああああああああ!!」
「ふ!!」
黒い炎を帯びたグラムが、ベートのブーツとフィンの槍が激突する。そこから黒い火花が散っている。地面には何度も地割れのような跡が、フィンもベートもギルドのルールなど気にしていられるはずもない。相手は黒竜の力まで使っている俺だ。街の損害など気にしてられる状況ではなかった
その中で俺はグラムで二人を吹き飛ばす
「は!!」
「く!?」
「ぐは!?」
グラムにたった黒竜の力を乗せただけで。緑色の刃が黒い炎を帯びただけで刃が黒くなった。グラムがまだ魔剣解放もしてないと言うのに、魔剣程の威力を出せるとなると、やはり黒竜の力は世界を滅ぼす程の力はあるはずだと思っている
「ふむ、ここまでとはな」
街の被害は万が一考えなくていいとはヘスティアから言われてはいるが、ただグラムを振っただけで斬撃波が街の建物を粉々にするとなると、もしこれが本気だったらどうなるかと思っている。
そんなことを思いながら剣を眺めていると
「うおおおおおおおおおおおお!!!」
「・・・・・・・」
当然休む間も無く、俺の後ろから蹴りを入れてくるベート
戦場で油断を見せれば隙を取られて急所を突かれて終わるだろう。それが戦場であり、油断なんてしてはならない。敵を確実に排除をしなくては、だから今ベートのしていることは正しい
だが
ガシ!!!
「な!?」
「そう簡単に・・・・隙など見せないぞベート。ふん!」
「く!ぐおおおおおおおおおおお!?」
俺はリジルを一度床に置いて、『左手』でベートの右足のブーツに付いているフロスヴィルトを握り潰して、ベートを左の方へと振り捨てた。これで左にあるフロスヴィルトでなければ魔法を吸収はできないだろう。
少しでも俺はグラムの雷を吸わせないようにと、フロスヴィルトの膝にある魔法石を破壊した
「く!ジーク!テメエ・・・・・・その腕はなんだ!?」
「ん?何がだ?」
「ベート?君は何を言って・・・・」
「『皮膚』の感触がしなかった!?なんだその腕は!?テメエその腕はなんだ!?でなきゃフロスヴィルトが素手で握り潰せるはずがねえ!」
ベートは俺に右足を左腕に掴まれた際、皮膚の感触がしなかった。少し腕には似合わない『硬さ』があった。しかもフロスヴィルトはミスリルでできた鉱石の武具。レベル六でもドワーフでなければ壊すのは難しい
それでなぜ俺が握り潰せたかと言う事だが
その理由は
「ああ。それか・・・・・それはこれだ」
「な!?」
「て、テメエ!?・・・・・なんだその左腕は!?」
俺はグラム一度地面に刺して。左手に付けていたヤールングレイプルを取って、そして裾を捲って、左腕に縛り付けてあった包帯を取って左腕を見せた
そもそもフロスヴィルトのミスリル鉱石でできた武具を腕力で破壊できるのは高レベルの力のみ、それで壊せた理由はこれだ
「黒竜の左腕・・・・・少ししか使ってないと言うのに、もう左腕が怪物化したか」
「黒竜の左腕・・・・だと!?なんで腕が怪物に!?」
「君はもう・・・・体までもモンスターに成り果てていると言うのか!?」
「ああ、早くもな」
鋭い紫色の爪、黒い全身の鱗、手のひらや裏までも人間の肌色の皮膚は無い。完全に左腕が黒竜の腕化し、もはや左腕は人の原型を保てなくなっていた
まだ使ったばかりでそこまで体の変化は無いはずだと思っていたが、まさかもう『半分』まで汚染されているとは思ってもいなかった。まあこれは覚悟の上、今更体が怪物になろうと関係ないとグラムとリジルを拾う
「人の力、神の力、怪物の力、それを手にしたら普通なら俺の体は耐え切れないだろう。まあ俺が『古い血』に生まれたが故の特別差だ。別に理解できないわけでもあるまい。俺のような『異性生物』はな。まあシルからは『超人生物』だと褒めてくれるがな」
「嘘だろ・・・・」
「人間が・・・・・一部怪物の姿になるなんて・・・・・これは最早階層主を相手にしているようなものだ」
「怪物扱いされて当然、俺は否定はしない。だから・・・・・」
「っ!?」
「話している余裕などないぞ」
「く!?」
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!
本来なら今のような話す時間など、戦場の最中である今はないのだ。だから素早くフィンの前に動いて左腕でリジルを持ったまま塚で殴る。咄嗟に避けたフィンは、ちょうど後ろにあった建物が俺の拳で粉砕し吹き飛ぶ
黒竜の腕となると、人間の左腕とは全然異なる力を発揮した。これでならガレスにも腕力で勝てると思っている。でなければ壁どころか建物自体を吹き飛ばすことなんてないだろうからな
「この際・・・建物の一つや二つはどうでもいいか」
「テメエ・・・・・・モンスターになったからって調子に乗るなよ!」
「っ!フロスヴィルトに魔剣の炎を流したか!」
「うおおおおおお!!くたばりやがれええええええ!!」
「ふ!」
俺に先に出し抜かれたことにイラついたのか
今度はベートが小型剣の魔剣をフロスヴィルトに炎を吸収させて、その溜めた炎の一撃を俺に繰り出してきた。魔剣の炎であるなら魔剣で跳ね返すべきだと。魔剣グラムで雷を帯びてベートの蹴りを防いだ
ベートの炎と俺の雷が激突し、更にダイダロス通りに衝撃を与えた
「くう!効いている感じが全然しねえ!」
「ぬ!まさか・・・・・体まで『硬化』状態となっているのか?」
流石に魔剣同士のぶつかり合いでは、多少くらい体に傷は入るのだが、ベートが腕や足に切り傷があるのに、俺には何も傷に入っていない。
まさかとは思うが。黒竜ファフニールの最強能力である『全身硬化』が俺にも体に付与したのではないのかと予想する
ファフニールの全身硬化はあのゼウスやヘラの眷属や爺さんの眷属でさえも傷一つ付けられなかったはず、それを身に付けたとなれば、不死に近い体を手にしてしまったのかもしれない。体が怪物になる代償を考えるなら、その代わり硬化能力を手にしたとのだと。またも俺は犠牲を払って力を得たのだとわかった
だがもうそんなことはどうでもいい
「まあいいだろう・・・・それで更にお前らを出し抜けるわけだ!」
「ぐ!ぐわああああああああああああああ!!??」
今度は俺から攻撃を反撃した。とは言っても斬撃破だが、今度はグラムだけでなく、地面に刺したリジルを拾って、リジルと同時に振って斬撃波を出した。流石の二本で振った斬撃破にはベートは避けることなく、直撃して後ろの建物にぶつかって吹っ飛んで行った
だが
ヒュン!!
「っ!・・・フィンか!」
「僕を忘れるなんて酷いじゃないか?ジーク」
「忘れていない。だがお前が攻撃せずに、ベートが先に手を出しているのを見て、俺の動きを探っていたのだろう?」
「君がレベル6になってからどのような動きをするか見極めようと思ってね、そうすれば君の動きを把握して先読みできると思ったんだけど。そうも簡単にはいかないようだ」
「流石だな。頭のキレや状況判断は間違っていない。俺がしっかりと傷が入るのかも確認するために槍を投げたのも正解だ」
ベートを吹き飛ばして、次はフィンが攻撃して槍を投げてきた
咄嗟とは言え、ギリギリ避けたため、槍の先端の少しを俺の右頬へと当たり、そこから血が流れた。ファフニールの硬化能力は左半分の体だけであって、右半分は生身の体のままだと言うことを俺もフィンも確認取れた
相変わらず相手の動きを読む思考は変わらないようだ。だが彼の強みでもある
それならと、こちらもグラムの力を発揮するまで
「魔剣接続!」
「っ!?刀身に雷が!?」
グラムの魔剣としての力を解放をさせた。グラムの力を発揮させるのは久方ぶりだが、相手はあのフィンだ。ガレスのように威力のある一撃は出せないが。相手の動きを読んで先に動くのであれば、それに補う力を出して押し返すまでと魔剣としてのグラムの力を発揮する
「言うなら斬れ味が上がっただけだ。この通りにな・・・」
ザシュ!!!ガガガガガガ!!
「建物が・・・・・・・一瞬で半分に!?」
俺はフィンに魔剣を解放をしたと言っても、ただ少し斬れ味が上がっただけだと言い、その証拠に今右隣にある建物を一刀両断に斜め右へと綺麗に斬れた。
確かに今のグラムの刀身を触れれば、普通の鉄でできた武器は簡単に斬られて壊れるだろう。だがフィンの持つ槍はアダマンタイト。簡単には壊れないと思うが、威力は発揮する
「魔剣を解放をしたグラムと鉄すらも貫くリジル。お前の槍二本に相対するには十分な相手だと思わないか?」
「魔剣にリジルか・・・・確かに僕の槍二本と戦うには十分だけど・・・・・遠慮は無しってわけだね」
「今更恐れているわけではないだろう?こうなったからには戦って勝敗を付けなければこの場もこの事件も収まらない。黒竜自身に変身するよりはマシだろう?」
「そうだね・・・・あの姿になったら・・・僕は勝てないよ。ベートもね」
「何を言っても、俺とお前達は争うが運命だ。ここで白黒ハッキリさせて、今後は俺たちに何もしてこないように釘を打っておかなければな」
「それが君の今回の目的か・・・・・確かに君を狙う理由は僕らにはある。なら!・・・・ここで君の全てを捕らえ尽くすまで!」
「それでいい。そうでなければ・・・・・・ここまで本気を出した意味がない!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおお!!!」
お互い譲れない理由がある。
本気である理由はこれで成り立っている。いつも俺たち人間はこうして戦うのだ。いや・・・・・これが俺とフィンの喧嘩だった
相容れぬことでいつも喧嘩をした。言い争い、殴り合い、お互いスキルを使って怒り暴れた。フィンの考えに部下であるリヴェリア達は誰も文句を言わないが、だがその中で俺だけがフィンの考えに偶然付いていけない文句を言う時があった
俺の考えとフィンの考えは違うのは当然だが、フィンの判断に俺が文句を言う時が何度かあった。『それは間違っているだろう』とか『物事の考えだけで動くんじゃねえ』とか、俺だけが唯一フィンの考えに口出しする人間だった
ロキでさえ、フィンの理論や口論に納得もするのに、俺だけがフィンに口出しすることがあった。団長なのに当時の俺は敬語も使わない愚か者だった。でも人の言うことに対して、自分からはそれは違うだろうと注意を出すのが俺だった。俺は口論や理論だとかの前に、人としてどうなのかとか、例えそれが神であれ、年上であれ、団長であろうと、間違っていると感じるなら、俺は自分の意見をハッキリ言う人間だった
フィンの喧嘩はそれが多い。理論的に考えるフィンと精神的に考える俺達は。いつもそんな理由で喧嘩をした
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」
今お互いの二本の武器を交わし続けると、今も思い出す。おそらく彼も思い出しているのだと思う。こんな理由で喧嘩をしていたなと、何がフィンを変えたのだろう。いつから最善なことしか考えなくなったのだろうと俺は思う
彼はこんな人間だったと知った俺は、彼を賢者と言わずに、ただの頭でっかちだと思っていた。
確かにフィンの考えに賛同する者は多い。理解する人間がほとんどであろう。それに比べて俺は価値観の違いとかでいつもフィンに講義をする時もあった。唯一彼の言うことが正しいと思ったのは身内の仲間を思っての言葉だけだった
でも方針や部隊の編成の時には文句を言う時が多かった。それじゃあ仲間に負担がかかるとか、色々と意見や主張を奴に言った
なぜ今になってそんなことを思うのかはわからない。もしこんなことを思うとするなら、彼との喧嘩が久しぶりだからそう思えてしまうのだろうと、推測する
すると
「ふう・・・・相変わらず素早いな」
「はあ・・・・はあ・・・・ジーク・・・・僕は・・・君が羨ましい」
「なぜ?・・・」
「僕は最善までしか尽くせない・・・・でも・・・君は代償を引き換えに『完全に』果たしていた・・・・・どうやったら・・・君になれるんだ?」
「またそんなことか・・・・・頭で考える必要なく・・・・心で争った結果だ」
「心で争った?」
「どんな困難をも・・・ただ諦めない一心を持って・・・今までの苦難を乗り越えた。その結果が・・・・英雄になることができたのだろう」
一度俺とフィンは激突するのをやめて下り、そこでフィンがどうやったら俺のようになれるのか、彼は俺を羨む
彼からすれば、俺は理想の自分でもあったのかもしれない。そんな理想を俺が先になっていた。理想の俺になればパルゥムの再興だって果たせたはずだと。彼は今になって俺を拒んだことに後悔する
「君は・・・以前僕にパルゥムの再興は絶対に果たせないと・・・そう言った・・・・その理由が・・・臆病だからと・・・その通りだ」
「・・・・・・・」
「僕は恐れている・・・・皆から勇者として尊敬されてはいても・・・それは・・・ファミリア内だけだ・・・・このオラリオだけではない・・・望みが叶わないのではないのかと不安だ・・・・でも君は・・・・オラリオ内で讃えられているじゃないか・・・・今だってまだ君を英雄だと思って・・・黒竜に変身しても・・・君を助けようとギルドに抗議する僕の同族も居る・・・・君は恐れなくして多くを救ってきた・・・・でも僕は・・・・街の人までは守ることができないと・・・・ファミリアだけを優先して恐れてしまった・・・・」
「はあ・・・・・悩むくらいなら、考えるなら・・・何が正しいかその眼で見極めればいいだろう。そして行動で示せば、簡単に叶う話だ!!」
「く!」
今度は俺が先に仕掛ける
次はリジルに黒竜の力を流して刀身に黒い炎が帯びる。今度は刀身を強化した二本でフィンに斬りかかる。流石の斬れ味が上がったグラムとリジルではフィンでも手に持っている愛槍二本を、俺の剣二本の刃に触れることを恐れて、体で避ける
が
「ぐ!デュランダルの槍が!?・・・・がは!!」
だが流石に全ては避け切れずに、俺のグラムが頭に当たりそうになったため、咄嗟に左に持っていた片方の槍である不壊属性でもあるはずの『スピア・ローラン』で防いだが、想像通りで真っ二つに槍の刃が綺麗に斬れた。不壊属性の武器がグラムの雷を帯びた刃で一刀両断にされるなど。フィンは予想以上の威力に驚くも、これでフィンはあとは愛用しているファルティア・スピアのみしかない
だが、俺は一切反撃させないとそのままフィンの腹に蹴りを入れて、フィンは後方にある建物の壁に背中がぶつかって怯む
そしてそのまま
「終わりだフィン。まずは一人脱落だ」
「く!君に・・・・差がここまでなんて!」
壁にまで追い込まれたフィンは、流石に逃げることもできない、ファルティア・スピアでも、今黒竜や魔剣としての力を発揮した刀身をした武器を相手に真っ二つにされるのがオチだと、もうフィンでも防ぎようがなく、フィンが先に脱落する
のかと思いきや
「ジークウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!」
「っ!?ベート!?」
「っ!流石にあれでは倒れなかったか・・・・・ぐう!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
横から建物の壁を壊してでも、ベートが足の突き蹴りで俺の方まで飛んできた。流石の俺も避けることはできずに、奴に胸に蹴りを入れられ、俺はそのまま後ろへと吹っ飛び、途中の建物の屋根にぶつかり、
東広場の中心まで吹っ飛ばされて倒れた。
倒れた際、リジルを手から離してしまい。左へと転がるように少し離れた距離へと飛んで行ってしまった
拾いに行くにしても距離が遠い上に、拾う時間もないままベートが俺の前に立ち塞がりすぐに立ち上がる
「まだ終わりじゃねえぞ!ジーク!」
「そうか、ならそろそろ決着を付けるか?・・・・今度は魔法でだ!」
「上等だ!・・・テメエを燃やす!!」
これ以上戦いが長引くわけにもいかず、ここでベートと決着を付けると、最後は魔法で勝敗を決めると、ベートは詠唱を始めた
俺も魔法で対抗をしようと思うが、あのベートだ。ガレス並に耐久力の強い男だ。最大出力のムスペルヘイムで対応するがもしかしたら耐え切れてしまうかもしれない。ムスペルヘイムの最大出力は溶岩の波ではあって普通の人間なら燃えて溶けてしまう、街を最小限にするために最大出力は使わないのだが、ベートの耐久力は怒り奮闘で耐え切る可能性も高い
これで耐え切ったら俺は最終的にルーンブレイクを使うしかなくなる
俺のムスペルヘイムで戦闘不能になるか、ベートのハティで打ち破れるか、
もはや迷う暇もなく、俺はルーン文字を描いて、その文字を左手で掴んで投げる
「ムスペルヘイム!!!」
「ハティ!!!」
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!
俺が放った溶岩の波が一斉にベートへと襲い掛かり、ベートの体に巻き付いた大狼の形をした炎を纏って俺のムスペルスヘイムの中に飛び込む
俺の火炎魔法とベートの火炎魔法が大きく衝撃を放ち、空に炎が舞い上がって激突した
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」
両者の炎がぶつかり、広場近くにある建物や地面は一斉に燃えて灰となる。ダイダロス通りの住民は避難済みで問題ないが、もしも周囲に人が居たら消し炭になっていたことだろう。それだけ俺のムスペルスヘイムとベートのハティは威力も強いわけだ。上級魔法同士のぶつかりはここまで被害が出ると理解した
そして二つの炎が激突し続けると
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「く!わかっていたが・・・やはりムスペルヘイムの波を突破するか!」
溶岩の波の壁の隙間からベートの体半分が徐々に出てくる。体に炎を纏っているような魔法を使用をしているのだから、ハティがベートの体を守るためにムスペルヘイムの炎を寄せ付けないように防いだのかもしれないと推測する。だが流石の最大出力ではないのもあるが、全身にあちらこちらにと血と焦げた焼け傷がいくつかあり、血反吐を吐きながらも。根性だけはあると思っていたが、まさか自分の体を犠牲にしてでも俺のムスペルヘイムの中を突破するとは。捨身特攻は俺の得意分野だと思ったが、ベートも同じことができるようだ
そんなことを思っている内に、ベートがそのまま足突きをして飛んでくる
「喰らいやがれえええええええええええええ!!」
「ぐ!!ぐは!」
もちろん俺は防ぐことができずに、突進してきたベートの足突きに腹を直撃され、俺はそのまま後方の建物の壁に吹っ飛び、壁に激突したと同時に俺の口から少し血が垂れる、その後すぐに素早くベートが俺の目の前まで迫り、俺の首を掴んで壁に叩き押さえられ、片方の拳を構えて追い込まれてしまう
「取ったぞ!!これで俺の勝ちだジーク!!」
「ここまでされることはわかっていた・・・・・・・・・・だから奥の手を使うまでだ!」
ここまで追い込まれることは想定済みだ
ベートなら最大出力のムスペルヘイムを体で受け止めるくらいどうにでもなる男だからな、でなきゃスパルトレイの槍を複数背中に刺さってでも戦う男だ。誰よりも我慢強い男だ。下手をしたらガレスよりも頑固でどんな攻撃でも耐え切ってしまう。だからムスペルヘイムの溶岩でも、多少の大怪我と髪に焦げ跡が付いても俺を掴んで追い込むことは先読みしてある
次に俺が繰り出すのはルーンブレイク・・・・ではなく黒竜の黒炎を使う。左手にある竜の手から黒い炎を放出し、今ベートが構えている拳を拳同士をぶつけて止めようと、予定通り黒竜の力を使う。ベートには立ち直れない一撃を出して止める他ない。だからこそゼウスとヘラの眷属をも滅ぼした黒竜の力でならと、ここで終わるわけもなく反撃をする
が、しかし
「どけええええええええ!!ベートおおおおおおおおお!!!」
「っ!?」
「フィン!」
先ほど俺に追い詰められていたフィンが、俺たちの左横にある建物の壁を殴って壊し突進をしてきた。
よく見たら理性がない。彼の魔法であるヘル・フィネガスを使っていた
ヘル・フィネガスを使っていることで、彼のアビリティが上昇し、拳だけでも建物は簡単に吹き飛ぶ。ここまでの被害が出ているのであれば、フィンも建物の現状は関係なく、ただ目の前にある倒さなくてはならない敵を粉砕するために、獣の眼にな李、俺ではなくベートを襲う
「はあ!!」
「く!?フィン!?テメエ!?もう少しでジークを・・・・ぐ!?」
「うおおおおおおおおおお!!」
「フィン、お前は自分の手で俺を倒したいのか・・・ベートから横取りしてでも・・・」
フィンは絶対に自分の手で俺を倒すと、俺がベートにやられそうになった所を、フィンはベートを退かそうとまずは愛用の槍を投げた
それをギリギリで避けたベートだが、その隙にフィンは蹴りでベートの腹を直撃させる。その痛みにベートは俺の首から手を離し俺から後ろへと吹っ飛んでいく
それでもフィンはそのままベートに迫り、拳や蹴りでベートを連打して叩く
「うおおおおおおおお!!」
「ぐは!?がは!?ぐはああああああああ!!」
ベートはそのフィンの連打攻撃に防ぐこともできないまま連打を見事全て打撃を喰らう。最後は回し蹴りを喰らってしまい。そのまま斜め右にあった大きな柱にぶつかって地面に倒れる
が、フィンの攻撃はそれだけで治ることなく
「っ!ふん!はああああああ!!」
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!
フィンはすぐ自分の隣に転がっていた。先ほど俺の手から離した『リジル』を拾い。そのリジルを先ほどベートにぶつかった柱の下部辺りに投げ。その柱の下部辺りが投げられたリジルによって粉砕し、その上部に残った柱の先端がベートの方へと落ちていく。
「な!?フィン!?テメエ・・・・」
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!
ベートはフィンの攻撃に怯んでいた為。避けることもできないまま壊された柱の上部が落下してそのまま下敷きにされてしまった
まさか団員を戦闘不能にさせるために柱の下敷きにするとは。フィンも中々にえげつないことをするのだと思った。仲間にこんなことは絶対にしないだろうが、倒れた柱の下からベートが倒れていたと思われる位置に血が大量に流れているが、あいつがこの程度で死ぬわけないと。フィンもベートの頑丈さを知ってのことか、これくらいやらなければ脱落しないと。容赦なしに団員をフィンは倒した
これでベートが先に戦闘不能となった
「団員を柱の下敷きにするとは、普通なら死んではいるが、お前もベートの頑固さを理解してのことか・・・遠慮無しに潰すとは、しかも勝手にリジルまで使うとはな」
「勝手にリジルを使ったことは謝るよ。でもあの強度の剣なら柱なんて簡単に壊せると、二年前の君専用武器ならイケると思ってね。それにベートはこれくらいやらなければ彼を止められないしね」
「全部・・・・否定できない事実だな・・・だが・・・お前も限界に近いだろう?」
フィンがベートを倒しても今もそろそろ限界に近かった
俺の攻撃を幾度も喰らっている彼は、今は魔法で本能で動いてはいても体力も限界に近い。今槍を拾いに行き。彼は再度俺に向き合って構えた。全身に魔力が込められているのを感じる
なら次は
「ああ・・・・・ここで決着と行かないかい?僕も魔法で・・・そろそろ・・・・・決めたい。僕が正しいのか・・・・君が正しいのか・・・・・白黒決めようじゃないか?」
「ああ・・・・いい加減お前との戦いも終わらせたい。ここで決めよう。だが正しいかではなく・・・・・・今自分が目指す先に決別を下す時だ・・・・・・正しいかとかで決めるんじゃない・・・・今自分がどのような進むべき道へと行くべきか、それをこの戦いで決めるんだ」
フィンはここで白黒付けると、今自分に出せる全力の全てをこの魔法へと撃てと、彼は全身にある魔力をこの一撃へと込めた。それは俺が正しいのか彼が正しいのかを決めるために
決着をつける理由としては最もだろう
だが
俺は違う
正しいのかなどは誰にも決められない。そんなものは己で決めるものだ。その二つが別れて人は争うのだ。それが皆正しいと言い、それは間違っていると言う者も居る。争いは人の相反する理由から生まれるのだ。だから正しいなんてこの世にはない。少なくともこんな弱肉強食と不平等でしかないこの下界では、だから力で示す他ない。負ければ何もかも失い。絶望するだけ。だがそれでも諦めずにその力を手にしてでも大事なことは忘れずにこの先の苦難を乗り越えて希望を求めるか、
その志で決まるのだ。全てが
俺は思う。フィンと俺が何が違うと聞かれたら、最善では満足できないから自分の命を代償して残った感情と言う心で全てを救おうと動く俺と。最善することが前提で、今自分の考えだけで押し切るフィン。心で動く俺と頭で動くフィン。これが俺とフィンの差だろう
現実と言う限界があることを俺とフィンは知ってはいても、それでもその現実と言う壁に争いを続けた。でもやり方が全然違くて乗り越えるのが苦難だった
だがそれでも俺は諦めきれない。初めは諦めようと思った。救える命を救えればそれでいいと自分の命を差し出した。
だが
俺にも仲間が居て。仲間が俺のために世界を相手にしようとそれで敗北しても俺のことを想い続けると、仲間の想いに報いるために俺も世界へと争った
フィンはこの世の悪であるのであれば、世界のために消えて貰おうと武器を向ける。一族のため。仲間のため。人々のため。最善を考えて世界のために尽くす。例え世界の友人一人を敵に回してでも
お互いの正義ではなく。お互いの揺るがない信念から発する決心だ。今ここでお互いの気持ちをぶつけ合えば、明日に目指す道はどう進むべきかハッキリする
でも俺の望みは一つのみ
「ルーンブレイク発動!!!」
「ディムナの名をここに!!」
体から放つオーラがお互いの魔力を増幅させて、この武器へと流し込んだ。フィンも親指がうずこうか関係なく挑んでくるのがわかる。それだけ俺との決着をつけたいのだろう
きっと彼も思っているはず、もう二年前のようには戻れないと。これは別々の道を歩くのための決別の戦いだ。だから俺の望みは一つ
もう俺を必要とするなフィン
とだけ思いつつ
決別を下す魔法の一撃が放った
「ヴォルスング・サガ!!!」
「ティル・ナ・ノーグ!!!」
俺の電光破がフィンに向かって放った。フィンは投槍魔法でファルティア・スピアが俺に放たれた
俺の電光線とフィンのファルティア・スピアが大きく衝撃を出して激突する
ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」
激突し合う二つの魔法。槍すらも焼き尽くすとヴォルスング・サガはファルティア・スピアを電光で覆い尽くす。ファルティア・スピアはその電光すら貫き弾き返すと一線揺るがずに電光へぶつかり続ける
雷と槍が大きくその地上や天まで大きく衝撃を放っていた
そして
バキ!!バリン!!!
「っ!」
フィンのファルティア・スピアの先端の刃から砕く音が聞こえ、徐々に先端だけでなく全身にてファルティア・スピアが雷によって砕けて溶けていった
槍が無くなっても電光線は消えることなく、フィンへと雷の光一線がフィンの下へ
「ああ・・・・・・君は強いな」
それだけを言って、フィンは俺のヴォルスング・サガの電光へと包まれて、そのまま後方へと吹っ飛んで行った
電雷光を浴びたフィンは後方の建物にぶつかり、建物ごと破壊し尽くして爆発した。
それを確認してヴィルスング・サガを解いた。殺すところまではしないのがヘスティアとロキの約束。もちろん爆発をしてでも建物の中から彼の魔力が感じる。息もしていることは間違いないだろうと、爆破した建物の内に入り、瓦礫に埋もれながら全身血だらけになって倒れている。そこに俺はパンドラボックスからハイエリクサーを掛ける。このままは流石に死んでしまうため、少しだけではあるが全身の傷を和らげる。そこでフィンは俺に気づいた
「うう・・・・僕の・・・負けだねジーク・・・・」
「負けか・・・いや・・・あいにく俺はお前と勝負をしたつもりはない・・・・俺はお前に決別を付けたかっただけだ。もう俺を必要とするな。お前はお前の道を行け。力を貸して欲しいなら依頼しろ。それくらいなら手伝おう。これで・・・・・もういいだろう?最善を超えて最高を目指すんだ。さすれば・・・・お前に着いて行く同胞が必ず出るはずだ」
「ああ・・・・もう僕は・・・・君に敵わないな・・・・」
「競う必要はない。俺はただ・・・・・平和に生きるために全力を尽くしただけだ・・・・今もな」
「そうか・・・・君と戦って・・・・良かった・・・よ・・・」
そう言ってフィンは眼を閉じて眠った。
俺は勝負をしたつもりはない。ただ過去に縛り続けるとのとこれからどう進むかを教え、もう俺を抜きに突き進めと導くために戦っただけ、俺よりかなり年上の癖に、フィンにもこんな悩みがあるんだなと俺には知らない部分の彼のことを知った
大人になっても悩みがあるのは当然だが、それを解決する方法が見つからず途方に迷うとは、こいつらしくないとは思うが、彼はそれほどフィアナと言う架空の女神に常識を囚われているのだと。未だ自分の心で決めた道を歩めなかったのだと理解した
「ふ!」
「うう・・・・・・」
「お前の攻撃は身に染みた。仲間を守れる強さ・・・・・・・確かに俺の体に響いだぞ。ベート」
俺はフィンから離れて、今度は広場の中心に倒れている柱を壊して、ベートを起こし柱へと寄り付かせハイエリクサーを彼にも掛ける。彼は俺のライバルと言えばそうなのかもしれないが、ライバルではなく、むしろこいつは俺と同じ存在だ。仲間を守るために必死に抗った。俺と同じ力を求めた者だ。だがやり方が俺とは違くて、他者に素直になれない所を抜いてもう少し連携を取れれば、俺を超える力を手に入るはず、それに気づくかどうかはこれから次第
まあ言うことは一つ。これからも強くなれ。それが彼の生き様である
「派手にやったやな。ジーク」
「ロキか・・・・案ずるな。ベートもフィンも全員無事だ」
「それは嬉しいんやけど・・・・自分・・・その左腕は・・・」
「そういうことだ・・・・もはや覚悟の上だ。構うことなく突き進んだ結果だ。いつの日か・・・・怪物になるだろうな」
「姉貴とフレイが見たら・・・・・泣くで?」
「おふくろは鋼のメンタルをした女神だ。息子が化け物になろうとも。俺自身が選んだことなら仕方あるまいと気にしないはずだ。フレイもな」
どこかの建物の上で見物したロキが地面に降りてくる。もちろんベートとロキは傷は負っているが死んではいないと説明するが、俺の左腕を気にかけていた。人間の腕がモンスターになるのだと。流石の女神であるロキも驚くが、それでも黒竜を倒すために引き換えをした代償であり。例えおふくろやフレイに見られたとしても。俺が覚悟の上で行動をして結果であると。全ては俺が決めたことだからと、天に行ったあの二人も認めてくれると思っている。
フレイはともかく、おふくろなんて対してそんな不安なことは気にしない性格だからな、でなければまだ7歳の俺をドラゴンの巣なんか追いやったりはしないしな
とにかく、ロキ・ファミリアの主戦力は無力化したと、ヘスティアに報告する
「ヘスティア。フィンとベートを無力化完了だ」
『報告ありがとう。ロキ、本当に構わないんだね?』
「構わへん。仕方あらへんからな。ウチの子供が選んだことや。それでジーク達に負けたんや。ウチは・・・・文句あらへん」
「だそうだ。ロキは今回のことは了承済みだ」
『了解。じゃあ僕らはベル君たちの状況を聞きに行くよ』
「ああ、ロキ。お前もアミッドを呼んでいこい。フィンとベートを治して貰った方がいい。ハイエリクサーを掛けたとは言え重症には変わりない」
「そうやな、じゃあウチは今からアミッドたんのところへ行くわ」
ロキも今回は眷属達が決めたことにより、俺たちが勝ってもギルドには訴えないと約束した。自分の子供のためを思って決めた今回の事件、フィンに賛同する者やリヴェリアに賛同する者など。それぞれ違う目的で動いていたが、子供達が決めたことに親であるロキは何も言わなかった
まあロキは、眷属が死んで居なければ構わないと、今回の事件でもうこれ以上は何もしないと言動する。だがフィンとベートは流石に重症であるため、今からディアンケヒトのホームに行き。アミッドを呼んで治療して貰う
それでその場に残った俺は
「他はどうなっている?」
『エルガルムも他のロキ・ファミリアもベル君たちに無力化されました。今はベル君達は地区内別で他の冒険者たちをあしらっているよ』
『でも・・・・・アイズさんが・・』
「アイズがどうかしたのか?シル?」
『それが・・・・行方不明で』
「行方不明?・・・」
ベル達もロキ・ファミリアの主力はほとんど抑えた
今はまだ俺を捕まえようとするギルドの要請された冒険者を止めているようで、ロキ・ファミリアのほとんどを抑えてもまだやはりこの事件の戦いは終わらないと見る。それなら一刻も早くヘスティアが決めた最終段階である『ギルドの脅し』を開始しようと思ったのだが
アイズが居ないとシルから連絡が来た
ベル達から逃げられたと報告を聞いたが、未だに彼女が姿を表さないと、ダイダロス通りの街内から見当たらないらしくマジックアイテムで見つからないと報告を受ける
しかし
「ジーク・・・・見つけた」
「っ!アイズ・・・・・ずっと俺を探していたのか」
突然俺の後ろから出てきた
アイズの後方を見てみると、地面に穴が空いていた。体はベル達の魔法でボロボロになった後に地下水路を辿り、俺の魔力を感知してここまで来たようだ。それほど傷は負ってないように見る。言うならまだロキ・ファミリアの主戦力はアイズだけが残っているわけだ。ティオナとティオネはまだ戦っているようだと、遠くから二人が激戦していると思われる魔力のぶつかり合いを感じる
一人でここまで来たのだから、いい加減決心付いて俺を捕まえるのか、彼女に聞いて見定める
「っ!ジーク!?その左腕・・・・」
「ああ、黒竜を倒した証には十分だろう?」
「じゃあ・・・フィンやベートさんをあんなにしたのはジークなの?」
「ああ。とは言ってもベートは違う。ベートは俺とフィンが勝負しているのを邪魔をして、フィンが邪魔させないようにベートを叩き潰した。フィンは間違いなく俺だがな」
「そうなの・・・・・どうしてそこまで・・・・」
「俺もフィンもベートも譲れないものがあった。だから勝負して勝ち取った。ただそれだけのことだ」
アイズは遠くでフィンとベートが倒れているのを確認した。もちろん二人を倒したのは俺になるのだが、ベートは俺でなくフィンがやったと説明する。
でも俺を恨んでも構わない。俺は敵であるのだから、恨まれるのを承知で敵を倒したのだ。それがかつて友人であろうともな
「ところで・・・・いい加減決心は付いたのか?お前は?」
「うん。ジーク・・・・・教えて、貴方は黒竜を倒したって言ったよね?」
「ああ、嘘だと思うならそう思ってくれて構わない。それで・・・・それが?」
「じゃあ・・・・・・」
アイズは俺に黒竜ファフニールを倒したのかを聞く
それが本当だと答え、なぜそんなことを聞くのか疑問に思う。黒竜がこの世から消えたのであれば、アイズの復讐を俺が奪ったことになるのだが、おそらくなぜ復讐を奪ったのか、なぜ黒竜を俺が先に倒したのか経緯を聞きたいのかと
思っていたのだが
「じゃあ・・・・・・お母さんはどうなったの!?」
「・・・・・・・・・・・ああ、アリアか」
精霊アリア
風の大精霊シルフとも呼び、童話で有名な人物アルバート・ヴァレンシュタインと言う大英雄、傭兵王『ヴァルトシュタイン』と名付けられた二つ名をした。『ダンジョン・オラトリア』と呼ばれる童話の登場人物の大英雄の妻にして
アイズの実の母親である
彼女は人間ではなく精霊だ。精霊が人の子供など産むことはできないのだが、ウンディーネ同様に他の精霊と違って人間と同じく子供を産むことができる精霊であるため、大昔アルバートに助けられたアリアがその彼の娘であるアイズを産んだ。
そして産んでから数年後に、黒竜ファフニールに仲間もろともやられた。
それは彼女も知っていること、ならなぜ彼女はそれでも母はどうなったかと聞く意味は
普通なら精霊は死ぬことはなく、体は消滅しても魂は消えることはないのだ
アイズはファフニールに魂を飲み込まれたと考え、体は消滅しても魂は今も黒竜の腹の中で生きていると考えている。だからアイズは力を求めて、いつの日か母を取り戻すために黒竜を挑むと。復讐を誓った
だが
それを先に俺が倒してしまった
なら彼女は俺の手で救われたのではないのかと、真意を聞く
だが
「彼女はもう死んだ」
「!?」
アリアは死んだ。それは嘘ではない。ファフニールを倒した後に彼女が魂だけ出てくることもなかった。彼女が完全に死んだことが明かされた。もちろんそれだけが理由ではない。それよりも決定的な証拠がある。まあそれも言葉だけの証拠なのだが
「ファフニールの心臓を食べた後に、奴が今までたくさん多くを殺した者達の光景を夢に見るんだ」
「黒竜が人を殺した光景!?」
「言うなら奴の記憶を俺も共有できるとでも言うのだろう。奴が今まで殺した時の光景を俺も見ることができた。その中に・・・・・アリアも居た」
「っ!?お母さんが・・・・」
「ああ。彼女は奴の口の中に喰われた。そして死んだ」
ファフニールの心臓を食べたからなのか、今まで奴が生きていた記憶の全てを俺は、睡眠している時に夢で見る事がある。その夢の中に。あのゼウスとヘラの眷属達が殺された当時の光景も見た。そして彼女も・・・・・・
彼女はファフニールの口の中へと飲み込まれた記憶を確かに見た。そして俺が倒した後は奴の体から彼女の魂が出てくることはなかった。
だからもう・・・・・
「彼女はもう死んだ。お前はもうアリアを取り戻すどころか・・・・もうお前の復讐は終わったんだ」
「そ、そんな・・・・お母さんが・・・死んだなんて・・・・」
「嘘だと思うならそう思っていい。認めないのならそう言えばいい。だが・・・・俺の言うことは全て事実だ」
「うう・・・そんな・・そんな・・・お母さん・・お母さん!!!」
「・・・・・・」
母をこの手で取り戻せると思って。今まで彼女は力を得てきた。モンスターを狩るだけ狩り続けて力を得た。
だがそれが、もう取り返しができず
アリアがもうこの世には居ないと絶望の真実を告げられた彼女は、その場で膝を着き、持っていた剣を床に落としてその場で膝まつく
「母は居なくなった。だがお前にはファミリアと言う家族が居る。お前の復讐はもう俺が終わらせた。だからお前はどうする?」
「どう・・する?」
「アリアはもう死んだ。だがお前の家族は血縁だけではない。目の前に居るフィン達だ。ここで落ち込んでいる暇はないと思うが、今お前の前には俺と言う敵が居る。母の仇はもう取れないが、八つ当たり程度に新しく黒竜となった俺が居る。お前のこれからやるべき事は決まっているんじゃないのか?」
「・・・・・・できない」
「何がだ?」
「ジークを斬ることなんてできない・・・・」
「それがお前の答えか」
結局彼女は人間を殺すことはできない。
中身は黒竜でもあるのに、見た目が人間だからと、アイズは俺を斬ることができない。彼女はモンスターは殺せても人は殺せなかった。人間が善人であるから守るのか、七年前彼女がまだここに居たのであれば、イヴィルスと言う存在を目の当たりにしているのであれば、人間の愚かさを知って、敵として斬る事ができるはずだが
彼女にはそこまで無知な少女だったわけだ
だから言う
「なら・・・・・これからお前はどうするんだ?」
「これからって・・・・・」
「お前の復讐は終わり、隻眼の黒竜ファフニールは俺の手に倒された。母は帰ることはなく、お前の家族はもうフィン達しかいない。それしかない今のお前は・・・・・・これからどう生きる?何と戦う?俺をどうする?そんなこともお前は決められないのか?」
「私は・・・・・」
「お前は二年前もそうだが・・・少しは理解力を持ち、未だ知らない道の領域を知ったほうがいい。この世界はお前が思っている程以上に広く、まだ知らない所が多く、それを知るためにお前は生きていけ、そうすればこの先をどう進むかくらいの生きていく理由はあるはずだ」
「私が生きていく理由・・・・・」
「これが・・・・俺にできるお前への助言だ。ここでお前を殺せばベルに恨まれる。彼に感謝した方が良い。最後まで希望を渡すように頼んだのはベルだからな」
「ベルが・・・・」
「ベルはお前を助けたいとも言っていた。もし俺が黒竜を倒したと聞いたら、この先何を理由に生きていくのか道を踏み外しそうだと、彼はお前を心配していた。お前はアリアが居なくても一人ではない」
「っ!」
「フィンたちも居れば、ベル達も居る。お前の家族はアリアだけじゃないぞ。そのことを踏まえてお前は大事なことを忘れずに生きろ」
それだけを言って、俺は彼女から去ろうとする
ベルの頼みは全うした。彼女が自分の復讐が終わった後のことを考えての助言はした。これからどうなるかは彼女次第、どうあってもアリアは帰ってこない、黒竜は俺が滅した。この否定できない事実を乗り越えるのかは彼女の精神の強さのみだ
どうか、家族はアリアだけでなく、フィン達が居ることを忘れずに生きろと
前を向いて生きろと言って、去る
今回はここまで